特許第6162795号(P6162795)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6162795
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】リシン−グルタミン酸ジペプチド誘導体
(51)【国際特許分類】
   C07C 271/22 20060101AFI20170703BHJP
   C07K 5/072 20060101ALI20170703BHJP
   C07C 269/06 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
   C07C271/22CSP
   C07K5/072
   C07C269/06
【請求項の数】12
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-512007(P2015-512007)
(86)(22)【出願日】2013年5月13日
(65)【公表番号】特表2015-518821(P2015-518821A)
(43)【公表日】2015年7月6日
(86)【国際出願番号】EP2013059759
(87)【国際公開番号】WO2013171135
(87)【国際公開日】20131121
【審査請求日】2016年5月12日
(31)【優先権主張番号】12168119.1
(32)【優先日】2012年5月15日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(74)【代理人】
【識別番号】100078662
【弁理士】
【氏名又は名称】津国 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100116528
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 俊男
(74)【代理人】
【識別番号】100146031
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 明夫
(74)【代理人】
【識別番号】100122736
【弁理士】
【氏名又は名称】小國 泰弘
(74)【代理人】
【識別番号】100122747
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 洋子
(74)【代理人】
【識別番号】100132540
【弁理士】
【氏名又は名称】生川 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】プエンテナー,クルト
【審査官】 福山 則明
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/092703(WO,A2)
【文献】 特表2003−525908(JP,A)
【文献】 特表2000−500505(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/006497(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/070251(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第102286092(CN,A)
【文献】 Journal of Medicinal Chemistry,2011年,Vol. 54,pp. 1490-1510
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 271/22
C07C 269/06
C07K 5/072
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化15】

[式中、
及びRは、同一又は異なっており、水素又はフェニルで場合により置換されているC1−4−アルキル、C2−4−アルケニル、ピペリジニル又はジメチルアミノボラニルを示し、
は、水素又は9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニルであり、そして
は、C12−20−アルキルである]
で表される化合物又はそのエナンチオマー、ジアステレオマーもしくは
ただし、化合物:(S)−2−(((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニルアミノ)−6−((S)−5−tert−ブトキシ−5−オキソ−4−パルミトアミドペンタンアミド)ヘキサン酸を除く
【請求項2】
が、水素又はC1−4−アルキルであり、そして、Rが、水素又はC2−4−アルケニルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が、t−ブチルであり、そして、Rが、水素又はアリルである、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
が、9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニルである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
が、C14−16−アルキルである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
式:
【化16】

[式中、R、R、R及びRは、上記のとおりである]
で表される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物又はそのエナンチオマー、ジアステレオマーもしくは塩。
【請求項7】
式:
【化17】

[式中、R、R、R及びRは、上記のとおりである]
で表される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物又はそのエナンチオマー、ジアステレオマーもしくは塩。
【請求項8】
が、t−ブチルであり、Rが、水素であり、Rが、9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニルであり、そして、Rが、C15−アルキルである;又は
が、t−ブチルであり、そして、Rが、アリルであり、Rが、9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニルであり、そして、Rが、C15−アルキルである
請求項6又は7に記載の化合物。
【請求項9】
が、t−ブチルであり、そして、Rが、水素であり、Rが、9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニルであり、そして、Rが、ペンタデシルである;又は
が、t−ブチルであり、そして、Rが、アリルであり、Rが、9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニルであり、そして、Rが、ペンタデシルである
請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
式I
【化21】
(式中、は、水素又はフェニルで場合により置換されているC1−4−アルキル、C2−4−アルケニル、ピペリジニル又はジメチルアミノボラニルであり、
は、水素であり、
は、水素又は9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニルであり、そして
は、C12−20−アルキルである)
の化合物の調製のためのプロセスであって、以下の工程を含むプロセス:
a)式:
【化18】

[式中、R及びRは、上記のとおりである]
で表されるグルタミン酸誘導体又はその塩を、式:
【化19】

[式中、R2’は、エステル保護基であり、そして、Rは、上記のとおりである]
で表されるリシン誘導体又はその塩とカップリングさせて、式:
【化20】

[式中、R、R2’、R及びRは、上記のとおりである]
で表される化合物を形成する工程、及び
b)エステル保護基R2’を除去する工程。
【請求項11】
ペプチド鎖のLys部分に連結されたGlu−脂肪族アルキル側鎖構成単位を含むペプチドの固相ペプチド合成における、請求項1に記載の式Iの化合物の使用。
【請求項12】
固相ペプチド合成が、FMOC固相ペプチド合成である、請求項11に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式:
【化1】

[式中、
及びRは、同一又は異なっており、水素又はエステル保護基を示し、
は、水素又はアミノ保護基であり、そして
は、C12−20−アルキルである]
で表される化合物ならびにそのエナンチオマー、ジアステレオマー及び塩に関する。
【0002】
本発明は、さらなる実施態様において、式Iの化合物の調製のためのプロセス及び固相ペプチド合成における式Iの化合物の使用に関する。
【0003】
本発明の化合物は、ペプチド鎖のLys部分に連結されたGlu−脂肪族アルキル側鎖構成単位を含むペプチド薬の固相ペプチド合成(SPPS)用の汎用的なペプチド中間体であることが見いだされた。例えば、GLP−1類似体2型糖尿病ペプチド薬であるリラグルチドを挙げることができる。リラグルチドは、Glu−ヘキサデカノイル側鎖構成単位をLys26位に有する(Wikipedia, the free encyclopedia of 30.04.2012)。
【0004】
本発明の目的は、Glu−脂肪族アルキル側鎖を有し、かつSPPSに容易に挿入することができる新規ペプチド中間体を提供することである。
【0005】
式:
【化2】

[式中、
及びRは、同一又は異なっており、水素又はエステル保護基を示し、
は、水素又はアミノ保護基であり、そして
は、C12−20−アルキルである]
で表される本発明の化合物ならびにそのエナンチオマー、ジアステレオマー及び塩が非常によくこの目的にかなう可能性を有することが見いだされた。
【0006】
置換基Rについて使用される用語「C12−20アルキル」は、12〜20個の炭素原子の分岐鎖又は直鎖の一価の飽和脂肪族炭化水素基、特に、直鎖の一価の飽和脂肪族炭化水素基を指す。この用語は、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル及びエイコサニル基によって例示することができる。
【0007】
特定の実施態様において、Rは、C14−16アルキル、さらにより特定すると、C15アルキルを指す。
【0008】
より特定すると、Rは、テトラデシル、ペンタデシル又はヘキサデシルであるが、特に、ペンタデシルである。
【0009】
置換基Rについて使用される用語「アミノ保護基」は、アミノ基の反応性を妨害するために従来使用される一般的な置換基を指す。適切なアミノ保護基は、デジタル印刷された"Fmoc Solid Phase Peptide Synthesis - A Practical Approach" W.C.Chan & P.D. White, Oxford University Press, 2000, reprinted 2004 に記載されている。
【0010】
特定すると、Rは、Fmoc(9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニル)である。
【0011】
置換基R及びRについて使用される用語「エステル保護基」は、ヒドロキシ基の反応性を妨害するために従来使用される任意の置換基を指す。適切なヒドロキシ保護基は、Green T., "Protective Groups in Organic Synthesis", Chapter 1 , John Wiley and Sons, Inc., 1991, 10-142 に記載されており、これは、フェニルで場合により置換されているC1−4−アルキル、C2−4−アルケニル、ピペリジニル又はジメチルアミノボラニルから選択することができる。R及びRについての特定のエステル保護基は、C1−4−アルキル又はC2−4−アルケニルである。
【0012】
より特定すると、Rは、t−ブチルであり、そして、Rは、アリルである。
【0013】
本発明の化合物に関連した用語「塩」は、当業者にとって慣用的な塩を包含し、塩酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩又はギ酸塩(formiate)などが適用される。
【0014】
本発明の特定の実施態様において、Rは、水素又はC1−4−アルキルであり、そして、Rは、水素又はC2−4−アルケニルである。
【0015】
本発明の別のより特定の実施態様において、Rは、t−ブチルであり、そして、Rは、水素又はアリルである。
【0016】
本発明の特定の実施態様において、式Iの化合物は、式:
【化3】

[式中、
、R、R及びRは、上記のとおりである]
ならびにそのエナンチオマー、ジアステレオマー及び塩を有する。
【0017】
以下に示すような置換パターンを有する式Ia又はIbの化合物が、本発明のさらにより特定の実施態様である:
・ R t−ブチル、R 水素、R Fmoc、R15−アルキル、特定すると、ペンタデシル。
・ R t−ブチル、R アリル、R Fmoc、R15−アルキル、特定すると、ペンタデシル。
【0018】
より特定の実施態様において、式Iの化合物は、式Iaを有する。
【0019】
本発明の化合物は、原理的には、ペプチド合成の当業者に公知であるプロセスで調製することができる。
【0020】
式I(式中、Rは、水素である)の化合物の調製について、当該プロセスは、以下の工程を含む:
a)式:
【化4】

[式中、R及びRは、上記のとおりである]
で表されるグルタミン酸誘導体又はその塩を、式:
【化5】

[式中、R2’は、エステル保護基であり、そして、Rは、上記のとおりである]
で表されるリシン誘導体又はその塩とカップリングさせて、式:
【化6】

[式中、R、R2’、R及びRは、上記のとおりである]
で表される化合物を形成する工程、及び
b)エステル保護基R2’を除去する工程。
【0021】
工程a)
工程a)は、式IIのグルタミン酸誘導体と式IIIのリシン誘導体のカップリングを要する。
【0022】
式IIのグルタミン酸誘導体は、以下のスキーム1に従って、市販の出発物質から調製することができる。
【0023】
【化7】
【0024】
適切な市販の式IIのグルタミン酸誘導体は、(S)−5−ベンジル 1−tert−ブチル2−アミノ−ペンタンジオエート塩酸塩である。
【0025】
式IIIのリシン誘導体は、市販されている。適切には、(S)−アリル 6−アミノ−2−(((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニルアミノ)−6−アミノヘキサノエートが使用される。
【0026】
次いで、式IIのグルタミン酸誘導体と式IIIのリシン誘導体のカップリングを、ペプチド合成用の古典的な技術を適用して実施することができる。
【0027】
従って、式IIのグルタミン酸誘導体は、当技術分野において慣用的な活性化剤、例えば、カルボニルジイミダゾール(CDI)、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)又はジイソプロピルカルボジイミド(DIC)から選択されるカルボジイミド、あるいは、例えば、1−ヒドロキシ−ベンゾトリアゾール(HOBt)又は1−ヒドロキシ−7−アザ−ベンゾトリアゾール(HOAt)から選択されるトリアゾールで最初に活性化される。
【0028】
適切な有機溶媒(例えば、ジクロロメタンのような)中に適用したCDI(1,1’−カルボニルジイミダゾール)で最良の結果が達成された。
【0029】
次いで、カップリングを、トリエチルアミンなどの有機塩基の存在下、通常室温で、式IIIのリシン誘導体を用いて行うことができる。
【0030】
得られた式Ibのジペプチド化合物は、有機相から、溶媒の蒸発、その後の、適切な有機溶媒、例えば、ジエチルエーテル中での残留物の結晶化によって得ることができる。
【0031】
上記の式Iaの亜属(subgenus)としての式Ibの化合物が、本発明の特定の実施態様である。
【0032】
式Ibの化合物の特定の代表例は、(S)−アリル 2−(((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニルアミノ)−6−((S)−5−tert−ブトキシ−5−オキソ−4−パルミトアミドペンタンアミド)ヘキサノエート(R=t−ブチル、R2’=アリル、R=Fmoc及びR=ペンタデシルを有する)である。
【0033】
工程b)
工程b)は、式Iaの化合物を形成するためのエステル保護基R2’の除去を要する。
【0034】
この反応は、当業者によく知られている。
【0035】
アリル基を除去するための適切な系は、例えば、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン又はメチルテトラヒドロフランなどの有機溶媒中の、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)のようなPd源及びフェニルシランの溶液である。
【0036】
反応は、室温で行うことができる。
【0037】
得られた式Iaのジペプチドは、有機相から、溶媒の蒸発、その後の、適切な有機溶媒、例えば、ヘプタン及び/又はヘプタン/ジクロロメタンの混合物による粗生成物の温浸によって得ることができる。
【0038】
上記のように、式Iの化合物は、固相ペプチド合成、特に、ペプチド鎖のLys部分に連結されたGlu−脂肪族アルキル側鎖構成単位を含むペプチドの合成において、汎用的な中間体として使用することができる。
【0039】
さらにより特定すると、式Iの化合物は、そのようなペプチドのFMOC固相ペプチド合成において使用することができる。
【0040】
実施例
略語:
r.t.=室温、DCM=ジクロロメタン、THF=テトラヒドロフラン、TBME=tert−ブチルメチルエーテル、EtOAc=酢酸エチル、TLC=薄層クロマトグラフィー。
【0041】
実施例1
(S)−2−(((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニルアミノ)−6−((S)−5−tert−ブトキシ−5−オキソ−4−パルミトアミドペンタンアミド)ヘキサン酸
a)(S)−5−ベンジル 1−tert−ブチル 2−パルミトアミドペンタンジオエート
【化8】

200mLの3口フラスコ中、(S)−5−ベンジル 1−tert−ブチル 2−アミノ−ペンタンジオエート塩酸塩(5.00g、14.9mmol)、トリエチルアミン(3.12g、30.7mmol)及びテトラヒドロフラン(100mL)の混合物を0〜5℃で15分間撹拌した。この懸濁液に、パルミトイルクロリド(4.35g、15.5mmol)を10分以内にシリンジで加えた。反応混合物を0〜5℃でさらに30分間撹拌した。TLC(EE/ヘプタン 1:1、出発物質のR=0.1、生成物のR=0.6、254nmでKomarowsky試薬によって検出した(cf. P. Stevens, J. Chromatog. 1964, 14, 269))に関しては、変換は完了していた。反応混合物に、水(60mL)及びtert−ブチルメチルエーテル(70mL)を加え、混合物をr.t.で5分間撹拌した。有機層を分離し、ブライン(120mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発乾固して、(S)−5−ベンジル 1−tert−ブチル 2−パルミトアミドペンタンジオエート(8.21g、>99%)を白色の固体として98.9%の化学純度(LC法は、以下を参照されたい)で得た。
M.p.47℃;EI−MS:m/z=531.39(M+H)
【0042】
LC法:X-BridgeフェニルカラムNo.823、50×4.6mm、ID2.5μm;移動相、A:水/NCMe(95:5)、B:NCMe、C:水/グリシン(pH9);流速:3ml/分;50/4/55(A/B/C)〜7/88/5(A/B/C)の勾配で2分以内、7/88/5(A/B/C)の定組成で0.8分間。保持時間:0.54分((S)−及び(R)−5−ベンジル 1−tert−ブチル 2−アミノ−ペンタンジオエート)、2.17分((S)−及び(R)−5−ベンジル 1−tert−ブチル 2−パルミトアミドペンタンジオエート)。
【0043】
b)(S)−5−tert−ブトキシ−5−オキソ−4−パルミトアミドペンタン酸
【化9】

250mLの3口フラスコ中、粗(S)−5−ベンジル 1−tert−ブチル 2−パルミトアミドペンタンジオエート(13.2g、24.8mmol)、10%パラジウム炭素(1.31g、1.20mmol)及びTHF(150mL)の混合物を、水素雰囲気下、室温で撹拌した。TLC(EE/ヘプタン 1:1、出発物質のR=0.5、生成物のR=0.2、Komarowsky試薬によって検出した(cf. P. Stevens, J. Chromatog. 1964, 14, 269))に関しては、23時間後に変換は完了していた。黒色の懸濁液をガラス繊維フィルターに通し、得られた無色の濾液を蒸発乾固して粗生成物(11.3g)を得て、次いで、これをヘプタンから結晶化させることによって精製して、(S)−5−tert−ブトキシ−5−オキソ−4−パルミトアミドペンタン酸(8.78g、収率76%)を白色の固体として97.7%の化学純度(LC法は、以下を参照されたい)で得た。
M.p.63℃;EI−MS:m/z=440.33(M−H)
【0044】
LC法:X-BridgeフェニルカラムNo.823、50×4.6mm、ID2.5μm;移動相、A:水/NCMe(95:5)、B:NCMe、C:水/グリシン(pH9);流速:3ml/分;50/4/55(A/B/C)〜7/88/5(A/B/C)の勾配で2分以内、7/88/5(A/B/C)の定組成で0.8分間。保持時間:0.77分((S)−及び(R)−5−tert−ブトキシ−5−オキソ−4−パルミトアミドペンタン酸)、2.17分((S)−及び(R)−5−ベンジル 1−tert−ブチル 2−パルミトアミドペンタンジオエート)。
【0045】
c)(S)−アリル 2−(((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニルアミノ)−6−((S)−5−tert−ブトキシ−5−オキソ−4−パルミトアミドペンタンアミド)ヘキサノエート
【化10】

500mLの3口フラスコ中、(S)−5−tert−ブトキシ−5−オキソ−4−パルミトアミドペンタン酸(8.77g、19.4mmol)、1,1’−カルボニルジイミダゾール(3.30g、20.4mmol)及びDCM(125mL)の混合物を室温で90分間撹拌した。得られた白色の懸濁液に、DCM(50mL)中の(S)−アリル 6−アミノ−2−(((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニルアミノ)−6−アミノヘキサノエート(8.68g、19.5mmol)及びトリエチルアミン(1.96g、19.4mmol)の溶液を15分以内に加えた。反応混合物をr.t.でさらに90分間撹拌して変換を完了した(TLC(EE/ヘプタン 1:1、出発物質のR=0、生成物のR=0.5、Komarowsky試薬によって検出した(cf. P. Stevens, J. Chromatog. 1964, 14, 269))によって決定した)。次に、DCM(50mL)及び水(40mL)を混合物に加え、層を分離した。水層をDCM(20mL)で抽出し、合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒の蒸発後、残留した粗生成物(16.0g)をジエチルエーテルから結晶化することによって精製して、(S)−アリル 2−(((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニルアミノ)−6−((S)−5−tert−ブトキシ−5−オキソ−4−パルミトアミドペンタンアミド)ヘキサノエート(15.2g、91%)を白色の固体として96.5%の化学純度(LC法は、以下を参照されたい)ならびに>99.9%のエナンチオマー及びジアステレオマー純度(キラルLC法は、以下を参照されたい)で得た。
M.p.118℃;EI−MS:m/z=832.55(M+H)
【0046】
LC法:X-Bridgeフェニルカラム、50×4.6mm、ID2.5μm;移動相、A:水/NCMe(95:5)、B:NCMe、C:0.1%ギ酸水溶液;流速:2ml/分;65/25/10(A/B/C)〜10/80/10(A/B/C)の勾配で10分以内、10/80/10(A/B/C)の定組成で2分間。保持時間:9.59分((S)−アリル2−(((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニルアミノ)−6−((S)−5−tert−ブトキシ−5−オキソ−4−パルミトアミドペンタンアミド)ヘキサノエート))。
【0047】
キラルLC法:Chiracel OD-RHカラムNo.745&No.702、150×4.6mm、ID5μm;移動相、A:NCMe、B:水/HClO(pH2);流速:1ml/分、68:32(A/B)の定組成で32分間、68/32(A/B)〜75/25(A/B)の勾配で0.5分以内、75/25(A/B)の定組成で29.5分間。保持時間:45.39分((R)−アリル2−(((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニルアミノ)−6−((R)−5−tert−ブトキシ−5−オキソ−4−パルミトアミドペンタンアミド)ヘキサノエート)、47.75分((R)−アリル 2−(((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニルアミノ)−6−((S)−5−tert−ブトキシ−5−オキソ−4−パルミトアミドペンタンアミド)ヘキサノエート)、51.98分((S)−アリル 2−(((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニルアミノ)−6−((R)−5−tert−ブトキシ−5−オキソ−4−パルミトアミドペンタンアミド)ヘキサノエート)、55.66分((S)−アリル 2−(((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニルアミノ)−6−((S)−5−tert−ブトキシ−5−オキソ−4−パルミトアミドペンタンアミド)ヘキサノエート)。
【0048】
実施例2
(S)−2−(((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニルアミノ)−6−((S)−5−tert−ブトキシ−5−オキソ−4−パルミトアミドペンタンアミド)ヘキサン酸
【化11】

500mLの3口フラスコ中、(S)−アリル 2−(((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニルアミノ)−6−((S)−5−tert−ブトキシ−5−オキソ−4−パルミトアミドペンタンアミド)ヘキサノエート(10.0g、11.4mmol)、フェニルシラン(7.02g、62.9mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(1.00g、0.85mmol)及びDCM(250mL)の混合物を室温で撹拌した。TLC(EE/ヘプタン 3:1、出発物質のR=0.2、生成物のR=0、254nmでのUVで検出した)に関しては、11分後に変換は完了していた。反応混合物をDCM(50mL)で希釈し、水(50mL)、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム水溶液(0.5%、30mL)及びブライン(30mL)で連続して洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させて、ロータリーエバポレーターで蒸発乾固した。残留した粗生成物を、r.t.で、最初にヘプタン(25mL)で、その後、ヘプタン/DCM(9:1)で温浸して、濾過及び乾燥後、粗(S)−2−(((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニルアミノ)−6−((S)−5−tert−ブトキシ−5−オキソ−4−パルミトアミドペンタンアミド)ヘキサン酸(8.92g)を77.2%の化学純度(LC法は、以下を参照されたい)で得た。粗生成物は、主要不純物としてトリフェニルホスフィンオキシドを11%含有していた。粗生成物の試料1gの分取超臨界流体クロマトグラフィー(SFC法、以下を参照されたい)は、純粋な(S)−2−(((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニルアミノ)−6−((S)−5−tert−ブトキシ−5−オキソ−4−パルミトアミドペンタンアミド)ヘキサン酸(0.75g、72%)を白色の固体として96.7%の化学純度(LC法は、以下を参照されたい)、98.0%のエナンチオマー純度及び99.8%のジアステレオマー純度(キラルLC法は、以下を参照されたい)で与えた。
M.p.119℃;EI−MS:m/z=792.52(M+H)
【0049】
LC法:X-BridgeフェニルカラムNo.823、50×4.6mm、ID2.5μm;移動相、A:水/NCMe(95:5)、B:NCMe、C:0.1%ギ酸水溶液;流速:2ml/分;65/25/10(A/B/C)〜10/80/10(A/B/C)の勾配で10分以内、10/80/10(A/B/C)の定組成で2分間。保持時間:8.65分((S)−2−(((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニルアミノ)−6−((S)−5−tert−ブトキシ−5−オキソ−4−パルミトアミドペンタンアミド)ヘキサン酸)、9.59分((S)−アリル 2−(((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニルアミノ)−6−((S)−5−tert−ブトキシ−5−オキソ−4−パルミトアミドペンタンアミド)ヘキサノエート))。
【0050】
キラルLC法:Chiracel OD-RHカラムNo.745&No.702、150×4.6mm、ID5μm;移動相、A:NCMe、B:水/HClO(pH2);流速:1ml/分、68:32(A/B)の定組成で32分間、68/32(A/B)〜75/25(A/B)の勾配で0.5分以内、75/25(A/B)の定組成で29.5分間。保持時間:21.56分((R)−2−(((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニルアミノ)−6−((R)−5−tert−ブトキシ−5−オキソ−4−パルミトアミドペンタンアミド)ヘキサン酸)、23.52分((R)−2−(((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニルアミノ)−6−((S)−5−tert−ブトキシ−5−オキソ−4−パルミトアミドペンタンアミド)ヘキサン酸)、25.68分((S)−2−(((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニルアミノ)−6−((R)−5−tert−ブトキシ−5−オキソ−4−パルミトアミドペンタンアミド)ヘキサン酸)、28.32分((S)−2−(((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニルアミノ)−6−((S)−5−tert−ブトキシ−5−オキソ−4−パルミトアミドペンタンアミド)ヘキサン酸)。
【0051】
分取SFC法:Viridis2−エチルピリジンOBDカラム、150×30mm、ID5μm;カラム温度50℃;移動相、A:CO、B:MeOH;流速:60ml/分、80:20(A/B)〜60/40(A/B)の勾配で10分以内。
【0052】
実施例3
(S)−2−(((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニルアミノ)−6−((S)−5−tert−ブトキシ−5−オキソ−4−パルミトアミドペンタンアミド)ヘキサン酸
【化12】

250mLの3口フラスコ中、(S)−アリル 2−(((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニルアミノ)−6−((S)−5−tert−ブトキシ−5−オキソ−4−パルミトアミドペンタンアミド)ヘキサノエート(12.0g、13.7mmol)、フェニルシラン(2.28g、20.4mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(96.0mg、0.08mmol)及びDCM(120mL)の混合物をr.t.で撹拌した。TLC(DCM/MeOH 9:1、出発物質のR=0.9、生成物のR=0.3、254nmでのUVで検出した)に関しては、3時間後に変換は完了していた。次いで、反応混合物を、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム水溶液(0.5%、20mL)及びブライン(75mL)で連続して洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させて、ロータリーエバポレーターで蒸発乾固して、粗(S)−2−(((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニルアミノ)−6−((S)−5−tert−ブトキシ−5−オキソ−4−パルミトアミドペンタンアミド)ヘキサン酸(11.6g)を93.5%の化学純度(LC法は、実施例2を参照されたい)、>99.9%のエナンチオマー純度及び99.7%のジアステレオマー純度(キラルLC法は、実施例2を参照されたい)で得た(残留トリフェニルホスフィンオキシドを1.2%含有していた)。次いで、粗生成物をヘプタン(230mL)にr.t.で1時間懸濁し、混合物を濾過し、フィルターケーキをヘプタン(50mL)で洗浄して、(S)−2−(((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニルアミノ)−6−((S)−5−tert−ブトキシ−5−オキソ−4−パルミトアミドペンタンアミド)ヘキサン酸(10.9g、収率97%)を帯黄色の固体として96.2%の化学純度(LC法は、実施例2を参照されたい)、>99.9%のエナンチオマー純度及び99.8%のジアステレオマー純度(キラルLC法は、実施例2を参照されたい)で得た(残留トリフェニルホスフィンオキシドを0.8%含有していた)。
M.p.119℃;EI−MS:m/z=792.52(M+H)
【0053】
実施例4
((R)−アリル 2−(((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニルアミノ)−6−((S)−5−tert−ブトキシ−5−オキソ−4−パルミトアミドペンタンアミド)ヘキサノエート
【化13】

25mLの3口フラスコ中、(S)−5−tert−ブトキシ−5−オキソ−4−パルミトアミドペンタン酸(500mg、1.12mmol)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(175mg、1.14mmol)、1,1’−カルボニルジイミダゾール(200mg、1.23mmol)及びDCM(10mL)の混合物を室温で90分間撹拌した。得られた白色の懸濁液に、DCM(5mL)中の(R)−アリル6−アミノ−2−(((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニルアミノ)−6−アミノヘキサノエート(507mg、1.12mmol)及びトリエチルアミン(113mg、1.12mmol)の溶液を5分以内に加えた。反応混合物を室温でさらに60分間撹拌して、変換を完了した(TLC(DCM/MeOH 95:5、出発物質のR=0、生成物のR=0.2、254nmでのUVで検出した))によって決定した。次に、水(10mL)を混合物に加え、層を分離した。水層をDCM(30mL)で抽出し、合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒の蒸発後、残留した粗生成物(983mg)をジエチルエーテルから結晶化することによって精製して、(R)−アリル2−(((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニルアミノ)−6−((S)−5−tert−ブトキシ−5−オキソ−4−パルミトアミドペンタンアミド)ヘキサノエート(686mg、70%)を白色の固体として94.2%の化学純度(LC法は、以下を参照されたい)ならびに>99.9%のエナンチオマー及びジアステレオマー純度(キラルLC法は、実施例1cを参照されたい)で得た。
M.p.114℃;EI−MS:m/z=832.54(M+H)
LC法:X-Bridgeフェニルカラム、50×4.6mm、ID2.5μm;移動相、A:水/NCMe(95:5)、B:NCMe、C:0.1%ギ酸水溶液;流速:2ml/分;65/25/10(A/B/C)〜10/80/10(A/B/C)の勾配で10分以内、10/80/10(A/B/C)の定組成で2分間。保持時間:9.55分((R)−アリル 2−(((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニルアミノ)−6−((S)−5−tert−ブトキシ−5−オキソ−4−パルミトアミドペンタンアミド)ヘキサノエート))。
【0054】
実施例5
(R)−2−(((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニルアミノ)−6−((S)−5−tert−ブトキシ−5−オキソ−4−パルミトアミドペンタンアミド)ヘキサン酸
【化14】

25mLの3口フラスコ中、(R)−アリル 2−(((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニルアミノ)−6−((S)−5−tert−ブトキシ−5−オキソ−4−パルミトアミドペンタンアミド)ヘキサノエート(675mg、0.76mmol)、フェニルシラン(351mg、3.14mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(20.0mg、0.02mmol)及びDCM(7mL)の混合物を10℃で撹拌した。TLC(DCM/MeOH 95:5、出発物質のR=0.8、生成物のR=0.2、254nmでのUVで検出した)に関しては、25分後に変換は完了していた。さらに15分後、反応混合物をDCM(10mL)で希釈し、水(10mL)、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム水溶液(0.5%、10mL)及びブライン(10mL)で連続して洗浄した。有機溶液を硫酸ナトリウムで乾燥させて、ロータリーエバポレーターで蒸発乾固して、粗(R)−2−(((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニルアミノ)−6−((S)−5−tert−ブトキシ−5−オキソ−4−パルミトアミドペンタンアミド)ヘキサン酸(631mg)を87.4の化学純度(LC法は、以下を参照されたい)、>99.9%のエナンチオマー純度及び98.8%のジアステレオマー純度(キラルLC法は、実施例2を参照されたい)で得た。粗生成物は、主要不純物としてトリフェニルホスフィンオキシドを6%含有していた。粗生成物の試料603mgの分取超臨界流体クロマトグラフィー(SFC法は、実施例2を参照されたい)は、純粋な(R)−2−(((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニルアミノ)−6−((S)−5−tert−ブトキシ−5−オキソ−4−パルミトアミドペンタンアミド)ヘキサン酸(348mg、59%)を白色の固体として98.7%の化学純度(LC法は、以下を参照されたい)、>99.9%のエナンチオマー純度及び99.4%のジアステレオマー純度(キラルLC法は、実施例2を参照されたい)で与えた。
M.p.125℃;EI−MS:m/z=792.52(M+H)
【0055】
LC法:X-Bridgeフェニルカラム、50×4.6mm、ID2.5μm;移動相、A:水/NCMe(95:5)、B:NCMe、C:0.1%ギ酸水溶液;流速:2ml/分;65/25/10(A/B/C)〜10/80/10(A/B/C)の勾配で10分以内、10/80/10(A/B/C)の定組成で2分間。保持時間:8.33分((R)−2−(((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニルアミノ)−6−((S)−5−tert−ブトキシ−5−オキソ−4−パルミトアミドペンタンアミド)ヘキサン酸)、9.35分((R)−アリル 2−(((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニルアミノ)−6−((S)−5−tert−ブトキシ−5−オキソ−4−パルミトアミドペンタンアミド)ヘキサノエート))。