特許第6162878号(P6162878)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6162878プロピレン系樹脂組成物、サニタリー用品、ドア部材、手すり部材、食器および配膳トレイ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6162878
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】プロピレン系樹脂組成物、サニタリー用品、ドア部材、手すり部材、食器および配膳トレイ
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/12 20060101AFI20170703BHJP
【FI】
   C08L23/12
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-242043(P2016-242043)
(22)【出願日】2016年12月14日
【審査請求日】2016年12月14日
(31)【優先権主張番号】特願2016-155729(P2016-155729)
(32)【優先日】2016年8月8日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】398017079
【氏名又は名称】高六商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】高橋 玄策
(72)【発明者】
【氏名】本庄 哲吏
(72)【発明者】
【氏名】壽山 實
【審査官】 岸 智之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−065215(JP,A)
【文献】 米国特許第08642683(US,B1)
【文献】 国際公開第2004/089092(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
CAplus/REGISTRY(STN)
C08L 23/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレン系樹脂と、比表面積が1〜20m2/gであり、かつ、平均粒径が1〜20μmであるタルクと、平均粒径が0.1〜30μmである貝殻焼成水和物とを含む、抗菌性を有するプロピレン系樹脂組成物であって、
前記タルクの含有量が、前記プロピレン系樹脂組成物100重量%に対し、5〜45重量%であり、
前記貝殻焼成水和物の含有量が、前記プロピレン系樹脂およびタルクの含有量の合計100重量部に対し、0.2〜10重量部である、
プロピレン系樹脂組成物
【請求項2】
さらに、沈降性硫酸バリウムを、前記プロピレン系樹脂およびタルクの合計100重量部に対し、1〜50重量部含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記貝殻焼成水和物の重量に対する、プロピレン系樹脂、タルクおよび沈降性硫酸バリウムの合計重量の比が20〜200の範囲にある、請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項4】
さらに、ドロマイトの焼成水和物を含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物を用いて得られたサニタリー用品。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物を用いて得られたドア部材。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物を用いて得られた手すり部材。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物を用いて得られた食器。
【請求項9】
請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物を用いて得られた配膳トレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプロピレン系樹脂組成物、サニタリー用品、ドア部材、手すり部材、食器および配膳トレイに関する。
【背景技術】
【0002】
サニタリー用品、ドア部材、手すり部材および配膳トレイ等の食器類などの物品は、人間の手や体と直接接触する物品であり、このような物品には、人間の手や体に基づく菌が付着し、増殖し易いという問題があった。このため、このような物品に対し、様々な方法で抗菌性を付与する取り組みがなされており、例えば、抗菌効果が高いことなどから、銀系抗菌剤を配合した抗菌性製品が提案されている。
【0003】
しかしながら、銀系抗菌剤入り製品は、着色や変色などの表面外観を損ないやすい傾向にあり、樹脂製品に用いた場合には、樹脂の劣化が起こりやすい傾向にあり、また、値段が高くなる傾向にあった。
【0004】
そこで、安価であり、抗菌効果に優れる等の点から、貝殻を焼成し、水和させた貝殻焼成水和物を抗菌剤として配合した製品の研究がなされている(特許文献1および2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−65215号公報
【特許文献1】国際公開第2004/89092号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者が鋭意検討した結果、前記特許文献1および2に記載の抗菌剤入り製品は、抗菌効果が充分ではなく、さらに、貝殻焼成水和物による製品の変色が生じることが分かった。また、このような抗菌剤入りの製品は、手触り感・肌触り感が良好とは言えなかった。
【0007】
本発明は前記課題に鑑みてなされたものであり、抗菌効果に優れ、貝殻焼成水和物に基づく変色を抑制でき、手触り感・肌触り感に優れるフィルムや成形体などを容易に形成することができる組成物を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記組成物によれば、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の構成例は以下の通りである。
【0009】
[1] プロピレン系樹脂と、比表面積が1〜20m2/gであり、かつ、平均粒径が1〜20μmであるタルクと、平均粒径が0.1〜30μmである貝殻焼成水和物とを含む、抗菌性を有するプロピレン系樹脂組成物。
[2] さらに、沈降性硫酸バリウムを、前記プロピレン系樹脂およびタルクの合計100重量部に対し、1〜50重量部含む、[1]に記載の組成物。
[3] 前記タルクの含有量が5〜85重量%である、[1]または[2]に記載の組成物。
[4] 前記貝殻焼成水和物の重量に対する、プロピレン系樹脂、タルクおよび沈降性硫酸バリウムの合計重量の比が5〜200の範囲にある、[1]〜[3]のいずれかに記載の組成物。
[5] さらに、ドロマイトの焼成水和物を含む、[1]〜[4]のいずれかに記載の組成物。
[6] [1]〜[5]のいずれかに記載の組成物を用いて得られた、サニタリー用品、ドア部材、手すり部材、食器または配膳トレイ。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、抗菌効果に優れ、貝殻焼成水和物に基づく変色を抑制でき、手触り感・肌触り感に優れるフィルムや成形体などを容易に安価で形成することができる。特に、本発明によれば、樹脂の有する物性を維持、または、向上させながら、貝殻焼成水和物を単に添加した場合以上の抗菌性を有するフィルムや成形体、具体的には、サニタリー用品、ドア部材、手すり部材および配膳トレイ等の食器類などの物品を容易に形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
≪抗菌性樹脂組成物≫
本発明に係る抗菌性樹脂組成物(以下「本組成物」ともいう。)は、プロピレン系樹脂と、比表面積が1〜20m2/gであり、かつ、平均粒径が1〜20μmであるタルクと、平均粒径が0.1〜30μmである貝殻焼成水和物とを含む。
このような組成物によれば、前記効果を奏する理由は必ずしも明らかではないが、平均粒径が特定の範囲にある貝殻焼成水和物が、比表面積および平均粒径が特定の範囲にあるタルクや樹脂成分としてのプロピレン系樹脂の物性によって、フィルムや成形体などの表面に移動するスピードが適度に調整され、これにより、樹脂と貝殻焼成水和物を単に配合した場合以上に増強された抗菌効果を有し、しかもその抗菌効果が長期にわたり発揮され、貝殻焼成水和物に基づく変色を抑制できると考えられる。
【0012】
本組成物は、プロピレン系樹脂と貝殻焼成水和物と共に、特定のタルクを用いるため、従来の樹脂製製品では達成し得なかった、触った瞬間に明らかに分かる程度のしっとりとした手触り・肌触り感を有するフィルムや成形体などを得ることができる。このため、このような本組成物は、特に、人間の手や肌が接触する製品、具体的には、サニタリー用品、ドア部材、手すり部材および配膳トレイ等の食器類などの物品の材料として好適に使用することができる。
また、本発明によれば、カビの発生を抑制する効果を有し、酢酸、硫化水素、アセトアルデヒドなどの化合物やタバコの臭いなどに対する消臭効果を有するフィルムや成形体などを容易に得ることができると考えられる。従って、本組成物は、ソファーやベッドなどにも好適に使用できる。
【0013】
本組成物は、フィルムや成形体などを形成する際の組成物(以下「成形組成物」ともいう。)であってもよいし、いわゆるマスターバッチであってもよい。
該マスターバッチは、一般に、固形成分をプロピレン系樹脂などの基材樹脂中に高濃度で含有させたペレットをいう。基材樹脂としては種々の樹脂が使用可能であるが、本発明においては基材樹脂としてプロピレン系樹脂を使用することが好ましい。マスターバッチ中における固形成分の含有率は、通常は45〜85重量%、好ましくは60〜80重量%の範囲内にある。
このように、プロピレン系樹脂中に固形成分を高濃度で含有するマスターバッチは、本組成物に配合する固形成分(タルクおよび貝殻焼成水和物等)が安定した状態でプロピレン樹脂中に高分散されているので、取り扱いが容易となり、タルクおよび貝殻焼成水和物等が均一に分散したフィルムや成形体などを容易に、高コストパフォーマンスで得ることができる。
【0014】
前記マスターバッチは、通常、プロピレン系樹脂を含む成分によって希釈され(以下、このマスターバッチを希釈する成分を「希釈成分」ともいう。)、具体的には、マスターバッチの重量と希釈成分の重量との比(マスターバッチの重量:希釈成分の重量)が、好ましくは1:1〜10、より好ましくは1:1〜5となる量で希釈成分によって希釈され、特に好ましくは、下記各成分が、下記成形組成物における含有量になるように希釈成分によって希釈され、フィルムや成形体などを形成する際の組成物とされる。
【0015】
<プロピレン系樹脂>
本組成物では、樹脂成分として、プロピレン系樹脂を使用する。
プロピレン系樹脂を用いることで、初めて前記効果を奏する組成物を得ることができる。
プロピレン系樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0016】
前記プロピレン系樹脂は、プロピレンの単独重合体、ブロック共重合体およびランダム共重合体のいずれでもよいが、本組成物から得られるフィルムや成形体などの剛性や耐熱性等の点からはプロピレンの単独重合体が好ましく、本組成物から得られるフィルムや成形体などの耐衝撃性等の点からはブロック共重合体が好ましく、タルクが必須成分である本組成物では、ブロック共重合体がより好ましい。
【0017】
前記共重合体は、プロピレンと、プロピレンと共重合可能なコモノマーとを共重合することで得られるが、該コモノマーとしては、エチレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテンなどのオレフィン、(メタ)アクリル酸、フマル酸などのエチレン系不飽和カルボン酸およびその酸無水物等が挙げられ、好ましくはエチレンまたは1−ブテンである。
これらのコモノマーは2種以上を用いてもよい。
コモノマーの使用量は、共重合体の合成に用いられる全モノマー100重量%に対し、通常30重量%以下、好ましくは20重量%以下である。
【0018】
前記プロピレン系樹脂は、ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ペンテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、プロピレン−ヘキセン共重合体、プロピレン−オクテン共重合体、ブテン−ヘキセン共重合体、ブテン−オクテン共重合体、ヘキセン−オクテン共重合体等のα−オレフィン系共重合体などの他の重合体を含んでいてもよく、該他の重合体としては、耐衝撃性が向上する等の点から、エチレン・プロピレンゴム(EPR)、変性エチレン・プロピレン・ジエンゴム(変性EPDM)および水添スチレン系熱可塑性エラストマー(SEBS)等のエラストマーが好ましい。
前記他の重合体の配合量は、プロピレン系樹脂100重量%に対し、通常40重量%以下、好ましくは30重量%以下である。
【0019】
前記プロピレン系樹脂は、従来公知の方法で合成して得てもよく、(株)プライムポリマー、日本ポリプロ(株)、住友化学(株)またはサンアロマー(株)製などの市販品を用いてもよい。
【0020】
前記プロピレン系樹脂の、JIS K 7210に基づいて、温度230℃、荷重2.16kgfで測定したメルトフローレート(MFR)は、加工性、成形性に優れる組成物が得られ、抗菌効果が増強されたフィルムや成形体などを容易に得ることができる等の点から、好ましくは0.5〜70g/10分、より好ましくは5〜50g/10分、特に好ましくは10〜40g/10分であり、加工性、成形性に優れる組成物が得られ、抗菌効果が増強された射出成形体などの成形体を容易に得ることができる等の点から、好ましくは5〜50g/10分、より好ましくは10〜40g/10分である。
【0021】
前記プロピレン系樹脂の、ASTM−D256に基づいて測定したアイゾット衝撃強さ(23℃)は、耐衝撃性に優れる射出成形体などの成形体を容易に得ることができる等の点から、好ましくは2〜20kJ/m2、より好ましくは5〜20kJ/m2である。
本発明者が鋭意検討した結果、タルクを含む本組成物は、得られるフィルムや成形体の耐衝撃性が低下しやすいことが分かった。従って、タルクが必須成分である本組成物では、アイゾット衝撃強さが前記範囲にあるプロピレン系樹脂を用いることが好ましい。
【0022】
前記プロピレン系樹脂の、ASTM−D790に基づいて測定した曲げ弾性率は、機械的強度に優れる射出成形体などの成形体を容易に得ることができる等の点から、好ましくは1000〜3000MPaである。
【0023】
本組成物中のプロピレン系樹脂の含有量は、所望の用途に応じ適宜選択すればよいが、本組成物100重量%に対し、好ましくは10〜90重量%、より好ましくは15〜85重量%である。具体的には、本組成物が成形組成物である場合には、プロピレン系樹脂の含有量は、本組成物100重量%に対し、好ましくは45〜90重量%、より好ましくは50〜85重量%であり、本組成物がマスターバッチである場合には、プロピレン系樹脂の含有量は、本組成物100重量%に対し、好ましくは10〜55重量%、より好ましくは15〜50重量%である。
プロピレン系樹脂の含有量が前記範囲にあると、加工性、成形性に優れる組成物が得られ、樹脂の特性が充分に発揮され、抗菌効果が増強されたフィルムや成形体などを容易に得ることができ、抗菌効果が長期にわたって安定的に発揮されるフィルムや成形体などを容易に得ることができる。
【0024】
<タルク>
本組成物は、比表面積および平均粒径が特定の範囲にあるタルクを含む。
このようなタルクを含むことで、プロピレン系樹脂の結晶化度を高めることができ、耐熱性、寸法安定性および剛性に優れ、手触り感・肌触り感に優れるフィルムや成形体などを容易に得ることができる。特に、本組成物は、比表面積および平均粒径が特定の範囲にあるタルクを含むため、貝殻焼成水和物を単に配合した場合以上に増強された抗菌効果を有し、しかもその抗菌効果が長期にわたり発揮されるフィルムや成形体などを容易に得ることができる。
さらに、前記タルクを配合することで、成形時や保存時の安定性に優れる組成物を得ることができ、貝殻焼成水和物に基づく変色を抑制することもできる。
前記タルクとしては、比表面積や平均粒径等の形状が異なる2種以上のタルクを用いてもよい。
【0025】
前記タルクは、粒状、板状、棒状、繊維状、ウィスカー状など、いずれの形状のものも使用することができるが、好ましくは板状または粒状である。
【0026】
前記タルクは、従来公知の方法で製造したものであってもよく、市販品であってもよい。
下記平均粒径、比表面積およびアスペクト比を有するタルクは、これらの形状の市販品を用いてもよく、従来公知の方法、例えば粉砕、造粒または分級により得ることができる。
また、前記タルクとしては、原石を粉砕して得たものを直接用いてもよく、少なくとも一部を従来公知の表面処理剤で表面処理したものを用いてもよい。
【0027】
前記タルクのハンター法(JIS L 1015)で測定した白色度は、より貝殻焼成水和物に基づく変色を抑制でき、所望の色のフィルムや成形体を容易に得ることができる等の点から、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上である。
【0028】
前記タルクの平均粒径は、加工性、成形性に優れる組成物が得られ、マスターバッチの形成性に優れ、抗菌効果が増強され、耐変色性、耐熱性、剛性、手触り感・肌触り感および表面平滑性に優れるフィルムや成形体などを容易に得ることができる等の点から、1〜20μm、好ましくは3〜18μmである。
なお、本発明における平均粒径は、レーザー回折法で測定した体積平均粒子径(D50)のことをいう。
【0029】
前記タルクのBET法で測定した比表面積は、抗菌効果が増強され、耐変色性に優れるフィルムや成形体などを容易に得ることができる等の点から、1〜20m2/g、好ましくは3〜15m2/gである。
【0030】
前記タルクのアスペクト比は、耐変色性、耐熱性、寸法安定性、耐衝撃性および剛性に優れ、マスターバッチの形成性に優れ、特に、貝殻焼成水和物を単に配合した場合以上に増強された抗菌効果を有し、しかもその抗菌効果が長期にわたり発揮され、手触り感・肌触り感に優れるフィルムや成形体などを容易に得ることができる等の点から、好ましくは10以上、より好ましくは20以上であり、その上限は特に制限されないが、50である。
なお、前記アスペクト比は、タルクの短辺に対する長辺の比率を表した値であって、顕微鏡等によりアスペクト比の大きいタルクを10個選択した時の平均値である。
【0031】
平均粒径、比表面積またはアスペクト比が前記範囲にあるタルクを用いることで、貝殻焼成水和物が、得られるフィルムや成形体などの表面に移動するスピードを適度に調整することができると考えられ、これにより、貝殻焼成水和物を単に配合した場合以上に増強された抗菌効果を有し、しかもその抗菌効果が長期にわたり発揮されると考えられる。
【0032】
本組成物中のタルクの含有量は、所望の用途に応じ適宜選択すればよいが、本組成物100重量%に対し、好ましくは5〜85重量%、より好ましくは5〜80重量%である。具体的には、本組成物が成形組成物である場合には、タルクの含有量は、本組成物100重量%に対し、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは5〜45重量%であり、本組成物がマスターバッチである場合には、タルクの含有量は、本組成物100重量%に対し、好ましくは40〜85重量%、より好ましくは45〜80重量%である。
タルクの含有量が前記範囲にあると、加工性、成形性に優れる組成物が得られ、樹脂の特性が充分に発揮され、抗菌効果が増強され、耐変色性、耐熱性、剛性、手触り感・肌触り感および表面平滑性に優れるフィルムや成形体などを容易に得ることができる。
【0033】
<貝殻焼成水和物>
前記貝殻焼成水和物としては、貝殻を焼成した後、水和させることにより得られるものであれば特に制限されない。
本組成物は、貝殻焼成水和物を含むため、抗菌効果が発揮され、さらに樹脂等に起因した臭いを充分に抑制(消臭)できる。また、貝殻焼成水和物は、安全・安心で環境に優しく、銀系等の従来の抗菌剤に比べ安価であるため好ましい。
貝殻焼成水和物は、1種単独で用いてもよく、貝殻の種類や粒径等が異なる2種以上を用いてもよい。
【0034】
前記貝殻としては、特に制限されず、天然の貝の殻であっても、養殖の貝の殻であってもよく、具体的には、ホタテの貝殻、カキの貝殻、あさりやはまぐりなどの貝殻、アワビの貝殻、サザエの貝殻、アコヤ貝の貝殻、ホッキ貝の貝殻等が挙げられ、これらのうち、貝殻組成が均一である点や供給量が多く、安価で抗菌性に優れるなどの点から、ホタテの貝殻が好ましい。
【0035】
前記貝殻焼成水和物は、従来公知の方法で製造することができるが、具体的には、必要により貝殻を粉砕した後、800℃以上、好ましくは800℃〜1500℃で、より好ましくは850℃〜1200℃で、空気中または炭酸ガス存在下で焼成した後、水和させることで製造することができる。
焼成時間は焼成温度等によって適宜設定されるが、通常、所定の焼成温度に到達した後、10〜120分、好ましくは15〜90分である。
【0036】
貝殻焼成水和物は、貝殻を完全に酸化させたり、水和させたもの以外に、本発明の効果を妨げない限り、焼成後にも未反応の炭酸塩等が残存していてもよく、また水和後にも未反応の酸化物等が残存していてもよい。
【0037】
前記貝殻焼成水和物の主成分は、水酸化カルシウム(消石灰)であるが、工業的に作られた消石灰と異なる点は、貝殻を焼成したものであるから、水酸化カルシウム(消石灰)以外の他の成分(例えばカリウム、マグネシウム等の様々なミネラル成分等)を含有している点であり、その結果として、抗菌性に優れ、反応性が低いという特徴を有していると考えられる。
【0038】
前記貝殻焼成水和物の平均粒径は、加工性、成形性に優れる組成物が得られ、マスターバッチの形成性に優れ、少ない量でも高い抗菌性を示すフィルムや成形体などが得られ、プロピレン系樹脂およびタルクを含む組成物から得られるフィルムや成形体などの機械的強度を低下させ難い等の点から、0.1〜30μm、好ましくは0.1〜10μm、さらに好ましくは0.5〜5μmである。
貝殻焼成水和物の平均粒径が小さすぎる場合、貝殻焼成水和物が樹脂中に容易に分散できない傾向にあり、十分な抗菌性能が得られない場合がある。一方、貝殻焼成水和物の平均粒径が大きすぎる場合、貝殻焼成水和物の比表面積が小さくなり、十分な抗菌性能が得られない場合がある。
このような平均粒径の貝殻焼成水和物は、前記水和後の水和物を、必要に応じて、ハンマーミル、ローラーミル、ボールミル、ジェットミル等により粉砕し、必要により分級することで得ることができる。
【0039】
本組成物中の貝殻焼成水和物の含有量は、所望の用途に応じ適宜選択すればよいが、プロピレン系樹脂およびタルクの含有量の合計100重量部に対し、好ましくは0.2〜30重量部、より好ましくは0.5〜20重量部である。具体的には、本組成物が成形組成物である場合には、貝殻焼成水和物の含有量は、プロピレン系樹脂およびタルクの含有量の合計100重量部に対し、好ましくは0.2〜10重量部であり、樹脂の特性が充分に発揮され、抗菌性と機械的強度等にバランスよく優れるフィルムや成形体などを容易に得ることができる等の点から、より好ましくは0.5〜5重量部であり、本組成物がマスターバッチである場合には、貝殻焼成水和物の含有量は、プロピレン系樹脂およびタルクの含有量の合計100重量部に対し、好ましくは0.5〜30重量部、より好ましくは1〜20重量部である。
また、本組成物から得られるフィルムや成形体を、サニタリー用品、食器類や調理用器具等の水に接触する機会の多い製品に使用する場合には、抗菌効果を長期にわたって発揮できる等の点から、該フィルムや成形体中の貝殻焼成水和物の含有量は、プロピレン系樹脂およびタルクの含有量の合計100重量部に対し、好ましくは0.5〜30重量部、より好ましくは1〜20重量部である。
【0040】
貝殻焼成水和物の含有量が前記範囲にあると、加工性、成形性に優れる組成物が得られ、樹脂の特性が充分に発揮され、抗菌性と機械的強度等にバランスよく優れるフィルムや成形体などを容易に得ることができる。
貝殻焼成水和物の含有量が少ない場合、十分な抗菌効果は得られない傾向にあり、含有量が多い場合、得られるフィルムや成形体の物性が低下し易い傾向にあり、貝殻由来の成分による着色が生じやすくなる。
【0041】
前記貝殻焼成水和物の重量に対する、プロピレン系樹脂、タルクおよび沈降性硫酸バリウムの合計重量の比が(プロピレン系樹脂、タルクおよび沈降性硫酸バリウムの合計重量/貝殻焼成水和物の重量)は、好ましくは5〜200、より好ましくは20〜150、特に好ましくは50〜100である。
なお、「プロピレン系樹脂、タルクおよび沈降性硫酸バリウムの合計重量」は、本組成物が沈降性硫酸バリウムを含まない場合には、「プロピレン系樹脂およびタルクの合計重量」となる。
この比が前記範囲にあると、加工性、成形性に優れる組成物が得られ、樹脂の特性が充分に発揮され、抗菌性と機械的強度等にバランスよく優れるフィルムや成形体などを容易に得ることができる。
【0042】
<沈降性硫酸バリウム>
本組成物は、剛性、耐熱性および表面平滑性に優れ、高い表面光沢を有するフィルムや成形体などを容易に得ることができる等の点から、沈降性硫酸バリウムを含むことが好ましい。特に、沈降性硫酸バリウムは、酸やアルカリに対し耐性があるため、塩基性の強い貝殻焼成水和物を含むにもかかわらず、長期にわたり前記効果を奏するフィルムや成形体を得ることができる。
沈降性硫酸バリウムは、1種単独で用いてもよく、粒径等が異なる2種以上を用いてもよい。
【0043】
前記沈降性硫酸バリウムとしては、特に制限されず、重晶石の還元焙焼によって得た硫化バリウムの溶液に硫酸ナトリウム溶液を加え沈殿させたものでもよく、硫化バリウムと硫酸または硫酸塩との反応により合成されたものでもよい。
また、樹脂との親和性および分散性を向上させる等の点から、従来公知の方法で表面処理された沈降性硫酸バリウムを用いることもできる。
【0044】
前記沈降性硫酸バリウムの平均粒径は、加工性、成形性に優れる組成物が得られ、マスターバッチの形成性に優れ、手触り・肌触り感および表面平滑性に優れ、表面光沢を有するフィルムや成形体などを容易に得ることができる等の点から、好ましくは0.1〜10μm、より好ましくは0.5〜3μmである。
前記平均粒径を有する沈降性硫酸バリウムは、合成時の条件を適宜調整することで得ることができ、また、合成後に得られた沈降性硫酸バリウムを、必要に応じて、ハンマーミル、ローラーミル、ボールミル、ジェットミル等により粉砕し、必要により分級することで得ることができる。
【0045】
沈降性硫酸バリウムは、成形用組成物に配合してもよいし、マスターバッチに配合してもよいし、希釈成分に配合してもよい。
沈降性硫酸バリウムを配合する場合には、成形用組成物中の沈降性硫酸バリウムの含有量は、プロピレン系樹脂およびタルクの含有量の合計100重量部に対し、好ましくは1〜40重量部、より好ましくは3〜30重量部であり、マスターバッチ中の沈降性硫酸バリウムの含有量は、プロピレン系樹脂およびタルクの含有量の合計100重量部に対し、好ましくは5〜50重量部、より好ましくは10〜40重量部であり、沈降性硫酸バリウムを希釈成分に配合する場合には、マスターバッチと希釈成分とからなる成形組成物中の沈降性硫酸バリウムの含有量が、前記沈降性硫酸バリウムを成形組成物に配合する場合と同様の量となる量で沈降性硫酸バリウムを配合すればよい。
沈降性硫酸バリウムの含有量が前記範囲にあると、加工性、成形性に優れる組成物が得られ、樹脂の特性が充分に発揮され、むしろ向上され、抗菌性および高表面光沢等にバランスよく優れるフィルムや成形体などを容易に得ることができる。
【0046】
<ドロマイトの焼成水和物>
本組成物は、抗菌性により優れ、難燃性にも優れるフィルムや成形体などを容易に得ることができる等の点から、ドロマイトの焼成水和物を含むことが好ましい。
ドロマイトの焼成水和物は、1種単独で用いてもよく、粒径等が異なる2種以上を用いてもよい。
【0047】
焼成されるドロマイトとしては、特に制限されず、天然に産出されるものでもよく、化学合成により製造したものでもよいが、工業的に利用する上では安価なことから天然品が好ましい。
【0048】
また、ドロマイトは、より抗菌性に優れるフィルムや成形体などが得られる等の点から、CaO/MgOのモル比が、好ましくは0.5〜3、より好ましくは1.5〜2.5の範囲にあることが好ましい。
【0049】
前記ドロマイトの焼成水和物としては、ドロマイトを焼成した後、水和させることにより得られるものであれば特に制限されないが、具体的には、必要によりドロマイトを粉砕した後、好ましくは700℃以上、好ましくは900〜1300℃で、空気中または炭酸ガス存在下で焼成した後、水和させることで製造することができる。
焼成時間は焼成温度等によって適宜設定されるが、通常、所定の焼成温度に到達した後、1〜24時間、好ましくは5〜20時間である。
【0050】
ドロマイトの焼成水和物は、ドロマイトを完全に酸化させたり、水和させたもの以外に、本発明の効果を妨げない限り、焼成後にも未反応の炭酸塩等が残存していてもよく、また水和後にも未反応の酸化物等が残存していてもよい。
【0051】
ドロマイトの焼成水和物は、樹脂との親和性および分散性を向上させる等の点から、従来公知の方法で表面処理されたものを用いることもできる。
【0052】
前記ドロマイトの焼成水和物の平均粒径は、加工性、成形性に優れる組成物が得られ、マスターバッチの形成性に優れ、抗菌性および難燃性により優れるフィルムや成形体などを容易に得ることができる等の点から、好ましくは0.1〜50μm、より好ましくは0.5〜10μm、さらに好ましくは0.8〜5μmである。
このような平均粒径のドロマイトの焼成水和物は、前記水和後の水和物を、必要に応じて、ハンマーミル、ローラーミル、ボールミル、ジェットミル等により粉砕し、必要により分級することで得ることができる。
【0053】
ドロマイトの焼成水和物は、成形用組成物に配合してもよいし、マスターバッチに配合してもよいし、希釈成分に配合してもよい。
ドロマイトの焼成水和物を配合する場合には、成形用組成物中のドロマイトの焼成水和物の含有量は、プロピレン系樹脂およびタルクの含有量の合計100重量部に対し、好ましくは1〜30重量部、より好ましくは3〜20重量部であり、マスターバッチ中のドロマイトの焼成水和物の含有量は、プロピレン系樹脂およびタルクの含有量の合計100重量部に対し、好ましくは5〜50重量部、より好ましくは10〜40重量部であり、ドロマイトの焼成水和物を希釈成分に配合する場合には、マスターバッチと希釈成分とからなる成形組成物中のドロマイトの焼成水和物の含有量が、前記ドロマイトの焼成水和物を成形組成物に配合する場合と同様の量となる量でドロマイトの焼成水和物を配合すればよい。
ドロマイトの焼成水和物の含有量が前記範囲にあると、加工性、成形性に優れる組成物が得られ、樹脂の特性が充分に発揮され、抗菌性と難燃性等にバランスよく優れるフィルムや成形体などを容易に得ることができる。
【0054】
<その他の成分>
本組成物には、所望の用途に応じ、フィルムや成形体など、具体的にはサニタリー用品、ドア部材、手すり部材、配膳トレイ等の食器類などの物品に配合される、前記プロピレン系樹脂、タルク、貝殻焼成水和物、沈降性硫酸バリウムおよびドロマイトの焼成水和物以外のその他の成分を、本発明の効果を損なわない範囲で配合してもよい。
なお、前記希釈成分には、プロピレン系樹脂の他、必要により、タルク、貝殻焼成水和物、沈降性硫酸バリウム、ドロマイトの焼成水和物および/または前記その他の成分を配合してもよい。
その他の成分はそれぞれ、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0055】
前記その他の成分としては、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂からなる成形製品に慣用されている添加剤、例えば、可塑剤、安定剤、酸化防止剤、滑剤、マイカや炭酸カルシウムなどの充填剤、炭素繊維やガラス繊維などの繊維、耐熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、分散剤、着色剤、酸化亜鉛などの抗菌剤、蛍光増白剤、防炎剤、帯電防止剤、粘度調整剤が挙げられる。
【0056】
<プロピレン系樹脂組成物>
本組成物は、前記各成分を混合することで得ることができるが、前記各成分を従来公知の装置、具体的には、単軸押出機、2軸押出機、ニーダー、ミキサー、2本ロールミル等を用いて均一となるように充分に混練することで得ることが好ましい。
また、成形組成物は、樹脂と、タルクおよび貝殻焼成水和物のうちいずれか一方のみと、必要によりこれら以外の成分とを含むマスターバッチを製造し、このマスターバッチと、プロピレン系樹脂とタルクおよび貝殻焼成水和物のうちマスターバッチに含まれない一方とを含む希釈成分とを用いて製造することもできる。
【0057】
マスターバッチは、具体的には、前記各成分を撹拌機等で混合し、押出機等で溶融混練した後、冷却し、ペレタイザー等でペレット状にカットすることで得ることができる。
【0058】
なお、「抗菌性を有する」とは、本組成物自体、または該組成物を用いて得られるフィルムや成形体が、JIS Z 2801に基づく抗菌活性値が2.0以上を示すことをいう。
【0059】
本組成物の、JIS K 7210(230℃、荷重2.16kgf)に基づいて測定したMFRは、成形性に優れる組成物となり、耐衝撃性などの機械的強度に優れる射出成形体などの成形体が得られる等の点から、好ましくは5〜50g/10分、より好ましくは10〜40g/10分である。
【0060】
≪抗菌性製品≫
本組成物は、従来公知の方法、具体的には、射出成形、押出成形、ブロー成形、カレンダー法等により、フィルムまたは成形体などに成形し、製品(抗菌性製品)とすることができる。
このような抗菌性製品は、本組成物を用いて得られるため、プロピレン系樹脂の有する物性を有しながらも、抗菌性能が充分に発揮され、しかも該性能が長期間にわたり発揮される製品となる。
前記抗菌性製品は、実質的に、本組成物のみからなる製品であってもよいし、本組成物から得られたフィルムや成形体と他の部材とを積層するなどして組み合わせた製品であってもよい。
【0061】
該抗菌性製品としては、様々な製品が挙げられ、家庭用品、食品、農業分野、水産分野、医療分野、工業分野、建築分野などの様々な分野で使用できる製品が挙げられ、特に、人間の手や体が直接接触することとなる製品が好ましい。
前記抗菌性製品としては、便器、便座、タンク、洗浄器(洗浄ノズル)、洗浄スイッチなどの本体操作スイッチ、トイレットペーパーホルダー、床、壁などのトイレ用品;床、壁、浴槽、シャワー、蛇口などの浴室用品;洗面台、蛇口、石鹸箱などの洗面所用品;ドアノブ、ドアの取手、鍵部、ドアの板材などのドア部材;病院、階段などに設けられる手すり部材;自動車内装部品などの自動車用品、パソコンのキーボード、マウス、各種電子機器のボタン、携帯電話や家庭用電話機などの電話機等の各種電子機器、配膳トレイなどの食器類、まな板やボールなどの調理用器具、ロボット、おもちゃ、模型・プラモデル、靴べらなどの玄関小物、ソファーやベッドなどの家具類等の人間の手や体が直接接触することとなる製品が挙げられる。
なお、本発明では、浴室・トイレ・洗面所など水まわりに関する製品のことを総称して、サニタリー用品ともいう。
前記抗菌性製品としては、これらの中でも、サニタリー用品、ドア部材、手すり部材、配膳トレイなどの食器類が好ましい。
【実施例】
【0062】
次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
【0063】
以下の試験では、下記材料を用いた。
・「PP」:JIS K 7210に基づいて測定したMFR(230℃、荷重2.16kgf)が20g/10分、ASTM−D256に基づいて測定したアイゾット衝撃強さ(23℃)が8.0kJ/m2、ASTM−D790に基づいて測定した曲げ弾性率が1200MPaであるプロピレン系樹脂(市販品)
・「タルク」:レーザー回折法で測定したD50が15μmであり、BET法で測定した比表面積が4m2/gであり、JIS L 1015に基づいて測定した白色度が94%であるタルク(市販品)
・「沈降性硫酸バリウム」:レーザー回折法で測定したD50が0.6μmである沈降性硫酸バリウム(市販品)
・「貝殻」:ホタテ貝の貝殻焼成水和物である、抗菌研究所製「スカロー」(レーザー回折法で測定したD50:2.6μm)
・「酸化防止剤」:フェノール系酸化防止剤である、(株)ADEKA製「AO−60」
・「滑剤」:ステアリン酸カルシウム(市販品)
【0064】
[実施例1〜4および比較例1〜2]
表1に示す各成分を表1に示す量で用い、これらを押出機を用いて200℃で溶融混練することで樹脂組成物を得た。なお、表1中の数値の単位は重量部である。
【0065】
【表1】
【0066】
<物性評価>
前記実施例および比較例で得られた各組成物を用い、下記表2に記載の試験方法に基づいて、温度230℃、荷重2.16kgfの条件で組成物のMFRを測定した。結果を表2に示す。
また、実施例および比較例で得られた各組成物を成形温度200℃で射出成形して、各試験方法で定められた形状の試験片を作製し、該試験片を用い、下記表2に記載の試験方法に基づいて成形体の物性を評価した。結果を表2に示す。なお、抗菌活性値は、大腸菌に対する活性値を測定した。
【0067】
前記実施例および比較例で得られた各組成物を用い、成形温度200℃で射出成形して、試験用平板(寸法:90×50mm、厚み:2mm)を作製した。
得られた試験片の手触り感の評価として、本研究と関係の無い従業員10名が該試験片を手で触って、しっとりとした手触り感を感じたか否かを集計し、以下の評価基準に基づいて評価した。結果を表2に示す。
◎:10人中、10人がしっとりとしていると感じた
○:10人中、7〜9人がしっとりとしていると感じた
△:10人中、3〜6人がしっとりとしていると感じた
×:10人中、0〜2人がしっとりとしていると感じた
【0068】
なお、以下の樹脂組成物を用いた場合にも実施例1とほとんど同じ物性を示すことを確認した。
前記PP40重量部、タルク60重量部、貝殻2重量部、酸化防止剤0.4重量部および滑剤0.4重量部を撹拌機で混合し、押出機を用いて200℃で溶融混練した後、冷却し、ペレタイザーで3mmのペレット状にカットすることでマスターバッチを得た。
得られたマスターバッチ50重量部と、前記PP50重量部とを押出機を用いて溶融混練することで樹脂組成物を得た。
【0069】
【表2】
【0070】
本組成物によれば、プロピレン系樹脂の有する物性を生かしながらも、曲げ弾性率や強度の高い成形体を得ることができ、特に、単に貝殻焼成水和物を用いた場合に比べ、所定のタルクを用いる本組成物によれば、貝殻焼成水和物の有する抗菌効果がより増強され、手触り感の優れる成形体を得ることができる。
【0071】
貝殻焼成水和物の含有量は、プロピレン系樹脂およびタルクの含有量の合計100重量部に対し、1重量部で十分な抗菌効果を示し、該合計100重量部に対し、10重量部を超えて貝殻焼成水和物を用いても抗菌効果の向上はほぼ見られず、10重量部を超えて貝殻焼成水和物を用いた場合には、得られた成形体の物性が低下する傾向にあった。
また、実施例4では、伸び特性については低下したものの、剛性に優れ、光沢度の高い成形体が得られた。
【0072】
<変色抑制性>
PP、酸化防止剤および滑剤からなる組成物(比較例3[比較例2において貝殻焼成水和物を含まない組成物])、比較例2で得られた組成物、比較例1で得られた組成物、または、実施例1で得られた組成物を、成形温度200℃で射出成形して、試験用平板(寸法:90×50mm、厚み:2mm)を作製した。得られた試験片を用い、グレタグマクベス分光光度計CE−7000Aを使用して、明度(L*値)、色度(a*、b*)を測定し、色差ΔEを算出した。なお、ΔEは、実施例1の成形体は、比較例1の成形体を基準とし、比較例2の成形体は、比較例3の成形体を基準としたときの色差を示す。
【0073】
【表3】
【0074】
<耐熱性>
比較例2で得られた組成物、または、実施例1で得られた組成物を、成形温度200℃で射出成形して、試験用平板(寸法:90×50mm、厚み:2mm)を作製した。得られた試験片を80℃で24時間加熱し、グレタグマクベス分光光度計CE−7000Aを使用して、加熱前後の明度(L*値)、色度(a*、b*)を測定し、色差ΔEを算出した。
【0075】
【表4】
【0076】
貝殻焼成水和物を用いた場合、成形体の変色が生じたが、タルクを用いることで、貝殻焼成水和物に基づく変色を顕著に抑えることができた。
【要約】
【課題】抗菌効果に優れ、貝殻焼成水和物に基づく変色を抑制でき、手触り感・肌触り感に優れるフィルムや成形体などを容易に形成することができる組成物を提供すること。
【解決手段】プロピレン系樹脂と、比表面積が1〜20m2/gであり、かつ、平均粒径が1〜20μmであるタルクと、平均粒径が0.1〜30μmである貝殻焼成水和物とを含む、抗菌性を有するプロピレン系樹脂組成物。
【選択図】なし