特許第6162887号(P6162887)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6162887末端に尿素基および/またはウレタン基を有する新規なカルボジイミド、それらを調製するための方法、およびそれらの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6162887
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】末端に尿素基および/またはウレタン基を有する新規なカルボジイミド、それらを調製するための方法、およびそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/79 20060101AFI20170703BHJP
   C08K 5/29 20060101ALI20170703BHJP
   C08L 79/00 20060101ALI20170703BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20170703BHJP
   C08L 67/02 20060101ALI20170703BHJP
   C08L 67/04 20060101ALI20170703BHJP
   C07C 275/40 20060101ALI20170703BHJP
   C07C 273/18 20060101ALI20170703BHJP
   C07C 269/04 20060101ALI20170703BHJP
   C07C 271/28 20060101ALI20170703BHJP
   C10M 133/22 20060101ALI20170703BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20170703BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20170703BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20170703BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20170703BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20170703BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20170703BHJP
【FI】
   C08G18/79 070
   C08K5/29ZBP
   C08L79/00 Z
   C08L67/00
   C08L67/02
   C08L67/04
   C07C275/40CSP
   C07C273/18
   C07C269/04
   C07C271/28
   C10M133/22
   C09D175/04
   C09D7/12
   C09J175/04
   C09J11/06
   !C08L101/16
   !C07B61/00 300
【請求項の数】19
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-513309(P2016-513309)
(86)(22)【出願日】2014年5月9日
(65)【公表番号】特表2016-524635(P2016-524635A)
(43)【公表日】2016年8月18日
(86)【国際出願番号】EP2014059578
(87)【国際公開番号】WO2014184116
(87)【国際公開日】20141120
【審査請求日】2015年11月12日
(31)【優先権主張番号】13167511.8
(32)【優先日】2013年5月13日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511206984
【氏名又は名称】ライン・ケミー・ライノー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルヘルム・ラウファー
(72)【発明者】
【氏名】ベンヤミン・ベヘム
(72)【発明者】
【氏名】アルミン・エッカート
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特開平5−93056(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/79
C07C 269/04
C07C 271/28
C07C 273/18
C07C 275/40
C08K 5/29
C08L 67/00
C08L 67/02
C08L 67/04
C08L 79/00
C09D 7/12
C09D 175/04
C09J 11/06
C09J 175/04
C10M 133/22
C07B 61/00
C08L 101/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式
【化1】
[式中、
− Rは、同一であっても異なっていてもよく、−NHCONHR、−NHCONRII、および−NHCOORIII残基の群から選択され、RおよびRIIは、同一であるかまたは異なっていて、C〜C22−アルキル、C〜C12−シクロアルキル、C〜C18−アリール、またはC〜C18−アラルキル残基であり、およびRIIIは、C〜C−アルキル、C〜C12−シクロアルキル、C〜C18−アリール、もしくはC〜C18−アラルキルまたはアルコキシポリオキシアルキレン残基に相当し、
− R、R、およびRは、それぞれ独立してメチルまたはエチルであり、それぞれのベンゼン環は、1個のみのメチル基を有し、および
− n=0〜20、好ましくはn=1〜10である]
の末端に尿素基および/またはウレタン基を有するカルボジイミド。
【請求項2】
Rが、−NHCOORIII残基であり、RIII、C〜C−アルキル、特に好ましくはメチル、エチル、またはi−プロピル、C〜C12−シクロアルキル、好ましくはC−シクロアルキルであり、かつR、R、およびRがそれぞれ独立して、メチルまたはエチルであり、それぞれのベンゼン環が1個のみのメチル基を有し、およびn=0〜20、好ましくはn=1〜10、特に好ましくはn=3〜8であることを特徴とする、請求項1に記載のカルボジイミド。
【請求項3】
IIIが、200〜600g/mol、好ましくは350〜550g/molのモル質量を有するポリエチレングリコールモノメチルエーテルであることを特徴とする、請求項1に記載のカルボジイミド。
【請求項4】
前記カルボジイミドの中のNCN含量が、2〜14重量%であることを特徴とする、請求項に記載のカルボジイミド。
【請求項5】
前記カルボジイミドの中のNCN含量が、2〜14重量%、好ましくは4〜14重量%、特に好ましくは10〜13重量%であることを特徴とする、請求項に記載のカルボジイミド。
【請求項6】
前記カルボジイミドが、1000〜5000g/mol、好ましくは1500〜4000g/mol、特に好ましくは2000〜3000g/molの平均モル質量(Mw)を有することを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載のカルボジイミド。
【請求項7】
前記カルボジイミドが、1.2〜2、好ましくは1.4〜1.8の多分散性D=Mw/Mnを有することを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載のカルボジイミド。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか一項に記載のカルボジイミドを調製するための方法であって、次式
【化2】
および/または次式
【化3】
のジイソシアネートを、触媒および任意選択的に溶媒の存在下に、80℃〜200℃の温度で二酸化炭素を脱離させてカルボジイミド化させ、次いで、遊離のNCO官能基を、一級または二級のアミンまたはアルコールを用いて末端官能化させることを特徴とする、方法。
【請求項9】
請求項1〜のいずれか一項に記載のカルボジイミドを調製するための方法であって、最初に、
式(II)
【化4】
および/または式(III)
【化5】
の芳香族ジイソシアネートの中の遊離のNCO基の部分的、好ましくは50%未満の末端官能化を、一級または二級のアミンまたはアルコールおよび/またはアルコキシポリオキシアルキレンアルコールを用いて実施し、次いで、触媒および任意選択的に溶媒の存在下に、80℃〜200℃の温度で二酸化炭素を脱離させることにより、カルボジイミド化を実施することを特徴とする、方法。
【請求項10】
前記カルボジイミド化を、80〜200℃、好ましくは120〜140℃の温度で、好ましくは触媒の存在下に実施し、次いで任意選択的に50〜120℃の温度で触媒を蒸留除去し、および160〜180℃の温度で未反応のジイソシアネートを蒸留除去してから、前記カルボジイミドの残存NCO基を、脂肪族および/または芳香族アミン、アルコールおよび/またはアルコキシポリオキシアルキレンアルコール、好ましくはポリエチレンモノメチルエーテルおよび/またはオレイルアルコールと、80〜140℃の温度で、任意選択的にPU触媒の存在下に反応させることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記カルボジイミド化を、80〜200℃、好ましくは120〜140℃の温度で、好ましくは触媒の存在下に実施し、次いで、反応混合物の温度を50〜120℃、好ましくは60〜100℃、特に好ましくは80〜90℃に下げて、前記カルボジイミド化を中断させ、および任意選択的に溶媒、好ましくはアルキルベンゼンの群から選択される溶媒、特に好ましくはトルエンを添加した後で、前記カルボジイミドの遊離の末端イソシアネート基を、脂肪族および/または芳香族アミン、アルコールおよび/またはアルコキシポリオキシアルキレンアルコールと反応させることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項12】
前記式(II)および(III)のジイソシアネートの混合物を、70:30〜90:10の比率でカルボジイミド化させることを特徴とする、請求項またはに記載のカルボジイミドを調製するための方法。
【請求項13】
前記カルボジイミド化の後で、溶融物を、好ましくはペレット化ベルトの上で、ペレット化させることを特徴とする、請求項に記載のカルボジイミドを調製するための方法。
【請求項14】
請求項に記載のカルボジイミドにおいて、RIII=シクロヘキシルであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
組成物であって、
− 好ましくはポリエステルポリオール、エステルベースの熱可塑性ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、PU接着剤、PUキャスティング樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、コポリエステル、熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPE E)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンアジペートテレフタレ−ト(PBAT)、ポリブチレンスクシネート(PBS)、PLA誘導体および/またはポリヒドロキシアルカノエート(PHA)の群から選択される、少なくとも1種のエステルベースのポリマー、
および
− 請求項1〜のいずれか一項に記載の少なくとも1種のカルボジイミド、
を含む組成物。
【請求項16】
前記カルボジイミドの濃度が、0.1〜5重量%、好ましくは0.5〜3重量%、特に好ましくは1〜2重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、コポリエステル、たとえば、シクロヘキサンジオールとテレフタル酸との変性ポリエステル(PCTA)、熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPE E)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンアジペートテレフタレ−ト(PBAT)、ポリブチレンスクシネート(PBS)、PLA誘導体および/またはポリヒドロキシアルカノエート(PHA)を含む群から選択されるエステルベースのポリマーに対して、固体計量ユニットにより、請求項3に記載のカルボジイミドを添加することを特徴とする、請求項1または1に記載の組成物を調製するための方法。
【請求項18】
エステルベースのポリオール中、ポリエチレンテレフタレート(PET)中、ポリブチレンテレフタレート(PBT)中、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)中、コポリエステル中、熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPE E)中、エチレン酢酸ビニル(EVA)中、ポリ乳酸(PLA)中および/またはPLA誘導体中、ポリブチレンアジペートテレフタレ−ト(PBAT)中、ポリブチレンスクシネート(PBS)中、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)中、ブレンド物中、トリグリセリド中、好ましくはトリメチロールプロパントリオレエート(TMPオレエート)中、潤滑剤産業のためのオイル配合物中、熱可塑性ポリウレタン(TPU)中、ポリウレタンエラストマー中、PU接着剤中、PUキャスティング樹脂中、PUフォーム中、または木材、皮革、人工皮革および織物のためのPUコーティング中における、加水分解からの保護剤としての、請求項1〜のいずれか一項に記載のカルボジイミドの使用。
【請求項19】
ポリ乳酸(PLA)における、請求項1〜のいずれか一項に記載のカルボジイミドの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、末端に尿素基および/またはウレタン基を有する新規なカルボジイミド、それらを調製するための方法、ならびに、エステルベースのポリオール中、ポリエチレンテレフタレート(PET)中、ポリブチレンテレフタレート(PBT)中、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)中、コポリエステル中、熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPE E)中、エチレン酢酸ビニル(EVA)中、ポリ乳酸(PLA)中および/またはPLA誘導体中、ポリブチレンアジペートテレフタレ−ト(PBAT)中、ポリブチレンスクシネート(PBS)中、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)中、ブレンド物中、トリグリセリド中、熱可塑性ポリウレタン中、ポリウレタンエラストマー中、PU接着剤中、PUキャスティング樹脂中、PUコーティング用、またはPUフォーム中における安定剤としてのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
カルボジイミドは、多くの用途、たとえば、熱可塑性プラスチック、ポリオール、ポリウレタン、トリグリセリド、および潤滑油などのための加水分解安定剤として有用であることが見いだされている。
【0003】
その目的のためには、立体障害芳香族モノカルボジイミドを使用するのが好ましい。これに関連して、2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミドが特によく知られている。しかしながら、それらのモノカルボジイミドは、低温でさえも揮発性であるという欠点を有している。それらは熱的に不安定であり、有毒な揮発性物質を放出する恐れがある。たとえば(特許文献1)に記載されているような、その他のカルボジイミドは、購入するのに非常に高価な特殊な原料物質をベースとしている。それらはさらに、室温での粘度が高く、そのためそれらのカルボジイミドの取り扱いが困難になっている。従って、ある種のPU、PET、PLA、または潤滑剤の用途においては、使用される標準的な濃度では、それらの反応性および/またはそれらの安定化効果が不十分である。(特許文献2)および(特許文献3)に記載されているような、安価な原料をベースとするポリマー性カルボジイミドは、立体障害が十分でなく、エステルベースのポリマーのほとんどにおいては、良好な加水分解−安定化効果を示さない。たとえばトリイソプロピルフェニルイソシアネートをベースとする、高度に立体障害のあるカルボジイミドは、極めて有効ではあるものの、融点が極めて高く、不溶性であるため、ポリウレタンの出発物質の中に導入できないか、または装置および時間の点でかなりの出費を伴う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0628541A1号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第A2248751号明細書
【特許文献3】米国特許第A2941983号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、従来技術の欠点を有さず、高い熱安定性を有し、エステルベースのポリマーの加水分解を防ぐのに使用することが可能な、新規なカルボジイミドが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
驚くべきことには、特定の芳香族カルボジイミドを使用することによって、この目的が達成された。
【0007】
したがって、本発明の目的は、式(I)
【化1】
[式中、
− Rは、同一であっても異なっていてもよく、−NHCONHR、−NHCONRII、および−NHCOORIII残基の群から選択され、RおよびRIIは、同一であるかまたは異なっていて、C〜C22−アルキル、C〜C12−シクロアルキル、C〜C18−アリール、またはC〜C18−アラルキル残基であり、およびRIIIは、C〜C22−アルキル、好ましくはC〜C−アルキル、特に好ましくはメチル、エチル、またはi−プロピル、C〜C12−シクロアルキル、好ましくはC−シクロアルキル、C〜C18−アリールまたはC〜C18−アラルキル、さらには、2〜22、好ましくは12〜20、特に好ましくは16〜18個の炭素原子を有する不飽和アルキル残基(たとえば、オレイル残基)、またはアルコキシポリオキシアルキレン残基に等しく、
− R、R、およびRは、それぞれ独立してメチルまたはエチルであり、それぞれのベンゼン環は、1個のみのメチル基を有し、および
− n=0〜20、好ましくはn=1〜10である]
の末端に尿素基および/またはウレタン基を有するカルボジイミドである。
【0008】
本発明によるカルボジイミドのカルボジイミド含量(NCN含量、シュウ酸を用いた滴定により測定)は、好ましくは2〜14重量%である。
【0009】
好ましいのは、R=−NHCOORIIIで、RIIIが、アルコキシポリオキシアルキレン残基であり、R、R、およびRがそれぞれ独立して、メチルまたはエチルであり、それぞれのベンゼン環が1個のみのメチル基を有し、およびn=0〜20、好ましくはn=1〜10、特に好ましくはn=1〜4、特に好ましくはn=2〜3である、式(I)のカルボジイミドである。それらの好ましいカルボジイミドのカルボジイミド含量は、好ましくは2〜10重量%、特に好ましくは4〜8重量%、特に好ましくは5〜7重量%である。
【0010】
好ましいアルコキシポリオキシアルキレン残基は、200〜600g/mol、特に好ましくは350〜550g/molのモル質量を有するポリエチレングリコールモノメチルエーテルである。
【0011】
好ましいのは同様に、R=−NHCOORIIIで、RIIIが、C〜C22−アルキル、好ましくはC〜C−アルキル、特に好ましくはメチル、エチル、またはi−プロピル、C〜C12−シクロアルキル、好ましくはC−シクロアルキルに等しく、かつR、R、およびRがそれぞれ独立して、メチルまたはエチルであり、それぞれのベンゼン環が1個のみのメチル基を有し、およびn=0〜20、好ましくはn=1〜10、特に好ましくはn=3〜8である、式(I)のカルボジイミドである。それらの好ましいカルボジイミドのカルボジイミド含量は、好ましくは4〜13重量%、特に好ましくは10〜13重量%である。
【0012】
R=−NHCOORIIIで、RIIIが、C〜C22−アルキル、好ましくはC〜C−アルキル、特に好ましくはメチル、エチル、またはi−プロピル、C〜C12−シクロアルキル、好ましくはC−シクロアルキルに等しく、R、R、およびRがそれぞれ独立して、メチルまたはエチルであり、それぞれのベンゼン環が1個のみのメチル基を有し、およびn=0〜20、好ましくはn=1〜10、特に好ましくはn=3〜8である、式(I)のこれらの好ましいカルボジイミドは、市販されており、40℃よりも高い軟化点を有し、そのため、好ましくはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、コポリエステル、たとえば、シクロヘキサンジオールとテレフタル酸との変性ポリエステル(PCTA)、熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPE E)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリ乳酸(PLA)および/またはPLA誘導体、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリブチレンアジペートテレフタレ−ト(PBAT)、ポリブチレンスクシネート(PBS)の群から選択されるエステルベースのポリマーを安定化させるのに並外れて好適であり、あるいはブレンド物、たとえばこれも本発明に関連するPA/PETまたはPHA/PLAブレンド物にも好適である。
【0013】
エステルベースのポリマーを安定化させるための本発明による方法においては、R=−NHCOORIIIで、RIIIが、C〜C22−アルキル、好ましくはC〜C−アルキル、特に好ましくはメチル、エチル、またはi−プロピル、C〜C12−シクロアルキル、好ましくはC−シクロアルキルに等しく、かつR、R、およびRがそれぞれ独立して、メチルまたはエチルであり、それぞれのベンゼン環が1個のみのメチル基を有し、およびn=0〜20、好ましくはn=1〜10、特に好ましくはn=3〜8である式(I)のカルボジイミドを、固形物計量ユニットによって、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、コポリエステル、たとえば、シクロヘキサンジオールとテレフタル酸との変性ポリエステル(PCTA)、熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPE E)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリブチレンアジペートテレフタレ−ト(PBAT)、ポリブチレンスクシネート(PBS)、ポリ乳酸(PLA)および/またはPLA誘導体、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、またはブレンド物、たとえばPA/PETもしくはPHA/PLAブレンド物を含む群から選択されるエステルベースのポリマーに添加する。
【0014】
本発明に関連して、固形物計量ユニットとは、好ましくは以下のものである:一軸、二軸または多軸のエクストルーダー、連続操作のコニーダー(Bussタイプ)、およびバッチモードで操作するニーダー、たとえば、Banburyタイプ、およびポリマー産業において慣用されているその他の装置。
【0015】
エステルベースのポリマー中での本発明による式(I)のカルボジイミドの濃度は、好ましくは0.1〜5重量%、好ましくは0.5〜3重量%、特に好ましくは1〜2重量%である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のさらなる実施形態においては、式(I)のカルボジイミドは、好ましくは、Rが−NHCOORIIIに等しく、RIIIが、2〜22、好ましくは12〜20、特に好ましくは16〜18個の炭素原子を有する飽和および/または不飽和のアルキル残基であり、かつR、R、およびRがそれぞれ独立して、メチルまたはエチルであり、それぞれのベンゼン環が1個のみのメチル基を有し、およびn=0〜20、好ましくはn=1〜10、特に好ましくはn=1〜4、特に好ましくはn=2〜3であるものである。それらの好ましいカルボジイミドのカルボジイミド含量は、好ましくは2〜10重量%、特に好ましくは4〜8重量%、特に好ましくは5〜7重量%である。
【0017】
本発明によるカルボジイミドはさらに、1000〜5000g/mol、好ましくは1500〜4000g/mol、特に好ましくは2000〜3000g/molの平均モル質量(Mw)を有しているのが好ましい。
【0018】
さらに、1.2〜2、特に好ましくは1.4〜1.8の多分散性(D=Mw/Mn)を有しているカルボジイミドが好ましい。
【0019】
本発明の範囲は、上記および以下に述べる一般的な残基の定義、指数、パラメーターおよび説明、ならびに好ましい範囲において述べるものを、相互に、すなわちそれぞれの範囲と好ましい範囲とのあらゆる組合せで含む。
【0020】
本発明はさらに、本発明によるカルボジイミドの調製法にも関し、式(II)
【化2】
および/または式(III)
【化3】
の芳香族ジイソシアネートを、触媒および任意選択的に溶媒の存在下に、80℃〜200℃の温度で二酸化炭素を脱離させてカルボジイミド化させ、次いで、遊離のNCO基を、一級または二級のアミンまたはアルコールおよび/またはアルコキシポリオキシアルキレンアルコールを用いて末端官能化させる。
【0021】
好ましくは、式(II)および(III)のジイソシアネートの、好ましくは60:40〜95:5、特に好ましくは70:30〜90:10の比率の混合物を使用する。
【0022】
それらのジイソシアネートを調製するために必要な芳香族ジアミンは、当業者には公知のように、相当するトルエンジアミンと適切なアルケンまたはハロアルカンとのフリーデル−クラフツアルキル化反応により調製することができる。それらの芳香族ジアミンは市販されている化合物であり、たとえばLonza AGからLonzacure(登録商標)の商品名で入手することが可能である。
【0023】
次いでそれらのジアミンをホスゲンと反応させて、それらに対応するジイソシアネートを得る。
【0024】
本発明によるカルボジイミドを調製するためには、式(II)および/または(III)のジイソシアネートを、高温、好ましくは80〜200℃、特に好ましくは100〜180℃、特に好ましくは120〜140℃の温度で、適宜触媒の存在下に二酸化炭素を脱離させることにより縮合させればよい。この目的に適した方法は、たとえば、独国特許出願公開第A1130594号明細書および独国特許出願公開第A1564021号明細書に記載されている。
【0025】
本発明の一実施形態においては、式(I)の化合物を調製するための好適な触媒が、リン化合物である。使用されるリン化合物は、好ましくはホスホレンオキシド、ホスホリジン、またはホスホリンオキシド、およびそれらに相当するホスホレンスルフィドである。触媒としてはさらに、三級アミン、塩基性金属化合物、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の酸化物、水酸化物、アルコキシドまたはフェノキシド、金属のカルボン酸塩、および非塩基性の有機金属化合物を使用することも可能である。
【0026】
カルボジイミド化は、ニート(in substance)でも、溶媒中でも実施することができる。使用する溶媒は、好ましくはアルキルベンゼン、パラフィンオイル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、ケトン、またはラクトンである。
【0027】
その反応混合物が、n=0〜20、好ましくはn=1〜10の平均縮合度に相当する、所望のNCO基含量になったら、通常、ポリカルボジイミド化を停止させる。
【0028】
本発明の一実施形態においては、その反応混合物の温度を、この目的のために、50〜120℃、好ましくは60〜100℃、特に好ましくは80〜90℃に下げて、減圧下に触媒を蒸留除去する。本発明によるカルボジイミドの好ましい変法では、次いで、過剰のジイソシアネートを、150〜200℃、好ましくは160〜180℃の温度で蒸留除去する。次いで、カルボジイミドの遊離の末端イソシアネート基を、脂肪族および/または芳香族のアミン、アルコールおよび/またはアルコキシポリオキシアルキレンアルコールと、好ましくは−NH、−NHおよび/または−OH基をわずかに過剰にして、任意選択的に当業者には公知のPU触媒、好ましくはtert−アミンまたは有機スズ化合物、特に好ましくはDBTL(ジブチルスズジラウレート)またはDOTL(ジオクチルスズジラウレート)の存在下に反応させる。アミン、アルコールおよび/またはアルコキシポリオキシアルキレンアルコールのカルボジイミドに対する量比は、存在しているN=C=O基を基準にして、好ましくは1.005〜1.05:1、特に好ましくは1.01〜1.03:1である。
【0029】
好ましいアルコールは、エタノールおよびシクロヘキサノールである。
【0030】
本発明のさらなる実施形態においては、反応混合物の温度を、50〜120℃、好ましくは60〜100℃、特に好ましくは80〜90℃に下げてカルボジイミド化を中断させ、任意選択的に好ましくはアルキルベンゼンの群から選択される溶媒、特に好ましくはトルエンを添加した後に、カルボジイミドの遊離の末端イソシアネート基を、脂肪族および/または芳香族のアミン、アルコールおよび/またはアルコキシポリオキシアルキレンアルコールと、好ましくは−NH、−NHおよび/または−OH基をわずかに過剰にし、任意選択的に当業者には公知のPU触媒、好ましくはtert−アミンまたは有機スズ化合物、特に好ましくはDBTL(ジブチルスズジラウレート)またはDOTL(ジオクチルスズジラウレート)の存在下に、反応させる。アミン、アルコールおよび/またはアルコキシポリオキシアルキレンアルコールのカルボジイミドに対する量比は、存在しているN=C=O基を基準にして、好ましくは1.005〜1.05:1、特に好ましくは1.01〜1.03:1である。
【0031】
反応が完了したら、触媒および任意成分の溶媒を、減圧下、好ましくは80〜200℃の温度で蒸留除去する。
【0032】
好ましいアルコールは、エタノールおよびシクロヘキサノールである。
【0033】
本発明はさらに、本発明によるカルボジイミドを調製するためのさらなる方法にも関し、式(II)
【化4】
および/または式(III)
【化5】
の芳香族ジイソシアネートの中の遊離のNCO基を部分的、好ましくは50%未満を、一級または二級のアミンまたはアルコールおよび/またはアルコキシポリオキシアルキレンアルコールを用いて末端官能化し、次いで80℃〜200℃の温度で、触媒および任意選択的に溶媒の存在下に、二酸化炭素を脱離させてカルボジイミド化させる。
【0034】
本発明によるカルボジイミドは、それを調製した後に精製するのが好ましい。その粗反応生成物は、蒸留および/または溶媒抽出によって精製することができる。精製のために使用するのに好適な溶媒は、好ましくは、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、アルキルベンゼン、パラフィンオイル、アルコール、ケトン、またはエステルである。これらは、市販溶媒の形態をとる。
【0035】
本発明はさらに、以下のものを含むに組成物にも関する。
− 少なくとも1種のエステルベースのポリマー、
および
− 少なくとも1種の、本発明による式(I)のカルボジイミド。
【0036】
そのエステルベースのポリマーは、以下の形態をとっているのが好ましい:ポリエステルポリオール、エステルベースの熱可塑性ポリウレタン、エステルベースのポリウレタンエラストマーもしくはフォーム、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、コポリエステル、たとえば、シクロヘキサンジオールとテレフタル酸との変性ポリエステル(PCTA)、熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPE E)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリ乳酸(PLA)および/またはPLA誘導体、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリブチレンアジペートテレフタレ−ト(PBAT)、ポリブチレンスクシネート(PBS)、またはブレンド物、たとえば好ましくはPA/PETもしくはPHA/PLAブレンド物。これらは、市販ポリマーの形態をとる。
【0037】
本発明の特に好ましい実施形態においては、そのエステル基含有ポリマーが、ポリ乳酸(PLA)である。
【0038】
ここで、本発明による式(I)のカルボジイミドの、本発明による組成物中における濃度は、好ましくは0.1〜5重量%、好ましくは0.5〜3重量%、特に好ましくは1〜2重量%である。
【0039】
エステルベースのポリマーとしてのポリエステルポリオールは、2000まで、好ましくは500〜2000、より好ましくは500〜1000の分子量(単位:g/mol)を好ましくは有する長鎖化合物であるのが好ましい。
【0040】
本発明に関連して、「ポリエステルポリオール」という用語には、長鎖のジオールおよびトリオールの両方、さらには1分子あたり3個を超えるヒドロキシル基を有する化合物が包含されている。
【0041】
そのポリエステルポリオールが、200まで、好ましくは20〜150、より好ましくは50〜115のOH価を有しているのが有利である。特に好適なのは、各種のポリオールと芳香族または脂肪族のジカルボン酸との反応生成物、および/またはラクトンのポリマーであるポリエステルポリオールである。
【0042】
本発明に関連して、使用されるポリエステルポリオールは、市販の化合物であって、Bayer MaterialScience AG製のBaycoll(登録商標)またはDesmophen(登録商標)の商品名として得ることが可能である。
【0043】
本発明はさらに、R=−NHCOORIIIであり、RIIIが、C〜C22−アルキル、好ましくはC〜C−アルキル、特に好ましくはメチル、エチル、またはi−プロピル、C〜C12−シクロアルキル、特に好ましくはC−シクロアルキルに等しく、R、R、およびRがそれぞれ独立して、メチルまたはエチルであり、それぞれのベンゼン環が1個のみのメチル基を有し、n=0〜20、好ましくはn=1〜10、特に好ましくはn=3〜8である、本発明による式(I)のカルボジイミドを調製するための好ましい方法にも関し、その方法においては、カルボジイミド化および任意工程の精製の後に、その溶融物を、好ましくはペレット化ベルトの上で、ペレット化させる。この場合においては、一般的なペレット化システム、および同様に一般的な顆粒化システムを使用することができる。それらは、たとえばSandvik Holding GmbHまたはGMF Goudaから入手可能である。
【0044】
R=−NHCOORIIIであり、RIIIがシクロヘキシルである、本発明による式(I)のカルボジイミドが特に好ましい。
【0045】
本発明はさらに、エステルベースのポリオール、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、コポリエステル、たとえば、シクロヘキサンジオールとテレフタル酸との変性ポリエステル(PCTA)、熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPE E)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリ乳酸(PLA)および/またはPLA誘導体、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリブチレンアジペートテレフタレ−ト(PBAT)、ポリブチレンスクシネート(PBS)、ブレンド物、たとえばPA/PETまたはPHA/PLAブレンド物、トリグリセリド、好ましくはトリメチロールプロパントリオレエート(TMPオレエート)、潤滑剤産業におけるオイル配合物、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリウレタンエラストマー、PU接着剤、PUキャスティング樹脂、PUフォーム、または木材、皮革、人造皮革および織物のためのPUコーティングにおける加水分解からの保護剤としての、本発明によるカルボジイミドの使用にも関する。ここで特に好ましいのは、ポリ乳酸(PLA)における使用である。
【0046】
以下の実施例は、本発明を説明するためのものであるが、本発明を限定する効果は有していない。
【実施例】
【0047】
試験物質は以下のものであった:
1)CDI(A):約7.5重量%のNCN含量を有する液状カルボジイミドであって、1,3−ビス(1−メチル−1−イソシアナトエチル)ベンゼンをベースとし、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルのPEG 550 MMEを用いて末端官能化したものであって、欧州特許出願公開第A0628541号明細書の実施例2に従って調製したもの、比較例。
2)CDI(B):約6重量%のNCN含量を有し、n=約2である、式(I)の液状カルボジイミドであって、約80重量%の2,4−ジエチルトルエンジイソシアネート、すなわち式(II)のジイソシアネートと、20重量%の2,6−ジエチルトルエンジイソシアネート、すなわち式(III)のジイソシアネートとをベースとする混合物を反応させることによって得られ、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(PEG 550 MME、BASF SE製)を用いて末端官能化したもの、本発明実施例。
3)CDI(C):約14重量%のNCN含量を有する、極めて粘稠なカルボジイミドであって、80重量%の2,4−ジエチルトルエンジイソシアネート、すなわち式(II)のジイソシアネートと、20重量%の2,6−ジエチルトルエンジイソシアネート、すなわち式(III)のジイソシアネートとをベースとし、n>40であり、末端非官能化のもの(比較例)。
4)CDI(D):約13.5重量%のNCN含量を有する固体状のポリマー性カルボジイミドであって、トリイソプロピルフェニルジイソシアネートをベースとし、末端官能化されているもの(比較例)、Rhein Chemie Rheinau GmbHから商品名Stabaxol(登録商標)Pとして入手可能。
5)CDI(E):約10.8重量%のNCN含量を有する、モノマーの固体状カルボジイミド、2,6−ジイソプロピルフェニルイソシアネートをベースとするもの(比較例)、Rhein Chemie Rheinau GmbHから、商品名Stabaxol(登録商標)Iとして入手可能。
6)CDI(F):約12.5重量%のNCN含量を有する固体状カルボジイミド、約80重量%の2,4−ジエチルトルエンジイソシアネート、すなわち式(II)のジイソシアネートと、20重量%の2,6−ジエチルトルエンジイソシアネート、すなわち式(III)のジイソシアネートとをベースとし、エタノールを用いて末端官能化され、n=約6であるもの、本発明実施例。
7)CDI(G):約10.2重量%のNCN含量を有する固体状カルボジイミド、約80重量%の2,4−ジエチルトルエンジイソシアネート、すなわち式(II)のジイソシアネートと、20重量%の2,6−ジエチルトルエンジイソシアネート、すなわち式(III)のジイソシアネートとをベースとし、シクロヘキサノールを用いて末端官能化され、n=約5であるもの、本発明実施例。
エステルベースのポリマー:
8)アジピン酸をベースとするポリエステルポリオール(Desmophen(登録商標)2001KS、Bayer MaterialScience AG製)。
9)ポリエチレンテレフタレート(PET)、Novapetから入手可能。
10)ポリ乳酸(PLA、射出成形グレード)、NatureWorks LLCから入手可能。
【0048】
本発明のカルボジイミドCDI(B)の調製
焼出し(baked−out)を行い、窒素を充填した250mLの四口フラスコの中に、窒素気流下に、約20重量%の2,6−ジエチルトルエンジイソシアネートおよび約80重量%の2,4−ジエチルトルエンジイソシアネートからなる混合物92gを仕込んだ。50mgの1−メチルホスホレンオキシドを添加してから、その混合物を加熱して130℃とした。次いで、NCO含量が約12重量%になるまで、カルボジイミド化を130℃で続けた。次いで、真空下、約120℃の温度での蒸留で触媒を完全に除去してから、真空下、約180℃の温度で過剰のジイソシアネートを蒸留除去した。最後に、その反応混合物を冷却して約90〜100℃とし、末端のNCO基をPEG 500 MMEと反応させた。そのようにして得られた反応生成物は、淡黄色の液体で、約6重量%のNCN含量および約1.5の多分散性(Mw/Mn)を有していた。
【0049】
カルボジイミドCDI(C)の調製
焼出しをし、窒素を充填した250mLの四口フラスコの中に、窒素気流下に、約20重量%の2,6−ジエチルトルエンジイソシアネートおよび約80重量%の2,4−ジエチルトルエンジイソシアネートからなる混合物150gを仕込んだ。50mgの1−メチルホスホレンオキシドを添加してから、その混合物を加熱して180℃とした。次いで、NCO含量が1重量%未満になるまで、カルボジイミド化を180℃で続けた。そのようにして得られた反応生成物は、暗色で、粘着性が強く、固化させた溶融物は、約14重量%のNCN含量を有していた。
【0050】
本発明のカルボジイミドCDI(F)およびCDI(G)の調製:
焼出しをし、窒素を充填した250mLの四口フラスコの中に、窒素気流下に、約20重量%の2,6−ジエチルトルエンジイソシアネートおよび約80重量%の2,4−ジエチルトルエンジイソシアネートからなる混合物92gを仕込んだ。50mgの1−メチルホスホレンオキシドを添加してから、その混合物を加熱して130℃とした。次いで、NCO含量が約7〜9重量%になるまで、カルボジイミド化を130℃で続けた。次いで、真空下、約120℃の温度での蒸留で触媒を完全に除去してから、真空下、約180℃の温度で過剰のジイソシアネートを蒸留除去した。最後にその反応混合物を冷却して約70〜80℃とし、溶媒としてのトルエンを添加してから、末端のNCO基を、エタノール(CDI F)またはシクロヘキサノール(CDI G)と反応させた。蒸留によって溶媒を除去すると、約12.5重量%(CDI F)または10.2重量%(CDI G)のNCN含量および約1.8の多分散性(Mw/Mn)を有する固形物が得られた。
【0051】
熱安定性
80℃における熱安定性を検討するために、1重量%の上述のカルボジイミドを、約0.9mgKOH/gの初期酸価を有するポリエステルポリオールの中に混ぜ込み、その混合物をその温度でさらに3時間撹拌した。その気相について、GC−MSにより、解離物質(イソシアネート)を調べた。それらの結果を表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
表1から、本発明のカルボジイミドのCDI(B)が、CDI(A)に比肩しうる優れた熱安定性を有していることが明らかである。
【0054】
ポリエステルポリオール中における酸価の低下
公知であるように、液状のポリエステルポリオール中における、立体障害カルボジイミドをベースとする加水分解安定剤の効果は、酸価の低下によって試験することができる。
【0055】
本発明における組成物の中の酸価の低下を、Bayer MaterialScience AG)製のアジピン酸をベースとするポリエステルポリオール(Desmophen(登録商標)2001KSの中で、本発明のCDI(B)を使用し、従来技術から公知のCDI(A)と比較して試験した。
【0056】
この目的のためには、80℃で、1重量%の上述のカルボジイミドを、約0.9mgKOH/gの初期酸価を有するポリエステルポリオールの中に混ぜ込み、一定の間隔をおいて酸価を測定した。
【0057】
それらの結果を表2に示す。
【0058】
【表2】
【0059】
それらの結果から、本発明のカルボジイミドを用いたポリエステルポリオールの残存酸価が、驚くべきことには、従来技術から公知のCDI(A)を含む組成物よりも、NCN含量が低いにも関わらず、迅速に低下することがわかる。
【0060】
ポリエチレンテレフタレート(PET)中における加水分解からの保護
PET中における加水分解−安定化効果を評価するために、1.5重量%の検討対象のカルボジイミドをそれぞれ、実験室用二軸スクリューエクストルーダーZSK 25(Werner&Pfleiderer製)によりPETの中に分散させてから、下記の測定を行った。Arburg Allrounder 320S 150−500のタイプの射出成形機で得られたペレットから、引張強度を測定するために使用するF3標準試験片を調製した。
【0061】
加水分解試験のために、それらのF3標準試験片を110℃の温度の水蒸気の中で保存し、その引張強度を測定した(単位:MPa)。
【0062】
それらの結果を表3にまとめた。
【0063】
【表3】
【0064】
ポリ乳酸(PLA)における加水分解からの保護
PLA中における加水分解−安定化効果を評価するために、1.0または1.5重量%の検討対象のカルボジイミドをそれぞれ、実験室用二軸スクリューエクストルーダーZSK 25(Werner&Pfleiderer製)によりPLAの中に分散させてから、下記の測定を行った。Arburg Allrounder 320S 150−500のタイプの射出成形機で得られたペレットから、引張強度を測定するために使用するF3標準試験片を調製した。
【0065】
加水分解試験のために、それらのF3標準試験片を65℃の温度の水の中で保存し、その引張強度を測定した。
【0066】
それらの結果を表4にまとめた。
【0067】
【表4】
【0068】
表4におけるデータは、関連するCDIの1.0%/1.5%の値に対応している。
【0069】
表3および4の結果から、本発明によるカルボジイミドが、従来技術に比較して、PET中およびPLA中において加水分解に対する優れた保護性を示すことがわかる。それらはさらに、それらが、より有利な原料物質をベースとしており、かなり安価に製造することができるという点で有利である。
【0070】
固体状カルボジイミドのペレット化性能および計量性についての実験
各種の固体状カルボジイミドの仕上げ性、取り扱い性、および計量性を明らかにするために、外観、ペレット化性能、および軟化点について、それらを比較した。軟化点は、Kofflerバンクにより測定した。
【0071】
それらの結果を表5にまとめた。
【0072】
【表5】
【0073】
表5の結果から、ジエチルトルエンジイソシアネートをベースとし、エタノールまたはシクロヘキサノールを用いて末端キャップした、本発明によるカルボジイミドが、ジエチルトルエンジイソシアネート(末端非官能化)をベースとしたポリマー性カルボジイミドに比較して、重合度が低いにも関わらず、優れたペレット化能力および高い軟化点を有しており、そのため、エステルベースのポリマーの安定化において、仕上げ性および固形物の計量添加の面での優位性がもたらされることが明らかにわかる。