(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
[赤外反射性顔料]
本実施形態に係る赤外反射性顔料は、高い赤外光反射性と高い可視光透過性を兼ね備えた鱗片状(扁平状)の顔料である。本実施形態に係る赤外反射性顔料は、塗膜中に配合されたときに、塗膜面に対してその扁平面が平行になるように配向することで、より高い赤外反射性と高い可視光透過性を発現する。
本実施形態に係る赤外反射性顔料は、少なくとも1層の金属薄膜層と、少なくとも2層の透明な誘電体層と、を有する積層体を備える。
【0019】
図1は、本実施形態に係る赤外反射性顔料の断面構造を示す模式図である。
図1では、本実施形態に係る赤外反射性顔料の一例として、2層の金属薄膜層11と3層の透明な誘電体層12の計5層を有し、且つこれら金属薄膜層11と誘電体層12とが交互に積層されて構成された積層体13を備える赤外反射性顔料1を示している。
なお、本実施形態に係る赤外反射性顔料1の積層体13は、
図1に示す5層構造に限定されず、少なくとも1層の金属薄膜層11と、少なくとも2層の透明な誘電体層12とを有していればよく、層数は限定されないが、金属薄膜層11と誘電体層12が交互に積層されていることが好ましい。
【0020】
また本実施形態に係る赤外反射性顔料1は、
図1に示すように、積層体13の表面を被覆する表面処理層14と、表面処理層14を被覆する表面張力調整層15と、をさらに備えることが好ましい。
以下、金属薄膜層11、誘電体層12、表面処理層14及び表面張力調整層15の各層の構成について、詳細に説明する。
【0021】
金属薄膜層11は、赤外光を反射する機能を有する。本実施形態に係る赤外反射性顔料1は、この金属薄膜層11を有する積層体13を含んで構成されることで、高い赤外反射性を発現する。
【0022】
金属薄膜層11としては、銀、アルミニウム、銅、金、パラジウム、亜鉛、チタン、クロム及び珪素からなる群より選択される少なくとも1種からなることが好ましい。中でも、銀からなる金属薄膜層がより好ましく用いられる。
なお、金属薄膜層11を複数層有する場合、製造上の観点からは各金属薄膜層11を同一の材料から構成することが好ましいが、各金属薄膜層11を異なる材料から構成してもよい。
【0023】
金属薄膜層11の膜厚は、8〜20nmであることが好ましい。金属薄膜層11の膜厚が8nm未満であると、十分な赤外光反射性が得られなくなり、金属薄膜層11の膜厚が20nmを超えると、十分な可視光透過性が得られなくなる。より好ましい金属薄膜層11の膜厚は、10〜14nmである。
【0024】
誘電体層12は、透明であり、金属薄膜層11の可視光周辺域における反射防止層として機能する。即ち、誘電体層12は、可視光周辺域の入射光の透過率を向上させる機能を有する。本実施形態に係る赤外反射性顔料1は、この誘電体層12を有する積層体13を含んで構成されることで、高い可視光透過性を発現する。
【0025】
誘電体層12としては、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、二酸化ケイ素、酸化錫、錫添加酸化インジウム(ITO)及びアンチモン添加酸化錫(ATO)からなる群より選択される少なくとも1種からなることが好ましい。中でも、屈折率が最も高い二酸化チタンがより好ましく用いられる。
なお、製造上の観点から各誘電体層12を同一の材料から構成することが好ましいが、各誘電体層12を異なる材料から構成してもよい。
【0026】
誘電体層12の光学膜厚は、可視光周辺域の入射光の波長をλとしたときに、λ/4の整数倍±10nmである。言い換えれば、可視光周辺域の入射光の波長をλとし且つ誘電体層12の屈折率をnとしたときに、誘電体層12の膜厚は、λ/4nの整数倍±10nmである。誘電体層12の膜厚がλ/4nの整数倍±10nmであることにより、光干渉作用を利用して可視光の透過性を高めることができる。なお、可視光透過率の観点で、上記整数としては1〜4の整数が好ましい。
ここで、可視光周辺域の波長は、可視光域である380〜780nm及びその周辺域であり、具体的には180〜980nmが該当する。屈折率nは、例えばHORIBA製やJ.A.Woolam JAPAN製のエリプソメータにより測定可能である。
具体的には、例えば
図1に示す5層構造の赤外反射性顔料1では、中央に配置された誘電体層12の膜厚はλ/2n(光学膜厚はλ/2)であり、最も外側に配置された2つの誘電体層12の膜厚はλ/4n(光学膜厚はλ/4)である。
【0027】
表面処理層14は、積層体13の表面全体を被覆することで、赤外反射性顔料1が塗膜中に配合された場合に、樹脂が誘電体層12や金属薄膜層11と直接接触して劣化するのを抑制する機能を有する。より詳しくは
図1に示すように、積層体13をそのまま塗膜中に配合した場合には、積層体13の最も外側(
図1中の最下層と最上層)の2つの誘電体層12や、積層体13の積層方向に直交する方向の各層の両端面部(以下、単に端面部という。)は、樹脂に直接接触する。すると、各層を構成する金属が樹脂と直接接触することになるため、かかる金属の作用によって樹脂が酸化する等して劣化し、耐候性を損ねる。この点、本実施形態によれば、表面処理層14が積層体13の表面全体を被覆することで、金属と樹脂が直接接触するのを回避でき、樹脂の劣化を抑制でき、耐候性に優れた赤外反射性塗膜を得ることができる。
【0028】
特に、誘電体層12を二酸化チタンで構成した場合には、積層体13をそのまま塗膜中に配合すると、二酸化チタンが樹脂と直接接触することで、二酸化チタンの光触媒作用によって樹脂の劣化が促進される。この点、本実施形態によれば、表面処理層14が積層体13の表面全体を被覆することで、二酸化チタンと樹脂が直接接触するのを回避でき、光触媒作用による樹脂の劣化の促進を抑制できる。
【0029】
表面処理層14としては、透明で屈折率が低いものが好ましく、具体的には酸化アルミニウム、シリカ及び酸化ジルコニウムからなる群より選択される少なくとも1種からなることが好ましい。これらのうち、赤外反射性及び可視光透過性の観点から、酸化アルミニウムが最も好ましく、次いでシリカが好ましく用いられる。この好ましい順列は、表面処理層14を被覆する後述の表面張力調整層15を構成するステアリン酸等の表面張力調整剤の吸着度合の順列に起因する。即ち、酸化アルミニウムは、ステアリン酸等の表面張力調整剤が最も吸着し易いため、表面張力調整層15の吸着性下地としても機能し得る。
【0030】
表面処理層14の膜厚は、1〜15nmであることが好ましい。表面処理層14の膜厚がこの範囲内であることにより、本発明の赤外反射性顔料の光学的特性を損ねることなく、上述の樹脂の劣化抑制効果や表面張力調整層の下地としての機能が確実に発揮される。より好ましい膜厚は5〜10nmである。
【0031】
表面張力調整層15は、表面処理層14の表面全体を被覆することで、赤外反射性顔料1が塗膜中に配合された場合に、赤外反射性顔料1の塗膜表面への移動を促進する機能を発現する。これにより、鱗片状(扁平状)の赤外反射性顔料の扁平面が塗膜表面に配向される結果、高い赤外反射性及び可視光透過性が得られる。
【0032】
表面張力調整層15は、ステアリン酸を含む表面張力調整剤からなることが好ましい。表面張力調整剤としては、ステアリン酸以外に、オレイン酸、ホスホン酸、リン酸エステル等を含んでいてもよい。ステアリン酸以外の表面張力調整剤を併用することにより、塗膜表面への移動を制御することができる。例えば、顔料が塗膜表面に表出しない程度にすることで、塗膜の光沢の維持や、顔料の塗膜からの剥離を防ぐことができる。
【0033】
次に、本実施形態に係る赤外反射性顔料1の製造方法について説明する。
[第1製造方法]
図2は、本実施形態に係る赤外反射性顔料1の第1製造方法を示す図である。
図2に示すように、赤外反射性顔料1の第1製造方法は、支持体10上に金属薄膜層11及び誘電体層12からなる積層体13を形成する工程(以下、金属薄膜層及び誘電体層形成工程という)と、当該積層体13を支持体10から剥離する工程(以下、剥離工程という)と、当該積層体13を粉砕する工程(以下、粉砕工程という)と、を有する。
【0034】
先ず、金属薄膜層及び誘電体層形成工程では、支持体10の一方側の面(
図2では上面)上に、金属薄膜層及び誘電体層を交互に形成することで積層体13とする。
支持体10としては、透明でも不透明でもよく、金属材料、高分子材料、酸化物材料、ガラス等が用いられる。
【0035】
金属材料としては、支持体等の用途に一般的に使用される金属材料が用いられる。具体的には、SUS304、SUS316、SUS316L、SUS420J2、SUS630等の各種ステンレス鋼(SUS)、金、白金、銀、銅、ニッケル、コバルト、チタン、鉄、アルミニウム、スズあるいはニッケル−チタン(Ni−Ti)合金、ニッケル−コバルト(Ni−Co)合金、コバルト−クロム(Co−Cr)合金、亜鉛−タングステン(Zn−W)合金等の各種合金、各種セラミックス材料等の無機材料、さらには金属−セラミックス複合体等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0036】
高分子材料としては、種々の樹脂フィルムを用いることができる。その具体例としては、ポリオレフィンフィルム(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステルフィルム(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリ塩化ビニル、三酢酸セルロース、水溶性フィルム(天然由来のデンプン、ゼラチン、半合成のカルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース(MC)等のセルロース誘導体から、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸系ポリマー、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリエチレンオキシド(PEO))等を用いることができ、好ましくはポリエステルフィルム、水溶性フィルムが用いられる。ポリエステルフィルム(以下、ポリエステルという。)としては、ジカルボン酸成分とジオール成分を主要な構成成分とするフィルム形成性を有するポリエステルであることが好ましい。
【0037】
上述のポリエステルの中でも、透明性、機械的強度、寸法安定性等の観点から、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸や2,6−ナフタレンジカルボン酸が好ましく、ジオール成分として、エチレングリコールや1,4−シクロヘキサンジメタノールを主要な構成成分とするポリエステルが好ましい。中でも、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートを主要な構成成分とするポリエステルや、テレフタル酸と2,6−ナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールとからなる共重合ポリエステル、及びこれらのポリエステルの2種以上の混合物を主要な構成成分とするポリエステルが好ましい。
【0038】
酸化物材料としては、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、二酸化ケイ素等が用いられる。
【0039】
支持体10の厚みは、0.01〜10mmであることが好ましく、より好ましくは0.05〜5mmである。支持体10は、2枚以上を重ねたものであってもよく、このとき、支持体10の種類は同一でも異なっていてもよい。
【0040】
なお、支持体10として水溶性フィルム以外の材料を用いた場合には、支持体10の表面には、アクリル酸エステル共重合樹脂を原料とした剥離層を設けることが好ましい。剥離層の形成方法については従来公知の方法でよく、例えばバーコーター法、ディッピング法、スピンコーター法、スプレー法等により塗布される。支持体10の表面に剥離層を設けることにより、後述の剥離工程において、金属薄膜層11及び誘電体層12を有する積層体13を支持体10から容易に剥離できる。
【0041】
金属薄膜層11及び誘電体層12は、それぞれ化学気相蒸着法(CVD)、スパッタリング法、溶液塗布法、電子ビーム蒸着法(EB)、イオンプレーティング法、ディッピング法、スプレー法等により、支持体10上に形成される。中でも、化学気相蒸着法(CVD)、スパッタリング法及び溶液塗布法が好ましく用いられる。
【0042】
化学気相蒸着法(CVD)及びスパッタリング法では、従来公知の条件により、金属薄膜層11及び誘電体層12を有する積層体13を形成できる。
【0043】
溶液塗布法としては、金属薄膜層11の構成材料を含む金属含有溶液、誘電体層12の構成材料を含む誘電体含有溶液を調製し、これらを交互に塗布及び乾燥することにより、金属薄膜層11及び誘電体層12を有する積層体13を形成できる。
塗布方法としては、例えば、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、スライド型カーテン塗布法、スライドホッパー(スライドビード)塗布法、エクストルージョンコート法等が挙げられる。
金属薄膜溶液及び誘電体溶液の塗布量は、乾燥後の膜厚が上述の金属薄膜層11及び誘電体層12の各層の好ましい膜厚の範囲内となるように、適宜設定される。
【0044】
次いで、剥離工程では、金属薄膜層11及び誘電体層12を有する積層体13を、支持体10から剥離する。
例えば、後述するように超音波水浴中に浸漬させることにより、支持体10から積層体13を剥離することができる。上述したように、支持体10として水溶性フィルム以外の材料を用いた場合には、支持体10の表面に剥離層を設けることで、支持体10上に形成した積層体13を容易に剥離できる。また、支持体10として水溶性フィルムを用いた場合には、水中に浸漬するだけで支持体10が溶解し、容易に積層体13を剥離することができる。
【0045】
次いで、粉砕工程では、支持体10から剥離した金属薄膜層11及び誘電体層12を有する積層体13を、所望の大きさに粉砕する。
粉砕方法としては、例えば、粉砕機による機械的粉砕、振動ミル、ボールミル、ジェットミル等を用いた湿式粉砕、乾式粉砕が用いられる。湿式粉砕する場合、溶媒としては、積層体13の構成成分が溶解しない溶媒であればよく、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、エチレングリコール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類;クロロホルム、塩化メチレン等のハロゲン化物;ブタン、ヘキサン等のオレフィン類;テトラヒドロフラン(THF)、ブチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;ベンゼン、キシレン、トルエン等の芳香族類;N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)等のアミド類;及びこれらの混合溶媒であってもよい。乾式で粉砕する際には、積層体13を液体窒素等で冷却して、硬い状態としてから粉砕してもよい。
【0046】
また、超音波水浴中での粉砕法を用いてもよい。この粉砕法では、支持体10上に形成された積層体13を超音波水浴槽に浸漬させることにより、支持体10から積層体13を剥離させた後、剥離した積層体13を超音波で粉砕する。
【0047】
粉砕工程後、所望の粒子径となるように分級することが好ましい。分級の方法としては、従来公知の乾式分級機等が用いられる。例えば、ふるい網を用いたふるい分け機、水平流型や上昇流型等による沈降速度と上昇流速度との差によって粗粒と微粉末とを分級する重力分級機、遠心力場における粒子の沈降を利用する遠心分級機、粒子を含んだ気流の方向を急変させて慣性の大きい粒子を流線からはずして分級する慣性分級機等が用いられる。
【0048】
粉砕・分級後の赤外反射性顔料1の平均粒径としては、数平均粒子径D
50が0.5〜50μmであることが好ましく、1〜20μmであることがより好ましい。数平均粒子径D
50は、例えばフロー式粒子像分析装置「FPIA−3000」を用いた画像解析法により測定可能である。
【0049】
得られた赤外反射性顔料1は、粉砕工程の後、表面処理層形成工程を行うことが好ましく、さらに表面張力調整層形成工程を行なうことが好ましい。
【0050】
表面処理層形成工程では、粉砕工程で粉砕した赤外反射性顔料1の表面上に、該表面全体を被覆する表面処理層14を形成する。
表面処理層14の形成方法としては、例えば、加熱分解法、中和加水分解法、ゾルゲル法等が挙げられる。これらの方法により、積層体13の端面部にも均一に表面処理層14が形成され、赤外反射性顔料1の表面全体を表面処理層14で被覆できる。
【0051】
具体的には、例えば、粉砕して得られた赤外反射性顔料1を蒸留水中に分散させてスラリーを調製し、該スラリーにアルミン酸ナトリウム水溶液を添加する。添加の間中、硫酸を添加することにより、スラリーのpHを約6.5に維持する。アルミン酸ナトリウム水溶液を添加完了後、濾別し、水で洗浄することで、酸化アルミニウムからなる表面処理層14で表面全体が被覆された赤外反射性顔料1が得られる。
また、ゾルゲル法では、有機金属化合物等の溶液を加水分解・重縮合させ、ゾルを形成した後にゲル化する。その後、加熱することにより、金属酸化物からなる表面処理層14が得られる。
【0052】
表面張力調整層形成工程では、表面処理層14で被覆した赤外反射性顔料1の表面に表面張力調整層15を形成する。
表面張力調整層15の形成方法としては、従来公知の浸漬法が用いられる。具体的には、例えば、ステアリン酸と石油蒸留物を含む溶液中に、表面処理層14が形成された積層体13を分散させ、超音波バス中で処理する。次いで、分散物を吸引濾過して溶媒で洗浄した後、乾燥する。これにより、積層体13の表面に形成された表面処理層14を被覆する表面張力調整層15が得られる。
【0053】
[第2製造方法]
図3は、本実施形態に係る赤外反射性顔料1の第2製造方法を示す図である。
図3に示すように、赤外反射性顔料1の第2製造方法は、支持体10A上に、金属薄膜層及び誘電体層を形成することで積層体13を得る工程(以下、金属薄膜層及び誘電体層形成工程という)と、支持体10Aを含む積層体13を粉砕する工程(以下、粉砕工程という)と、を有する。第2製造方法は、剥離工程を設けず、支持体10Aが赤外反射性顔料1の一部を構成する点において、第1製造方法と相違する。
【0054】
支持体10Aとしては、第1製造方法で列挙した材料のうち、透明なものが用いられる。具体的には、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化錫、錫添加酸化インジウム(ITO)、アンチモン添加酸化錫(ATO)、酸化ジルコニウム、二酸化ケイ素、ガラス等からなる透明なものが用いられる。なお、剥離工程を設けないため、支持体10Aの表面には剥離層は不要である。
【0055】
支持体10Aの厚みとしては、金属薄膜層及び誘電体層形成工程においては薄膜形成基材として機能し、且つ、粉砕工程においては容易に粉砕できるという観点で、0.05〜100μmが好ましく、0.1〜50μmがより好ましい。
【0056】
ここで、支持体10Aとして、誘電体層12として機能する誘電体薄板10aを用いてもよい。この場合、誘電体層12を構成し得る材料で透明なものが用いられる。具体的には、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、二酸化ケイ素等からなる透明なものが用いられる。誘電体薄板10aの厚みは、上記支持体10Aの厚みの条件を満たし、且つ、誘電体層12として機能する厚みであるものである。具体的には、可視光周辺域の入射光の波長をλとし且つ誘電体薄板10aの屈折率をnとしたときに、誘電体薄板10aの厚みは、λ/4nの整数倍±10nmである。
【0057】
本実施形態では、金属薄膜層及び誘電体層形成工程で金属薄膜層11及び誘電体層12を支持体10Aの両面に形成する。金属薄膜層11及び誘電体層12の形成方法自体は、第1製造方法と同様である。例えば、支持体10Aの両面に、金属薄膜層11を形成した後、誘電体層12を形成する。これにより、
図1に示す積層体13のうち、5層構造の真ん中の第3層目の誘電体層12が支持体10Aで構成された積層体13が得られる。なお、本実施形態では支持体10Aの両面に金属薄膜層及び誘電体層を形成したが、片面にのみ形成してもよい。
【0058】
次いで、得られた積層体13を粉砕することで、赤外反射性顔料1Aを得ることができる。赤外反射性顔料1Aは、粉砕工程の後、表面処理層形成工程を行なうことが好ましく、さらに、表面張力調整層形成工程を行うことが好ましい。
粉砕工程、表面処理層形成工程及び表面張力調整層形成工程は、第1製造方法と同様である。
【0059】
[赤外反射性塗料組成物]
本実施形態に係る赤外反射性塗料組成物は、上述の赤外反射性顔料1を含有する塗料組成物である。
本実施形態に係る赤外反射性塗料組成物は、上述の赤外反射性顔料1と、樹脂成分と、を主成分として含有する。塗料タイプとしては、有機溶剤型塗料、NAD系、水性塗料、エマルション塗料、コロイダル塗料、紛体塗料等が挙げられる。本実施形態に係る赤外反射性塗料組成物は、従来公知の方法により製造される。
【0060】
赤外反射性顔料1としては、上述のものが用いられる。本実施形態に係る赤外反射性塗料組成物における赤外反射性顔料1の含有量は、顔料面密度が100〜300%となる含有量であることが好ましい。顔料面密度(%)とは、赤外反射性顔料が互いに重なり合わずに一つの面上に配列した状態で当該塗装面を過不足なく覆い尽くす含有量に対して、実際に含まれる赤外反射性顔料の含有量の質量割合(%)である。具体的には、以下の式により算出される。
[数1]
顔料面密度(%)=WCA(cm
2/g)×PWC(%)×塗膜比重(g/cm
3)×膜厚(cm)
【0061】
ここで、WCAとは、1g当たりの水面拡散面積を表し、JIS−K5906:1998に準拠した方法に従って求める。なお、PWCは、以下の式により算出する。
[数2]
PWC(%)=顔料/(樹脂固形分+不揮発成分(添加剤等)+顔料)
【0062】
溶剤を含む場合、かかる溶剤としては、塗布方法、成膜条件、支持体に対する溶解性等を考慮して適宜選定することができる。例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノール等のアルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、プロピオン酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル類;ジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1、3−ブチレングリコール、ペンタメチレングリコール、1、3−オクチレングリコール等のグリコール誘導体;ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルフォキシド(DMSO)、N−メチルピロリドン(NMP)等のアミド類;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、メシチレン、ドデシルベンゼン等のベンゼン誘導体;クロロホルム、ジクロロメチレン等のハロゲン系溶媒;等が挙げられる。
【0063】
樹脂成分としては、例えば、(a)アクリル樹脂、(b)ポリエステル樹脂、(c)アルキド樹脂、(d)フッ素樹脂、(e)エポキシ樹脂、(f)ポリウレタン樹脂、(g)ポリエーテル樹脂等を挙げることができ、これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。特に、耐候性、密着性の点から、アクリル樹脂及びポリエステル樹脂が好ましく用いられる。
【0064】
(a)アクリル樹脂としては、アクリル系モノマーと他のエチレン性不飽和モノマーとの共重合体を挙げることができる。共重合体に使用し得るアクリル系モノマーとしては、アクリル酸又はメタクリル酸のメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、2−エチルヘキシル、ラウリル、フェニル、ベンジル、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル等のエステル化物類、アクリル酸又はメタクリル酸2−ヒドロキシエチルのカプロラクトンの開環付加物類、アクリル酸又はメタクリル酸グリシジル、アクリルアミド、メタクリルアミド及びN−メチロールアクリルアミド、多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル等を挙げることができる。エチレン性不飽和モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、イタコン酸、マレイン酸、酢酸ビニル等を挙げることができる。
【0065】
(b)ポリエステル樹脂としては、飽和ポリエステル樹脂や不飽和ポリエステル樹脂を挙げることができ、具体的には、例えば多塩基酸と多価アルコールを加熱縮合して得られた縮合物を挙げることができる。多塩基酸としては、飽和多塩基酸及び不飽和多塩基酸を挙げることができ、飽和多塩基酸としては、例えば、無水フタル酸、テレフタル酸、コハク酸等を挙げることができ、不飽和多塩基酸としては、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸等を挙げることができる。多価アルコールとしては、例えば、二価アルコール、三価アルコール等を挙げることができ、二価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール等を挙げることができ、三価アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン等を挙げることができる。
【0066】
(c)アルキド樹脂としては、前記多塩基酸と多価アルコールに、さらに油脂及び油脂脂肪酸(大豆油、アマニ油、ヤシ油、ステアリン酸等)、天然樹脂(ロジン、コハク等)等の変性剤を反応させて得られたアルキド樹脂を用いることができる。
【0067】
(d)フッ素樹脂としては、フッ化ビニリデン樹脂及び四フッ化エチレン樹脂のいずれか又はこれらの混合体、フルオロオレフィンとヒドロキシ基含有の重合性化合物及びその他の共重合可能なビニル系化合物からなるモノマーを共重合させて得られる各種フッ素系共重合体からなる樹脂を挙げることができる。
【0068】
(e)エポキシ樹脂としては、ビスフェノールとエピクロルヒドリンの反応によって得られる樹脂等を挙げることができる。ビスフェノールとしては、例えば、ビスフェノールA、Fを挙げることができる。ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、エピコート828、エピコート1001、エピコート1004、エピコート1007、エピコート1009を挙げることができる。
【0069】
(f)ポリウレタン樹脂としては、アクリル、ポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネート等の各種ポリオール成分と、ポリイソシアネート化合物とによって得られるウレタン結合を有する樹脂を挙げることができる。前記ポリイソシアネート化合物としては、2、4−トリレンジイソシアネート(2、4−TDI)、2、6−トリレンジイソシアネート(2、6−TDI)、及びその混合物(TDI)、ジフェニルメタン−4、4’−ジイソシアネート(4、4’−MDI)、ジフェニルメタン−2、4’−ジイソシアネート(2、4’−MDI)、及びその混合物(MDI)、ナフタレン−1、5−ジイソシアネート(NDI)、3、3’−ジメチル−4、4’−ビフェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ジシクロへキシルメタン・ジイソシアネート(水素化HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、水素化キシリレンジイソシアネート(HXDI)等を挙げることができる。
【0070】
(g)ポリエーテル樹脂としては、エーテル結合を有する重合体又は共重合体であり、ポリオキシエチレン系ポリエーテル、ポリオキシプロピレン系ポリエーテル、もしくはポリオキシブチレン系ポリエーテル、又はビスフェノールAもしくはビスフェノールF等の芳香族ポリヒドロキシ化合物から誘導されるポリエーテル等の1分子当たりに少なくとも2個の水酸基を有するポリエーテル樹脂を挙げることができる。また、前記ポリエーテル樹脂とコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸等の多価カルボン酸類、あるいは、これらの酸無水物等の反応性誘導体とを反応させて得られるカルボキシル基含有ポリエーテル樹脂を挙げることができる。
【0071】
以上述べた樹脂成分には、硬化タイプとラッカータイプがあるが、いずれでもよい。硬化タイプの場合には、アミノ樹脂、(ブロック)ポリイソシアネート化合物、アミン系、ポリアミド系、多価カルボン酸等の架橋剤と混合して用いられ、加熱することにより、又は常温で硬化反応を進行させることができる。また、ラッカータイプの樹脂成分と、硬化タイプの樹脂成分とを併用することもできる。
【0072】
本実施形態に係る赤外反射性塗料組成物は、塗装時の塗料固形分(NV)が1〜90質量%であることが好ましい。塗料固形分がこの範囲内であることにより、塗装後の乾燥工程における塗膜収縮に伴い、赤外反射性顔料を高配向に配列、即ち被塗装面に対して平行に配向することができ、高い赤外反射性と高い可視光透過性が得られる。より好ましい塗料固形分は、1〜60質量%である。
【0073】
なお、本実施形態に係る赤外反射性塗料組成物は、タレ防止剤、粘度調整剤、沈降防止剤、架橋促進剤、硬化剤、レベリング剤、表面調整剤、消泡剤、可塑剤、防腐剤、防カビ剤、紫外線安定剤等を含有することができる。
【0074】
得られた赤外反射性塗料組成物を塗装することによって、赤外反射性塗膜を得ることができる。
【0075】
本実施形態に係る赤外反射性塗料組成物では、塗装方法は限定されない。例えば、アプリケータやバーコーターの他に、刷毛やスプレー、ローラーで塗装してもよい。
本実施形態に係る赤外反射性塗料組成物を塗装する際、前述の通り、塗装時の塗料固形分を調整し、赤外反射性塗膜収縮により本発明の赤外反射性顔料が高配向に配列するようにすることが好ましい。
【0076】
赤外反射性塗膜の膜厚は、乾燥膜厚で0.5〜100μmが好ましく、1〜50μmがより好ましい。0.5μm未満であると、乾燥時の溶剤蒸発に伴う対流が弱く、顔料が塗膜表面に配向し難くなる。100μmを超えると、ダレやワキ等の塗膜欠陥が生じやすくなる。
赤外反射性塗料組成物を塗装した後の乾燥工程は、本発明の赤外反射性顔料を高配向に配列する観点で、60〜200℃が好ましく、80〜160℃がより好ましい。
【0077】
得られる赤外反射性塗膜は、赤外線反射性に優れるだけでなく、可視光透過率に極めて優れるものである。日射取得率については、熱の遮蔽効果が小さく遮熱性が十分でない基準として、0.7以下を評価基準とする。即ち、日射取得率は、好ましくは0.7以下であり、より好ましくは0.6以下である。
【0078】
可視光透過率については、自動車フロントガラスの保安基準として規定されている70%以上を評価基準とする。即ち、可視光透過率は、好ましくは70%以上であり、より好ましくは80%以上である。
可視光透過率及び日射取得率の測定は、JIS−R3106:1998「板ガラス類の透過率・反射率・放射率・日射熱取得率の試験方法」に準拠した方法に従って実施することができる。
【0079】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
【実施例】
【0080】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、特に断りのない限り「部」及び「%」は、質量基準である。
【0081】
[実施例1〜13、比較例1〜4]
表1に示す配合に従って、実施例1〜13及び比較例1〜4の赤外反射性塗料組成物を調製した。実施例1〜3、5〜11、13及び比較例1〜4は、上述の第1製造方法により赤外反射性顔料1を調製し、実施例4、12は、上述の第2製造方法により赤外反射性顔料1Aを調製した。
【0082】
<第1製造方法:赤外反射性顔料1の製造(実施例1〜3、5〜11、13及び比較例1〜4)>
先ず、支持体10として、50×50×2mmのガラス板(TP技研製)に、アクリル樹脂(アクリディック A−1371 DIC社製)を酢酸ブチルを用いて10質量%(固形分換算)となるように調製した後、スピンコーターにて乾燥膜厚が1μmとなるように塗布した。その後、80℃で15分間乾燥し、剥離層を形成した。
【0083】
次いで、上記剥離層上に、表1に示した誘電体層又は金属薄膜層を第1層から最大第7層まで、交互に形成して、積層体13を形成した。誘電体層及び金属薄膜層は、アルバック社製真空蒸着装置(型番:EX−200)を用いて、電子ビーム法によって形成した。
【0084】
次いで、アセトンに上記積層体13を30分間浸漬して剥離層を溶解させて剥離し、超音波粉砕を行ない、数平均粒子径D
50が5μmである赤外反射性顔料を得た。
【0085】
次いで、上述のようにして得た赤外反射性顔料を吸引濾過した後、蒸留水に入れ、45〜70℃とし、撹拌しながら、顔料に対して4質量%となるようにアルミン酸ナトリウムを加えた。その際、硫酸を用いて、スラリーのpHを6〜9に保持した。酸化アルミニウムの表面処理層が形成された赤外反射性顔料を、濾過して洗浄し、乾燥した。
【0086】
次いで、さらに、表面処理層が形成された赤外反射性顔料を、ステアリン酸を3質量%加えた酢酸エチルに浸漬し、超音波処理し、表面張力調整層15を形成した。以上により、赤外反射性顔料1を得た。
【0087】
<第2製造方法:赤外反射性顔料1Aの製造(実施例4、12)>
支持体10Aとして、50mm×50mm×0.5μmの天然マイカ板(ヤマグチマイカ社製)を用い、基材の両面に、誘電体層及び金属層を設けたこと以外は、実施例1と同様にし、赤外反射性顔料1Aを得た。
【0088】
<誘電体層及び金属薄膜層の膜厚>
実施例1〜13及び比較例1〜4では、可視光周辺域の入射光の波長λを300nmとし、表1に示した膜厚となるように、誘電体層及び金属薄膜層を形成した。
具体的には、誘電体層に用いた二酸化チタン(ルチル型)、酸化亜鉛及びITOの光学膜厚と実際の膜厚は、以下の表2に示した通りである。他の誘電体層及び金属薄膜層の光学膜厚も、同様にλ/4を算出してλ/4の整数倍±10nmとなるようにして、実際の膜厚を設定した。
なお、膜厚制御は、水晶発振式製膜コントローラ(アルバック社製「CRTM−6000G」)にて行った。
【0089】
次いで、調製した各赤外反射性顔料と酢酸エチルとを混合し、撹拌した後、DIC社製アクリル樹脂「アクリディックA405」を顔料面密度が表1の通りになるように添加して、撹拌し、塗料固形分が40質量%の各赤外反射性塗料組成物を得た。各実施例及び比較例の赤外反射性顔料のWCAは表1に記載した通りであり、実施例1〜13及び比較例1〜4のいずれも、塗膜比重が1.4(g/cm
3)、膜厚が30μm(30×10
−4cm)であった。
【0090】
次いで、ガラス板に8MILのアプリケータを用いて、各赤外反射性塗料組成物を塗布した。塗布量は、乾燥後の塗膜厚が30μmとなるように調整した。塗布後、室温で10分間静置した後、110℃で15分間乾燥させた。これにより、各赤外反射性塗膜を得た。
【0091】
[可視光透過率、日射取得率]
各実施例及び比較例の赤外反射性塗膜について、可視光透過率及び日射取得率の測定を実施した。可視光透過率及び日射取得率の測定は、JIS−R3106:1998「板ガラス類の透過率・反射率・放射率・日射熱取得率の試験方法」に準拠した方法に従って実施した。測定に用いた分光光度装置は、島津製作所社製の分光光度計(型番:UV3600)であった。結果を表1に示した。
【0092】
[耐候性]
各実施例及び比較例の赤外反射性塗膜について、超促進耐候性(SUV)試験を実施した。試験後の塗膜を、目視にて劣化度合いを評価した。試験条件及び評価基準は以下の通りとした。結果を表1に示した。
(試験条件)
測定試験機:サンシャインウェザーメーター「S80−B−H」
光照射強度:850W/cm
2
照射時間:600時間
(評価基準)
3:外観上、問題が無い。
2:塗膜外観が若干白ボケて半透明であり、やや劣化が見られる。
1:塗膜外観が白ボケて透明性が失われており、劣化が見られる。
【0093】
【表1】
【0094】
【表2】
【0095】
表1に示したように、比較例1〜4いずれにおいても、可視光透過率が評価基準の70%以上であり且つ日射取得率が評価基準の0.7以下である塗膜は得られないことが分かった。これに対して、実施例1〜13いずれにおいても、可視光透過率が70%以上であり且つ日射取得率が0.7以下である塗膜が得られることが分かった。この結果から、少なくとも1層の金属薄膜層と、少なくとも2層の透明な誘電体層と、を有する積層体を備え、可視光周辺域の入射光の波長をλ(本実施例では300nm)とし且つ誘電体層の屈折率をnとしたときに、誘電体層の膜厚が(λ/4nの整数倍)±10nm(光学膜厚が(λ/4の整数倍)±10nm)である鱗片状の赤外反射性顔料によれば、高い赤外光反射性と高い可視光透過性が得られることが確認された。
【0096】
また、表面処理層を有する実施例1〜6、10〜12は、表面処理層を有さない実施例7〜9、13と比べて、優れた耐候性が得られることが分かった。この結果から、積層体の表面を被覆し且つ酸化物からなる表面処理層を備える本発明の赤外反射性顔料によれば、樹脂の劣化を抑制でき、優れた耐候性が得られることが確認された。
【0097】
また、表面張力調整層を有する実施例1〜8、10〜13は、表面張力調整層を有さない実施例9と比べて、より高い可視光透過率が得られることが分かった。この結果から、表面処理層の表面を被覆し且つ表面張力調整剤からなる表面張力調整層をさらに備える本発明の赤外反射性顔料によれば、より高い可視光透過率が得られることが確認された。