特許第6162906号(P6162906)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東海光学株式会社の特許一覧 ▶ ミヨシ油脂株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6162906
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】プラスチックレンズ
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/00 20060101AFI20170703BHJP
   G02B 5/22 20060101ALI20170703BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20170703BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20170703BHJP
   C08L 81/02 20060101ALI20170703BHJP
   C08K 5/3475 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
   G02C7/00
   G02B5/22
   C08L101/00
   C08L75/04
   C08L81/02
   C08K5/3475
【請求項の数】13
【全頁数】43
(21)【出願番号】特願2016-549587(P2016-549587)
(86)(22)【出願日】2015年10月21日
(86)【国際出願番号】JP2015079745
(87)【国際公開番号】WO2016174788
(87)【国際公開日】20161103
【審査請求日】2016年8月4日
(31)【優先権主張番号】特願2015-93685(P2015-93685)
(32)【優先日】2015年4月30日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000219738
【氏名又は名称】東海光学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000114318
【氏名又は名称】ミヨシ油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093230
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 利夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174702
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 拓
(72)【発明者】
【氏名】獅野 裕一
(72)【発明者】
【氏名】小野 信吾
(72)【発明者】
【氏名】河合 功治
(72)【発明者】
【氏名】金子 恒太郎
(72)【発明者】
【氏名】金子 信裕
【審査官】 池田 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特表平06−505744(JP,A)
【文献】 特表平06−505743(JP,A)
【文献】 特開2002−122731(JP,A)
【文献】 特開平08−067813(JP,A)
【文献】 特開平05−197075(JP,A)
【文献】 特開平10−140089(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0092831(US,A1)
【文献】 特開2006−235587(JP,A)
【文献】 特開2005−292240(JP,A)
【文献】 特開2011−121214(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 7/00
C08K 5/3475
C08L 75/04
C08L 81/02
C08L 101/00
G02B 5/22
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I):
【化1】
(式中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、芳香族基、不飽和基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、及びハロゲン原子から選ばれる1価の基を示す。は、下記式(i−1):
【化3】
(式中、R11はnが2以上の場合はそれぞれ独立に芳香族基、不飽和基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、及びハロゲン原子から選ばれる1価もしくは2価の基で、水素原子が置換されるか、両端の少なくともいずれかが中断されるか、又は炭素−炭素結合が中断されていてもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基を示し、R12は水素原子を示すか、又は−R13−Hで表される基(R13は芳香族基、不飽和基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、及びハロゲン原子から選ばれる1価もしくは2価の基で、水素原子が置換されるか、基端が中断されるか、又は炭素−炭素結合が中断されていてもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基を示す。)を示す。n個のR11とR12の総炭素数は30以下である。nは0〜3の整数を示す。)で表わされる1価の硫黄含有基を示す。)で表わされる紫外線吸収剤と、樹脂材料とを含み、
式(I)の紫外線吸収剤は、100μMクロロホルム溶液における光の吸収ピークが350〜390nmにあり、その波長領域にある吸収ピークは、最大吸収波長(λmax)であり、
吸収ピークの長波長側の傾き(吸収ピークと長波長側の吸収スペクトルのピークエンドを結んだ直線の傾きの絶対値)が0.025以上であり、
吸収ピークのモル吸光係数(最大モル吸光係数:ελmax)は、17000L/(mol・cm)以上であるプラスチックレンズ。
【請求項2】
11は、炭素数が6〜18の芳香族基、炭素数が1〜10の不飽和基、炭素数が0〜10の硫黄含有基、芳香環基又は脂環式基を含む場合には炭素数が6〜12であり芳香環基又は脂環式基を含まない場合には炭素数が0〜6の酸素含有基、芳香環基又は脂環式基を含む場合には炭素数が6〜22であり芳香環基又は脂環式基を含まない場合には炭素数が0〜6のリン含有基、炭素数が3〜10の脂環式基から選ばれる1価もしくは2価の基で、水素原子が置換されるか、両端の少なくともいずれかが中断されるか、又は炭素−炭素結合が中断されていてもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基であり、
12は、−R13−Hで表される基であり、
13は、炭素数が6〜18の芳香族基、炭素数が1〜10の不飽和基、炭素数が0〜10の硫黄含有基、芳香環基又は脂環式基を含む場合には炭素数が6〜12であり芳香環基又は脂環式基を含まない場合には炭素数が0〜6の酸素含有基、芳香環基又は脂環式基を含む場合には炭素数が6〜22であり芳香環基又は脂環式基を含まない場合には炭素数が0〜6のリン含有基、炭素数が3〜10の脂環式基から選ばれる1価もしくは2価の基で、水素原子が置換されるか、両端の少なくともいずれかが中断されるか、又は炭素−炭素結合が中断されていてもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基である、請求項1に記載のプラスチックレンズ。
【請求項3】
11及びR13は、炭化水素基が、両端の少なくともいずれかが芳香族基又は脂環式基で中断されていてもよく、炭素−炭素結合が中断されていない直鎖または分岐のアルキレン基であり、前記1価もしくは2価の基で水素原子が置換されていないか、または2個以下の前記1価もしくは2価の基で水素原子が置換され、前記1価もしくは2価の基は、ヒドロキシ基またはビニル基である請求項2に記載のプラスチックレンズ。
【請求項4】
11及びR13は、炭化水素基が、両端の少なくともいずれか及び炭素−炭素結合が中断されず、かつ水素原子が置換されていない直鎖のアルキレン基である請求項3に記載のプラスチックレンズ。
【請求項5】
式(I)で表わされる紫外線吸収剤は、吸収ピークの長波長側の傾き(吸収ピークと長波長側の吸収スペクトルのピークエンドを結んだ直線の傾きの絶対値)が0.030以上である請求項1から4のいずれかに記載のプラスチックレンズ。
【請求項6】
式(I)で表わされる紫外線吸収剤は、吸収ピークの長波長側の傾き(吸収ピークと長波長側の吸収スペクトルのピークエンドを結んだ直線の傾きの絶対値)が0.030以上であり、
吸収ピークのモル吸光係数(最大モル吸光係数:ελmax)は、18000L/(mol・cm)以上である請求項5に記載のプラスチックレンズ。
【請求項7】
式(I)で表わされる紫外線吸収剤の分子量が、550以下である請求項5または6に記載のプラスチックレンズ。
【請求項8】
厚み2mmで測定した光透過率が、次の[1]〜[3]の特性の1個以上を満足する請求項1から7のいずれかに記載のプラスチックレンズ:
[1] (425nmの透過率%)−(415nmの透過率%)が50以上、又は415nmの透過率が5%以下
[2] (425nmの透過率%)−(420nmの透過率%)が27以上
[3] [(425nmの透過率%)−(415nmの透過率%)]×(樹脂の屈折率−0.6)が50以上。
【請求項9】
下記式(I):
【化1】
(式中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、芳香族基、不飽和基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、及びハロゲン原子から選ばれる1価の基を示す。Rは、下記式(i):
【化2】
(式中、R12は、−(R13−R14で表される基であり、
10、R11、およびR13は、炭素数が6〜18の芳香族基、炭素数が1〜10の不飽和基、炭素数が0〜10の硫黄含有基、芳香環基又は脂環式基を含む場合には炭素数が6〜12であり芳香環基又は脂環式基を含まない場合には炭素数が0〜6の酸素含有基、芳香環基又は脂環式基を含む場合には炭素数が6〜22であり芳香環基又は脂環式基を含まない場合には炭素数が0〜6のリン含有基、炭素数が3〜10の脂環式基から選ばれる1価もしくは2価の基で、水素原子が置換されるか、両端の少なくともいずれかが中断されるか、又は炭素−炭素結合が中断されていてもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基であり、
14は、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、安息香酸エステル、及びトリアジンから選ばれるいずれか1つの骨格を含む置換基であり、
ベンゾトリアゾールを含む置換基は、下記式(A):
【化4】
(式(A)において、R1a〜R9aのうちいずれか1つは式(i)のR13又は末端硫黄原子と結合する1価の結合部分を示し、それ以外のR1a〜R9aは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、芳香族基、不飽和基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、及びハロゲン原子から選ばれる1価の基を示す。)で表わされる基であり、
ベンゾフェノンを含む置換基は、下記式(B):
【化5】
(式(B)において、R1b〜R10bのうちいずれか1つは式(i)のR13又は末端硫黄原子と結合する1価の結合部分を示し、それ以外のR1b〜R10bは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、芳香族基、不飽和基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、及びハロゲン原子から選ばれる1価の基を示す。)で表わされる基であり、
安息香酸エステルを含む置換基は、下記式(C):
【化6】
(式(C)において、R1c〜R10cのうちいずれか1つは式(i)のR13又は末端硫黄原子と結合する1価の結合部分を示し、それ以外のR1c〜R10cは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、芳香族基、不飽和基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、及びハロゲン原子から選ばれる1価の基を示す。)で表わされる基であり、
トリアジンを含む置換基は、下記式(D):
【化7】
(式(D)において、R1d〜R3dは次の[ア]、[イ]のいずれかを示す。
[ア]R1d〜R3dのうち少なくとも1つは式(i)のR13又は末端硫黄原子と結合する1価の結合部分を示し、それ以外のR1d〜R3dは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、芳香族基、不飽和基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、ハロゲン原子、及び次の式(d)で表わされる基:
【化8】
(式中、R4d〜R8dは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、芳香族基、不飽和基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、及びハロゲン原子から選ばれる1価の基を示す。)から選ばれる1価の基を示す。
[イ]R1d〜R3dのうち少なくとも1つは次の式(d’)で表わされる基:
【化9】
(R9d〜R13dのうち少なくとも1つは式(i)のR13又は末端硫黄原子と結合する1価の結合部分を示し、それ以外のR9d〜R13dは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、芳香族基、不飽和基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、及びハロゲン原子から選ばれる1価の基を示す。)を示し、それ以外のR1d〜R3dは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、芳香族基、不飽和基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、及びハロゲン原子から選ばれる1価の基を示す。)で表わされる基であり、
14のベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、安息香酸エステル、及びトリアジンから選ばれるいずれか1つの骨格を含む置換基における、前記各芳香族基の炭素数が6〜18、前記各不飽和基の炭素数が1〜10、前記各硫黄含有基の炭素数が0〜10、前記各酸素含有基は、芳香環基又は脂環式基を含む場合には炭素数が6〜12、芳香環基又は脂環式基を含まない場合には炭素数が0〜6、前記各リン含有基は、芳香環基又は脂環式基を含む場合には炭素数が6〜22、芳香環基又は脂環式基を含まない場合には炭素数が0〜6、前記各脂環式基の炭素数が3〜10である。R10とn個のR11とR12の総炭素数は30以下である。mは0又は1の整数を示し、nは0〜3の整数を示す。)で表わされる1価の硫黄含有基を示す。)で表わされる紫外線吸収剤と、樹脂材料とを含む、プラスチックレンズ。
【請求項10】
式(i)で表わされる1価の硫黄含有基は、mが0である下記式(i−1):
【化10】
(式中、R11、R12及びnは前記と同義である。)で表わされるものであり、
11及びR13前記1価もしくは2価の基で水素原子が置換されていないか、または2個以下の前記1価もしくは2価の基で水素原子が置換されていてもよい直鎖のアルキレン基であり、
14は、ベンゾトリアゾールの骨格を含む式(A)の置換基である請求項9に記載のプラスチックレンズ。
【請求項11】
樹脂材料は、熱硬化性樹脂である請求項1から10のいずれかに記載のプラスチックレンズ。
【請求項12】
樹脂材料として、エピスルフィド樹脂およびチオウレタン樹脂から選ばれる少なくとも1種を含有する請求項1から10のいずれかに記載のプラスチックレンズ。
【請求項13】
樹脂材料は、熱可塑性樹脂である請求項1から10のいずれかに記載のプラスチックレンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼を紫外線から守る紫外線吸収性のプラスチックレンズに関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックレンズは、ガラスレンズに比べ軽量で割れにくく、染色が可能であり、精密成形が容易である等の点から、近年、眼鏡レンズ、コンタクトレンズ、カメラレンズ等の光学用レンズ製品に急速に普及してきている。
【0003】
プラスチックレンズは、長期経時での熱履歴や紫外線への暴露により、その性質が劣化すること、例えば黄変が避けられないことから、長期の使用を阻害することのないよう、耐熱黄変性、耐光黄変性の改良が求められている。
【0004】
近年では、これらプラスチックレンズに太陽光等による紫外線に対する樹脂そのものの耐光性を改良する目的だけでなく、眼を保護する目的で紫外線吸収能を付与する検討も行われている。眼が紫外線に曝露することによる悪影響は、従来より指摘されており、自然光、オフィス機器の液晶ディスプレイや、スマートフォン又は携帯電話等の携帯機器のディスプレイ等からの発光に含まれる青色光による、眼の疲れや痛みを感じるなど、眼への影響が懸念されている。例えば、長い間、眼に青色光の照射を浴びることは、眼精疲労や、活性酸素、特に過剰な一重項酸素の発生による酸化ストレスを受けることが指摘されている。この一重項酸素は、紫外線や可視光の中でもエネルギーの強い短波長の青色光によって産生が促進されることが分かっている。また網膜では、加齢とともに網膜色素上皮内にリポフスチンと呼ばれる老廃物が蓄積するため、これが光増感物質として作用し、一重項酸素を発生させると考えられている。このリポフスチンは可視光〜紫外線にかけて、波長が短くなるほど吸収が高くなる、という特性を持つ。一方、一重項酸素による酸化ストレスを抑制するものとして、ルテインが知られている。ルテインは網膜中に存在しているが紫外〜青色光で劣化してしまう。
【0005】
このため、リポフスチンによる一重項酸素の発生の抑制と、酸化ストレスを抑制するルテインの劣化抑制のためには、ルテインとリポフスチンの光吸収特性がオーバーラップする波長範囲である400〜420nmの波長を網膜より手前でカットすることが非常に効果的である。さらに、近年の研究では、411nmの短波長光に網膜組織が曝されると、470nm波長光に曝された場合よりもニューロン網膜細胞が強い酸化ストレスを受け、細胞死の兆候が認められることや網膜組織の構造の歪みが引き起こされたことが示され、加齢黄斑変性が進行する要因の一つと考えられている。また、400〜420nmの波長光の照射により、皮質白内障の原因である活性酸素種の生成、DNA損傷及び水晶体上皮細胞の細胞死が開始することが示されていることから、眼組織の障害の引き金となる可能性がある400〜420nmの短波長光をブロックすることは眼を健康に保つために非常に重要である。
【0006】
また、400〜420nmの光は、可視光の中でも感度の低い波長であり、暗所視機能の低下や、サーカディアンリズムへの影響も少ない波長である。
【0007】
そこでプラスチックレンズに400〜420nmの波長光を吸収する性能を付与する紫外線吸収剤の使用が提案されている(特許文献1、2)。特許文献1には、紫外線吸収剤として2−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)−クロロベンゾトリアゾールを使用し、エピスルフィド樹脂等の樹脂材料と組み合わせる技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第5620033号公報
【特許文献2】特許第4334633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、樹脂に紫外線吸収剤として2−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)−クロロベンゾトリアゾールを添加し、400〜420nm付近の波長光を十分吸収させようとすると、その波長領域の吸収効率が低く、多くの添加量が必要となり、同時に、その光学的特性より、420nm付近より長波長の光も多く吸収するため、レンズが黄色化する問題があった。
【0010】
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、400〜420nmの波長を十分に効率よく吸収しながらも、420nm付近以上の波長光の吸収を抑制して、有害光の影響が少なく、黄色化を抑え外観に優れ、レンズの経時での黄変を抑制する耐熱性及び耐光性、さらには光学性能、特にアッベ数に優れたプラチックレンズを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明のプラスチックレンズは、下記式(I):
【0012】
【化1】
【0013】
(式中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、芳香族基、不飽和基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、及びハロゲン原子から選ばれる1価の基を示す。Rは、下記式(i):
【0014】
【化2】
【0015】
(式中、R10は芳香族基、不飽和基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、及びハロゲン原子から選ばれる1価もしくは2価の基で、水素原子が置換されるか、両端の少なくともいずれかが中断されるか、又は炭素−炭素結合が中断されていてもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基を示し、R11はnが2以上の場合はそれぞれ独立に芳香族基、不飽和基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、及びハロゲン原子から選ばれる1価もしくは2価の基で、水素原子が置換されるか、両端の少なくともいずれかが中断されるか、又は炭素−炭素結合が中断されていてもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基を示し、R12は水素原子を示すか、又は−(R13−R14で表される基(R13は芳香族基、不飽和基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、及びハロゲン原子から選ばれる1価もしくは2価の基で、水素原子が置換されるか、基端が中断されるか、又は炭素−炭素結合が中断されていてもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基を示し、R14は、水素原子を示すか、又はベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、安息香酸エステル、及びトリアジンから選ばれるいずれか1つの骨格を含む置換基を示す。pは0又は1の整数を示す。)を示す。R10とn個のR11とR12の総炭素数は30以下である。mは0又は1の整数を示し、nは0〜3の整数を示す。)で表わされる1価の硫黄含有基を示す。)で表わされる紫外線吸収剤と、樹脂材料とを含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、従来の紫外線吸収剤を使用した場合に比べて、420nmより短波長の透過率について従来以上の吸収効果が得られながらも、420nm付近以上の波長光の透過率が良好であり、紫外線吸収剤の影響によるプラスチックレンズの黄色化を抑制できる。また、紫外線吸収効果(モル吸光係数)が高いことから、少量の添加で、有害光の400〜420nmの波長を十分吸収でき、目への悪影響を抑制することを可能とし、さらに、プラチックレンズの樹脂原料であるモノマー、樹脂に対する式(I)で表わされる紫外線吸収剤の相溶性が高く、プラスチックレンズに加工しても表面への析出を抑制できる。また、レンズの経時での黄変を抑制する耐熱性及び耐光性に優れ、さらにプラスチックレンズの光学特性、特にアッベ数を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】化合物1(クロロホルム溶液)の吸収スペクトルである。
図2】化合物2(クロロホルム溶液)の吸収スペクトルである。
図3】化合物3(クロロホルム溶液)の吸収スペクトルである。
図4】化合物4(クロロホルム溶液)の吸収スペクトルである。
図5】化合物5(クロロホルム溶液)の吸収スペクトルである。
図6】化合物6(クロロホルム溶液)の吸収スペクトルである。
図7】化合物7(クロロホルム溶液)の吸収スペクトルである。
図8】化合物8(クロロホルム溶液)の吸収スペクトルである。
図9】化合物9(クロロホルム溶液)の吸収スペクトルである。
図10】化合物10(クロロホルム溶液)の吸収スペクトルである。
図11】化合物11(クロロホルム溶液)の吸収スペクトルである。
図12】化合物12(クロロホルム溶液)の吸収スペクトルである。
図13】化合物13(クロロホルム溶液)の吸収スペクトルである。
図14】化合物14(クロロホルム溶液)の吸収スペクトルである。
図15】2−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)−クロロベンゾトリアゾール(クロロホルム溶液)の吸収スペクトルである。
図16】実施例1と比較例1のプラスチックレンズの透過スペクトルである。
図17】実施例2と比較例2のプラスチックレンズの透過スペクトルである。
図18】実施例3と比較例3のプラスチックレンズの透過スペクトルである。
図19】実施例4と比較例4のプラスチックレンズの透過スペクトルである。
図20】実施例5と比較例5のプラスチックレンズの透過スペクトルである。
図21】実施例6と比較例1のプラスチックレンズの透過スペクトルである。
図22】実施例7と比較例1のプラスチックレンズの透過スペクトルである。
図23】化合物5の吸収ピークの長波長側の傾きの絶対値と紫外線吸収剤の濃度のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明について詳細に説明する。
[置換基等]
本発明において、「芳香族基、不飽和基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、及びハロゲン原子から選ばれる1価もしくは2価の基」には、次のものが含まれる。
(芳香族基)
芳香族基は、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等の芳香環を含み、炭素数が好ましくは6〜18、より好ましくは6〜14である。1価もしくは2価の芳香族基としては、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2,5−ジメチルフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、2,4,5−トリメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、4−ビフェニル基、1−ナフチル基、2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、2−エトキシフェニル基、3−エトキシフェニル基、4−エトキシフェニル基、2−クロロフェニル基、2−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基、2−トリフルオロメチルフェニル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等が挙げられる。
(不飽和基)
不飽和基は、炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合、炭素−酸素二重結合(カルボニル基、アルデヒド基、カルボキシル基等)、炭素−窒素二重結合(イソシアネート基等)、炭素−窒素三重結合(シアノ基、シアナト基等)等の炭素−炭素又は炭素−ヘテロ原子の不飽和結合を含み、炭素数が好ましくは1〜10、より好ましくは1〜8である。1価もしくは2価の不飽和基としては、アクリロイル基、メタクロイル基、マレイン酸モノエステル基、スチリル基、アリル基、ビニル基、アミド基、カルバモイル基、シアノ基、イソシアネート基等が挙げられる。
(硫黄含有基)
硫黄含有基は、チオール基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルホ基、チオカルボニル基、又はチオ尿素基を含み、炭素数が好ましくは0〜10である。1価もしくは2価の硫黄含有基としては、チオメトキシ基、チオエトキシ基、チオ−n−プロポキシ基、チオイソプロポキシ基、チオ−n−ブトキシ基、チオ−t−ブトキシ基、チオフェノキシ基、p−メチルチオフェノキシ基、p−メトキシチオフェノキシ基、チオフェン基、チアゾール基、チオール基、スルホ基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、チオカルボニル基、チオ尿素基、チオカルバメート基、ジチオカルバメート基等が挙げられる。
(酸素含有基)
酸素含有基は、芳香環基又は脂環式基を含む場合には炭素数が好ましくは6〜12、芳香環基又は脂環式基を含まない場合には炭素数が好ましくは0〜6である。1価もしくは2価の酸素含有基としては、ヒドロキシ基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、フェノキシ基、メチルフェノキシ基、ジメチルフェノキシ基、ナフトキシ基、フェニルメトキシ基、フェニルエトキシ基、アセトキシ基、アセチル基、アルデヒド基、カルボキシル基、尿素基、エーテル基、カルボニル基、エステル基、オキサゾール基、モルホリン基、カルバメート基等が挙げられる。
(リン含有基)
リン含有基は、ホスフィン基、ホスファイト基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、リン酸基、又はリン酸エステル基を含み、芳香環基又は脂環式基を含む場合には炭素数が好ましくは6〜22、芳香環基又は脂環式基を含まない場合には炭素数が好ましくは0〜6である。1価もしくは2価のリン含有基としては、トリメチルホスフィン基、トリブチルホスフィン基、トリシクロヘキシルホスフィン基、トリフェニルホスフィン基、トリトリルホスフィン基、メチルホスファイト基、エチルホスファイト基、フェニルホスファイト基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、リン酸基、リン酸エステル基等が挙げられる。
(脂環式基)
脂環式基は、炭素数が好ましくは3〜10、より好ましくは3〜8である。1価もしくは2価の脂環式基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
(ハロゲン原子)
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
1.式(I)で表わされる紫外線吸収剤
前記の式(I)で表わされる紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系の骨格に前記の式(i)で表わされる1価の硫黄含有基を含む。
【0019】
式(i)において、R10は芳香族基、不飽和基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、及びハロゲン原子から選ばれる1価もしくは2価の基で、水素原子が置換されるか、両端の少なくともいずれかが中断されるか、又は炭素−炭素結合が中断されていてもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基を示す。
【0020】
10の2価の炭化水素基としては、直鎖又は分岐のアルキレン基、直鎖又は分岐のアルケニレン基、直鎖又は分岐のアルキニレン基等が挙げられる。具体的には、例えば、メチレン基、エタン−1,2−ジイル基、プロパン−1,3−ジイル基、1−メチルエタン−1,2−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ブタン−1,3−ジイル基、2−メチルプロパン−1,3−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ペンタン−1,4−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基、ヘプタン−1,7−ジイル基、オクタン−1,8−ジイル基、ノナン−1,9−ジイル基、デカン−1,10−ジイル基、ウンデカン−1,11−ジイル基、ドデカン−1,12−ジイル基、トリデカン−1,13−ジイル基、テトラデカン−1,14−ジイル基、ペンタデカン−1,15−ジイル基、ヘキサデカン−1,16−ジイル基、ヘプタデカン−1,17−ジイル基、オクタデカン−1,18−ジイル基、ノナデカン−1,19−ジイル基、エイコサン−1,20−ジイル基等が挙げられる。これらの中でも、アルキレン基が好ましく、直鎖のアルキレン基がより好ましい。
【0021】
10の2価の炭化水素基が、前記1価もしくは2価の基で、水素原子が置換されるか、両端の少なくともいずれかが中断されるか、又は炭素−炭素結合が中断される場合、前記1価もしくは2価の数は2個以下が好ましく、1個以下がより好ましい。
【0022】
前記1価もしくは2価の基の芳香族基、不飽和基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、ハロゲン原子の具体例としては、前記[置換基等]の欄に例示したものが挙げられる。
【0023】
式(i)において、R11はnが2以上の場合はそれぞれ独立に芳香族基、不飽和基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、及びハロゲン原子から選ばれる1価もしくは2価の基で、水素原子が置換されるか、両端の少なくともいずれかが中断されるか、又は炭素−炭素結合が中断されていてもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基を示す。
【0024】
11の2価の炭化水素基としては、R10の2価の炭化水素基で前記に例示したものが挙げられる。これらの中でも、アルキレン基が好ましく、直鎖のアルキレン基がより好ましい。
【0025】
11の2価の炭化水素基が、前記1価もしくは2価の基で、水素原子が置換されるか、両端の少なくともいずれかが中断されるか、又は炭素−炭素結合が中断される場合、前記1価もしくは2価の基の数は2個以下が好ましく、1個以下がより好ましい。
【0026】
前記1価もしくは2価の基の芳香族基、不飽和基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、ハロゲン原子の具体例としては、前記[置換基等]の欄に例示したものが挙げられる。
【0027】
式(i)において、R12は水素原子を示すか、又は−(R13−R14で表される基(R13は芳香族基、不飽和基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、及びハロゲン原子から選ばれる1価もしくは2価の基で、水素原子が置換されるか、基端が中断されるか、又は炭素−炭素結合が中断されていてもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基を示し、R14は、水素原子を示すか、又はベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、安息香酸エステル、及びトリアジンから選ばれるいずれか1つの骨格を含む置換基を示す。pは0又は1の整数を示す。)を示す。
【0028】
13の2価の炭化水素基としては、R10の2価の炭化水素基で前記に例示したものが挙げられる。これらの中でも、アルキレン基が好ましく、直鎖のアルキレン基がより好ましい。
【0029】
13の2価の炭化水素基が、前記1価もしくは2価の基で、水素原子が置換されるか、基端が中断されるか、又は炭素−炭素結合が中断される場合、前記1価もしくは2価の基の数は2個以下が好ましく、1個以下がより好ましい。
【0030】
前記1価もしくは2価の基の芳香族基、不飽和基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、ハロゲン原子の具体例としては、前記[置換基等]の欄に例示したものが挙げられる。
【0031】
14がベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、安息香酸エステル、及びトリアジンから選ばれるいずれか1つの骨格を含む置換基である場合、ベンゾトリアゾールを含む置換基としては例えば下記式(A)で表わされる基が挙げられ、ベンゾフェノンを含む置換基としては例えば下記式(B)で表わされる基が挙げられ、安息香酸エステルを含む置換基としては例えば下記式(C)で表わされる基が挙げられ、トリアジンを含む置換基としては例えば下記式(D)で表わされる基が挙げられる。
【0032】
【化3】
【0033】
式(A)において、R1a〜R9aのうちいずれか1つは式(i)のR13又は末端硫黄原子と結合する1価の結合部分を示し、それ以外のR1a〜R9aは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、芳香族基、不飽和基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、及びハロゲン原子から選ばれる1価の基を示す。
【0034】
【化4】
【0035】
式(B)において、R1b〜R10bのうちいずれか1つは式(i)のR13又は末端硫黄原子と結合する1価の結合部分を示し、それ以外のR1b〜R10bは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、芳香族基、不飽和基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、及びハロゲン原子から選ばれる1価の基を示す。
【0036】
【化5】
【0037】
式(C)において、R1c〜R10cのうちいずれか1つは式(i)のR13又は末端硫黄原子と結合する1価の結合部分を示し、それ以外のR1c〜R10cは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、芳香族基、不飽和基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、及びハロゲン原子から選ばれる1価の基を示す。
【0038】
【化6】
【0039】
式(D)において、R1d〜R3dは次の[ア]、[イ]のいずれかを示す。
[ア]R1d〜R3dのうち少なくとも1つは式(i)のR13又は末端硫黄原子と結合する1価の結合部分を示し、それ以外のR1d〜R3dは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、芳香族基、不飽和基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、ハロゲン原子、及び次の式(d)で表わされる基:
【0040】
【化7】
【0041】
(式中、R4d〜R8dは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、芳香族基、不飽和基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、及びハロゲン原子から選ばれる1価の基を示す。)から選ばれる1価の基を示す。すなわち式(I)で表わされる基がトリアジン環に1〜3個結合していてもよい。
[イ]R1d〜R3dのうち少なくとも1つは次の式(d’)で表わされる基:
【0042】
【化8】
【0043】
(R9d〜R13dのうち少なくとも1つは式(i)のR13又は末端硫黄原子と結合する1価の結合部分を示し、それ以外のR9d〜R13dは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、芳香族基、不飽和基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、及びハロゲン原子から選ばれる1価の基を示す。)を示し、それ以外のR1d〜R3dは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、芳香族基、不飽和基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、及びハロゲン原子から選ばれる1価の基を示す。すなわち上記式(d’)で表わされるベンゼン環には式(I)で表わされる基が1〜5個結合していてもよい。
【0044】
式(A)〜(D)及び(d)において、R1a〜R9a、R1b〜R10b、R1c〜R10c、R1d〜R13dが1価の炭化水素基である場合、この1価の炭化水素基としては、直鎖又は分岐のアルキル基、直鎖又は分岐のアルケニル基、直鎖又は分岐のアルキニル基等が挙げられる。具体的には、例えば、メチル基、エタン−1−イル基、プロパン−1−イル基、1−メチルエタン−1−イル基、ブタン−1−イル基、ブタン−2−イル基、2−メチルプロパン−1−イル基、2−メチルプロパン−2−イル基、ペンタン−1−イル基、ペンタン−2−イル基、ヘキサン−1−イル基、ヘプタン−1−イル基、オクタン−1−イル基、ノナン−1−イル基、デカン−1−イル基等が挙げられる。
【0045】
1a〜R9a、R1b〜R10b、R1c〜R10c、R1d〜R13dが芳香族基、不飽和基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、及びハロゲン原子から選ばれる1価の基である場合、その具体例としては、前記[置換基等]の欄に例示したものが挙げられる。
【0046】
式(i)において、mは0又は1の整数を示し、nは0〜3、好ましくは0又は1の整数を示す。
【0047】
式(i)において、R10とn個のR11とR12の総炭素数は30以下である。その中でも、プラチックレンズのモノマーに対する式(I)で表わされる紫外線吸収剤の溶解度が高く、プラスチックレンズに加工しても式(I)で表わされる紫外線吸収剤の表面への析出を抑制できる点を考慮すると、R10の炭化水素基とn個のR11の炭化水素基とR12の炭化水素基の総炭素数を18以下とすることが好ましく、12以下とすることがより好ましく、その中でも、式(I)で表わされる紫外線吸収剤の分子量を550以下とすることが好ましい。
【0048】
式(I)において、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、芳香族基、不飽和基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、及びハロゲン原子から選ばれる1価の基を示す。
【0049】
〜Rが1価の炭化水素基である場合、この1価の炭化水素基としては、直鎖又は分岐のアルキル基、直鎖又は分岐のアルケニル基、直鎖又は分岐のアルキニル基等が挙げられる。具体的には、例えば、メチル基、エタン−1−イル基、プロパン−1−イル基、1−メチルエタン−1−イル基、ブタン−1−イル基、ブタン−2−イル基、2−メチルプロパン−1−イル基、2−メチルプロパン−2−イル基、ペンタン−1−イル基、ペンタン−2−イル基、ヘキサン−1−イル基、ヘプタン−1−イル基、オクタン−1−イル基、ノナン−1−イル基、デカン−1−イル基等が挙げられる。これらの中でも、炭素数1〜8の直鎖又は分岐のアルキル基が好ましい。
【0050】
〜Rが芳香族基、不飽和基、硫黄含有基、酸素含有基、リン含有基、脂環式基、及びハロゲン原子から選ばれる1価の基である場合、その具体例としては、前記[置換基等]の欄に例示したものが挙げられる。
【0051】
式(I)の紫外線吸収剤は、有害光の400〜420nmの波長を吸収し、レンズの黄色化の要因となる420nm付近以上の波長光の吸収を抑制し、黄色化を抑え外観に優れたプラスチックレンズに得るためには、100μMクロロホルム溶液における光の吸収ピークが350〜390nmにあることが好ましく、360〜380nmにあることがより好ましく、特に360〜375nmにあることが好ましい。また、それらの波長領域にある吸収ピークは、最大吸収波長(λmax)であることが好ましい。さらに、その波長ピークは、420nm付近よりも長波長の光の吸収を抑制するために、長波長側の吸収スペクトルはシャープな方が(傾きの絶対値が大きい方が)良く、吸収ピークの長波長側の傾き(吸収ピークと長波長側の吸収スペクトルのピークエンドを結んだ直線の傾きの絶対値:図1、後述の実施例欄を参照)が0.025以上であることが好ましく、0.030以上がより好ましい。また、少量で効率よく吸収するためには、上記の350〜390nmの吸収ピークのモル吸光係数(最大モル吸光係数:ελmax)は、17000L/(mol・cm)以上が好ましく、18000L/(mol・cm)以上がより好ましく、特に20000L/(mol・cm)以上が好ましい。
【0052】
これらの物性を得るためには、Rを持つ上記式(i)の構造が必須であり、特に、Rは、m=0のベンゾトリアゾール骨格に、直接、硫黄原子を導入した次の式(i−1)の構造が望ましい。
【0053】
【化9】
【0054】
(式中、R11、R12及びnはは前記と同義である。)
波長400〜420nmまでの波長領域を、紫外線吸収剤を用いてカットしようとすると、紫外線吸収剤の種類によっては、樹脂の黄色化が発生したり、プラスチックレンズの樹脂に溶解しきれずに析出し、樹脂が白濁することがある。例えば特許文献2には、分子量が360を超える紫外線吸収剤を用いると、原料モノマー中への溶解度が低下し、5重量部以下の配合量でもプラスチックレンズ表面に析出し、かつ析出しない限界量では十分な紫外線吸収能力がなく、380〜400nmの波長の紫外線を十分に吸収できるプラスチックレンズを得ることが困難であることが記載されている。
【0055】
しかしながら、本発明に使用される紫外線吸収剤は、その構造的特徴から、分子量360を超える分子量においても、プラチックレンズのモノマーに対する溶解度も高く、プラスチックレンズに加工しても表面に析出せず、また、その光学的特性から、380〜420nmまでの波長領域の光を十分吸収することができる。しかも、紫外線吸収効果(モル吸光係数)が高く、少量の添加で、その波長光を十分吸収でき、クロロホルム溶液中で350〜390nmの吸収ピークの傾きが従来の紫外線吸収剤よりも大きいことから、プラスチックレンズの黄色化を抑制することができる。
【0056】
本発明のプラスチックレンズにおける、式(I)で表わされる紫外線吸収剤の添加量は、樹脂材料100質量部に対して0.01〜2.0質量部が好ましく、0.1〜0.8質量部がより好ましく、0.2〜0.6質量部がより特に好ましい。紫外線吸収剤の添加量がこの範囲内であると、十分な紫外線吸収効果が得られ、かつ、レンズの黄色化や屈折率低下等の光学的特性の変化を生じたり、レンズの機械的強度が低下したりすることを抑制できる。特に、式(I)で表わされる紫外線吸収剤を用いた本発明のプラスチックレンズでは、従来の紫外線吸収剤よりも屈折率を下げることなくアッベ数を向上させることができるため、レンズ、特に眼鏡レンズにおいて色にじみの少ない見え方を提供できる。
【0057】
本発明のプラスチックレンズに使用される樹脂材料は、特に限定されるものではないが、例えば、エピスルフィド、チオウレタン、ウレタン、エポキシ、アリル、メラミン、シリコーン、フェノール、ユリア、不飽和ポリエステルなどの熱硬化性樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体等のアクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、環状オレフィン系高分子等のポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、ナイロン、ポリウレタンなどの熱可塑性樹脂、アクリル、例えば多価アルコールのアクリル酸やメタクリル酸2−ヒドロキシエチル又はメタクリル酸エステルのような単官能又は多官能の(メタ)アクリレート化合物、ジイソシアネートと多価アルコール及びアクリル酸又はメタクリル酸のヒドロキシエステル等から合成されるような多官能のウレタン(メタ)アクリレート化合物、アクリレート系の官能基を有するポリエーテル、ポリエステル、エポキシ、アルキッド、スピロアセタール、ポリブタジエン、ポリチオールポリエンなどの紫外線硬化樹脂が挙げられる。また、これらのプラスチックレンズ用樹脂組成物に対して、式(I)で表わされる紫外線吸収剤以外に、他の紫外線吸収剤1種類以上を併用して添加してもよい。
【0058】
好ましい態様において、本発明のプラスチックレンズは、樹脂材料としてエピスルフィド樹脂を含有する。
【0059】
エピスルフィド樹脂の原料となる重合性組成物には、エピスルフィド化合物が添加される。エピスルフィド化合物としては、例えば、ビス(2,3−エピチオプロピル)スルフィド、ビス(2,3−エピチオプロピル)ジスルフィド、ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)メタン、1,2−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)エタン、1,2−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)プロパン、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)プロパン、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−2−メチルプロパン、1,4−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)ブタン、1,4−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−2−メチルブタン、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)ブタン、1,5−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)ペンタン、1,5−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−2−メチルペンタン、1,5−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−3−チアペンタン、1,6−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)ヘキサン、1,6−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−2−メチルヘキサン、3,8−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−3,6−ジチアオクタン、1,2,3−トリス(2,3−エピチオプロピルチオ)プロパン、2,2−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)プロパン、2,2−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−1−(2,3−エピチオプロピルチオ)ブタン、1,5−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−2−(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3−チアペンタン、1,5−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−2,4−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3−チアペンタン、1−(2,3−エピチオプロピルチオ)−2,2−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−4−チアヘキサン、1,5,6−トリス(2,3−エピチオプロピルチオ)−4−(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3−チアヘキサン、1,8−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−4−(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−4,5−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−4,4−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−2,5−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−2,4,5−トリス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,1,1−トリス[{2−(2,3−エピチオプロピルチオ)エチル}チオメチル]−2−(2,3−エピチオプロピルチオ)エタン、1,1,2,2−テトラキス[{2−(2,3−エピチオプロピルチオ)エチル}チオメチル]エタン、1,11−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−4,8−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン、1,11−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−4,7−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン、1,11−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−5,7−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン等の鎖状脂肪族の2,3−エピチオプロピルチオ化合物、及び、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)シクロヘキサン、1,4−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)シクロヘキサン、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)シクロヘキサン、2,5−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−1,4−ジチアン、2,5−ビス[{2−(2,3−エピチオプロピルチオ)エチル}チオメチル]−1,4−ジチアン、2,5−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−2,5−ジメチル−1,4−ジチアン等の環状脂肪族の2,3−エピチオプロピルチオ化合物、及び、1,2−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)ベンゼン、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)ベンゼン、1,4−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)ベンゼン、1,2−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)ベンゼン、1,3−ビス(2,3−エ
ピチオプロピルチオメチル)ベンゼン、1,4−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)ベンゼン、ビス{4−(2,3−エピチオプロピルチオ)フェニル}メタン、2,2−ビス{4−(2,3−エピチオプロピルチオ)フェニル}プロパン、ビス{4−(2,3−エピチオプロピルチオ)フェニル}スルフィド、ビス{4−(2,3−エピチオプロピルチオ)フェニル}スルフォン、4,4’−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)ビフェニル等の芳香族2,3−エピチオプロピルチオ化合物等、更に3−メルカプトプロピレンスルフィド、4−メルカプトブテンスルフィド等メルカプト基含有エピチオ化合物等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0060】
上記重合性組成物には、上記エピスルフィド化合物のエピチオ基の一部又は全部がエポキシ基で置換された化合物が含まれていてもよい。上記重合性組成物には、主に得られる樹脂の屈折率等光学物性の調整、耐衝撃性、比重等の諸物性の調整、重合性組成物の粘度、その他の取扱い性の調整など、樹脂の改良をする目的で、樹脂改質剤を加えることができる。樹脂改質剤としては、エポキシ化合物類及びアミン化合物類、チオール化合物、メルカプト有機酸類、有機酸類及び無水物類、アミノ酸及びメルカプトアミン類、(メタ)アクリレート類等を含むオレフィン類等が挙げられる。
【0061】
上記重合性組成物を、硬化触媒の存在下あるいは不存在下に、加熱あるいは常温放置により重合反応させ、エピスルフィド樹脂を得ることができる。硬化触媒としては、樹脂改質剤以外のアミン類、ホスフィン類、ルイス酸類、ラジカル重合触媒類、カチオン重合触媒類等が通常用いられる。樹脂成形の際には、目的に応じて公知の成形法における場合と同様に、鎖延長剤、架橋剤、光安定剤、酸化防止剤、着色防止剤、染料、充填剤、離型剤、密着性改善剤、染色性向上剤などを添加してもよい。さらに式(I)で表わされる紫外線吸収剤以外に、他の紫外線吸収剤1種類以上を併用して添加してもよい。
【0062】
好ましい別の態様において、本発明のプラスチックレンズは、樹脂材料としてチオウレタン樹脂を含有する。
【0063】
チオウレタン樹脂の原料モノマーとしては、特に制限されないが、例えば、チオウレタン系樹脂となるポリイソシアネート化合物とポリチオール化合物の混合物を主成分とするものが挙げられる。
【0064】
ポリイソシアネート化合物としては、例えばトリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメリック型ジフェニルメタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,5−ビス(イソシアネートメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6−ビス(イソシアネートメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、3,8−ビス(イソシアネートメチル)トリシクロ[5.2.1.02.6]−デカン、3,9−ビス(イソシアネートメチル)トリシクロ[5.2.1.02.6]−デカン、4,8−ビス(イソシアネートメチル)トリシクロ[5.2.1.02.6]−デカン、4,9−ビス(イソシアネートメチル)トリシクロ[5.2.1.02.6]−デカン等の脂環族ポリイソシアネート化合物、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルリジンジイソシアナトメチルエステル、α,α,α′,α′−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)ナフタリン、メシチリレントリイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)スルフィド、ビス(イソシアナトエチル)スルフィド、ビス(イソシアナトメチル)ジスルフィド、ビス(イソシアナトエチル)ジスルフィド、ビス(イソシアナトメチルチオ)メタン、ビス(イソシアナトエチルチオ)メタン、ビス(イソシアナトエチルチオ)エタン、ビス(イソシアナトメチルチオ)エタン等の脂肪族ポリイソシアネート化合物;ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン−4,4'−ジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジメチルメタンイソシアネート、ジフェニルスルフィド−4,4'−ジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート化合物;2,5−ジイソシアナトチオフェン、2,5−ビス(イソシアナトメチル)チオフェン、2,5−ジイソシアナトテトラヒドロチオフェン、2,5−ビス(イソシアナトメチル)テトラヒドロチオフェン、3,4−ビス(イソシアナトメチル)テトラヒドロチオフェン、2,5−ジイソシアナト−1,4−ジチアン、2,5−ビス(イソシアナトメチル)−1,4−ジチアン、4,5−ジイソシアナト−1,3−ジチオラン、4,5−ビス(イソシアナトメチル)−1,3−ジチオラン等の複素環ポリイソシアネート化合物、ダイマー酸ジイソシアネート等のポリイソシアネート化合物及びそれらの化合物のアロファネート変性体、ビュレット変性体、イソシアヌレート変性体等が挙げられる。
【0065】
ポリチオール化合物としては、例えば、脂肪族チオール化合物、脂環族チオール化合物、芳香族チオール化合物、複素環含有チオール化合物等が挙げられる。より具体的には、メタンジチオール、1,2−エタンジチオール、1,2,3−プロパントリチオール、1,2−シクロヘキサンジチオール、ビス(2−メルカプトエチル)エーテル、テトラキス(メルカプトメチル)メタン、(2−メルカプトエチル)スルフィド、ジエチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、ジエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(2−メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールエタントリス(2−メルカプトアセテート) 、トリメチロールエタントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ビス(メルカプトメチル)スルフィド、ビス(メルカプトメチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、ビス(メルカプトエチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトプロピル)スルフィド、ビス(メルカプトメチルチオ)メタン、ビス(2−メルカプトエチルチオ)メタン、ビス(3−メルカプトプロピルチオ)メタン、1,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エタン、1,2−ビス(2−メルカプトエチルチオ)エタン、1,2−ビス(3−メルカプトプロピルチオ)エタン、1,2,3−トリス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(2−メルカプトエチルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(3−メルカプトプロピルチオ)プロパン、4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタン、5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、テトラキス(メルカプトメチルチオメチル)メタン、テトラキス(2−メルカプトエチルチオメチル)メタン、テトラキス(3−メルカプトプロピルチオメチル)メタン、ビス(2,3−ジメルカプトプロピル)スルフィド、2,5−ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン、2,5−ジメルカプト−1,4−ジチアン、2,5−ジメルカプトメチル−2,5−ジメチル−1,4−ジチアン、及びこれらのチオグリコール酸およびメルカプトプロピオン酸のエステル、ヒドロキシメチルスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(3−メルカプトプロピネート)、2−メルカプトエチルエーテルビス(2−メルカプトアセテート)、2−メルカプトエチルエーテルビス(3−メルカプトプロピオネート)、チオジグリコール酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、チオジプロピオン酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、ジチオジグリコール酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、ジチオジプロピオン酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、1,1,3,3−テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,1,2,2−テトラキス(メルカプトメチルチオ)エタン、4,6−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアン、トリス(メルカプトメチルチオ)メタン、1,2−ビス[(2−メルカプトエチル)チオ]−3−メルカプトプロパン、トリス(メルカプトエチルチオ)メタン等の脂肪族ポリチオール化合物;1,2−ジメルカプトベンゼン、1,3−ジメルカプトベンゼン、1,4−ジメルカプトベンゼン、1,2−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3,5−トリメルカプトベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトメチレンオキシ)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、2,5−トルエンジチオール、3,4−トルエンジチオール、1,5−ナフタレンジチオール、2,6−ナフタレンジチオール等の芳香族ポリチオール化合物;2−メチルアミノ−4,6−ジチオール−sym−トリアジン、3,4−チオフェンジチオール、ビスムチオール、4,6−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアン、2−(2,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)−1,3−ジチエタン等の複素環ポリチオール化合物等が挙げられる。
【0066】
チオウレタン樹脂の原料モノマーは、これらのポリイソシアネート化合物とポリチオール化合物を主成分とするが、これを含む重合性組成物は、式(I)で表わされる紫外線吸収剤以外に、他の紫外線吸収剤1種類以上を併用してもよく、さらにその他の成分として、式(I)で表わされる紫外線吸収剤以外に、例えば内部離型剤、赤外線吸収剤、鎖延長剤、架橋剤、光安定剤、酸化防止剤、分散染料、油溶染料、顔料などの着色剤、反応触媒などを添加することができる。また、上記重合性組成物は、エピスルフィド化合物とチオウレタン化合物など、複数種類の樹脂が混合された樹脂材料となってもよく、各樹脂に対応する複数種類の原料モノマーを使用してもよい。 紫外線硬化型の樹脂としては、アクリル系材料を用いることができる。アクリル系材料としては、多価アルコールのアクリル酸又はメタクリル酸エステルのような単官能又は多官能の(メタ)アクリレート化合物、ジイソシアネートと多価アルコール及びアクリル酸又はメタクリル酸のヒドロキシエステル等から合成されるような多官能のウレタン(メタ)アクリレート化合物を使用することができる。また、これらの他にも、アクリレート系の官能基を有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等も用いることができる。
【0067】
紫外線硬化型の樹脂を用いる場合には、モノマー液には光重合開始剤を添加する。光重合開始剤としては、紫外線が照射された際にラジカルを発生するものであればよい。例えば、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類等を用いることができる。
【0068】
モノマー液には、必要に応じて、希釈のための溶媒を加えてもよい。溶媒としては、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族炭化水素類;n−ヘキサン等の炭化水素類、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、ジオキサン、ジオキソラン、トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソール、フェネトール等のエーテル類;メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン類;、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸n−ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酢酸n−ペンチル、γ−プチロラクトン等のエステル類;メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ類;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;水等が挙げられる。
【0069】
本発明のプラスチックレンズを得る際の成型方法は特に限定されないが、本発明の添加剤と樹脂又は、原料モノマーを含有するコーティング液を基材に塗布し、加熱、紫外線照射や乾燥で成膜する方法、本発明の添加剤を樹脂又は、原料モノマーに混練して練り込み、押出機等を用いて成形する方法、本発明の添加剤を原料モノマーに溶解し、金型やガラス型に注型し、加熱、紫外線照射、乾燥等で効果させる注型重合の方法、が挙げられる。
【0070】
特に注型重合としては、例えば、ガスケットまたはテープ等で保持されたガラスや金属、プラスチック等の成型モールド間に、式(I)で表わされる紫外線吸収剤を混合した重合性組成物を注入する。次いで、オーブン中や水中など加熱可能装置内で加熱することにより硬化させ、樹脂を取り出すことができる。また、取り出した樹脂成形体については、必要に応じて、アニール等の処理を行ってもよい。
【0071】
本発明のプラスチックレンズは、厚み2mmで測定した光透過率が、次の[1]〜[3]の特性の1個以上を満足することが好ましい。
[1] (425nmの透過率%)−(415nmの透過率%)が50以上、又は415nmの透過率が5%以下
[2] (425nmの透過率%)−(420nmの透過率%)が27以上
[3] [(425nmの透過率%)−(415nmの透過率%)]×(樹脂の屈折率−0.6)が50以上
これにより、従来の紫外線吸収剤を使用した場合に比べて、420nmよりも短波長の透過率について従来以上の吸収効果が得られながらも、視感透過率を下げることなく紫外線吸収剤の影響によるレンズの黄色化を抑制できる。
【0072】
また本発明のプラスチックレンズは、耐熱性及び耐光性にも優れていることから、長期経時での熱履歴や紫外線への暴露による、レンズの黄変を抑制することができる。さらに本発明のプラスチックレンズは、プラスチックレンズの光学特性、特にアッベ数を高くすることができる。
【0073】
耐熱性については、紫外線吸収剤の熱分解温度(例えば、5wt%重量減少温度)は、非常に高い温度での樹脂加工時に重要な物性だが、本発明のプラスチックレンズは、紫外線吸収剤の耐熱性のみならず、紫外線吸収剤を添加したレンズ(樹脂)の使用条件下における耐熱黄変性に優れている。
【0074】
耐光性については、紫外線吸収剤の耐光性のみならず、紫外線吸収剤を添加したレンズ(樹脂)の使用条件下における耐光黄変性に優れている。
【0075】
本発明のプラスチックレンズは、眼鏡プラスチックレンズや眼鏡ガラスレンズをはじめとする眼鏡レンズ、コンタクトレンズ、カメラレンズ、プロジェクターレンズ、双眼鏡レンズ、望遠鏡レンズに用いることができる。特に、有害な紫外線から水晶体や網膜が保護されるため、安全性に優れ、かつレンズの黄色化を抑制できることから、眼鏡レンズに好適であり、眼鏡レンズの基材以外にもフィルム層、コーティング層に用いることができる。また、上記用途に関わるバンドストップフィルター、バンドパスフィルター、UVカットフィルター、IRカットフィルター、などの光学フィルタに用いることができる。
【実施例】
【0076】
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
<合成例1> 化合物1の合成
【0077】
【化10】
【0078】
2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(5.00g, 15.8mmol)、オクタンチオール(7.63g, 52.1mmol)、炭酸カリウム(7.20g, 52.1mmol)及びヨウ化カリウム(0.18g, 1.1mmol)を、DMF50mL中で、150℃、20時間反応した。反応終了後、トルエンを加えて、水洗、溶媒留去、カラム精製をすることにより、化合物1を得た。
FT−IR(KBr):3125cm−1:O−H伸縮振動 1438, 1391cm−1:トリアゾール環伸縮振動 661cm−1:C-S伸縮振動
1H−NMR (CDCl3 400MHz): δ 0.88 (t, 3H, CH3(CH2)7-S) , 1.27 (m, 8H, CH3 (CH2)4(CH2)3-S), 1.49 (m, 11H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3, CH3(CH2)4 CH2(CH2)2-S), 1.75 (quin, 2H, CH3 (CH2)5 CH2CH2-S), 2.38 (s, 3H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3) , 3.03 (t, 2H, CH3 (CH2)5CH2CH2-S), 7.16 (s, 1H), 7.37 (d, 1H), 7.70 (s, 1H), 7.81 (d, 1H), 8.05 (s, 1H), (insg.5arom. CH), 11.61 (s, 1H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3)
13C−NMR (CDCl3 400MHz): δ 14.0 (CH3(CH2)7-S), 20.0 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 22.6 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 28.7 (CH3(CH2)5CH2 CH2-S), 31.9 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3) , 33.2 (CH3(CH2)5CH2CH2-S), 35.4 (CH3(CH2)5CH2CH2-S), 113.6, 117.5, 119.3, 128.7, 129.3 (CHarom), 141.2, 143.4 (Carom), 125.4(Carom-N), 128.3 (Carom-CH3), 138.0(Carom-S), 139.1(Carom-C(CH3)3), 146.7(Carom-OH)
<合成例2> 化合物2の合成
【0079】
【化11】
【0080】
ドデカンチオール(10.5g, 52.1mmol)を用いて化合物1と同様の合成方法で、化合物2を合成した。物性値を下記に示す。
FT−IR(KBr):3009cm−1:O−H伸縮振動 1441, 1390cm−1:トリアゾール環伸縮振動 662cm−1:C-S伸縮振動
1H−NMR (CDCl3 400MHz): δ 0.88 (t, 3H, CH3(CH2)11-S), 1.25 (m, 16H, CH3 (CH2)8(CH2)3-S), 1.49 (m, 11H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3, CH3(CH2)8 CH2(CH2)2-S), 1.74 (quin, 2H, CH3 (CH2)9 CH2CH2-S), 2.38 (s, 3H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3) , 3.03 (t, 2H, CH3(CH2)10CH2-S), 7.16 (s, 1H), 7.37 (d, 1H), 7.70 (s, 1H), 7.81 (d, 1H), 8.05 (s, 1H) (insg.5arom. CH), 11.61 (s, 1H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3)
13C−NMR (CDCl3 400MHz): δ 14.0 (CH3(CH2)11-S), 20.9 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 22.7 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 28.7 ~ 29.7 (CH3(CH2)9CH2CH2-S), 31.9 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3) , 33.2 (CH3(CH2)9CH2CH2-S), 35.4 (CH3(CH2)9CH2CH2-S), 113.5, 117.5, 119.3, 128.6, 129.3 (CHarom), 141.2, 143.4 (Carom), 125.4(Carom-N), 128.3 (Carom-CH3), 138.0(Carom-S), 139.1(Carom-C(CH3)3), 146.7(Carom-OH)
<合成例3> 化合物3の合成
【0081】
【化12】
【0082】
オクタデカンチオール(14.9g, 52.1mmol)を用いて化合物1と同様の合成方法で、化合物3を合成した。物性値を下記に示す。
FT−IR(KBr):3059cm−1:O−H伸縮振動 1445, 1391cm−1:トリアゾール環伸縮振動 664cm−1:C-S伸縮振動
1H−NMR (CDCl3 400MHz): δ 0.88 (t, 3H, CH3(CH2)17-S), 1.25 (m, 30H, CH3(CH2)15(CH2)2-S), 1.49 (s, 9H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3, 1.74 (quin, 2H, CH3(CH2)15CH2CH2-S), 2.38 (s, 3H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3) , 3.03 (t, 2H, CH3(CH2)15CH2CH2-S), 7.16 (s, 1H), 7.37 (d, 1H), 7.70 (s, 1H), 7.81 (d, 1H), 8.05 (s, 1H) (insg.5arom. CH), 11.61 (s, 1H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3)
13C−NMR (CDCl3 400MHz): δ 13.1(CH3(CH2)17-S), 19.9(-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 21.6 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 28.5(CH3(CH2)16CH2-S), 30.6(Carom-(-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 34.4 (CH3(CH2)16CH2-S), 115.5, 117.6, 118.2, 127.2, 128.0 (CHarom), 141.9, 142.9 (Carom), 124.2(Carom-N), 128.1 (Carom-CH3), 132.3 (Carom-S), 140.0 (Carom-C(CH3)3), 145.6 (Carom-OH)
<合成例4> 化合物4の合成
中間体1の合成
【0083】
【化13】
【0084】
オクタンチオール(29.3g, 200mmol)と55%水素化ナトリウム(13.1g, 300mmol)をTHF150ml中で、氷冷下、2時間撹拌した後、得られた懸濁溶液をジブロモプロパン(121.1g, 600mmol)のTHF溶液100mLに、氷冷下、滴下し、2時間反応した。トルエンを加えて水洗した後、減圧蒸留することにより、中間体1を得た。
中間体2の合成
【0085】
【化14】
【0086】
中間体1(7.5g, 28.2mmol)とチオ酢酸S−カリウム(3.4g, 29.6mmol)をアセトニトリル100mL中で、6時間加熱還流した。反応終了後、生成した固体を濾別し、濾液から溶媒を留去することにより、液状の化合物を得た。得られた化合物と水酸化ナトリウム(2.2g, 55.6mmol)のエタノール(100mL)溶液を6時間加熱還流した後、室温まで冷却し、塩酸を用いて酸性にした。その反応液にトルエンを加えて、水洗、溶媒留去、カラム精製をすることにより、中間体2を液体で得た。
【0087】
【化15】
【0088】
中間体2(11.5g, 52.1mmol)を用いて化合物1と同様の合成方法で、化合物4を合成した。物性値を下記に示す。
FT−IR(KBr):3057cm−1:O−H伸縮振動 1437, 1391cm−1:トリアゾール環伸縮振動 664cm−1:C-S伸縮振動
1H−NMR (CDCl3 400MHz): δ 0.81 (t, 3H, CH3(CH2)7-S), 1.20 (m, 8H, CH3(CH2)4(CH2)3-S), 1.30 (m, 2H, CH3(CH2)4CH2(CH2)2-S), 1.49 (s, 9H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3) , 1.54 (quin, 2H, CH3(CH2)4CH2CH2CH2-S), 1.91(quin, 2H, S-CH2CH2CH2-S-Ph), 2.38(s, 3H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3) , 2.48 (t, 2H, CH3(CH2)4CH2CH2CH2-S) , 2.68 (t, 2H, S-CH2CH2CH2-S-Ph), 3.17 (t, 2H, S-CH2CH2CH2-S-Ph), 7.16 (s, 1H), 7.37 (d, 1H), 7.70 (s, 1H), 7.81 (d, 1H) , 8.05 (d, 1H), (insg.5arom. CH), 11.61 (s, 1H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3)
13C−NMR (CDCl3 400MHz):δ14.0(CH3(CH2)7-S), 20.1(-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 22.6(-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 28.4(CH3CH2(CH2)6-S), 28.9(CH3(CH2)5CH2CH2-S), 29.2(CH3(CH2)3CH2CH2(CH2)2-S), 29.6(CH3(CH2)6CH2-S), 30.9 (S-CH2CH2CH2-S), 31.8 (CH3CH2 CH2(CH2)5-S), 31.9(-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 32.2(S-CH2CH2CH2-S), 35.4(S-CH2CH2CH2-S),
114.4, 117.6, 119.3, 128.7, 129.4 (CHarom), 141.3, 143.3 (Carom), 125.4(Carom-N), 128.3 (Carom-CH3), 137.1(Carom-S), 139.1(Carom-C(CH3)3), 146.7(Carom-OH)
<合成例5> 化合物5の合成
【0089】
【化16】
【0090】
2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(10.0g, 31.7mmol)、ヘキサンジチオール(4.76g, 31.7mmol)、炭酸カリウム(8.75g, 63.3mmol)及びヨウ化カリウム(0.37g, 2.2mmol)を、DMF50mL中で、130℃、12時間反応した。反応終了後、トルエンを加えて、水洗、溶媒留去、再結晶をすることにより、化合物5を得た。
FT−IR(KBr):3009cm−1:O−H伸縮振動 1431, 1391cm−1:トリアゾール環伸縮振動 656cm−1:C-S伸縮振動
1H−NMR (CDCl3 400MHz): δ1.49 (s, 18H, (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3)2), 1.55 (m, 4H, -S-CH2CH2CH2CH2CH2CH2-S-), 1.77 (m, 4H, -S-CH2CH2CH2CH2CH2CH2-S-), 2.38(s, 6H, (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3)2) , 3.04 (t, 4H, -S-CH2CH2CH2CH2CH2CH2-S-), 7.16 (s, 2H), 7.37 (d, 2H), 7.70 (s, 2H), 7.81 (d, 2H), 8.05 (s, 2H) (insg.10arom. CH), 11.60 (s, 2H, (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3)2)
13C−NMR (CDCl3 400MHz): δ20.9 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3)2, 28.4 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3)2, 28.6 (-S-CH2CH2CH2CH2CH2CH2-S-), 29.5 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3)2, 33.1 (-S-CH2CH2CH2CH2CH2CH2-S-), 35.4 (-S-CH2CH2CH2CH2CH2CH2-S-), 113.7, 117.6, 119.3, 128.3, 129.3 (CHarom), 141.2, 143.4 (Carom), 125.4(Carom-N), 128.3 (Carom-CH3), 137.7(Carom-S), 139.1(Carom-C(CH3)3), 146.7(Carom-OH)
<合成例6> 化合物6の合成
【0091】
【化17】
【0092】
2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(60.0g, 0.190mol)、ブタンチオール(34.3g,0.380mol)、炭酸カリウム(57.8g, 0.418mol)及びヨウ化カリウム(2.21g, 0.013mol)を、DMF150g中で、125℃、12時間反応した。反応終了後、pHを調整した後、濾過、MeOH洗浄、水洗を行い、再結晶をすることにより、化合物6を得た。
FT−IR(KBr):3000cm−1:O−H伸縮振動 1445, 1392cm−1:トリアゾール環伸縮振動 661cm−1:C-S伸縮振動
1H−NMR (CDCl3 400MHz): δ 0.96 (t, 3H, CH3(CH2)3-S) , 1.49 (m, 11H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3, CH3CH2CH2CH2-S), 1.75 (quin, 2H, CH3 CH2 CH2 CH2-S), 2.38 (s, 3H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3) , 3.03 (t, 2H, CH3CH2CH2CH2-S), 7.16 (s, 1H), 7.37 (d, 1H), 7.70 (s, 1H), 7.81 (d, 1H), 8.05 (d, 1H), (insg.5arom. CH), 11.61 (s, 1H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3)
13C−NMR (CDCl3 400MHz): δ 13.7 (CH3(CH2)3-S), 20.9 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 22.1 (CH3CH2CH2CH2-S), 29.5 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 30.8 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3) , 32.8 (CH3CH2CH2CH2-S), 35.4 (CH3CH2CH2CH2-S), 113.6, 117.5, 119.3, 128.7, 129.3 (CHarom), 125.4, 141.2, 143.4 (Carom), 128.3 (Carom-CH3), 138.0(Carom-S), 139.1(Carom-C(CH3)3), 146.7(Carom-OH)
<合成例7> 化合物7の合成
【0093】
【化18】
【0094】
2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(50.0g, 0.158mol)、ヘキサンチオール(37.4g,0.316mol)、炭酸カリウム(48.1g, 0.348mol)及びヨウ化カリウム(1.8g, 0.011mol)を、DMF125g中で、125℃、12時間反応した。反応終了後、pHを調整した後、濾過、MeOH洗浄、水洗を行い、再結晶をすることにより、化合物7を得た。
FT−IR(KBr):2956cm−1:O−H伸縮振動 1445, 1392cm−1:トリアゾール環伸縮振動 662cm−1:C-S伸縮振動
1H−NMR (CDCl3 400MHz): δ 0.89 (t, 3H, CH3(CH2)5-S) , 1.33 (m, 4H, CH3 (CH2)2(CH2)3-S), 1.49 (m, 11H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3, CH3(CH2)2 CH2(CH2)2-S), 1.73 (quin, 2H, CH3 (CH2)3 CH2CH2-S), 2.38 (s, 3H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3) , 3.02 (t, 2H, CH3 (CH2)3CH2CH2-S), 7.16 (s, 1H), 7.36 (d, 1H), 7.69 (s, 1H), 7.78 (d, 1H), 8.04 (s, 1H), (insg.5arom. CH), 11.62 (s, 1H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3)
13C−NMR (CDCl3 400MHz): δ 14.0 (CH3(CH2)5-S), 20.9 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 22.6 (CH3CH2(CH2)3CH2-S), 28.7 (CH3 CH2 (CH2)2 CH2CH2-S), 29.5 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 31.8 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3) , 33.8 (CH3(CH2)3CH2CH2-S), 35.4 (CH3(CH2)3CH2CH2-S), 113.6, 117.5, 119.3, 128.7, 129.2 (CHarom), 125.4, 141.2, 143.4 (Carom), 128.3 (Carom-CH3), 138.0(Carom-S), 139.1(Carom-C(CH3)3), 146.7(Carom-OH)
<合成例8> 化合物8の合成
【0095】
【化19】
【0096】
2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(50.0g, 0.158mol)、デカンオール(55.2g,0.317mol)、炭酸カリウム(48.1g, 0.348mol)及びヨウ化カリウム(1.8g, 0.011mol)を、DMF125g中で、125℃、12時間反応した。反応終了後、pHを調整した後、濾過、MeOH洗浄、水洗を行い、再結晶をすることにより、化合物8を得た。
FT−IR(KBr):2958cm−1:O−H伸縮振動 1448, 1392cm−1:トリアゾール環伸縮振動 641cm−1:C-S伸縮振動
1H−NMR (CDCl3 400MHz): δ 0.89 (t, 3H, CH3(CH2)9-S) , 1.26 (m, 12H, CH3 (CH2)6(CH2)3-S), 1.49 (m, 11H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3, CH3(CH2)6 CH2(CH2)2-S), 1.74 (quin, 2H, CH3 (CH2)7 CH2CH2-S), 2.38 (s, 3H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3) , 3.03 (t, 2H, CH3 (CH2)7CH2CH2-S), 7.16 (s, 1H), 7.36 (d, 1H), 7.69 (s, 1H), 7.78 (d, 1H), 8.05 (s, 1H), (insg.5arom. CH), 11.62 (s, 1H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3)
13C−NMR (CDCl3 400MHz): δ 14.0 (CH3(CH2)9-S), 20.9 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 22.7 (CH3CH2(CH2)7CH2-S), 28.7 ~ 29.5 (CH3 CH2 (CH2)6 CH2CH2-S), 29.6 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 31.9 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3) , 33.1 (CH3(CH2)7CH2CH2-S), 35.4 (CH3(CH2)7CH2CH2-S), 113.6, 117.5, 119.3, 128.7, 129.3 (CHarom), 125.4, 141.2, 143.4 (Carom), 128.3 (Carom-CH3), 138.0(Carom-S), 139.1(Carom-C(CH3)3), 146.7(Carom-OH)
<合成例9> 化合物9の合成
【0097】
【化20】
【0098】
2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(36.3g, 0.115mol)、sec−ブチルメルカプタン(20.8g, 0.231mol)、炭酸カリウム(35.0g, 0.253mol)及びヨウ化カリウム(1.3g, 0.008mol)を、DMF100g中で、125℃、12時間反応した。反応終了後、pH調整、濾過、MeOH洗浄、水洗を行い、再結晶をすることによって、化合物9を得た。
FT−IR(KBr):2961cm−1:O−H伸縮振動 1448, 1391cm−1:トリアゾール環伸縮振動 665cm−1:C-S伸縮振動
1H−NMR (CDCl3 400MHz): δ 1.06 (t, 3H, CH3CH2CH(CH3)-S), 1.37 (d, 3H, CH3CH2CH(CH3)-S), 1.49 (S, 9H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 1.61 (m, 2H, CH3CH2CH(CH3)-S), 2.38 (s, 3H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 3.32 (m, 1H, CH3CH2CH(CH3)-S), 7.17 (s, 1H), 7.42 (d, 1H), 7.80 (s, 1H), 7.84 (d, 1H), 8.06 (d, 1H), (insg.5arom. CH), 11.62 (s, 1H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3)
13C−NMR (CDCl3 400MHz): δ 11.5 (CH3CH2CH(CH3)-S), 20.3 (CH3CH2CH(CH3)-S), 20.9 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 29.4 (CH3CH2CH(CH3)-S), 29.5 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 35.4 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 44.6 (CH3CH2CH(CH3)-S), 117.3, 117.5, 119.3, 128.3, 128.8 (CHarom), 141.5, 143.2 (Carom), 125.4 (Carom-N), 131.2 (Carom-CH3), 136.4 (Carom-S), 139.1 (Carom-C(CH3)3), 146.7 (Carom-OH)
<合成例10> 化合物10の合成
【0099】
【化21】
【0100】
2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(32.3g, 0.102mol)、シクロヘキサンチオール(23.8g, 0.205mol)、炭酸カリウム(31.1g, 0.225mol)及びヨウ化カリウム(1.2g, 0.007mol)を、DMF100g中で、125℃、12時間反応した。反応終了後、pH調整、濾過、MeOH洗浄、水洗を行い、再結晶をすることによって、化合物10を得た。
FT−IR(KBr):2930cm−1:O−H伸縮振動 1450, 1391cm−1:トリアゾール環伸縮振動 667cm−1:C-S伸縮振動
1H−NMR (CDCl3 400MHz): δ 1.40 (m, 4H, CH2(CH2)2(CH2)2CH-S), 1.49 (S, 9H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 1.54 (m, 2H, CH2(CH2)2(CH2)2CH-S), 1.83 (m, 2H, CH2(CH2)2CH2CH2CH-S), 2.06 (m, 2H, CH2(CH2)2CH2CH2CH-S), 2.38 (s, 3H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 3.29 (m, 1H, CH2CH2CH2CH-S), 7.17 (s, 1H), 7.43 (d, 1H), 7.80 (s, 1H), 7.84 (d, 1H), 8.06 (d, 1H), (insg.5arom. CH), 11.62 (s, 1H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3)
13C−NMR (CDCl3 400MHz): δ 20.9 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 25.7 (CH2(CH2)2 (CH2)2CH-S), 26.0 (CH2(CH2)2 (CH2)2CH-S), 29.5 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 33.1 (CH2(CH2)2(CH2)2CH-S), 35.4 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 46.3 (CH2(CH2)2 (CH2)2CH-S), 117.2, 117.5, 119.3, 128.3, 128.8 (CHarom), 141.5, 143.2 (Carom), 125.4 (Carom-N), 131.2 (Carom-CH3), 136.1 (Carom-S), 139.1 (Carom-C(CH3)3), 146.7 (Carom-OH)
<合成例11> 化合物11の合成
【0101】
【化22】
【0102】
2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(50.0g, 0.158mol)、アリルメルカプタン(23.5g, 0.317mol)、炭酸カリウム(48.1g, 0.348mol)及びヨウ化カリウム(1.8g, 0.011mol)を、DMF125g中で、125℃、12時間反応した。反応終了後、pH調整、濾過、MeOH洗浄、水洗を行い、再結晶をすることによって、化合物11を得た。
FT−IR(KBr):3092cm−1:O−H伸縮振動 2999cm−1:=C−H伸縮振動 1449, 1390cm−1:トリアゾール環伸縮振動 664cm−1:C-S伸縮振動
1H−NMR (CDCl3 400MHz): δ 1.49 (S, 9H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 1.55 (m, 2H, CH2=CHCH2-S), 2.38 (s, 3H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 3.38 (m, 1H, CH2=CHCH2-S), 3.78 (m, 1H, CH2=CHCH2-S), 4.23 (m, 1H, CH2=CHCH2-S), 7.16 (s, 1H), 7.31 (d, 1H), 7.71 (s, 1H), 7.73 (d, 1H), 8.05 (d, 1H), (insg.5arom. CH), 11.66 (s, 1H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3)
13C−NMR (CDCl3 400MHz): δ 21.0 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 22.5 (CH2=CHCH2-S), 29.6 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 35.4 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 41.8 (CH2=CHCH2-S), 46.3 (CH2=CHCH2-S), 116.7, 119.3, 123.3, 128.2, 128.6 (CHarom), 140.8, 141.7 (Carom), 125.4 (Carom-N), 124.1 (Carom-CH3), 140.7 (Carom-S), 139.0 (Carom-C(CH3)3), 146.6 (Carom-OH)
<合成例12> 化合物12の合成
【0103】
【化23】
【0104】
2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(25.0g, 79.2mmol)、p−トルをエンチオール(19.7g,158.3mmol)、炭酸カリウム(24.1, 174.2mmol)及びヨウ化カリウム(0.92g, 5.54mmol)、DMF62.5g中で、125℃、12時間反応した。反応終了後、pHを調整した後、濾過、MeOH洗浄、水洗を行い、再結晶をすることにより、化合物12を得た。
FT−IR(KBr):3000cm−1:O−H伸縮振動 1444, 1389cm−1:トリアゾール環伸縮振動 667cm−1:C-S伸縮振動
1H−NMR (CDCl3400MHz): δ1.48 (s, 9H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 2.37 (s, 3H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3) , 2.40 (s, 3H, CH3-Ph-S-) , 7.16 (s, 1H), 7.23 (s, 2H), 7.32 (d, 1H), 7.43 (s, 2H), 7.56 (s, 1H), 7.81 (d, 1H), 8.02 (d, 1H), (insg.9arom. CH), 11.56 (s, 1H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3)
13C−NMR (CDCl3400MHz): δ20.9 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 21.2 (CH3-Ph-S-), 29.5 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 35.4 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3) , 115.3, 117.8, 119.3, 128.7, 129.3 130.5, 133.7(CHarom), 125.4, 141.2, 143.4 (Carom), 128.3 (Carom-CH3), 138.9(Carom-S) , 138.7(S -Carom), 139.1(Carom-C(CH3)3), 146.7(Carom-OH)
<合成例13> 化合物13の合成
【0105】
【化24】
【0106】
2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(20.0g, 63.3mmol)、ベンジルメルカプタン(15.7g,126.6mmol)、炭酸カリウム(19.3g, 139.4mmol)及びヨウ化カリウム(0.74g, 4.5mmol)を、DMF50.0g中で、125℃、9時間反応した。反応終了後、pHを調整した後、濾過、MeOH洗浄、水洗を行い、再結晶をすることにより、化合物13を得た。
FT−IR(KBr):2960cm−1:O−H伸縮振動 1441, 1392cm−1:トリアゾール環伸縮振動 664cm−1:C-S伸縮振動
1H−NMR (CDCl3400MHz): δ1.49 (s, 9H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 2.38 (s, 3H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3) , 4.24 (s, 2H, Ph-CH2-S-) , 7.16 (s, 1H), 7.26〜7.38 (m, 6H), 7.72 (s, 1H), 7.80 (d, 1H), 8.04 (d, 1H), (insg.10arom. CH), 11.58 (s, 1H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3)
13C−NMR (CDCl3400MHz): δ20.9 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 29.5 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 35.4 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 38.6 (Ph-CH2-S-), 115.4, 117.6, 119.3, 128.7, 128.8, 128.8, 129.7, 137.0(CHarom), 125.4, 141.4, 143.4 (Carom), 128.3 (Carom-CH3), 136.5(Carom CH2-S-) , 138.7(S -Carom), 139.1(Carom-C(CH3)3), 146.7(Carom-OH)
<合成例14> 化合物14の合成
【0107】
【化25】
【0108】
2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(50.5g, 0.160mol)、2−メルカプトエタノール(25.0g, 0.320mol)、炭酸カリウム(48.6g, 0.352mol)及びヨウ化カリウム(1.9g, 0.011mol)を、DMF125g中で、125℃、12時間反応した。反応終了後、pH調整、濾過、MeOH洗浄、水洗を行い、再結晶をすることによって、化合物14を得た。
FT−IR(KBr):3350cm−1:O−H伸縮振動 1437, 1392cm−1:トリアゾール環伸縮振動 666cm−1:C-S伸縮振動
1H−NMR (CDCl3 400MHz): δ 1.49 (S, 9H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 2.38 (s, 3H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 2.79 (t, 2H, HOCH2CH2-S), 3.25 (t, 2H, HOCH2CH2-S), 7.17 (s, 1H), 7.41 (d, 1H), 7.83 (s, 1H), 7.84 (d, 1H), 8.05 (d, 1H), (insg.5arom. CH), 11.56 (s, 1H, -Ph-OH-CH3-C(CH3)3)
13C−NMR (CDCl3 400MHz): δ 20.9 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 29.5 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 35.4 (-Ph-OH-CH3-C(CH3)3), 36.8 (HOCH2CH2-S), 60.3 (HOCH2CH2-S), 115.8, 118.0, 119.3, 128.4, 129.7 (CHarom), 141.5, 143.2 (Carom), 125.3 (Carom-N), 128.9 (Carom-CH3), 135.7 (Carom-S), 139.2 (Carom-C(CH3)3), 146.7 (Carom-OH)
紫外吸収
化合物1〜4、6〜14をクロロホルムで100μMに溶解して10mm石英セルに収容し、紫外可視分光光度計(日本分光社製 V−550)を用いて200〜700nmの吸収スペクトルを測定した。化合物5については、モル吸光係数が大きく、100μMで測定した場合、吸光度が測定範囲を超えたため、50μMの濃度で測定した。比較として、2−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)−クロロベンゾトリアゾールを同様にクロロホルムに溶解したサンプルについても吸収スペクトルを測定した(図1〜15)。それらのスペクトルから、350〜390nmの波長領域の吸収ピーク(最大吸収波長:λmax)、吸光度を読み取り、そのピークのモル吸光係数(最大モル吸光係数:εmax)を下記式によって求めた(表1)。
モル吸光係数:εmax(L/(mol・cm)=A:吸光度/[c:モル濃度(mol/L)×l:セルの光路長(cm)]
また、得られた吸収スペクトルから、350〜390nmにある吸収ピークにおける長波長側の吸収スペクトルとベースライン(430〜500nmの吸収スペクトルの傾きが0のライン)との交点をピークエンドとして(図1)、下記式により、350〜390nmの波長領域にある吸収ピークの長波長側の傾きの絶対値を求めた(表2)。
|350〜390nmの波長領域にある吸収ピークの長波長側の傾き|=|(ピークエンドの吸光度−350〜390nmの波長領域にある吸収ピークの吸光度)/(ピークエンドの吸収波長−350〜390nmの波長領域にある吸収ピークの波長)|
また、化合物5については、モル吸光係数が大きく、100μMで測定した場合、吸光度が測定範囲を超えたため、10,25,50μMの濃度で吸収ピークを測定し、350〜390nmの波長領域にある吸収ピークの長波長側の傾きの絶対値と紫外線吸収剤の濃度をグラフ化したところ、図23のように、直線の一次の関係にあり、そのグラフの式(Y=0.0006X−0.0024)から、化合物5の100μMの傾きの絶対値を算出した。
【0109】
【表1】
【0110】
【表2】
【0111】
化合物1〜14の紫外線吸収剤は、2−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)−クロロベンゾトリアゾールと比較して、最大吸収波長が360〜375nmに存在し、モル吸光係数が化合物1〜10、12〜14は20000L/(mol・cm)以上、化合物11は18000L/(mol・cm)と大きく(紫外線吸収効率が高く)、また、その吸収ピークの長波長側の傾きの絶対値は0.030以上と大きく、シャープであった。
【0112】
この特性により、以下の実施例1〜10では、少量の本願の紫外線吸収剤をプラスチックレンズに添加することによって、有害光の400〜420nm付近の波長光を効率的に吸収しながらも、420nm付近以上の波長の吸収を抑制し、プラスチックレンズの黄色化を抑制する効果を持つことを確認した。
(プラスチックレンズの作製)
本願の紫外線吸収剤と従来の紫外線吸収剤を添加した樹脂を作製した。なお、以下の実施例及び比較例では、同じ種類の材料の樹脂について、2mm厚平板レンズの420nmの透過率ができるだけ近い値になるように、各紫外線吸収剤の添加量を調整した。
<実施例1>
フラスコに化合物1を0.49g、ステファン製ゼレックUNを0.1g、ジブチル錫ジクロリドを0.04g、2,5−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2,2,1]ヘプタンと2,6−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2,2,1]ヘプタンの混合物を50.8g入れ、25℃で1時間撹拌して完全に溶解させた。その後、この混合液にペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)を22.4g、1,2−ビス[(2−メルカプトエチル)チオ]−3−メルカプトプロパンを26.8g添加し25℃で30分混合した。尚、調合液中において化合物1は重合性化合物の重量総和に対して0.49重量%含まれていた。
【0113】
この調合液を0.3mmHg以下で1時間脱泡を行い、5μmPTFEフィルタにて濾過を行い、中心厚2mm、直径80mmの平板用ガラス型とテープよりなるモールド型に注入した。このモールドを25℃から130℃まで徐々に昇温し、130℃で2時間保持した後室温まで冷却した。昇温開始から冷却までは18時間であった。重合終了後、得られた成形体をモールドから離型し、この平板レンズを130℃2時間でアニールを行った。
<実施例2>
実施例1の化合物1を0.53g(重合性化合物の重量総和に対して0.53重量%)添加した以外は実施例1と同様な方法で2mm厚の平板レンズを得た。
<実施例3>
フラスコに化合物1を0.53g(重合性化合物の重量総和に対して0.53重量%)、ステファン製ゼレックUNを0.1g、ジブチル錫ジクロリドを0.2g、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネートを58.9g入れ、25℃で1時間撹拌して完全に溶解させた。その後、この混合液に5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンと4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンと4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンを主成分とする混合物を41.1g添加し25℃で30分混合した。
【0114】
調合液の調製以外は実施例1と同様な方法で2mm厚の平板レンズを得た。
<実施例4>
フラスコに化合物1を0.27g(重合性化合物の重量総和に対して0.27重量%)、ステファン製ゼレックUNを0.1g、ジブチル錫ジクロリドを0.006g、m−キシリレンジイソシアネートを50.6g入れ、25℃で1時間撹拌して完全に溶解させた。その後、この混合液に5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンと4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンと4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンを主成分とする混合物を49.4g添加し25℃で30分混合した。
【0115】
調合液の調製以外は実施例1と同様な方法で2mm厚の平板レンズを得た。
<実施例5>
フラスコ内に化合物1を0.23g(重合性化合物の重量総和に対して0.23重量%)、ビス(β−エピチオプロピル)スルフィドを71g、硫黄を23g、(2−メルカプトエチル)スルフィドを2.2g入れ、60℃で30分撹拌した。続いて、2−メルカプト−1−メチルイミダゾールを0.14g入れ、10分間0.3mmHg以下で脱泡した後、さらに60℃で120分撹拌し、その後40分かけて30℃に冷却した。得られた溶液に、トリエチルベンジルアンモニウムクロリド0.012gとジブチル錫ジクロリド0.01gを(2−メルカプトエチル)スルフィド3.8gに溶解させて得られた溶液を滴下し、0.3mmHg以下で20分脱泡を行った。この溶液を5μmPTFEフィルタにて濾過を行い、中心厚2mm、直径80mmの平板用ガラス型とテープよりなるモールド型に注入した。このモールドを25℃から110℃まで徐々に昇温し、110℃で2時間保持した後室温まで冷却した。昇温開始から冷却までは18時間であった。重合終了後、得られた成形体をモールドから離型し、この平板レンズを110℃2時間でアニールを行った。
<実施例6>
実施例1の化合物1を化合物2に変更し、0.56g(重合性化合物の重量総和に対して0.56重量%)添加した以外は実施例1と同様な方法で2mm厚の平板レンズを得た。
<実施例7>
実施例1の化合物1を化合物4に変更し、0.58g(重合性化合物の重量総和に対して0.58重量%)添加した以外は実施例1と同様な方法で2mm厚の平板レンズを得た。
<実施例8> 実施例1の化合物1を化合物6に変更し、0.43g添加した以外は実施例1と同様な方法で2mm厚の平板レンズを得た。
<実施例9>
実施例1の化合物1を化合物7に変更し、0.47g添加した以外は実施例1と同様な方法で2mm厚の平板レンズを得た。
<実施例10>
実施例1の化合物1を化合物8に変更し、0.53g添加した以外は実施例1と同様な方法で2mm厚の平板レンズを得た。
<比較例1>
実施例1の化合物1を2−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)−クロロベンゾトリアゾールに変更し、0.75g(重合性化合物の重量総和に対して0.75重量%)添加した以外は実施例1と同様な方法で2mm厚の平板レンズを得た。
<比較例2>
比較例1の化合物1を0.85g(重合性化合物の重量総和に対して0.85重量%)添加した以外は実施例1と同様な方法で2mm厚の平板レンズを得た。
<比較例3>
実施例3の化合物1を2−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)−クロロベンゾトリアゾールに変更し、0.75g(重合性化合物の重量総和に対して0.75重量%)添加した以外は実施例1と同様な方法で2mm厚の平板レンズを得た。
<比較例4>
実施例4の化合物1を2−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)−クロロベンゾトリアゾールに変更し、0.50g(重合性化合物の重量総和に対して0.50重量%)添加した以外は実施例1と同様な方法で2mm厚の平板レンズを得た。
<比較例5>
実施例5の化合物1を2−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)−クロロベンゾトリアゾールに変更し、0.30g(重合性化合物の重量総和に対して0.30重量%)添加した以外は実施例5と同様な方法で2mm厚の平板レンズを得た。
(1)透過率、黄色度(YI値)、視感透過率
実施例と比較例で作製したサンプルレンズについて、紫外可視分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製 U−4100)を用いて、350〜800nmの分光透過率、黄色度(YI値)、視感透過率、を測定した。黄色度と視感透過率はD65光源2度視野の値とした。
(2)サンプルレンズの外観評価
作製したサンプルレンズについて、同じ材料の樹脂で420nm付近の透過率が近い実施例と比較例のサンプルレンズの黄色さを目視により比較、確認した。樹脂自体がもともと持っている黄色さが樹脂の種類によって異なるため、別の樹脂で紫外線吸収剤を添加したことによる黄色さを正確に比較できないためである。比較したレンズは、詳しくは、実施例1と比較例1、実施例2と比較例2、実施例3と比較例3、実施例4と比較例4、実施例5と比較例5、実施例6と比較例1、実施例7と比較例2、実施例8と比較例1、実施例9と比較例1、実施例10と比較例1である。外観は以下の基準により評価した。また紫外線吸収剤の樹脂からの析出と透明性について目視で確認した。
黄色さ・・・○:より無色に近い、×:黄色い
(3)樹脂の屈折率、アッベ数
作製したサンプルレンズの546nmにおける屈折率とアッベ数を、アッベ屈折計(アタゴ製、DR−M4)を用いて測定した。
(4)耐熱性、耐光性
[耐熱性評価1]
平板レンズを5mm厚とした以外は上記実施例および比較例の記述と同様の方法で作製したサンプルレンズについて、60℃に加熱したオーブン中に1週間入れた後、室温に冷却したレンズのYI値を測定し、(加熱後のYI)−(加熱前のYI)=ΔYIとしてレンズの劣化(黄変)度合いを確認した(実施例1、3、4、5、比較例1、3、4、5)。
[耐熱性評価2]
平板レンズを5mm厚とした以外は上記実施例および比較例の記述と同様の方法で作製したサンプルレンズについて、150℃に加熱したオーブン中に1時間入れた後、室温に冷却したレンズのYI値を測定し、(加熱後のYI)−(加熱前のYI)=ΔYIとしてレンズの劣化(黄変)度合いを確認した(実施例3、比較例3)。
[耐光性評価1]
実施例1、3と比較例1、3で作製した2mm厚のサンプルレンズについて、キセノン照射装置で光を100時間照射後のレンズのYI値を測定し、(キセノン照射後のYI)−(キセノン照射前のYI)=ΔYIとしてレンズの劣化(黄変)度合いを確認した。
[耐光性評価2]
実施例4、5と比較例4、5で作製した2mm厚のサンプルレンズについて、キセノン照射装置で光を20時間照射後のレンズのYI値を測定し、(キセノン照射後のYI)−(キセノン照射前のYI)=ΔYIとしてレンズの劣化(黄変)度合いを確認した。
【0116】
透過率、透過率の差分、YI値、視感透過率、外観評価、屈折率、アッベ数、耐熱性、耐光性の結果を表3に、透過スペクトルの測定結果を図16図22に示す。
【0117】
【表3】
【0118】
2−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)−クロロベンゾトリアゾールの分子量316に対して、化合物1〜14は、分子量が360を超えるにも関わらず、2−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)−クロロベンゾトリアゾールと同様にモノマーに対して良好に溶解し、得られたプラスチックレンズ表面にも析出せず、本願の紫外線吸収剤の構造によってモノマー、プラスチックレンズへの親和性を発現することを確認した。
【0119】
また、式(I)で表わされる紫外線吸収剤を用いたプラスチックレンズは、2−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)−クロロベンゾトリアゾールを用いたレンズと比較して、少ない添加量で400〜420nmの波長光をより効率的に吸収し、眼への悪影響を抑制しながら420nm付近以上の波長光の透過性が良好であり、プラスチックレンズの黄色化を抑制した。
【0120】
さらに、樹脂の屈折率を下げることなく高アッベ数である外観と光学性能に優れたレンズが得られ、かつ耐熱性、耐光性にも優れたレンズが得られた。
【0121】
耐熱性については、紫外線吸収剤の熱分解温度(例えば、5wt%重量減少温度)は、非常に高い温度での樹脂加工時に重要な物性だが、本実施例では、紫外線吸収剤を添加したレンズ(樹脂)の使用条件下における耐熱性を確認するために、促進的に、一定の温度条件下、一定時間でのレンズの耐熱黄変性を確認した。
【0122】
本実施例の化合物を添加したレンズは、2−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)−クロロベンゾトリアゾールを添加したレンズより、総体的に優れた結果であり、本実施例の化合物、さらには本実施例の化合物を添加した樹脂において耐熱性(耐熱黄変性)に優れていることを確認した。
【0123】
耐光性については、本実施例の化合物と比較例の化合物2−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)−クロロベンゾトリアゾールとで吸収ピークが異なるうえに、レンズ樹脂も光を吸収するため、紫外線吸収剤の光吸収波長だけではなく、促進的に、レンズの使用に即したより波長範囲の広い光を照射し、レンズの耐光黄変性を確認した。
【0124】
本実施例の化合物を添加したレンズは、2−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)−クロロベンゾトリアゾールを添加したレンズより総体的に優れた結果であり、本実施例の化合物、さらには本実施例の化合物を添加した樹脂において耐光性に優れていることを確認した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23