特許第6162912号(P6162912)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6162912防錆塗料組成物、塗膜形成方法及び複層塗膜形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6162912
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】防錆塗料組成物、塗膜形成方法及び複層塗膜形成方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 5/08 20060101AFI20170703BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20170703BHJP
   C09D 163/00 20060101ALI20170703BHJP
   C09D 175/00 20060101ALI20170703BHJP
   C09D 133/00 20060101ALI20170703BHJP
   C09D 5/10 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
   C09D5/08
   C09D7/12
   C09D163/00
   C09D175/00
   C09D133/00
   C09D5/10
【請求項の数】11
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-16094(P2017-16094)
(22)【出願日】2017年1月31日
【審査請求日】2017年2月2日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 寛
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 圭祐
【審査官】 吉田 邦久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−074272(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 5/08
C09D 5/10
C09D 7/12
C09D 133/00
C09D 163/00
C09D 175/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂(A)、
ジエチルケトンによってケチミン化されたアミン硬化剤(B)、
防錆顔料(C)、及び
沸点140℃以上の有機溶剤(D)を含有する防錆塗料組成物であって、
該有機溶剤(D)の含有量が、前記エポキシ樹脂(A)及びアミン硬化剤(B)の固形分総量に対して、50〜100質量%である、防錆塗料組成物。
【請求項2】
前記エポキシ樹脂(A)が、エポキシ当量100〜2000かつ数平均分子量300〜2000のエポキシ樹脂(A1)を含有する、請求項1に記載の防錆塗料組成物。
【請求項3】
前記エポキシ樹脂(A1)が、アルキルノボラックフェノールエポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、アクリル変性エポキシ樹脂、脂肪酸変性エポキシ樹脂、ポリエステル変性エポキシ樹脂、及び末端アルキルフェノール変性エポキシ樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する、請求項2に記載の防錆塗料組成物。
【請求項4】
前記アミン硬化剤(B)が、活性水素当量が30〜2000であるアミン硬化剤(B1)を含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の防錆塗料組成物。
【請求項5】
前記防錆顔料(C)が、亜鉛を有する金属塩、リンを有する金属塩、及びアルカリ金属を有する金属塩からなる群から選ばれる少なくとも1種(C1)を含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の防錆塗料組成物。
【請求項6】
前記有機溶剤(D)が、炭化水素系有機溶剤、アルコール系有機溶剤、エステル系有機溶剤、グリコール系有機溶剤、及びケトン系有機溶剤からなる群から選ばれる少なくとも1種(D1)を含有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の防錆塗料組成物。
【請求項7】
さらに、シラン化合物(E)を含有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の防錆塗料組成物。
【請求項8】
さらに、脱水剤(F)を含有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の防錆塗料組成物。
【請求項9】
防錆塗料組成物全体に対して、前記エポキシ樹脂(A)の含有量が5〜20質量%、前記アミン硬化剤(B)の含有量が1〜10質量%、前記防錆顔料(C)の含有量が0.5〜15質量%、前記有機溶剤(D)の含有量が5〜20質量%である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の防錆塗料組成物。
【請求項10】
被塗物に、請求項1〜9のいずれか1項に記載の防錆塗料組成物を塗装する、塗膜形成方法。
【請求項11】
被塗物に、下塗塗料として、請求項1〜9のいずれか1項に記載の防錆塗料組成物を塗装して下塗塗膜を形成し、該下塗塗膜面に上塗塗料を塗装して上塗塗膜を形成する、複層塗膜形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防錆塗料組成物、防錆塗料組成物を塗装する塗膜形成方法、及び防錆塗料組成物を塗装して下塗塗膜を形成し、得られた下塗塗膜面に上塗塗料を塗装して上塗塗膜を形成する複層塗膜形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、亜鉛メッキ鋼やアルミニウム鋼等の非鉄構造物に対する塗装には、通常、密着性、防食性、耐水性、耐衝撃性、乾燥性等の性能に優れるエポキシ樹脂系の塗料が使われることが多い。
【0003】
しかし、通常使用されるエポキシ樹脂系の塗料は、そのほとんどが主剤と硬化剤とからなる二液型であり、混合後すぐに硬化反応が進むため使用可能な時間が極めて短く、作業性に問題があった。特に、既設の送電用や通信用の鉄塔構造物に塗装を行う場合には、足場のない高所での作業となるため、可使時間の制約がないことが、作業性や安全性の観点から強く求められている。
【0004】
上記問題点を解決するため、例えば、特許文献1では、エポキシ樹脂にアミン類を反応させて得られるアミン変性エポキシ樹脂に、ポリイソシアネート化合物を反応させて得られる一液型ウレタン変性エポキシ樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5553205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、本発明者らの検討によると、特許文献1に記載のエポキシ樹脂組成物では、アルミ素材などの非鉄金属に対する塗膜の密着性の点で満足のいくものではない。また、適切な塗装粘度に必要なシンナー希釈率が高いため塗着固形分が低くなり、表面乾燥の遅延やウェットオンウェット塗装における上塗との混層を引き起こすため、高意匠が求められる用途においては塗装後の仕上がり性について不満が残る。
【0007】
本発明は、上記従来の実情を鑑みてなされたものであって、塗膜の密着性や仕上がり性に優れるだけでなく、速乾性、貯蔵安定性及び防食性にも優れる防錆塗料組成物を提供することを解決すべき課題としている。
【0008】
また、本発明は、被塗物に、上記防錆塗料組成物を塗装する塗膜形成方法、及び被塗物に、下塗塗料として、上記防錆塗料組成物を塗装して下塗塗膜を形成し、該下塗塗膜面に上塗塗料を塗装して上塗塗膜を形成する複層塗膜形成方法を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、エポキシ樹脂(A)、ジエチルケトンによってケチミン化されたアミン硬化剤(B)、防錆顔料(C)、及び沸点140℃以上の有機溶剤(D)を含有する防錆塗料組成物によって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は下記<1>〜<11>に関するものである。
<1>エポキシ樹脂(A)、ジエチルケトンによってケチミン化されたアミン硬化剤(B)、防錆顔料(C)、及び沸点140℃以上の有機溶剤(D)を含有する防錆塗料組成物であって、該有機溶剤(D)の含有量が、前記エポキシ樹脂(A)及びアミン硬化剤(B)の固形分総量に対して、50〜100質量%である、防錆塗料組成物。
<2>前記エポキシ樹脂(A)が、エポキシ当量100〜2000かつ数平均分子量300〜2000のエポキシ樹脂(A1)を含有する、<1>に記載の防錆塗料組成物。
<3>前記エポキシ樹脂(A1)が、アルキルノボラックフェノールエポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、アクリル変性エポキシ樹脂、脂肪酸変性エポキシ樹脂、ポリエステル変性エポキシ樹脂、及び末端アルキルフェノール変性エポキシ樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する、<2>に記載の防錆塗料組成物。
<4>前記アミン硬化剤(B)が、活性水素当量が30〜2000であるアミン硬化剤(B1)を含有する、<1>〜<3>のいずれか1つに記載の防錆塗料組成物。
<5>前記防錆顔料(C)が、亜鉛を有する金属塩、リンを有する金属塩、及びアルカリ金属を有する金属塩からなる群から選ばれる少なくとも1種(C1)を含有する、<1>〜<4>のいずれか1つに記載の防錆塗料組成物。
<6>前記有機溶剤(D)が、炭化水素系有機溶剤、アルコール系有機溶剤、エステル系有機溶剤、グリコール系有機溶剤、及びケトン系有機溶剤からなる群から選ばれる少なくとも1種(D1)を含有する、<1>〜<5>のいずれか1つに記載の防錆塗料組成物。
<7>さらに、シラン化合物(E)を含有する、<1>〜<6>のいずれか1つに記載の防錆塗料組成物。
<8>さらに、脱水剤(F)を含有する、<1>〜<7>のいずれか1つに記載の防錆塗料組成物。
<9>防錆塗料組成物全体に対して、前記エポキシ樹脂(A)の含有量が5〜20質量%、前記アミン硬化剤(B)の含有量が1〜10質量%、前記防錆顔料(C)の含有量が0.5〜15質量%、前記有機溶剤(D)の含有量が5〜20質量%である、<1>〜<8>のいずれか1つに記載の防錆塗料組成物。
<10>被塗物に、<1>〜<9>のいずれか1つに記載の防錆塗料組成物を塗装する、塗膜形成方法。
<11>被塗物に、下塗塗料として、<1>〜<9>のいずれか1つに記載の防錆塗料組成物を塗装して下塗塗膜を形成し、該下塗塗膜面に上塗塗料を塗装して上塗塗膜を形成する、複層塗膜形成方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、塗膜の密着性や仕上がり性に優れるだけでなく、速乾性、貯蔵安定性及び防食性にも優れる防錆塗料組成物を提供することができる。
【0012】
また、本発明によれば、被塗物に、上記防錆塗料組成物を塗装する塗膜形成方法、及び被塗物に、下塗塗料として、上記防錆塗料組成物を塗装して下塗塗膜を形成し、該下塗塗膜面に上塗塗料を塗装して上塗塗膜を形成する複層塗膜形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳述するが、これらは望ましい実施態様の一例を示すものであり、本発明はこれらの内容に特定されるものではない。
【0014】
本発明の防錆塗料組成物は、エポキシ樹脂(A)、ジエチルケトンによってケチミン化されたアミン硬化剤(B)、防錆顔料(C)、及び沸点140℃以上の有機溶剤(D)を含有する。
【0015】
[エポキシ樹脂(A)]
本発明で用いるエポキシ樹脂(A)は、1分子中にエポキシ基を1個以上、好ましくは平均2個以上、より好ましくは平均2〜5個有する樹脂である。
【0016】
エポキシ樹脂(A)としては、例えば、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、その他のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂などを挙げることができる。
【0017】
グリシジルエーテル型エポキシ樹脂は、多価アルコール、多価フェノールなどとエピハロヒドリン又はアルキレンオキシドとを反応させて得ることができるグリシジルエーテル基を有するエポキシ樹脂である。
【0018】
多価アルコールの例としては、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ソルビトールなどを挙げることができる。
【0019】
多価フェノールの例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[ビスフェノールA]、2,2−ビス(2−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(2−ヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ハロゲン化ビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン[ビスフェノールF]、トリス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、レゾルシン、テトラヒドロキシフェニルエタン、1,2,3−トリス(2,3−エポキシプロポキシ)プロパン、ノボラック型多価フェノール、クレゾール型多価フェノールなどを挙げることができる。
【0020】
これらの中でも、ビスフェノールAから誘導されるビスフェノールA型エポキシ樹脂を好適に用いることができる。
【0021】
グリシジルエステル型エポキシ樹脂としては、例えば、フタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ダイマー酸ジグリシジルエステルなどを挙げることができる。
【0022】
その他のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、トリグリシジルイソシアヌレートなどを挙げることができる。
【0023】
脂環族エポキシ樹脂としては、例えば、(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル)メチル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、エポリードGT300(ダイセル化学工業株式会社製、商品名、3官能脂環式エポキシ樹脂)、エポリードGT400(ダイセル化学工業株式会社製、商品名、4官能脂環式エポキシ樹脂)、EHPE(ダイセル化学工業株式会社製、商品名、多官能脂環式エポキシ樹脂)などを挙げることができる。
【0024】
また、エポキシ樹脂(A)として、アルキルフェノール又はアルキルノボラックフェノール型樹脂とエピクロルヒドリンとを反応させてなる、エポキシ基導入アルキルフェノール又はアルキルノボラックフェノールエポキシ樹脂を使用することができる。
【0025】
さらに、エポキシ樹脂(A)として、変性エポキシ樹脂も使用することができ、例えば、ウレタン変性エポキシ樹脂、アクリル変性エポキシ樹脂、脂肪酸変性エポキシ樹脂、ポリエステル変性エポキシ樹脂、末端アルキルフェノール変性エポキシ樹脂、アミン変性エポキシ樹脂、ダイマー酸変性エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0026】
また、エポキシ樹脂(A)は、防食性、作業性の観点から、下記エポキシ樹脂(A1)を含有することが好ましい。
エポキシ樹脂(A1)のエポキシ当量は100〜2000であり、好ましくは200〜1000、より好ましくは400〜800である。
エポキシ樹脂(A1)のエポキシ当量が100未満であると得られる塗膜が脆弱となる場合があり、2000を超えると硬化性が不十分となる場合がある。
【0027】
なお、エポキシ当量とは、1グラム当量のエポキシ基を含む樹脂のグラム数(g/eq)を意味する。本明細書において、エポキシ当量はメーカー公表値もしくはJIS K 7236に準じて測定されたエポキシ当量を意味する。
【0028】
エポキシ樹脂(A1)の数平均分子量は300〜2000であり、好ましくは600〜1500、より好ましくは900〜1200である。
エポキシ樹脂(A1)の数平均分子量が300未満であると得られる塗膜が脆弱となる場合があり、2000を超えると硬化性が不十分となる場合がある。
【0029】
なお、本明細書において、数平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定された数平均分子量を意味する。
【0030】
また、エポキシ樹脂(A1)は、アルキルノボラックフェノールエポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、アクリル変性エポキシ樹脂、脂肪酸変性エポキシ樹脂、ポリエステル変性エポキシ樹脂、及び末端アルキルフェノール変性エポキシ樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。
これらの中でも、環境に配慮した弱溶剤系塗料への適用の観点から、特にアルキルノボラックフェノールエポキシ樹脂を含有することが好ましい。
【0031】
[ジエチルケトンによってケチミン化されたアミン硬化剤(B)]
本発明で用いるジエチルケトンによってケチミン化されたアミン硬化剤(B)は、アミノ基のブロックが解除されると、エポキシ樹脂(A)中のエポキシ基と反応する硬化剤であり、ジエチルケトンでブロックされた第1級アミノ基を1分子中に2個以上有する。
【0032】
該アミン硬化剤(B)は、例えば、1分子中に第1級アミノ基を2個以上有するポリアミン化合物をジエチルケトンと反応させてケチミン化し、ポリアミン化合物中の第1級アミノ基を実質的に全てブロックすることによって得ることができる。
該ブロックによって、アミン硬化剤の臭気、毒性などの問題を解消し、作業時の利便性向上などを図ることができる。本発明のように、特にジエチルケトンを用いてブロックすることにより、高反応性の防錆塗料組成物を得ることができるという利点がある。
【0033】
上記ブロック化前のポリアミン化合物は、脂肪族系、脂環族系及び芳香族系のいずれであってもよい。
該ポリアミン化合物の活性水素当量は、通常2000以下、好ましくは30〜1000である。また、該ポリアミン化合物の数平均分子量は、通常5000以下、好ましくは60〜3000である。
【0034】
該ポリアミン化合物しては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ポリ(オキシプロピレン)ジアミンなどの脂肪族ポリアミン類;キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、フェニレンジアミンなどの芳香族ポリアミン類;イソホロンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンなどの脂環族ポリアミン類などを挙げることができる。
【0035】
また、本発明のジエチルケトンによってケチミン化されたアミン硬化剤(B)は、硬化性の観点から、下記アミン硬化剤(B1)を含有することが好ましい。
アミン硬化剤(B1)の活性水素当量は30〜2000であり、好ましくは50〜1000、より好ましくは70〜600である。
アミン硬化剤(B1)の活性水素当量が30未満であると得られる塗膜が脆弱となる場合があり、2000を超えると硬化性が不十分となる場合がある。
【0036】
なお、本明細書において、活性水素当量とはアミン分子量を活性水素数で割ることで得られる活性水素1当量を含むグラム数を意味する。
【0037】
[防錆顔料(C)]
本発明で用いる防錆顔料(C)は、防食性の観点から、亜鉛を有する金属塩、リンを有する金属塩、及びアルカリ土類金属を有する金属塩からなる群から選ばれる少なくとも1種(C1)を含有することが好ましい。
ここで、アルカリ土類金属とは、周期表第2族に属する、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウムの4元素の総称である。
【0038】
亜鉛を有する金属塩としては、リン酸亜鉛等が挙げられる。リンを有する金属塩としては、トリポリリン酸2水素アルミニウムと酸化亜鉛の混合物等が挙げられる。アルカリ土類金属を有する金属塩としては、亜リン酸カルシウム等が挙げられる。
これらの中でも、高防食性の観点から、亜リン酸塩が特に好ましい。
【0039】
[沸点140℃以上の有機溶剤(D)]
本発明で用いる有機溶剤(D)は、塗料組成物の各成分の均一溶解又は分散化、粘度調整などの目的で使用される。
【0040】
有機溶剤(D)の沸点は、得られる塗膜の仕上がり外観の観点から、140℃以上であり、好ましくは150℃以上、より好ましくは160℃以上である。
【0041】
また、有機溶剤(D)は、溶解性の観点から、炭化水素系有機溶剤、アルコール系有機溶剤、エステル系有機溶剤、グリコール系有機溶剤、及びケトン系有機溶剤からなる群から選ばれる少なくとも1種(D1)を含有することが好ましい。
【0042】
炭化水素系有機溶剤としては、例えば、ミネラルスピリット、ソルベントナフサ、ターペン、ノルマルデカンなどが挙げられる。
【0043】
アルコール系有機溶剤としては、例えば、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−エチル−1−ヘキサノール、ベンジルアルコール、ヘキシレングリコールなどが挙げられる。
【0044】
エステル系有機溶剤としては、例えば、酢酸−3−メトキシブチル、酢酸アミル、乳酸エチル、乳酸メチル、乳酸ブチル、3−メトキシ−3−メチルブチルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネートなどが挙げられる。
【0045】
グリコール系有機溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノブチルエーテル、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノターシャリーブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジメチルプロピレンジグリコール171などが挙げられる。
【0046】
ケトン系有機溶剤としては、例えば、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、イソホロン、メチルアミルケトン、ペントキノンなどが挙げられる。
これらは単独で、あるいは2種以上を混合して使用することができる。
【0047】
これらの中でも、環境に配慮した弱溶剤の観点から、ミネラルスピリットが好ましい。
【0048】
さらに、有機溶剤(D)の含有量は、エポキシ樹脂(A)及びジエチルケトンによってケチミン化されたアミン硬化剤(B)の固形分総量に対して、50〜100質量%であり、好ましくは55〜95質量%、より好ましくは60〜80質量%である。
該含有量が50質量%未満であると得られる塗膜の平滑性が不十分となる場合があり、100質量%を超えると表面乾燥性が低下する場合があるからである。
【0049】
[シラン化合物(E)]
本発明の防錆塗料組成物は、シラン化合物(E)を含有することができる。シラン化合物(E)を含有させることにより、本発明の防錆塗料組成物の基材への密着性を向上させ、得られる塗膜の耐塩水性等の防食性も向上させることができる。
【0050】
シラン化合物(E)としては、例えば、ジメトキシジメチルシラン、ジメトキシジエチルシラン等のジアルコキシシラン類;トリメトキシメチルシラン、トリメトキシエチルシラン等のトリアルコキシシラン類;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等のテトラアルコキシシラン類;ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、2−スチリルエチルトリメトキシシラン等のビニルシラン類;β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のエポキシシラン類;γーメルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン等のその他のシラン類、これらのシラン化合物の縮合物及びビニルシラン類のラジカル(共)重合体などが挙げられる。
【0051】
これらの中でも、塗料樹脂との化学結合性の観点から、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のエポキシシラン類が好ましい。
【0052】
[脱水剤(F)]
本発明の防錆塗料組成物は、脱水剤(F)を含有することができる。脱水剤(F)を含有させることにより、防錆塗料組成物の保存安定性を向上させることができる。
【0053】
脱水剤(F)としては、例えば、(1)粉末状で多孔性に富んだ金属酸化物又は炭化物質;例えば、合成シリカ、活性アルミナ、ゼオライト、活性炭など、(2)CaSO、CaSO・1/2HO、CaOなどの組成を有するカルシウム化合物類;例えば、焼き石膏、可溶性石膏、生石灰など、(3)金属アルコキシド類;例えば、アルミニウムイソプロピレート、アルミニウムsec−ブチレート、テトライソプロピルチタネート、テトラn−ブチルチタネート、ジルコニウム2−プロピレート、ジルコニウムn−ブチレート、エチルシリケート、ビニルトリメトキシシランなど、(4)有機アルコキシ化合物類;例えば、オルトギ酸メチル、オルトギ酸エチル、ジメトキシプロパンなど、(5)単官能イソシアネート類;例えば、メチルイソシアネート、エチルイソシアネート、プロピルイソシアネート、アディティブTI(住友バイエルウレタン株式会社製、商品名)などが挙げられる。
これらの脱水剤は、単独で又は2種以上併用して使用することができる。
【0054】
これらの中でも、貯蔵安定性の観点から、オルトギ酸メチル、オルトギ酸エチル、ジメトキシプロパンなどの有機アルコキシ化合物類が好ましい。
【0055】
[その他の配合成分]
本発明の防錆塗料組成物には、上記以外に、着色顔料、体質顔料、紫外線吸収剤、紫外線安定剤等を必要に応じて配合することができる。
【0056】
着色顔料としては、例えば、チタン白、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム、カーボンブラック、黒鉛(グラファイト)、鉄黒(アイアンブラック)、紺青、群青、コバルトブルー、銅フタロシアニンブルー、インダンスロンブルー、黄鉛、合成黄色酸化鉄、透明べんがら、ビスマスバナデート、チタンイエロー、亜鉛黄(ジンクエロー)、モノアゾイエロー、オーカー、モノアゾイエロー、ジスアゾ、イソインドリノンイエロー、金属錯塩アゾイエロー、キノフタロンイエロー、ベンズイミダゾロンイエロー、べんがら、透明べんがら、モノアゾレッド、モノアゾレッド、無置換キナクリドンレッド、アゾレーキ(Mn塩)、キナクリドンマゼンダ、アンサンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ペリレンマルーン、キナクリドンマゼンダ、ペリレンレッド、ジケトピロロピロールクロムバーミリオン、塩素化フタロシアニングリーン、臭素化フタロシアニングリーン、その他;ピラゾロンオレンジ、ベンズイミダゾロンオレンジ、ジオキサジンバイオレット、ペリレンバイオレットなどを挙げることができる。
【0057】
体質顔料としては、例えば、タルク、クレー、マイカ、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウムなどを挙げることができる。
【0058】
紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−アミルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、イソオクチル−3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ジ(1,1−ジメチルベンジン)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3−ジメチルベンジル−5−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、メチル−3−[3−t−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネート/ポリエチレングリコール300との縮合物などのベンゾトリアゾール系誘導体;2−[4−(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンなどのトリアジン系誘導体;エタンジアミド−N−(2−エトキシフェニル)−N’−(2−エチルフェニル)−(オキサリックアミド)、エタンジアミド−N−(2−エトキシフェニル)−N’−(4−イソドデシルフェニル)−(オキサリックアミド)などの蓚酸アニリド系誘導体などを挙げることができる。
【0059】
紫外線安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系化合物、ヒンダードフェノール系化合物;CHIMASORB944、TINUVIN144、TINUVIN292、TINUVIN770、IRGANOX1010、IRGANOX1098(以上、これらの商品名の製品は、いずれもチバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製である。)などを挙げることができる。
【0060】
[各成分の含有量]
本発明の防錆塗料組成物を調製するにあたり、各成分の含有量は下記の含有量とすることが好ましい。
【0061】
エポキシ樹脂(A)の含有量は、防食性の観点から、防錆塗料組成物全体に対して、好ましくは5〜20質量%、より好ましくは8〜18質量%、さらに好ましくは10〜15質量%である。
【0062】
ジエチルケトンによってケチミン化されたアミン硬化剤(B)の含有量は、硬化性の観点から、防錆塗料組成物全体に対して、好ましくは1〜10質量%、より好ましくは2〜8質量%、さらに好ましくは4〜6質量%である。
【0063】
防錆顔料(C)の含有量は、防食性の観点から、防錆塗料組成物全体に対して、好ましくは0.5〜15質量%、より好ましくは1.5〜10質量%、さらに好ましくは3〜8質量%である。
【0064】
有機溶剤(D)の含有量は、塗装作業性の観点から、防錆塗料組成物全体に対して、好ましくは5〜20質量%、より好ましくは3〜15質量%、さらに好ましくは5〜10質量%である。
【0065】
シラン化合物(E)の含有量は、付着性の観点から、防錆塗料組成物全体に対して、好ましくは0.1〜2質量%、より好ましくは0.3〜1.5質量%、さらに好ましくは0.6〜1.2質量%である。
【0066】
脱水剤(F)の含有量は、長期貯蔵性の観点から、防錆塗料組成物全体に対して、好ましくは0.5〜10質量%、より好ましくは2〜8質量%、さらに好ましくは4〜6質量%である。
【0067】
[塗膜形成方法]
本発明の塗膜形成方法は、被塗物に、本発明の防錆塗料組成物を塗装することを特徴とする塗膜形成方法である。
【0068】
上記防錆塗料組成物の塗装方法としては、ハケ塗り、スプレー塗装、各種コーター塗装などの一般的な方法を用いることができる。
【0069】
本発明の防錆塗料組成物の塗装は、特に限定されるものではないが、一般には、クリヤ塗料の場合、塗装1回あたり乾燥膜厚で5〜80μm、好ましくは10〜50μm、顔料を含有するエナメル塗料の場合、塗装1回あたり乾燥膜厚で10〜150μm、好ましくは25〜120μmの範囲内となるように行われ、通常1〜2回塗装される。
【0070】
本発明で用いる被塗物としては、例えば、冷延鋼板、溶融亜鉛メッキ鋼板、電気亜鉛メッキ鋼板、合金亜鉛メッキ鋼板(鉄−亜鉛、アルミニウ−亜鉛、ニッケル−亜鉛などの合金亜鉛メッキ鋼板)、アルミニウム板、ステンレス鋼板、銅板、銅メッキ鋼板、錫メッキ鋼板などが挙げられる。
【0071】
被塗物に塗装する際に、該被塗物が油等の汚染物質で汚染されていなければそのまま塗装してもかまわないが、塗膜との間の付着性、耐食性を改善するために公知の金属表面処理を施すのが望ましい。
これら公知の表面処理方法として、リン酸塩系表面処理、クロム酸塩系表面処理、ジルコニウム系表面処理などが挙げられる。
【0072】
なお、本発明の防錆塗料組成物は、本発明組成物から得られる塗膜のガラス転移温度が40〜115℃、好ましくは50〜105℃であることが塗膜の耐食性、耐酸性及び加工性などの点から好適である。
塗膜のガラス転移温度は、DINAMIC VISCOELASTOMETER MODEL VIBRON(ダイナミックビスコエラストメータ モデルバイブロン)DDV−IIEA型(東洋ボールドウィン社製、自動動的粘弾性測定機)を用いて周波数110Hzにおける温度分散測定によるtanδの変化から求めた極大値の温度である。
【0073】
[複層塗膜形成方法]
本発明の複層塗膜形成方法は、被塗物に、下塗塗料として、本発明の防錆塗料組成物を塗装して下塗塗膜を形成し、該下塗塗膜面に上塗塗料を塗装して上塗塗膜を形成することを特徴とする複層塗膜形成方法である。
【0074】
該複層塗膜形成方法では、本発明の防錆塗料組成物を塗装、乾燥させた塗膜の上に、必要に応じて上塗塗料を塗装することができる。
該上塗塗料としては、特に制限はなく、それ自体既知の上塗塗料を使用でき、例えば、アルキド樹脂系、塩化ゴム系、エポキシ樹脂系、シリコンアルキド樹脂系、ウレタン樹脂系、シリコンアクリル樹脂系、フッ素樹脂系などの塗料を使用することができる。
【0075】
上記上塗塗料の塗装方法としては、ハケ塗り、スプレー塗装、各種コーター塗装などの一般的な方法を用いることができ、その塗装は、特に限定されるものではないが、一般には、塗装1回あたり乾燥膜厚で5〜100μm、好ましくは15〜50μmの範囲内となるように行われ、通常1〜2回塗装される。
【実施例】
【0076】
以下に実施例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。なお、各例において、「部」とは、特記しない限り質量基準による。
【0077】
[製造例1]
アルキルノボラックフェノールエポキシ樹脂(A1)<ハリマ化成株式会社製、商品名「HARIPOL EP450」>90部をミネラルスピリット<炭化水素系有機溶剤(D1)>50部、メチルアミルケトン<ケトン系有機溶剤(D1)>25部、キシレン<炭化水素系有機溶剤>60部、イソプロピルアルコール<アルコール系有機溶剤>20部、酢酸ブチル<エステル系有機溶剤>50部、ジエチルケトン<ケトン系有機溶剤>25部、及びプロピレングリコールモノメチルエーテル<グリコール系有機溶剤>30部に溶解したエポキシ樹脂溶液350部に、トリポリリン酸アルミ・酸化亜鉛<テイカ株式会社製、商品名「K−WHITE 105」、防錆顔料(C1)>20部、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン<信越化学工業株式会社製、商品名「KBM−403」、シラン化合物(E)>5部、オルト酢酸トリメチル<脱水剤(F)>10部、酸化チタン80部、タルク70部、炭酸カルシウム70部を混合し、ツブ(顔料粗粒子の粒子径)が30μm以下となるまで顔料分散を行った。
【0078】
次いで、この分散物にノルボルナンジアミンとジエチルケトンの脱水縮合物<アミン硬化剤(B1)>9部を加えて均一に混合して防錆塗料組成物1を得た。
【0079】
[製造例2〜23]
製造例1において、使用するエポキシ樹脂、アミン硬化剤、防錆顔料、及び有機溶剤を下記表に示すとおりとする以外は、製造例1と同様に行い、各防錆塗料組成物2〜23を得た。
【0080】
[表中のアクリル変性エポキシ樹脂の製造方法]
ミネラルスピリット532部、及び「JER828」(三菱化学株式会社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量187)429部を窒素気流下で140℃に加熱し、下記組成のビニルモノマー及び重合開始剤の混合物を3時間で滴下し、滴下後2時間熟成した。
次いで、テトラエチルアンモニウムブロマイド0.2部を仕込み、約2時間反応を行い、樹脂酸価が0.3mgKOH/gになったところで、ミネラルスピリット157部を添加し、アクリル変性エポキシ樹脂を得た。
該アクリル変性エポキシ樹脂の溶液は、不揮発分65%、エポキシ当量652であった。
【0081】
(ビニルモノマー及び重合開始剤の混合物の組成)
メタクリル酸10部、スチレン250部、エチルアクリレート200部、i−ブチルメタクリレート200部、2−エチルヘキシルアクリレート290部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、商品名「KBM−503」)50部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート80部
【0082】
[実施例1〜18、比較例1〜5]
上記製造例1〜23で得た各防錆塗料組成物を下塗塗料として用いて、それぞれ0.8×70×150mmの冷間圧延鋼板上に、エアースプレーにて乾燥膜厚で約30μmとなるように塗布した。
【0083】
その3分後に、さらにポリウレタン樹脂系上塗塗料「レタンエコトップ」(関西ペイント株式会社製)をエアースプレーにて乾燥膜厚で約30μmとなるように塗布(ウェット オン ウェット塗装)し、温度23℃及び湿度65%RHの雰囲気中で7日間乾燥して各試験用塗装板を作製した。
【0084】
得られた各試験用塗装板について、下記試験方法に基づいて各種試験を行った。
その試験結果を下記表に示す。
【0085】
(アルミ付着性)
得られた各試験用塗装板について、JIS K5600記載のゴバン目(大きさ2mm×2mmのゴバン目を100個)粘着セロハンテープ剥離試験により試験を行ない、以下の基準で評価した。
◎:テープ剥離後のゴバン目(2×2mm)塗膜の残存数が100個
○:テープ剥離後のゴバン目(2×2mm)塗膜の残存数が95〜99個
△:テープ剥離後のゴバン目(2×2mm)塗膜の残存数が70〜94個
×:テープ剥離後のゴバン目(2×2mm)塗膜の残存数が0〜69個
【0086】
(速乾性)
◎:ウェット オン ウェット塗装しても混層しない。
○:ウェット オン ウェット塗装してもほぼ混層しない。
△:ウェット オン ウェット塗装するとやや混層して上塗の艶が低下する。
×:ウェット オン ウェット塗装時に混層して上塗表面が縮む。
【0087】
(仕上がり性)
得られた各試験用塗装板について、光沢計により20°光沢値を測定し、以下の基準で評価した。
◎:85以上
○:75以上85未満
△:60以上75未満
×:60未満
【0088】
(塩水噴霧試験)
得られた各試験用塗装板の中央部に素地に達する長さ100mmの切り傷を交差状に入れて、温度35℃で240時間、JIS K 5600−7−1による塩水噴霧試験に供し、切り傷部分に発生した錆又は膨れのうち、大きい方のカット部から片側最大幅を測定し、以下の基準で評価した。
◎:1mm未満
○:1mm以上3mm未満
△:3mm以上5mm未満
×:5mm以上
【0089】
(貯蔵安定性)
上記製造例1〜23で得た各防錆塗料組成物を、1リットルの丸缶に800g採取、密封して、40℃で1ヶ月間放置後の状態を観察し、以下の基準で評価した。
○:塗料組成物の増粘がわずかで作業性上問題ない。
△:塗料組成物の増粘が著しく、流動性が低下する。
×:塗料組成物がゲル化する。
【0090】
【表1】
【0091】
【表2】
【0092】
【表3】
【0093】
【表4】
【0094】
以上より、エポキシ樹脂(A)、ジエチルケトンによってケチミン化されたアミン硬化剤(B)、防錆顔料(C)、及び沸点140℃以上の有機溶剤(D)を含有する防錆塗料組成物であって、該有機溶剤(D)の含有量が、上記エポキシ樹脂(A)及びジエチルケトンによってケチミン化されたアミン硬化剤(B)の固形分総量に対して、50〜100質量%である防錆塗料組成物を使用した各実施例では、アルミ付着性、速乾性、仕上がり性、塩水噴霧試験、貯蔵安定性全てにおいて良好な結果を得た。
【0095】
一方、上記防錆塗料組成物を使用しなかった各比較例では、アルミ付着性、速乾性、仕上がり性、塩水噴霧試験、貯蔵安定性のいずれかにおいて、結果が不良となった。
【要約】
【課題】塗膜の密着性や仕上がり性に優れるだけでなく、速乾性、貯蔵安定性及び防食性にも優れる防錆塗料組成物を提供すること。
【解決手段】エポキシ樹脂(A)、ジエチルケトンによってケチミン化されたアミン硬化剤(B)、防錆顔料(C)、及び沸点140℃以上の有機溶剤(D)を含有する防錆塗料組成物であって、該有機溶剤(D)の含有量が、前記エポキシ樹脂(A)及びジエチルケトンによってケチミン化されたアミン硬化剤(B)の固形分総量に対して、50〜100質量%である、防錆塗料組成物。
【選択図】なし