(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
図1は本発明の実施の形態に係るハイブリッド式油圧ショベルの外観図である。この図に示す油圧ショベルは、ブーム1a、アーム1b及びバケット1cを有する多関節型の作業装置1Aと、上部旋回体1d及び下部走行体1eを有する車体1Bを備えている。
【0016】
ブーム1aは、上部旋回体1dに回動可能に支持されており、油圧シリンダ(ブームシリンダ)3aにより駆動される。アーム1bは、ブーム1aに回動可能に支持されており、油圧シリンダ(アームシリンダ)3bにより駆動される。バケット1cは、アーム1bに回動可能に支持されており、油圧シリンダ(バケットシリンダ)3cにより駆動される。上部旋回体1dは電動アクチュエータである旋回モータ(電動機)16(
図2参照)により旋回駆動され、下部走行体1eは左右の走行モータ(油圧モータ)3e,3f(
図2参照)により駆動される。油圧シリンダ3a、油圧シリンダ3b、油圧シリンダ3c及び旋回モータ16の駆動は、上部旋回体1dの運転室(キャブ)内に設置され油圧信号を出力する操作装置4A,4B(
図2参照)によって制御される。
【0017】
図2は本発明の実施の形態に係る油圧ショベルの駆動制御システムの概略図である。なお、先の図と同じ部分には同じ符号を付して説明は省略する(後の図も同様とする)。この図に示す駆動制御システムは、操作装置4A,4Bと、コントロールバルブ(スプール型方向切換弁)5A,5B,5Cと、油圧信号を電気信号に変換する圧力センサ17,18と、インバータ装置(電力変換装置)13と、チョッパ14と、バッテリ(蓄電装置)15と、インバータ装置(電力変換装置)12を備えており、制御装置として車体コントローラ(MCU)11、バッテリコントローラ(BCU)22及びエンジンコントローラ(ECU)21を備えている。
【0018】
車体コントローラ(MCU)11、バッテリコントローラ(BCU)22及びエンジンコントローラ(ECU)21は、それぞれ、ハードウェア構成として、各種の制御プログラムを実行するための演算処理装置(例えば、CPU)、当該制御プログラムをはじめ各種データを記憶するための記憶装置(例えば、ROM、RAM)等を備えている(いずれも図示せず)。なお、ここでは各コントローラ11,21,22は異なるハードウェアによって構成されるものとして説明するが、各コントローラ11,22,21で実行される演算処理を共通のハードウェアで実行しても良い。
【0019】
操作装置4A,4Bは、エンジン7に接続されたパイロットポンプ51から供給される作動油を2次圧に減圧して油圧シリンダ3a、油圧シリンダ3b、油圧シリンダ3c及び旋回モータ16を制御するための油圧信号(パイロット圧)を発生する。
【0020】
操作装置4Aは、油圧シリンダ3aの駆動を制御するコントロールバルブ5Aの受圧部と、油圧シリンダ3bの駆動を制御するコントロールバルブ5Bの受圧部にパイロット管を介して接続されており、操作レバーの傾倒方向に応じて各コントロールバルブ5A,5Bの受圧部に油圧信号を出力する。コントロールバルブ5A,5Bは、操作装置4Aから入力される油圧信号に応じて位置を切り換えられ、油圧ポンプ6から吐出される圧油の流れをその切換位置に応じて制御することで油圧シリンダ3a,3bの駆動を制御する。
【0021】
操作装置4Bは、油圧シリンダ3cの駆動を制御するコントロールバルブ5Cの受圧部とパイロット管路を介して接続されており、操作レバーの傾倒方向に応じてコントロールバルブ5Cの受圧部に油圧信号を出力する。コントロールバルブ5Cは、操作装置4Bから入力される油圧信号に応じて位置を切り換えられ、油圧ポンプ6から吐出される圧油の流れをその切換位置に応じて制御することで油圧シリンダ3cの駆動を制御する。
【0022】
また、操作装置4Bは、パイロット管路19と、パイロット管路20に接続されている。パイロット管路19は、上部旋回体1dが左旋回するように旋回モータ16を駆動する油圧信号(圧油)が通過するもので、パイロット管路20は、上部旋回体1dが右旋回するように旋回モータ16を駆動する油圧信号(圧油)が通過するものである。パイロット管路19には圧力センサ17が取り付けられており、パイロット管路20には圧力センサ18が取り付けられている。圧力センサ17,18は、操作装置4Bから出力される油圧信号の圧力を検出してその圧力に対応する電気信号に変換する信号変換手段として機能するもので、変換した電気信号を車体コントローラ11に出力可能に構成されている。圧力センサ17,18から車体コントローラ11に出力された電気信号は、インバータ装置13を介して旋回モータ16(電動アクチュエータ)の駆動を制御する操作信号として利用される。
【0023】
コントロールバルブ5E,5Fの受圧部はパイロット管路を介して運転室内に設置された走行操作装置(図示せず)と接続されている。コントロールバルブ5E,5Fは、当該走行操作装置から入力される油圧信号に応じて位置を切り換えられ、油圧ポンプ6から吐出される圧油の流れをその切換位置に応じて制御することで走行モータ3e,3fの駆動を制御する。
【0024】
バッテリコントローラ(BCU)22は、バッテリ15の残容量(SOC:State of Charge)を演算する機能や、バッテリ15の劣化度(SOH:State of Health)を演算する機能を有し、その演算結果を車体コントローラ11に出力する。なお、SOCは(残容量[Ah]/満充電容量[Ah])×100と、SOHは(劣化時の満充電容量[Ah]/初期の満充電容量[AH])×100と定義でき、各種公知の演算方法で推定することができる。
【0025】
SOCの公知の演算方法としては、バッテリ15の充放電電流を計測して電流値を積算するものがある。当該充放電電流を計測する方法としては、バッテリ15の入出力部分に取り付けた電流センサ(図示せず)によって直接的に計測するものや、バッテリ15に接続されたモータの回転速度及びトルクから間接的に計測するものがある。また、SOHの公知の演算方法としては、例えば、特開2008−256673号公報に記載されたものがあるが、ここでは詳細な説明は省略する。演算したSOCやSOHはバッテリコントローラ22によってモニタ23に適宜表示しても良い。また、バッテリ15の劣化が大きい場合(SOHの値が小さい場合)には、作業に必要な電力を充分に確保できないおそれがある旨、オペレータに報知するように構成することが好ましい。
【0026】
車体コントローラ(MCU)11は、圧力センサ17,18から入力される電気信号に基づいてインバータ装置13を介して旋回モータ16の駆動を制御する役割を有する。具体的には、圧力センサ17から電気信号が入力されたときにはその電気信号に対応した速度で上部旋回体1dを左旋回させ、圧力センサ18から電気信号が入力されたときにはその電気信号に対応した速度で上部旋回体1dを右旋回させる。また、車体コントローラ11は、上部旋回体1dの旋回制動時には旋回モータ16から電気エネルギーを回収する動力回生制御も行う。そして、その動力回生制御時に発生した回生電力や、発電電動機(動力変換機)10によって発生された電力の余剰電力(例えば、油圧ポンプ6の負荷が軽い場合等)をバッテリ15に充電する制御も行う。
【0027】
エンジンコントローラ(ECU)21は、オペレータによってエンジン7の目標回転数が入力されるエンジン回転数入力装置(例えば、エンジンコントロールダイヤル(図示せず))等からの指令に従って、エンジン7が当該目標回転数で回転するように燃料噴射量とエンジン回転数を制御する部分である。
【0028】
エンジン(原動機)7の出力軸には発電電動機10が連結されており、発電電動機10の出力軸には油圧ポンプ6とパイロットポンプ41が接続されている。
【0029】
発電電動機10は、エンジン7の動力を電気エネルギーに変換してインバータ装置12,13に電気エネルギーを出力する発電機としての機能に加え、バッテリ15から供給される電気エネルギーを利用して、油圧ポンプ6(エンジン7)をアシスト駆動する電動機としての機能を有する。
【0030】
油圧ポンプ6は、油圧アクチュエータである油圧シリンダ3a,3b,3c及び油圧モータ3e,3fに圧油を供給するメインのポンプであり、パイロットポンプ41は、操作装置4A,4B及び走行操作装置を介してコントロールバルブ5A,5B,5C,5D,5E,5Fに操作信号として出力される圧油を供給する。なお、油圧ポンプ6に接続される油圧管路にはリリーフ弁8が設置されており、リリーフ弁8はその管路内の圧力が過度に上昇した場合にタンク9に圧油を逃がす。
【0031】
インバータ装置12は、車体コントローラ11からの出力に基づいて発電電動機10の駆動制御を行うもので、発電電動機10を電動機として動作させる場合には、バッテリ15の電気エネルギーを交流電力に変換して発電電動機10に供給し、油圧ポンプ6をアシスト駆動する。
【0032】
インバータ装置13は、車体コントローラ11からの出力に基づいて旋回モータ16の駆動制御を行うもので、発電電動機10及び蓄電装置15の少なくとも一方から出力される電力を交流電力に変換して電動モータ16に供給する。
【0033】
チョッパ14は、インバータ装置12,13が接続された直流電力ラインの電圧を制御するものである。バッテリ(蓄電装置)15は、チョッパ14を介してインバータ装置12,13に電力を供給したり、発電電動機10が発生した電気エネルギーや発電機25及び電動モータ16から回生される電気エネルギーを蓄えたりする。バッテリ15以外の蓄電装置としては、例えば、キャパシタを用いることができ、キャパシタ及びバッテリの両方を用いても良い。なお、蓄電装置としてバッテリを使用した場合には、キャパシタに比較して多くの電力を蓄えることができるため、作業効率や省エネ効果の向上が期待できる。
【0034】
モード選択スイッチ(作業モード選択器)29は、油圧ショベル(作業機械)の作業内容に応じて定められた複数の作業モードのうち1つをオペレータが選択するためのものである。作業モードは、例えば、作業量重視の重作業モード(パワーモード)、稼働時間重視の軽作業モード(ライトモード)、両者の中間に位置し効率重視のエコノミーモードがあり、バッテリ15の時間あたりの放電量の最大値が作業モードごとに設定されている。前記の3つのモードのうち、重作業モードが最も放電量の最大値が大きく、エコノミーモード、軽作業モードの順番で放電量の最大値は小さく設定されている。なお、重作業モードの選択が推奨される作業としては例えば掘削作業や積込作業があり、軽作業モードの選択が推奨される作業としては例えばならし作業がある。ここでは、上記3つのモード(重作業モード、エコノミーモード、軽作業モード)が存在することを前提として説明する。
【0035】
モード選択スイッチ29を介して入力された作業モード(蓄電装置の時間あたりの放電量の最大値)は車体コントローラ11に出力される。なお、モード選択スイッチ29は、作業モードが選択可能なものであればどのようなものでも良く、例えば、
図2に示したダイヤル式のものや、モニタ(表示装置)23を利用したタッチパネル式のもの等でも良い。上記の例では、3つの作業モードが選択できる場合を挙げたが、いうまでもなく選択可能な作業モード(蓄電装置の時間あたりの放電量の最大値)はこれだけに限らない
また、上記ではモード選択スイッチ29を介して車体コントローラ11に作業モード(蓄電装置の時間あたりの放電量の最大値)を入力することとしたが、各作業モードと油圧ショベルの稼働予定時間を関連付け、当該稼働予定時間のいずれかを入力することで間接的に作業モードが入力可能な他の入力装置を代わりに備えても良い。この場合には、当該他の入力装置で選択された稼働予定時間によって間接的に作業モードが決定され、車体コントローラ11は当該作業モードに基づいて後述する目標残容量演算処理を実行することになる。
【0036】
ここで車体コントローラ11の有する他の機能について説明する。
図3は本発明の実施の形態に係る車体コントローラ11の機能ブロック図である。この図に示すように、車体コントローラ11は、各種制御プログラムを実行することで、稼働時間演算部61、要求電力演算部62、指令値演算部63、指令値演算部64、最大値記憶部65として機能することがある。
【0037】
稼働時間演算部61は、モード選択スイッチ29を介して入力された作業モードに係るバッテリ15の時間あたりの放電電力の最大値と、バッテリ15の残容量に基づいて油圧ショベルの稼働予定時間を算出する機能を有する部分である。稼働時間演算部61は、バッテリコントローラ22から出力されるSOC及びSOHと、モード選択スイッチ29から出力される作業モードの入力を受けて、当該SOC及びSOHと作業モード(バッテリ15の時間あたりの放電電力の最大値)に基づいて稼働予定時間を算出する。
【0038】
最大値記憶部65(例えば、ROM、RAM)には、モード選択スイッチ29で選択可能な各作業モードに係るバッテリ15の時間あたりの放電電力の最大値Wk(k=1、2、…)が記憶されている。本実施の形態では、重作業モードの放電電力の最大値であるW1(k=1)と、エコノミーモードの当該値であるW2(k=2)と、軽作業モードの当該値であるW3(k=3)が記憶されている。最大値記憶部65に記憶された最大値Wkは、各部(例えば、指令値演算部63,64、稼働時管演算部61)の要求に応じて適宜読み出される。
【0039】
稼働予定時間の算出方法としては、BCU22から入力されるSOCのときに、モード選択スイッチ29を介して選択された作業モードに係る放電電力の最大値Wkを継続して放電した場合に、どの程度の時間の放電が可能かに基づいて算出するものがある。すなわち、SOC(及びSOH)から推定されるバッテリ15の電力量を作業モードに係る放電電力の最大値Wkで除する方法である。
【0040】
図9はバッテリ15の目標残容量の時間変化と稼働予定時間の一例を示す図である。ここでは、稼働予定時間T[h]の経過時におけるバッテリ15の目標残容量(最終目標残容量(
図9参照))を所望の値に設定し(当該最終目標残容量は任意に変更可能としても良い)、バッテリ15の残容量が現在値(BCU22からのSOC,SOHから算出される実際の残容量)から当該最終目標残容量まで最大値Wkの割合で単調に減少するように決定している。
【0041】
稼働時間演算部61で算出された稼働予定時間はモニタ(表示装置)23に適宜出力される。これによりモニタ23には、稼働時管演算部61で算出された稼働予定時間が表示される。
【0042】
ところで、バッテリ15の満充電容量は劣化の進行に応じて初期状態から低下するので、SOCが同じでもSOHが異なれば実際のバッテリ15の残容量は異なることになる。すなわち、SOCが同じ値のときは、SOHが小さいもの(劣化が進行しているもの)の方が実際のバッテリ残容量は小さくなる。
図10はSOCが同じでバッテリ15の劣化が無い場合(SOH=100)と劣化が進行した場合(SOH=60)について実際のバッテリ残容量を比較した図である。この図に示すように、バッテリ15の劣化が進行すると同じSOCを示していても実際の残容量は低下してしまう。そのため、稼働時間演算部61において上記のように稼働予定時間を算出する場合には、SOHの値を考慮して実際の残容量を推定し(すなわち、SOHが小さいほど実際の残容量も小さくなる)、当該推定した残容量に基づいて油圧ショベルの稼働予定時間を決定することが、残容量管理を正確に行う観点から好ましい。なお、ここでは、稼働時間演算部61で残容量の補正を行う場合について説明したが、バッテリコントローラ22においてSOHを利用することで当該補正を実行して実際のバッテリ15の残容量を推定し、当該推定した残容量を稼働時間演算部61に出力するように構成しても良い。
【0043】
要求電力演算部62は、制御周期ごとの旋回モータ16の要求電力Wdを操作装置4Bの操作量等に基づいて算出する機能を有する部分である。
図3に示す要求電力演算部62には圧力センサ17,18からの出力が入力されている。本実施の形態では、圧力センサ17,18が操作装置4Bの操作量検出手段として機能しており、要求電力演算部62は、当該圧力センサ17,18の出力値から操作装置4Bの操作量を検出し、当該操作量の大きさに比例させて旋回モータ16の要求電力Wdを算出している。要求電力演算部62で算出された要求電力Wdは指令値演算部64に出力される。
【0044】
なお、本実施の形態では、操作装置4Bから出力されるパイロット圧(油圧操作信号)を圧力センサ17,18によって電気信号に変換することで操作装置4Bの操作量を検出しているが、操作装置4Bの操作量に応じた電気操作信号を車体コントローラ11に直接出力する構成を採用しても良い。この場合には、操作装置4Bにおける操作レバーの回転変位を検出する位置センサ(例えば、ロータリーエンコーダ)を利用することができる。また、本実施の形態では、操作装置4Bに2つの油圧センサ17,18を備えているが、例えば、油圧センサと上記位置センサの組合せ等、検出方式の異なるセンサを組み合わせて用いることもできる。このようにすればシステムの信頼性を向上できる。
【0045】
指令値演算部(第1指令値演算部)64は、旋回モータ(電動アクチュエータ)16を制御するためのインバータ装置13に出力する指令値を演算する部分である。指令値演算部64は、インバータ装置13とともに、旋回モータ16を制御するための電動機制御手段として機能する。指令値演算部64は、作業モードごとのバッテリ15の時間あたりの放電電力の最大値Wkと旋回モータ16の要求電力Wdの偏差に基づいてインバータ装置13への指令値を演算している。
【0046】
図4は本発明の実施の形態に係る車体コントローラ11で実行される旋回モータ16の制御処理のフローチャートである。オペレータが操作装置4Bを操作することで油圧ショベルの上部旋回体1dの旋回を指示すると、2つの圧力センサ17,18の一方の検出値が上昇する。車体コントローラ11は、要求電力演算部62において、圧力センサ17,18の出力を入力し(S701)、これに基づいて旋回モータ16の要求電力Wdを算出する(S702)。ここで算出された要求電力Wdは指令値演算部64に出力される。
【0047】
車体コントローラ11は、指令値演算部64において、モード選択スイッチ29から入力される作業モードに基づいて、当該作業モードに対応する放電電力の最大値Wkを最大値記憶部65から読み出して取得する。例えば、重作業モードが選択されている場合には、最大値W1が読み出される(S703)。なお、
図4では、S703はS702の後に実行されているが、S702と同時又は前に実行しても構わない。
【0048】
S703が終了したら、車体コントローラ11は、指令値演算部64において、最大値Wkと要求電力Wdの大小を比較する処理を実行する(S704)。両者の大小の比較の方法としては、最大値Wkから要求電力Wdを減じる演算を実行し、当該演算結果(最大値Wkと要求電力Wdの偏差)の符号を判定するものがある。すなわち、符号が正であれば最大値Wkが大きく、符号が負であれば要求電力Wdが大きいことになる。
【0049】
S704においてWkが大きいと判定された場合には、指令値演算部64は要求電力Wdをインバータ装置13出力する(S705)。これにより旋回モータ16はオペレータが所望するパワー(トルクと回転数の積)を出力する。
【0050】
一方、S704において要求電力Wdが大きいと判定された場合には、Wkをインバータ装置13に出力する(S706)。これにより、旋回モータ16はオペレータが所望する値より小さいパワーを出力し、バッテリ15の時間あたりの放電電力は最大値Wk以下に常に制御される。なお、旋回モータ16のパワー(出力)は、トルクと回転数の積で表されるので、この場合、トルクと回転数のうち少なくとも一方が制限されることになる。
【0051】
指令値演算部(第2指令値演算部)63は、発電電動機10を制御するためにインバータ装置12に出力する指令値を演算する部分である。指令値演算部63は、インバータ装置12とともに、発電電動機10を制御するための発電電動機制御手段として機能する。
【0052】
指令値演算部63は、作業モードごとのバッテリ15の時間あたりの放電電力の最大値Wkと旋回モータ16の要求電力Wdの偏差に基づいてインバータ装置12への指令値を演算することがある。この場合について
図5を用いて説明する。
【0053】
図5は本発明の実施の形態に係る車体コントローラ11で実行される発電電動機10の制御処理のフローチャートである。図に示した処理が開始されると、指令値演算部63(車体コントローラ11)は、要求電力演算部62で算出された要求電力Wdを入力しつつ(S801)、モード選択スイッチ29で選択された作業モードに対応する放電電力の最大値Wkを最大値記憶部65から入力する(S802)。なお、
図5では、S802はS801の後に実行されているが、S801と同時又は前に実行しても構わない。
【0054】
S802が終了したら、指令値演算部63は、最大値Wkと要求電力Wdの大小を比較する処理を実行する。ここでは、両者の大小の比較の方法としては、最大値Wkから要求電力Wdを減じる演算を実行し(S803)、当該演算結果(最大値Wkと要求電力Wdの偏差)の符号の判定している(S804)。すなわち、符号が正であれば最大値Wkが大きく、符号が負であれば要求電力Wdが大きいことになる。
【0055】
S804において、最大値Wkと要求電力Wdの偏差の符号が正の場合には、要求電力Wdが最大値Wkを下回ることになるため、指令値演算部63はインバータ装置12にアシスト指令を出力する(S805)。これにより、発電電動機10は、最大値Wkと要求電力Wdの差分の大きさに相当する電力の供給をバッテリ15から受け、エンジン7のアシスト駆動を行う。これにより、エンジン7の燃料消費量を抑制することができる。
【0056】
一方、S704において、最大値Wkと要求電力Wdの偏差の符号が負の場合には、要求電力Wdが最大値Wkを上回ることになるため、指令値演算部63はインバータ装置12に発電指令を出力する(S806)。これにより、発電電動機10は、最大値Wkと要求電力Wdの差分の大きさに相当する電力を発生し、当該電力を旋回モータ16に供給することで上部旋回体1dの旋回駆動のサポートを行う。
【0057】
なお、ここでは、放電電力の最大値Wkから要求電力Wdを減じた値の正負に基づいて発電電動機10による発電とエンジンアシストの双方を行う場合について説明したが、発電とエンジンアシストの一方のみを行い、他方を行わないように構成しても良い。
【0058】
次の本実施の形態の作用及び効果について
図6〜8を用いて説明する。
図6は油圧ショベルの稼働中における放電電力の最大値Wk(k=1,3)に対する要求電力Wdの変化を模式的に示した図である。
図6〜8の場合は、すべて、モード選択スイッチ29によって「軽作業モード」が選択されており、放電電力の最大値はW3に設定されているものとする。
図6では、時刻0〜t1の区間と、時刻t2〜Tの区間において、要求電力Wdが最大値W3を上回っている。
【0059】
図7は、需要電力Wdが
図6のように変化した場合において、旋回モータ16に実際に供給される電力の変化を模式的に示した図である。この図の例では、
図4に示した旋回モータ16の制御のみが行われ、
図5に示した発電道動機10の制御は行われていないものとする。そのため、
図7に示すように、要求電力Wdが最大値W3を上回る時刻0〜t1の区間と時刻t2〜Tの区間では、
図4のS704,706の処理が実行され、旋回モータ16に供給される電力が最大値W3に制限される。
【0060】
このように、
図4に示した制御のみを行う場合には、バッテリ15から放電される電力の最大値が作業モードごとに設定されるので、モード選択スイッチ9によって選択された作業モードの放電電力の最大値に基づいて稼働予定時間を算出できる(例えば、現在のバッテリ15のSOCから当該最大値を放電し続ける場合を想定することで、当該作業モードでの最短稼働時間を予測することができる。)。そして、算出された稼働予定時間は、モニタ23を介してオペレータに報知されるため、オペレータの意図に反して作業中に電力不足となることを防止することができる。また、稼働予定時間がオペレータの所望する時間より短い場合には、放電電力の最大値が相対的に小さい作業モードに変更することで稼働予定時間を延長することもでき、オペレータの要求に合わせて稼働時間を調節することも可能となる。したがって、本実施の形態によれば、稼働予定時間内にバッテリ15の残容量が無くなることと、油圧ショベルの作業効率が必要以上に低下することを抑制できる。
【0061】
図11は重作業モードと軽作業モードを選択した場合における稼働予定時間の一例を示す図である。この図において符号91が付された直線は、軽作業モードの場合のバッテリ15の残容量の時間変化であり、符号92が付された直線は重作業モードの場合の残容量の時間変化である。
図11において、重作業モードの場合の放電電力の最大値W1は軽作業モードの場合の値(W3)より大きいため、稼働予定時間T2が軽作業モードの時間T1より短くなる。これにより、入力装置29を介して重作業モードを選択した場合には、単位時間当たりのバッテリ出力を大きくなるので、作業時間よりも作業効率を優先させることができる。一方、軽作業モードを選択した場合には、単位時間当たりのバッテリ出力を小さくすることができるので、作業効率よりも作業時間を優先させることができる。したがって、このように油圧ショベルを構成すれば、オペレータの所望する作業内容の負荷に合わせて効率良くバッテリ15の容量を使用することができる。
【0062】
図8は、需要電力Wdが
図6のように変化した場合において、旋回モータ16に実際に供給される電力の変化を模式的に示した図である。この図の例では、
図4に示した旋回モータ16の制御と、
図5に示した発電道動機10の制御が行われているものとする。そのため、
図8に示すように、要求電力Wdが最大値W3を上回る時刻0〜t1の区間と時刻t2〜Tの区間では、
図5のS804,806の処理が実行され、インバータ装置12に発電指令が出力される。また、要求電力Wdが最大値W3を下回る時刻t1〜t2の区間では、
図5のS804,805の処理が実行され、インバータ装置12にアシスト指令が出力される。
【0063】
このように、
図4だけでなく
図5に示した制御を行う場合にも、稼働予定時間内にバッテリ15の残容量が無くなることと、油圧ショベルの作業効率が必要以上に低下することを抑制できる。特に、
図8に示した場合には、旋回モータ16の要求電力Wdが変動しても、当該変動は発電電動機10の発電又は駆動で吸収される。そのため、バッテリ15の出力は略一定に保持すれば良いので、バッテリ残容量の制御は極めて容易である。
【0064】
なお、上記の説明では、バッテリ15の電力で駆動される電動アクチュエータが1つの場合について説明したが、複数の電動アクチュエータが駆動される場合についても本発明は適用が可能である。この場合には、各電動アクチュエータの要求電力の合計値(合計要求電力)を要求電力演算部62で算出し、当該合計要求電力と最大値Wk(k=1,2,…)を比較すれば良い。つまり、最大値Wkが上回るときには当該差分に相当する電力を当該複数の電動アクチュエータのうち電力が不足するものに供給し、当該合計要求電力が最大値Wkを下回るときには当該差分に相当する電力を発電電動機10に供給してエンジン7をアシストするようにすれば良い。
【0065】
また、上記の説明では、バッテリ15の電力で駆動される電動アクチュエータが旋回モータ(電動機)16の場合について説明したが、その他の電動アクチュエータ(例えば、電動リニアアクチュエータ、電動ポンプ)を備える場合についても本発明は適用が可能である。さらに、上記の説明ではハイブリッド式作業機械として油圧ショベルを例に挙げて説明したが、蓄電装置の電力で駆動される電動アクチュエータを備えるその他のハイブリッド式作業機械にも適用可能なことは言うまでも無い。