(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
航空機の外板には、航行中の空気抵抗を極力減らすために高い平滑性が求められる。したがって、外板の修理に用いられるプリキュアパッチには、航行中に大きな荷重が作用しても変形や座屈に抵抗し、面外方向にはらみ出さないだけの面外剛性が要求される場合がある。
ここで、面外剛性は、面外方向への変形のし難さを言い、曲げ剛性が支配的であるがせん断剛性をも包含する。
プリキュアパッチは、所望の面外剛性を満足するように所定の板厚で予硬化されている。そうすると、プリキュアパッチは、修理施工前に既に、修理結果物の使用時に必要な面外剛性を備えているので、プリキュアパッチを修理対象の表面に沿わせて曲げることは困難である。
このため、プリキュアパッチの形状が修理対象の形状と少しでも違っていると、修理対象とプリキュアパッチとの間に隙間があいてしまい、プリキュアパッチを修理対象に接着できない。このとき、プリキュアパッチを修理対象に無理に押しつけて接着すると、接着剤の硬化後に、
図6に示すように、プリキュアパッチ15の周縁に修理対象17から引き剥がす力(矢印で図示)が働くので、接着強度が著しく低くなる。
【0005】
以上の課題に基づいて、本発明は、予硬化された修理パッチを用いる修理方法、および修理パッチを用いる修理により得られる修理結果物に関し、面外剛性の確保が必要な修理パッチを修理対象に確実に接着することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の修理方法は、修理対象に形成された被修理部を修理パッチで覆い、修理パッチを修理対象に接着する修理方法であって、修理パッチとして、繊維および樹脂により形成されるとともに修理前に予め硬化され
、柔軟性を有した複数の修理板を使用し、複数の修理板
および接着材を積層
し修理パッチを形成する積層ステップと、
接着材が硬化していない間に修理パッチで被修理部を覆うステップと、積層された複数の修理板を互いに接着する接着ステップと、を備えることを特徴とする。
【0007】
修理パッチには、被修理部が存在する部位に応じて所定の面外剛性が要求される。その面外剛性に基づいて、修理パッチに必要な板厚も定まる。
本発明では、修理パッチとして用いる複数の修理板に、修理パッチに必要な板厚を按分することができるので、修理板の各々の板厚は薄くなる。それらの修理板を積層ステップにより積層し、接着ステップにより互いに接着することで、修理パッチに必要な面外剛性を得る。
本発明によれば、複数の修理板が互いに接着される前までは、修理パッチはそれが一体となっている時に比べて小さな力で面外方向に変形させることのできる柔軟性を有している。そのため、修理対象の表面に修理パッチを追従させることができるので、修理対象に修理パッチを確実に接着できる。一方、複数の修理板が一体に接着されることで、修理パッチは全体の板厚に応じた面外剛性を備える。
したがって、本発明によれば、修理パッチに要求される面外剛性を確保しながら、被修理部を確実に修理できる。
【0008】
本発明で用いる修理パッチは、複数の修理板が互いに接着される前までは柔軟性を有するので、被修理部の周囲の形状を選ばず、修理することができる。
また、本発明によれば、修理板の枚数を変えることで、必要とする面外剛性が異なる複数の部位の修理に対応できる。
さらに、本発明によれば、修理対象の各部位の形状にそれぞれ対応する多数のプリキュアパッチを用意しておく必要がない。本発明によれば、例えば、数種類の平面サイズで一定の板厚に形成された複数の修理板を用意しておき、それらの修理板を修理部位に応じて修理材に求められる面外剛性に応じて組み合わせ、汎用的に用いることができる。これによってコストを抑えられる。
【0009】
本発明の修理方法では、積層ステップにおいて、一の修理板に、その修理板よりもサイズが大きい他の修理板を積層することが好ましい。
それにより、一の修理板の全体が他の修理板によって覆われるので、一の修理板が修理対象から剥離しないように保護することができる。
【0010】
本発明の修理方法では、ハニカム構造のコアと、コアにより支持される板材と、を備えるパネルを修理対象として修理することが好ましい。
板材およびコアが損傷により欠損しているが、コアを修理せずに板材の欠損部の周囲に修理パッチを接着して修理することがある。そのとき、コアの欠損部が空洞として残されると、修理パッチがコアにより支持されないので、修理パッチ単独で高い面外剛性を確保する必要がある。
上述のように、修理パッチに複数の修理板を用いる本発明により、面外剛性を確保できるので、本発明の修理対象として、ハニカム構造のコアおよび板材を備えるパネルが好適である。
【0011】
本発明の修理方法では、複数の修理板の各々の板厚または修理板の枚数を決定するステップを行うことができる。このステップにより、修理板の構成を決定することが好ましい。
【0012】
本発明は、修理の結果得られる修理結果物にも展開できる。
本発明の修理結果物は、被修理部を覆い、被修理部の周囲に接着される修理パッチを備え、修理パッチは、繊維および樹脂により形成されるとともに修理前に予め硬化され
、柔軟性を有した複数の修理板を含んで構成され、複数の修理板は、積層されて互いに接着され
ており、被修理部の周囲に修理パッチが追従していることを特徴とする。
本発明によれば、上述の修理方法と同様の作用および効果を享受できる。
【0013】
また、本発明の修理結果物において、一の前記修理板に、その修理板よりもサイズが大きい他の前記修理板が積層されていることが好ましい。
それにより、一の修理板の全体が他の修理板によって覆われるので、一の修理板が修理対象から剥離しないように保護することができる。
【0014】
本発明は、航空機の外板の修理に好適に適用できる。本発明に基づいて修理された航空機の外板は、航空機の外板に形成された被修理部を覆い、被修理部の周囲に接着される修理パッチを備え、修理パッチは、繊維および樹脂により形成されるとともに修理前に予め硬化され
、柔軟性を有した複数の修理板を含んで構成され、複数の修理板は、積層されて互いに接着され
ており、被修理部の周囲に修理パッチが追従していることを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、外板以外の航空機の部材の修理にも好適に適用できる。本発明に基づいて修理された部材を備える航空機は、当該部材に形成された被修理部を覆い、被修理部の周囲に接着される修理パッチを備え、修理パッチは、繊維および樹脂により形成されるとともに修理前に予め硬化され
、柔軟性を有した複数の修理板を含んで構成され、複数の修理板は、積層されて互いに接着され
ており、被修理部の周囲に修理パッチが追従していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、予硬化された修理パッチを用いて、面外剛性を確保しながら、修理パッチを修理対象に確実に接着することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
まず、修理の結果、得られた修理結果物1の構成について説明し、次に、修理方法について説明する。
図1に示す修理結果物1は、航空機の翼の外表面を構成する外板2に対する修理の結果、得られるものである。
外板2は、図示を省略するが、翼の表裏に間隔をおいて配置され、翼の前縁および後縁を形成するスパーと共にボックス状に組み立てられている。
この外板2は、ハニカム構造のコア(芯材)20を2枚の板材21,22の間に挟んだ構造(ハニカムコアサンドイッチパネル)とされており、曲面状に形成されている。
なお、外板2は、航空機の胴体の外表面を構成するものであってもよい。
【0019】
コア20は、対向する板材21と板材22との間の空間を断面六角形の多数のセルに仕切る隔壁20Aを有している。このコア20は、複合材や金属などにより形成されている。
板材21,22も、複合材や金属などにより形成され、コア20の端面に接着されている。これらの板材21,22は、剛性が高いコア20により支持されるため、薄く形成することができる。
【0020】
外板2は、落雷や雹などによって衝撃を受けることで損傷しうる。それにより修理が必要となる被修理部23が、外板2(修理対象)に形成されている。
特に、ハニカム構造のコア20を板材21,22でサンドイッチした構造の外板2では、その外表面をなし、薄く形成された板材21が損傷し易い。そのため、雹などの飛来物が板材21を貫通し、コア20にめり込むことがある。そのとき、被修理部23は、図示するように、板材21を板厚方向に貫通する板材欠損孔231と、板材欠損孔231に連通するコア欠損凹部232とを有している。
【0021】
本実施形態では、後述するように、複合材で形成される板状の修理パッチ30により被修理部23を覆い、修理パッチ30を被修理部23の周囲の板材21に接着する。
本実施形態では、コア欠損凹部232を埋めずに、板材欠損孔231を修理パッチ30により塞ぐので、コア欠損凹部232が空洞として残される。そのため、修理パッチ30には、コア20により支持されない板材21よりも高い面外剛性が必要とされる。
板材欠損孔231の周囲は、サンディングおよび洗浄によって、修理パッチ30との接着に適した面に整えられることが好ましい。
なお、コア欠損凹部232を修理用の部材で埋めることもできる。
【0022】
修理パッチ30は、板厚方向に分離して形成された第1修理板31および第2修理板32を備えている。
これらの第1修理板31および第2修理板32は、いずれも円形とされ(
図2参照)、積層されて互いに接着されることで一体化されている。
第1修理板31および第2修理板32は、各々、炭素繊維をシート状に形成したものを積層するとともに、積層物にエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸させ、加熱により熱硬化性樹脂を硬化させることによって製作されている。これらの第1修理板31および第2修理板32は、修理前に予め硬化されるプリキュアパッチとされている。
なお、修理パッチ30には、炭素繊維の代わりに、ガラス繊維を用いることもでき、用いる繊維の種類は問わない。また、熱硬化性樹脂の代わりに、加熱を経て固化する、ナイロン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等の熱可塑性樹脂を用いることもでき、用いる樹脂の種類は問わない。熱可塑性樹脂を用いる場合、修理パッチは、熱可塑性樹脂が加熱により予め溶融された後、固化状態となったものを用いる。この修理パッチも、予硬化された修理パッチと同じ働きをするので、本発明の修理パッチに包含される。
【0023】
ここで、第1修理板31および第2修理板32に用いられるものと同様のCFRPにより一体に形成されたプリキュアパッチの面外剛性と、第1修理板31および第2修理板32の各々の面外剛性とを比較する。そのプリキュアパッチは第1修理板31および第2修理板32の合計の板厚で形成されたものとする。
板厚の3乗に断面二次モーメントが比例するため、第1修理板31の板厚が、一体に形成されたプリキュアパッチの板厚の1/2であるとすると、第1修理板31に作用する断面二次モーメントは1/8となる。つまり、一体に形成されたプリキュアパッチに比べて、第1修理板31および第2修理板32はいずれも面外剛性が低く、柔軟性を有する。
そのため、修理パッチ30は、第1修理板31および第2修理板32が互いに接着される前までは、板材21の曲面状の表面に沿って容易に曲がる。しかし、第1修理板31および第2修理板32が積層されて一体に接着された後は、修理パッチ30は全体の板厚に応じた面外剛性を備える。
つまり、本実施形態では、外板2の表面に沿って曲がる(追従する)ように修理パッチ30を複数の修理板31,32に板厚方向に薄く分割した上で、修理板31,32を積層して一体に接着することにより、修理パッチ30に必要な面外剛性を得ている。
【0024】
これらの第1修理板31および第2修理板32は、板材21の表面において最大の曲率とされる部分にも追従可能な板厚に形成されている。
本実施形態では、第1修理板31および第2修理板32を同等の板厚としているが、異なる板厚とすることもできる。
【0025】
また、第1修理板31および第2修理板32は、
図2に示すように、互いに径が異なる。
第1修理板31は、板材欠損孔231を覆うのに足りる径に形成されている。
第2修理板32は、第1修理板31よりも大きい径に形成され、第1修理板31と平面中心を合わせて配置される。
これらの第1修理板31および第2修理板32は、接着フィルム34A,35Aと共に積層される。
接着フィルム34A,35Aは、熱硬化性接着剤を円形のフィルム状に形成したものであり、接着フィルム34Aは第1修理板31と同等の径に形成され、接着フィルム35Aは第2修理板32と同等の径に形成されている。
なお、接着フィルム34Aは、被修理部23の周囲に沿って環状に形成することもできる。
【0026】
図1に示すように、板材21と第1修理板31との間には、接着フィルム34Aが加熱により硬化されることで形成された接着層34が介在している。
また、第1修理板31と第2修理板32との間には、接着フィルム35Aが加熱により硬化されることで形成された接着層35が介在している。
板材21、第1修理板31、および第2修理板32は、接着層34および接着層35によって相互に接着されることで一体化されている。
【0027】
以下、被修理部23の修理手順の一例について、
図3を参照して説明する。
修理にあたり、複数の修理板を用意しておく。それらの修理板は、複数種類の径で一定の板厚に形成されている。それらの修理板の中から、修理時に、被修理部23のサイズに対応する修理板が必要な枚数だけ選択される。
【0028】
先ず、被修理部23のサイズW(
図1)を測定する(被修理部のサイズ測定ステップS1)。このとき、板材21の曲面状の表面に沿って、板材欠損孔231の最大の幅(道程)を測定する。
【0029】
次に、修理パッチ30に要求される面外剛性に基づいて決められる修理パッチ30に必要な板厚が按分される修理板の枚数を決定する。(枚数決定ステップS2)。
例えば、修理パッチ30に要求される面外剛性に基づいて0.4mmの板厚を必要とし、用意されている修理板の板厚が0.2mmだとすると、修理板の枚数は2枚となる。
本ステップS2において、面外剛性は、演算、あるいは部位と面外剛性との対応を示すテーブルデータに基づいて取得することができる。また、修理パッチ30に必要な板厚も、演算、あるいは面外剛性と板厚との対応を示すテーブルデータに基づいて割り出すことができる。
なお、ステップS2は、ステップS1と並行して、あるいはステップS1よりも前に行うこともできる。
続いて、用意された修理板の中から、測定された被修理部23のサイズWに対応する径の修理板を必要な枚数だけ選択する(修理板選択ステップS3)。
そのとき、サイズWよりも大きい径のものを第1修理板31として選択し、第1修理板31の径よりも大径の修理板を第2修理板32として選択する。
【0030】
以上で、修理パッチ30を構成する第1修理板31および第2修理板32が選択される。
次いで、
図2(b)に示すように、接着フィルム34A、第1修理板31、接着フィルム35A、および第2修理板32を順に積層する(積層ステップS4)。これらの第1、第2修理板31,32および接着フィルム34A,35Aによって積層体36が形成される。
続いて、積層体36を外板2の表面(板材21の表面)に配置し、被修理部23を覆う(積層体配置ステップS5)。
このとき、接着フィルム34A,35Aが未硬化であるために、第1修理板31および第2修理板32が互いに拘束されていないので、積層体36は全体として柔軟性を備えている。そのため、積層体36は外板2の表面に倣って容易に曲がる。
なお、接着フィルム34A、第1修理板31、接着フィルム35A、および第2修理板32を外板2から離れた場所で積層体36に形成してから外板2の表面に配置するのではなく、外板2の表面に、接着フィルム34A、第1修理板31、接着フィルム35A、および第2修理板32を順に積層することにより、外板2上で積層体36を形成することもできる。
【0031】
そして、
図4に示すように、積層体36および被修理部23を耐熱性のフィルム41で覆うとともに、被修理部23の周囲に環状に設けられるシーラントテープ43によってフィルム41と外板2の表面との間を封止する。それから、フィルム41に設けられるバルブ42を通じて真空引きを行う(真空引きステップS6)。
真空引きによって減圧されたフィルム41の内側と外側との差圧により、積層体36を外板2の表面に押し付けて密着させることができる。
【0032】
次に、ヒーターを内蔵するヒーターマット44をフィルム41の上から積層体36に載せて、積層体36を加熱することで、接着フィルム34A,35Aを硬化させる(接着ステップS7)。本ステップS7でも、引き続き、真空引きを行うことが好ましい。なお、接着フィルム34A,35Aを加熱により硬化させる手段として、熱風を吹き付けるヒートガンや、外板2を収容可能なオーブンを用いることもできる。
接着フィルム34A,35Aが硬化すると接着層34,35が形成される。このとき、積層体36には差圧による均等な力が作用しているために、外板2、第1修理板31、および第2修理板32の相互の間に均一な厚みの接着層34,35が形成される。
ここで、第1修理板31よりも径が大きい第2修理板32の外周部は、フィルム41の内側と外側との差圧により外板2の表面に押し付けられて接着される。これにより、第1修理板31の平面および側面の全体が第2修理板32によって覆われるので、第1修理板31が外板2から剥離しないように保護することができる。
以上により、外板2の修理を完了する。
【0033】
以上で説明した本実施形態によれば、修理板31,32が接着される前までは修理パッチ30の面外剛性が低いために、修理パッチ30を外板2の曲面状の表面に追従させることができる。そのため、外板2に修理パッチ30を十分な接着強度で確実に接着することができる。一方、第1修理板31および第2修理板32が一体に接着されると、修理パッチ30は全体の板厚に応じた面外剛性を備える。
したがって、本実施形態によれば、修理パッチ30に要求される面外剛性を確保しながら、外板2の被修理部23を確実に修理できる。
【0034】
本実施形態の修理パッチ30は、第1修理板31および第2修理板32が互いに接着される前までは面外方向に容易に曲がるので、被修理部23の周囲の外板2の形状を選ばない。
つまり、
図5に示すように、第1修理板31および第2修理板32を有する修理パッチ30は、平面状の部材表面2Aの修理は勿論のこと、凸状の部材表面2Bや凹状の部材表面2Cの修理にも対応できる。
さらに、修理板の枚数を変えることで、必要とする面外剛性が異なる複数の部位の修理に対応できる。例えば、第1修理板31および第2修理板32に、第3修理板を加えることにより、より高い面外剛性が求められる修理部位にも対応できる。
【0035】
ところで、外板2の曲面に一致する形状で、特定の面外剛性に応じた板厚のプリキュアパッチを製作するとなれば、設計・製作に時間が掛かる上、曲面に合わせてプリキュアパッチを正確に配置する繁雑な作業を要する。また、外板2の各部位の強度検討に基づいて、各部位に対応する形状の多数のプリキュアパッチを用意しておくのは、非常にコストが掛かる。
しかし、本実施形態では、第1修理板31および第2修理板32が互いに接着される前までは修理パッチ30が柔軟性を有するので、修理パッチ30は、外板2の形状を選ばずに、外板2の表面に倣う。つまり、用意された修理板から必要な枚数だけ選択される修理板31,32を積層して、互いに接着するだけで、迅速かつスムーズに修理することができる。
また、部位に応じて修理パッチ30に求められる面外剛性に応じて、複数の修理板を組み合わせ、汎用的に用いることができるので、コストを抑えられる。
【0036】
上記で説明した修理手順は、一例に過ぎず、種々の修理手順が存在する。
上記の例では、修理パッチ30に要求される面外剛性に基づいて、修理パッチ30に用いる修理板31,32の枚数を決定しているが、修理パッチ30に要求される面外剛性に基づいて、複数の修理板31,32の各々の板厚を決定することもできる。
また、外板2に第1修理板31および第2修理板32を配置する前に、予め、外板2の模型の表面に第1修理板31および第2修理板32を倣わせて互いに接着しておくこともできる。その場合、一体に接着された第1修理板31および第2修理板32を外板2に接着することとなる。
【0037】
なお、本実施形態では、ハニカムコアサンドイッチパネルである外板2を修理対象としているが、厚み全体に亘り複合材によって形成された外板や、金属製の外板も、修理パッチ30を用いて上記と同様に修理することができる。
また、外板に限らず、航空機に設けられる壁材、床材、天井材、扉なども本実施形態と同様に修理することができる。
その他の航空機の構造物や装備品の修理にも、本実施形態を適用できる。
【0038】
上記以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
本発明で用いる修理パッチは、積層されて互いに接着される予硬化の複数の修理板を含んで構成される限り、任意に構成できる。修理パッチの平面形状は、円形に限らず、楕円形や、矩形状とすることもできる。
さらには、アルミニウム合金やチタン合金等の金属材料から形成された複数の修理板からなる修理パッチを、本発明の修理パッチとして用いることも可能である。
複数の修理板の各々の板厚は、修理対象の曲率および求める追従性に応じて決められる。修理板は、修理対象に完全に追従するだけの柔軟性(または、可撓性)を有する必要はない。修理パッチと比べて薄い複数の修理板に作用する修理対象からの引き剥がし力は小さいので、十分な接着強度で修理対象に接着できる。
修理板同士を接着する接着剤、および修理板を修理対象に接着する接着剤は、接着の用をなす限り、形態や症状を問わない。接着フィルム34A,35Aが、ナイロン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等の熱可塑性樹脂から形成された熱可塑性接着剤により形成されていてもよい。この場合も、熱可塑性樹脂がまだ結合力を発揮していない間は、第1修理板31および第2修理板32が互いに拘束されないため、積層体36は全体として柔軟性を備えており、積層体36は外板2の表面に倣って容易に曲がる。したがって、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0039】
また、本発明は、航空機が備える部材の他、例えば、風車の羽根など、修理対象を選ばず、衝撃、高温、磨耗、侵食などによって損傷した種々の物の修理に適用できる。
本発明における修理対象は、板状のものに限らない。本発明は、任意の形態の物の外周部や外殻に、修理パッチを接着する修理に広く適用できる。修理対象が入り組んだ形状をしていたとしても、修理板が互いに接着される前までは、修理パッチが、接着により一体化された後に比べて小さな力で面外方向に曲げることのできる柔軟性を有しているので、被修理部の周囲に修理パッチを沿わせて確実に接着できる。