(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記トップ層に、平均粒子径(D50)が0.2〜3.0μmであり、沈降方式による粒度分布曲線の75累積質量%における粒子径(D75)と25累積質量%における粒子系(D25)の比(D75/D25)が3.0以上5.0以下である顔料が含まれる、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の印刷用塗工紙は、顔料と接着剤を主成分とする塗工層を、原紙上に二層設けた印刷用塗工紙である。したがって、本発明の印刷用塗工紙は、原紙の片面あるいは両面に二層の塗工層を有し、該塗工層は、顔料および接着剤を主成分とする。
【0015】
原紙
本発明の印刷用塗工紙は、少なくとも原紙層を有する。本発明に用いる原紙は、単層抄きであることが好ましい。本発明で用いる原紙の製法は特に制限されず、公知の原料を用いて公知の方法によることができる。
【0016】
本発明で使用する原紙に用いるパルプ原料としては、古紙パルプを全パルプ重量の内、50重量%以上含有する。本発明において原紙は、好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは75重量%以上の古紙パルプを含有する。本発明においては、古紙パルプの配合量が多い態様において、通常低下する白色度を高くすることができ、より効果が発揮しやすい。
【0017】
本明細書においては、古紙パルプは、脱インク処理された古紙パルプおよび脱インク処理をされていない古紙パルプの両方を含む。また、脱インキパルプは、DIPと略することもある。古紙パルプとしては、脱インキ処理をされたものが好ましく、原料の再生パルプとしては、上質紙、中質紙、下級紙、新聞紙、チラシ、雑誌などの選別古紙やこれらが混合している無選別古紙を原料とする脱インキパルプなどを使用することができる。
【0018】
古紙パルプ以外のパルプ原料としては、用途に応じて各種パルプを使用することができ、例えば、化学パルプ、砕木パルプ(GP)、リファイナー砕木パルプ(RGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、ケミグランドパルプ(CGP)、セミケミカルパルプ(SCP)などが挙げられる。
【0019】
上記パルプを抄紙した原紙の白色度は75%以下である。本発明は白色度の低い原紙を用いた場合でも白色度を高くし、印刷品質も良好にすることができる。
【0020】
本発明において、原紙の白色度は、以下のようにして測定することができる。すなわち、印刷用塗工紙表面に粘着テープを密着させてから剥離することによって、印刷用塗工紙の表層を剥離させる。顔料塗工層が完全に無くなり原紙の繊維が見えるまで、テープを用いて印刷用塗工紙の顔料塗工層を剥離する。このようにして顔料塗工層を除去した紙を多枚数重ね、白色度をJIS P8148に基づいて測定し、原紙の白色度とすることができる。なお、多数枚重ねるとは、不透明なほど厚いかまたは重ねたシート数を2倍にしても測定される反射率に変化がない程十分に試料枚数を重ねることをいう。
【0021】
本発明においては、原紙の填料として公知の填料を任意に使用できる。填料として、例えば、重質炭酸カルシム、軽質炭酸カルシウム、クレー、シリカ、軽質炭酸カルシウム−シリカ複合物、カオリン、焼成カオリン、デラミカオリン、ホワイトカーボン、タルク、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、酸化亜鉛、酸化チタン、ケイ酸ナトリウムの鉱産による中和で製造される非晶質シリカ等の無機填料や、尿素−ホルマリン樹脂、メラミン系樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂などの有機填料を単用又は併用できる。この中でも、中性抄紙やアルカリ抄紙における代表的な填料である重質炭酸カルシウムや軽質炭酸カルシウムが不透明度向上のためにも好ましく使用される。
【0022】
紙中填料率は特に制限されないが、1〜40固形分重量%が好ましく、10〜35固形分重量%がさらに好ましい。
【0023】
本発明においては、公知の製紙用添加剤を原紙に使用することができる。例えば、硫酸バンドや各種のアニオン性、カチオン性、ノニオン性あるいは、両性の歩留まり向上剤、濾水性向上剤、各種紙力増強剤や内添サイズ剤等の抄紙用内添助剤を必要に応じて使用することができる。乾燥紙力向上剤としてはポリアクリルアミド、カチオン化澱粉が挙げられ、湿潤紙力向上剤としてはポリアミドアミンエピクロロヒドリンなどが挙げられる。これらの薬品は地合や操業性などの影響の無い範囲で添加される。中性サイズ剤としてはアルキルケテンダイマーやアルケニル無水コハク酸、中性ロジンサイズ剤などが挙げられる。更に、染料、蛍光増白剤、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等も必要に応じて添加することができる。
【0024】
本発明における原紙の抄紙方法は特に限定されず、トップワイヤー等を含む長網抄紙機、オントップフォーマー、ギャップフォーマ、丸網抄紙機、長網抄紙機と丸網抄紙機を併用した板紙抄紙機、ヤンキードライヤーマシン等を用いて行うことができる。抄紙時のpHは、酸性、中性、アルカリ性のいずれでもよいが、中性またはアルカリ性が好ましい。抄紙速度は、特に限定されない。
【0025】
本発明において原紙の坪量は特に限定されないが、30g/m
2〜200g/m
2が好ましい。より好ましくは、40g/m
2〜130g/m
2である。また塗工紙を製造する場合は、原紙をオンラインソフトキャレンダ、オンラインチルドカレンダなどにより、塗工工程の前に、予め平滑化しておいてもよい。
【0026】
本発明の印刷用紙は、上述した原紙の片面または両面にクリア(透明)塗工層を有していてもよい。原紙上にクリア塗工を施すことにより、原紙の表面強度や平滑性を向上させることができ、また、顔料塗工をする際の塗工性を向上させることができる。本発明においては、クリア塗工層に紫色顔料および/または青色顔料を含有させることができ、その場合、クリア塗工の塗工液中に紫色顔料および/または青色顔料を配合し、それを原紙上に塗工すればよい。クリア塗工の量は、片面あたり固形分で0.1〜3.0g/m
2が好ましく、0.2〜2.0g/m
2がより好ましい、更に好ましくは0.2〜1.0g/m2である。。
【0027】
本発明においてクリア塗工とは、例えば、2ロールポンドサイズプレス、ゲートロールコータ、プレメタリングサイズプレス、カーテンコータ、スプレーコータなどのコータ(塗工機)を使用して、澱粉、酸化澱粉などの各種澱粉、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコールなどの水溶性高分子を主成分とする塗布液(表面処理液)を原紙上に塗布(サイズプレス)することをいう。
【0028】
顔料塗工
本発明の印刷用紙は、顔料塗工により二層の顔料塗工層を設けて塗工紙とする。本発明の印刷用紙における顔料塗工層は、白色度を高くする観点からは、顔料塗工層を二層とする。
【0029】
好ましい態様において、2つの顔料塗工層の両方またはいずれか1つに、紫色顔料および/または青色顔料を含有させることができる。この場合、紫色顔料および/または青色顔料を、より外側に位置する顔料塗工層(原紙から遠い位置にある顔料塗工層)に含有させることが好ましい。紫色顔料および/または青色顔料を顔料塗工層に存在させるためには、紫色顔料および/または青色顔料を含有する塗料を用いて顔料塗工を行えばよい。本発明において塗工方法は特に制限されず、公知の原料を用いて公知の方法によることができる。
【0030】
本発明においては、オンラインソフトキャレンダ、オンラインチルドカレンダなどにより塗工前の原紙にプレカレンダー処理を行い、原紙を予め平滑化しておくことが、塗工後の塗工層を均一化する上で好ましい。この場合、処理線圧は、好ましくは10〜100kN/m、より好ましくは10〜50kN/mである。また、プレカレンダー処理する際の原紙の水分率も重要であり、水分率は3〜5%が好ましい。
【0031】
本発明の印刷用塗工紙は、以上のように得られた原紙上に、顔料と接着剤を主成分とする塗工液を塗工・乾燥して顔料塗工層を2層設けることによって製造される。顔料塗工は、原紙の表面片面でも両面でも良いが、カールしない、表裏の物性が異ならないということから、両面塗工が好ましい。
【0032】
本発明の塗工層に用いる顔料としては、例えば、カオリン、クレー、焼成クレー、エンジニアードカオリン、デラミネーテッドクレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、珪酸、珪酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイトなどの無機顔料および密実型、中空型、またはコアーシェル型などの有機顔料などを必要に応じて単独または2種類以上混合して使用することができる。本発明においては、これらの顔料を紫・青顔料と区別するために「白色顔料」ということがある。
【0033】
原紙に近い顔料塗工層(以下、アンダー層ともいう)は、隠蔽性の高い顔料を配合することが好ましい。隠蔽性を向上させる白色顔料としては、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、エンジニアード重質炭酸カルシウム、クレー、焼成クレー、カオリンが挙げられ、中でも重質炭酸カルシウムが好ましい。重質炭酸カルシウムは、アンダー顔料塗工層に含有する顔料100重量部に対し50重量部以上配合することが好ましく、より好ましくは75重量部以上含有する。これらの顔料の粒径は、Malvern社製Mastersizer Sなどのレーザー回折式粒度分布測定機で測定した値で平均粒子径(D50)が比較的大きいものが好ましく、具体的には、平均粒子径(D50)が0.5〜6.0μmが好ましく、1.0〜3.0μmがより好ましい。以下に記載する平均粒子径は、すべて上記方法で測定した値である。
【0034】
一方、原紙から遠い顔料塗工層(以下、トップ層ともいう)は、白色度を高くする白色顔料を配合することが好ましい。白色度を高くする白色顔料としては、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、エンジニアード重質炭酸カルシウムが挙げられ、中でも重質炭酸カルシウムが好ましい。重質炭酸カルシウムは、トップ顔料塗工層に含有する顔料100重量部に対し50重量部以上配合することが好ましく、より好ましくは75重量部以上、さらに好ましくは100重量部含有する。
【0035】
トップ層の顔料は、平均粒子径が比較的小さいものが好ましく、具体的には、平均粒子径(D50)が0.2〜3.0μmが好ましく、0.2〜1.0μmがより好ましい。
【0036】
また、トップ層に用いる顔料としては、沈降方式による粒度分布曲線の75累積質量%における粒子径(D75)と25累積質量%における粒子系(D25)の比(D75/D25)が3.0以上5.0以下である顔料が好ましい。D75/D25は、粒度分布のシャープさ度合いを示す値であり、この値が小さい方がよりシャープであることを示す。粒度分布がシャープである方が、平滑度や光沢度などが高くなる傾向にある。
【0037】
本発明で顔料塗工層に使用する接着剤(バインダー)について、例えば、好ましい接着剤として、スチレン・ブタジエン系、スチレン・アクリル系、エチレン・酢酸ビニル系、ブタジエン・メチルメタクリレート系、酢酸ビニル・ブチルアクリレート系等の各種共重合およびポリビニルアルコール、無水マレイン酸共重合体、アクリル酸・メチルメタクリレート系共重合体等の合成系接着剤;カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白等の蛋白質類;酸化澱粉、陽性澱粉、尿素燐酸エステル化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉などのエーテル化澱粉、デキストリン等の澱粉類;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース等のセルロース誘導体等の通常の塗工紙用接着剤1種類以上を適宜選択して使用することができる。本発明においては、トップ顔料塗工層、アンダー顔料塗工層共に、合成系接着剤と澱粉類を併用することが好ましい。
【0038】
本発明のアンダー顔料塗工層に使用する接着剤は、接着剤の合計部数として顔料100重量部に対して、8〜35重量部が好ましい。ブレード塗工方式により塗工する場合は、顔料100重量部に対して、8〜12重量部が好ましい。また、接着剤の種類としては、合成系接着剤の中では、スチレン・ブタジエン系共重合体が好ましい。アンダー顔料塗工層においては、合成系接着剤と澱粉系接着剤を併用することが好ましいが、その比率は、合成系接着剤が澱粉系接着剤に比べて少ない方が好ましい。具体的には、合成系接着剤:澱粉系接着剤=2/8〜4/6が好ましく、2/8〜3/7がより好ましい。
【0039】
本発明のトップ顔料塗工層に使用する接着剤は、接着剤の合計部数として顔料100重量部に対して、8〜15重量部が好ましい。また、接着剤の種類としては、合成系接着剤の中では、スチレン・ブタジエン系共重合体が好ましい。アンダー顔料塗工層においては、合成系接着剤と澱粉類を併用することが好ましいが、合成系接着剤としては、4〜10重量部が好ましい。
【0040】
本発明の塗工液には、顔料と接着剤の他に、必要に応じて、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤、通常の塗工紙用顔料に配合される各種助剤を適宜使用できる。
【0041】
本発明において、塗工液の調製方法は特に限定されず、コータの種類によって適宜調整できる。ブレード方式のコータを用いる場合は、塗工液の固形分濃度は40〜70重量%が好ましく、より好ましくは60〜70重量%である。塗工液粘度は60rpmで測定したB型粘度が500〜5000mPa・sの範囲であることが好ましい。
【0042】
本発明においては、通常用いられるコータであればいずれを用いて塗工しても良い。オンマシンコータでもオフマシンコータでも良く、オンマシンコータであれば、サイズプレスコータ、ゲートロースコータなどのロールコータ、ビルブレイドコータ、ブレードメタリングサイズプレスコータなどのコータを使用できる。塗工速度は、特に限定されないが、現在の技術ではブレードコータでは500〜1800m/分、サイズプレスコータでは500〜3000m/分が好ましい。
【0043】
アンダー顔料塗工層は、ロールコータ、ブレードコータが好ましく、トップ顔料塗工層はブレードコータが好ましい。
【0044】
顔料塗工層の塗工量は、適宜調製されるが、アンダー顔料塗工層の塗工量は、片面あたり固形分で7〜25g/m
2が好ましく、8〜15g/m
2がより好ましい。トップ顔料塗工層の塗工量は片面あたり5g/m
2〜15g/m
2が好ましく、さらに7〜12g/m
2がより好ましい。本発明においては、アンダー顔料塗工層の塗工量が、トップ顔料塗工層の塗工量と同じか、トップ顔料塗工層の塗工量よりも多い方が好ましい。
【0045】
本発明の印刷用塗工紙の塗工量は、坪量により変更することができる。印刷用塗工紙の坪量が100g/m
2以下のときは、アンダー、トップの片面合計塗工量を12〜20g/m
2、印刷用塗工紙の坪量が100〜280g/m
2の時は、片面合計塗工量を20〜40g/m
2とすることができる。
【0046】
本発明において、湿潤塗工層を乾燥させる方法に制限はなく、例えば蒸気過熱シリンダ、加熱熱風エアドライヤ、ガスヒータードライヤ、電気ヒータードライヤ、赤外線ヒータードライヤ等各種の方法が単独もしくは併用して用いることができる。
【0047】
表面処理
本発明においては、以上のように顔料塗工層を設けた紙を必要に応じて表面処理する。好ましい態様において、本発明の印刷用紙は、スーパーカレンダーや高温ソフトニップカレンダー等のカレンダーで表面処理を行うことができる。表面処理により、印刷用紙の平滑度や光沢性を向上させることができる。本発明においては、ソフトニップカレンダ処理が好ましい。ソフトニップカレンダ処理をすることにより、白色度、不透明度共に向上する。温度を上げると、塗工紙の表面の光沢、平滑度が向上する。
【0048】
白色ムラは、原紙の凹凸に由来する塗工層の凹凸により生じることがある。特に表面処理をする場合、カレンダーに接触する部分が不均一となり、塗工層の密度ムラが生じ、それが白色ムラになることがある。本発明の印刷用塗工紙は、表面処理をしても、していないものと同等以上に白色ムラを抑制できる。
【0049】
紫色および/または青色の色材
本発明においては、印刷用塗工紙に、紫色および/または青色の色材(以下、紫・青色材ということがある)を含有させることができる。本発明において色材とは、白色以外の有色の顔料または染料をいう。顔料とは、水や油や有機溶剤などに不溶または難溶性または分散状態で存在する白色あるいは有色の粉体であり、無機と有機のものがある。本発明においては、無機、有機いずれのものでも良い。染料とは、可視光線を選択吸収または反射して固有の色を持つ有機色素のうち、適当な染色法により繊維や顔料等に染着するものをいい、溶媒(水や有機溶剤など)に可溶である。本発明においては、顔料、染料のいずれかまたは併用してもよい。顔料は、耐光性に優れ、紙の経時による変色・着色を防止するという利点がある。
【0050】
本発明の印刷用塗工紙に紫・青色材を含有させる場合、印刷用塗工紙のいずれの層に含有させてもよい。好ましい態様において、本発明の顔料を、印刷用塗工紙を構成する層の1層に存在させるか、または2層以上に存在させることによって、比較的簡便に印刷用塗工紙を製造することができる。特に塗工層に青・紫色材を含有させるとよい。
【0051】
本発明で用いる色材は、原紙中に含有されていても良いし、サイズプレス液中に含有されていても良いし、顔料塗工層に含有されても良い。また、塗工層が2層以上の場合、いずれかの層に含有されていても良いし、すべての層に含有されていても良い。原紙の両面に同一の層(例えば両面に設けられた塗工層)が存在する場合、1の層に青・紫色材が存在するとは、前記の両面の塗工層が青・紫色材を含む場合をいう。
【0052】
したがって、一つの態様において、本発明の印刷用塗工紙は、原紙層と顔料塗工層を有する塗工紙であり、紫・青色材が、原紙層と顔料塗工層の両方または一方に存在する。また別の態様において、本発明の印刷用塗工紙は、原紙層、クリア塗工層、顔料塗工層を有する塗工紙であり、紫・青色材が、原紙層、クリア塗工層、顔料塗工層から選ばれる1つの層または複数の層に存在する。
【0053】
本発明においては、紫・青色材は、顔料塗工層に存在することが好ましく、紫・青色材が顔料であることが好ましいが、この場合、白色顔料の合計100重量部に対して、紫・青顔料は、0.001〜0.05重量部程度存在することが好ましい。
【0054】
顔料塗工層が多層である場合、紫・青色材は、内層、外層の一方または双方に存在できる。色材を配合すると見た目の白さはアップするが、色差計で測定する際の白色度が低下してしまう。これは、色材が可視光(400〜450nm)を吸収してし、色差計で450nmの反射が減少するためである。
【0055】
原紙層への色材の配合
本発明の印刷用塗工紙の原紙に紫・青色材を配合することができる。紫・青色材としては、前述の青・紫顔料の他、青色染料、紫色染料、または赤色染料を含有させることもできる。
【0056】
原紙にこれらの染料を原紙層に存在させるためには、これらの染料を含有する抄紙原料から原紙を抄紙すればよい。染料は繊維や顔料等に染着するので、原紙を染色しやすい。また、染料は経時による変色を引き起こすことがあるが、最内層の原紙層に染料を含有させることで、このような変色を抑制できる。さらに、本発明において多くの脱墨パルプを用いる場合、仮に染料による変色が起こっても、見た目の白色度の低下がそれほど大きくならない。原紙層は、前記染料、紫・青色顔料のいずれかを含有してもよいし、前記染料と紫・青色顔料との双方を含有してもよい。
【0057】
したがって、一つの態様において本発明の印刷用塗工紙は、原紙層が前記染料を含み、他の層が紫・青色顔料を含む印刷用塗工紙である。また別の態様において本発明の印刷用塗工紙は、原紙層が前記染料と紫・青色顔料とを含み、他の層が紫・青色顔料を含む印刷用塗工紙である。
【0058】
印刷用塗工紙における前記染料の含有量、または色材の量は、紫・青色顔料と同様にして求められる。
【0059】
本発明においては、前記染料および/または紫・青色顔料によって、原紙の色相を、JIS P 8150の方法による紫外線を含む測定においてb
*値が−10以上2.0未満、より好ましくは−3.0以上2.0未満に調整すると、より本発明の効果を奏しやすい。したがって、色相が上記範囲に調整された原紙とこの原紙の上に設けられた塗工層等を含む印刷用塗工紙は、塗工層における紫・青色顔料の使用量を低減させても、優れた白色度、不透明度を有する。
【0060】
一方、色相が上記範囲外の原紙を用いる場合、所望の白色度を得るためには、塗工層等に含まれる紫・青色顔料の量を多くする必要がある。このため、銘柄抄き変え時に塗工液中の顔料が配管内に残りやすくなり、操業ロスが大きくなりやすい。しかし、色相が上記範囲内の原紙を用いると、このようなことを回避できる。さらに、色相が前記範囲外の原紙を用い、主として原紙層以外の層によって所望の白色度に色相を調整する場合は、印刷用塗工紙の青味が強くなりすぎたときに、見た目の白さの低下や白色度が低下する可能性があり調整が比較的難しいという傾向がある。しかしながら、色相が上記範囲にある原紙を用いると、このようなことを回避しやすい。
【0061】
また、原紙の色相が上記範囲内の原紙であっても、b*値が比較的低めの原紙を用いると塗工層等に含まれる紫・青色顔料の量が少なくても所望の色相を得られるため、上記操業ロスなどがより起こりにくい。
【0062】
原紙層のa
*値は、印刷用紙の白色度や不透明度には大きく寄与しないため、特に限定されないが、通常は、−2以上7未満が好ましく、−1以上5未満がより好ましく、−1以上3未満がさらに好ましい。前記範囲を外れると、用紙の色が白に見えなくなってしまうことがあるため好ましくない。
【0063】
原紙中の前記染料の添加量は特に限定されないが、例えば、全パルプの絶乾重量を基準として、塩基性染料は0.001〜0.01重量%、直接染料は0.015〜0.15重量%とすることができる
顔料
本発明の顔料は、青色または紫色であるものを使用でき、青色の顔料としては、例えば、EMT−ブルーDS−18 東洋インキ製造(株)社製などが挙げられ、紫色の顔料としては、例えば、SAバイオレットC12896 御国色素(株)社製などが挙げられる。顔料は、青色単独、紫色単独、両者併用しても良いが、不透明度向上するには、紫色の顔料を使用することが好ましい。また、本発明においては、必要に応じて、黒、赤、黄などの、青、紫以外の色材を添加しても良い。
【0064】
青色顔料・紫色顔料としては、無機顔料および有機顔料のいずれも使用できる。青色顔料の具体例としては、例えば、ウルトラマリン、アズライト、プロシアブルー(紺青)、群青、スマルト、コバルトブルー(アルミン酸コバルト)、セルリアンブルー(錫酸コバルト)、コバルトクロムブルー、コバルト・アルミ・珪素酸化物、コバルト・亜鉛・珪素酸化物、マンガンブルー、フタロシアニンが挙げられる。また、紫色顔料の具体例としては、例えば、コバルトバイオレット(砒酸コバルト、燐酸コバルト、コバルト・リチウム・燐酸化物、含水燐酸アンモニウムコバルト、ホウ酸コバルトなど)、紫群青、酸化鉄紫、マンガンバイオレット、ミネラルバイオレットなどの無機顔料、インジゴイド系、キナクリドン系、オキサジン系、アントラキノン系、カルボニウム系、キサンテン系の有機顔料が挙げられる。
【0065】
本発明における青色および紫色の顔料とは、印刷用紙に含有させたときに、印刷用紙をそれぞれの色にする色材である。各々の色材を添加すると、
図1に示す方向へ紙の色相を変化させることができる。
図1は、L
*a
*b
*表色系をもとに、本発明の色材を含有しない紙と、含有させた後の紙の色相の変化を示したものである。色相を、a
*値の(+)方向を0°、(−)方向を180°b
*値(+)方向を90°、(−)方向を270°として表記した場合、添加前の紙を原点ゼロの位置とすると、青色の色材を添加すると、「青味」と
図1に示してある210°以上280°未満の部分に添加後の紙の色相が変化し、紫色の色材を添加すると、「紫味」と
図1に示してある280°以上335°未満の部分に添加後の紙の色相が変化するということを表している。
【0066】
染料
染料には直接染料、酸性染料、塩基性染料、建染染料、分散染料、反応染料などのタイプがあるが、セルロース系繊維に良く用いられる染料としては塩基性染料、直接染料、建染染料が挙げられる。塩基性染料は、イオン間のクーロン力、水素結合、ファン・デル・ワールス力などにより被染色物に結合し、直接染料は、水素結合、ファン・デル・ワールス力などで被染色物に結合する。中でも染着力が大きく、色調が鮮やかな塩基性染料が好ましい。塩基性染料としては、アゾ染料、ジフェニルおよびトリフェニルメタン染料、アジン染料、オキサジン染料、チアジン染料などが挙げられる。また、直接染料としては、ジトリジン、ジアニシジンからのアゾ染料などが挙げられる。建染染料としてはインジゴ・チオインジゴ系、アントラキノン系、フタロシアニン系に分類されものが挙げられる。
【0067】
本発明では、青色、紫色、または赤色染料を使用できる。青色の染料としては、例えば、アイゼンベーシックペーパーブルーRHリキッド 保土ヶ谷化学工業(株)社製などが挙げられ、赤色の染料としては、例えば、アストラフロキシンGリキッド ケミラ社製などが挙げられる(いずれも塩基性染料)。
【0068】
青・紫色染料は、青・紫色顔料と同様の作用により、印刷用塗工紙の色相を特定の範囲とし、印刷用塗工紙の表面色の見た目の白さを増強すると共に、不透明度を向上させ、印刷時の裏抜けを防止する。一方、紫色、赤色染料は、若干ではあるがb*値を下げる効果がある。また青色染料だけではa
*値がマイナス方向にシフトする、すなわち色相が緑にシフトすることがあるので、紫色、赤色染料は、これを抑制して、a
*値を−2以上7以下の範囲にしやすくする。
【0069】
本発明においては、青色、紫色、赤色染料を単独で使用してもよく、これらを併用してもよい。しかしながら、不透明度を高めるという観点からは、青色染料を使用することが好ましい。また、原紙層は、必要に応じて、黒、黄などの、青、赤以外の色材を含んでいてもよい。
【0070】
顔料の含有量
本発明における紫色顔料および/または青色顔料の含有量は特に限定されないが、これらの顔料の合計量が、印刷用塗工紙1m
2あたり、0.7mg以上3.5mg以下であることが好ましく、0.9mg以上3.0mg以下であることがより好ましく、1.5mg以上3.0mg以下であることが特に好ましい。一般に前記の量が0.7mgより少ないと、顔料による光の吸収が少ないため、不透明度に寄与する隠蔽性が不足するので好ましくない。また、一般に前記の量が3.5mgより多いと、顔料による光の吸収量が多く、不透明度向上に大きく寄与するものの、色相が0点から大きく外れ、白色とは感じられなくなるので好ましくない。顔料の含有量は、上記範囲内で、原料あるいは原紙などの白色度により適宜調節できる。
【0071】
青色顔料および紫色顔料の合計量は、各層に含まれる青色顔料および紫色顔料の量を合計して求められる。例えば、印刷用紙が、原紙層、サイズプレス層および顔料塗工層からなる場合、下式によって求められる。
【0073】
印刷用塗工紙
本発明によって得られる印刷用塗工紙の坪量は、特に限定されないが、通常70g/m
2〜200g/m
2である。好ましくは80〜160g/m
2である
本発明の印刷用塗工紙の色相は、好ましい態様において、JIS P 8150に規定される紫外線を含む測定においてa
*値が0以上7未満かつb
*値が−15以上−2未満である。a
*値が0以上5未満かつb
*値が−10以上−3未満であることがより好ましい。く、a
*値が0以上5未満かつb
*値が−9以上−3未満であることがさらに好ましい。このようにb
*を比較的低くすることによって、印刷用紙の見た目の白さを増強できるとともに、不透明度を向上させ、印刷時の裏抜けを防止することができる。
【0074】
本発明の印刷用塗工紙の灰分は、30重量%以上であることが好ましく、より好ましく40重量%以上である。印刷用紙の灰分が30重量%より少ないと、白色度、不透明度が十分に向上しない。塗工量が多いことに起因する高灰分化により、白色度が高く、印刷時のインキ受理性が良く、かつ十分な表面強度をえることができる。また、本発明の印刷用塗工紙のPPSラフネスは、インキ受理性などの印刷適性の観点から、1.5以下であることが好ましく、1.0以下であることがより好ましい。
【0075】
本発明の印刷用塗工紙の白色度は、80%以上である。本発明は、古紙を高配合しても白色度が高いことが特徴である。
【実施例】
【0076】
以下に実施例および比較例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、当然ながら、本発明は以下の実施例のみに限定されない。例中の部および%はそれぞれ重量部および重量%を示す。
【0077】
[品質評価方法]
以下に記載する品質評価方法で、本発明の印刷用紙の品質を評価した。また、本発明の印刷用紙について上記以外の品質項目も測定した。
(1)色相測定方法(a
*、b
*):JIS P8150に準拠し、村上色彩(株)社製色差計CMS−35SPXにて、紫外光を含む光源にて測定した。
(2)ISO白色度測定方法:JIS P8148に準拠し、村上色彩(株)社製色差計CMS−35SPXにて、紫外光を含む光源にて測定した。
(3)白紙光沢度測定方法:JIS P8142に準拠し、ローレンツェン&ベットレー株式会社社製 L&W GLOSS TESTERにて測定した。
(4)不透明度測定方法:JIS P8149に準拠し、村上光彩(株)社製CMS−35SPX計にて測定した。
(5)平滑度測定方法:JIS P8155に準拠し、旭精工株式会社製・デジタル式王研平滑度計(EYO−55−M)にて測定した。
(6)紙厚測定方法:JIS P8118に準拠し、熊谷理機工業株式会社・紙厚計にて測定した。
(7)灰分測定方法:JIS P8251に準拠して測定した。
(8)白紙面感(もやもや):印刷用紙の色むらを、以下の基準により目視により4段階で評価した。◎:色むらが認識できない、○:目立つ色むらはない、△:色むらがある、×:色むらが目立つ。
【0078】
実施例1
広葉樹クラフトパルプ(LBKP)を25%、脱墨パルプ(DIP)を75%含有するパルプスラリーを調成し、紙中灰分が17%となるように填料として軽質炭酸カルシウムを添加し、内填紙力剤としてカチオン性紙力増強剤を対パルプ0.5%添加して紙料を調成した。
【0079】
この紙料を用いて、抄紙速度が550m/分にて、ツインワイヤーを有する抄紙機で抄紙した後、酸化澱粉(日本コーンスターチ社製SK20)を主成分とするサイズプレス液を2ロールポンドサイズプレスにて片面あたり0.8g/m
2になるように両面塗工して乾燥し、白色度74%、坪量84.6g/m
2の原紙を得た。
【0080】
続いて、後述するアンダー塗工液を、ブレードコータを用いて片面あたり15.0g/m
2、原紙上に両面塗工して乾燥し、さらに、後述するトップ塗工液を、ブレードコータを用いて片面あたり10.0g/m
2、両面塗工して乾燥した。塗工速度は600m/分であった。
【0081】
次いで、高温ソフトニップカレンダを用いて、4ニップ、最高処理温度80℃、最高処理線圧200kN/mの条件で表面処理して印刷用塗工紙を得た。
【0082】
[顔料塗工(アンダー塗工)液の調成] 重質炭酸カルシウム(平均粒子径1.65μm、FMT社製FMT75)100部、酸化澱粉(敷島スターチ社製M210)7部、スチレン−ブタジエン系合成高分子ラテックス3部、紫顔料(御国色素社製SAバイオレットC12896)0.003部を常温にて混合攪拌し、固形分濃度が68重量%のアンダー塗工液を得た。
【0083】
[顔料塗工(トップ塗工)液の調成] 顔料として、重質炭酸カルシウム(平均粒子径0.96μm、D75/D25=4.10、FMT社製FMT97)を100部配合し、モノマー組成が主にスチレンおよびブタジエンである合成高分子ラテックスを9部、酸化澱粉(敷島スターチ社製M210)を2.7部配合し、さらに紫顔料(御国色素社製SAバイオレットC12896)を0.004部、青顔料(東洋インキ製造社製EMT−ブルーDS−18)を0.001部配合し、すべての材料を常温にて混合攪拌し、固形分濃度が68重量%の塗工液を得た。なお、色材、接着剤、水溶性高分子の配合量は、顔料100重量部に対する値である。
【0084】
実施例2
高温ソフトニップカレンダ処理をしなかった以外は、実施例1と同様にして印刷用塗工紙を得た。
【0085】
実施例3
原料パルプを、広葉樹クラフトパルプ(LBKP)を50%、脱墨パルプ(DIP)を50%含有するパルプスラリーとし、トップ顔料塗工液の片面塗工量を9.5g/m
2とした以外は、実施例1と同様にして、印刷用塗工紙を得た。原紙の白色度は78%であった。
【0086】
実施例4
原料パルプを、脱墨パルプ(DIP)を100%含有するパルプスラリーとし、トップ顔料塗工液の片面塗工量を11.0g/m
2とした以外は、実施例1と同様にして、印刷用塗工紙を得た。原紙の白色度は69%であった。
【0087】
実施例5
アンダー塗工液の顔料を重質炭酸カルシウム(平均粒子径1.65μm、FMT社製FMT75)75部、クレー25部とした以外は、実施例1と同様にして、印刷用塗工紙を得た。
【0088】
実施例6
アンダー塗工液の片面塗工量を10g/m
2とした以外は、実施例1と同様にして、印刷用塗工紙を得た。
【0089】
比較例1
アンダー塗工液の片面塗工量を14.5g/m
2とし、トップ塗工液の顔料を重質炭酸カルシウム(平均粒子径0.96μm、D75/D25=4.10、FMT社製FMT97)60部、クレー40部とした以外は、実施例1と同様にして、印刷用塗工紙を得た。
【0090】
比較例2
原紙坪量を100.4g/m
2、塗工液の顔料を重質炭酸カルシウム50部(FMT97)、クレー50部とし、バインダーをラテックス8.7部、酸化澱粉4.5部とし、紫顔料0.004部、青顔料0.004部としてシングル塗工し、片面塗工量を14g/m
2とした以外は、実施例1と同様にして印刷用塗工紙を得た。
【0091】
比較例3
原紙坪量を100.4g/m
2、塗工液の顔料を重質炭酸カルシウム100部(内訳はFMT75を50部、FMT97を50部)、バインダーをラテックス7.9部、酸化澱粉4.5部とし、紫顔料0.003部、青顔料0.003部としてシングル塗工し、片面塗工量を14.5g/m
2とした以外は、実施例2と同様にして印刷用塗工紙を得た。
【0092】
【表1-1】
【0093】
【表1-2】
【0094】
【表1-3】