(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
遊技球を発射する発射手段と、この発射手段により発射された遊技球を遊技領域へ案内する発射案内通路と、この発射案内通路の出口に延在するベース部材に回動可能に軸支された球戻り防止部材とを備え、この球戻り防止部材が前記出口を開放する方向へ回動することで前記遊技領域への遊技球の流入を許可すると共に、前記球戻り防止部材が前記出口を閉鎖する方向へ回動復帰することで前記発射案内通路への遊技球の戻りを阻止するようにしたパチンコ機において、
前記球戻り防止部材は、前記発射案内通路の出口を開閉する開閉弁と、この開閉弁を閉鎖方向へ付勢する錘部と、前記開閉弁と一体的に回動して前記発射案内通路内に出入する規制弁とを有しており、
前記規制弁には先端側を開放した切欠き溝が形成されており、
前記開閉弁が前記発射案内通路の出口を閉鎖する位置に回動復帰しているとき、前記規制弁は前記発射案内通路から退去する位置にあり、
前記開閉弁が前記発射案内通路の出口を開放する位置まで回動したとき、前記規制弁は前記開閉弁よりも後方位置で前記発射案内通路の内部に突出するようにしたことを特徴とするパチンコ機。
【背景技術】
【0002】
一般的にパチンコ機は、透明なガラス板を有する前面扉によって覆われた遊技盤を備えており、この遊技盤の前面(盤面)に形成された遊技領域に向けて発射装置から遊技球が打ち出されるようになっている。遊技盤には、発射装置から発射された遊技球を遊技領域の上部側に案内する外レールと、遊技領域の周壁の大部分を規定する内レールとが設けられており、これら外レールと内レールとで挟まれた空間部分が発射案内通路となっている。そして、発射案内通路の出口付近には球戻り防止部材が設けられており、この球戻り防止部材によって遊技球の発射案内通路側への逆流を防止している。
【0003】
このようなパチンコ機においては、種々な方法によって遊技球を不正に搾取するゴト行為が多発しており、その手口も日を追うごとに巧妙になってきている。一例を挙げると、遊技球に紐状体を接着した糸付き球と呼ばれる不正球を作成し、紐状体を手で持ったまま不正球を発射装置に装填して遊技領域内に打ち出した後、手に持った紐状体を操作することにより、遊技領域内に到達した糸付き球を自在に操る「糸ゴト」と呼ばれる不正行為が問題となっている。かかる「糸ゴト」行為は、糸付き球が遊技領域内に到達すると、遊技球に繋がる紐状体が球戻り防止部材の先端部に引っ掛かった状態となるため、球戻り防止部材の先端部を支点として紐状体を操作することによって、糸付き球を遊技領域に配設された始動入賞口や一般始動入賞口へ導くことができる。
【0004】
そこで従来より、このような「糸ゴト」行為を阻止するために、球戻り防止部材の先端部に切断刃を設け、糸付き球が遊技領域内に到達した場合に、糸付き球に繋がれた紐状体を切断刃の刃先に引っ掛けた状態とすることにより、紐状体を切断刃で切断するようしたパチンコ機が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この従来例では、糸付き球に繋がれた紐状体が球戻り防止部材の切断刃に引っ掛かった状態にあるとき、不正行為を行う者が糸付き球を始動入賞口等に入賞させようとして、パチンコ機の外部から紐状体を緊張/弛緩するように操作すると、紐状体が切断刃に繰り返し加わる応力によって切断されてしまうため、糸付き球を自在に操ることができなくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された従来のパチンコ機は、糸付き球に繋がれた紐状体が球戻り防止部材に設けた切断刃に引っ掛かった状態にあるとき、この紐状体を切断刃に繰り返し加わる応力によって切断するようにしているため、紐状体の素材として綿のように切れやすいものが使用された場合は、比較的簡単に紐状体を切断して「糸ゴト」行為を阻止することができる。しかしながら、釣り糸のように丈夫な紐状体が使用されると、切断刃によって紐状体を切断することが非常に難しくなり、その場合は糸付き球を用いた不正行為を阻止することができなくなる。
【0007】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、糸付き球を用いた不正行為を簡単な構成で確実に防止できるパチンコ機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、遊技球を発射する発射手段と、この発射手段により発射された遊技球を遊技領域へ案内する発射案内通路と、この発射案内通路の出口に延在するベース部材に回動可能に軸支された球戻り防止部材とを備え、この球戻り防止部材が前記出口を開放する方向へ回動することで前記遊技領域への遊技球の流入を許可すると共に、前記球戻り防止部材が前記出口を閉鎖する方向へ回動復帰することで前記発射案内通路への遊技球の戻りを阻止するようにしたパチンコ機において、前記球戻り防止部材は、前記発射案内通路の出口を開閉する開閉弁と、この開閉弁を閉鎖方向へ付勢する錘部と、前記開閉弁と一体的に回動して前記発射案内通路内に出入する規制弁とを有しており、
前記規制弁には先端側を開放した切欠き溝が形成されており、前記開閉弁が前記発射案内通路の出口を閉鎖する位置に回動復帰しているとき、前記規制弁は前記発射案内通路から退去する位置にあり、前記開閉弁が前記発射案内通路の出口を開放する位置まで回動したとき、前記規制弁は前記開閉弁よりも後方位置で前記発射案内通路の内部に突出するようにした。
【0009】
このように構成されたパチンコ機において、常態では、球戻り防止部材は開閉弁を発射案内通路の出口に対峙させた姿勢で停止しており、規制弁は球経路の下流側で発射案内通路から退去する位置に保持されている。この状態で発射装置から正規の遊技球が遊技領域に向けて発射されると、遊技球は発射案内通路を上昇しながら規制弁を通過して開閉弁に接触した後、その接触力で開閉弁を押し退けて遊技領域内に進入するため、球戻り防止部材は開閉弁が発射案内通路の出口を開放する方向へ回動し、それに連動して規制弁が発射案内通路の内部に突出する。このようにして遊技球が遊技領域内に打ち出されると、球戻り防止部材は開閉弁を発射案内通路の出口に対峙させた姿勢に回動復帰するため、遊技領域から発射案内通路側へ向かう遊技球の戻り動作が開閉弁によって阻止される。
【0010】
一方、紐状体が接着された遊技球(糸付き球)を用いた場合、発射装置から糸付き球が遊技領域に向けて発射されると、正規の遊技球と同様に、糸付き球は発射案内通路を上昇しながら規制弁を通過して球戻り防止部材の開閉弁に接触した後、その接触力で開閉弁を押し退けて遊技領域内に進入する。その際、糸付き球に繋がれた紐状体が開閉弁の先端に引っ掛かるため、球戻り防止部材は糸付き球の自重を受けて開放状態を維持し、規制弁は発射案内通路の内部に突出したままとなる。これにより、糸付き球が遊技領域内に打ち出されると、その後に発射装置から発射される遊技球は発射案内通路の出口の手前側で規制弁に衝突してしまい、後続球を遊技領域内に打ち出すことができなくなる。すなわち、遊技球が遊技領域のアウト口から排出されない状態を作り出すことができるため、この状態で糸付き球を操って始動入賞口や一般始動入賞口に入賞させたとしても、これを不正入賞であると容易に不正行為を発見することが可能になり、糸付き球を用いて大量の賞球を獲得するという不正行為を実質的に無効とすることができる。
【0011】
しかも、規制弁に先端側を開放した切欠き溝が形成されている
ため、開閉弁の先端に引っ掛かった紐状体は切欠き溝の底部に接触した状態となり、紐状体と規制弁との接触箇所が切欠き溝の溝深さ分だけ球戻り防止部材の回動中心に近づくため、紐状体からの引張力による規制弁の戻り動作を確実に防止することができ
る。
【発明の効果】
【0013】
本発明のパチンコ機
によれば、糸付き球を用いた不正行為を簡単な構成で確実に防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明の実施の形態について図面を参照して説明すると、
図1に示すように、本実施形態例に係るパチンコ機Pは、遊技場の島設備に設置される縦長方形状の機枠1と、機枠1に扉状に開閉自在に取り付けられた本体枠2と、本体枠2の前面に扉状に開閉自在に取り付けられた前面扉3等を備えており、前面扉3にはガラスやプラスチック等からなる透明板4が取り付けられている。
【0016】
図2に示すように、機枠1の左側枠部には上側軸受け体5aと下側軸受け体5bが固着されており、この下側軸受け体5bよりも下方の左下隅部には大型のスピーカ6が配設されている。一方、本体枠2の左側枠部の上下両端には第1ピン(図示せず)が設けられており、これら両第1ピンが対応する上下の軸受け体5a,5bに軸支されることにより、本体枠2は機枠1に対して開閉自在となっている。
【0017】
本体枠2の上部内側には遊技盤7が収納されており、この遊技盤7の盤面(前面)は透明板4を透して目視可能となっている。遊技盤7はその盤面に遊技領域8を有しており、遊技領域8は前面扉3の透明板4を透して外部から目視可能となっている。遊技領域8はガイドレール9と規制レール10によって略円形状に区画形成されており、この遊技領域8内を後述する発射装置23から打ち出された遊技球が流下する。また、遊技領域8内には、表示装置24aを有する可変表示ユニット24と、一対の始動入賞口25,26と、複数の一般入賞口27と、通過ゲートであるスルーチャッカー28と、大入賞口を有するアタッカー装置29等が設けられており、図示せぬが、これら始動入賞口25,26と一般入賞口27および大入賞口の内部には遊技球の通過を検知するための検知センサが設けられている。
【0018】
遊技領域8内に設けられた上記各部材について簡単に説明すると、可変表示ユニット24の下側にはステージ30が設けられており、一対の始動入賞口25,26はステージ30の真下位置に上下2段に積層状態で配置されている。上段側の始動入賞口25は可動片を持たない非作動式の入賞口であるが、下段側の始動入賞口26は一対の可動片を有する作動式(電動チューリップ構造)の入賞口となっている。そして、これら始動入賞口25,26のいずれか一方に遊技球が入ると、それを契機として特別図柄表示の電子抽選が行われ、表示装置24aの表示画面上で演出用図柄の変動表示および停止表示が行われる。また、スルーチャッカー28を遊技球が通過したことを契機として普通図柄表示の電子抽選が行われ、その抽選結果が当たりの場合に始動入賞口26の可動片を一時的に開放して遊技球の入球を許可するようになっている。
【0019】
アタッカー装置29は、始動入賞口25,26に遊技球が入ることを契機に行われる特別図柄表示の電子抽選の結果、当たりとなって大当たり遊技状態へ移行した場合に作動される装置である。具体的には、特別図柄表示の抽選結果が当たりの場合、可変表示ユニット24の表示装置24aの表示画面上で演出用図柄の変動停止を例えば「777」のように特別図柄で停止させると共に、アタッカー装置29が複数回繰り返し開放動作して内部の大入賞口を露呈させる。アタッカー装置29は1回の開放動作について例えば30秒経過するまで、あるいは遊技球が大入賞口に例えば10個入るまで開放状態を維持し、かかる開放動作を例えば15回繰り返した後に大当たりが終了する。なお、始動入賞口25,26に遊技球が入ると、特別図柄表示の抽選結果が行われると共に、所定個数の遊技球が賞球として遊技者に払い出されるが、一般入賞口27に遊技球が入った場合には所定個数の遊技球の払い出しのみが行われる。そして、いずれの始動入賞口25,26や一般入賞口27にも入らなかった遊技球は、遊技領域8の最下端部に設けられたアウト口31から遊技盤7の裏面側に排出されるようになっている。
【0020】
遊技盤7よりも下方に位置する本体枠2は前面扉3の下部によって覆い隠される設置部2aとなっており、この設置部2a内の下部中央には遊技球を遊技領域8に向けて発射する発射装置23が配設されている。この発射装置23は遊技球を打撃するハンマ23aを有しており、ハンマ23aはロータリソレノイド等を駆動源として回転動作(揺動)される。また、本体枠2の右側枠部にはシリンダ錠11aを有する施錠装置11が設置されており、図示省略されているが、この施錠装置11は本体枠2の裏面に配置された後部施錠杆と本体枠2の前面に配置された前部施錠杆とを備えている。常態では、施錠装置11の後部施錠杆によって機枠1に対して本体枠2が施錠されると共に、前部施錠杆によって本体枠2に対して前面扉3が施錠されている。そして、シリンダ錠11aの鍵穴に図示せぬ鍵を差し込み、この鍵を一方向(例えば時計回り)へ回動すると、後部施錠杆が下動して本体枠2が開錠されるようになっている。また、シリンダ錠11aの鍵穴に差し込んだ鍵を他方向(反時計回り)へ回動すると、前部施錠杆が上動して前面扉3が開錠されるようになっている。
【0021】
前面扉3の左側枠部の上下両端には第2ピン(図示せず)が設けられており、これら両第2ピンを本体枠2の上下の軸孔(図示せず)に挿入することにより、前面扉3は本体枠2に対して開閉自在となっている。
図1に戻り、前面扉3には遊技盤7の盤面に対向する大きな開口3aが開設されており、この開口3aは透明板4によって塞がれている。前面扉3の上部には比較的小型のスピーカ12が左右に1個ずつ配設されており、これらスピーカ12と前述した大型のスピーカ6とによって遊技に関する様々な効果音を発するようになっている。また、前面扉3の下部には、遊技盤7の裏面に配設された賞球払出装置(後述する)から払い出された遊技球を収容する上段受皿13と、上段受皿13から排出された遊技球を収容する下段受皿14と、遊技者による押下操作が可能なプッシュ釦15とが設けられており、上段受皿12の右側方には発射装置23の発射強度を調整するための操作ハンドル16が配設されている。
【0022】
図3に示すように、このパチンコ機Pの背面側には、遊技に関する主要な処理を行う主制御処理部17と、主制御処理部17からの指令を受けて表示装置やスピーカ等の各種装置を制御する副制御処理部18と、上段受皿13に対して所定数の遊技球を賞球として払い出す賞球払出装置19と、主制御処理部17からの指令を受けて賞球払出装置19を制御する払出制御処理部20と、操作ハンドル16の回動操作量に応じて発射装置23の作動を制御する発射制御処理部21と、賞球数や大当たり回数等の各種情報を遊技場のホールコンピュータに出力する外部端子基板22等が設けられている。主制御処理部17は、CPU(Central Processing Unit)と、予め定められた制御プログラムを格納するROM(Read Only Memory)と、生成された処理情報の一時記憶および記憶した情報の削除を行うRAM(Random Access Memory)等が実装された制御基板(メイン基板)とを備えており、このCPUがROMに格納された各種プログラムやデータを読み込んで実行することにより、遊技に関する主要な処理が行われる。
【0023】
図4に示すように、遊技盤7の遊技領域8よりも左側には、発射装置23から発射された遊技球を遊技領域8の上部側に案内する外レール32と、規制レール10の外周面に沿って延びる内レール33とが設けられており、これら外レール32と内レール33とで挟まれた空間部分が発射案内通路34となっている。なお、
図4において、遊技領域8内に設けられた可変表示ユニット24(表示装置24a)や始動入賞口25,26等は図示省略されている。外レール32はアウト口31から離れた左側位置から遊技盤7の左側端および上端部を経て円弧状に配置されており、外レール32の上端側はガイドレール9に連続している。内レール33はアウト口31のやや左側位置から遊技盤7の上端部にかけて円弧状に配置されており、発射案内通路34の上端部には遊技領域8から遊技球が戻るのを阻止する球戻り防止機構35が配設されている。
【0024】
図2に戻り、遊技盤7よりも下方の設置部2aには発射レール36が設けられており、この発射レール36は発射案内通路34に向かって上り勾配で傾斜している。一方、前面扉3の裏面側には上段受皿13に連通する整流器37が突設されており、本体枠2に対して前面扉3が施錠された状態において、整流器37の出口である供給口37aが発射レール36の右端最下部に位置するようになっている。これにより、上段受皿13に貯留された遊技球は整流器37で整流された状態で供給口37aから発射レール36へ1個ずつ供給され、この発射レール36に保持された遊技球が発射装置23のハンマ23aの打撃によって発射案内通路34の方向へ発射される。また、発射レール36から発射案内通路34に至る空間の下部はファール球回収路38となっており、本体枠2に対して前面扉3が施錠された状態において、下段受皿14から前面扉3の裏面側に突出する球回収部14aがファール球回収路38の最下部に位置するようになっている。
【0025】
次に、前述した球戻り防止機構35を
図5〜
図12に基づいて詳しく説明する。
図5に示すように、この球戻り防止機構35は、規制レール10の上端部に一体形成された本体ケース39と、本体ケース39に一体化されたカバー40と、本体ケース39とカバー40に回動可能に支持された球戻り防止部材41とによって主に構成されており、これら本体ケース39とカバー40および球戻り防止部材41はいずれも合成樹脂材料からなる成形品である。
【0026】
図6に示すように、本体ケース39は、規制レール10から略同一幅で連続して遊技領域8側へ膨出する底板部39aと、底板部39aの幅方向の一端部から起立して遊技盤7の盤面に沿って延びる側板部39bとを有し、これら底板部39aと側板部39bで囲まれた空間が切欠き部S1となっている。すなわち、本体ケース39には、透明板4に対向する前面側と発射案内通路34に対向する上面側を開放する切欠き部S1が形成されており、この切欠き部S1の上部開口端がストッパ壁39cとなっている。このストッパ壁39cは底板部39aの上端部を幅方向に横切る壁面であり、底板部39aの上端部を円柱形状に厚肉形成することでストッパ壁39cの機械的強度が高められている。
【0027】
本体ケース39の側板部39bには軸受部39dとガイド孔39eが形成されており、ガイド孔39eは軸受部39dを中心とする仮想円に沿って円弧状に延びている。また、側板部39bの裏面には突起39fが形成されており、図示していないが、規制レール10の裏面にも同様の突起が形成されている。そして、これら突起39fを遊技盤7の位置決め孔(図示せず)に挿入することにより、本体ケース39と規制レール10が遊技盤7の所定位置に取り付けられるようになっている。
【0028】
カバー40は取付孔40aを有する板状体であり、その内面に軸受部40bが形成されている。このカバー40は、ネジ42を取付孔40aに挿入してストッパ壁39bの端面に螺着することにより、切欠き部S1の前面側の開口を塞いだ状態で本体ケース39に固定される。そして、このように本体ケース39とカバー40を一体化することによってベース部材43が構成され、このベース部材43には切欠き部S1の壁面(底板部39aと側板部39b)とカバー40で囲まれた凹所が画成されている。
【0029】
図7〜
図10に示すように、球戻り防止部材41は開閉弁41aと錘部41bおよび規制弁41cを有しており、開閉弁41aと規制弁41cは錘部41bを境にして略直交する方向へ突出している。開閉弁41aの基端側には軸孔41dが設けられており、この軸孔41dに挿通した支軸44の両端を側板部39bとカバー40の各軸受部39d,40bに係止することにより、ベース部材43の凹所内に球戻り防止部材41を回動可能に軸支した構成の球戻り防止機構35が組み立てられる。
【0030】
球戻り防止部材41の開閉弁41aは矩形状の板状体であり、この開閉弁41aの先端側には幅方向の中央部に向かって窄まる一対のテーパ41eが付けられており、これらテーパ41eの間には凹部41fが形成されている。規制弁41cは開閉弁41aに比べて短寸の板状体であり、この規制弁41cには先端側を開放して錘部41bの近傍まで延びる切欠き溝41gが形成されている。錘部41bは開閉弁41aや規制弁41cに比べて厚肉の重量体であり、この錘部41bの幅方向の一端面には係合ピン41hが突設されている。この係合ピン41hは本体ケース39の側板部39bに形成されたガイド孔39eに挿入され、球戻り防止部材41の回動に伴ってガイド孔39e内を移動するようになっている。
【0031】
図11(a)に示すように、常態では、球戻り防止部材41は錘部41bの自重によって支軸44を中心に一方向へ回動付勢されており、この付勢力を受けて係合ピン41hがガイド孔39eの一端部に当接しているため、球戻り防止部材41は当該位置を初期位置として停止している。そして、このように球戻り防止部材41が初期位置で停止している場合、開閉弁41aはベース部材43の凹所の上面開口から発射案内通路34の出口に向かって略垂直な姿勢で突出しており、開閉弁41aの先端は遊技球の直径よりも小さな間隔を存して外レール32と対向している。また、規制弁41cは発射案内通路34から退去した略水平な姿勢に保持されており、規制弁41cの先端は凹所の上面開口とほぼ同一面に位置している。
【0032】
この状態で発射装置23から正規の遊技球Bが遊技領域8に向かって発射されると、遊技球Bは発射案内通路34を上昇しながら規制弁41cを通過した後、
図11(b)に示すように、遊技球Bは開閉弁41aを押し退けて遊技領域8内に進入する。これにより、球戻り防止部材41は発射案内通路34の出口を開放する方向(
図11の時計方向)へ回動し、開閉弁41aがストッパ壁39cに衝突した時点で、球戻り防止部材41はそれ以上の回動が規制されて最大開放角度に到達する。その際、球戻り防止部材41の回動に連動して規制弁41cが開閉弁41aよりも後方位置で発射案内通路34の内部に突出し、規制弁41cの先端は遊技球Bの直径よりも小さな間隔を存して外レール32と対向する。なお、この間、係合ピン41hはガイド孔39e内を一端部から他端部に向かって移動するが、球戻り防止部材41が最大開放角度まで到達しても、係合ピン41hがガイド孔39eの他端部に接触しないように設定されているため、開閉弁41aの衝撃力によって係合ピン41hが損傷する虞はない。
【0033】
このようにして遊技球Bが戻り防止部材41の開閉弁41aを押し退けて遊技領域8内に打ち出されると、球戻り防止部材41は錘部41bの付勢力を受けて逆方向(
図11の反時計方向)へ瞬時に回動復帰し、それに伴って係合ピン41hがガイド孔39e内を他端部から一端部に向かって移動する。そして、係合ピン41hがガイド孔39eの一端部に当接すると、錘部41bの付勢力による復帰方向の回動が規制されて初期位置に戻るため、
図11(a)に示すように、球戻り防止部材41は再び開閉弁41aを発射案内通路34の出口に対峙させた姿勢で停止し、それに伴って規制弁41cも発射案内通路34から凹所へ後退して退去位置に戻る。したがって、遊技領域8へ打ち出された遊技球Bが遊技釘等に衝突して跳ね戻されたとしても、この遊技球Bは発射案内通路34の出口で開閉弁41aによって阻止される。
【0034】
次に、遊技球Bに釣り糸等の紐状体45を接着・固定して不正球(糸付き球)B1を作成し、かかる糸付き球B1を使用して遊技を行う場合について
図12を参照しつつ説明する。
【0035】
不正行為を働こうとする者が糸付き球B1を上段受皿13に投入して発射装置23へ供給し、この糸付き球B1に繋がれた紐状体45を手で持ったまま操作ハンドル16を回動操作すると、前述した正規の遊技球Bと同様に、糸付き球B1は発射案内通路34を上昇しながら規制弁41cを通過して開閉弁41aに接触した後、その接触力で開閉弁41aを押し退けて遊技領域8内に進入する。その結果、
図12に示すように、糸付き球B1に繋がれた紐状体45が開閉弁41aの先端に引っ掛かり、球戻り防止部材41が糸付き球B1の自重を受けて開放状態を維持するため、規制弁41cは開閉弁41aよりも後方位置で発射案内通路34の内部に突出した状態を維持する。ここで、開閉弁41aの先端側の中央部に凹部41fが形成されていると共に、この凹部41fに向かって窄まる一対のテーパ41eが付けられているため、紐状体45はテーパ41eに沿って凹部41f内に導かれることになり、紐状体45が開閉弁41aの幅方向端部から外れてしまうことを確実に防止できる。しかも、規制弁41cに先端側を開放して錘部41bの近傍まで延びる切欠き溝41gが形成されており、開閉弁41aの先端に引っ掛かった紐状体45は切欠き溝41gの底部に接触するため、紐状体45と規制弁41cとの接触箇所が切欠き溝41gの溝深さ分だけ球戻り防止部材41の回動中心(軸孔41d)に近づくことになる。したがって、この状態でパチンコ機Pの外部から紐状体45を引っ張ったとしても、紐状体45の引張力によって紐状体45を復帰方向へ回動させることは極めて困難となり、球戻り防止部材41の戻り動作を確実に防止することができる。
【0036】
そして、このように糸付き球B1が遊技領域8内に打ち出されると、その後に発射装置23から発射される遊技球は発射案内通路34内に突出する規制弁41cに衝突してしまうため、後続球を遊技領域8内に打ち出すことができなくなる。これにより、遊技球が遊技領域8のアウト口31から排出されない状態を作り出すことができるため、不正行為を働こうとする者が紐状体45を操って始動入賞口25や一般始動入賞口27に入賞させたとしても、これが不正入賞であると遊技場のホールコンピュータで容易に発見することが可能となり、糸付き球B1を用いて大量の賞球を獲得するという不正行為を実質的に無効とすることができる。
【0037】
以上説明したように、本実施形態例に係るパチンコ機Pでは、球戻り防止部材41に開閉弁41aと規制弁41cが設けられており、紐状体45の付いた遊技球(糸付き球)B1が発射されて開閉弁41aを押し退けて遊技領域8内に到達すると、糸付き球B1に繋がれた紐状体45が開閉弁41aの先端に引っ掛かることにより、規制弁41cが開閉弁41aよりも後方位置で発射案内通路34の内部に突出した状態に維持されるため、その後に発射される遊技球は規制弁41cに衝突して発射案内通路34を通過することができなくなり、糸付き球B1を用いて大量の賞球を獲得するという不正行為を実質的に無効とすることができる。
【0038】
また、規制弁41cに先端側を開放した切欠き溝41gが形成されており、開閉弁41aの先端に引っ掛かった紐状体45が切欠き溝41gの底部に接触することで、紐状体45と規制弁41cとの接触箇所が切欠き溝41gの溝深さ分だけ球戻り防止部材41の回動中心に近づくため、この状態でパチンコ機Pの外部から紐状体45を引っ張ったとしても、紐状体45の引張力によって紐状体45を復帰方向へ回動させることが極めて困難となり、球戻り防止部材41の戻り動作を確実に防止することができる。
【0039】
また、開閉弁41aの先端側に幅方向の中央部に向かって窄まる一対のテーパ41eが付けられていると共に、これらテーパ41eで挟まれた間に凹部41fが形成されており、糸付き球B1が開閉弁41aを押し退けて遊技領域8内に打ち出されると、糸付き球B1に繋がれた紐状体45がテーパ41eに沿って凹部41f内に導かれるるため、紐状体45が開閉弁41aの幅方向端部から外れてしまうことを確実に防止できる。
【0040】
なお、上記の実施形態例では、遊技盤7の遊技領域8に始動入賞口25,26やアタッカー装置29等を設けたパチンコ機Pについて説明したが、本発明は遊技領域8にVゾーンと呼ばれる特定領域を設けたパチンコ機についても適用可能である。