(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6163012
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】噴射計測装置
(51)【国際特許分類】
F02M 65/00 20060101AFI20170703BHJP
G01F 9/00 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
F02M65/00 302
F02M65/00 303
G01F9/00 C
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-102832(P2013-102832)
(22)【出願日】2013年5月15日
(65)【公開番号】特開2014-224465(P2014-224465A)
(43)【公開日】2014年12月4日
【審査請求日】2016年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000145806
【氏名又は名称】株式会社小野測器
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(72)【発明者】
【氏名】渡部 賢太郎
(72)【発明者】
【氏名】佐野 元洋
(72)【発明者】
【氏名】鎌子 隆史
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 剛生
(72)【発明者】
【氏名】石川 智士
(72)【発明者】
【氏名】福島 晋
【審査官】
木村 麻乃
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−296126(JP,A)
【文献】
特表2006−504038(JP,A)
【文献】
特開2001−123917(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 51/00−71/04
G01F 9/00
F02B 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間に燃料を充填した密閉容器と、
噴射口を備え、当該噴射口から前記密閉容器の内部空間の中心に向かって燃料を噴射するインジェクションノズルと、
前記密閉容器の前記内部空間の壁面付近に配置された測定子を備え、当該測定子に加わる前記密閉容器の内部空間内の燃料の圧力を検出する複数の圧力センサと、
前記圧力センサで検出した圧力の変化に基づいて、燃料の噴射量と噴射率との少なくとも一方を計測する計測部とを備え、
前記複数の圧力センサの各々は、全て、前記内部空間の中心からインジェクションノズルの噴射口に向かう方向と、前記内部空間の中心から当該圧力センサの前記測定子に向かう方向との成す角度の大きさが、105度以上かつ165度以下となるように配置されていることを特徴とする噴射計測装置。
【請求項2】
請求項1記載の噴射計測装置であって、
前記角度は135度であることを特徴とする噴射計測装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の噴射計測装置であって、
前記密閉容器の前記燃料が充填される内部空間は球形状を有し、
前記インジェクションノズルは、前記球形状の中心に向かって前記燃料を噴射することを特徴とする噴射計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴射計測装置における計測精度向上の技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
噴射計測装置に関する技術としては、
図4に示すように、空間101を有する密閉容器100を設け、密閉容器100の内部空間101に燃料を充填した上で当該内部空間101内にインジェクションノズル102から燃料を噴射すると共に、当該噴射による内部空間101内の圧力変化を、インジェクションノズル102と対向する位置に配置した測定レンジの異なる複数の圧力センサ103を用いて計測し、噴射による内部空間101内の燃料の増加量に比例して容器内圧力が上昇することを利用して、燃料の噴射量や噴射率を計測する技術が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-123917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上のような噴射計測装置によれば、圧力センサ103で検出される圧力変化には、インジェクションノズル102から噴出される燃料の噴流による影響が現れてしまうために、内部空間101内の燃料の増加量による圧力変化のみを正しく検出することができず、結果、燃料の噴射量や噴射率を精度よく算出することが困難であった。
【0005】
そこで、本発明は、噴射計測装置において、密閉容器に充填した燃料の圧力を検出する圧力センサの検出値への、密閉容器内に噴出した燃料の噴流による影響を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題達成のために、本発明は、内部空間に燃料を充填した密閉容器と、噴射口を備え、当該噴射口から前記密閉容器の内部空間の中心に向かって燃料を噴射するインジェクションノズルと、前記密閉容器の前記内部空間の壁面付近に配置された測定子を備え、当該測定子に加わる前記密閉容器の内部空間内の燃料の圧力を検出する1または複数の圧力センサと、前記圧力センサで検出した圧力の変化に基づいて、燃料の噴射量と噴射率との少なくとも一方を計測する計測部とを備えた噴射計測装置を提供する。ただし、前記内部空間の中心からインジェクションノズルの噴射口に向かう方向と、前記内部空間の中心から前記圧力センサの前記測定子に向かう方向との成す角度の大きさが、105度以上かつ165度以下となるように、前記圧力センサとインジェクションノズルは配置する。
【0007】
ここで、前記角度は、たとえば135度とすることができる。
また、以上の噴射計測装置において、前記密閉容器の前記燃料が充填される内部空間は球形状を有するものであってよく、この場合、前記インジェクションノズルは、前記球形状の中心に向かって前記燃料を噴射する。
以上のような噴射計測装置によれば、インジェクションノズルの噴射口と圧力センサの測定子との距離を大きく確保しつつ、インジェクションノズルの燃料の噴射方向からずれた位置に圧力センサの測定子を配置して、インジェクションノズルから噴出した燃料の噴流により測定子に加わる圧力変化を小さくすることができる。よって、本発明によれば、圧力センサの検出値への、インジェクションノズルから噴出した燃料の噴流による影響を抑制することができる。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、本発明によれば、噴射計測装置において、密閉容器に充填した燃料の圧力を検出する圧力センサの検出値への、密閉容器内に噴出した燃料の噴流による影響を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係る噴射計測装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る圧力センサの配置と比較例を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る圧力センサの検出信号と比較例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1aに本実施形態に係る噴射計測装置の構成を示す。
図示するように、噴射計測装置は、燃料で満たされた密閉容器1、密閉容器1内に燃料を噴射するインジェクションノズル2、インジェクションノズル2に噴射する燃料を供給するインジェクションポンプ3、密閉容器1内の燃料の温度を検出する1つまたは複数の温度センサ4、密閉容器1内の燃料の圧力を検出する一つまたは複数の圧力センサ5、密閉容器1から外部への燃料排出路を開閉する排出バルブ6、排出バルブ6に連結され排出バルブ6が開状態にある期間中、密閉容器1内の燃料の圧力が規定背圧Pbとなるまで密閉容器1内の燃料を排出するリリーフバルブ7、リリーフバルブ7によって密閉容器1から外部に排出された燃料量を計測する流量計8、測定制御装置9とを備えている。
【0011】
ただし、本実施形態では、複数の圧力センサとして、測定レンジの異なる二つの圧力センサ5を用いる場合を例にとり示す。
次に、測定制御装置9は、測定シーケンスの制御を行うシーケンス制御部91と、測定シーケンスに従って燃料の噴射量や噴射率の測定を行う測定部92とを備えている。
ここで、このような噴射計測装置の、燃料の噴射量と噴射率の測定原理について、
図1bを用いて示す。
噴射計測装置の測定原理は、Zeuchの方法と呼ばれるものであり、燃料を満たした密閉容器1中に燃料を噴射したときに、その噴射量に比例して容器内圧力が上昇することを利用して噴射量や噴射率を求めるものである。
すなわち、今、
図1bのように、容積V0 の容器内に燃料を容積Vだけ噴射したときの密閉容器1内の液体の圧力上昇Pzは、kを液体の体積弾性係数とすると式(i)で表される。
Pz =(k・V)/V0 …(i)
よって、噴射量Vは、式(ii)で表わされる。
V=(Pz・V0 )/k …(ii)
また、時間をtとすると、式(ii)を時間微分することにより、燃料噴射率dV/dtが式(iii)で求められる。
dV/dt=(V0 /k)・dPz /dt …(iii)
よって、以上の式(ii)、(iii)から、燃料の噴射量と噴射率の両方が求められることになる。
そこで、インジェクションポンプ3を駆動し、インジェクションノズル2から密閉容器1内に燃料が噴射されると、測定制御装置9のシーケンス制御部91は、測定部92で圧力センサ5で検出した密閉容器1内の燃料の圧力から、密閉容器1内の燃料の圧力上昇Pzを算出し、燃料の噴射量と噴射率とを算出させ、排出バルブ6の開閉の制御を行い、密閉容器1内の燃料の圧力を規定背圧Pbに復帰させる処理を一度もしくは繰返し行う。
【0012】
なお、流量計8は、測定部92で算出した噴射量と、流量計8を流れた燃料量の誤差より、体積弾性係数kを校正するために設けられている。
以下、このような噴射計測装置の圧力センサ5の配置について説明する。
図2a1に本実施形態に係る圧力センサ5の配置を示す。
図2a1は、図示するように、密閉容器1は、球形状の内部空間11と、内部空間11に連結する排出流路12とが設けられており、内部空間11、排出流路12には、燃料が満たされている。
また、密閉容器1には、インジェクションノズル2が、先端の噴射口が内部空間11の球形状の球面上に位置するように固定されており、インジェクションノズル2から燃料が内部空間11の球形状の中心Gに向けて噴射される。また、
図1に示すように、排出流路12には、連結管13を介して上述した排出バルブ6が連結されている。
【0013】
そして、先端の測定子が内部空間11の壁面付近に配置された、2つの圧力センサ5が密閉容器1に対して固定されている。また、図示は省略したが、先端の測定子が密閉容器1の内部空間11に突出するように上述した温度センサ4も密閉容器1に対して固定されている。
ここで、
図2a2に示すように、2つの圧力センサ5は、内部空間11の中心Gからインジェクションノズル2の先端の噴射口に向かう方向と、内部空間11の中心Gから圧力センサ5の先端の測定子に向かう方向との間の角度θの絶対値が135度となるように配置されている。
【0014】
以下、このような角度θの絶対値を135度とした圧力センサ5の配置を実施例1として、実施例1の効果について説明する。
いま、
図2b1、b2に示すように、内部空間11の中心Gからインジェクションノズル2の先端の噴射口に向かう方向と、内部空間11の中心Gから圧力センサ5の先端の測定子に向かう方向との間の角度θの絶対値が45度である圧力センサ5の配置を比較例1とする。
【0015】
また、
図2c1、c2に示すように、内部空間11の中心Gからインジェクションノズル2の先端の噴射口に向かう方向と、内部空間11の中心Gから圧力センサ5の先端の測定子に向かう方向との間の角度θの絶対値が90度である圧力センサ5の配置を比較例2とする。
【0016】
また、
図2d1、d2に示すように、内部空間11の中心Gからインジェクションノズル2の先端の噴射口に向かう方向と、内部空間11の中心Gから圧力センサ5の先端の測定子に向かう方向との間の角度θの絶対値が180度である圧力センサ5の配置を比較例3とする。
【0017】
さて、
図3aは、実施例1、比較例1、2、3の配置によって、インジェクションノズル2から燃料を噴射したときに圧力センサ5で検出された圧力信号波形を示したものである。
また、
図3bは、実施例1、比較例1の配置によって、インジェクションノズル2から燃料を噴射したときに圧力センサ5で検出された圧力信号を時間微分した微分圧力信号の波形、つまり噴射率波形を示したものである。
図3aの波形より明かに読みとれるように、比較例2、3の配置によれば、インジェクションノズル2から噴射された燃料の噴流の影響が、圧力信号波形に、実施例1より大きく表れている。
また、
図3bの波形より明かに読みとれるように、比較例1の配置によれば、インジェクションノズル2から噴射された燃料の噴流の影響が噴射直後の急峻なピーク301として、実施例1より大きく微分圧力信号に表れている。
ここで、このように、比較例1、2、3の圧力センサ5の配置が、実施例1の圧力センサ5の配置よりも、圧力センサ5で検出される圧力に、インジェクションノズル2から噴射された燃料の噴流の影響が大きく表れるのは、以下の理由によるものと考えられる。
すなわち、比較例1、2は、実施例1の配置よりも、圧力センサ5の先端の測定子の位置がインジェクションノズル2の噴射口に近いために、実施例1よりも燃料の噴流の影響を大きく受けるので、圧力センサ5で検出される圧力に、噴流の影響が大きく表れるものと考えられる。
また、比較例3は、実施例1の配置よりも、圧力センサ5の先端の測定子とインジェクションノズル2の噴射口との距離は大きくなるが、インジェクションノズル2の燃料の噴射方向に圧力センサ5が位置するために、実施例1よりも燃料の噴流の影響を大きく受けので、圧力センサ5で検出される圧力に、噴流の影響が大きく表れるものと考えられる。
【0018】
以上、本発明の実施形態について説明した。
以上のように、本実施形態によれば、インジェクションノズル2の噴射口と圧力センサ5の測定子との距離を大きく確保しつつ、インジェクションノズル2の燃料の噴射方向からずれた位置に圧力センサ5の測定子を配置して、インジェクションノズル2から噴出した燃料の噴流により測定子に加わる圧力変化を小さくすることができる。よって、本実施形態によれば、圧力センサ5の検出値への、インジェクションノズル2から噴出した燃料の噴流による影響を抑制することができる。
【0019】
ところで、以上の実施形態では、実施例1として、内部空間11の中心Gからインジェクションノズル2の先端の噴射口に向かう方向と、内部空間11の中心Gから圧力センサ5の先端の測定子に向かう方向との間の角度θの絶対値が135度である場合について示したが、角度θの絶対値は必ずしも厳密に135度である必要はなく、角度θの絶対値は135±30度(105度から165度の間)の範囲内において任意に設定するようにしてよい。このようにしても、インジェクションノズル2の噴射口と圧力センサ5の測定子との距離をある程度大きく確保しつつ、インジェクションノズル2の燃料の噴射方向からずれた位置に圧力センサ5の測定子を配置することで、圧力センサ5の圧力検出に対する燃料の噴流の影響を、他の場合に比べ抑制する効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0020】
1…密閉容器、2…インジェクションノズル、3…インジェクションポンプ、4…温度センサ、5…圧力センサ、6…排出バルブ、7…リリーフバルブ、8…流量計、9…測定制御装置、11…内部空間、12…排出流路、13…連結管、91…シーケンス制御部、92…測定部。