特許第6163018号(P6163018)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6163018
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】逆止め弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 15/03 20060101AFI20170703BHJP
【FI】
   F16K15/03 D
【請求項の数】10
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-114613(P2013-114613)
(22)【出願日】2013年5月30日
(65)【公開番号】特開2014-81069(P2014-81069A)
(43)【公開日】2014年5月8日
【審査請求日】2016年3月9日
(31)【優先権主張番号】特願2012-217103(P2012-217103)
(32)【優先日】2012年9月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390002381
【氏名又は名称】株式会社キッツ
(74)【代理人】
【識別番号】100081293
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 哲男
(72)【発明者】
【氏名】風間 正裕
【審査官】 北村 一
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭57−181965(JP,U)
【文献】 特開2006−206042(JP,A)
【文献】 特開2009−191718(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 15/00−15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次側流路を有するキャップと二次側流路を有するボデー内にスイング用弁体を軸着部を介して開閉自在に設けた逆止め弁において、前記キャップ側には、一次側流路の口径内に軸着部を位置させ、前記スイング用弁体は、前記キャップの流路軸に対して口径軸心を偏心させて前記キャップの内端部の突出側に設けた弁座に当接可能に設け、前記ボデー側の二次側流路域内に、前記スイング用弁体を前記軸着部を支点として枢着領域を構成すると共に、前記スイング用弁体に設けたアーム部を略L字形状に突設させ、このアーム部の先端部を前記軸着部に回動自在に設けて前記スイング用弁体の重心が前記弁座に対して密接させる方向に働くように構成したことを特徴とする逆止め弁。
【請求項2】
前記軸着部は、前記キャップの一次側流路の口径内に突出させた突出部にヒンジピンを挿通させ、前記スイング用弁体の外周囲に突出させたアーム部の端部に一対の回動輪を設け、この回動輪を前記ヒンジピンに回動自在に設け、前記アーム部の係止用基端部を前記突出部に設けたストッパ部に係止させて全開状態の前記スイング用弁体を閉止可能な重心位置に保持させた請求項1に記載の逆止め弁。
【請求項3】
前記弁座は、前記キャップと前記ボデーとの螺着部の二次側寄りで、かつ前記軸着部の二次側寄りに突出形成した円端部に設けられている請求項1に記載の逆止め弁。
【請求項4】
前記回動輪は、流路方向に沿って長径の楕円形又は長穴である請求項2に記載の逆止め弁。
【請求項5】
前記スイング用弁体は、前記アーム部に設けた取付板の取付穴にプレス成形したジスクの突部を嵌着してかしめて取付けた請求項1に記載の逆止め弁。
【請求項6】
前記スイング用弁体は、前記アーム部に設けた取付板の取付穴にジスクの中央位置に形成したおねじ部を挿通してナットで取付けた請求項1に記載の逆止め弁。
【請求項7】
一次側流路と二次側流路を有する弁本体内にスイング用弁体を軸着部を介して開閉自在に設けた逆止め弁において、一次側流路の口径内に設けた挿通部にヒンジピンを挿通し、又は弁本体にヒンジピンを挿通すると共に、アーム部とジスクを一体又は別体に設けたスイング用弁体の軸着部を配管軸方向へ移動可能で、かつ配管軸に交差する方向に回動又は揺動自在に支持して、所定の平面度を有する弁本体の弁座と前記弁体のシート面との平行度を保持させることにより、弁閉シールを行うことを特徴とする逆止め弁。
【請求項8】
前記スイング用弁体の少なくともアーム部をプレスにより成形した請求項7に記載の逆止め弁。
【請求項9】
前記弁座と前記スイング用弁体のシート面間に流体を内封させ、流体粘度を利用してシール性能を向上させた請求項7又は8の何れか1項に記載の逆止め弁。
【請求項10】
前記弁座又はシート面の少なくとも何れか一方に研磨加工により同心溝などの溝加工を施すことにより、前記弁座とシート面間の流体を内封させた請求項9に記載の逆止め弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量化と小型化に寄与し、水平配管と垂直配管の何れの使用形態でも逆止め機能と弁開機能を確実に発揮するスイング式逆止め弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の逆止め弁には、次のような構造の逆止め弁が一般に使用されている。
例えば、特許文献1の逆止弁では、ボデーの上部にキャップが着脱可能に装着され、ボデー側に弁体が取付けられている。この逆止弁の組付け時には、弁体がボデー上部の開口部よりボデー内部に装入され、ヒンジピンからなる弁棒によりボデー軸受部に揺動自在に取付けられる。その後、ボデー開口部にキャップを装着して全体が一体化される。この逆止弁ではボデー側に弁座が設けられ、この弁座にヒンジピンを支点として弁体が回転して弁座を封止するようになっている。
【0003】
特許文献2の逆止め弁では、ボデーである弁本体とふたとが、軸方向(流路方向)に2分割された構造であり、これらの弁本体、ふたにそれぞれ設けられたねじにより一体に組み立てられる。この逆止め弁では、ふたに対して弁体が設けられ、この弁体は、弁座の流路口の口径の外側にヒンジピンで揺動可能に取り付けられる。一方、ふたの流入口には弁座が取付けられており、弁体が回転したときにこの弁体が弁座を封止する。
【0004】
これらのスイング式逆止め弁は、水平配管又は垂直配管により管路に取付けられるため、何れの使用形態でも逆止め機能を確実に発揮する必要がある。そのため、一般的には弁座が3〜5°程度傾いて形成されており、これにより水平配管時にも弁体が弁座方向に回転したときに弁閉し、配管が完全な水平でない場合にもその誤差に応じて弁閉動作しようとしている。
【0005】
これらの逆止め弁におけるジスクは、主に鋳物で作られ、このジスクをボデーに対して位置合わせする場合、ジスクとボデー側のシール面同士を合わせておき、この状態でジスクの軸着部分を穿孔する共明け加工などを施してシール面同士のシール性を確保することが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平2−94979号公報
【特許文献2】実開昭57−181965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の逆止弁は、ボデー上部の開口部より弁体を内部に装入してヒンジピンで組付けた構造であるため、ボデーが大型化しバルブ全体の重量化にもつながる。弁体の組込み時には、この弁体が接触して弁座のシール面を傷つけるおそれがあるため組込みも面倒になっていた。しかも、この逆止弁が水平配管及び垂直配管に対して逆止め機能を確実に発揮するために弁座を傾けて形成すると、より大型化すると同時に組込みも困難になる。
さらに、この逆止弁では、ヒンジピン取付け用の取付穴を設ける場合、ボデーの外側からドリルで穴あけするときの加工距離が長くなるためドリルがぶれやすくなり、精度を維持しながら加工することが難しくなって逆止め機能の確保が困難となる。また、ドリルの穴あけ後にヒンジピンで取付穴をシールするためのガスケットが必要になることもある。
このように、この逆止弁では、全体の大型化、重量化に加えて、各部品の高い加工精度も要求され、部品点数、加工工数、組付け工数などが増加し、外部漏れのリスクにより動作時の精度が低下するおそれもある。
【0008】
特許文献2の逆止め弁では、ボデーである弁本体とふたとがねじで流路方向に一体に組立て可能に設けられ、ふたに弁体が取付けられているため、弁本体に弁体を組付ける必要はない。しかし、弁体が流入口の口径の外側に取付けられているために弁開動作時の弁体の回転半径が大きくなり、これに伴って弁本体内部の容積も大きくなることからバルブ全体が大型化、重量化していた。この弁本体の大型化に伴って弁内部に残される液体量も多くなり、例えば、この逆止め弁を蒸気配管で使用した場合には弁内部の蒸気が水となって溜まり、再度蒸気が流れるときに水分を多く含んだ蒸気となって品質上の問題が生じやすい。配管のメンテナンス等で液抜きした場合には、バルブ内に残る危険流体量が多くなって事故につながるリスクも増大する。
この逆止め弁においても、特許文献1と同様に水平配管及び垂直配管に確実に対応させるために弁座を傾斜させると高い加工精度が要求され、加工工数も増加する。
【0009】
これらのように、従来のスイング式逆止弁では、水平配管と垂直配管とに対応しつつ逆止め機能・弁開機能を有するバルブを設けるために全体が大型化・重量化していた。このため、バルブ全体を小型化・軽量化しつつ弁体を確実に開閉動作して逆止め機能と弁開機能を確実に発揮できる高精度のスイング式逆止弁の開発が望まれていた。
【0010】
さらに、特許文献1や特許文献2の逆止め弁のジスクはアーム部分と一体に形成され、これらをロストワックスなどにより鋳物で成形した場合、ジスク部分が大型化して重量も重くなる。この場合、弁体が流体で動きにくくなり、例えば、水平配管で2次側が下がり気味であったり、配管の径方向に曲がって上方側の位置がずれるなどの施工時の配管姿勢が正常でない場合には、特に弁体動作時に悪影響を受けて漏れを生じやすくなる。
そのため、この種の逆止め弁の製作時には、ボデー側とジスク側とのシール面同士を一致させるために、共明け加工時にボデーとジスクとをあらかじめ治具で高い精度で固定する必要が生じ、加工工数もかかっていた。
その際、これらの逆止め弁は、流体の力で閉止する構造のバルブであるため、シール面に要求される加工精度も高くなるが、漏れをより小さく抑えるために加工精度を高めるとコスト増につながるという問題があった。
【0011】
本発明は、従来の課題点を解決するために開発したものであり、小型化と軽量化の逆止め弁でありながら、開放状態の弁体の重心を弁座に密着する側に位置させ、しかも最大弁開度とCv値を大きくし、高い加工精度を必要とすることなく加工精度のばらつきを吸収することで、優れたシール性を発揮しながら確実に弁体を開閉動作できる逆止め弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、一次側流路を有するキャップと二次側流路を有するボデー内にスイング用弁体を軸着部を介して開閉自在に設けた逆止め弁において、キャップ側には、一次側流路の口径内に軸着部を位置させ、スイング用弁体は、キャップの流路軸に対して口径軸心を偏心させてキャップの内端部の突出側に設けた弁座に当接可能に設け、ボデー側の二次側流路域内に、スイング用弁体を軸着部を支点として枢着領域を構成すると共に、スイング用弁体に設けたアーム部を略L字形状に突設させ、このアーム部の先端部を軸着部に回動自在に設けてスイング用弁体の重心が弁座に対して密接させる方向に働くように構成した逆止め弁である。
【0013】
請求項2に係る発明は、前記軸着部は、前記キャップの一次側流路の口径内に突出させた突出部にヒンジピンを挿通させ、前記スイング用弁体の外周囲に突出させたアーム部の端部に一対の回動輪を設け、この回動輪を前記ヒンジピンに回動自在に設け、前記アーム部の基端部を前記突出部に設けたストッパ部に係止させて全開状態の前記スイング用弁体を閉止可能な重心位置に保持させた逆止め弁である。
【0014】
請求項3に係る発明は、弁座が、キャップとボデーとの螺着部の二次側寄りで、かつ軸着部の二次側寄りに突出形成した円端部に設けられている
【0015】
請求項4に係る発明は、回動輪が、流路方向に沿って長径の楕円形又は長穴である。
【0016】
請求項5に係る発明は、スイング用弁体が、アーム部に設けた取付板の取付穴にプレス成形したジスクの突部を嵌着してかしめて取付け構成されている
【0017】
請求項6に係る発明は、スイング用弁体が、アーム部に設けた取付板の取付穴にジスクの中央位置に形成したおねじ部を挿通してナットで取付けて構成されている
【0018】
請求項7に係る発明は、一次側流路と二次側流路を有する弁本体内にスイング用弁体を軸着部を介して開閉自在に設けた逆止め弁において、一次側流路の口径内に設けた挿通部にヒンジピンを挿通し、又は弁本体にヒンジピンを挿通すると共に、アーム部とジスクを一体又は別体に設けたスイング用弁体の軸着部を配管軸方向へ移動可能で、かつ配管軸に交差する方向に回動又は揺動自在に支持して、所定の平面度を有する弁本体の弁座と弁体のシート面との平行度を保持させることにより、弁閉シールを行う逆止め弁である。
【0019】
請求項8に係る発明は、スイング用弁体の少なくともアーム部をプレスにより成形した逆止め弁である。
【0020】
請求項9に係る発明は、弁座とスイング用弁体のシート面間に流体を内封させ、流体粘度を利用してシール性能を向上させた逆止め弁である。
【0021】
請求項10に係る発明は、弁座又はシート面の少なくとも何れか一方に研磨加工により同心溝などの溝加工を施すことにより、弁座とシート面間の流体を内封させた逆止め弁である。
【発明の効果】
【0022】
請求項1又は2に係る発明によると、弁体の開放状態において、水平配管または垂直配管であっても重心が弁座に密着する側で働くことになるので、多少の配管のばらつきに影響を受けることなく、逆止め弁としての機能を有効に発揮することができ、また、弁体を軽量化したので、チャタリングを軽減でき、しかもヒンジピンの摺動も減り耐久性が向上し、小型化と軽量化を図ることが可能となり、液溜り量を少なくできると共に、従来に比して部品点数、加工工数及び組立工数とも減少しているので、安価に量産できる。また、外径もコンパクトになるので配管時の施工性も良い。このコンパクト化によってねじ込みの回転半径が小さくなるため、保温材を設ける場合に巻きやすくなる。しかも、ボデー内径を小さくし、弁座が偏心配置されているので、弁体が開き始めの流体の流れがボデー内面で二次側とキャップ側に流れ、キャップ側の流れは、ボデー内面とシート、ジスクで形成される流路がせまいため、流速が速くボデー内部の塵埃等が即座に洗い流されて常に正常な逆止機能を保証することができる。
【0024】
請求項3に係る発明によると、使用に際して、異物の噛みこみ等がなく、しかも、キャップとボデーのねじ込みによる変形や配管時の応力による変形が弁座に与える影響も極めて少ないなどの効果がある。
【0025】
請求項4に係る発明によると、アーム部に設けた回動輪をプレス成形しているので、軽量化を図ることができると共に、弁座に寄り沿う側に許容範囲を大きく取り、弁体が垂れ下がるおそれがなく、確実に弁閉状態を保持する効果を有している。
【0026】
請求項5に係る発明によると、アーム部とジスクをプレス成形しているので、軽量化と剛性化を図ることができ、最大弁開度を大きくできると共に、Cv値も大きく、全開に到達する流量が低くなり、圧力の損失が最低限で済む。また、プレスすることによって、開き始める最低圧力やクラッキング圧力を低く設定することが可能となる。
【0027】
請求項6に係る発明によると、弁体が軽いことで、流体からの力がストッパ部に当接する衝撃も減り、この小さい衝撃力は、反力としてヒンジピンにかかることになるので、従来に比して耐久性にも寄与すると共に、二次側の閉止圧力が小さくても動かされやすく、弁座側に寄り沿いやすく、安定した性能を発揮する。
【0028】
請求項7に係る発明によると、スイング用弁体の軸着部の配管軸方向の移動や配管軸に交差する方向への傾きを許容し、スイング用弁体が配管軸方向に移動しつつユニバーサル(自在)な動きによってボデーやキャップ並びにスイング用弁体の加工精度のばらつきを効果的に吸収する。これにより、スイング用弁体のシート面が弁座のわずかな傾きにも対応して傾倒し、平面度を確保しながら双方が平行な状態で密着シールできる。そのため高い加工精度を必要とすることなく製作することができ、水平配管時の傾きや位置ずれなどの配管姿勢が悪い場合や弁体が鋳物などにより重量がある場合にも、確実に弁体が開閉動作すると共に優れたシール性を発揮して弁閉時の漏れを確実に防止する。
バルブ製作時には、治具等によってボデーとジスクとを高精度に位置決めする必要もなく、共明け加工による加工工数が増えることもない。
【0029】
請求項8に係る発明によると、少なくともアーム部をプレスにより成形することでスイング用弁体全体の軽量化を図ることができ、小さい流体力でも動作可能となる。これによって、加工精度による製作精度のばらつきを吸収しながら開閉動作しやすくなり、弁閉時には流体の力により密着シール状態にできる。さらに、配管施工のばらつきに対しても影響を受け難くなる。
【0030】
請求項9に係る発明によると、弁座とスイング用弁体のシート面間に流体を介在させることで、流体粘度を利用して弁座とスイング用弁体のシート面との密着性を向上してシール性を向上できる。
【0031】
請求項10に係る発明によると、弁座又はシート面の少なくとも何れか一方に同心溝などの溝加工を研磨により形成することで、この表面上に形成される小さい凹凸部位に流体を内封でき、流体の粘度あるいは表面張力を利用した弁座シール機能を発揮し、流体がその粘度あるいは表面張力により溝の凹凸を乗り越えにくくなることによっても漏れが生じにくくなり流体の封止性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明における逆止め弁の第1実施形態を示した正面図である。
図2】同上の逆止め弁を分離した状態を示す分離斜視図である。
図3図1に示した弁体が閉止した状態(閉ポジション)を示す縦断面図である。
図4図3に示す弁体が全開した状態(開ポジション)を示す縦断面図である。
図5図4のA−A線断面図である。
図6図5のB−B線断面図である。
図7】本発明における逆止め弁の第2実施形態を示す分離斜視図である。
図8図7に示した弁体が閉止した状態を示す逆止め弁の縦断面図である。
図9図8に示す弁体が全開した状態を示す縦断面図である。
図10】同上の弁体を分離して示した拡大分離斜視図である。
図11】本発明における逆止め弁の第3実施形態のキャップ側を示す側面図である。
図12図11の平面図である。
図13図11のスイング用弁体の拡大斜視図である。
図14】弁座付近を示した模式図である。
図15】本発明における逆止め弁の第4実施形態のキャップ側を示す模式図である。
図16図15のスイング用弁体の中央横断面図である。
図17図15のスイング用弁体の中央縦断面図である。
図18】本発明における逆止め弁の第5実施形態を示した中央断面図である。
図19】本発明における逆止め弁の第6実施形態を示した中央断面図である。
図20】本発明における逆止め弁の第7実施形態を示した中央断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、本発明における逆止め弁の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1においては、本発明の逆止め弁の実施形態の第1実施形態を示し、図2においては図1の逆止め弁の分離状態、図3図4においては、逆止め弁の縦断面図を示している。
【0034】
図2図3に示すように、逆止め弁本体(以下、弁本体という)1は、蓋状のキャップ2、ボデー3により構成され、円盤状のスイング用弁体4を有し、キャップ2とボデー3とは、キャップ2に形成されたおねじ5a、ボデー3に形成されためねじ5bからなる螺着部5により一体化される。弁本体1は、キャップ2とボデー3内にスイング用弁体4が軸着部6を介して開閉自在に設けられ、このスイング用弁体4はキャップ2側に取付けられている。本実施形態では、ボデー3をダクタイル鋳鉄により形成している。
【0035】
図2に示すキャップ2は、例えばSUS材料によって小径状に形成され、このキャップ2に一次側流路7と、上記スイング用弁体4と、環状の弁座8とが設けられている。一方、ボデー3は略筒状に設けられ、このボデー3内部に二次側流路9が設けられ、この二次側流路9域内に軸着部6を支点としたスイング用弁体4の枢着領域Rが構成されている。
【0036】
弁本体1において、一次側流路7からの流れに対してはスイング用弁体4が軸着部6を支点として枢着領域R内で弁開動作して流体を通過させ、二次側流路9からの流れに対してはスイング用弁体4が流体におされて弁閉状態となることで逆流を防止する。
【0037】
図3のキャップ2側において、軸着部6の少なくとも一部は一次側流路7の口径D内に位置し、一次側流路7の口径D内に食い込んだ位置に設けられている。
この軸着部6は、突出部10、ヒンジピン11、アーム部12、回動輪13を有している。
突出部10は、少なくともその一部が一次側流路7の口径D内に突出してこの口径D内に食い込むように略リブ状に形成され、この突出部10にはヒンジピン11取付け用の貫通孔10aが設けられている。さらに、この突出部10には後述の係止用基端部15を係止可能なストッパ部16が、係止用基端部15の対向側に設けられている。
【0038】
図2に示すように、アーム部12は、スイング用弁体4の外周囲に略L字形状に2ヶ所突出形成されて設けられている。アーム部12の端部には一対の回動輪13が設けられ、この回動輪13は、図6に示すように流路方向に沿って、具体的には、図3に示すような弁閉方向における流路方向であり、キャップ2の流路軸(配管軸)方向に沿って長径の楕円形又は長穴に形成され、この回動輪13内にヒンジピン11を挿通可能になっている。図5に示すように、アーム部12と回動輪13とにはその形成方向に沿ってリブ部12aが設けられている。回動輪13、13の間にはこれらの間に架け渡すようにリブ状の係止用基端部15が設けられ、この係止用基端部15は、スイング用弁体4の回転(弁開)時にストッパ部16に係止可能であり、特に垂直配管においてスイング用弁体4が弁開状態になったときに、このスイング用弁体4を流路内の流体が減少した際に弁体の自重で閉止可能な重心位置に保持可能な位置に形成されている。
【0039】
本実施形態においては、スイング用弁体4の重心Gが、図4の破線に示したヒンジピン11の位置よりも弁座側に位置するように設定されている。本実施形態においては、回動輪13をヒンジピン11の両側に設けているが、ヒンジピン11の中央位置に設けるようにしてもよく、この場合、係止用基端部15はヒンジピン11の両側位置に設けられる。
【0040】
図2において、軸着部6は、突出部10の貫通孔10aにヒンジピン11を挿通させながら、アーム部12の回動輪13をヒンジピン11の両側に回動自在に取付けるようにして設けられる。これによりスイング用弁体4が軸着部6を中心に回動して弁閉又は弁開動作可能に設けられる。
そして、スイング用弁体4が弁開方向に回転したときに、アーム部12の係止用基端部15がストッパ部16に係止することで、上記のように全開状態のスイング用弁体4を確実に係止可能になっている。
【0041】
スイング用弁体4は、前記したアーム部12、及び取付板17、ジスク18を有している。取付板17は、中央に取付穴19を有する略環状に形成され、この取付板17に前述の2つのアーム部12、12が、例えばSUS304などのオーステナイト系ステンレスなどの金属板材を打ち抜いて成形したプレス成形により一体に形成されている。ジスク18も、アーム部12と同様にプレス成形により設けられ、このジスク18の中央には取付穴19に嵌着可能な円板状の突部20が形成されている。図示しないが、ジスク18にリブ、しぼり、段つけなどの加工を施すことで剛性を向上させてもよい。
図3において、スイング用弁体4は、アーム部12に設けた取付板17の取付穴19にジスク18の突部20を嵌着してかしめにより取付けることで一体に構成される。
【0042】
図3図4図6に示すように、弁座8は、キャップ2の流路軸(配管軸)Lに対して口径軸心Sが偏心した状態でキャップ2の内端部の突出側に設けられ、この弁座8にスイング用弁体4が当接可能になっている。
この場合、弁座8は、キャップ2とボデー3との螺着部5の二次側よりであって、かつ軸着部6の二次側寄りに突出形成された円端部21に設けられている。弁座8は、一次側流路7に対して垂直方向に形成されている。
【0043】
図1図2に示すように、キャップ2の外周側には位置表示部22が設けられ、弁本体1の組立て後にこの位置表示部22を外方から視認することでスイング用弁体4の軸着部6の位置を確認できる。位置表示部22は、例えば、キャップ鋳造時の押し湯部を利用して形成可能であり、位置表示部22を設ける場合、径方向において軸着部6の位置に設けることで、水平配管時にはこの位置表示部22を頂点側にしながら弁本体1を配管することで、この弁本体1が正規の状態に設置される。
【0044】
上記のように、この実施形態の逆止め弁においては、キャップ2側にスイング用弁体4を設けていることでボデー3の大型化や重量化を回避して弁本体1全体を小型化でき、しかも、キャップ2とボデー3とを螺着部5で一体化する構造により、予めキャップ2にスイング用弁体4を取付け可能となり、弁本体1の組立ても容易になる。ヒンジピン11取付け用の穴をボデー3に設ける必要がないために外部漏れのおそれがなく、これにより部品点数や加工工数、組付け工数などの増加も回避される。
【0045】
しかも、図5図6に示すように、キャップ2にリブ状の突出部10を設け、この突出部10にスイング用弁体4の軸着用の貫通孔10a、ストッパ部16を設けてこれらを一箇所に集中配置でき、この集中配置によって突出部10の加工がしやすくなる。
【0046】
スイング用弁体4を内部に有する小径のキャップ2と略筒状のボデー3とを組み合わせ、キャップ2側の一次側流路7の口径D内に軸着部6の少なくとも一部を位置させて口径Dに食い込ませていることで、アーム部12を短くしてスイング用弁体4の動作時の回転半径を小さくできる。このため、二次側領域内の枢着領域Rも小さくなり、ボデー3の容積を最小限に抑えて液溜り量を小さくして弁本体1全体の一層の小型化・軽量化を図ることが可能になっている。
【0047】
この場合、一次側流路7の口径D内に軸着部6を配置することでこの軸着部6が口径D内に食い込んだ状態になっているが、口径軸芯Sが流路軸Lから偏心しているため、弁閉時にスイング用弁体4が軸着部6を中心に回転したときには、口径軸芯Sを中心とする弁座8に対して確実にスイング用弁体4のシール部位が当接する。
キャップ2側に軸着部6を設けていることで、キャップ2に予めスイング用弁体4を取付けでき、弁座8を傷つけるリスクを減らしながら安定した弁本体1の組付けを実施可能となる。
【0048】
弁座8がキャップ2とボデー3との螺着部5の二次側寄りで、かつ軸着部6の二次側寄りに形成されていることで、軸着部6にヒンジピン11で水平配管時に吊り下げ状態に取付けられたスイング用弁体4の重心が、このスイング用弁体4を弁座8に密着させる方向に働いている。これにより、この水平配管時はもとより水平配管時にやや配管が傾いている場合にもその影響を受け難くなり、図3の弁閉時において、スイング用弁体4が確実に着座する。そのためスイング用弁体4を密着させるために弁座8を配管軸に対する直交面を基準に弁開側に3〜5°傾けて形成する必要がなく、弁座の加工精度が得られやすい。
【0049】
キャップ2の突出部10にヒンジピン11を挿通させ、スイング用弁体4のアーム部12の端部に設けた回動輪13を介してスイング用弁体4をヒンジピン11の両側に回動自在に設け、アーム部12の係止用基端部15をストッパ部16に係止させて全開状態のスイング用弁体4を閉止動作可能な重心位置に保持している。
これにより、図4図6の弁開時においては、ボデー3の形状や大きさなどに影響を受けることなくキャップ2のストッパ部16とアーム部12の係止用基端部15との関係で開度制限を高い精度で設定することが可能となり、水平配管に加えて図示しない垂直配管の場合でも、通常時には図4の状態から図3の閉止状態まで確実にスイング用弁体4を戻すことができる。
【0050】
この場合、図6に示すように、回動輪13を流路方向に沿って長径の楕円形又は長穴に設けていることで、スイング用弁体4が楕円形又は長穴の長軸方向に動作可能となるため、流路の口径半径方向へのズレを少なくし、かつ弁開閉時の動作がスムーズになって確実に図3の弁閉状態まで動作するようになっている。
【0051】
これらのスイング用弁体4のアーム部12やジスク18をプレス成形で製作できるため、これらの軽量化を図りつつ高精度に形成でき、薄肉状に形成することでチャタリングを防止しながら最大弁開度を大きくし、Cv値も向上できる。
【0052】
図7図9においては、本発明における逆止め弁の第2実施形態を示しており、図10においては、この実施形態における逆止め弁本体30のスイング用弁体31を示している。なお、この実施形態以降において、上記実施形態と同一部分は同一符号によってあらわし、その説明を省略する。
【0053】
図7において、弁本体30は、スイング用弁体31、アーム部32、ジスク33を有し、これらがおねじ部34、ナット35により一体化される。アーム部32には取付板36が設けられており、この取付板36に取付穴37が形成されている。一方、ジスク33の中央位置に取付穴37に挿入可能なおねじ部34が形成されている。
【0054】
このスイング用弁体31では、図10に示すように、取付板36の取付穴37におねじ部34を挿通させ、この状態でワッシャ38を取付け、ナット35をおねじ部34に螺着することで取付板36にジスク33を取付けるようにしたものである。
このようにナット35でジスク33を取付板36に取付けることもでき、これにより弁本体30が大型である場合におねじ部34を長くすることで弁開時のストッパを兼ねている場合に対して、このおねじ部34の長さを最小にして重心Gの位置を弁座8側によせることでスイング用弁体31をより軽量化でき、安定した逆止め機能と弁開機能とを発揮できる。しかも組立ても簡単である。
【0055】
この弁本体30の場合にも、図8の弁閉状態においてはスイング用弁体31が確実に弁座8に着座して漏れを防止でき、チャタリングも防ぐことが可能となる。
一方、図9の弁開状態においては、弁本体30全体を小型化できるにもかかわらず、最大弁開度を大きくしてCv値を確保でき、水平配管又は垂直配管の何れの場合でもこの弁開状態から弁閉状態までスイング用弁体31が確実に復帰する。
【0056】
図11図12においては、本発明における逆止め弁の第3実施形態のキャップ側を示している。
この実施形態では、図1図2の一次側流路7を有するキャップ2と二次側流路9とを有するボデー3により構成される弁本体内にスイング用弁体40が軸着部6を介して開閉自在に設けられ、図11図12に示すように一次側流路7の口径内におけるキャップ2に挿通部41が設けられ、この挿通部41にヒンジピン11が挿通されている。このヒンジピン11は、後述する図19(第6実施形態)や図20(第7実施形態)のように、ボデー3に挿通されていてもよい。また、キャップ2に設ける挿通部41は、前述の第1実施形態の突出部10の貫通孔10aに相当するものである。
【0057】
図13において、スイング用弁体40はアーム部42とジスク43とを有し、これらアーム部42とジスク43とは一体又は別体に設けられることが可能であり、この実施形態ではこれらは別体に設けられている。この場合、少なくともアーム部42はプレスにより成形されることが望ましく、この実施形態ではアーム部42、ジスク43は何れもプレス成形で形成され、これらが一体化されている。プレス成形の場合、スイング用弁体40としたときに全体を薄くして軽量に製作でき、小さい流体力でも確実に開閉動作するようになり、更には、後述する弁体の移動や回動などを円滑に行うことができ、確実に弁閉シールを行うことができる。
キャップ2の弁座(弁座面)8やスイング用弁体40のシート面45は、予め、所定の平面度に加工されている。所定の平面度とは、弁閉状態において、弁座面8とシート面45とが平行度が保持された状態で当接した際、液体が漏れる隙間の無い状態が得られる平面状態をいう。
【0058】
軸着部6は、図11に示すように配管軸P方向に移動可能で、かつ、図12図13に示すように配管軸Pに交差する方向に回動又は揺動自在にヒンジピン11で支持される。ここで、配管軸Pに交差する方向とは、図12(a)に示す配管軸Pの直交方向(図の上下方向)であり、図12(b)や図12(c)には、矢印方向に回動または揺動(傾倒ともいう)する状態を示している。これによりキャップ2の弁座8とスイング用弁体40に形成される弁座シール用のシート面45との平行度が保持され、弁座8に対してシート面45が確実にシールするようになっている。その際、スイング用弁体40は、図11において上下方向に移動することが防がれている。
【0059】
具体的には、図11(a)に示すように、アーム部42に形成されるヒンジピン穴である回動輪13が、前述したように流路方向に沿って長径の楕円形又は長穴に形成され、この回動輪13に円柱状のヒンジピン11が挿通していることで軸着部6には遊びが設けられる。この遊びを介して、バルブ毎にわずかに異なるおそれのある弁座の平面度に対応でき、弁閉時の密着性を発揮することができる。この場合、スイング用弁体40が配管軸Pに交差する方向に傾倒するときの角度が、弁座の配管軸Pに対する角度と同等以上になるように、回動輪13の長さ方向の形状が設定されている。
【0060】
この場合、弁座8とシート面45との平面度に加えて、これらの平行状態の確保が必要になる。すなわち、弁座8とシート面45との絶対的な平面度、及び相対的な平行度によりシール性が確保される。平行度を確保するためには、通常は共明け加工、具体的には弁体を弁座に密着させた状態でヒンジピンの貫通孔を弁体と弁本体(ボデー)に一度に加工する必要があるが、本発明の逆止め弁の場合にはこのような共明け加工を必要とすることなく、弁本体を組み立てるだけで弁座8とシート面45との平行度を得ることができる。
なお、スイング弁本体40の配管軸P方向への移動は、ヒンジピン11の位置に対する弁座シール面の位置ずれに対応するために必要になる。
【0061】
上記の構成により、スイング用弁体40全体が配管軸P方向に移動可能となり、図11(a)に示したように弁座8とシート面45とが離間することが可能になる。
そして、図12(b)及び図13(b)に示すように、図12(a)、図11(a)の状態から、スイング用弁体40が配管軸Pの交差方向に回動又は揺動自在となる。図13(a)は、図12(b)におけるスイング用弁体の動作状態、図13(b)は図12(c)におけるスイング用弁体の動作状態をそれぞれ示しており、各図に示すように、スイング用弁体40は、回動又は揺動によって実線から二点鎖線の状態まで配管方向に交差する方向に傾くことが可能になる。
【0062】
ヒンジピン11と挿通部41との間にも適度の隙間が設けられていてもよく、この場合にも上記と同様に軸着部6が配管軸P方向へ移動可能で、かつ配管軸Pの交差方向に回転又は揺動自在に支持可能となる。このような隙間と遊びとを併用することで、スイング用弁体40の軸着部6に対する可動領域をより大きくでき、加工精度のばらつきを効果的に吸収することが可能となる。
【0063】
さらに、この実施形態の逆止め弁では、弁座8とスイング用弁体40のシート面45間に流体を内封させることで、流体粘度を利用してシール性能が向上する。
この場合、図14に示すように、弁座8に研磨加工(ラップ)により同心溝などの溝部46を溝加工し、この溝部46に弁座8とシート面45間の流体を内封させるようにした。溝部46は、弁座8側に限られることはなく、シート面45側に設けることもでき、これらの少なくとも何れか一方に設けることが可能である。
【0064】
この逆止め弁において、1次側圧力が上昇して流体が流れようとした場合には、流体の力によりスイング用弁体40が配管軸P方向にスライドするように移動し、ヒンジピン11を支点に開方向に回転して図11(b)に示した開ポジションまで動作する。この状態で2次側圧力が上昇したときには、スイング用弁体40がヒンジピン11を支点に閉方向に回転して閉ポジションまで戻る。このとき、スイング用弁体40が配管軸P方向にスライド移動し、配管軸Pに交差する方向に回動又は揺動することで、弁体の自重や重心位置に依存することなく流体の力を利用してシート面45を弁座8に平行状態に保持させた状態で閉動作できる。
【0065】
このスイング用弁体40の動作により、逆止め弁の各部品の加工時に、シート面45からヒンジピン11までの位置、挿通部41の傾き及び穴径などの加工精度のばらつきが生じたとしても、このばらつきを許容しなから弁座8にシート面45を密着させて高シール性を発揮できる。
【0066】
しかも、弁閉時には、弁座8とシート面45の溝部46と間に流体が内封されることにより、この流体自体がシール材として機能し、流体の粘性あるいは表面張力により弁座8とシート面45との間の間隙が塞がれる。この表面張力は弁座シール性に必須ではなく、液体のシールに有効となる。逆止め弁内部が流体で満たされていたとしても、粘性あるいは表面張力は同心溝である溝部46内に保持され、破壊されることはない。
さらに、流体が有する粘度によっても弁座8とシート面45とが密着し、より封止性が向上する。
【0067】
第3実施形態の逆止め弁(図14の弁体)を用いて弁閉時における弁座とシート面との密着性に関する試験を行った。
供試品の逆止め弁の呼び径は、1/2インチと1インチの2種類とし、逆止め弁の向きは、図3の状態から時計回りに90°、ボデー3が下、キャップ2が上を向くまで回転し、その過程においてシート面が弁座から離れる位置を確認した。
弁座とシートとの間に水も油(ダクタイル鋳鉄に用いられる防錆油など)も内封されない逆止め弁では、ヒンジピンの鉛直下からスイング弁体の重心Gが二次側流路側に外れた位置で、シート面は弁座から離れた。
次に、弁座とシートとの間に水道水を内封した逆止め弁では、1/2インチでは90°回転し終えた状態でも、2〜3秒間は弁座とシート面とが離れない程度の密着性を有することが確認された。1インチでは、1/2インチほどではないものの、略同様の密着性を有することが確認された。
また、弁座とシートとの間に上述の油(水道水よりも粘性を有する)を内封した逆止め弁では、水道水を内封した場合よりも長い時間(例えば、1分以上)、弁座とシート面とが離れない程度の密着性を有することが確認された。
【0068】
図15においては、本発明の逆止め弁の第4実施形態を示している。この逆止め弁は、前記第3実施形態の逆止め弁に比較して大口径のバルブとなっている。スイング用弁体50は鋳物で成形され、アーム部32、ジスク51を有している。アーム部32には取付板36が設けられ、この取付板36には取付穴37が設けられている。アーム部の回動輪13は流路方向に沿って長径の楕円形又は長穴により形成され、この回動輪13を介してヒンジピン11で挿通部41に軸着される。
【0069】
図16に示すように、ジスク51にはおねじ部52が設けられ、さらにこのおねじ部52に続けて弁体部位との間に軸部53が設けられる。軸部53は、取付穴36よりもやや小径に設けられ、軸部53の長さは取付板36の肉厚よりも大きく形成されている。
おねじ部52、軸部53はアーム部32の取付穴37に挿入され、ワッシャ38を介してナット35がおねじ部52に螺着されることで、ジスク51がアーム部32に取付けられる。
【0070】
このように、ジスク51に軸部53を設けたことで、ナット35の螺着時にはこのナット35とジスク51との間に取付板36が締め付けられることがなく、ジスク51は、軸部53が取付穴37に遊嵌された状態となる。
【0071】
そのため、スイング用弁体50は、回動輪13を介して図15(a)から図15(b)の状態まで配管軸方向に移動可能となり、弁体動作時に弁座8とジスク51のシート面55とが配管軸方向に離れることが可能になる。
さらに、軸部53が取付穴37に遊嵌され、この軸部53の長さが取付板36の肉厚よりも大きいことから、スイング用弁体50は、配管軸に交差する方向に回動又は揺動可能となる。図16(a)においては、図15(a)の中央横断面図を示しており、スイング用弁体50は、この図16(a)の状態から図16(b)、図16(c)の状態まで配管軸に交差する方向に回動又は揺動可能となる。図17(a)においては、スイング用弁体50の中央縦断面図を示しており、スイング用弁体50は、配管軸に対して図17(a)、図17(b)の状態まで上下方向に傾倒可能となる。これらの組み合わせにより、スイング用弁体50は、取付板36に対してユニバーサルに動作可能となり、加工精度のばらつきがある場合、このばらつきを吸収可能になる。
【0072】
逆止め弁の1次側圧力が上昇した場合には、スイング用弁体50が図15(a)から図15(b)の状態まで配管軸方向にスライドし、ヒンジピン11を支点に図15(c)の開ポジションまでスムーズに回転する。一方、この状態で2次側圧力が上昇すると、スイング用弁体50は閉ポジションまで回転しユニバーサル動作により確実に弁閉シール状態となる。
【0073】
図18においては、本発明の逆止め弁の第5実施形態を示している。この弁本体60は、キャップ61とボデー62とを有し、キャップ61には弁座63が設けられている。スイング用弁体65は、ジスク66とアーム部67とを有し、これらがプレス成形されて一体に形成される。アーム部67の回動輪13は、プレス成形により長径の楕円形又は長穴に設けられ、この回動輪13にヒンジピン11が挿通されていることで前記と同様に加工精度のばらつきが吸収され、弁閉時に確実にシール可能となる。
【0074】
図19においては、本発明の逆止め弁の第6実施形態を示している。この弁本体70は、キャップ71とボデー72とを有し、ボデー72の上部にキャップ71が螺着により着脱可能に装着され、一次側流路72aと二次側流路72bとを有するボデー72内にはヒンジピン11を介してスイング用弁体75が取付けられたものである。スイング用弁体75は、プレス成形により一体に形成され、このスイング用弁体75に設けられたアーム部76の回動輪13は、長径の楕円形又は長穴に形成されている。
この弁本体70では、ボデー72にヒンジピン11を挿通すれば、スイング用弁体75が配管軸方向へ移動可能で、かつ配管軸に交差する方向に回動又は揺動自在に支持され、弁座78とスイング用弁体75のシート面79との平行度を保持可能になり、加工精度が低い場合でもこの加工精度のばらつきが吸収され、スイング用弁体75が確実に開閉動作する。
【0075】
この第6実施形態におけるヒンジピン11は、ボデー72の二次側流路72bに設置されており、スイング用弁体75の回動輪13は、シート面79側ではなく二次側流路72b方向に形成されている。このスイング用弁体75によれば、アーム部や回動輪までがプレス成形により一体に形成された弁体であっても、シート面79の加工や研磨の際にこれらアーム部や回動輪が干渉することなく、製造が容易となる。
【0076】
図20においては、本発明の逆止め弁の第7実施形態を示している。この弁本体80は、図19の弁本体70と同構造のキャップ71、ボデー72を有している。スイング用弁体81は、アーム部82、ジスク83を有し、これらをそれぞれ別体にプレス成形した後に、かしめにより一体化したものである。この場合、スイング用弁体81全体を薄くして軽量化でき、小さい流体力によっても開閉動作可能になる。
また、ジスクとアーム部とを別体に設け、少なくともアーム部をプレス成形し、このアーム部とジスクとを図15のナット35で接続してもよい。
【符号の説明】
【0077】
1 弁本体
2 キャップ
3 ボデー
4、31 スイング用弁体
5 螺着部
6 軸着部
7 一次側流路
8 弁座
9 二次側流路
10 突出部
11 ヒンジピン
12、32 アーム部
13 回動輪
15 係止用基端部
16 ストッパ部
17、36 取付板
18 ジスク
19、37 取付穴
20 突部
34 おねじ部
35 ナット
41 挿通部
46 溝部
D 一次側流路の口径
L 流路軸
R 枢着領域
S 口径軸心
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20