特許第6163019号(P6163019)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6163019
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】副気室部材組付装置
(51)【国際特許分類】
   B60B 29/00 20060101AFI20170703BHJP
   B60B 21/02 20060101ALI20170703BHJP
   B60B 21/12 20060101ALI20170703BHJP
   B60C 5/00 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
   B60B29/00 B
   B60B21/02 J
   B60B21/12 Z
   B60C5/00 F
【請求項の数】5
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2013-115806(P2013-115806)
(22)【出願日】2013年5月31日
(65)【公開番号】特開2014-234042(P2014-234042A)
(43)【公開日】2014年12月15日
【審査請求日】2016年4月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】593059566
【氏名又は名称】株式会社ホンダロジスティクス
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100064414
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 道造
(74)【代理人】
【識別番号】100111545
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 悦夫
(72)【発明者】
【氏名】裏田 守
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 芳久
【審査官】 粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−051397(JP,A)
【文献】 特表2012−531345(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60B 29/00
B60B 21/02
B60B 21/12
B60C 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用ホイールの外周面から径方向外側に立ち上がり、前記外周面の周方向に延設されて互いに対向する一対の縦壁面の各溝部に、タイヤ空気室と連通する副気室を有する副気室部材の幅方向の両縁部をそれぞれ嵌め込むことによって、前記副気室部材を前記車両用ホイールに組み付ける際に、前記両縁部のうちの一方を、プッシャで前記車両用ホイールのウェル部側に向けて押圧して嵌め込んで組み付ける副気室部材組付装置であって、
前記車両用ホイールを下方から支持する複数のホイール受ローラと、
前記車両用ホイールを背面側から支持する位置決めローラと、
前記車両用ホイールの下面中央から隙間を介して配置されて、前記ホイール受ローラが前記車両用ホイールの荷重で下方向に撓んで、前記車両用ホイールが所定位置よりも下降したときに、前記車両用ホイールを支持して前記ホイール受ローラが所定以上に撓むのを抑制するホイール補助部材と、を備え、
前記プッシャは、前記副気室部材を押圧する押圧部が、ホイール幅方向から見て円弧形状に形成されると共に、
前記押圧部のホイール周方向の長さが、前記副気室部材のホイール周方向の長さよりも長く形成され、
前記押圧部の曲率半径が、
前記ウェル部の前記外周面の半径と、
前記副気室部材の周囲に形成されて前記押圧部に押圧される縁部の厚さと、
前記押圧部に押圧される縁部と前記ウェル部の外周面との間の隙間と、
を加算した長さ未満で、かつ、
前記ウェル部の前記外周面の半径よりも大きく形成されていることを特徴とする副気室部材組付装置。
【請求項2】
前記副気室部材を前記車両用ホイールに組み付ける際に、前記副気室部材のホイール周方向の装着中心位置と、前記プッシャの中心位置と、を位置合わせするための位置合わせ装置を備えていること
を特徴とする請求項1に記載の副気室部材組付装置。
【請求項3】
前記位置合わせ装置は、前記副気室部材組付装置の装置中心線であるマーカーラインを照らすレーザ光照射装置あるいは発光装置を備えていること
を特徴とする請求項に記載の副気室部材組付装置。
【請求項4】
エアを前記副気室部材及び前記車両用ホイールに吹き付けるエアブロー装置を備えていること
を特徴とする請求項1ないし請求項3のうちのいずれか一項に記載の副気室部材組付装置。
【請求項5】
前記車両用ホイールに取り付けた前記副気室部材の取付状態を変位センサで検出して装着異常を判定して記録する副気室部材係合検査装置を備えていること
を特徴とする請求項1ないし請求項4のうちのいずれか一項に記載の副気室部材組付装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ空気室内の気柱共鳴(空洞共鳴)に伴う騒音を低減させる副気室部材(「レゾネータ」ともいう)を車両用ホイールに組み付けるための副気室部材組付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車が走行した場合は、路面からタイヤに伝わるランダムな振動がタイヤ空気室内の空気を振動させて、タイヤの空気室(以下、「タイヤ空気室」という。)の気柱共鳴周波数付近で共鳴音が発生する気柱共鳴が起こる。このため、従来、車両用ホイールのウェル部には、その気柱共鳴に伴う騒音を低減させるための副気室部材が装着されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図12は、特許文献1に記載の組付治具の使用状態を示す要部斜視図である。
図12に示すように、特許文献1に記載された副気室部材300は、車両用ホイール100のウェル部110の外周面に対向して配置される底板と、この底板との間に副気室を形成する上板370とから成る本体部360と、副気室とタイヤ空気室とに連通する連通孔を有する管体350と、を一体形成してヘルムホルツレゾネータを形成している。本体部360は、底板と上板370との周縁部を結合して囲むように幅方向の端縁310,320及び周方向の縁部330,340が形成されている。その副気室部材300は、樹脂によってブロー成形された副気室を有する中空体から成る共鳴器であり、ホイール周方向に長い矩形に形成されている。端縁310,320及び縁部330,340は、バネ弾性を有している。
【0004】
一般に副気室部材300を車両用ホイール100のウェル部110に組み付ける場合は、作業者が特許文献1に記載されている作用点部430を有する組付治具400(プッシャ)を使用して手作業で行っていた。組付治具400は、リム120の内周面に当接する支点部410と、作業者が操作する力点部420と、副気室部材300を押圧する作用点部430と、を備えている。
【0005】
車両用ホイール100の第1縦壁面130の溝部150に、副気室部材300の幅方向の一端縁310を仮止めした状態において、作業者が力点部420を操作すると、副気室部材300の幅方向の他端縁320が、車両用ホイール100の第2縦壁面140の溝部150に圧入され、副気室部材300のホイール幅方向の両端縁310,320が車両用ホイール100の溝部150,150に嵌め込まれて装着される。
【0006】
作用点部430の押圧部431は、ウェル部110の外周面に沿って円弧状に形成されている。その作用点部430は、力点部420を操作して副気室部材300を溝部150に嵌め込む力を小さくして容易に装着できるようにするために、ホイール周方向の長さを、副気室部材300のホール周方向の長さよりも短く形成されている。組付治具400は、押圧部431の周方向の曲率をr2、副気室部材300の端縁320の曲率をr1とすると、
r2≧r1
に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−95163号公報(図6図10、[0038])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図12に示す組付治具400を使用して副気室部材300を車両用ホイール100のウェル部110に組み付ける場合は、副気室部材300のホイール周方向の縁部330,340側からウェル部110に装着しようとすると、副気室部材300の中央部にある管体350のホイール周方向の両端面が持ち上がるように湾曲変形するので、リム120のリム溝121にセットすることができない。
【0009】
このため、従来は、組付治具400の作用点部430で副気室部材300のホイール周方向の中央部(矢印a)を1回押圧した後、その中央部からの左右の三箇所(矢印b〜g)をそれぞれ押圧し、合計7回の押圧作業を行って組み付けている。
しかし、このような組付治具400による組み付け方法では、その7回の押圧作業を行っている間、バネ弾性を有する副気室部材300の端縁310,320が、バネ弾性に抗して溝部150に押し込まれるので、装着し難く、装着性が悪く、また、バリが発生するという問題点があった。さらに、副気室部材300の装着作業の作業工数及び作業時間が多いため、作業性が悪いという問題点があった。
【0010】
また、押圧部431は、ホイール周方向の両端部間の長さが、副気室部材300のホイール周方向の長さよりも短いため、押圧部431で副気室部材300を押圧した場合、押圧部431の両端部によって押圧した圧痕が副気室部材300に形成されるという問題点があった。
【0011】
そこで、本発明は、前記問題点を解消すべく発明されたものであり、プッシャの押圧部で副気室部材を押圧して車両用ホイールのウェル部に装着する際に、副気室部材を容易に安定した状態に組み付けることができると共に、副気室部材に圧痕が形成されるのを解消した副気室部材組付装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために、本発明に係る副気室部材組付装置は、車両用ホイールの外周面から径方向外側に立ち上がり、前記外周面の周方向に延設されて互いに対向する一対の縦壁面の各溝部に、タイヤ空気室と連通する副気室を有する副気室部材の幅方向の両縁部をそれぞれ嵌め込むことによって、前記副気室部材を前記車両用ホイールに組み付ける際に、前記両縁部のうちの一方を、プッシャで前記車両用ホイールのウェル部側に向けて押圧して嵌め込んで組み付ける副気室部材組付装置であって、前記車両用ホイールを下方から支持する複数のホイール受ローラと、前記車両用ホイールを背面側から支持する位置決めローラと、前記車両用ホイールの下面中央から隙間を介して配置されて、前記ホイール受ローラが前記車両用ホイールの荷重で下方向に撓んで、前記車両用ホイールが所定位置よりも下降したときに、前記車両用ホイールを支持して前記ホイール受ローラが所定以上に撓むのを抑制するホイール補助部材と、を備え、前記プッシャは、前記副気室部材を押圧する押圧部が、ホイール幅方向から見て円弧形状に形成されると共に、前記押圧部のホイール周方向の長さが、前記副気室部材のホイール周方向の長さよりも長く形成され、前記押圧部の曲率半径が、前記ウェル部の前記外周面の半径と、前記副気室部材の周囲に形成されて前記押圧部に押圧される縁部の厚さと、前記押圧部に押圧される縁部と前記ウェル部の外周面との間の隙間と、を加算した長さ未満で、かつ、前記ウェル部の前記外周面の半径よりも大きく形成されていることを特徴とする。
【0013】
かかる構成によれば、副気室部材組付装置は、押圧部のホイール周方向の長さが、前記副気室部材のホイール周方向の長さよりも長く形成されていることによって、押圧部で副気室部材全体を略均等な押圧力で押圧することができるので、副気室部材を一度の押圧工程で組み付けることができるため、副気室部材の組付作業の作業性を向上させることができる。さらに、プッシャは、押圧部の押圧力が副気室部材のホイール周方向の両端部に局部的に集中することがないので、副気室部材の端部が弾性によって反って捲れるのを効果的に抑制することができると共に、押圧部の圧痕が副気室部材に形成されるのを解消することがきる。
また、プッシャの押圧部の曲率半径が、ウェル部の外周面の半径と、押圧部に押圧される副気室部材の縁部の厚さと、押圧部に押圧される縁部と前記ウェル部の外周面との間の隙間と、を加算した長さ未満に形成されていることによって、副気室部材を車両用ホイールの溝部に装着させるために、押圧部で副気室部材を押圧したときに、押圧部で副気室部材を押圧する荷重が押圧部の一端から他端に亘って均等になる。このため、リブに局部的に過度な力がかからず、副気室部材を全体に亘って均一な押圧力で押圧することができるので、常に、副気室部材を車両用ホイールに安定した状態に容易に組み付けることができる。
また、副気室部材組付装置は、ホイール補助部材を備えていることによって、ホイール受ローラが車両用ホイールの荷重で下方向に撓んで、車両用ホイールが所定位置よりも下降したときに、車両用ホイールを支持してホイール受ローラが所定以上に撓むのを抑制する。
【0014】
また、前記副気室部材を前記車両用ホイールに組み付ける際に、前記副気室部材のホイール周方向の装着中心位置と、前記プッシャの中心位置と、を位置合わせするための位置合わせ装置を備えていることが好ましい。
【0015】
かかる構成によれば、副気室部材組付装置は、位置合わせ装置を備えていることによって、副気室部材を車両用ホイールに組み付ける際に、副気室部材のホイール周方向の装着中心位置と、プッシャの中心位置とを位置合わせする位置合わせ作業を容易に、かつ、正確に行える。
【0016】
また、前記位置合わせ装置は、前記副気室部材組付装置の装置中心線であるマーカーラインを照らすレーザ光照射装置あるいは発光装置を備えていることが好ましい。
【0017】
かかる構成によれば、位置合わせ装置は、作業者が特別な注意を払うこと無く車両用ホイール1と副気室部材とプッシャとの位置合わせが可能となり、位置合わせ作業を容易にして作業効率を向上させることができる。
【0018】
また、エアを前記副気室部材及び前記車両用ホイールに吹き付けるエアブロー装置を備えていることが好ましい。
【0019】
かかる構成によれば、エアブロー装置は、副気室部材3を樹脂成形したときに発生して残っているバリや、削りカスをエアノズルから噴射されたエアによって吹き飛ばして除去することができる。
【0020】
また、前記車両用ホイールに取り付けた前記副気室部材の取付状態を変位センサで検出して装着異常を判定して記録する副気室部材係合検査装置を備えていることが好ましい。
【0021】
かかる構成によれば、副気室部材係合検査装置は、副気室部材の取付状態を変位センサで検出して装着異常を判定して記録することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る副気室部材組付装置は、車両用ホイールのウェル部に装着する副気室部材を安定した状態に組み付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態に係る副気室部材組付装置によって車両用ホイールに組み付けられる副気室部材の設置状態を示す斜視図である。
図2図1に示すA−A線の拡大断面図である。
図3図2に示す副気室部材の拡大図である。
図4】副気室部材の拡大斜視図である。
図5】本発明の実施形態に係る副気室部材組付装置の一例を示す正面図である。
図6】副気室部材組付装置の左側面図である。
図7】副気室部材組付装置のプッシャを示す図であり、(a)は左側面図、(b)は正面図、(c)は(a)のD部拡大図である。
図8】(a)はプッシャで副気室部材を押圧した状態を示す要部拡大断面図、(b)は副気室部材が車両用ホイールに組み付けられたときの状態を示す要部拡大断面図である。
図9】副気室部材組付装置のブロック図である。
図10】副気室部材係合検査装置によって副気室部材を照射するレーザ照射位置を示す副気室部材の断面図である。
図11】副気室部材係合検査装置によって副気室部材の嵌合不良状態を検出したときの状態を示す副気室部材の断面図である。
図12】特許文献2に記載の従来の組付治具の使用状態を示す要部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図を参照しながら本発明の実施形態に係る副気室部材組付装置を説明する。
まず、副気室部材組付装置4(図5参照)を説明する前に、この副気室部材組付装置4によって組み付ける前に車両用ホイール1及び副気室部材3を説明する。
【0025】
≪車両用ホイールの構成≫
図1に示すように、車両用ホイール1は、タイヤ2(図2参照)が装着されて保持されるリム11と、このリム11をハブ(図示省略)に連結するためのディスク12と、が一体形成され、リム11のウェル部1cの外周面1dに副気室部材3が装着されている。
【0026】
リム11は、図2に示すように、ホイール幅方向Yの両端部に形成されたビードシート部1a,1aと、ビードシート部1a,1aからL字状に屈曲して形成されたリムフランジ部1b,1bと、ビードシート部1a,1a同士の間の部分がホイール径方向Zの内側に向かって凹んだ状態に形成されたウェル部1cと、を有している。
ビードシート部1aには、タイヤ2のビード部2aが装着される。これにより、リム11の外周面1dとタイヤ2の内周面との間には、環状の密閉空間から成るタイヤ空気室MCが形成されている。
【0027】
ウェル部1cは、タイヤ2をリム11に組み付けるリム組付時に、タイヤ2のビード部2a,2aを落とし込んで配置するために形成された収納部位である。ウェル部1cは、ホイール幅方向Yに亘って略同径となる円筒形状に形成されている。ウェル部1cの外周面1dには、リム11のホイール周方向Xに延びる環状の縦壁1fが立設されている。
図3に示すように、ウェル部1cのホイール幅方向Yの内側に形成される側面部1eには、縦壁面1gと対向した縦壁面1hが設けられている。
【0028】
縦壁1fは、ウェル部1cの外周面1dからホイール径方向Zの外側に立ち上がる縦壁面1gを形成するように外周面1dに立設されている。縦壁1fは、リム11を鋳造する際にウェル部1cと一体に成形されている。縦壁1fには、副気室部材3の管体34が嵌め入れられる切欠部1kが形成されている。
【0029】
縦壁面1g,1hは、車両用ホイール1の外周面1dから径方向外側に立ち上がり、外周面1dの周方向に延設されて互いに対向して形成されている。縦壁面1g,1hには、それぞれ溝部1i及び溝部1jが形成されている。
溝部1i,1jは、ウェル部1cの外周面1dのホイール周方向Xに沿って形成されて環状の周溝から成る。これらの溝部1i,1jには、副気室部材3の短手方向(矢印Y方向)の縁部3b,3cが嵌め込まれる。溝部1i,1jは、縦壁1f及び側面部1eに機械加工を施して形成される。
【0030】
図1に示すように、ディスク12は、ウェル部1cのホイール幅方向Yの外側からホイール径方向Zの内側に連続して形成されている。リム11とディスク12とは、例えば、アルミニウム合金、マグネシウム合金等の軽量高強度材料等から製造される。なお、リム11とディスク12の材料は、スチール等であってもよい。
【0031】
≪副気室部材の構成≫
図1に示すように、副気室部材3は、いわゆるヘルツホルム共鳴吸音器といわれる共鳴箱であり、例えば、車両用ホイール1のウェル部1cのホイール周方向Xに沿って等間隔に4つ配置されている。その副気室部材3は、副気室部材組付装置4(図4参照)によって、ウェル部1cの外周面1dに嵌め込まれて装着される。図3に示すように、副気室部材3は、ホイール周方向Xに長く湾曲部3fを有する本体部31と、本体部31のホイール径方向Zの外側部位を形成する上板32と、本体部31のホイール径方向Zの内側部位を形成する底板33と、上板32と底板33との間に形成された副気室SCと、本体部31の中央部に設けられ連通孔3aを有する管体34と、本体部31の短手方向の外周部に形成された縁部3b,3cと、本体部31の長手方向の外周部に形成された端縁3d,3eと、上板32と底板33とが結合された結合部3gと、底板33から外周面1d側に膨らんだビード部3h及び凹凸形状構造3iと、を備えている。副気室部材3の長手方向は、ウェル部1cの外周面1dに沿うように湾曲した状態に形成されている。副気室部材3は、例えば、繰り返しの曲げ疲労にも強いポリプロピレン等の合成樹脂によってブロー成形で形成されている。
【0032】
図3に示すように、本体部31は、上板32と、底板33と、副気室SCと、管体34と、を主に備えている。本体部31は、平面視して、車両用ホイール1の外周面1dに沿ってホイール周方向Xの延びる長方形に形成されて、所定間隔を介して4つ並べて形成されたウェル部1cに取り付けられる。
【0033】
上板32は、副気室SCの天井側部を形成する板状部位である。上板32は、ウェル部1cの外周面1d側に沿うように配置された底板33の上方で、膨らみを持つように湾曲して形成されていることで、副気室SCを形成している。上板32には、上板32と底板33とが結合した上側の結合部3gが形成されている。
【0034】
底板33は、副気室SCの底部を形成する板状部位である。底板33と上板32とは、図3に示すように、複数の結合部3gと、ホイール幅方向Yの縁部3b,3cと、ホイール周方向Xの端縁3d,3eとが互いに結合されて一体化されている。底板33は、上板32よりも高さが低く、また、外周面1d方向に膨らんだ複数のビード部3hを有し、上板32とは非対称形状に形成されている。
【0035】
図2に示すように、管体34は、副気室部材3内の副気室SCと、タイヤ2内のタイヤ空気室MCとを連通させるための連通孔3aを有する管状部位であり、円筒状に形成されている。図3に示すように、この管体34は、上板32及び底板33に一体形成されて、本体部31のホイール周方向Xの中央部からホイール幅方向Yに突出し、縦壁1fの切欠部1kに干渉しないように適宜な間隔を介して遊嵌されている。そして、管体34は、車両用ホイール1が高速で回転した際に、ホイール周方向Xに移動したとしても、切欠部1kの内壁に当接して移動が規制されるため、副気室部材3の回り止めの機能を果たす。
連通孔3aは、音がこの連通孔3aを通るときに、孔の周りで摩擦が発生することによって、音が熱エネルギーに変換されて吸音させる吸音孔である。
【0036】
副気室SCは、路面からタイヤ2に伝わる振動が車両用ホイール1とタイヤ2との間のタイヤ空気室MC内の空気を振動させて、タイヤ空気室MCの気柱共鳴周波数付近で生じる共鳴現象(空洞共鳴)で発生する共鳴音(騒音)を共鳴効果を利用して低減させるための空気室である。
【0037】
図4に示すように、ホイール幅方向Yの縁部3b,3cは、上板32と底板33とが接合された部位であって、副気室部材3を車両用ホイール1に組み付ける際に、プッシャ41によって押圧される部位である。なお、副気室部材3は、本体部31のホイール幅方向Yの両側から延出した縁部3b,3cと、本体部31のホイール周方向Xの両側から延出した端縁3d,3eとを有している。つまり、縁部3b,3c及び端縁3d,3eは、本体部31を囲むように本体部31から周囲に延出した厚さが略均一な板状のフランジ部を形成し、ホイール径方向Zに弾性を有している。
【0038】
図3に示すように、縁部3b、3cのホイール幅方向Yの先端部は、縦壁面1g,1hの溝部1i,1jに嵌入されている。縁部3b,3cの近傍は、湾曲する底板33と一体になってウェル部1cの外周面1d側に凸となる湾曲部3fが形成されている。このため、縁部3b、3cは、ホイール径方向Zの外方向にバネ弾性を有し、ウェル部1cに組み付けると、係止爪部1m,1nに圧接した状態に係止される。そして、縁部3b,3cは、本体部31との付け根(基端)の位置よりも延出先端の方が高くなっている。その結果、縁部3b,3cでは、本体部31がホイール周方向Xに延在している区間において、縁部3b,3cの延出先端と基端との高低差が維持されている。
【0039】
図3に示すホイール周方向Xの端縁3d,3eは、底板33と略同じ高さでウェル部1cの外周面1dに沿って形成されている。ホイール周方向Xの副気室部材3の端縁3d,3eは、縁部3b,3cの延出先端と基端の外周面1dからの高低差よりも低い状態にウェル部1cに配置されている。
【0040】
図3に示すように、結合部3gは、上板32が副気室SC側に向かって窪んで形成された窪みと、この窪みに対向して底板33が副気室SC側に向かって膨らむように略対称に形成された膨らみと、を互いに接合するように一体形成された連結部位である。結合部3gは、平面視及び底面視して円形に形成され、断面視して略擂鉢状に形成されている。結合部3gは、副気室部材3の長手方向に沿って中央線上で1列に並ぶように10個形成されると共に、管体34の位置で副気室部材3の短手方向に並ぶように2個形成されている。結合部3gは、上板32側の窪み部位と、底板33側の膨らみ部位とを結合して形成されていることにより、副気室部材3の機械的強度を向上させる共に、副気室SCの容積の変動を抑制して消音機能をより効果的に発揮させる構成となっている。その上下の結合部3gは、副気室部材3のホイール幅方向Yに沿って底板33が直線状に窪んで形成されている。
【0041】
ビード部3hは、底板33の各結合部3gからホイール幅方向Yに向けて延設された凸部である。ビード部3hは、底板33がホイール幅方向Yに撓むように加えられる負荷に対する底板33の剛性を高めている。また、底板33において、結合部3g及びビード部3hが形成された部分を除く領域には、凹凸形状構造3iが形成されている。
【0042】
凹凸形状構造3iは、副気室SCの内側から外側に向かって略半球状に多数突出形成された大小の凹凸から成る。凹凸形状構造3iは、底板33の板面の略全体に亘って形成されている。つまり、凹凸形状構造3iは、副気室SCの内圧が増加した際に、この圧力が加わる方向(外方向)に向かって略球面状が突出形成されて、面剛性を高められて、副気室SCの容積の変動を効果的に抑制する機能がある。凹凸形状構造3iの大小のうちの大きな凸部の先端部は、ウェル部1cの外周面1dの圧接した状態に設置されている。
【0043】
≪副気室部材組付装置の構成≫
図5に示すように、副気室部材組付装置4は、車両用ホイール1の外周面1dに形成された一対の溝部1i,1jに、副気室部材3の幅方向の縁部3b,3cをそれぞれ嵌め込むことによって、副気室部材3を車両用ホイール1に組み付ける際に、縁部3bを、プッシャ41でウェル部1c側に向けて押圧して嵌め込むことで、副気室部材3を車両用ホイール1に組み付けるための専用の半自動組付装置である。
【0044】
図5及び図6に示すように、副気室部材組付装置4は、それぞれ後記するプッシャ41と、プッシャ駆動装置40と、ホイール受ローラ42と、位置決めローラ43と、ホイール補助部材44と、支柱45と、上部横フレーム46と、下部横フレーム47と、縦フレーム48と、エリアセンサ枠49と、脚部5と、位置合わせ装置7と、制御装置9(図9参照)と、操作盤91と、スイッチボックス92と、を主に備えている。
【0045】
副気室部材組付装置4は、車両用ホイール1の大きさに応じて適宜対応させることが可能である。例えば、副気室部材組付装置4は、車両用ホイール1のサイズを17インチと、18インチと、19インチの3サイズに交換可能にする場合、通常時に、17インチ用のプッシャ41と、17インチ用の位置決めローラ43と、17インチ用のホイール補助部材44とを副気室部材組付装置4に組み付けておく。そして、18インチまたは19インチのサイズの車両用ホイール1に副気室部材3を組み付ける場合は、17インチ用のプッシャ41を18インチまたは19インチ用のプッシャ41に交換して、17インチ用のアイドラカバー43fを被着させた位置決めローラ43からアイドラカバー43fを取り外して18インチまたは19インチ用の位置決めローラ43にし、さらに、17インチ用のホイール補助部材44を18インチまたは19インチ用のホイール補助部材44に交換すればよい。このように、プッシャ41、位置決めローラ43、及びホイール補助部材44は、ワンタッチ式に交換可能に副気室部材組付装置4に設けられている。
以下、副気室部材組付装置4の一例として、17インチを主に18インチ、及び19インチの3サイズの車両用ホイール1に対応した装置を例に挙げて説明する。
【0046】
<プッシャの構成>
図5図7に示すように、プッシャ41は、副気室部材3を車両用ホイール1に組み付ける際に、副気室部材3を押圧する治具であり、副気室部材組付装置4のプッシャ駆動装置40の下端部に取り付けられている。プッシャ41は、副気室部材3を押圧する押圧部41aと、押圧部41aが下端部に形成された押圧部本体41bと、押圧部本体41bをプッシャ固定ブラケット40cに連結する連結部41cと、連結部41cとプッシャ固定ブラケット40cとを連結するための蝶ナット等から成る締結部材41dと、プッシャ固定ブラケット40cと連結部41cとの連結部位を補強する補強部材41eと、を備えている。プッシャ41は、締結部材41dを緩めることにより、連結部41cから着脱して、他のサイズのプッシャ41に容易に交換できるようになっている。
【0047】
図2に示すように、プッシャ41の押圧部41aは、ホイール幅方向Yから見て円弧形状に形成されている。押圧部41aの曲率半径R1は、ウェル部1cの外周面1dの半径をWR、副気室部材3の周囲に形成されて押圧部41aに押圧される縁部3b,3cの厚さをT、副気室部材3の湾曲部3fと、車両用ホイール1のウェル部1cの外周面1dとの間の隙間をCとした場合、
WR<R1<WR+T+C
に形成されて、前記ウェル部1cの前記外周面1dの半径WRよりも大きく形成されている。
この押圧部41aの曲率半径R1は、さらに好ましくは、
R1=WR+T
に形成されている(図8(b)参照)。つまり、プッシャ41は、押圧部41aで副気室部材3を最後まで押し込むと、押圧部41aの曲率半径R1がWR+Tと一致するので、押圧部41aの先端部全面が副気室部材3に密着した状態で押圧する。このため、押圧部41aの最終的な押圧力が、全体に亘って均等な押圧力になり、副気室部材3のホイール周方向の両端部に局部的に集中することがなく、また、押圧部41aによって副気室部材3を介在してリム11に過度な力がかかることがない。その結果、副気室部材3の端部が弾性によって反って捲れるのを効果的に抑制することができると共に、押圧部41aの圧痕が副気室部材3に形成されるのを解消することがきる。
したがって、押圧部41aの曲率半径R1は、副気室部材3の湾曲部3fと、車両用ホイール1のウェル部1cの外周面1dとの隙間Cを差し引いた寸法にすることが好ましい。
【0048】
その一例を挙げると、17インチの車両用ホイール1の場合、押圧部41aの曲率半径R1は、ウェル部1cの外周面1dの半径WRが198.3mm、副気室部材3の縁部3b,3cの厚さTが3mm、湾曲部3fの下面と外周面1dとの間の隙間Cが7.2mmとすると、201.3mmとなる。
【0049】
図7(c)に示すように、押圧部41aは、ホイール幅方向Yから見て略片刃形状に形成されている。その押圧部41aは、押圧する副気室部材3に傷を付けるのを防止するために、先端部の一端側に形成された第1アール部R2と、最先端に形成されて第1アール部R2に隣接された平坦部41fと、先端部の他端側に形成されて平坦部41fに隣接された第2アール部R3と、が形成されている。各サイズのプッシャ41の押圧部41aのホイール周方向X方向の長さLpは、プッシャ41で副気室部材3を1回押圧することによって車両用ホイール1に装着できるようにするために、各副気室部材3のホイール周方向X方向の長さLrよりも長く形成されている。
【0050】
第1アール部R2は、押圧部41aの先端部に形成されたアールであり、例えば、僅かにR加工を施して形成された半径が0.5mm程度の小さな丸みから成る。
平坦部41fは、押圧部41aの先端部に形成された水平な面であり、例えば、ホイール幅方向Yの長さが0.5mm程度の僅かな平ら面から成る。
第2アール部R3は、押圧部41aの先端左側に押圧力を集中させるために形成されたアールであり、例えば、第1アール部R2の半径よりも大きな半径でR加工されて形成されている。
【0051】
図8(a)に示すように、プッシャ41の押圧部本体41bは、プッシャ駆動装置40によって下降して副気室部材3を押圧部41aで押圧したときに、副気室部材3をせん断しないようにするために、ホイール幅方向Yへ弾性変形可能なバネ弾性を有する平板部材によって形成されている。このため、押圧部本体41bは、押圧部41aで副気室部材3の湾曲部3fを押圧することによって、湾曲部3fの湾曲面にガイドされて副気室部材3に中心線の方向に向かって湾曲部3fを摺動するように変形する。押圧部本体41bは、ホイール幅方向Yへの弾性を有し、押圧部本体41bが係止爪部1mから離間するホイール幅方向Yへ移動してせん断力(押圧力)を緩和して副気室部材3がせん断されるのを防止するものであればよく、例えば、先端部を湾曲させて押圧部41a形成し、撓み性を有する鋼板あるいは合成樹脂製の板部材から成る。
【0052】
図5及び図6に示すように、連結部41cは、押圧部本体41bの上端部に形成されて、プッシャ固定ブラケット40cに締結部材41dによって固定される部位である。
締結部材41dは、それぞれの大きさの車両用ホイール1に適合したプッシャ41を交換できるようにプッシャ固定ブラケット40cに着脱自在に取り付けることが可能な取付具であり、例えば、蝶ボルトから成る。
補強部材41eは、押圧部本体41bの上端部の前後左右の4箇所と、プッシャ固定ブラケット40cとに亘って設置された側面視して三角形の金属製板部材(リブ)から成る。
【0053】
≪プッシャ駆動装置の構成≫
図5及び図6に示すように、プッシャ駆動装置40は、プッシャ41を上下方向に進退駆動させることによって、プッシャ41を上下動させて、副気室部材3を押圧して車両用ホイール1に組み付ける進退装置である。プッシャ駆動装置40は、例えば、圧縮機40d(図9参照)で生成された圧縮空気によって駆動されるエアシリンダ装置から成る。
図9に示すように、プッシャ駆動装置40は、圧縮空気を生成する圧縮機40dと、圧縮機40dから圧縮空気の供給及び停止を制御するプッシャ制御バルブ40eと、圧縮空気が供給されるシリンダ部40aと、シリンダ部40aに圧縮空気が供給・排気されることによって進退移動する進退部40bと、圧縮機40d及びプッシャ制御バルブ40eの駆動を制御するプッシャ制御部40fと、プッシャ制御部40f等の設定を調整したり、プッシャ駆動装置40のON,OFFのスイッチ操作を行ったりする操作盤91と、を備えている。
【0054】
シリンダ部40aは、左右の縦フレーム48に架設された駆動装置設置プレート48bに垂直に取り付けられている。
進退部40bは、圧縮空気によって上下動するピストンから成り、下端部に取り付けたプッシャ固定ブラケット40cを介してプッシャ41を上下動させる駆動部位である。
操作盤91は、左右一対の縦フレーム48,48の上部に連設された左右一対の操作盤取付ステイ48aの架設するようにして配置されている。
【0055】
<ホイール受ローラの構成>
図6に示すように、ホイール受ローラ42,42は、車両用ホイール1を下側の左右から支持する左右一対の回転支持体であり、例えば、ナイロン等の樹脂から形成された円筒状の部材から成る。ホイール受ローラ42は、例えば、複数の樹脂製パイプを軸方向に連設して延びる円筒状のローラから成り、各樹脂製パイプ内の両端部と、各樹脂製パイプに挿入された軸棒状の支軸42bとの間にそれぞれベアリング(図示省略)が設けられている。ホイール受ローラ42は、上部横フレーム46上に設置されたローラ支持部材42aの上部に支軸42bによって回転自在に軸支されると共に、締結用ブラケット42cにより上部横フレーム46上に配置されている。
【0056】
図5に示すように、左右一対のホイール受ローラ42,42は、上部横フレーム46の中央に配置されたホイール補助部材44から左右方向に同じ距離だけ離間した位置に設置されている。ホイール受ローラ42,42は、後記する位置決めローラ43,43が配置されている側へ下降するように傾斜して配置されている。
かかる構成によれば、ホイール受ローラ42,42上に車両用ホイール1を載置すれば、車両用ホイール1の中心が、自動的に副気室部材組付装置4に中心線上に配置される。
【0057】
<位置決めローラの構成>
図5及び図6に示すように、位置決めローラ43,43は、車両用ホイール1を背面側(後面側)の上下二箇所から支持して車両用ホイール1をホイール受ローラ42,42の前後方向の予め設定した位置に位置決めするための上下一対の回転支持体である。位置決めローラ43,43は、車両用ホイール1の上部後面が当接して支持される上側支持ローラ43aと、車両用ホイール1の下部面が当接して支持される下側支持ローラ43bと、上側支持ローラ43a及び下側支持ローラ43bをそれぞれ軸支する支軸43c,43cと、支軸43c,43cが設けられた上側ローラ支持ブラケット43dと、上側ローラ支持ブラケット43d及び下側ローラ支持ブラケット43eと、上側支持ローラ43a及び下側支持ローラ43bに着脱可能に被着されるアイドラカバー43f,43fと、を備えている。位置決めローラ43は、ホイール受ローラ42,42と同様に、ナイロン等の樹脂から形成された円筒状部材から成る。
【0058】
なお、17インチの車両用ホイール1の場合、位置決めローラ43は、17インチ用のアイドラカバー43fを被着させて、位置決めローラ43の外径を大きくさせて使用する。18インチ及び19インチの車両用ホイール1の場合、位置決めローラ43は、アイドラカバー43fを取り外して位置決めローラ43の外径を小さくさせて使用する。
【0059】
上側支持ローラ43a及び下側支持ローラ43bは、上下方向に向けて配置された支軸43cを中心として回転自在に軸支されると共に、正面視して左右一対の縦フレーム48,48間の中央に配置されている。
支軸43c,43cは、上側ローラ支持ブラケット43dの上面から上方向に向けてそれぞれ延設されて、上側支持ローラ43a及び下側支持ローラ43bを軸支する軸部材であり、スラスト軸受(図示省略)によって片持支持されている。
【0060】
上側ローラ支持ブラケット43d及び下側ローラ支持ブラケット43eは、各支軸43cを下側から保持する厚板状のブラケットである。
上側ローラ支持ブラケット43dは、縦フレーム48,48間に架設された第1架設フレーム48cの上部中央に載設されて、上側支持ローラ43aを下側から支持している。
下側ローラ支持ブラケット43eは、平面視して枠状に設けられた上部横フレーム46の後側フレームの中央上部に載設されて、下側支持ローラ43bを下側から支持している。
アイドラカバー43fは、上側支持ローラ43a及び下側支持ローラ43bの外周部に被着させることにより、位置決めローラ43の外径を17インチの車両用ホイール1に適合させるための着脱自在な円筒状の調整部材である。
【0061】
かかる構成によれば、車両用ホイール1は、ホイール受ローラ42,42上に載置して位置決めローラ43,43に押し当てれば、車両用ホイール1が自動的に所定位置に位置決めされる。この位置決めした状態で車両用ホイール1は、回動させて4個の副気室部材3をウェル部1cに装着させるが、設備本体全体が後側方向に傾斜した状態に設置されていることによって、ホイール回動時に常に位置決めローラ43,43に押し付ける押圧力が働くので、車両用ホイール1の位置が常時安定化される。このため、副気室部材組付装置4は、作業者がホイール回動時に、特別な注意を払う必要がなく、常に、車両用ホイール1が所定の状態にセットされるようになっている。
【0062】
<ホイール補助部材の構成>
図5に示すように、ホイール補助部材44は、車両用ホイール1の下面中央から隙間C1を介して配置されて、ホイール受ローラ42が車両用ホイール1の荷重で下方向撓んで、車両用ホイール1が所定位置よりも下降したときに、車両用ホイール1を支持してホイール受ローラ42,42が所定以上に撓むのを抑制するための部材である。ホイール補助部材44は、ナイロン等の樹脂から形成された厚板部材から成り、左右一対のホイール受ローラ42,42間の中央に、前後方向に向いて延設されている。ホイール補助部材44と車両用ホイール1との隙間C1は、ホイール受ローラ42,42が撓む所定の閾値であり、例えば、0.5〜1.0mm程度である。ホイール補助部材44は、枠状の上部横フレーム46の前側フレームの中央部から後側フレームの中央部に亘って架設された補助部材保持ブラケット44a上に、交換可能に設けられている。
なお、17インチの車両用ホイール1用のホイール補助部材44は、18インチ及び19インチ用のホイール補助部材44よりも厚さが厚く形成されている。ホイール補助部材44は、副気室部材3を組み付ける車両用ホイール1の大きさに適合したものに交換して使用する。
【0063】
≪設備本体の構成≫
図5及び図6に示すように、副気室部材組付装置4の設備本体は、それぞれ後記する支柱45と、上部横フレーム46と、下部横フレーム47と、縦フレーム48と、エリアセンサ枠49、脚部5と、を備えて構成されている。
【0064】
支柱45は、前後左右に立設された4本の金属製の柱から成り、下端に高さ調節可能な脚部5がそれぞれ取り付けられている。支柱45は、上端部に、平面視して矩形の枠状に連結された4本の上部横フレーム46が連結され、下端部に、平面視して矩形の枠状に連結された4本の下部横フレーム47が連結されて、設備本体を形成している。このため、4本の支柱45は、平面視して矩形を形成するように配置されている。
図5に示すように、前側の支柱45は、後側の支柱45よりも、脚部5の高さ調節によって高さH1だけ高くなっている。その高さH1は、例えば、20mm程度である。
【0065】
上部横フレーム46は、4本の支柱45の上端部間にそれぞれ架設された金属製フレームであり、車両用ホイール1が載置されるホイール受ローラ42を設けたローラ支持部材42a等が載置される架台の機能を果たす。上部横フレーム46には、正面視して中央に、ホイール補助部材44を着脱自在に設けた補助部材保持ブラケット44aが載設され、その左右に、ホイール受ローラ42を設けた左右一対のローラ支持部材42aが載設されている。
【0066】
下部横フレーム47は、4本の支柱45の下部間にそれぞれ架設された金属製フレームであり、平面視して前記上部横フレーム46と略同一形状の矩形に形成されている。下部横フレーム47は、上方向に向けて延びる各支柱45、左右一対の縦フレーム48、及び、左右一対のエリアセンサ枠49を保持するための枠状フレームである。
【0067】
図5に示すように、縦フレーム48,48は、下部横フレーム47の後部から上部横フレーム46の背面を介して上方に延設された左右一対のフレーム部材である。縦フレーム48には、操作盤取付ステイ48aと、駆動装置設置プレート48bと、第1架設フレーム48cと、第2架設フレーム48dと、第3架設フレーム48eと、第4架設フレーム48fと、変位計設置ブラケット48gと、変位計設置ブラケット48gの先端に設けられたエアノズル設置ブラケット48hと、前記上部横フレーム46と、前記下部横フレーム47と、設備本体の背面を覆う安全カバー(図示省略)と、が設けられている。
【0068】
操作盤取付ステイ48aは、左右一対の縦フレーム48,48の上端部から上方に延設された左右一対のフレーム部材であり、操作盤91が架設されている。
駆動装置設置プレート48bは、左右方向に互いに平行に配置された第1架設フレーム48cと第2架設フレーム48dとに架設するように取り付けれた矩形の平板部材である。この駆動装置設置プレート48bには、プッシャ駆動装置40と、位置合わせ装置7のレーザマーカ71とが設けられている。
【0069】
第1架設フレーム48cは、一対の縦フレーム48,48の上端部間に架設されたフレーム部材であり、駆動装置設置プレート48bに上端部が固定されている。
第2架設フレーム48dは、第1架設フレーム48cの下方の縦フレーム48,48間に架設されたフレーム部材であり、駆動装置設置プレート48bに下端部が固定されている。
第3架設フレーム48eは、第2架設フレーム48dの下方の縦フレーム48,48間に架設されたフレーム部材であり、上側ローラ支持ブラケット43dが載設されている。
第4架設フレーム48fは、第3架設フレーム48eの下方の縦フレーム48,48に水平に取り付けられフレーム部材であり、左右端部にリム端検出ファイバセンサSe4を固定したセンサブラケット48iが設けられている。
【0070】
変位計設置ブラケット48gは、右側の縦フレーム48の第3架設フレーム48eが設置された部位の上部右側から右方向に突設されたブラケットであり、レーザ変位センサSe2を設置するための金属製板状部材から成る。変位計設置ブラケット48gの先端側には、エアブロー装置6を取り付けるためのエアノズル設置ブラケット48hが設けられている。
エアノズル設置ブラケット48hは、変位計設置ブラケット48gの先端から下方に向けて折曲形成されてブラケットであり、先端部にエアブロー装置6のエアノズル61を装着されている。
【0071】
図5に示すように、エリアセンサ枠49は、下部横フレーム47から上部横フレーム46を介して上方向に延設された上下方向に長い矩形の左右一対の枠部材である。エリアセンサ枠49は、エリアセンサSe1と、スイッチボックス支持ブラケット49aと、設備本体の左右側面を覆う安全カバー(図示省略)と、を設置するためのフレーム部材であり、左右の下部横フレーム47及び上部横フレーム46の左右側面に連結されている。
【0072】
図5及び図6に示すように、脚部5は、各支柱45及び縦フレーム48の下端に設けられて、床面上に設置される部材であり、設備本体の傾斜角度を調節する機能を備えている。脚部5は、床面上に当接した状態に設置される受皿51と、受皿51に内設された固定ナット(図示省略)と、受皿51の上部に設けられた下側ナット52と、下端が受皿51に固定され、上端が支柱45の下端部内に設けられたボルト53と、ボルト53に螺合された位置調整ナット54と、ボルト53が螺合する雌ねじ部を有して支柱45及び縦フレーム48の下端に固定されたアジャスタボルト固定ブラケット55と、を備えて構成されている。つまり、脚部5は、いわゆるアジャスタボルトから構成されている。
【0073】
≪センサ類、スイッチ及び装置≫
このように構成された設備本体には、それぞれ後記するエリアセンサSe1と、スイッチボックス92と、ホイール選択スイッチと、リセットスイッチRSWと、リセットスイッチRSWと、リム端検出ファイバセンサSe4と、エアブロー装置6と、位置合わせ装置7と、副気室部材係合検査装置8と、制御装置9(図9参照)とが設けられている。
【0074】
エリアセンサSe1は、副気室部材組付装置4の上面側と前面側(作業者側)のエリア内に作業者がいるか否かを検出する検出器である。エリアセンサSe1は、作業者を検出した場合、検出信号に基づいて制御装置9が、プッシャ41を作動させるプッシャ駆動装置40の起動をインターロックして、安全性を確保できるようにしている。
つまり、エリアセンサSe1は、作業者が副気室部材組付装置4の上部及び前面側に配置された装置や操作盤91等を操作したり、作業を行ったりしている場合、プッシャ駆動装置40が作動しないようにするための安全装置である。
【0075】
スイッチボックス支持ブラケット49aは、スイッチボックス92を載設するためのスイッチボックスステイであり、側面視して逆L字状の金属製板材から形成されている。スイッチボックス支持ブラケット49aは、エリアセンサ枠49の右側のフレームにボルト締めされている。
【0076】
図9に示すように、スイッチボックス92には、17インチの車両用ホイール1用のスイッチSW1と、18インチの車両用ホイール1用のスイッチSW2と、19インチの車両用ホイール1用のスイッチSW3とを備えたホイール選択スイッチSWと、副気室部材組付装置4の駆動を停止させるリセットスイッチRSWと、が設けられている。図5及び図6に示すように、スイッチボックス92には、エリアセンサ枠49に水平に固定されたスイッチボックス支持ブラケット49a上に載設されている。
【0077】
ホイール選択スイッチSW(図9参照)は、プッシャ駆動装置40の進退部40bを車両用ホイール1のサイズに合わせて駆動するように切り替えるための切換スイッチである。また、このホイール選択スイッチSWによる機種切り替え間違いを防止するために、図6に示すように、副気室部材組付装置4には、アイドラカバーセンサSe3と、リム端検出ファイバセンサSe4とが設けられている。
【0078】
リセットスイッチRSWは、副気室部材組付装置4による副気室部材3の車両用ホイール1への組み付けの際に、装着エラーが所定回数生じた場合、原因を精査するために、このスイッチを操作しない限り副気室部材組付装置4が作動しないようになっている。リセットスイッチRSWは、制御装置9(図9参照)に電気的に接続されている。
【0079】
アイドラカバーセンサSe3は、アイドラカバー43fが位置決めローラ43に取り付けられてあるか否かを検出する検出器であり、位置決めローラ43の近傍の上側ローラ支持ブラケット43d上に設置されている。アイドラカバーセンサSe3は、制御装置9(図9参照)に電気的に接続されている。
【0080】
図5に示すように、リム端検出ファイバセンサSe4は、リム11の端部の位置を検出することによって車両用ホイール1がホイール受ローラ42,42上に載置されてあるかを検出する検出器である。このリム端検出ファイバセンサSe4は、第4架設フレーム48fの両端部に設置されたセンサブラケット48iに設けられている。図6に示すように、リム端検出ファイバセンサSe4は、リム11の端部を検出すために、車両用ホイール1の背面側端部の位置に合わせて設置されている。リム端検出ファイバセンサSe4は、例えば、それぞれ不図示の投光部を形成する発光素子と、受光部を形成する光ファイバと、発光素子及び光ファイバに接続された制御装置9(図9参照)とから構成されている。
図9に示すように、制御装置9は、リム端検出ファイバセンサSe4の発光素子からの光が車両用ホイール1によって遮光されない場合、遮光信号がプッシャ制御部40fに送られて、副気室部材3を押圧するプッシャ41を駆動させるプッシャ駆動装置40が作動できないようにインターロックする機能を備えている。
【0081】
エアブロー装置6は、副気室部材3を樹脂成形したときに発生して残っているバリや、削りカスをエアノズル61から噴射されたエアによって吹き飛ばす除去装置である。つまり、エアブロー装置6は、タイヤ2を車両用ホイール1に組み付ける際に、バリ等がビードシート部1aに噛み込まれてスローパンクチャーが発生するのを防止する装置である。
図9に示すように、エアブロー装置6は、圧縮空気を生成する圧縮機62と、圧縮空気の供給及び停止を行うエアブロー制御バルブ63と、圧縮空気を配管を介して供給されて副気室部材3に向けて噴射するエアノズル61と、前記圧縮機62及びエアブロー制御バルブ63を制御するエアブロー制御部64と、を備えて構成されている。
【0082】
図5に示すように、エアノズル61は、設備本体の右側から車両用ホイール1の上部に向けて噴射するノズルであり、図6に示すように、ホイール幅全体をカバーできるように横長で静音大容量のフラットエアノズルから成る。
図9に示すエアブロー制御部64は、車両用ホイール1を回動中に、予め設定した一定時間だけ電磁バルブから成るエアブロー制御バルブ63を開弁させて圧縮機62から圧縮空気をエアノズル61に供給してそのエアノズル61からエアを噴射させてバリ等を除去するように制御する。
【0083】
図5に示すように、位置合わせ装置7は、副気室部材3を車両用ホイール1に組み付ける際に、副気室部材3のホイール周方向Xの装着中心位置と、プッシャ41の中心位置とを位置合わせする位置合わせ作業を容易に、かつ、正確に行えるようにした装置である。位置合わせ装置7は、駆動装置設置プレート48bに上部に設けられて、副気室部材組付装置4の装置中心線であるマーカーラインL1(図1参照)を照らすレーザマーカ71と、レーザマーカ71を制御するレーザマーカ制御部72(図9参照)と、を備えている。
レーザマーカ71は、図1に示す基準線となる直線状のマーカーラインL1を、図5に示すように、レーザマーカ71からレーザ光線L2を真下方向に向けて照射して描くレーザ光照射装置から成る。
副気室部材3を車両用ホイール1に組み付ける場合は、レーザマーカ71によって照射されたマーカーラインL1上に、図1に示すように、車両用ホイール1をホイール周方向Xに回転させて切欠部1kの中心を合致させると共に、副気室部材3の管体34の中心線を合致させる。
【0084】
かかる構成によれば、作業者は、特別な注意を払うこと無く車両用ホイール1と副気室部材3とプッシャ41との位置合わせが可能となり、位置合わせ作業を容易にして作業効率を向上させることができる。
【0085】
図5に示す副気室部材係合検査装置8は、車両用ホイール1に取り付けた副気室部材3の取付状態(嵌合状態)を検出して装着異常を判定して記録する装着異常検出記録装置である。図9に示すように、副気室部材係合検査装置8は、それぞれ市販の機器を電気的に接続したものであって、例えば、副気室部材3に係合部に向けてレーザ光を発光し、その反射光を受光するレーザ変位センサSe2と、レーザ変位センサSe2から副気室部材3の係合部(縁部3b,3c)に向けて発射されて反射して戻って来た反射光を計測して副気室部材3の係合状態の演算処理等を行うセンサコントロールユニット81と、センサコントロールユニット81で検出したデータをアナログ表示、デジタル表示等で表示するモニタ82と、センサコントロールユニット81等に車両用ホイール1、副気室部材3などの基準となるデータ等を入力するテンキー83と、変位量を解析したり、制御する変位解析制御部84とを備えて構成されている。
【0086】
レーザ変位センサSe2は、いわゆるセンサヘッドであり、変位計設置ブラケット48gに2つ設けられている。それぞれ不図示のレーザ駆動回路と、レーザ光を発射する半導体レーザ(投光素子)と、レーザ光を集光する投光レンズと、副気室部材3の係合部に当たって拡散反射された反射光を受光する受光レンズと、反射光から位置変化の変位量を検出する光位置検出素子と、検出信号を増幅させる信号増幅回路と、を備えている。
【0087】
センサコントロールユニット81は、レーザ変位センサSe2の測定値を自動的に取得して検出信号の演算処理と、サンプリングした検出データと予め入力した基準データ(閾値)との比較を行う比較処理と、その比較処理した検出データが閾値を越えているときは車両用ホイール1に組み付けた副気室部材3の組付異常、閾値を越えていないときは正常とする判定を行う判定処理等の処理を自動的に行う装置である。つまり、センサコントロールユニット81は、レーザ変位センサSe2から副気室部材3の係合部にレーザ光を照射してその係合部の凹凸を計測し、計測値が予め設定した閾値に対して外れた箇所があれば、その箇所を係合異常と判断してモニタ82にNG出力を行う。
【0088】
モニタ82は、センサコントロールユニット81が有する条件設定機能の設定値等を表示したり、測定データ波形表示機能の波形をモニタリングする表示装置であり、例えば、液晶パネル装置から成る。テンキー83は、センサコントロールユニット81に閾値等の条件を入力する入力装置である。
変位解析制御部84は、前記モニタ82及びテンキー83の機能と、データ記録機能とを有すると共に、前記センサコントロールユニット81を遠隔操作することが可能な装置である。なお、変位解析制御部84はパソコンであっても構わない。
【0089】
図9に示す制御装置9は、副気室部材組付装置4全体を制御する装置であり、例えば、パソコンから成る。制御装置9は、操作盤91、スイッチボックス92の各スイッチ、電源90、各センサ等に電気的に接続されている。制御装置9は、プッシャ制御部40fと、エアブロー制御部64と、レーザマーカ制御部72と、変位解析制御部84とを備えて構成されている。
【0090】
≪作用≫
次に、本発明の実施形態に係る副気室部材組付装置4の作用を副気室部材3の組付手順に沿って説明する。
まず、図5及び図6に示すように、車両用ホイール1の背面を上下の位置決めローラ43,43に当接させて、車両用ホイール1をホイール受ローラ42,42上に載置する。正面視して円形の車両用ホイール1は、回転自在な2つの位置決めローラ43上に載置すると、位置決めローラ43が回転して、車両用ホイール1の中心が副気室部材組付装置4の設備本体の中心線に合致した位置に自動的に配置される。
【0091】
ホイール受ローラ42,42は、後下がりに傾斜して配置されているので、車両用ホイール1を背面が上下の位置決めローラ43,43に当接する所定位置に容易に配置することができる。リム端検出ファイバセンサSe4は、車両用ホイール1がその所定の位置状態に配置されているか否かを検出して、車両用ホイール1が所定の位置状態のときだけ、副気室部材組付装置4を作動させることを可能にする。リム端検出ファイバセンサSe4は、車両用ホイール1が所定の位置状態でない場合、副気室部材組付装置4をインターロックする。このため、作業者は、リセットスイッチRSW(図9参照)を操作して解除させてから再度、車両用ホイール1を副気室部材組付装置4の所定位置にセットする。
【0092】
次に、図7に示す位置合わせ装置7のレーザマーカ71を駆動させて車両用ホイール1に向けてレーザ光線L2を照射する。すると、レーザ光線L2は、図1に示すように、車両用ホイール1上にマーカーラインL1を映し出す。そのマーカーラインL1に切欠部1kの中心を一致させるようにして車両用ホイール1を配置すると共に、副気室部材3の管体34の中心線と一致させるようにして、副気室部材3を車両用ホイール1上に仮置きする。その副気室部材3を仮置きする場合は、図3に示すように、管体34側の縁部3cを係止爪部1nに掛けて、他方側の縁部3bを図8(a)に示すように係止爪部1m上に載置した状態にする。
【0093】
次に、プッシャ駆動スイッチ(図示省略)をONさせて図5に示すプッシャ駆動装置40を駆動させ、プッシャ41を下降させる。プッシャ41は、図8(a)に実線で示すように、溝部1j寄りの位置で押圧部41aが湾曲部3fに当接して、湾曲部3fをウェル部1cの外周面1dに向けて押圧する。
【0094】
すると、プッシャ41は、図8(a)で二点鎖線で示すように、湾曲部3fにガイドされるようにホイール幅方向Yの副気室部材3の本体中央部寄り側へ押圧部41aが係止爪部1mから離間するように弾性変形しながら湾曲部3fの上面を摺動しながら下降する。押圧部41aの先端部位は、図7(c)に示すように、第1アール部R2と、第2アール部R3と、平坦部41fとが形成されて、滑らか片刃形状に形成されているので、副気室部材3を押圧した際に損傷させることがない。
【0095】
副気室部材3は、断面視して円弧形状に形成された縁部3bのウェル部1c側が、当接している係止爪部1m上を摺動しながら下降して、図10に示す状態に係合して装着される。ウェル部1cに装着された副気室部材3は、本体部31がウェル部1cの外周面1d側に凸となると共に、湾曲部3fが上方向に向かって湾曲形成されて上方向へ弾性を有するので、ホイール幅方向Yの縁部3b,3cが係止爪部1m,1nに弾接した状態でガタ付きなく装着される。
【0096】
この場合、プッシャ41は、押圧部41aが曲率半径R1の円弧状に形成されると共に、ホイール周方向Xの長さLp(図7(b)参照)が、副気室部材3の長さLr(図4参照)よりも長く形成されていることによって、副気室部材3の縁部3bをホイール周方向X全体に亘って、過度な力がリムに掛らずに押圧する。このため、複数回押し当てなくとも、プッシャ41の一度の下降動作で副気室部材3が溝部1i,1j内に完全に嵌り込んで、副気室部材3を短時間にワンショットで容易に装着させることができる。このようにして、1つの副気室部材3の組み付けが終了する。
【0097】
1つの副気室部材3の装着完了後、次の副気室部材3の装着作業をする場合は、まず、図5及び図6に示すエアブロー装置6を駆動させて所定時間エアを副気室部材3及び車両用ホイール1に吹き付けて、それらに付着しているバリ等を吹き飛ばす。次に、90度車両用ホイール1を右方向へ回動させて、その回動をレーザ変位センサSe2で検出し、そのタイミングでエアブロー制御バルブ63を開弁させてエアを噴射させてバリ等を吹き飛ばして除去する。
【0098】
このように、バリ取り作業を行ってから前記した1つ目の副気室部材3を副気室部材組付装置4によって溝部1i,1j内に装着させた場合と同様の操作を繰り返して、合計4つの副気室部材3を車両用ホイール1のウェル部1cの外周面1dに組み付ける。
【0099】
4つの副気室部材3を車両用ホイール1に組付後は、図5に示す副気室部材係合検査装置8のレーザ変位センサSe2により、図10に示すように、レーザ光線L3,L4を副気室部材3の係合部位(前後の湾曲部3f,3f)に照射してレーザ変位センサSe2からの距離測定を行うことによって、各副気室部材3の装着不良の検出と、装着状態の確認をするための検査を行う。
【0100】
例えば、図11に示すように、副気室部材3が溝部1jにしっかりと係合されていない場合は、レーザ光線L3が副気室部材3の縁部3bに当たることによって、レーザ変位センサSe2からの距離が短くなるため、嵌合不良と判定することができる。
このように、副気室部材3は、副気室部材係合検査装置8によって装着状態を検査することにより、副気室部材3の車両用ホイール1への装着不良を解消することができる。
【0101】
[変形例]
なお、本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、その技術思想の範囲内で種々の改造及び変更が可能であり、本発明はこれら改造及び変更された発明にも及ぶことは勿論である。
【0102】
前記実施形態では、プッシャ駆動装置40の一例として、圧縮空気を作動する装置を例に挙げて説明したが、プッシャ駆動装置40は、プッシャ41を引退移動させることが可能な機構を備えたものであればよく、例えば、油圧シリンダ機構や、モータ歯車機構等を利用した装置であっても構わない。
【0103】
また、前記実施形態では、位置合わせ装置7及び副気室部材係合検査装置8の一例として、レーザを利用したレーザマーカ71やレーザ変位センサSe2を備えた装置を説明したが、これに限定されるものではない。レーザマーカ71やレーザ変位センサSe2は、レーザに替えた発光装置により光を利用した装置であっても構わない。
【0104】
また、プッシャ41は、少なくとも、副気室部材3を押圧部41aで押圧したときに、先端の押圧部41aがホイール幅方向Yへ弾性的に移動可能なものであればよく、例えば、バネ弾性を有しない金属製板材にプッシャ固定ブラケット40cをばね部材を介在して、プッシャ41全体を横方向に移動自在に弾性支持させたものであっても構わない。
【符号の説明】
【0105】
1 車両用ホイール
1c ウェル部
1d 外周面
1g,1h 縦壁面
1i,1j 溝部
3 副気室部材
3b,3c 縁部
3d,3e 端縁
4 副気室部材組付装置
41 プッシャ
41a 押圧部
41f 平坦部
42 ホイール受ローラ
43 位置決めローラ
Lp 押圧部のホイール周方向の長さ
Lr 副気室部材のホイール周方向の長さ
MC タイヤ空気室
R1 押圧部の曲率半径
R2 第1アール部
R3 第2アール部
SC 副気室
T 縁部の厚さ
WR 外周面の半径
Y ホイール幅方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12