【実施例1】
【0009】
本実施例では、触感により認識する立体の表面の大きさの一例として、立体Aの横幅方向における頂部tまでの長さr(
図1参照)の長短を予め所定数の段階、本実施例では12の段階に分けて、指先で触った触感で識別しうるようにしている。
ここで、立体Aの表面の横幅方向における頂部までの長さは、立体Aの横幅方向の長さの略半分なので、横幅方向の長さを基にしても同じであり、この発明では両者を含むものとする。
また、後述のように頂部tの形状も基準に加える場合には、前記長さに加えて形状の識別も要件となる。
また、この発明で立体は、触感により表面の輪郭が分かる形状であればよく、例えば、半球状、柱状、角錐状、円錐状、截頭半球状、粒状などを例示することができる。
【0010】
ここで頂部tは、頂点に限らず、立体Aの上面の中央付近を示している。
これにより立体Aは横幅方向における頂部tまでの長さが徐々に長くなると共に基準面からの高さも徐々に高くなるr1〜r12の12種類となる。
図2では、r1〜r12の長さ(高さ)の異なる立体Aが略球状の場合を示す。
この立体Aを用いる場合は、小さい立体の高さが低くなるので、デザイン絵画を作る場合には、同じ立体A(例えばr1)を多数積み重ねて高さを高くするようにしてもよい。
【0011】
図3ではr1〜r12の立体Aの上面がほぼ同じ高さに設定された略半球状の場合を示す。
図4も立体Aの上面がほぼ同じ高さに設定されたもので、小さい立体(図示例ではr1〜r4)には、上面が揃うように下方を引き延ばしている。
このように上面を揃えた場合は、高低が生じにくいので、デザイン絵画の積み重ねが容易になり、また製本しうるなど、量産時の取り扱いが容易になる。
この発明では、立体の高さは、12段階に合わせて各段階毎に異なるものでも、数段階毎に異なるものでも、ほぼ同じ高さのものでもよく、特に限定されない。
【0012】
立体r1〜r12の12段階の横幅方向における頂部tまでの長さについて、説明の便宜上0.5mm〜6mm迄の0.5mm間隔の12種類とするが、これは触感で識別可能な長さであれば適宜の長さに定めることができ、また各段階の長さの間隔も実施例のように等しいものでも、異なるものでもよい。
上記基準となる立体A(r1〜r12)の12段階は、一枚のパネル上に立体A(r1〜r12)を順番に並べておき、デザイン絵画1の鑑賞前等に随時、触れて基準を確認しうるようにしておくことが好ましい。
【0013】
これにより、立体r1〜r12を組み合わせて形成されたデザイン絵画1は、
図5に示すように、各立体の頂部t(説明の便宜実上、点で示した)を基準にして、指で立体Aの上面を触りながら、立体Aの横幅方向における頂点tまでの長さ、もしくは頂点tを中心とする立体Aの横幅の長さを把握し、それを長さに関連づけられた前記基準となる12段階の明度に置き換えて感得することができる。
【0014】
上記構成では、立体Aの表面の横幅方向における頂部tまでの長さrだけで、12段階に分けたが、この発明では、立体Aの上面の形状を組み合わせて12段階に分ける構成としてもよい。
立体Aの上面の形状ないし頂点周辺の形状を、例えば
図6(a)に示すように側面から触って湾曲面状k1としたもの、(b)に示すように平面状k2としたもの、あるいは(c)に示すように三角錐状や断面三角形状k3の3種類とすることで、横幅方向における頂部tまでの長さrを4段階とし、両者を組み合わせることで12種類の立体を識別するようにしてもよい。
【0015】
同様に、立体Aの上面の形状ないし頂点周辺の平面形状を、例えば
図7(a)に示すように上面から触って三角形状k4としたもの、(b)示すように四角形状k4としたもの、(c)に示すように円形状k5としたものの3種類とすることで横幅方向における頂部tまでの長さrを4段階とし、両者を組み合わせることで12種類の立体を識別するようにしてもよい。
また、前記側面からの形状の3種類を更に組み合わせることで、横幅方向における頂部tまでの長さrの段階を減らし、両者を組み合わせることで12種類の立体を識別するようにしてもよい。
【0016】
上記組合せは一例に過ぎず、立体Aの表面の横幅方向における頂部tまでの長さrを基準に、他の要素として立体Aの上面の形状ないし頂点周辺の形状を変えることで、種々組み合わせて12種以上の多数の種類の基準を定めることが可能である。
【0017】
上記のように12種類の立体Aを形成することで、これらの立体Aを用いて、12段階に分けられた白から黒へ向かう明度を用いて、デザイン絵画1を製作することができる。
なお、本実施例では、白と黒は無彩色であるため12段階の明度には含めなかったが含めてもよい。
従って、これらの12種類の形状に設定された立体Aを用いて、キャンバス上に直接に接着してデザイン絵画1を作成してもよい。
【0018】
上記立体Aは、外表面だけが存在すれば識別できるので、中実である必要はなく中空であってもよい。
そこで、
図8に示すように、上記立体A(r1〜r12)を適宜組み合わせたデザイン絵画1であってもよく、この場合、図示しない型を用いて樹脂成形してプラスチックや金属の表面に凹凸形状を成形することができる。
【0019】
同様に、紙や合成樹脂のシートやフィルムを用いて、エンボス加工、エンボス印刷等により、デザイン絵画1を一体に成形することが可能となる。
また、公知のビーズ印刷を用いることでも、同様に12種類の立体Aの組合せからなるデザイン絵画1を印刷することができる。
この発明では、立体の外表面の成形方法は上記構成に限らず、公知の成形方法を用いることができる。
【0020】
上記実施例では、明度によりデザイン絵画を表現する方法について説明したが、更に色相や色味を表現してもよい。
色相や色味は、所定数の異なる色相や色味に対応して、それぞれ異なる芳香を割り当てておき、色相や色味が同じ立体Aに、その色相や色味に割り当てられた芳香を付加することで行われる。
【0021】
本実施例では、(1)赤色に対応する香りをローズウッド・リーフとし、(2)黄赤色に対応する香りをオレンジスイートとし、(3)黄色に対応する香りをレモンとし、(4)黄緑色に対応する香りをライムとし、(5)緑色に対応する香りをセージとし、(6)青緑色に対応する香りをプチグレインとし、(7)青色に対応する香りをフランギンセンスとし、(8)紫青色に対応する香りをマジョラムとし、(9)紫色に対応する香りをラベンダーポピュレーションとし、(10)赤紫色に対応する香りをゼラニウムとして、香りで10色を表現しうるようにした。
【0022】
従って、上記香りの芳香液を色相に対応する立体に含浸させるなど公知の方法で付加させることで、色相や色味を嗅覚で識別することができる。
上記香りの付着は、印刷によって行ってもよいし、香りを付加する面積が狭い場合や、香りが混ざって識別しにくい場合には、香りを省略し、または主要な香りだけを付着するなどしてもよい。
【0023】
また、色相や色味に対応した絵の具またはインクを、前記香りと共に、あるいは香りに変えて色相や色味が同じ立体に着色してもよい。
これにより視覚によっても色相や色味を見分けることができる。
【実施例2】
【0024】
既存の絵の具や印刷インキで表現されたデザインや絵画を、印刷装置や樹脂成形装置を用いて立体Aで表現して複製する場合には、そのデザインや絵画の明度や必要に応じて色相・色味を分析し、それを基に立体で紙や合成樹脂のシートやプレートに一体成形すればよい。
図9のフローチャートに示すように、まず絵の具やインキで作成された既存のデザインや絵画(S1)の明度をもとに、明度(明度と色相・色味)を分析する(S2)。
次いで、分析された明度が、立体Aの12段階のいずれの段階の明度に含まれるかを判別する。12段階に含まれない明度は、近似する段階の明度に振り分ける。
また、色相や色味についても分析した場合は、同様に10種類の色相・色味のいずれかに該当するか判別する(S3)。
近似する色味が無い場合には、色相は無しとしてもよい。
【0025】
次いで、判別された明度の段階、色味・色味が判別された場合にはその色相・色味の種類を、該当個所のデザインや絵画における位置情報とともに関連づけて、図示しないメモリ等に記録する(S4)。
このようにして既存のデザインや絵画の全域を分析し、判別結果が記録される。
【0026】
次いで、記録された明度の段階情報と位置情報を基に、印刷装置や樹脂成形装置に、印刷する紙面や樹脂成形する樹脂フィルムやシート、プレート、ブロックなどのベースに対し、各明度の段階に対応した立体Aを前記明度に関連づけられた所定位置に成形するための設定を行う(S5)。
次いで、印刷装置や樹脂成形装置により、エンボス加工やボタン印刷、あるいは3Dプリンタ等で成形加工して、立体A(r1〜r12)からなるデザイン絵画1を前記ベース上に直接に一体成形する(S6)。
【0027】
この場合、凹凸を逆にすることで、樹脂成形用の型を製作するものでもよい。
色味や色相を付ける場合は、上記成形や印刷と同時に、または後から芳香を付着する。
また、立体に直接着色する場合には、前記印刷や成形と同時に印刷インキや絵具・塗料を塗布する等の公知手法で着色すればよい。
このようにしてデザイン絵画が立体を用いて複製することができる(S7)。
【0028】
この発明では、芳香や着色は付加的に行うものであり、行っても行わなくてよい。
その他この発明は、上記実施例に限定されるものではなく、要するにこの発明の要旨を変更しない範囲で種々設計変更することができる。