特許第6163053号(P6163053)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6163053
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】袋詰め柔軟剤物品
(51)【国際特許分類】
   D06M 13/463 20060101AFI20170703BHJP
   D06M 13/372 20060101ALI20170703BHJP
   D06M 13/207 20060101ALI20170703BHJP
   D06M 13/148 20060101ALI20170703BHJP
   D06M 13/127 20060101ALI20170703BHJP
   C07C 217/08 20060101ALI20170703BHJP
   C07C 211/63 20060101ALI20170703BHJP
   C11B 9/00 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
   D06M13/463
   D06M13/372
   D06M13/207
   D06M13/148
   D06M13/127
   C07C217/08
   C07C211/63
   C11B9/00 K
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-181768(P2013-181768)
(22)【出願日】2013年9月3日
(65)【公開番号】特開2015-48552(P2015-48552A)
(43)【公開日】2015年3月16日
【審査請求日】2016年6月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100076680
【弁理士】
【氏名又は名称】溝部 孝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】山元 将嗣
(72)【発明者】
【氏名】牛尾 典明
(72)【発明者】
【氏名】山根 有介
【審査官】 佐藤 玲奈
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−023123(JP,A)
【文献】 特開2003−105677(JP,A)
【文献】 特表2006−520823(JP,A)
【文献】 特表2002−534620(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 13/00 − 15/715
C07C 211/63
C07C 217/08
C11B 9/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)成分5質量%以上、25質量%以下、下記(B)成分0.05質量%以上、1.5質量%以下、下記(C)成分0.05質量%以上、2質量%以下、下記(D)成分1.0質量%以上、5.0質量%以下、下記(E)成分及び水を含有し、30℃での粘度が5mPa・s以上、200mPa・s以下の乳濁状態の液体柔軟剤組成物が、袋状容器に充填された袋詰め柔軟剤物品。
(A)成分:(a1)下記一般式(1)で表される第3級アミン化合物及び下記一般式(1)で表される第3級アミン化合物の酸塩から選ばれる1種又は2種以上の化合物〔以下、(a1)成分という〕、及び(a2)下記一般式(1)で表される第3級アミン化合物の4級化物から選ばれる1種又は2種以上の化合物〔以下、(a2)成分という〕であって、(a1)成分と(a2)成分の質量比が(a1)/(a2)で0.01以上、0.6以下である成分
〔R1−C(=O)−O−(Cp2pO)r−Cq2qmN(R23-m (1)
〔式中、
1−C(=O)は炭素数12以上、22以下の脂肪酸由来のアシル基であり、
2は炭素数1以上、3以下の炭化水素基及びHO−(Cp2pO)r−Cq2q基から選ばれる基であり、
mは1、2又は3の数であり、p及びqは、それぞれ、2又は3の数であり、rは0以上、5以下の数である。
同一分子内にR1、R2、HO−(Cp2pO)r−Cq2q基、p、q、rが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていても良い。〕
(B)成分:分子内にヒドロキシル基を有する2価又は3価のカルボン酸及びそれらの塩から選ばれる1種又は2種以上の化合物
(C)成分:下記一般式(2)で表される化合物
3−N+(R43 ・X- (2)
〔式中、R3は炭素数8以上、16以下の炭化水素基であり、R4は炭素数1以上、4以下のアルキル基、炭素数2以上、4以下のヒドロキシアルキル基、及び−(Cs2sO)t−H基から選ばれる基(ここでsは2又は3の数であり、tは2以上、15以下の数である。)であり、X-は陰イオン基である。R4は同一でも異なっていても良い。〕
(D)成分:エチレングリコール、プロピレングリコール及びグリセリンから選ばれる1種以上のグリコール化合物
(E)成分:分子内に芳香族基を有するアルデヒド香料
【請求項2】
前記(B)成分が、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸及びこれらの塩から選ばれる1種又は2種以上の化合物である、請求項1に記載の袋詰め柔軟剤物品。
【請求項3】
前記()成分が、芳香族基とアルデヒド基とが、炭素数2以上、4以下の2価の炭化水素基で連結された構造を有する、分子内に芳香族基を有するアルデヒド香料である、請求項1又は2に記載の袋詰め柔軟剤物品。
【請求項4】
更に(G)成分として、カラーインデックス酸性赤色染料、カラーインデックス酸性黄色染料及びカラーインデックス酸性青色染料から選ばれる1種又は2種以上の酸性染料を、0.01mg/kg以上、10mg/kg以下含有する、請求項1〜3の何れか1項記載の袋詰め柔軟剤物品。
【請求項5】
前記(G)成分が、カラーインデックス酸性赤色染料及びカラーインデックス酸性黄色染料から選ばれる1種又は2種以上の酸性染料である、請求項4に記載の袋詰め柔軟剤物品。
【請求項6】
前記袋状容器が、少なくとも2層のプラスチック層を積層した積層材料を含んで構成された袋状容器である、請求項1〜5の何れか1項記載の袋詰め柔軟剤物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、袋詰め柔軟剤物品に関する。
【背景技術】
【0002】
環境中に排出されても、速やかに分解し、環境への負荷を低減することを目的に、分子内にエステル基を有する柔軟基剤が使用されている。
【0003】
繊維製品に香りを付与する為に、柔軟剤組成物には、多種の香料素材を含有する香料組成物が配合される。とりわけアルデヒド香料はベース香料として多用され、繊維製品に豊かな香りを賦与することができる。
【0004】
近年、環境意識の高まりにより、柔軟剤組成物は袋状の容器に充填された詰め替え品を購入し、それをボトルに詰替えて使用することが一般的となってきている。
【0005】
特許文献1には、脂肪酸、分子内にエステル基を有する柔軟基剤及び単一長鎖第4級アンモニウム塩を含有し、保存による柔軟性の低下を抑制し、各種温度での保存安定性に優れた液体柔軟仕上げ剤組成物が開示されている。
【0006】
特許文献2には、ポリエチレングリコール等の化合物を含有し、屋外保存でのダマ発生が抑制されたプラスチック製小袋入り柔軟仕上げ剤が開示されている。
【0007】
特許文献3には、特定の香料を含有する柔軟剤組成物を、アルミニウム層を含む積層材料からなる容器に充填してなる柔軟剤が、外部への香気物質の漏洩防止性に優れることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−81881号公報
【特許文献2】特開平8−35174号公報
【特許文献3】特開2010−222711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一般に、分子内にエステル基を含む柔軟基剤を含有する液体柔軟剤組成物は、乳濁状態の外観の組成物として調製される。しかし、分子内にエステル基を含む柔軟基剤及び分子内に芳香族基を有するアルデヒド香料を含有する乳濁状態の液体柔軟剤組成物が袋状容器に充填された製品が日光に暴露されると、容器の光が当たった面に接触している乳濁状態の液体柔軟剤組成物中に固体が析出するという現象が生じることが明らかとなった。前述の通り、分子内に芳香族基を有するアルデヒド香料は、繊維製品に豊かな香りを賦与することができるため、柔軟剤に配合するのに好ましい成分であり、前記のような固体の析出を防止できる技術が望まれる。
【0010】
本発明は、液体柔軟剤組成物が袋状容器に充填された袋詰め柔軟剤物品に関し、光暴露時の液体柔軟剤組成物の安定性、具体的には固体析出の抑制と粘度の維持に優れ、且つ保存による液体柔軟剤組成物の外観の変色を抑制できる袋詰め柔軟剤物品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、下記(A)成分5質量%以上、25質量%以下、下記(B)成分0.05質量%以上、1.5質量%以下、下記(C)成分0.05質量%以上、2質量%以下、下記(D)成分1.0質量%以上、5.0質量%以下、下記(E)成分及び水を含有し、30℃での粘度が5mPa・s以上、200mPa・s以下の乳濁状態の液体柔軟剤組成物が、袋状容器に充填された袋詰め柔軟剤物品に関する。
(A)成分:(a1)下記一般式(1)で表される第3級アミン化合物及び下記一般式(1)で表される第3級アミン化合物の酸塩から選ばれる1種又は2種以上の化合物〔以下、(a1)成分という〕、及び(a2)下記一般式(1)で表される第3級アミン化合物の4級化物から選ばれる1種又は2種以上の化合物〔以下、(a2)成分という〕であって、(a1)成分と(a2)成分の質量比が(a1)/(a2)で0.01以上、0.6以下である成分
〔R1−C(=O)−O−(Cp2pO)r−Cq2qmN(R23-m (1)
〔式中、
1−C(=O)は炭素数12以上、22以下の脂肪酸由来のアシル基であり、
2は炭素数1以上、3以下の炭化水素基及びHO−(Cp2pO)r−Cq2q基から選ばれる基であり、
mは1、2又は3の数であり、p及びqは、それぞれ、2又は3の数であり、rは0以上、5以下の数である。
同一分子内にR1、R2、HO−(Cp2pO)r−Cq2q基、p、q、rが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていても良い。〕
(B)成分:分子内にヒドロキシル基を有する2価又は3価のカルボン酸及びそれらの塩から選ばれる1種又は2種以上の化合物
(C)成分:下記一般式(2)で表される化合物
3−N+(R43 ・X- (2)
〔式中、R3は炭素数8以上、16以下の炭化水素基であり、R4は炭素数1以上、4以下のアルキル基、炭素数2以上、4以下のヒドロキシアルキル基、及び−(Cs2sO)t−H基から選ばれる基(ここでsは2又は3の数であり、tは2以上、15以下の数である。)であり、X-は陰イオン基である。R4は同一でも異なっていても良い。〕
(D)成分:エチレングリコール、プロピレングリコール及びグリセリンから選ばれる1種以上のグリコール化合物。
(E)成分:分子内に芳香族基を有するアルデヒド香料
【発明の効果】
【0012】
本発明の袋詰め柔軟剤物品は、光暴露時の液体柔軟剤組成物の安定性に優れる。具体的には、光暴露時の液体柔軟剤組成物の固体析出の抑制と、光暴露時の液体柔軟剤組成物の粘度の維持に優れる。本発明の袋詰め柔軟剤物品は、例えば、日光や日光に相当する強さの光が照射されて保存されても、固体の析出が抑制され、粘度の増加も家庭での使用可能な程度に抑制される。また、高温保存後の外観の変色も抑制される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<乳濁状態の液体柔軟剤組成物>
本発明において、乳濁状態の液体柔軟剤組成物とは、(A)成分などの配合成分が液体柔軟剤組成物中で可視光を散乱する程度の大きな粒子を形成することで、可視光を散乱し、目視上濁った状態の液体柔軟剤組成物を表す。具体的には、測定セルとして光路長10mmのガラスセルを使用し、対照セルにイオン交換水を入れた際に、紫外可視分光光度計を用いて測定された、試料の可視光線透過率(波長660nm)が25%未満である液体柔軟剤組成物を表す。
【0014】
〔(A)成分〕
(A)成分は、(a1)下記一般式(1)で表される第3級アミン化合物及び下記一般式(1)で表される第3級アミン化合物の酸塩から選ばれる1種又は2種以上の化合物〔以下、(a1)成分という〕と、(a2)下記一般式(1)で表される第3級アミン化合物の4級化物から選ばれる1種又は2種以上の化合物〔以下、(a2)成分という〕とである。(A)成分は、(a1)成分と(a2)成分の質量比が(a1)/(a2)で0.01以上、0.6以下である。
【0015】
〔R1−C(=O)−O−(Cp2pO)r−Cq2qmN(R23-m (1)
〔式中、
1−C(=O)は炭素数12以上、22以下の脂肪酸由来のアシル基であり、
2は炭素数1以上、3以下の炭化水素基及びHO−(Cp2pO)r−Cq2q基から選ばれる基であり、
mは1、2又は3の数であり、p及びqは、それぞれ、2又は3の数であり、rは0以上、5以下の数である。
同一分子内にR1、R2、HO−(Cp2pO)r−Cq2q基、p、q、rが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていても良い。〕
【0016】
(a1)成分、(a2)成分は、(a1)成分及び(a2)成分の一般式(1)中のアシル基R1−C(=O)が、それぞれ、不飽和脂肪酸/飽和脂肪酸の質量比が0.1以上、3以下である脂肪酸から構成されていることが好ましい。更には不飽和脂肪酸/飽和脂肪酸の前記質量比は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.3以上、より好ましくは0.6以上であり、そして、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、より好ましくは1.5以下である。
【0017】
また、(a1)成分、(a2)成分は、(a1)成分及び(a2)成分の一般式(1)中のアシル基R1−C(=O)が、それぞれ、(炭素数14以上、18以下の不飽和脂肪酸)/(炭素数14以上、18以下の飽和脂肪酸)=0.1以上、3以下の質量比である脂肪酸から構成されていることが好ましい。(炭素数14以上、18以下の不飽和脂肪酸)/(炭素数14以上、18以下の飽和脂肪酸)の前記質量比は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.3以上、更に好ましくは0.6以上であり、そして、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、更に好ましくは1.5以下である。
【0018】
一般式(1)で表される化合物は、例えば、所定のアルカノールアミン化合物と脂肪酸とのエステル化反応や、所定のアルカノールアミン化合物と脂肪酸エステルとのエステル交換反応により製造することができる。一般式(1)の第3級アミン化合物の合成に用いる脂肪酸は、炭素数12以上、22以下の飽和脂肪酸と炭素数12以上、22以下の不飽和脂肪酸とから構成され、不飽和脂肪酸/飽和脂肪酸の質量比が0.1以上、3以下の混合脂肪酸であることが好ましい。この質量比は、柔軟性能の観点から0.1以上が好ましく、高温保存後の液体柔軟剤組成物の変色を抑制する点から3以下が好ましい。
【0019】
また、一般式(1)の第3級アミン化合物の合成に用いる脂肪酸は、炭素数14以上、18以下の飽和脂肪酸と、炭素数14以上、18以下の不飽和脂肪酸とを含む混合脂肪酸であることが好ましく、(炭素数14以上、18以下の飽和脂肪酸)/(炭素数14以上、18以下の不飽和脂肪酸)の質量比は0.1以上、3以下であることが好ましい。この質量比は、高温保存後の液体柔軟剤組成物の変色を抑制する点から3以下が好ましい。更に、混合脂肪酸は、炭素数14以上、18以下の脂肪酸から構成されることが好ましい。
【0020】
飽和脂肪酸とは、分子内に不飽和基を有さない脂肪酸を表す。飽和脂肪酸としては、直鎖又は分岐鎖の飽和脂肪酸が挙げられる。
【0021】
不飽和脂肪酸とは、分子内に不飽和基を有する脂肪酸を表す。不飽和脂肪酸に含まれる不飽和基が炭素−炭素二重結合の場合はシス体とトランス体が存在する。不飽和脂肪酸は、シス体とトランス体とを含む混合不飽和脂肪酸であってよい。その場合、シス体とトランス体の割合は、シス体/トランス体のモル比が30/70以上、99/1以下のものが挙げられる。アルケニル基の入手性の観点から、モル比でシス体/トランス体のモル比は50/50以上、97/3以下が好ましい。不飽和混合脂肪酸のシス体とトランス体の比は1H−NMRの積分比で算出することができる。
【0022】
また(A)成分の一般式(1)中、p及びqは、それぞれ、2又は3の数である。光暴露時の固体析出抑制(液体柔軟剤組成物の固体析出を意味する。以下特記しない限り同様。)の観点から、pは2の数が好ましい。(A)成分の製造の容易性の観点から、qは2の数が好ましい。rは、繊維製品の柔軟化の点から、0以上、2以下の数が好ましく、0がより好ましい。
【0023】
(a1)成分である一般式(1)で表される第3級アミン化合物は、乳濁状態の液体柔軟剤組成物のpHにより、一部又は全てが酸塩の状態で含有していても良い。
【0024】
第3級アミン化合物が酸塩で存在する場合の酸としては、無機酸又は有機酸が挙げられる。無機酸の具体例としては、塩酸、硫酸が使用できる。有機酸の具体例としては、炭素数1以上、10以下の1価のカルボン酸、炭素数1以上、20以下の炭化水素基を有する1価のスルホン酸、炭素数1又は2のモノアルキル硫酸エステルが挙げられる。より具体的にはグリコール酸、安息香酸、サリチル酸、p−トルエンスルホン酸、(o−、m−、p−)キシレンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、モノメチル硫酸エステル、モノエチル硫酸エステルが挙げられる。
【0025】
(a1)成分である一般式(1)で表される化合物のうち第3級アミン化合物を得る製造方法は特に制限されないが、例えば、下記一般式(1−1)で表わされるアルカノールアミン化合物と炭素数12以上、22以下の脂肪酸とのエステル化反応、又は一般式(1−1)で表わされるアルカノールアミン化合物と炭素数12以上、22以下のアシル基を有する脂肪酸エステルとのエステル交換反応によって得ることができる。
【0026】
(HO−Cq2qm'N(R2'3-m' (1−1)
〔式中、R2'は炭素数1以上、3以下の炭化水素基であり、m’は1、2又は3の数であり、qは前記一般式(1)と同じ意味を表す。〕
【0027】
エステル化反応の例としては、例えば、特表2000−510171号公報の8〜9頁目に記載されている方法を適用することができる。
【0028】
エステル交換反応の例としては、例えば、特開平7−138211号公報の〔0013〕〜〔0016〕に記載の方法を適用することができる。
【0029】
(a2)成分は、前記一般式(1)で表される第3級アミン化合物の4級化物から選ばれる1種又は2種以上の化合物である。(a2)成分は、一般式(1)で表される第3級アミン化合物とアルキル化剤とを用いた4級化反応により得ることができる。アルキル化剤は、メチルクロリド、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸等が挙げられる。4級化反応の例としては、例えば、特開平7−138211号公報の〔0017〕〜〔0023〕に記載の方法や、特開平11−106366号公報に記載の製造方法を適用することができる。
【0030】
(A)成分は、光暴露時の固体析出抑制の点から、一般式(1)中のR2として、HO−(Cp2pO)r−Cq2q基から選ばれる基(ここでp、q、rは、それぞれ、一般式(1)と同じ意味である。)を有する化合物が好ましい。
【0031】
(A)成分の一般式(1)中、mは1、2又は3の数である。(A)成分は、一般式(1)中のmが異なる複数の化合物を含むことが好ましく、mが1の化合物、mが2の化合物、及びmが3の化合物を全て含むことが好ましい。(A)成分が、一般式(1)中のmが異なる複数の化合物である場合、m=2の化合物が最も多いことが好ましい。(A)成分が、mの異なる複数の化合物である場合、それらの化合物全体、すなわち(A)成分全体におけるmの数平均(以下、mzという場合がある。)は、好ましくは1.2以上、繊維製品の柔軟化の観点から、より好ましくは1.3以上、更に好ましくは1.4以上であり、そして、好ましくは2.5以下、繊維製品の柔軟化の観点から、より好ましくは2.0以下、更に好ましくは1.9以下である。
【0032】
(A)成分は、一般式(1)中のmが異なる複数の化合物を含む混合物を用いることができる。前記mの数平均の数mzを満たす混合物を得る上で、その原料となる一般式(1−1)の化合物はmが異なる構造の化合物を混合したものを用いてもよいが、一般式(1−1)においてm’=3の化合物を用いて、mzが前記範囲になる混合物を調製することが好ましい。その場合、一般式(1−1)においてm’=3のアミン化合物に対する脂肪酸又は脂肪酸低級アルコールエステルのモル比を、好ましくは1.2以上より好ましくは1.3以上、そして好ましくは2.5以下.より好ましくは2.0以下の割合でエステル化反応又はエステル交換反応することにより、mzが1.2以上、2.5以下の混合物を調製することができる。
【0033】
(A)成分は、(a1)成分と(a2)成分であり、これらを含む混合物として組成物の調製に用いても良い。(a1)成分と(a2)成分とを含有する混合物は、各々の成分を得た後、混合することで得ることが出来る。本発明に係る液体柔軟剤組成物は、(A)成分として、(a1)成分と(a2)成分とを、(a1)/(a2)=0.01以上、0.6以下の質量比で含有するものである。
【0034】
また、(a1)成分と(a2)成分とを含有する混合物は、(a1)成分を4級化反応し(a2)成分を得る際に、未反応物や副反応物としての(a1)成分を含む混合物が得られるように調整して得ることもできる。
また、4級化反応率を調整することで、意図的に(a1)成分を含む混合物を得ることができる。
【0035】
本発明の(A)成分は、(a1)成分と(a2)成分の質量比(a1)/(a2)が0.01以上、0.6以下である。光暴露時の固体析出抑制の点で、(a1)/(a2)の質量比は、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.07以上、であり、そして、好ましくは0.5以下、更に好ましくは0.3以下である。
【0036】
ここで、(a1)成分のうち、一般式(1)で表される第3級アミン化合物の酸塩については、一般式(1)で表される第3級アミン化合物に換算した質量により前記質量比を求める。また、(a2)成分については、一般式(1)で表される第3級アミン化合物の4級化物としての質量により前記質量比を求める。すなわち、(a2)成分の質量は、第3級アミン化合物の4級化に使用した4級化剤に由来する対イオン(例えば、ジメチル硫酸で4級化した場合にはメチル硫酸イオン)を含む質量である。
【0037】
(A)成分の好ましいものは、(a1)成分及び(a2)成分の一般式(1)中のアシル基R1−C(=O)が、それぞれ、(炭素数14以上、18以下の不飽和脂肪酸)/(炭素数14以上、18以下の飽和脂肪酸)の質量比が0.1以上、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.6以上、そして、3以下、好ましくは2以下、より好ましくは1.5以下である脂肪酸から構成されており、(a1)成分と(a2)成分の質量比が(a1)/(a2)で0.01以上、好ましくは0.05以上、0.07以上、であり、そして、0.6以下、好ましくは0.5以下、更に好ましくは0.3以下であるものである。
【0038】
〔(B)成分〕
(B)成分は、分子内にヒドロキシル基を有する2価又は3価のカルボン酸及びそれらの塩から選ばれる1種又は2種以上の化合物である。
【0039】
(B)成分の分子量は、酸の構造に換算した時に、すなわち、酸型化合物換算で、好ましくは100以上、より好ましくは120以上であり、そして、好ましくは500以下、より好ましくは300以下である。(B)成分は、分子内にヒドロキシ基を1つ有する化合物が好ましい。
【0040】
本発明では、(A)成分を含有する系で(B)成分と(C)成分を併用することで、光暴露時の固体析出が抑制され、且つ保存による液体柔軟剤組成物の外観の変色が抑制される。その理由は必ずしも明らかではないが、本発明者らは次の様に推定している。(B)成分中のカルボキシル基が、(A)成分の(a1)成分中の4級アンモニウム基、(a2)成分中の第3級アミノ基もしくは該第3級アミンの酸塩のカチオン基、又は(C)成分の4級アンモニウム基とイオン結合して、複合体が形成したとしても、(B)成分が分子内にヒドロキシル基を有することで、水への分散性を維持でき、光暴露時の固体析出が抑制され、且つ保存における液体柔軟剤組成物の外観の変色を抑制できるものと考えている。
【0041】
光暴露時の固体析出抑制及び保存による液体柔軟剤組成物の外観の変色の抑制の点で、(B)成分は、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸及びこれらの塩から選ばれる1種又は2種以上の化合物が好ましい。より好ましくは、酒石酸、クエン酸及びこれらの塩から選ばれる1種又は2種以上の化合物であり、更に好ましくはクエン酸又はその塩である。取り扱いの容易性の点から、1価の金属塩、総炭素数2以上、6以下のアルカノールアミン塩及びアルカノール基を有する総炭素数2以上、6以下の4級アンモニウム塩が好ましい。具体的にはナトリウム塩、カリウム塩等の1価の金属塩、N−メチルジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、N,N−ジメチル−N,N−ジエタノールアンモニウム塩、N−メチル−N,N,N−トリエタノールアンモニウム塩が挙げられる。
【0042】
〔(C)成分〕
本発明の(C)成分は、光暴露時の固体析出抑制に有効な化合物であり、下記一般式(2)で表される化合物である。
3−N+(R43 ・X- (2)
〔式中、R3は炭素数8以上、16以下の炭化水素基であり、R4は炭素数1以上、4以下のアルキル基、炭素数2以上、4以下のヒドロキシアルキル基、及び−(Cs2sO)t−H基から選ばれる基(ここでsは2又は3の数であり、tは2以上、15以下の数である。)であり、X-は陰イオン基である。R4は同一でも異なっていても良い。〕
【0043】
一般式(2)中、R3は、光暴露時の固体析出抑制の点から、炭素数8以上、16以下の炭化水素基であり、炭素数10以上、16以下の炭化水素基が好ましい。炭化水素基はアルキル基及びアルケニル基から選ばれる基である。更に本発明ではアルキル基が好ましい。
【0044】
一般式(2)中、R4の具体例としては、メチル基、エチル基、ヒドロキシエチル基、及び−(C24O)t'−H基(ここで、t’は2以上、15以下の数である。)から選ばれる1種以上の基が挙げられる。R4としては、(C)成分の製造の容易性の点から、メチル基、エチル基及びヒドロキシエチル基から選ばれる基が好ましい。
【0045】
-は陰イオン基であり、具体的にはハロゲンイオン、例えば塩素イオン、臭素イオン、及び炭素数1又は2のアルキル硫酸イオン、例えばメチル硫酸イオン、エチル硫酸イオンから選ばれる陰イオン基が挙げられる。好ましくは塩素イオンである。
【0046】
〔(D)成分〕
本発明の(D)成分は、光暴露時の固体析出抑制に有効な化合物であり、エチレングリコール、プロピレングリコール及びグリセリンから選ばれる1種以上のグリコール化合物である。(D)成分は、エチレングリコールが好ましい。
【0047】
〔(E)成分〕
(E)成分は、分子内に芳香族基を有するアルデヒド香料である。分子内に芳香族基を有するアルデヒド香料とは、分子内に芳香族基を有するアルデヒド化合物のうち、香料として用いられる化合物を意味する。
【0048】
(E)成分として用いられる分子内に芳香族基を有するアルデヒド香料は、例えば「香料と調香の基礎知識、中島基貴 編著、産業図書株式会社発行、2005年4月20日 第4刷」に記載の香料、特表平10−507793号公報記載の香料を使用することができる。
【0049】
(E)成分としては、繊維製品に持続性のある香りを付与する点で、芳香族基とアルデヒド基とが、炭素数2以上、4以下の2価の炭化水素基で連結された構造を有する、分子内に芳香族基を有するアルデヒド香料が好ましい。
【0050】
芳香族基とアルデヒド基とが、炭素数2以上、4以下の2価の炭化水素基で連結された構造を有する、分子内に芳香族基を有するアルデヒド香料としては、フェニルプロピルアルデヒド、シンナミックアルデヒド、α−アミルシンナミックアルデヒド、α−ヘキシルシンナミックアルデヒド、シクラメンアルデヒド、3−(p−t−ブチルフェニル)−プロピルアルデヒド、p−エチル−2,2−ジメチルヒドロシンナムアルデヒド、2−メチル−3−(p−メトキシフェニル)−プロピルアルデヒド、及びp−t−ブチル−α−メチルヒドロシンナミックアルデヒドから選ばれる香料が挙げられる。
【0051】
〔水〕
本発明に係る液体柔軟剤組成物は水を含有する。水は、組成物全体を100質量%にする量で含有される。水は脱イオン水を用いることが好ましく、更には少量の次亜塩素酸塩で滅菌したものを用いる事がより好ましい。
【0052】
〔その他の成分〕
<(F)成分>
本発明に係る液体柔軟剤組成物は、(F)成分として、分子内にフェノール基を有する酸化防止剤を含有することが好ましい。(F)成分は、前記(E)成分の臭いの変化を抑制する為に用いられる。本発明において、前記(E)成分と併用すると、臭いの変化を抑制できるが、酸化を受けたフェノール基を有する酸化防止剤が着色されることで、液体柔軟剤組成物の変色が促進されることが明らかとなった。しかし、(B)成分を併用することで、着色が抑制され且つ臭いの変化が抑制された液体柔軟剤組成物が得られることがわかった。
【0053】
入手の容易性の点から、分子内にフェノール基を有する酸化防止剤としては、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール及びブチルヒドロキシアニソールから選ばれる1種又は2種以上の酸化防止剤が好ましい。変色抑制の点から、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール及び2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノールから選ばれる1種又は2種の酸化防止剤が好ましい。
【0054】
<(G)成分>
本発明に係る液体柔軟剤組成物は、(G)成分として、カラーインデックス酸性赤色染料、カラーインデックス酸性黄色染料及びカラーインデックス酸性青色染料からから選ばれる1種又は2種以上の染料を含有することができる。
【0055】
カラーインデックス酸性赤色染料の具体例としては、C.I.Acid Red 18 C.I.Acid Red 27、C.I.Acid Red 52、C.I.AcidRed 82、C.I.Acid Red 114、C.I.Acid Red 138、C.I.Acid Red 186が挙げられる。
【0056】
カラーインデックス酸性黄色染料の具体例としては、C.I.Acid Yellow 1 、C.I. Acid Yellow 3、C.I.Acid Yellow7、C.I.Acid Yellow 23、C.I.Acid Yellow 141が挙げられる。
【0057】
カラーインデックス酸性青色染料の具体例としては、C.I.Acid Blue 5、C.I.Acid Blue 9、C.I.Acid Blue 74が挙げられる。
【0058】
(G)成分は前記(B)成分と併用することで、(E)成分又は(E)成分及び(F)成分を含有する液体柔軟剤組成物の高温保存後の変色を、より抑制することが出来る。高温保存後の変色抑制の点で、カラーインデックス酸性赤色染料、及びカラーインデックス酸性黄色染料から選ばれる1種又は2種以上の染料が好ましい。
【0059】
なお、本発明では、(G)成分以外の染料を使用することもできる。(G)成分以外の染料としては、アルコキシル化アントラキノン高分子着色剤、アルコキシル化トリフェニルメタン高分子着色剤、アルコキシル化チオフェン高分子着色剤があげられる。
【0060】
<(H)成分>
本発明に係る液体柔軟剤組成物は、(H)成分として、非イオン界面活性剤、(A)成分以外の陽イオン界面活性剤、及び(C)成分以外の陽イオン界面活性剤から選ばれる1種以上の界面活性剤を含有することができる。(H)成分としては、非イオン界面活性剤が保存安定性の観点から好まし。非イオン界面活性剤としては、炭素数12〜18のアルキル基を有し、エチレンオキシ基の平均付加モル数が10〜50であるポリオキシエチレンアルキルエーテルを挙げることができる。
【0061】
<その他の任意成分>
乳濁状態の液体柔軟剤組成物は、任意成分として、pH調整剤、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等の水溶性無機塩化物、プロキセルとして市販されている防菌・防カビ剤、(E)成分以外の他香料成分、フェノキシエタノール、エタノール、イソプロパノール等の(D)成分以外の水溶性溶剤、消泡剤又は繊維製品の風合い改変剤としてジメチルシロキサン等のシリコーン等を含有することができる。
【0062】
〔液体柔軟剤組成物の組成等〕
乳濁状態の液体柔軟剤組成物中の(A)成分の含有量は5質量%以上、25質量%以下であり、洗濯1回当たりの使用量を少なくできる点から、5質量%以上であり、好ましくは7質量%以上である。光暴露時の固体析出抑制に優れる点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは18質量%以下である。
【0063】
乳濁状態の液体柔軟剤組成物中の(B)成分の含有量は、0.05質量%以上、1.5質量%以下である。高温保存後の液体柔軟剤組成物の変色抑制の観点から、(B)成分の含有量は、組成物中、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上である。経済性の点から、(B)成分の含有量は、組成物中、好ましくは1.3質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下である。尚、本発明において、(B)成分の含有量は、酸型に換算した(B)成分の含有量を表す。例えば、クエン酸3ナトリウム塩を使用しても、含有量はクエン酸として換算した値を表す。
【0064】
乳濁状態の液体柔軟剤組成物中の(C)成分の含有量は、0.05質量%以上、2質量%以下である。光暴露時の固体析出抑制の点から、(C)成分の含有量は、組成物中、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.15質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上である。光暴露時の液体柔軟剤組成物の分離抑制の点から、(C)成分の含有量は、組成物中、好ましくは2質量%未満、より好ましくは1.5質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。
【0065】
液体柔軟剤組成物中の(D)成分の含有量は、1.0質量%以上、5.0質量%以下である。(D)成分の含有量は、組成物中、好ましくは1.2質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以上、より更に好ましくは2.0質量%以上である。液体柔軟剤組成物の分離抑制の点から、(D)成分の含有量は、組成物中、5.0質量%以下であり、好ましくは4.5質量%以下、より好ましくは4.0質量%以下である。
【0066】
乳濁状態の液体柔軟剤組成物中の(E)成分の含有量は、繊維製品への香り賦与の点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上である。また、外観の変色が起こりにくい点から、(E)成分の含有量は、組成物中、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.8質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下である。
【0067】
(F)成分を含有する場合、乳濁状態の液体柔軟剤組成物中の(F)成分の含有量は、前記(E)成分の臭い変化抑制の点で、(E)成分との質量比が、(F)成分/(E)成分で、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、更に好ましくは0.3以上である。経済性の点から、(F)成分/(E)成分の質量比は、好ましくは5未満、より好ましくは4以下、更に好ましくは3以下である。
【0068】
(G)成分を含有する場合、乳濁状態の液体柔軟剤組成物中の(G)成分の含有量は、高温保存後の変色抑制の点から、好ましくは0.01mg/kg以上、より好ましくは0.05mg/kg以上、更に好ましくは0.1mg/kg以上、より更に好ましくは0.3mg/kg以上である。審美性の点から、好ましくは10mg/kg以下、より好ましくは5mg/kg以下、更に好ましくは3mg/kg以下、より更に好ましくは2mg/kg以下、より更に好ましくは1mg/kg以下である。
【0069】
本発明に係る乳濁状態の液体柔軟剤組成物は、使用勝手の点から、30℃での粘度が5mPa・s以上、好ましくは10mPa・s以上であり、そして、200mPa・s以下、好ましくは150mPa・s以下である。この粘度は、袋状容器に充填する前の粘度であり、実施例の「初期粘度」の方法で測定されたものである。
【0070】
また、本発明に係る液体柔軟剤組成物は、光照射後も粘度が高くならないものが好ましい。具体的には、光照射後の粘度が、600mPa・s以下であるものが好まく、更に、使い勝手の点で、350mPa・s以下が好ましく、300mPa・s以下がより好ましく、250mPa・s以下が更に好ましく、150mPa・s未満がより更に好ましい。この粘度は、実施例の「光照射下での保存後の粘度」の方法で測定されたものである。
【0071】
本発明に係る乳濁状態の液体柔軟剤組成物のpHは、(A)成分の加水分解安定性の点から、25℃で、好ましくは2以上であり、そして、好ましくは7以下、より好ましくは5以下である。pHは、JIS K 3362;2008の項目8.3に従って25℃において測定する。
【0072】
〔袋状容器〕
本発明の袋詰め柔軟剤物品は、前述した所定の乳濁状態の液体柔軟剤組成物が、袋状容器に充填されてなるものである。本発明に用いられる袋状容器は、プラスチックからなる層を1層以上含む積層材料から形成される袋状容器が好ましい。例えば、特開2009−154915号公報の〔0030〕〜〔0039〕記載の袋状容器が使用でき、構造としては特開平8−26297号公報記載の図1及び2又は図3の構造体を用いることができる。
【0073】
袋状容器は、少なくとも2層のプラスチック層を積層した積層材料を含んで構成されたものが好ましい。積層材料を含んで形成される袋状容器の具体的な構成としては、最外層(光が最初に入射する層)に延伸ナイロン(ONy)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、延伸ポリプロピレン(OPP)や高密度ポリエチレン(HDPE)等からなる基材層〔層I〕が配置され、次いで無延伸ポリプロピレン(CPP)、直線状低密度ポリエチレン(L−LDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)等からなるシーラント層〔層II〕が配置され積層した構成を例示することができる。
前記基材層〔層I〕の厚みは、剛性などについて必要最小限に保持され得る厚さであればよく、製袋加工性、コスト及び強度を加味して決めることができる。一般的な厚さは10μm以上、50μm以下が例示される。積層材料全体の厚みも、製袋加工性、コスト、強度及び剛性を加味して決めることができる。一般的な厚さは、100μm以上、300μm以下が例示される。
【0074】
本発明の袋詰め柔軟剤物品は、特許文献3に記載されているような遮光性に優れたアルミニウム層を有する袋状容器を使用しなくても、光暴露時の固体析出を抑制することができる。必要に応じてアルミニウム層を有する袋状容器を使用することもできる。その場合には、従来よりもアルミニウム層を薄くすることができ、例えば、3μm以下程度にして製造コストを引き下げることができる。
【0075】
プラスチックフィルム各層の積層は、一般的に、ポリウレタン系、エステル系等の接着剤や、カゼインなどの水溶性接着剤などの糊材を用いて行われる。
【0076】
本発明に用いられる袋状容器は、上述のような複合フィルム基材を、最内層となる層を内側にして重ね合わせ、その周縁部を、ヒートシール等により接着して袋状に成形して得られる。
【実施例】
【0077】
〔(A)成分〕
実施例で使用した(A)成分を以下に示す。
【0078】
(a−1):下記合成例1で得られたエステル化反応生成物
<合成例1:(a−1)の製造方法>
トリエタノールアミンと脂肪酸(混合脂肪酸、組成は以下に示す)とを、反応モル比(脂肪酸/トリエタノールアミン)1.86/1でエステル化反応させ、一般式(1)で表されるアミン化合物を含むエステル化反応生成物を得た。
エステル化反応生成物のmzは1.77であった。また、エステル化反応生成物中には、未反応の脂肪酸が5質量%含まれていた。エステル化反応生成物中のアミン化合物のアミンに対して、メチル基が0.98等量となるように、ジメチル硫酸で4級化反応を行った。4級化反応後に反応物の質量に対して10質量%のエタノールを添加し、均一に混合した。
得られたエステル化反応生成物をHPLC法で各成分の組成比を分析し、臭化テトラオクチルアンモニウムを内部標準物質として使用し定量した結果、得られたエステル化反応生成物は、(a1)成分の第3級アミン化合物、(a2)成分の4級化物、及び未反応の脂肪酸を85質量%含有する混合物であった。該混合物中、脂肪酸は2質量%含まれていたことから、該混合物中の(a1)成分及び(a2)成分の合計は、85質量%−2質量%=83質量%であった。また、該混合物における(a1)成分/(a2)成分の質量比は0.10であり、(a1)成分及び(a2)成分の一般式(1)中のアシル基R1−C(=O)が、それぞれ、不飽和脂肪酸/飽和脂肪酸の質量比が0.64である脂肪酸から構成されていた。
【0079】
なお、液体柔軟剤組成物の調製にあたり、(a−1)は、(a1)成分、(a2)成分、脂肪酸、エタノール及びその他微量成分を含む混合物として配合されるが、表1、2の(a−1)の質量%は、(a1)成分、(a2)成分の量に基づく質量%を示し、その他の成分は、イオン交換水の残部に加えた。
【0080】
脂肪酸の組成を以下に示す。
ミリスチン酸:2質量%
パルミチン酸:27質量%
パルミトレイン酸:3質量%
ステアリン酸:32質量%
炭素数18で、不飽和基を1つ有する脂肪酸:33質量%
炭素数18で、不飽和基を2つ有する脂肪酸:3質量%
前記組成は、原料に使用した脂肪酸をガスクロマトグラフィーで組成分析し、各脂肪酸の面積%を質量%とみなした。前記不飽和基のシス/トランス体比は85/15(1H−NMRによる、積分比)である。
【0081】
(a−2):下記合成例2で得られたエステル化反応生成物
<合成例2:(a−2)の製造方法>
N−メチルジエタノールアミンと脂肪酸(混合脂肪酸、組成は以下に示す)とを、反応モル比(脂肪酸/N−メチルジエタノールアミン)1.9/1でエステル化反応させ、一般式(1)で表されるアミン化合物を含むエステル化反応生成物を得た。
エステル化反応生成物のmzは1.72であった。エステル化反応生成物中には、未反応の脂肪酸が9.5質量%含まれていた。エステル化反応生成物中のアミン化合物のアミンに対して、10質量%のエタノールを添加し均一に混合した後、前記アミンに対してメチル基が0.98等量となるように、塩化メチルで4級化反応を行った。
得られたエステル化反応生成物をHPLC法で各成分の組成比を分析し、臭化テトラオクチルアンモニウムを内部標準物質として使用し定量した結果、得られたエステル化反応生成物は、(a1)成分の第3級アミン化合物、(a2)成分の4級化物、及び未反応の脂肪酸を88質量%含有する混合物であった。該混合物中、脂肪酸は8.7質量%含まれていたことから、該混合物中の(a1)成分及び(a2)成分の合計は、88質量%−8.7質量%=79.3量%であった。また、(a1)成分/(a2)成分の質量比は0.18であり、(a1)成分及び(a2)成分の一般式(1)中のアシル基R1−C(=O)が、それぞれ、不飽和脂肪酸/飽和脂肪酸の質量比は0.42である脂肪酸から構成されていた。なお、表1、2の(a−2)の質量%も同様に、(a1)成分、(a2)成分の量に基づく質量%で示した。
【0082】
脂肪酸の組成を以下に示す。
パルミチン酸:10質量%
ステアリン酸:60質量%
炭素数18で、不飽和基を1つ有する脂肪酸:30質量%
前記組成は、原料に使用した脂肪酸をガスクロマトグラフィーで組成分析し、各脂肪酸の面積%を質量%とみなした。前記不飽和基のシス/トランス体比は85/15(1H−NMRによる、積分比)である。
【0083】
〔(B)成分〕
(b−1):クエン酸(分子量192)
(b−2):リンゴ酸(分子量134)
(b−3):酒石酸(分子量150)
【0084】
〔(B’)成分:(B)成分の比較化合物〕
(b’−1):マロン酸(分子量104)
【0085】
〔(C)成分〕
(c−1):N−ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド
(c−2):N−ラウリル−N−メチル−N,N−ビス−(ポリオキシエチレン(平均3モル付加))アンモニウム・メチルサルフェート
【0086】
〔(C’)成分:(C)成分の比較化合物〕
(c’−1):N−オクタデシルトリメチルアンモニウムクロリド
【0087】
〔(D)成分〕
(d−1):エチレングリコール
(d−2):グリセリン
【0088】
〔(E)成分〕
(e−1):α−アミルシンナミックアルデヒド
(e−2):α−ヘキシルシンナミックアルデヒド
(e−3):シクラメンアルデヒド
【0089】
〔(F)成分〕
(f−1):2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール
【0090】
〔(G)成分〕
(g−1):C.I. Acid Yellow 3
(g−2):C.I. Acid Red 52
(g−3):C.I. Acid Blue 9
【0091】
〔(H)成分〕
(h−1):非イオン界面活性剤(ラウリルアルコールのエチレンオキサイド平均21モル付加物)
【0092】
〔袋状容器〕
特開平8−26297号公報の図3に記載の構造のスタンディングパウチであって、下記構成を有する積層材料を用いて成形された袋状容器(高さ:260mm、上端部及び下端部幅:130mm、底面部は紡錘形の軸平行の断面の形であって、長軸が100mm、短軸が60mmである。)を用いた。
積層材料:層Iは外層、層IIは内層(組成物と接する層)とする。層Iは延伸ナイロン(ONy)、厚さ15μmの可撓性フイルムであって、層Iの裏面(層IIと接する面)は、全面にグラビア印刷にて白色インキが2回印刷され、その上に層IIが積層されている。なお層IIは、直線状低密度ポリエチレン(L−LDPE)、厚さ150μmの可撓性フイルムである。
【0093】
<乳濁状態の液体柔軟剤組成物の製造方法>
表1、2に示す配合組成となるように各成分を混合することにより、乳濁状態の液体柔軟剤組成物を調整した。具体的には、以下の通りである。1Lビーカーに、乳濁状態の液体柔軟剤組成物の出来上がり質量が600gとなるのに必要な量の90質量%相当量のイオン交換水と(B)成分又は(B’)成分と(C)成分又は(C’)成分と(D)成分と(G)成分を入れ、ウォーターバスを用いて60℃±2℃に調温した。(B)成分又は(B’)成分と(C)成分又は(C’)成分と(G)成分がイオン交換水中に均一に溶解するように、必要に応じて下記の攪拌羽を用いて攪拌した。60℃±2℃の温度に調温した(B)成分又は(B’)成分と(C)成分又は(C’)成分と(G)成分を含むイオン交換水を、直径が5mmの攪拌棒の回転中心軸を基準として、長辺が90度方向になるように配置された攪拌羽根(羽根の数:3枚、羽根の長辺/短辺:3cm/1.5cm、羽根の設置:回転面に対して45度の角度)で攪拌(300r/m)しながら、65℃で加熱溶解させた(A)成分と(H)成分の混合物を3分間掛けて投入した。投入終了後に15分間攪拌した。塩化カルシウム成分の10質量%水溶液を投入し、10分間攪拌した。5℃のウォーターバスを用いて、内容物の温度が30℃±2℃になるまで冷却した。(E)成分と(F)成分を予め混合した混合物を投入し、5分間攪拌した。出来上がり質量(600g)となるようにイオン交換水を加え、5分間攪拌した。実施例、比較例の液体柔軟剤組成物は、いずれも、乳濁状態であることが確認された。なお、液体柔軟剤組成物のpH(30℃)は、塩酸又は水酸化ナトリウム水溶液により、表中の値に調整した。
【0094】
<袋詰め柔軟剤物品>
前記液体柔軟剤組成物を、前記袋状容器に500g充填して、袋詰め柔軟剤物品を調製した。
【0095】
<評価>
〔1〕光照射下での保存安定性
袋詰め柔軟剤物品の光照射下での保存安定性を、光照射下で保存後の液体柔軟剤組成物から析出した固体の量で評価した。
試験機は低温サイクルキセノンフェードメーター(型番;XL75、スガ試験機株式会社製)を使用した。
試験機内に、袋詰め柔軟剤物品の最大面積面を、ランプに向けて設置し、下記の照射条件で光を照射した後、試験機の運転を止め、そのまま18時間放置した(1サイクル)。その際の照射条件は、設定放射照度は42W/m2、設定放射時間は6時間(積算放射照度;0.9MJ/m2)、ブラックパネル温度は45℃であった。
このサイクルを11サイクル行った後の、容器の上辺のシール部を摘み、内部の乳濁状態の液体柔軟剤組成物を動かさないように注意深く、試験機内から取り出した。
容器の上辺のシール部をハサミで裁断し、容器逆さまにし、内容物をステンレス製メッシュ(200メッシュ 目開き75μm)でろ過した。ろ過後、1分放置した後の、メッシュに残存した固体析出物の質量を測定した(ろ過前のステンレス製メッシュの質量を予め測定し、その差分を固体析出物の質量とした)。結果を表1、2に示した。
固体の析出物の質量1g未満が合格であり、0.8g以下が好ましく、0.5g以下がより好ましく、0.3g以下が更に好ましく、0.2g未満が特に好ましい。最も好ましくは0g(固体が測定されない)である。
【0096】
〔2〕粘度
(2−1)初期粘度
調製直後の液体柔軟剤組成物の粘度を測定した。30±1℃に調温した液体柔軟剤組成物について、B型粘度計(TOKI SANGYO Co.,LTD製、VISCOMETER TVB−10、No.2ローター、60r/m)を用いて各乳濁状態の液体柔軟剤組成物の粘度測定を開始し、1分後の値を読み取った。
【0097】
(2−2)光照射下での保存後の粘度
前記〔1〕の保存安定性の試験において、保存後、ろ過した液体柔軟剤組成物90gを、No.11規格瓶に入れ、専用キャップで封をし、30℃のウォーターバスを用いて内容物温度30℃に調温した後、内容物温度を30℃に保ったまま1時間放置した。
B型粘度計(TOKI SANGYO Co.,LTD製、VISCOMETER TVB−10、No.2ローター、60r/m)を用いて各乳濁状態の液体柔軟剤組成物の粘度測定を開始し、1分後の値を読み取った(粘度の単位は「mPa・s」)。粘度が高くNo.2ローターで測定できない場合には、No.3ローターに交換し同様に測定した。
【0098】
〔3〕高温保存後の外観の変化
上記調製法により各成分を配合した衣料用液体柔軟剤組成物の袋詰め柔軟剤物品を40℃の恒温室にて20日保管後、5人のパネラーにより目視観察し、下記基準で外観変化(乳濁状態の液体柔軟剤組成物の変色)を判定した。恒温室内の照明の使用は、恒温室への入室時以外は行っていない。表1、2には、5人のパネラーの平均値を示し、2.0以上が合格値である。
評価基準:
3:配合直後と比べて外観変化(変色)がない。
2:配合直後と比べて外観がわずかに変化(わずかに変色)した。(許容範囲内)
1:配合直後と比べて外観が変化(変色)した。(許容範囲外)
0:配合直後と比べて外観が著しく変化(著しく変色)した。(許容範囲外)
【0099】
【表1】
【0100】
【表2】
【0101】
*表中、(G)成分の配合量の単位は、mg/kgである。