(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電磁鋼板の幅方向の両端側で並ぶ2つの列に含まれる前記鉄心材の前記突起部が打ち抜かれる部分が、何れも前記電磁鋼板の幅方向に対して前記第1角度を有して傾いている請求項1に記載の固定子鉄心の製造方法。
前記電磁鋼板の幅方向の一端側で並ぶ1つの列および前記電磁鋼板の幅方向の中心で並ぶ1つの列に含まれる前記鉄心材の前記突起部が打ち抜かれる部分が、何れも前記電磁鋼板の幅方向に対して前記第1角度を有して傾いている請求項1に記載の固定子鉄心の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、回転電機の固定子に用いられる固定子鉄心の製造方法に係る複数の実施形態について図面を参照しながら説明する。この場合、固定子は、インナーロータ型の固定子である。なお、固定子鉄心の軸方向と、鉄心材の積層方向と、鉄心材の板厚方向とは、同一の方向である。
【0009】
(第1実施形態)
例えば
図1に示す固定子鉄心1は、電磁鋼板製であり、ほぼ円筒状をなす。固定子鉄心1の内周には、図示しない回転子が配置される空間が形成されている。固定子鉄心1の内周部には、巻線を収容するための複数個のスロット2が周方向に沿って等間隔に形成されている。図示しないが、固定子鉄心1は、回転電機を収容するフレーム内に固定されて用いられる。固定子鉄心1は、多数枚の鉄心材3を積層して構成されている。
【0010】
鉄心材3は、ほぼ円環状の板状をなす。この鉄心材3の内周部には、内方に突出する複数個のスロット2が周方向に沿って等間隔に形成されている。なお、便宜上、固定子鉄心1のスロット2および鉄心材3のスロット2は、何れも「スロット2」と称する。鉄心材3は、複数枚の鉄心材3が積層された場合に、それら鉄心材3を積層方向に一体に連結するための連結用の突起部4をm個有している。ここで、「m」は、「2以上の整数」、好ましくは「3以上の奇数」、より好ましくは「3」で設定される。本実施形態では、「m=3」で設定されている。即ち、1枚の鉄心材3は、3個の突起部4を有する。
【0011】
突起部4は、円環状の鉄心材3の外周部から径方向外側に突出している。具体的には、突起部4は、何れも同一の形状をなしており、この場合、鉄心材3の外周部から径方向外側に延び、その先端が半円弧状に形成されている。突起部4は、後述する孔部5が形成可能な大きさで形成されている。また、突起部4は、円環状の鉄心材3の外周部において、周方向に沿って等間隔に配置されている。この場合、「m=3」であるので、各突起部4の間の間隔は、「360/3」°、即ち、「120°」である。
【0012】
突起部4の中央には、鉄心材3の板厚方向に貫通する円形状の孔部5が形成されている。固定子鉄心1は、多数枚の鉄心材3を、各鉄心材3の突起部4が重なるようにして板厚方向に積層することにより構成される。このとき、鉄心材3の板厚方向、即ち、積層方向に隣り合う複数の鉄心材3の各孔部5は、積層方向に沿って相互に連なって筒状となる。そして、鉄心材3の積層方向に連なる孔部5には、図示しない連結部材が挿入される。この連結部材は、例えば金属製で管状の結着管で構成される。従って、孔部5の開口は、連結部材、この場合、結着管が挿入可能な大きさに設定されている。孔部5に挿入された結着管は、孔部5の積層方向の全長にわたって拡開される。これにより、多数枚の鉄心材3が一体に連結して、固定子鉄心1が構成される。
【0013】
次に、本実施形態の固定子鉄心1の製造方法の一例について説明する。固定子鉄心1を構成する鉄心材3は、例えば
図2に示す帯状の電磁鋼板である母材11を所定の大きさに切断し、この母材11を図示しないプレス機によって打ち抜くことで形成される。母材11は、圧延によって帯状に形成されている。そのため、母材11は、圧延時においてローラから受ける荷重の大きさの違いなどによって、例えば幅方向の各部位において板厚が異なっている。即ち、母材11は板厚偏差を有する。この場合、母材11は、幅方向において中央が膨らみ、両端部が最も薄くなっている。説明の便宜上、母材11の幅方向の両端部、つまり、最も薄い部分の板厚を「T1」で示す。また、母材11の幅方向の中央部、つまり、最も厚い部分の板厚を「T6」で示す。なお、母材11の幅方向は、圧延時に用いられるローラの軸方向と同じ方向である。
【0014】
本実施形態では、まず、母材11を適当な大きさに切断する切断工程が行われる。この切断工程では、母材11を、その幅方向の寸法が所定の寸法になるように切断する。本実施形態では、母材11を、その幅方向の中心を基準として2つに切断する。これにより、帯状の加工母材12が2枚得られる。即ち、加工母材12は、母材11の幅方向の寸法を半分にした帯状の電磁鋼板である。従って、加工母材12は、幅方向の一端部の板厚が「T1」となり、幅方向の他端部の板厚が「T6」となる。このように母材11を切断することに得られる加工母材12は、コイル状に巻かれて取り扱われる。
【0015】
次に、この加工母材12から鉄心材3などを打ち抜く打抜き工程が行われる。図示はしないが、この打抜き工程を実行する設備は、コイル状に巻かれた加工母材12がセットされて当該加工母材12を繰り出すアンコイラ、このアンコイラから繰り出される加工母材12の巻き癖を矯正しながら当該加工母材12をプレス機に供給するフィーダ、フィーダによって供給される加工母材12から鉄心材3などをプレスによって打ち抜くためのプレス機などを含む。
【0016】
プレス機は、図示しない打ち抜き用の金型を複数個有している。この金型は、鉄心材3などの打抜き形状に対応した切刃を有する。プレス機は、図示しない回転子鉄心を構成する鉄心材を打ち抜くための回転子鉄心用の複数の金型と固定子鉄心を構成する鉄心材3を打ち抜くための固定子鉄心用の複数の金型を一組の金型群とし、その金型群を、加工母材12の幅方向に沿って3列に配列した構成である。なお、各金型群において、回転子鉄心用の複数の金型と固定子鉄心用の複数の金型は、加工母材12が流れる方向、つまり、加工母材12の長手方向に沿って1列に並べられている。そして、加工母材12の長手方向に沿って並ぶ複数の金型に当該加工母材12が順次送られてプレスされることにより、加工母材12から回転子鉄心用の鉄心材および固定子鉄心用の鉄心材3が順次打ち抜かれる。プレス機は、同形状の3個の金型を加工母材12の幅方向に沿って並べて配置している。そのため、プレス機によるプレス動作により、加工母材12から回転子鉄心用の鉄心材が同時に3個ずつ得られ、また、固定子鉄心用の鉄心材3が同時に3個ずつ得られるようになっている。
【0017】
図3および
図4は、加工母材12から固定子鉄心用の鉄心材3を打ち抜くための金型のレイアウトの一例を示している。なお、これら
図3および
図4において、左側が、打抜き工程において加工母材12が流れる方向の上流側であり、右側が下流側である。即ち、加工母材12は、矢印A方向に流れる。これら
図3および
図4に例示するように、加工母材12のうち固定子鉄心用の鉄心材3が打ち抜かれる部分は、当該加工母材12の幅方向に沿って3列に並んで配列されている。また、プレス機は、加工母材12を順次送りながら、その加工母材12の所定部位を順次打ち抜くことにより、回転子鉄心用の鉄心材および固定子鉄心用の鉄心材3を製造する構成である。そのため、加工母材12から打ち抜かれる回転子鉄心用の鉄心材および固定子鉄心用の鉄心材3は、同じ列において同一形状で打ち抜かれる。なお、加工母材12の幅方向の両端部には、当該加工母材12の送りピッチを整合さえるためのパイロット孔12aが設けられる。また、説明の便宜上、図面中、最も上の列をA列、中央の列をB列、最も下の列をC列と称する。
【0018】
ここで、本実施形態では、材料である加工母材12の歩留まりの向上を図るべく、固定子鉄心用の鉄心材3を打ち抜くための金型のレイアウトに工夫を施している。以下、その内容につき詳細に説明する。
即ち、例えば
図5に示す従来のレイアウトでは、加工母材12の幅方向に沿って並ぶ各列において、固定子鉄心用の鉄心材3が有する複数の突起部4のうち、他の列において加工母材12の長手方向に沿って隣り合う鉄心材3,3の間に延びる突起部4(当該突起部4が打ち抜かれる部分)は、何れの列においても、図中破線で示す加工母材12の幅方向に沿った方向に延びており、加工母材12の幅方向に対して傾いていない。このレイアウトにおいて、加工母材12の歩留まりの向上を図るべく、各列に含まれる固定子鉄心用の鉄心材3(当該鉄心材3が打ち抜かれる部分)の間隔を詰めると、例えば位置P1,P2,P3などにおいて、異なる列に属する鉄心材3の突起部4(当該突起部4が打ち抜かれる部分)が相互に干渉してしまう。
【0019】
そこで、例えば
図6に示すように、各列に含まれる固定子鉄心用の鉄心材3が有する複数の突起部4のうち、他の列において加工母材12の長手方向に沿って隣り合う鉄心材3,3の間に延びる突起部4(当該突起部4が打ち抜かれる部分)を、何れの列においても加工母材12の幅方向に対して所定角度αを有して傾けたレイアウトを検討する。この場合、突起部4(当該突起部4が打ち抜かれる部分)は、加工母材12が流れる矢印A方向とは逆方向に向かって傾いている。この場合においても、例えば位置P4,P5などにおいて、異なる列に属する鉄心材3の突起部4(当該突起部4が打ち抜かれる部分)が相互に干渉してしまう。
【0020】
そこで、例えば
図3あるいは
図4に示すレイアウトを検討する。これら
図3あるいは
図4に例示するレイアウトは、3列のうち何れか2つの列に含まれる固定子鉄心用の鉄心材3が有する複数の突起部4のうち、他の列において加工母材12の長手方向に沿って隣り合う鉄心材3,3の間に延びる突起部4(当該突起部4が打ち抜かれる部分)を、何れも加工母材12の幅方向に対して所定角度αを有して傾け、且つ、残りの1列に含まれる固定子鉄心用の鉄心材3が有する複数の突起部4のうち、他の列において加工母材12の長手方向に沿って隣り合う鉄心材3,3の間に延びる突起部4(当該突起部4が打ち抜かれる部分)を、加工母材12の幅方向に対して所定角度αとは異なる所定角度βを有して傾けたレイアウトである。なお、所定角度αは第1角度の一例であり、所定角度βは第2角度の一例である。
【0021】
例えば
図3に示すレイアウトでは、加工母材12の幅方向の両端側で並ぶ2つの列、即ち、A列およびC列に含まれる固定子鉄心用の鉄心材3が有する複数の突起部4のうち、他の列、この場合、隣の列であるB列において加工母材12の長手方向に沿って隣り合う鉄心材3,3の間に延びる突起部4(当該突起部4が打ち抜かれる部分)が、何れも加工母材12の幅方向に対して所定角度αを有して傾いている。この場合、所定角度αとして「5°」が設定されている。且つ、加工母材12の幅方向の中心で並ぶ1つの列、即ち、B列に含まれる固定子鉄心用の鉄心材3が有する複数の突起部4のうち、他の列、この場合、C列において加工母材12の長手方向に沿って隣り合う鉄心材3,3の間に延びる突起部4(当該突起部4が打ち抜かれる部分)が、加工母材12の幅方向に対して所定角度βを有して傾いている。この場合、所定角度βとして「6°」が設定されている。このレイアウトによれば、異なる列に属する鉄心材3(当該鉄心材3が打ち抜かれる部分)が相互に干渉してしまう部位あるいは極度に近接してしまう位置が存在せず、従って、材料である加工母材12の歩留まりを格段に向上することができる。
【0022】
また、例えば
図4に示すレイアウトでは、加工母材12の幅方向の両端側で並ぶ2つの列、即ち、A列およびC列に含まれる固定子鉄心用の鉄心材3が有する複数の突起部4のうち、他の列、この場合、隣の列であるB列において加工母材12の長手方向に沿って隣り合う鉄心材3,3の間に延びる突起部4(当該突起部4が打ち抜かれる部分)が、何れも加工母材12の幅方向に対して所定角度αを有して傾いている。この場合、所定角度αとして「5°」が設定されている。且つ、加工母材12の幅方向の中心で並ぶ1つの列、即ち、B列に含まれる固定子鉄心用の鉄心材3が有する複数の突起部4のうち、他の列、この場合、C列において加工母材12の長手方向に沿って隣り合う鉄心材3,3の間に延びる突起部4(当該突起部4が打ち抜かれる部分)が、加工母材12の幅方向に対して所定角度βを有して傾いている。この場合、所定角度βとして「7°」が設定されている。このレイアウトによれば、例えば位置P6,P7において、A列に属する鉄心材3(当該鉄心材3が打ち抜かれる部分)とA列とは異なるB列に属する鉄心材3の突起部4(当該突起部4が打ち抜かれる部分)とが近接するものの、異なる列に属する鉄心材3(当該鉄心材3が打ち抜かれる部分)が相互に干渉してしまう部位が存在せず、従って、材料である加工母材12の歩留まりを格段に向上することができる。
【0023】
次に、打ち抜き工程において上記の
図3あるいは
図4に例示したレイアウトによって打ち抜かれた鉄心材3を多数枚積層する積層工程について説明する。例えば
図7(a)に示すように、加工母材12は板厚偏差を有する。従って、例えば
図7(b)に示すように、A列,B列,C列からそれぞれ打ち抜かれる鉄心材3の板厚は、その鉄心材3が打ち抜かれた列によって異なってくる。そのため、例えば
図7(c)に示すように、各列で打ち抜かれた鉄心材3を積層すると、A列から打ち抜かれた鉄心材3Aのみを積層した場合の鉄心材ブロックの厚さと、B列から打ち抜かれた鉄心材3Bのみを積層した場合の鉄心材ブロックの厚さと、C列から打ち抜かれた鉄心材3Cのみを積層した場合の鉄心材ブロックの厚さとが異なってしまう。
【0024】
そこで、本実施形態では、積層工程においては、例えば
図7(d)に示すように、A列,B列,C列の各列から打ち抜かれた鉄心材3A,3B,3Cを組み合わせて積層し、これにより、鉄心材ブロックを形成する。この場合、好ましくは、A列から打ち抜かれた鉄心材3Aの枚数と、B列から打ち抜かれた鉄心材3Bの枚数と、B列から打ち抜かれた鉄心材3Bの枚数とを同数とするとよい。このような積層工程によれば、鉄心材3の積層枚数を同一としつつ、製造される鉄心材ブロックの厚さを均一にすることができ、ひいては、この鉄心材ブロックが多数個積層されることにより製造される固定子鉄心の厚さも均一にすることができる。
【0025】
本実施形態に係る固定子鉄心の製造方法によれば、外周部から径方向外側に突出する連結用の突起部4を複数個有する鉄心材3を帯状の加工母材12から打ち抜く打抜き工程において、加工母材12のうち鉄心材3が打ち抜かれる部分は、当該加工母材12の幅方向に沿って3列に並んで配列されており、その3列のうち何れか2つの列に含まれる鉄心材3の突起部4が打ち抜かれる部分は、何れも加工母材12の幅方向に対して所定角度αを有して傾いており、残りの1列に含まれる鉄心材3の突起部4が打ち抜かれる部分は、加工母材12の幅方向に対して所定角度αとは異なる所定角度βを有して傾いている。
【0026】
そして、本実施形態では、加工母材12の幅方向の両端側で並ぶ2つの列に含まれる鉄心材3の突起部4が打ち抜かれる部分が、何れも加工母材12の幅方向に対して所定角度αを有して傾いている。この製造方法によれば、加工母材12において各列の鉄心材3が打ち抜かれる部分を相互に適度な間隔を確保しつつ極力近付けることができる。よって、加工母材12の面積に占める鉄心材3の打ち抜き部分の面積を大きくでき、鉄心材3の打ち抜き後に残る残材の量を少なくすることができる。従って、材料である加工母材12の歩留まりを格段に向上することができる。
【0027】
(第2実施形態)
本実施形態も、材料である加工母材12の歩留まりの向上を図るべく、固定子鉄心用の鉄心材3を打ち抜くための金型のレイアウトに工夫を施している。以下、その内容につき詳細に説明する。例えば
図8あるいは
図9に示すレイアウトも、3列のうち何れか2つの列に含まれる固定子鉄心用の鉄心材3が有する複数の突起部4のうち、他の列において加工母材12の長手方向に沿って隣り合う鉄心材3,3の間に延びる突起部4(当該突起部4が打ち抜かれる部分)を、何れも加工母材12の幅方向に対して所定角度αを有して傾け、且つ、残りの1列に含まれる固定子鉄心用の鉄心材3が有する複数の突起部4のうち、他の列において加工母材12の長手方向に沿って隣り合う鉄心材3,3の間に延びる突起部4(当該突起部4が打ち抜かれる部分)を、加工母材12の幅方向に対して所定角度αとは異なる所定角度βを有して傾けたレイアウトである。
【0028】
例えば
図8に示すレイアウトでは、加工母材12の幅方向の一端側で並ぶ1つの列、この場合、C列に含まれる固定子鉄心用の鉄心材3が有する複数の突起部4のうち、他の列、この場合、隣の列であるB列において加工母材12の長手方向に沿って隣り合う鉄心材3,3の間に延びる突起部4(当該突起部4が打ち抜かれる部分)が、何れも加工母材12の幅方向に対して所定角度αを有して傾いている。また、加工母材12の幅方向の中心で並ぶ1つの列、この場合、B列に含まれる固定子鉄心用の鉄心材3が有する複数の突起部4のうち、他の列、この場合、C列において加工母材12の長手方向に沿って隣り合う鉄心材3,3の間に延びる突起部4(当該突起部4が打ち抜かれる部分)が、何れも加工母材12の幅方向に対して所定角度αを有して傾いている。この場合、C列およびB列の何れも、所定角度αとして「5°」が設定されている。
【0029】
且つ、加工母材12の幅方向の他端側で並ぶ1つの列、この場合、A列に含まれる固定子鉄心用の鉄心材3が有する複数の突起部4のうち、他の列、この場合、隣の列であるB列において加工母材12の長手方向に沿って隣り合う鉄心材3,3の間に延びる突起部4(当該突起部4が打ち抜かれる部分)が、加工母材12の幅方向に対して所定角度βを有して傾いている。この場合、所定角度βとして「6°」が設定されている。このレイアウトによれば、例えば位置P21,P22において、A列に属する鉄心材3の突起部4(当該突起部4が打ち抜かれる部分)とA列とは異なるB列に属する鉄心材3の突起部4(当該突起部4が打ち抜かれる部分)とが近接するものの、異なる列に属する鉄心材3(当該鉄心材3が打ち抜かれる部分)が相互に干渉してしまう部位あるいは極度に近接してしまう位置が存在せず、従って、材料である加工母材12の歩留まりを格段に向上することができる。
【0030】
また、例えば
図9に示すレイアウトでは、加工母材12の幅方向の一端側で並ぶ1つの列、この場合、C列に含まれる固定子鉄心用の鉄心材3が有する複数の突起部4のうち、他の列、この場合、隣の列であるB列において加工母材12の長手方向に沿って隣り合う鉄心材3,3の間に延びる突起部4(当該突起部4が打ち抜かれる部分)が、何れも加工母材12の幅方向に対して所定角度αを有して傾いている。また、加工母材12の幅方向の中心で並ぶ1つの列、この場合、B列に含まれる固定子鉄心用の鉄心材3が有する複数の突起部4のうち、他の列、この場合、C列において加工母材12の長手方向に沿って隣り合う鉄心材3,3の間に延びる突起部4(当該突起部4が打ち抜かれる部分)が、何れも加工母材12の幅方向に対して所定角度αを有して傾いている。この場合、C列およびB列の何れも、所定角度αとして「5°」が設定されている。
【0031】
且つ、加工母材12の幅方向の他端側で並ぶ1つの列、この場合、A列に含まれる固定子鉄心用の鉄心材3が有する複数の突起部4のうち、他の列、この場合、隣の列であるB列において加工母材12の長手方向に沿って隣り合う鉄心材3,3の間に延びる突起部4(当該突起部4が打ち抜かれる部分)が、加工母材12の幅方向に対して所定角度βを有して傾いている。この場合、所定角度βとして「8°」が設定されている。このレイアウトによれば、例えば位置P23,P24において、A列に属する鉄心材3の突起部4(当該突起部4が打ち抜かれる部分)とA列とは異なるB列に属する鉄心材3の突起部4(当該突起部4が打ち抜かれる部分)とが近接するものの、異なる列に属する鉄心材3(当該鉄心材3が打ち抜かれる部分)が相互に干渉してしまう部位あるいは極度に近接してしまう位置が存在せず、従って、材料である加工母材12の歩留まりを格段に向上することができる。
【0032】
本実施形態に係る固定子鉄心の製造方法によれば、外周部から径方向外側に突出する連結用の突起部4を複数個有する鉄心材3を帯状の加工母材12から打ち抜く打抜き工程において、加工母材12のうち鉄心材3が打ち抜かれる部分は、当該加工母材12の幅方向に沿って3列に並んで配列されており、その3列のうち何れか2つの列に含まれる鉄心材3の突起部4が打ち抜かれる部分は、何れも加工母材12の幅方向に対して所定角度αを有して傾いており、残りの1列に含まれる鉄心材3の突起部4が打ち抜かれる部分は、加工母材12の幅方向に対して所定角度αとは異なる所定角度βを有して傾いている。
【0033】
そして、本実施形態では、加工母材12の幅方向の一端側で並ぶ1つの列および加工母材12の幅方向の中心で並ぶ1つの列に含まれる鉄心材3の突起部4が打ち抜かれる部分が、何れも加工母材12の幅方向に対して所定角度αを有して傾いている。この製造方法によれば、加工母材12において各列の鉄心材3が打ち抜かれる部分を相互に適度な間隔を確保しつつ極力近付けることができる。よって、加工母材12の面積に占める鉄心材3の打ち抜き部分の面積を大きくでき、鉄心材3の打ち抜き後に残る残材の量を少なくすることができる。従って、材料である加工母材12の歩留まりを格段に向上することができる。
また、第2実施形態により得られた鉄心材3を積層する場合も、第1実施形態で示した積層方法を採用するとよい。
【0034】
なお、本実施形態は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、例えば次のように変形または拡張することができる。
即ち、上述の各実施形態において、第1角度の一例である所定角度αは、例えば「5°」から「8°」の範囲のうち何れかの角度で適宜調整して設定するとよい。また、第2角度の一例である所定角度βも、例えば「5°」から「8°」の範囲のうち所定角度αとは異なる何れかの角度で適宜調整して設定するとよい。また、加工母材12において突起部4(当該突起部4が打ち抜かれる部分)は、加工母材12が流れる矢印A方向に向かって傾けてもよい。また、鉄心材3が有する突起部4の数は、3つに限られるものではなく、例えば2つ、4つ、あるいは、4つ以上であってもよい。
【0035】
また、異なる列に属する鉄心材3(当該鉄心材3が打ち抜かれる部分)の間隔、つまり、打ち抜き後に残る材料(残材)の幅は、最も狭い箇所において、加工母材12の板厚の概ね5〜10倍程度の寸法が確保できるように設定するとよい。これにより、加工母材12から鉄心材3が打ち抜かれた後に残る残材において、鉄心材3が打ち抜かれた部分以外の部分が繋がって残るようになる。即ち、残材が相互に繋がって一体となっているため、例えば加工母材12および残材を下流側から矢印A方向に引っ張ることにより、加工母材12および残材のたるみを極力なくすことができ、加工母材12および残材の矢印A方向への送りを容易に行うことができる。
【0036】
以上に説明した本実施形態に係る固定子鉄心の製造方法は、外周部から径方向外側に突出する連結用の突起部を複数個有する鉄心材を帯状の電磁鋼板から打ち抜く打抜き工程において、前記電磁鋼板のうち前記鉄心材が打ち抜かれる部分は、当該電磁鋼板の幅方向に沿って3列に並んで配列されており、その3列のうち何れか2つの列に含まれる前記鉄心材の前記突起部が打ち抜かれる部分は、何れも前記電磁鋼板の幅方向に対して第1角度を有して傾いており、残りの1列に含まれる前記鉄心材の前記突起部が打ち抜かれる部分は、前記電磁鋼板の幅方向に対して前記第1角度とは異なる第2角度を有して傾いている。この製造方法によれば、電磁鋼板において各列の鉄心材が打ち抜かれる部分を相互に適度な間隔を確保しつつ極力近付けることができ、材料である電磁鋼板の歩留まりを格段に向上することができる。
【0037】
なお、本実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。本実施形態およびその変形は、発明の範囲および要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。