特許第6163103号(P6163103)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6163103溶融はんだをPCBの下面へと届けるためのはんだ付けノズル、はんだノズルのディウェッティングの発生の程度を軽減する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6163103
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】溶融はんだをPCBの下面へと届けるためのはんだ付けノズル、はんだノズルのディウェッティングの発生の程度を軽減する方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/34 20060101AFI20170703BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
   H05K3/34 505A
   B05C5/00 101
【請求項の数】10
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-526544(P2013-526544)
(86)(22)【出願日】2011年9月1日
(65)【公表番号】特表2013-536994(P2013-536994A)
(43)【公表日】2013年9月26日
(86)【国際出願番号】GB2011001289
(87)【国際公開番号】WO2012028852
(87)【国際公開日】20120308
【審査請求日】2014年8月12日
【審判番号】不服2016-6798(P2016-6798/J1)
【審判請求日】2016年5月9日
(31)【優先権主張番号】1014557.1
(32)【優先日】2010年9月1日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】591250226
【氏名又は名称】ピラーハウス・インターナショナル・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100118625
【弁理士】
【氏名又は名称】大畠 康
(74)【代理人】
【識別番号】100183232
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 敏行
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー・ジェイムズ・シニグリオ
【合議体】
【審判長】 中村 達之
【審判官】 中川 隆司
【審判官】 小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/138310(WO,A2)
【文献】 実開昭63−127763(JP,U)
【文献】 国際公開第2010/073739(WO,A1)
【文献】 特許第2578602(JP,B2)
【文献】 特開2010−274286(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K3/34,B05C5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PCBの下面へと溶融はんだを届けるためのはんだ付けノズルであって、
1.5〜2.5mmの内側幅寸法を有するノズル出口と、
溶融はんだの流れを上記ノズル出口からあふれさせるべく送ることができる内腔と、
溶融はんだの戻りの流れを支持するように構成された外面と
を備え、
上記ノズルの外面が、はんだの戻りの流れの少なくとも一部を受け入れるために上記ノズル出口の少なくとも一部分の周囲に配置された溝状または凹状の造作を備え、
上記溝状または凹状の造作と上記ノズル出口との間に、1〜4mmの間の範囲にあり、かつ、上記溝状または凹状の造作の幅以上の、上記ノズルの軸方向で測定された距離が設けられており、
上記溝状または凹状の造作が、環状溝であり、
上記環状溝が、0.1〜0.5mmの間の範囲の深さと、0.5〜2mmの間の範囲の幅とを有している、
ことを特徴とするノズル。
【請求項2】
請求項1に記載のノズルにおいて、
ノズル軸を定める軸対称な形状を有していることを特徴とするノズル。
【請求項3】
請求項1または2に記載のノズルにおいて、
上記内腔と上記ノズルとが、同軸であることを特徴とするノズル。
【請求項4】
請求項1からの何れか一つに記載のノズルにおいて、
上記溝状または凹状の造作が、上記ノズル出口の全周を巡って延びていることを特徴とするノズル。
【請求項5】
請求項1からの何れか一つに記載のノズルにおいて、
上記溝状または凹状の造作が、使用時に、水平方向に延びていることを特徴とするノズル。
【請求項6】
請求項1に記載のノズルにおいて、
上記環状溝が、矩形の深さ形状を有していることを特徴とするノズル。
【請求項7】
請求項1からの何れか一つに記載のノズルにおいて、
上記環状溝および上記ノズル出口が、両者の間の或る距離を定めており、上記距離が、ノズルの軸方向に測定して、1〜4mmの間の範囲にあることを特徴とするノズル。
【請求項8】
請求項1からの何れか一つに記載のノズルにおいて、
上記溝状または凹状の造作に隣接して位置するさらなる溝状または凹状の造作を備えていることを特徴とするノズル。
【請求項9】
請求項に記載のノズルにおいて、
上記溝状または凹状の造作が第1の溝であり、上記さらなる溝状または凹状の造作が第2の溝であり、上記第2の溝が、上記第1の溝と比べて同様のアスペクト比を有していることを特徴とするノズル。
【請求項10】
請求項に記載のノズルにおいて、
上記第1の溝および上記第2の溝が、ノズルの軸方向における溝間隔距離を定めており、上記溝間隔距離が、それぞれの溝の中央から測定して1〜5mmの間の範囲にあることを特徴とするノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融はんだを届けるためのノズルに関する。特に、本発明は、溶融はんだの流れをプリント基板(PCB)などへと届けるためのノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
PCBは、非導電性の基板上に位置する導電性の電路によって電子部品を支持および電気的に接続するために使用される。電子部品が、基板へとはんだ付けされる。PCBは、多くの場合に、ロボットまたは他の自動機械を使用する自動化されたプロセスによって処理される。
【0003】
PCBを、部品のはんだ付けを下面から実行できるように設計することができる。PCBの部品を下面からはんだ付けする1つの方法は、はんだ付けノズルの先端または上部開口から流れる「バブル(bubble)」の形状の溶融はんだの流れをもたらし、PCBの下方へと降りる部品の末端をバブルへと通してはんだ付けする(あるいは、このはんだ付けを行なうためにバブルを末端へと移動させる)方法である。高温の液状の連続するはんだが、ノズルの出口から上方へと流出し、はんだ付けすべき末端がはんだを適用すべく沈められるバブルを形成する。なお、このことは、典型的には、端子とPCBの電路との間の良好なはんだ接続を促進するフラックス処理の後に実行される。
【0004】
バブルが高温の液状のはんだの流れから形成されるため、このはんだの流れが、先端または上部出口を出るときにバブルを形成した後で、ノズルの外面に沿ってはんだリザーバまたははんだ供給タンクへと重力によって戻ることができるように、先端または出口の外側を流れ下る。しかしながら、溶融はんだの戻りの流れは、好ましくはノズルの表面が濡らされているがゆえにノズルの外面の全体に広がり、ノズルは、典型的には比較的純粋な鉄材料で形成され、この濡れ効果を可能にし、促進し、強調するために、表面がすずめっきされている。したがって、はんだは、ノズルの外側に液体はんだの薄い膜を形成し、これが、ノズルのこの外面を(少なくとも視覚的には)実質的に非乱流の様相で流れ下る。
【0005】
このはんだ付け方法は、いずれの時点においてもバブルでPCBの単一の領域をはんだ付けするためのスポット方式のはんだ付けまたは単点のはんだ付けをもたらす。複数のノズルを使用する帯状バブルまたは多点バブルも知られている。
【0006】
この技術による末端のはんだ付けは、高温の液状のはんだがはんだ付けのために末端へとほぼ瞬時に付着するため、通常は非常に高速である。次いで、はんだ付けノズルを、はんだ付けすべき次の地点または領域に達するようにX−Y平面において(おそらくは、PCBそのものが持ち上げられない限りにおいて、Z平面においても)移動させることができる。
【0007】
はんだ付けノズルの軌跡、各々の位置において費やす時間、およびはんだ付けノズルの位置合わせが、ソフトウェア制御のロボットまたは他の自動機械によって数値的に制御することができるパラメータの例である。上述の動作をより高い速度ならびにより高い精度および効率にて実行できることに、産業における強い関心が存在する。しかしながら、この形式のはんだ付けノズルが、高い速度または頻繁な加速にて移動させられる場合、ノズルの「はんだはじき(ディウェッティング(dewetting)」の程度が増す可能性がある。
【0008】
ディウェッティングは、ノズルの一部分においてはんだの戻りの膜の流れが不完全になることによって発生し、あるいは顕著になり、すなわちはんだの流れの外観が乱流となる場所において発生し、あるいは顕著になる。ディウェッティングを、液体−固体の界面における液体の滴の形成によって特徴付けることができ、あるいは、はんだの流れに対し不均一または滑らかでなくなるなどの、ノズルからの流れの劣化によって特徴付けることができる。このように、ノズルのディウェッティングは、ノズルの外面に沿った戻りの溶融はんだの膜に非対称な流れを生じさせる可能性があり、はんだバブルの一様性/対称性を維持する流体力学的な平衡に不釣り合いを生じさせる可能性がある。例えば、そのような不釣り合いは、ノズルの出口においてはんだのバブルがノズルの出口の中央に対して水平方向にずれることによって証明される。
【0009】
バブルの水平方向のずれは、一般に、予測不可能であり、あるいは望ましくない。これは、はんだのバブルが安定な(典型的には、中央の)位置から離れるように動的に移動する場合、はんだ付けのプロセスに不正確さが持ち込まれる可能性があり、末端がバブルから外れ、あるいはバブルに不完全にしか埋もれない可能性があるからである。結果として、このような不正確さが、とりわけはんだ付けプロセスが自動的かつ高速に実行される(したがって、手動での検査が周期的にしか実行されない)場合に、PCBへの部品のはんだ付けの精度を大いに損なう可能性がある。
【0010】
さらに、ディウェッティングされた先端は、流れが滑らかでなくなるため、より多くのドロス(dross)、すなわちはんだの酸化を生じさせる傾向にある。これも、ドロスの蓄積がドロスの除去または清掃のための設備の非稼働時間につながる可能性があるため、非常に望ましくない。
【0011】
したがって、はんだ付け装置のノズルにおけるバブルの安定性を向上させることが、望ましいと考えられる。
【0012】
さらに、PCBは、(電子部品による)集団の設計および仕組みにおいてどんどん複雑になってきており、ますます小さくなる部品が非常に高密度で配置されることが多く、電子部品が小さくなり続けているため、理論的には、単位空間により多くの電子部品が収容される可能性がある。したがって、はんだ付けの流れのバブルまたはスポットのサイズを小さくしようとする産業における強い動機も存在する。これは、原理的には、はんだ付けノズルの先端の直径を縮小することによって達成できるが、これは、最終的に、ノズルの故障またはバブルの破壊を引き起こす。これは、「凍結(freezing)」、過度の「ボブリング(bobbling)」(ノズルの移動/加速の際にバブルが不安定/不規則になる)、または「ジェッティング(jetting)」などといった現象の形で直面されうる。これらは、通常は、はんだにおける環境熱損失、はんだ、ノズル、または末端の所与の熱容量、ならびに溶融はんだの流れの所与の流体力学的特性ゆえに、必要とされるノズルの温度を、所望のバブルを生成するために必要な流量において、維持することができないがゆえに生じる。結果として、利用可能なはんだ付け用の先端のサイズが、PCBおよびPCBの部品による集団の設計において、制限因子となる可能性がある。
【0013】
現時点において、有効に働くことができる2.5mmまでのノズルが生み出されているが、これよりも小さいいずれのノズルも、所望のバブル生成機能を果たすことができない。
【0014】
「凍結」は、通常はノズルの出口における溶融はんだの温度の低下に起因するはんだの流れの凝固として現れ、(例えば、末端とはんだバブルとの間の温度差などに起因する)バブルにおけるはんだの温度低下から生じることが多いはんだ付けノズルの完全または部分的な閉塞の結果である。このように、凍結は、典型的にははんだの流れの中断につながり、あるいは不適切な末端のはんだ付けにつながることが必定であり、その可能性が、はんだ付けが高速で実行され、すなわちノズルの先端またはノズルの先端に位置するはんだの温度に末端の間での安定化の機会が与えられない場合に高くなる。
【0015】
PCB基板または末端を予熱するなど、凍結を減らすための方法が考案されているが、PCBまたは末端あるいは電子部品を傷めることなく、どの程度、どのくらい長く、PCBまたは末端を加熱できるかに関して、限界が存在する。さらに、予熱は、末端に命中する前のノズルにおけるはんだの凝固を防止できないと考えられる。
【0016】
「ボブリング」は、ノズルから出る溶融はんだの不安定性または不規則性の結果であり、ノズルの先端における溶融はんだのバブルの弾力性の挙動を特徴とする。或る程度のボブリングは、はんだのバブルを使用するほぼすべてのスポットはんだ付けの応用において、とりわけはんだ付けノズルがX、Y、またはZ平面のいずれかに対して(すなわち、X−Y平面に位置するPCBに対して)移動/加速する場合に、一般的に直面される。しかしながら、ノズルの寸法が細くされるとき、同じボブリングの程度(例えば、1mmの移動)でもボブルのサイズに対するボブリングの程度が大きくなるため、ボブリングの影響がより問題になる可能性がある。ノズルの所与の移動/加速に応答して生じるボブリングの程度を軽減する試みは、これまでになされておらず、これへの対処を試みようとするよりもむしろ、典型的には末端のはんだ付けの際にノズルを高速では移動させないようにし、あるいは強く加速させることがないようにしている。あるいは、バブルに安定化の機会を与えるために、移動/加速に続いて、末端をバブルに浸す前に、瞬間的な一時停止を使用することができる。
【0017】
「ジェッティング」は、はんだの流れがノズルの外面の少なくとも一部分から離れ、所定のバブルの形成を妨げる場合であり、はんだの流速が高すぎ、あるいははんだの表面張力が所与のノズル出口にとって過度である場合に典型的に生じる。したがって、ジェッティングは、より狭いノズル出口が設けられる場合に、回避がより困難になる。
【0018】
ジェッティングは有用な応用を有しているが、バブルにもとづく浸漬はんだ付けプロセスが必要とされる場合においては望ましくない。
【0019】
したがって、これまでのところ、狭いノズル出口によってもたらされる利点が、凍結、バブリング、またはジェッティングの程度が大きくなることによって引き起こされる欠点によって最終的に相殺されてしまうことを、理解できるであろう。したがって、より高いはんだ付けの精度を、はんだノズルの出口を細くするだけでは、常には達成できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は、上述の問題のうちの少なくとも1つを取り除き、あるいは少なくとも軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の第1の態様によれば、PCBの下面へと溶融はんだを届けるためのはんだ付けノズルであって、ノズル出口と、溶融はんだの流れを上記ノズル出口からあふれさせるべく送ることができる内腔と、溶融はんだの戻りの流れを支持するように構成された外面とを備えており、上記外面が、はんだの戻りの流れの少なくとも一部を受け入れるために上記ノズル出口の少なくとも一部分の周囲に配置された溝状または凹状の造作を備えているノズルが提供される。
【0022】
溝状または凹状の造作が、はんだの戻りの流れの一部を溝状または凹状の造作へと引き込まれるように促し、ノズル出口からあふれる溶融はんだの流れを安定化させる。
【0023】
好ましくは、ノズルが、出口からの溶融はんだのあふれの挙動がノズルの移動方向とは無関係であるよう、ノズル軸を定める軸対称な形状を有する。
【0024】
好ましくは、ノズルが鉄で形成される。好ましくは、その外面がすずめっきされる。
【0025】
ノズルは、実質的に鐘状の形状を有してよい。これは、溶融はんだの戻りの流れを穏やかに受け入れることを可能にする。
【0026】
ノズル出口は、ノズルの上部またはその先端に位置してよい。
【0027】
好ましくは、ノズルが、出口からの溶融はんだの流れが、出口からノズルの周囲のあらゆる方向に等しく流れ落ちることができるように構成される。
【0028】
好ましくは、内腔の軸とノズルの軸とが実質的に同軸である。
【0029】
溝状または凹状の造作は、好ましくは、溶融はんだの戻りの流れを出口/先端の少なくともその部分において促すことによって、バブルの安定化を補助し、したがってノズル出口からの溶融はんだの安定な流れの達成によりよく貢献できるよう、ノズル出口の少なくとも一部分の周囲またはノズルの先端の少なくとも一部分の周囲を延びる。
【0030】
溝状または凹状の造作は、ノズルの外面に対して接線方向に延びてよい。
【0031】
溝状または凹状の造作は、ノズルの外面の少なくとも一部分の周囲または周囲全体を真っ直ぐに延びてよい。
【0032】
一実施の形態においては、溝状または凹状の造作が、出口の全周または先端の全周を巡って延びてよい。これは、その機能をさらに改善することができ、ノズルを、はんだ付けノズルを多数の異なる方向に移動させることを必要とする用途によりよく適するようにすることができる。
【0033】
溝状または凹状の造作は、好ましくは、戻りの流れがあらゆる方向において実質的に同時に溝状または凹状の造作にぶつかるよう、使用時に実質的に水平方向に延びる。
【0034】
一実施の形態においては、溝状または凹状の造作が溝であり、好ましくは環状溝である。そのような溝は、ノズルへと単純に機械加工することが可能である。
【0035】
溝またはスロットまたは凹所の造作が、ノズルの表面の全体が溶融はんだで覆われるように促し、それは、先端の周囲のはんだの浸透によることが可能であり、溝、スロット、または凹所への戻りの流れの毛管流によることが可能であり、あるいは溝、スロット、または凹所による溶融はんだの引き込み/引きずりによることが可能である。
【0036】
溝、スロット、または凹所の幅、形状、または深さが、バブル安定化効果の達成において重要となりうる。溝は、丸みを帯びた縁または角張った断面を有してよい。同様に、溝、スロット、または凹所を、2つの外側へと突き出す尾根を形成することによって形成してよい。結果として、溝、スロット、または凹所が、これらの尾根の間に位置する。
【0037】
溝は、好ましくは比較的浅い深さを有する。これは、それ自身が低温になりかねないはんだの大きなプールの発生を防止するうえで役に立つ。
【0038】
溝は、好ましくは、フライス盤または旋盤を使用して容易に形成することができるおおむね矩形の深さ形状を有する。へりの角または底の角あるいは両方に、丸みを帯びた角を有することができる。
【0039】
好ましくは、スロット、溝、または凹所が、0.1〜0.5mmの間の範囲の深さを有する。
【0040】
好ましくは、スロット、凹所、または溝が、0.5〜1.5mmの間の範囲の幅を有する。
【0041】
好ましくは、スロット、凹所、または溝について、出口またはノズルの自由端との距離(溝の中央から測定される)が、軸方向に測定して1〜4mmの間、または少なくともスロット、凹所、または溝の幅、あるいはより好ましくはスロット、凹所、または溝の幅の少なくとも2倍であり、しかしながら好ましくは5倍以下、より好ましくは4倍以下、最も好ましくは3倍以下である。
【0042】
好ましくは、ノズルが、少なくとも1つのさらなる(または、第2の)スロット、凹所、または溝を備える。これは、好ましくは、第1のスロット、凹所、または溝よりもさらにノズルの自由端から離れて位置する。好ましくは、これらが互いに隣接し、おそらくは1〜3mmの幅の島状部によって隔てられ、あるいは中心間の間隔が2mm〜5mmの間である。さらなるスロット、凹所、または溝は、流れるはんだの安定化の特性をさらに改善することができる。
【0043】
さらなる溝は、好ましくは、上方の溝と比べて実質的に同様のアスペクト比を有する。これは、両方を同じ方法で形成することを可能にする。しかしながら、より深く、あるいはより浅く、より幅広く、あるいはより狭い第2の溝を使用することも可能である。
【0044】
好ましくは、さらなる溝および第1の溝が、ノズルまたは出口の軸方向における溝間隔距離を定めており、この溝間隔距離が、溝の中央から1〜4mmの間の範囲にある。この配置によれば、溝が、溶融はんだの戻りの流れについて複合の引っ張り作用を果たすように協働することができる。
【0045】
本発明の第2の態様によれば、PCBの下面へと溶融はんだを届けるためのはんだ付けノズルであって、ノズル出口と、積み重ねることができる第1および第2の部分とを備えており、上記第1および第2の部分が、使用時に溶融はんだを上記ノズル出口からあふれさせるべく上記第1および第2の部分を通って送ることができるように流体に関して接続されるように構成されているノズルが提供される。好ましくは、積み重ねることができる2つの部分の外面が、はんだを流すことができるようにすずめっきされる。好ましくは、ノズルが、はんだが出口からあふれ出すときにはんだバブルをもたらす。
【0046】
ノズルは、本発明の第1の態様のノズルの造作のいずれかを備えてよい。
【0047】
本発明の第2の態様のノズルは、2つの部分からなる構成であることで、2つの部分を互いに別々にすることができ、各々の部分を必要な場合に交換または置換することができる。
【0048】
好ましくは、ノズルが、余分な溶融はんだを放出するようにも構成される。好ましくは、上記積み重ねることができる第1および第2の部分の一方または両方が、余分な溶融はんだを放出できる1つまたは複数の開口を定める。余分な溶融はんだの放出を、出口だけを通過する場合よりも多くのはんだの流れをノズルに通すことができるようにするために使用することができる。これは、はんだがノズルの先端において凍結する傾向を増すことなく、ノズルの先端をより小さくすることを可能にできる。これは、はんだの流れを増やすことで、より多くの熱量をノズルの先端または先端付近に循環させることができるからである。
【0049】
好ましくは、積み重ねることができる第1および第2の部分が、間に1つまたは複数の開口を定めるように協働する。これは、余分な流れのための開口をもたらす非常に容易な方法をもたらす。例えば、一方の部分に位置するスロットが、それらの開口を形成してよい。好ましい構成においては、4つの開口が存在し、すなわち4つのスロットが存在する。
【0050】
好ましくは、積み重ねることができる部分が、ひとたび積み重ねられたならば、使用時に分離しないように一体に保持される。
【0051】
積み重ねることができる部分を、それらの間の締まりばめによって一体に保持されるように構成してよい。しかしながら、例えば螺合など、別の方法も可能である。あるいは、積み重ねることができる部分を、例えばバヨネット取り付けなど、一方を他方へと噛み合わせることができるように形成することができる。
【0052】
好ましくは、ノズルが軸対称な形状を有し、回転の中心がノズルの軸である。これは、ノズルをX−Y平面内のあらゆる方向について機能できるようにし、すなわちPCBの下方における移動の方向にかかわらずに機能できるようにする。
【0053】
好ましくは、積み重ねることができる第1および第2の部分の各々が、第1および第2の内腔軸を定める内腔を有する。使用時に、溶融はんだの連続的かつ滑らかな流れをノズル出口から上方へともたらすことができるよう、好ましくは2つの内腔軸が実質的に整列する。
【0054】
好ましくは、内腔軸が、ノズルの中心軸に整列する。
【0055】
好ましくは、積み重ねることができる第1および第2の部分の少なくとも一方が、実質的に鐘状の形状を有する。鐘の形状は、鐘の柄として形成されたノズルを有してよい。
【0056】
代案として、積み重ねることができる第1および第2の部分の少なくとも一方が、フラスコ状または瓶状の形状を有する。
【0057】
好ましくは、積み重ねることができる第1および第2の部分の両方が、それぞれの広い根元および狭い首部を定める形状を有する。好ましくは、一方の部分の根元部分が、他方の部分の狭い首部を覆うように積み重ねられる。好ましくは、上方に重ねられる部分が、他方の部分よりもおおむね小さい態様を有する。しかしながら、好ましくは、上方に重ねられる部分の根元が、他方の部分の首部よりも広い。好ましくは、上方に重ねられる部分の首部が、他方の部分の首部よりも狭い。
【0058】
好ましくは、上方に重ねられる部分の内腔が、他方の部分の内腔よりもおおむね狭い。
【0059】
好ましくは、上方に重ねられる部分の根元が、その下端において他方の部分へと内側に曲がっている。これにより、この根元を流れるはんだが、2つの部分の間に形成された1つまたは複数の開口から出るはんだの流れと、滑らかに混ざり合うことができる。
【0060】
好ましくは、他方の部分が上方に重ねられる方の部分が、城郭造作または叉のある首部を備える。次いで、上方に重ねられる部分の根元または底部が、好ましくは、それらの城郭風造作または叉へと重ねられたときに余分なはんだを流すための開口を定める。
【0061】
本発明の第3の態様によれば、PCBの下面へと溶融はんだを届けるためのノズルであって、ノズル出口およびノズル本体を備えるとともに、溶融はんだの流れを上記ノズル出口からあふれさせるべく送ることができる内腔と、上記ノズル出口を端部に位置させているノズル先端とを有しており、上記ノズル出口が、1.5〜2.5mmの間の内側幅寸法を有しているノズルが提供される。
【0062】
好ましくは、ノズルの根元が、少なくとも15mm、好ましくは15〜25mmの間の外側幅寸法を有する。次いで、好ましくはノズルが、上記根元の上方において側面を巡って1つまたは複数のさらなる開口をさらに有し、ノズルの出口が、この1つまたは複数のさらなる開口の上方に位置し、すなわちノズルの上部に位置する。1つまたは複数のさらなる開口は、溶融はんだの被膜で開口を囲むノズルの外面全体を覆うことができるよう、余分なはんだを側面へと送り出すことを可能にする(小さな上部出口では、はんだバブルとしての流出を維持しながらこのような大きな外面の流動的な被覆を維持するための充分なはんだを流すことができないと考えられる)。
【0063】
好ましくは、出口と、上記開口または各々の開口とが、ほぼ同じ幅寸法を有し、あるいはほぼ同じ溶融はんだの流量容量を有する。
【0064】
好ましくは、上記開口または各々の開口の出口が、上向きの上部出口に対しておおむね下方へと向けられる。
【0065】
好ましくは、複数の開口が存在し、上記開口の各々がノズルの外周を巡って間隔を空けて位置している。好ましくは、ノズルを巡って一様な間隔で位置している。好ましくは、少なくとも3つの出口が存在する。好ましくは、それらの開口のすべてに同様の流量を通すことができるように構成されている。これは、ノズルの外面の全体に実質的に整然とした一様な流れを生じさせるためである。上部の出口を通過する流量は、開口よりも上方のノズルの外面の全体を覆うために充分でなければならない。
【0066】
好ましくは、上記開口または各々の開口の上方のノズルの幅寸法が、6〜13mmの間である。
【0067】
好ましくは、幅寸法が直径であり、ノズルがおおむね円形の断面を有するが、スパナによるはんだ供給ユニットの上部へのノズルの取り付けを容易にするために、平坦部を設けることができる。
【0068】
好ましくは、ノズルの壁が、上記ノズル出口において、上記ノズル出口の全周にわたって0.25〜1mmの間の厚さである。
【0069】
上述のはんだ付けノズルは、すでに述べたノズルの造作のうちの1つまたは複数を備えることができる。
【0070】
本発明のこの態様は、はんだ付け装置の製造者が、出口の凍結または出口からのジェッティングに悩まされることなく、単点はんだ付けの用途のためにより小さな(すなわち、これまでに実現されているよりも小さい)バブル/スポットはんだサイズを達成することを可能にする。さらに、ノズルの外面の全体をはんだの流れで覆うことができ、したがって外面(はんだの流れの中断の場所)からの戻り凍結を減らすことができるとともに、ノズルの外面における不規則な流れの輪郭に起因するドロスの形成を減らすことができる。
【0071】
さらにスロット、凹所、または溝の造作と組み合わせられるとき、ボブリングの傾向も少なくなり、したがってすずめっきの摩耗時に問題となるようなディウェッティングの傾向も少なくなる。
【0072】
ノズルおよび出口は円形であることが好ましいが、代案として正方形、矩形、または楕円形であってもよい。
【0073】
しかしながら、上記開口または各々の開口は、好ましくは実質的に正方形または矩形であり、ノズル内の城郭のフィンガまたは塔の間に形成される。しかしながら、ノズルに形成された一連の丸穴として形成されてもよい。
【0074】
本明細書に記載のとおりのはんだ付けノズルを備えるはんだ付け装置を使用するはんだ付けの方法であって、ノズルの出口からあふれるはんだのバブルを形成することを含む方法も提供される。これまでのノズルは、1.5mm〜2.5mmの間という小さい寸法を有する上部出口において、信頼できるバブルの実現に決して成功していない。
【0075】
本発明の別の態様によれば、はんだ付けノズルの先端のディウェッティングの発生の度合いを軽減する方法であって、既存のノズルの設計を、ノズルの出口の少なくとも一部分またはノズルの出口の少なくとも一部分の周囲において、ノズルの外面にスロットまたは凹所の造作を加えることによって改良することを含む方法が提供される。これは、ノズルの先端から出るノズルの先端の周囲のはんだの流れを安定させることを可能にすることで、ノズルがPCBの下方のはんだ付け位置の間を移動するときのボブリングを少なくし、ノズルの先端のすずめっきの寿命を改善し、ノズルのディウェッティングが発生するまでにより長い時間を要するようにする。
【0076】
本発明の別の態様によれば、はんだ付けノズルを製造する方法であって、ノズル本体を形成するステップと、はんだ出口を有する別途のノズル先端を形成するステップと、上記ノズル先端を上記本体に接続するステップと、少なくともはんだの流れの第2の出口をノズルの側面に形成するステップとを含む方法が提供される。好ましくは、ノズルが、1.5mm〜2.5mmの間の上部はんだ出口寸法を有する。好ましくは、はんだの流れの第2の出口が、2つの部分を一体に接続するときに形成され、最も好ましくはこれら2つの部分の間の境界に形成される。ノズルが、上部はんだ出口にはんだバブルを形成するためのものであり、本方法が、単点はんだ付けの用途のためにより小さなサイズでありながら依然として使用可能であるはんだバブル/はんだ付けスポットの生成を可能にする。
【0077】
これらの方法は、上述のノズルの特徴をさらに利用することができる。
【0078】
次に、本発明のこれらの特徴および他の特徴を、添付の図面を参照してあくまでも例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0079】
図1】本発明の一態様によるはんだ付けノズルの前方からの斜視図である。
図2図1のノズルの側面図であり、寸法の単位はミリメートル(mm)である。
図3図1のノズルの上面図である。
図4図1のノズルの側面図であり、寸法の単位はmmである。
図5図4の断面線A−Aによる図4のノズルの断面図であり、寸法の単位はmmである。
図6図1のノズルの底面図である。
図7図5の線Bによる図5のノズルの先端の一部分の詳細の断面図であり、寸法の単位はmmである。
図8】本発明の一態様によるはんだ付けノズルの第2の実施の形態の前方からの斜視図である。
図9図8のはんだ付けノズルの側面図であり、寸法の単位はmmである。
図10図8のはんだ付けノズルの上面図である。
図11図8のはんだ付けノズルの側面図であり、寸法の単位はmmである。
図12図11からの線C−Cによる図11のはんだ付けノズルの断面図であり、寸法の単位はmmである。
図13図8のはんだ付けノズルの底面図である。
図14図12からの線Dによる図12のはんだ付けノズルの先端の一部分の詳細の断面図であり、寸法の単位はmmである。
図15】本発明の一態様によるはんだ付けノズルの第3の実施の形態の一部品(先端部品)の上面図である。
図16図15からの線E−Eによる図15のはんだ付けノズル部分の断面図であり、寸法および公差の単位はmmである。
図17図16からの線Fによる図16のノズル部分の先端の一部分の詳細の断面図であり、寸法の単位はmmである。
図18】はんだ付けノズルの第3の実施の形態の第2の部分(本体部品)の上面図である。
図19図18のはんだ付けノズル部分の底面図である。
図20図18の部分の側面図であり、寸法の単位はmmである。
図21図20とは別の角度からの図18の部分の側面図であり、この部品の軸対称性を示している。
図22図18からの線Hによる図18の部分の先端の一部分の詳細の上面図であり、寸法および公差の単位はmmである。
図23図18の部分の前方からの斜視図である。
図24図21からの線G−Gによる図21の部分の断面図であり、寸法の単位はmmである。
図25】はんだ付けノズルの第3の実施の形態を形成するように組み立てられた図15および図18の部分の上面図である。
図26図25からの線I−Iによる図25のはんだ付けノズルの断面図である。
図27図25のはんだ付けノズルの前方からの斜視図である。
図28】先端部品の下側における本体部品の城郭の締まりばめを示す図25のはんだ付けノズルの切欠斜視図である。
図29】はんだリザーバへのはんだの制御された戻りの流れをもたらすためのらせんを備えている図25のノズルへと溶融はんだを届けるための装置の前方からの切欠斜視図である。これは、ドロスの形成を少なくするうえで役に立つ。
【発明を実施するための形態】
【0080】
最初に図1図7を参照すると、本発明によるはんだ付けノズル1の第1の実施の形態が示されている。ノズル1が、ノズル1の先端5の周囲に機械加工された単一の環状溝3の形態の凹状または溝状の造作を備えている。そのような凹状または溝状の造作の存在は、ノズル1の機能を改善するが、この改善を以下でさらに詳しく説明する。
【0081】
ノズル出口7が、ノズル1の先端、上端、または遠位端5に位置している。ノズル出口7は、溶融はんだをPCBの下面へとバブルの形態で届けることを可能にし、このバブルへと、PCBの下面から突き出している末端を、ノズルを末端/PCBの下面へと上昇させ、あるいはPCBおよびPCBから突き出している末端をバブルに係合するように下降させることによって浸すことができる。このように、溶融はんだを、電気部品の末端をPCBの電路へとはんだ付けするために適切に届けることができる。
【0082】
高温の溶融はんだのバブルが、ポンプによって生成される圧力によって維持される。
【0083】
効率的なバブルのために、バブルは、出口7から離れることがなく、不規則な流れで滴り落ちることもない圧力で維持されなければならない。なぜならば、これは、或る程度のジェッティングまたは不安定なバブルを引き起こし、したがってPCBの下面へのはんだの送達を不正確にし、不必要な飛沫またはドロスの形成の程度を高める可能性があるからである。むしろ、バブルのジェットは、PCBの下面へと触れるために、安定であるために充分に大きいことが望まれる。したがって、ポンプは、出口を通って溶融はんだを排出するためにちょうど充分な速度で運転される。そのような圧力および重力/表面張力の力が、溶融はんだを出口7においておおむね半球形のバブルへと成形するように協働する。ポンプおよび気泡は、図には示されていない。
【0084】
溶融はんだは、はんだ付けノズル1の近位端部分10においてはんだ付けノズル1へと進入し、この実施の形態においてはノズルの本体に穿孔または他の方法によって形成された内腔またはチャネル12に沿ってノズルの本体を通過し、はんだ出口7に達する。次いで、はんだは、上方へと流れて出口から出る。図1および図2は、はんだ付けノズルの使用時の向きを示している。
【0085】
PCBおよび溶融はんだが、ノズル1を通る溶融はんだの制御された流れゆえに、制御された方法で接触する。次いで、流れるはんだが、ノズルの先端5の丸みを帯びた縁14の周囲にあふれる。縁が、図7に詳しく示されている。次いで、はんだは、ノズルの外側を下方へと進み続け、非乱流の外観を有する溶融はんだの薄い戻りの流れを形成する。このはんだの薄い層が、底部からはんだ供給タンクまたははんだリザーバへの通路へと流れるまで、ノズルの外面16の全体に広がる。
【0086】
溶融はんだの滑らかな戻りの流れを促進するために、ノズル1は、滑らかな輪郭を有する鐘状または実質的に円すい状の形状を備えている。はんだのための滑らかな表面が、ドロスの形成を少なくする。したがって、ノズルは、滑らかな凸状および/または凹状の湾曲17、18を有する曲線的な滑らかな外面16を定める形状を特徴とし、この実施の形態においては、溶融はんだの戻りの流れの方向(すなわち、下向き)の順に、第1の湾曲が凹状であり、第2の湾曲が凸状である。そのような湾曲の半径を、図2に見て取ることができ、それぞれの寸法が図2に提示されている。他の湾曲も可能である。
【0087】
ノズル1の高さは、この実施の形態においては、図4に見て取ることができるとおり、25mmである。この高さは、膜によって溶融はんだのバブルへと膜の表面張力によって所望の引っ張り力を加えることができるために充分である。また、この高さは、溶融はんだの鞘がはんだノズル1の広がった底部において過度に分散させられないために充分に短い。
【0088】
ノズルは、鉄を多く含む材料で形成され、はんだによって表面を速やかに濡らすことができるようにすずめっきを施すことができる。
【0089】
この実施の形態において、環状溝3は、1mmの幅および約0.2mmの深さである。溝の外面にも、やはり好ましくはすずめっきが施される。
【0090】
図7によって示されるように、溝は、矩形の外形を有しており、その遠位縁が、ノズルの先端5から軸方向に2mm離れて位置している。戻りの溶融はんだが、好ましくは毛管力または表面張力によって溝へと引き込まれるため、はんだのバブルが、より安定した状態で環状溝持、すなわち、何らかの形で環状溝に「把持」され、あるいは環状溝に収容される。結果としてノズルがディウェッティングの影響を受け難くなり、すずめっきの喪失が生じにくくなる。
【0091】
ディウェッティングに関しては、鉛フリーはんだが、通常鉛はんだと比べてノズル先端のディウェッティングを生じやすいことが知られている。溝の追加によって、ノズルの急速なディウェッティングという傾向が軽減されることが確認され、今やノズルを、小さな直径のバブルにおいても鉛フリーはんだで稼働させることができる。
【0092】
環状溝がこの実施の形態の目的のために使用されているが、別の凹所またはスロットを、実質的に同じ機能、すなわちはんだ材料の戻りの流れのうちのより多くの量を引き付けて保持するという機能を果たすために使用してよい。実際、はんだを効果的に引き付けて保持することができる限りにおいて、さまざまな形状およびサイズのそのような凹所またはスロットが、この実施の形態の溝の機能を果たすと考えられる。さらに、各々が戻りのはんだの一部の収容に貢献する2つ以上のスロットまたは凹所を使用することができる。
【0093】
この実施の形態のノズル1におけるはんだ付けスポットのサイズは、おおむね10mmである。図5に見て取ることができるとおり、この寸法は、ノズル1の出口7の幅におおむね一致する。実際には、バブルは、ノズルの縁の周囲にあふれるはんだゆえに、出口よりもわずかに大きくなると考えられる。
【0094】
図8図13が、本発明によるはんだ付けノズル21の第2の実施の形態に関係する。形状が、先の実施の形態のノズルに或る程度類似しているが、このノズル21は、よりスレンダーな、すなわちより狭い先端25を有している。しかしながら、根元30のサイズおよび高さは不変である(図11に見て取ることができるとおり、それぞれ24mmおよび25mmである)。溝は、依然として矩形の外形であるが、別のサイズおよび別の形状の溝(例えば、「V」字形の溝または半円形の溝)も、やはりこの実施の形態において容認できると考えられる。
【0095】
この溝23の寸法は、先の実施の形態の溝3と実質的に同じである。しかしながら、溝の円周は、ノズル先端25の首部の外径が小さくなった結果として、相対的に短くなっている。
【0096】
図8図13は、ノズル21が、先端25の丸みを帯びた縁34、凹状および凸状の湾曲37、38を有する鐘状の外面36、内腔32、など、先のノズル1と比較されるさらなる対応する造作を有することを示している。
【0097】
このノズルにおけるはんだ付けスポットのサイズは、図12に見られるように、ノズル21の出口27の幅に相当する2.5mmである。
【0098】
上述のはんだ付けノズル1、21は、鉄で製作され、溶融はんだの戻りの流れの付着を促進するために、すずの薄い層によって覆われる。両方のノズル1、21を、種々の単一スポットはんだ付けの用途において試験したところ、ディウェッティングの性能の改善がもたらされ、ディウェッティングまでのノズルの寿命が長くなった。
【0099】
両方の実施の形態において、環状溝の軸方向の位置は、ノズルの先端5、25の一番先から溝3、23の遠位端まで測定したときに2mmであるが、ノズルにおいてさらに上方または下方に位置する溝も、上手く機能すると考えられる。溝3、23とノズルの先端5、25との間の距離の好ましい範囲は、1〜5mmの間の領域にある。
【0100】
次に、はんだ付けノズルの第3の実施の形態に目を向けると、図15が、本発明によるノズルの第3の実施の形態100の上方部分61の上面図である。この部分61は、2つの部分からなるノズル100の上方部分である。ノズルの下部は、図18図25に見て取ることができ、後述される。
【0101】
出口67のサイズが、先のノズル1、21と比べてさらに小さくされている。ノズルの出口67が、今や1.5mmである。したがって、このノズルは、より小さな領域のはんだ付けに使用することが可能であり、小さな末端のはんだ付けに理想的である。このような狭い出口67を有するノズルにおいて、これまでは凍結/ジェッティングに悩まされることなく達成することが不可能であった満足できる挙動を、どのように達成できるのかを以下で説明する。しかしながら、最初に、ノズルのこの構成部分の特徴を説明する。
【0102】
ノズルの形状は、依然として鐘の形状、または鐘状の構造であり、或る程度はフラスコのようでもある。しかしながら、ノズルの首部または先端65の形状は、ここでは内腔72を有する実質的に真っ直ぐな円筒である。外面に1対の環状溝63、64を呈しているが、(より短い首部において)単一の溝を使用することも可能である。
【0103】
すべての寸法が、図16に関して提示されている。
【0104】
第3のノズル100の上方部分61を占める2つの環状溝が、首部に設けられている。環状溝63、64は、すでに述べたように、ノズル100のディウェッティング防止の性能を改善するために存在している。溶融はんだが、通常のようにノズル先端65の上部の出口からバブルとしてもたらされ、丸みを帯びた縁76(図17を参照)を過ぎ、戻りのはんだが、ノズルの首部65をノズルの外面76に沿って流れ下る。ノズルの上方部分の下半分(近位端70または根元)は、第2の部分81の上部85へと接続され、あるいは重ねられるように設計されている。根元70は、おおむね丸みを帯びた外形を有しており、図16に示されるように異なる曲率を有する曲面77、78の連続によって得られる凸状の表面を有している。
【0105】
図18図24が、第3の実施の形態のノズル100の下方部分81を示している。図18が、ノズル100の下方部分または第1の部分の上面図であり、この部分の首部83の上部に形成された城郭造作94を示しており、はんだが造作94の中間をノズルの上部へと通過する。城郭風造作は、互いに直角(90度)に配置された4つの塔状の要素89によって得られている。図19が、この部分に穿孔または他の方法で形成された内腔92を下方から示しており、この腔が、ノズル100へと進入してノズル100を上方へと通過する溶融はんだの流れを可能にするように機能する。そのような内腔92の詳細が、その寸法も含めて、図24に示されている。
【0106】
内腔は、形状、長さ、および幅が異なる4つの部分へと分割されている。第1の部分は、ノズル100が取り付けられるはんだ付け装置50(例えば、図29を参照)の残りの部分52へとノズル100を接続するために使用される。内腔92の比較的狭い遠位側の部分が、ノズル100のこの部分81を出てノズル100の上方部分または上部部品61の底部へと進入する前に溶融はんだが最後に通過する部分である。
【0107】
図20が、やはり鐘またはフラスコの形状と比較することができるノズルのこの下方部分または下部部品81の形状の外形を示している。
【0108】
図21が、部分81の外面96の造作を強調している。この部分の近位端または根元90は、外側へとわずかに湾曲している。この部分の近位端90の湾曲98が、首部83に向かって細くなる円すい形部分97に融合している。
【0109】
図22が、図18の一部分の拡大図であり、城郭風造作94をさらに詳しく示し、城郭風造作94の寸法を示している。塔またはフィンガが角張っており、間に空間を定めている。
【0110】
図25が、一体に組み合わせられたノズルの2つの部分または部品61、81の上面図である。ノズル100の上部または第2の部分61が、ノズル100の下部または第1の部分81の上に重ねられている。この積み重ねの構成が、図26に詳しく示されており、図26において、積み重ねられた部分61、81が、上方部分の近位端70を第1の部分81の城郭風造作94へと押し付けて、締まりばめによって一体に接続されていることを見て取ることができる。このようにして、平坦またはわずかに湾曲した端部がフィンガ状に設けられ、上部の近位端の内面がそれらの端部に係合する。
【0111】
このノズル100は、城郭風造作94が上方部分61の根元70へと挿入されたときに城郭風造作94によって2つの部分61、81の間に形成される開口101から、はんだを流出させることができるように設計されている。
【0112】
図26図27、および図28を参照し、このノズル100の機能をさらに説明することができる。溶融はんだが、下方部分80の根元90を介してノズルへと進入できる。ポンプによってはんだへと加えられる圧力が、はんだの一部(余分なはんだ)が上部の出口よりも前に城郭風造作と上方部分61の根元70とによって形成される開口101を介してノズルから排出されるまで、はんだを上方へと流す。他方で、はんだの残りの流れは、上方部分61の腔72を通って移動し、ノズルの上部部品のノズル出口67に達する。次いで、ノズルの上部からあふれてはんだバブルを形成するように排出される。
【0113】
開口101の存在ゆえに、ポンプが、開口101を持たないノズルと比べてより高い速度で動作できると考えられる。より高いポンプの速度は、新たに送り込まれる高温のはんだがノズルへと補充されることを保証し、これにより、ノズルを凍結を防止するための適切な熱に維持すべく、ノズルを通過する熱量が維持される。
【0114】
さらに、ポンプがより高速で動作するため、たとえノズルの上部から出るはんだの流れが完全な流れによる被覆を維持するために不充分であったとしても、ノズルから出てノズルの外側の周囲を通過する溶融はんだが、ノズルの外面を覆うための適切な流れに保たれる。これは、ドロスまたはノズルの外側へのはんだの蓄積を防止するうえで助けになる。
【0115】
さらに、2つの部分81、61の間に位置する開口101からの流れが、上方部分が下方部分の上部/首部に向かって再び湾曲するように形作られているため、制御された状態でノズルの上部の出口からの流出物と出会い、したがって流れが非乱流であり、余分なはんだの流れが、表面張力ゆえに上方部分61からのはんだを「剥ぎ取り」、あるいは「引っ張る」うえで役に立つ。この剥ぎ取りの作用が、上方部分の溝と相俟って、出口におけるバブルの安定性をさらに改善し、ボブリング(一般に、ノズルのサイズが小さくなるほど深刻になる問題である)の程度を軽減する。したがって、これにより、点はんだ付けの用途に合わせた安定なバブルを形成するために、1.5mmの出口を普通に使用することができるようになる。
【0116】
図29が、第3の実施の形態のノズル100が上部に取り付けられたはんだ付けユニット50を示している。はんだ付けユニット50は、はんだの跳ね散りを実質的になくし、上述のノズルがディウェッティングを防止するため、ドロスの形成を実質的に防止する。ディウェッティングを防止し、はんだの跳ね散りを防止することによって、ひとたびノズルの出口67または追加の開口100を出たならば、戻りのはんだが、外側のらせんへとノズルの外面76、96の緩やかな湾曲を膜として流れ下り、依然として跳ね散りを生じることなくらせんを流れ下って供給タンクへと戻る。
【0117】
これが、ドロスを顕著に減少させる。
【0118】
このように、本発明を、あくまでも一例として上述した。本発明について、添付の特許請求の範囲の技術的範囲において、細部の変更を行なうことが可能である。
図1
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