特許第6163104号(P6163104)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アクセラレイテッド・バイオサイエンシズ・コーポレーションの特許一覧

特許6163104ヒト・トロホブラスト幹細胞からの神経幹細胞の生成
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6163104
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】ヒト・トロホブラスト幹細胞からの神経幹細胞の生成
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0797 20100101AFI20170703BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20170703BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20170703BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20170703BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20170703BHJP
【FI】
   C12N5/0797ZNA
   A61K35/12
   A61P43/00 105
   A61P25/00
   !C12N15/00 A
【請求項の数】12
【全頁数】91
(21)【出願番号】特願2013-539958(P2013-539958)
(86)(22)【出願日】2011年11月15日
(65)【公表番号】特表2014-503194(P2014-503194A)
(43)【公表日】2014年2月13日
(86)【国際出願番号】US2011060868
(87)【国際公開番号】WO2012068170
(87)【国際公開日】20120524
【審査請求日】2014年11月14日
(31)【優先権主張番号】61/413,892
(32)【優先日】2010年11月15日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/434,790
(32)【優先日】2011年1月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514149598
【氏名又は名称】アクセラレイテッド・バイオサイエンシズ・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100187540
【弁理士】
【氏名又は名称】國枝 由紀子
(72)【発明者】
【氏名】ジャウ−ナン・リー
(72)【発明者】
【氏名】トニー・トゥン−イーン・リー
(72)【発明者】
【氏名】ユータ・リー
(72)【発明者】
【氏名】エイン−メイ・ツァイ
【審査官】 飯室 里美
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0263361(US,A1)
【文献】 特表2009−533056(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/030961(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/00
C12N 15/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
尾側(caudal type)ホメオボックス2(Cdx2)、Nanog、ニューロゲニン3(Ngn3)、レチノイン酸受容体ベータ(RARβ)、レチノイドX受容体アルファ(RXRα)、レチノイドX受容体ベータ(RXRβ)、レチンアルデヒドデヒドロゲナーゼ2(RALDH−2)およびレチンアルデヒドデヒドロゲナーゼ3(RALDH−3)であるタンパク質を発現する、単離ヒト神経幹細胞であって、
単離ヒト・トロホブラスト幹細胞と比較して、細胞表面タンパク質CD33またはCD133の発現が低レベルであるか、または、これらの細胞表面タンパク質を発現しない、前記単離ヒト神経幹細胞。
【請求項2】
妊娠年齢6〜8週のトロホブラスト組織から得られる単離ヒト・トロホブラスト幹細胞から製造される、請求項1の単離ヒト神経幹細胞。
【請求項3】
哺乳類の神経学的疾患もしくは障害の治療または防止において使用するための化合物をスクリーニングする方法であって:
a.請求項1または2の単離ヒト神経幹細胞と前記化合物を接触させ;そして
b.前記単離ヒト神経幹細胞における、少なくとも1つの遺伝子、転写物またはタンパク質の活性における変化を検出する
工程を含む、前記方法。
【請求項4】
前記単離ヒト神経幹細胞における、少なくとも1つの遺伝子、転写物またはタンパク質の前記活性が、前記化合物と接触させなかった匹敵する単離ヒト神経幹細胞に比較した際、減少している、請求項3の方法。
【請求項5】
前記単離ヒト神経幹細胞における、少なくとも1つの遺伝子、転写物またはタンパク質の前記活性が、前記化合物と接触させなかった匹敵する単離ヒト神経幹細胞に比較した際、増加している、請求項3の方法。
【請求項6】
前記神経学的疾患もしくは障害が、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、フリードライヒ失調症、レビー小体病、脊髄性筋萎縮症、多系統萎縮症、認知症、統合失調症、麻痺、多発性硬化症、脊髄傷害、脳傷害、脳神経障害、末梢性感覚ニューロパシー、癲癇、プリオン病、クロイツフェルト−ヤコブ病、アルパース病、小脳/脊髄小脳変性、バッテン病、皮質基底核変性、ベル麻痺、ギラン−バレー症候群、ピック病、および自閉症である、請求項3〜5のいずれかの方法。
【請求項7】
請求項1または2のヒト神経幹細胞を製造する方法であって:
a.ヒト・トロホブラスト幹細胞をレチノイン酸と接触させ;そして
b.前記ヒト・トロホブラスト幹細胞において、PIP2、または、1またはそれより多いタンパク質を調節し、ここで該1またはそれより多いタンパク質が、Wnt2B、Fzd6、Dvl3、FRAT1、GSK3β、HDAC6、β−カテニン、Gαq/11、Gβ、RXRα、RARβ、GLuR1、PI3K、AKt1、AKt2、AKt3、mTOR、EIF4EBP、CREB1、TH(チロシンヒドロキシラーゼ)、PLC−β、CaMKII、EIF4B、パーキン、SNCA、チューブリン、カルシニューリン、CRMP−2、NFAT1、インポーチン、LEF1、Pitx2、MEF2A、またはEP300を含む
工程を含む、前記方法。
【請求項8】
請求項7の方法であって、ここで前記ヒト神経幹細胞が、ドーパミン産生細胞、ドーパミン作動性ニューロン、単極ニューロン、双極ニューロン、多極ニューロン、グルタミン作動性ニューロン、セロトニン作動性ニューロン、GABA作動性(ガンマアミノ酪酸)ニューロン、錐体細胞、プルキンエ細胞、前角細胞、バスケット細胞、ベッツ細胞、レンショウ細胞、顆粒細胞、GRP細胞、NRP細胞、MNS細胞、AST細胞、TGC細胞、または中型有棘細胞の表現型を有する、方法。
【請求項9】
請求項7または8の方法であって、ここでヒト神経幹細胞が、ドーパミン、グルタミン酸NMDA受容体のサブユニット、シナプシンI、カルシウムチャネルマーカー、GAP−43、電位依存性K+チャネル、電位依存性Ca+チャネル、または電位依存性Na+チャネルの発現を含む1またはそれより多いニューロン特性を持つ、方法。
【請求項10】
神経学的障害を治療する必要があるヒト対象における神経学的障害の治療における使用のための、請求項1または2の単離ヒト神経幹細胞を含有する医薬。
【請求項11】
前記神経学的障害が、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、フリードライヒ失調症、レビー小体病、脊髄性筋萎縮症、多系統萎縮症、認知症、統合失調症、麻痺、多発性硬化症、脊髄傷害、脳傷害、脳神経障害、末梢性感覚ニューロパシー、癲癇、プリオン病、クロイツフェルト−ヤコブ病、アルパース病、小脳/脊髄小脳変性、バッテン病、皮質基底核変性、ベル麻痺、ギラン−バレー症候群、ピック病、および自閉症である、請求項10の医薬。
【請求項12】
ヒト神経幹細胞を製造する方法であって、単離ヒト・トロホブラスト幹細胞をレチノイン酸と接触させる工程を含み、ここで該単離ヒト・トロホブラスト幹細胞は妊娠年齢6〜8週のトロホブラスト組織に由来し、
前記ヒト神経幹細胞が、尾側(caudal type)ホメオボックス2(Cdx2)、Nanog、ニューロゲニン3(Ngn3)、レチノイン酸受容体ベータ(RARβ)、レチノイドX受容体アルファ(RXRα)、レチノイドX受容体ベータ(RXRβ)、レチンアルデヒドデヒドロゲナーゼ2(RALDH−2)およびレチンアルデヒドデヒドロゲナーゼ3(RALDH−3)であるタンパク質を発現し、
前記ヒト神経幹細胞が、単離ヒト・トロホブラスト幹細胞と比較して、細胞表面タンパク質CD33またはCD133の発現が低レベルであるか、または、これらの細胞表面タンパク質を発現しない、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
クロスリファレンス
[0001]本出願は、2010年11月15日出願の米国仮出願第61/413,892号、および2011年1月20日出願の米国仮出願第61/434,790号の恩典を請求し、これらの出願は本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
[0002]ヒト・トロホブラスト幹(hTS)細胞は、未分化状態で、in vitroの無限増殖が可能である。hTS細胞は、潜在的な多系列分化能を維持する。hTS細胞調製物を誘導して、in vitroまたはin vivoでトロホブラスト系譜の細胞に分化させることも可能である。さらに、hTS細胞を誘導して、ニューロン、例えばドーパミン作動性ニューロンに分化させることも可能である。hTS細胞を用いて、黒質線条体経路におけるドーパミン作動性ニューロンの機能不全または喪失、例えばヒトにおける神経変性障害を治療することも可能である。
【発明の概要】
【0003】
[0003]神経変性障害は、ヒト集団において、深刻な社会経済的影響を有する。現在の薬剤は、神経変性障害、例えばパーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病などの神経変性障害の特定の症状を軽減することによって、限定された利益を提供するのみである。パーキンソン病(PD)は、黒質線条体経路におけるドーパミン作動性ニューロンの機能不全または喪失によって引き起こされ、そしてヒトにおける一般的な神経変性障害である。本明細書に提供するのは、哺乳動物におけるパーキンソン病、ハンチントン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多系統萎縮症、レビー小体認知症、末梢性感覚ニューロパシーまたは脊髄傷害を含む神経変性障害における、細胞に基づく代替療法用の単離神経幹細胞である。
【0004】
[0004]本明細書に提供するのは、1つの側面において、トロホブラスト組織由来の単離神経幹細胞である。いくつかの態様において、トロホブラスト組織はヒト・トロホブラスト組織である。
【0005】
[0005]1つの態様において、本明細書記載の単離神経幹細胞は、尾側(caudal type)ホメオボックス2(Cdx2)、Nanogホメオボックス、ネスチン、オクタマー結合性転写因子4(Oct−4)、神経フィラメント、ニューロゲニン3(Ngn3)、ネオマイシン欠失遺伝子(Neo−D)、微小管会合タンパク質−2(MAP−2)、CD133、レチノイン酸受容体ベータ(RARβ)、レチノイドX受容体アルファ(RXRα)、レチノイドX受容体ベータ(RXRβ)、細胞性レチノイン酸結合タンパク質2(CRABP−2)、細胞性レチノール結合タンパク質1(CRBP−1)、レチンアルデヒドデヒドロゲナーゼ2(RALDH−2)またはレチンアルデヒドデヒドロゲナーゼ3(RALDH−3)の1またはそれより多くの転写物を発現する。
【0006】
[0006]1つの態様において、単離神経幹細胞は、ヒト神経幹細胞である。1つの態様において、細胞は正常核型を有する。別の態様において、単離神経幹細胞は、1またはそれより多い免疫特権特性を有する。別の態様において、1またはそれより多い免疫特権特性は、CD33発現および/またはCD133発現の非存在を含む。
【0007】
[0007]さらに本明細書に提供するのは、単離神経幹細胞をニューロンに分化させる方法であって:前記単離神経幹細胞を哺乳動物の脳内に投与する、ここで前記の単離神経幹細胞はニューロンに分化する、工程を含む、前記方法である。別の態様において、ニューロンは、ドーパミン作動性ニューロン、グルタミン作動性ニューロン、セロトニン作動性ニューロン、またはGABA作動性(ガンマアミノ酪酸)ニューロンである。
【0008】
[0008]1つの態様において、投与される(例えば移植される)単離神経幹細胞は、前記投与前に誘導薬剤で前誘導されている。別の態様において、単離神経幹細胞は、前記投与前に誘導薬剤で前誘導されていない。
【0009】
[0009]1つの態様において、前記哺乳動物の脳は、前記投与前に、損傷を受けているか、またはニューロン喪失を被っている。別の態様において、前記損傷はドーパミン作動性ニューロン、グルタミン作動性ニューロン、セロトニン作動性ニューロン、GABA作動性(ガンマアミノ酪酸)ニューロンに対するものである。別の態様において、前記ニューロン喪失はドーパミン作動性ニューロンに対するものである。
【0010】
[0010]1つの態様において、前記細胞は発現ベクターでトランスフェクションされている。
[0011]別の態様において、単離神経幹細胞は、前記被験体の脳内に投与された後、該被験体の脳の黒質緻密部(SNC)領域に遊走する。別の態様において、前記投与は、前記哺乳動物において、感覚運動機能を改善させる。別の態様において、前記投与は、前記哺乳動物の硬直、無動症または平衡障害の減少を引き起こす。
【0011】
[0012]本明細書に提供するのは、単離神経幹細胞をドーパミン作動性ニューロンに分化させる方法であって:前記単離神経幹細胞を哺乳動物の脳内に投与する、ここで単離神経幹細胞はCdx2、Nanog、ネスチン、Oct−4、神経フィラメント、NgN3、Neo−D、MAP−2、CD133、RARβ、RXRα、RXRβ、CRABP−2、CRBP−1、RALDH−2またはRALDH−3の1またはそれより多くの転写物を発現し、前記哺乳動物の前記脳は、損傷を受けているか、またはニューロン喪失を被っており、前記単離神経幹細胞の1またはそれより多くはドーパミン作動性ニューロンに分化する、工程を含む、前記方法である。
【0012】
[0013]本明細書に提供するのは、単離神経幹細胞をドーパミン作動性ニューロンに分化させる方法であって:前記単離神経幹細胞を哺乳動物の脳内に投与する、ここで前記単離神経幹細胞は、トロホブラスト組織由来であり、前記哺乳動物の前記脳は、損傷を受けているか、またはニューロン喪失を被っており、前記単離神経幹細胞の1またはそれより多くはドーパミン作動性ニューロンに分化する、工程を含む、前記方法である。
【0013】
[0014]上述の方法の1つの態様において、前記投与は、前記哺乳動物において、感覚運動機能を改善させる。上述の方法の別の態様において、前記投与は、前記哺乳動物の硬直、無動症または平衡障害の減少を引き起こす。
【0014】
[0015]本明細書に提供するのは、単離ヒト・トロホブラスト幹細胞を神経幹細胞に分化させる方法であって:Cdx2、Nanog、ネスチン、Oct−4、神経フィラメント、Ngn−3、Neo−D、MAP−2、CD133、RARβ、RXRα、RXRβ、CRABP−2、CRBP−1、RALDH−2、またはRALDH−3遺伝子の活性を調節する工程を含む、前記方法である。
【0015】
[0016]本明細書に提供するのは、単離ヒト・トロホブラスト幹細胞を神経幹細胞に分化させる方法であって:Cdx2、Nanog、ネスチン、Oct4、神経フィラメント、Ngn−3、Neo−D、MAP−2、CD133、RARβ、RXRα、RXRβ、CRABP−2、CRBP−1、RALDH−2、またはRALDH−3転写物のレベルを調節する工程を含む、前記方法である。
【0016】
[0017]本明細書に提供するのは、単離ヒト・トロホブラスト幹細胞を神経幹細胞に分化させる方法であって:Cdx2、Nanog、ネスチン、Oct4、神経フィラメント、Ngn−3、Neo−D、MAP−2、CD133、RARβ、RXRα、RXRβ、CRABP−2、CRBP−1、RALDH−2、またはRALDH−3タンパク質のレベルまたは活性を調節する工程を含む、前記方法である。
【0017】
[0018]本明細書に提供するのは、疾患の治療または防止において使用するための化合物をスクリーニングする方法であって:単離ヒト・トロホブラスト幹細胞と前記化合物を接触させ;そして前記ヒト・トロホブラスト幹細胞における、少なくとも1つの遺伝子、転写物またはタンパク質の活性における変化を検出する工程を含む、前記方法である。上述の方法の1つの態様において、前記ヒト・トロホブラスト幹細胞における、少なくとも1つの遺伝子、転写物またはタンパク質の活性は、前記化合物と接触させなかった匹敵する単離ヒト・トロホブラスト幹細胞に比較した際、減少している。上述の方法の別の態様において、前記ヒト・トロホブラスト幹細胞における、少なくとも1つの遺伝子、転写物またはタンパク質の活性は、前記化合物と接触させなかった匹敵する単離ヒト・トロホブラスト幹細胞に比較した際、増加している。上述の方法の別の態様において、疾患は神経変性障害である。上述の方法の別の態様において、疾患は、パーキンソン病、アルツハイマー病、統合失調症、または筋萎縮性側索硬化症である。
【0018】
[0019]本明細書に提供するのは、疾患の治療または防止において使用するための化合物をスクリーニングする方法であって:単離ヒト・トロホブラスト幹細胞と前記化合物を接触させ;そして前記ヒト・トロホブラスト幹細胞における、少なくとも1つの転写物またはタンパク質のレベルにおける変化を検出する工程を含む、前記方法である。上述の方法の1つの態様において、前記ヒト・トロホブラスト幹細胞における、少なくとも1つの転写物またはタンパク質のレベルは、前記化合物と接触させなかった単離ヒト・トロホブラスト幹細胞に比較した際、減少している。上述の方法の別の態様において、前記ヒト・トロホブラスト幹細胞における、少なくとも1つの転写物またはタンパク質のレベルは、前記化合物と接触させなかった匹敵する単離ヒト・トロホブラスト幹細胞に比較した際、増加している。上述の方法の別の態様において、疾患は神経変性障害である。上述の方法の別の態様において、疾患は、パーキンソン病、アルツハイマー病、統合失調症、または筋萎縮性側索硬化症である。
【0019】
[0020]本明細書に提供するのは、細胞において変化を誘導する能力に関して、化合物をスクリーニングする方法であって:単離ヒト・トロホブラスト幹細胞と前記化合物を接触させ;そして前記ヒト・トロホブラスト幹細胞の分化の誘導を検出する工程を含む、前記方法である。
【0020】
[0021]本明細書に提供するのは、細胞において変化を誘導する能力に関して、化合物をスクリーニングする方法であって:単離神経幹細胞と前記化合物を接触させ;そして前記神経幹細胞の分化の誘導を検出する工程を含む、前記方法である。
【0021】
[0022]本明細書に提供するのは、疾患の治療または防止において使用するための化合物をスクリーニングする方法であって:単離神経幹細胞と前記化合物を接触させ;そして前記神経幹細胞における、少なくとも1つの遺伝子、転写物またはタンパク質の活性における変化を検出する工程を含む、前記方法である。上述の方法の1つの態様において、前記神経幹細胞における、少なくとも1つの遺伝子、転写物またはタンパク質の活性は、前記化合物と接触させなかった匹敵する単離神経幹細胞に比較した際、減少している。上述の方法の別の態様において、前記神経幹細胞における、少なくとも1つの遺伝子、転写物またはタンパク質の活性は、前記化合物と接触させなかった匹敵する単離神経幹細胞に比較した際、増加している。上述の方法の別の態様において、疾患は神経変性障害である。特定の態様において、疾患は、パーキンソン病、アルツハイマー病、統合失調症、または筋萎縮性側索硬化症である。
【0022】
[0023]本明細書に提供するのは、疾患の治療または防止において使用するための化合物をスクリーニングする方法であって:単離神経幹細胞と前記化合物を接触させ;そして前記神経幹細胞における、少なくとも1つの転写物またはタンパク質のレベルにおける変化を検出する工程を含む、前記方法である。上述の方法の1つの態様において、前記神経幹細胞における、少なくとも1つの転写物またはタンパク質のレベルは、前記化合物と接触させなかった匹敵する単離神経幹細胞に比較した際、減少している。上述の方法の別の態様において、前記神経幹細胞における、少なくとも1つの転写物またはタンパク質のレベルは、前記化合物と接触させなかった匹敵する単離神経幹細胞に比較した際、増加している。上述の方法の別の態様において、疾患は神経変性障害である。上述の方法の別の態様において、疾患は、パーキンソン病、アルツハイマー病、統合失調症、または筋萎縮性側索硬化症である。
【0023】
[0024]本明細書に提供する1つの態様は、神経学的障害を治療する必要がある哺乳動物において、こうした障害を治療する方法であって、少なくとも1つの神経幹細胞を前記哺乳動物に投与する、ここで該細胞が免疫特権を有する、工程を含む、前記方法を記載する。別の態様において、前記哺乳動物は、マウス、ラット、ブタ、イヌ、サル、オランウータンまたは類人猿(ape)である。別の態様において、前記哺乳動物はヒトである。
【0024】
[0025]1つの態様において、必要がある前記哺乳動物は、神経学的障害と関連する1またはそれより多い症状を有する。別の態様において、前記の1またはそれより多い症状は、硬直、無動症、平衡障害、振戦、歩行障害、位置異常歩行(maldispositional gait)、認知症、過剰膨張(浮腫)、筋力低下、下肢萎縮、運動障害(舞踏病)、筋硬直、身体運動の緩慢化(動作緩慢)、身体運動の喪失(無動症)、物忘れ、認知(知的)損傷、認識喪失(失認)、意志決定および計画などの機能障害、片側顔面麻痺、感覚消失、しびれ、刺痛、極端な異常痛覚、脱力感、脳神経麻痺、発話困難、目の運動、視野欠損、失明、出血、滲出物、近位筋肉消耗、ジスキネシア、四肢の筋肉の緊張異常、筋緊張の減少、協調運動障害、指−指試験または指−鼻試験における誤った表示、測定障害、ホームズ−スチュワート現象、不完全または完全全身麻痺、視神経炎、複視、眼振などの眼球運動障害、痙性麻痺、有痛性強直性痙攣発作、レルミット症候群、運動失調、言語障害、膀胱直腸障害、起立性低血圧、運動機能の減少、夜尿、言語化障害、睡眠パターン障害、睡眠障害、食欲障害、体重変化、精神運動激越または遅延、活動力減退、倦怠感または過剰なもしくは不適切な罪悪感、思考または集中困難、死または自殺念慮または試みの反復、恐怖、不安、怒りやすさ、くよくよすることまたは強迫的熟考、身体的健康に関する過剰な懸念、パニック発作、および恐怖症からなる群より選択される。別の態様において、前記神経学的障害は、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、フリードライヒ失調症、レビー小体病、脊髄性筋萎縮症、多系統萎縮症、認知症、統合失調症、麻痺、多発性硬化症、脊髄傷害、脳傷害(例えば脳卒中)、脳神経障害、末梢性感覚ニューロパシー、癲癇、プリオン病、クロイツフェルト−ヤコブ病、アルパース病、小脳/脊髄小脳変性、バッテン病、皮質基底核変性、ベル麻痺、ギラン−バレー症候群、ピック病、および自閉症からなる群より選択される。
【0025】
[0026]本明細書にやはり提供するのは、1つの態様において、神経学的障害を治療する必要がある哺乳動物において、こうした障害を治療する方法であって、少なくとも1つの神経幹細胞を前記哺乳動物に投与する、ここで該細胞が免疫特権を有し、そしてトロホブラスト組織由来である、前記方法である。別の態様において、免疫特権細胞は低レベルのCD33発現を有する。別の態様において、免疫特権細胞は低レベルのCD133発現を有する。別の態様において、神経前駆幹細胞は免疫反応を誘発しない。別の態様において、神経前駆幹細胞は腫瘍を形成しない。別の態様において、神経幹細胞は、Cdx2、Nanog、ネスチン、Oct−4、神経フィラメント、NgN3、Neo−D、MAP−2、CD133、RARβ、RXRα、RXRβ、CRABP−2、CRBP−1、RALDH−2またはRALDH−3の1またはそれより多くの転写物を発現する。
【0026】
[0027]別の態様において、方法は、前記の1またはそれより多い神経幹細胞を哺乳動物の脳内に投与する、ここで該細胞がニューロンに分化する、工程をさらに含む。別の態様において、前記投与は注射または移植を含む。別の態様において、前記ニューロンは、ドーパミン作動性ニューロン、グルタミン作動性ニューロン、セロトニン作動性ニューロン、またはGABA作動性(ガンマアミノ酪酸)ニューロンである。別の態様において、前記前駆細胞は前記投与前に誘導薬剤で前誘導されている。
【0027】
[0028]やはり本明細書に提供するのは、1つの態様において、幹細胞がニューロン特性を持つ細胞に分化するのを誘導するかまたは促進する方法であって:(a)幹細胞を誘導薬剤と接触させ;(b)幹細胞において、誘導薬剤で、1またはそれより多いタンパク質を調節し、ここで1またはそれより多いタンパク質が、ウィングレス型MMTV組込み部位2B(Wnt2B)、フリズルドファミリー受容体6(Fzd6)、ディシェベルド3(Dvl3)、進行性T細胞リンパ腫における頻繁再編成化因子1(FRAT1)、グリコーゲンシンターゼキナーゼ3ベータ(GSK3β)、ヒストンデアセチラーゼ6(HDAC6)、β−カテニン、グアニンヌクレオチド結合タンパク質サブユニットアルファ11Gqクラス(Gαq/11)、グアニンヌクレオチド結合タンパク質ベータ(Gβ)、レチノイドX受容体アルファ(RXRα)、レチノイン酸受容体ベータ(RARβ)、グルタミン酸受容体1(GLuR1)、ホスホイノシチド−3−キナーゼ(PI3K)、rac−アルファ・セリン/スレオニン−プロテインキナーゼ(AKt1)、rac−ベータ・セリン/スレオニン−プロテインキナーゼ(AKt2)、rac−ガンマ・セリン/スレオニン−プロテインキナーゼ(AKt3)、ラパマイシンの哺乳動物ターゲット(mTOR)、真核生物翻訳開始因子4B結合タンパク質(EIF4EBP)、cAMP応答配列結合タンパク質1(CREB1)、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)、ホスホリパーゼCベータ(PLC−β)、ホスファチジルイノシトール4,5−ビスホスフェート(PIP2)、カルシウム/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼII阻害剤2(CaMKII)、真核生物翻訳開始因子4B(EIF4B)、パーキン、アルファ−シヌクレイン(SNCA)、チューブリン、カルシニューリン、コラプシン反応仲介タンパク質2(CRMP−2)、活性化T細胞の核因子(NFAT1)、インポーチン、リンパ系エンハンサー結合因子1(LEF1)、下垂体ホメオボックス2(Pitx2)、筋細胞エンハンサー因子2A(MEF2A)、またはE1A結合タンパク質p300(EP300)を含み;そして(c)幹細胞がニューロン特性を持つ細胞に分化するのを誘導するかまたは促進する工程を含む、前記方法である。
【0028】
[0029]1つの態様において、幹細胞は哺乳動物トロホブラスト幹細胞である。別の態様において、幹細胞は哺乳動物胚性幹細胞である。別の態様において、幹細胞は哺乳動物人工多能性幹細胞である。別の態様において、幹細胞は内胚葉、中胚葉、外胚葉または間葉系幹細胞である。別の態様において、幹細胞は、マウス、ラット、ヒト、チンパンジー、ゴリラ、イヌ、ブタ、ヤギ、イルカ、またはウシ由来である。別の態様において、幹細胞はヒト由来である。別の態様において、幹細胞はヒト・トロホブラスト幹細胞である。別の態様において、ニューロン特性を持つ細胞は、神経幹細胞(NSC)、ドーパミン産生細胞、ドーパミン作動性ニューロン、単極ニューロン、双極ニューロン、多極ニューロン、錐体細胞、プルキンエ細胞、および前角細胞、バスケット細胞、ベッツ細胞、レンショウ細胞、顆粒細胞、または中型有棘細胞である。
【0029】
[0030]1つの態様において、誘導薬剤は、レチノイン酸、ニコチンアミドまたはベータ−メルカプトエタノール、ビタミンB12、ヘパリン、プトレシン、ビオチン、またはFe2+、ブチル化ヒドロキシアニソール、バルプロ酸、フォルスコリン、5−アザシチジン、インドメタシン、イソブチルメチルキサンチン、またはインスリンを含む。別の態様において、調節は1またはそれより多いタンパク質の活性を増加させる工程を含む。別の態様において、調節は1またはそれより多いタンパク質の発現を増加させる工程を含む。別の態様において、発現増加は、1またはそれより多いタンパク質の少なくとも1つをコードするmRNAの量を増加させるか、あるいはmRNAから翻訳される1またはそれより多いタンパク質の少なくとも1つの量を増加させる工程を含む。別の態様において、調節は、1またはそれより多いタンパク質の少なくとも1つの活性を減少させる工程を含む。別の態様において、調節は、1またはそれより多いタンパク質の少なくとも1つの発現を減少させる工程を含む。別の態様において、発現減少は、1またはそれより多いタンパク質の少なくとも1つをコードするmRNAの量を減少させるか、あるいはmRNAから翻訳される1またはそれより多いタンパク質の少なくとも1つの量を減少させる工程を含む。
【0030】
[0031]本発明にやはり記載するのは、幹細胞がニューロン特性を持つ細胞に分化するのを誘導するかまたは促進する方法であって、前記ニューロン特性が、ドーパミン、グルタミン酸N−メチルD−アスパルテート(NMDA)受容体のサブユニット、シナプシンI、カルシウムチャネルマーカー、増殖関連タンパク質43(GAP−43)、電位依存性K+チャネル、電位依存性Ca+チャネル、または電位依存性Na+チャネルの発現を含む、前記方法である。
【0031】
[0032]1つの態様において、幹細胞がニューロン特性を持つ細胞に分化するのを誘導するかまたは促進する方法は、幹細胞において、誘導薬剤で、1またはそれより多いタンパク質を調節する工程を含み、ここで1またはそれより多いタンパク質はWnt2Bである。別の態様において、Wnt2Bは活性化される。別の態様において、Wnt2Bは不活性化される。別の態様において、Wnt2Bは活性化され、そして次いで不活性化される。別の態様において、Wnt2Bは不活性化され、そして次いで活性化される。別の態様において、Wnt2Bは幹細胞の分化または増殖を促進する。別の態様において、Wnt2Bはドーパミン発現を促進するかまたは誘導する。
【0032】
[0033]1つの態様において、幹細胞がニューロン特性を持つ細胞に分化するのを誘導するかまたは促進する方法は、幹細胞において、誘導薬剤で、1またはそれより多いタンパク質を調節する工程を含み、ここで1またはそれより多いタンパク質はGSK3βである。別の態様において、GSK3βは活性化される。別の態様において、GSK3βは不活性化される。別の態様において、GSK3βは活性化され、そして次いで不活性化される。別の態様において、GSK3βは不活性化され、そして次いで活性化される。別の態様において、GSK3βは幹細胞の分化または増殖を促進する。別の態様において、GSK3βは微小管集合を調節する。
【0033】
[0034]1つの態様において、幹細胞がニューロン特性を持つ細胞に分化するのを誘導するかまたは促進する方法は、幹細胞において、誘導薬剤で、1またはそれより多いタンパク質を調節する工程を含み、ここで1またはそれより多いタンパク質はCREB1である。別の態様において、CREB1は活性化される。別の態様において、CREB1は不活性化される。別の態様において、CREB1は活性化され、そして次いで不活性化される。別の態様において、CREB1は不活性化され、そして次いで活性化される。別の態様において、CREB1は幹細胞の分化または増殖を促進する。別の態様において、CREB1はドーパミン発現を促進するかまたは誘導する。
【0034】
[0035]1つの態様において、幹細胞がニューロン特性を持つ細胞に分化するのを誘導するかまたは促進する方法は、幹細胞において、誘導薬剤で、1またはそれより多いタンパク質を調節する工程を含み、ここで1またはそれより多いタンパク質はCaMKIIである。別の態様において、CaMKIIは活性化される。別の態様において、CaMKIIは不活性化される。別の態様において、CaMKIIは活性化され、そして次いで不活性化される。別の態様において、CaMKIIは不活性化され、そして次いで活性化される。別の態様において、CaMKIIは幹細胞の分化または増殖を促進する。別の態様において、CaMKIIは微小管集合を調節する。
【0035】
[0036]1つの態様において、幹細胞がニューロン特性を持つ細胞に分化するのを誘導するかまたは促進する方法は、幹細胞において、誘導薬剤で、1またはそれより多いタンパク質を調節する工程を含み、ここで1またはそれより多いタンパク質はMAPTである。別の態様において、MAPTは活性化される。別の態様において、MAPTは不活性化される。別の態様において、MAPTは活性化され、そして次いで不活性化される。別の態様において、MAPTは不活性化され、そして次いで活性化される。別の態様において、MAPTは幹細胞の分化または増殖を促進する。別の態様において、MAPTは微小管集合を調節する。
【0036】
[0037]本明細書に提供するのは、1つの態様において、幹細胞が、免疫原性が減少した細胞に分化するのを誘導するかまたは促進する方法であって:(a)幹細胞を誘導薬剤と接触させ;(b)幹細胞において、誘導薬剤で、1またはそれより多いタンパク質を調節し、ここで1またはそれより多いタンパク質が、Wnt2B、Fzd6、Dvl3、FRAT1、GSK3β、HDAC6、β−カテニン、Gαq/11、Gβ、RXRα、RARβ、GLuR1、PI3K、AKt1、AKt2、AKt3、mTOR、EIF4EBP、CREB1、TH(チロシンヒドロキシラーゼ)、PLC−β、PIP2、CaMKII、EIF4B、パーキン、SNCA、チューブリン、カルシニューリン、CRMP−2、NFAT1、インポーチン、LEF1、Pitx2、MEF2A、またはEP300を含み;そして(c)幹細胞が、免疫原性が減少した細胞に分化するのを誘導するかまたは促進する工程を含む、前記方法である。
【0037】
[0038]1つの態様において、幹細胞は哺乳動物トロホブラスト幹細胞である。別の態様において、幹細胞は哺乳動物胚性幹細胞である。別の態様において、幹細胞は哺乳動物人工多能性幹細胞である。別の態様において、幹細胞は内胚葉、中胚葉、外胚葉または間葉系幹細胞である。別の態様において、幹細胞は、マウス、ラット、ヒト、チンパンジー、ゴリラ、イヌ、ブタ、ヤギ、イルカ、またはウシ由来である。別の態様において、幹細胞はヒト由来である。別の態様において、幹細胞はヒト・トロホブラスト幹細胞である。
【0038】
[0039]本明細書に記載するのは、1つの態様において、幹細胞が、免疫原性が減少した細胞に分化するのを誘導するかまたは促進する方法であって、免疫原性が減少した細胞が、神経幹細胞(NSC)、ドーパミン産生細胞、ドーパミン作動性ニューロン、単極ニューロン、双極ニューロン、多極ニューロン、錐体細胞、プルキンエ細胞、および前角細胞、バスケット細胞、ベッツ細胞、レンショウ細胞、顆粒細胞、または中型有棘細胞である、前記方法である。別の態様において、免疫原性が減少した細胞は、免疫反応を誘導しないか、または免疫反応を阻害可能である。別の態様において、免疫原性が減少した細胞は、T細胞、B細胞、マクロファージ、ミクログリア細胞、マスト細胞、またはNK細胞による免疫反応を誘導しないか、またはこうした免疫反応を阻害可能である。
【0039】
[0040]1つの態様において、幹細胞が、免疫原性が減少した細胞に分化するのを誘導するかまたは促進する方法は、幹細胞を誘導薬剤と接触させる工程を含み、該誘導薬剤は、レチノイン酸、ニコチンアミドまたはベータ−メルカプトエタノール、ビタミンB12、ヘパリン、プトレシン、ビオチン、またはFe2+、ブチル化ヒドロキシアニソール、バルプロ酸、フォルスコリン、5−アザシチジン、インドメタシン、イソブチルメチルキサンチン、またはインスリンを含む。
【0040】
[0041]1つの態様において、幹細胞が、免疫原性が減少した細胞に分化するのを誘導するかまたは促進する方法は、幹細胞において、誘導薬剤で、1またはそれより多いタンパク質を調節する工程を含み、調節は1またはそれより多いタンパク質の少なくとも1つの活性を増加させる工程を含む。別の態様において、前記調節は1またはそれより多いタンパク質の少なくとも1つの発現を増加させる工程を含む。別の態様において、発現増加は、1またはそれより多いタンパク質の少なくとも1つをコードするmRNAの量を増加させるか、あるいはmRNAから翻訳される1またはそれより多いタンパク質の少なくとも1つの量を増加させる工程を含む。別の態様において、前記調節は、1またはそれより多いタンパク質の少なくとも1つの活性を減少させる工程を含む。別の態様において、前記調節は、1またはそれより多いタンパク質の少なくとも1つの発現を減少させる工程を含む。別の態様において、発現減少は、1またはそれより多いタンパク質の少なくとも1つをコードするmRNAの量を減少させるか、あるいはmRNAから翻訳される1またはそれより多いタンパク質の少なくとも1つの量を減少させる工程を含む。
【0041】
[0042]1つの態様において、幹細胞が、免疫原性が減少した細胞に分化するのを誘導するかまたは促進する方法は、幹細胞がニューロン特性を持つ細胞に分化するのを誘導するかまたは促進する工程をさらに含み、ニューロン特性は、ドーパミン、グルタミン酸NMDA受容体のサブユニット、シナプシンI、カルシウムチャネルマーカー、GAP−43、電位依存性K+チャネル、電位依存性Ca+チャネル、または電位依存性Na+チャネルの発現を含む。
【0042】
[0043]1つの態様において、幹細胞が、免疫原性が減少した細胞に分化するのを誘導するかまたは促進する方法は、幹細胞において、誘導薬剤で、1またはそれより多いタンパク質を調節する工程を含み、ここで1またはそれより多いタンパク質はNFATである。別の態様において、NFATは活性化される。別の態様において、NFATは不活性化される。別の態様において、NFATは活性化され、そして次いで不活性化される。別の態様において、NFATは不活性化され、そして次いで活性化される。別の態様において、NFATは幹細胞の分化または増殖を促進する。別の態様において、NFATは微小管集合を調節する。
【0043】
[0044]本明細書にやはり記載するのは、ヒト・トロホブラスト幹細胞が、免疫原性が減少したまたは免疫反応を阻害可能なtNSC(トロホブラスト神経幹細胞)に分化するのを誘導するかまたは促進する方法であって:(a)ヒト・トロホブラスト幹細胞を誘導薬剤と接触させ;(b)幹細胞において、誘導薬剤で、1またはそれより多いタンパク質を調節し、ここで1またはそれより多いタンパク質が、Wnt2B、Fzd6、Dvl3、FRAT1、GSK3β、HDAC6、β−カテニン、Gαq/11、Gβ、RXRα、RARβ、GLuR1、PI3K、AKt1、AKt2、AKt3、mTOR、EIF4EBP、CREB1、TH(チロシンヒドロキシラーゼ)、PLC−β、PIP2、CaMKII、EIF4B、パーキン、SNCA、チューブリン、カルシニューリン、CRMP−2、NFAT1、インポーチン、LEF1、Pitx2、MEF2A、またはEP300を含み;そして(c)ヒト・トロホブラスト幹細胞がtNSCに分化するのを誘導するかまたは促進する工程を含む、前記方法である。
【0044】
[0045]1つの態様において、ヒト・トロホブラスト幹細胞が、免疫原性が減少したまたは免疫反応を阻害可能なtNSC(トロホブラスト神経幹細胞)に分化するのを誘導するかまたは促進する方法は、ヒト・トロホブラスト幹細胞を誘導薬剤と接触させる工程を含み、ここで誘導薬剤は、レチノイン酸、ニコチンアミドまたはベータ−メルカプトエタノール、ビタミンB12、ヘパリン、プトレシン、ビオチン、またはFe2+、ブチル化ヒドロキシアニソール、バルプロ酸、フォルスコリン、5−アザシチジン、インドメタシン、イソブチルメチルキサンチン、またはインスリンを含む。別の態様において、tNSCは、免疫反応を誘導しないか、または免疫反応を阻害可能である。別の態様において、免疫細胞は、T細胞、B細胞、マクロファージ、ミクログリア細胞、マスト細胞、またはNK細胞である。
【0045】
[0046]やはり本明細書に記載するのは、腫瘍細胞を阻害する方法であって:腫瘍細胞と化合物を接触させ;腫瘍細胞においてアリール炭化水素受容体(AhR)を調節し;そして調節によって腫瘍細胞を阻害する工程を含む、前記方法である。さらに本明細書に記載するのは、腫瘍細胞増殖を減少させる方法であって:腫瘍細胞と療法剤を接触させ;腫瘍細胞においてAhRを調節し;そして調節によって腫瘍細胞における増殖を減少させる工程を含む、前記方法である。1つの態様において、AhRの調節は、前記細胞におけるAhRタンパク質活性を阻害する工程を含む。別の態様において、AhRの調節は、前記細胞におけるAhR遺伝子発現を阻害する工程を含む。別の態様において、腫瘍細胞を殺す。別の態様において、腫瘍は、肺、乳房、結腸、脳、骨、肝臓、前立腺、胃、食道、皮膚または白血病腫瘍である。別の態様において、腫瘍は固形または液性腫瘍である。別の態様において、AhRはAhRアゴニストで調節される。別の態様において、AhRはAhRアンタゴニストで調節される。別の態様において、AhRは抗エストロゲン活性を有する化合物で調節される。別の態様において、AhRは抗アンドロゲン活性を有する化合物で調節される。別の態様において、腫瘍細胞は哺乳動物である。別の態様において、腫瘍細胞はヒトである。
【0046】
援用
[0047]本明細書に言及するすべての刊行物および特許出願は、各個々の刊行物または特許出願が、具体的にそして個々に援用されると示されるのと同じ程度に、本明細書に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
[0048]本発明の新規特徴は、付随する請求項に特に示される。本明細書に記載する特徴および利点のよりよい理解は、本発明の原理を利用する例示的態様を示す以下の詳細な説明、および付随する図を参照することによって得られるであろう:
図1-1】[0049]図1は、hTS細胞における多能性および再生の特徴を示す。(1a)hTS細胞は、RT−PCR分析によって測定される、内部細胞塊(ICM)および栄養外胚葉両方の特異的遺伝子を発現する。(1b)は、免疫細胞化学染色によって視覚化されたステージ特異的胚性抗原(SSEA)−1、−3、および−4の例示的発現および細胞内局在を示す(黒い点)。hTS細胞において(上部パネル)、SSEA−1は、大部分、細胞質において発現され(左上部パネル)、SSEA−3は、核において発現され(中央上部パネル)、そしてSSEA−4は、細胞質および膜の両方において発現される(上部右パネル)。これらのSSEA発現細胞は、組織学的に、異所性絨毛性栄養膜細胞層と同一であった(下部パネル)。(1c)末端制限断片(TRF)サザンブロット分析によって測定された、hTS細胞培養の第三および第七継代での不変のテロメア長(上部および下部パネル)。(1d)ベン図は、hTS(859遺伝子)およびトロホブラスト関連胎盤由来間葉系幹細胞(PDMS細胞)(2449遺伝子)における遺伝子発現のマイクロアレイ分析を例示する。総数2,149および3,730遺伝子がhTS細胞およびトロホブラスト関連PDMS細胞で発現される(倍変化>2倍)。(1e)は、白血病阻害因子(LIF)の異なる濃度(すなわち500、250、125U/ml;U:単位/ml、アクチン:対照試料としてのβアクチン)に反応した転写因子発現の逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)分析からの結果を例示する。LIFの退薬(withdrawal)は、hTS細胞において、Oct4およびSox2を抑制するが、NanogおよびCdx2を過剰発現する。
図1-2】(1f)LIF(125U/ml)のフローサイトメトリー分析は、hTS細胞におけるNanog、Cdx2、Sox2、およびOct4の発現を促進した(左パネル)。ヒストグラムは、NanogおよびCdx2において、負の用量依存方式を示し(左パネル)、そしてOct4およびSox2において、正の用量依存方式を示した(右パネル)。(1g)女性の卵管の異なるセグメントにおけるLIFレベルの生理学的分布の図、特に、卵管において、膨大部から卵管峡部に向かって、LIFレベルの生理学的減少が見られる。Oct4、NanogおよびSox2対Cdx2の相対比は、各々、卵管の3つの異なるセグメントにおける用量依存性を示す。
図1-3】(1h)hTS細胞における、特定の転写因子(transcriptor)NanogおよびCdx2に対する異なるsiRNAの影響を、RT−PCR(左)およびフローサイトメトリー分析(右)によって分析し、hTS細胞の多能性の維持において、NanogおよびCdx2の間の相反性の関係が例示された。データは、3回のアッセイに関する平均±SDを示す。(1i)遺伝子強度のヒストグラムは、hTS細胞における均質なパターンを示し、一方、PDMS細胞は、二相性パターンを示す。
図2-1】[0050]図2は、多様な表現型の神経幹細胞への、レチノイン酸(RA)誘導hTS細胞の分化を例示する。(2a)グリア制限前駆体(GRP)、ニューロン制限前駆体(NRP)、多能性神経幹(MNS)細胞、アストロサイト(AST)、および未定義トロホブラスト巨細胞(TGC)を含む、多様な神経前駆体サブタイプの分布。時間(例えば1、3、5、および7日)とともに、RA誘導中、一定の比で分布するhTS細胞由来神経前駆体サブタイプの頻度を、それぞれ、第一列から第四列に示す。n:計数した総細胞数を示す。(2b)1日間のRA(10μM)誘導前および後の、RA(10μM)誘導hTS細胞から生成される、ネスチン、Oct4、神経フィラメント、Ngn3、Neo−D、MAP−2およびCD133を含む神経幹細胞関連遺伝子のhTS細胞発現のRT−PCR分析。(2c)3日および5日のRA誘導性hTS細胞はどちらも、神経フィラメントタンパク質、ネスチン、およびGFAPを含む陽性免疫反応性神経幹細胞遺伝子を発現し、これはフローサイトメトリー分析によって観察されたものと類似の分布比を維持した。(2d)免疫反応性ネスチン、チロシンヒドロキシラーゼ−2(TH−2)およびセロトニンを発現した(神経幹細胞)tNSCの免疫細胞化学分析。
図2-2】(2e)フローサイトメトリー分析による、hTS細胞、tNSCおよび(ヒト胚性幹)hES細胞間での、免疫関連遺伝子の比較発現:HLA−ABC(MHCクラスI)は、hTS細胞(99.4%)およびtNSCにおいて高発現されたが、hES細胞ではより低かった。HLA−DR(MHCクラスII)は該細胞において発現されなかった。(2f)フローサイトメトリー分析による、hTS細胞、tNSCおよびhES細胞間での、免疫関連遺伝子の比較発現:該細胞間で、CD14およびCD44発現における相違は観察されなかった。(2g)フローサイトメトリー分析による、hTS細胞、tNSCおよびhES細胞間での、免疫関連遺伝子の比較発現:膜貫通受容体CD33は、hTSおよびhES細胞において発現されるが、tNSCでは発現されない。CD45は該細胞において発現されなかった。(2h)フローサイトメトリー分析による、hTS細胞、tNSCおよびhES細胞間での、免疫関連遺伝子の比較発現:間葉系幹細胞マーカーCD105の発現において、hTS細胞、tNSCおよびhES間で強度の相違は見られなかったが、hTS細胞(93.6%)およびhES細胞(98.8%)に比較して、tNSCにおいては、より少ない癌幹細胞マーカーCD133(11.8%)が発現された。
図3-1】[0051]図3は、RA誘導性遺伝子発現を例示する。(3a)は、tNSCにおけるc−Src/Stat3/Nanog経路の活性化におけるRA(10μM)の影響を例示する。RT−PCR分析によって決定された、c−SrcのRA誘導された見かけの発現は、15分でピークとなり、そして次いで、より低いレベルで維持された(n=3)。(3b)は、ウェスタンブロット分析による、それぞれ30分、1時間、2時間、および4時間でのRA刺激されたRXRα、c−SrcおよびRARβ発現を示す。RA誘導は、30分でGαq/11およびGβ発現の両方を促進し、Gタンパク質シグナル伝達の関与が示唆される。(3c)免疫沈降(IP)アッセイは、RXRαおよびRARβ間のRA誘導性直接結合を立証する;が、この相互作用は、c−Src阻害剤PP1類似体によってブロックされ、c−Srcが、足場タンパク質複合体を形成するRXRαおよびRARβ結合に関与することが示される。(3d)IPアッセイ分析は、RXRαが、Gαq/11と独立の結合相互作用を有し、一方、RARβが、Gβと独立の結合相互作用を有することを示す。
図3-2】(3e)は、hTSにおいて1時間での、c−SrcのRA誘導性早期産生、Tyr705部位でのStat3の見かけのリン酸化およびNanogの活性化のウェスタンブロット分析を例示する。(3f)ウェスタンブロッティングアッセイによれば、c−Srcタンパク質のこの迅速な産生は、次いで、Tyr705部位でのStat3のリン酸化、ならびにNanogの過剰発現を誘導した。ウェスタンブロット分析によれば、c−Src阻害剤PP1類似体(4μM)は、Tyr705でのStat3のRA誘導性リン酸化およびNanogの発現を阻害した。この阻害作用は、RAの添加によってはレスキュー不能であった。(3g)は、Stat3およびNanogプロモーターのRA刺激結合相互作用のクロマチン免疫沈降アッセイ(ChIP)アッセイ分析を例示する。投入:溶解物、C:対照。
図4】[0052]図4は、二重免疫金蛍光透過型電子顕微鏡(IEM)アッセイ結果を例示する。形質膜での金小粒子標識RXRα(6μm)および金大粒子標識Gαq/11(20μm)の間のRA誘導性結合相互作用を示す。動的共焦点免疫蛍光顕微鏡観察によって、免疫染色RXRαおよびGαq/11は、主に、細胞質または核のいずれかにおいて、均質な特徴であるように見えた(図4、上部パネル)。RAで5分間処理することによって、細胞質ゾルRXRα強度が核周辺領域で増加し、一方、核強度は減少し(第一のカラム)、刺激後の細胞質ゾル転位置が示された。核RXRα強度は、15分で顕著になり、一方細胞質ゾル強度は減少した。これらの現象は、核における活性の増加が、細胞における定常状態を維持することを示唆する。見かけ上の細胞質ゾル転位置は、30分でも再び観察された。一方、Gαq/11発現の区画変化は、RXRαのものと類似であった(第二のカラム)。
図5】[0053]図5は、パーキンソン病(PD)ラット内へのGFPタグ化tNSC(3x10)の移植の分析を例示する。(5a)アポモルフィン誘導性回転試験の分析;tNSC移植を受けたPDラットに相関するa群(濃い影の円、n=4)は、移植後3週〜12週に、対側回転の有意な減少を示す;5日間のRA処理hTS細胞を投与されたPDラットに相関するb群(薄い影の円、n=4)は、移植後6週で最初の有意な改善を示したが、この改善は第12週までに次第に減少した;そして対照群としての未処置PDラットに相関するc群(三角形、n=4)は、改善をまったく示さない。反復測定ANOVAによる統計分析:p値=0.001および2群間の反復測定ANOVA後のLSD事後比較:6週でp=0.037(a群対c群)およびp=0.008(b群対c群);9週でp=0.019(a群対c群);12週でp=0.005(a群対c群)およびp=0.018(a群対b群)。は、p<0.05を示す。(5b)は、移植後18週のa群の病変線条体におけるTH陽性免疫組織化学染色を例示する(上部パネル);免疫蛍光顕微鏡分析によって、免疫蛍光GFPタグ化tNSCはなお、注入部位で斑状構成を伴い、病変線条体中に持続することが示される(下部パネル)。(5c)は、移植後18週のa群の病変黒質緻密部(SNC)において再生されたTH陽性ニューロンを例示する(上部パネル);末端領域の拡大を示す(下部左パネル)、スケールバー:100μm;免疫蛍光顕微鏡分析によって、免疫蛍光GFPタグ化tNSCは、分散分布で持続することが示される(下部右パネル、矢印はGFPタグ化tNSCを示す)。(5d)は、移植後18週のb群の免疫組織化学染色を例示する:左病変線条体(str、上部パネル)または視床下核(stn、下部パネル)にはTH陽性細胞はまったく見られなかった。(5e)は、移植後18週のc群の免疫組織化学染色を例示する:左病変線条体(str、上部パネル)または病変SNC(下部パネル)にはTH染色細胞はまったく見られなかった;矢印は針の跡を示す。
図6-1】[0054]図6は、「加齢」PDラットの病変線条体内への1つの注射部位でのtNSC(1.5x10)の移植からの結果を例示する(n=16;体重、630〜490グラム)。移植後3週ごとに行動評価を分析した。結果は、移植後3週〜12週で評価される行動損傷の有意な改善があることを示した。スチューデントt検定:統計有意性として、p<0.05。**p<0.01および***p<0.001。(6a)アポモルフィン誘導性回転試験の分析によって、tNSC移植を受けた加齢PDラット(ii群、n=8、塗りつぶされた円)では、対照群としての未処置「加齢」PDラット(i群、n=8、塗りつぶされていない円)に比較して、3週から12週に、回転ターンが有意に改善されたことが立証される。(6b)は、無動症(秒)に関する行動評価結果を例示する。(6c)は、ステップ長(mm)に関する行動評価結果を例示する。(6d)は、ストライド長(mm)に関する行動評価結果を例示する。
図6-2】(6e)は、歩行速度(cm/秒)に関する行動評価結果を例示する。(6f)は、支持基底面(mm)に関する行動評価結果を例示する。(6g)は、行動評価に関して分析した歩行運動を例示する。Aは正常ラットに相関し、Bは細胞移植前の半身パーキンソン症状ラットに相関し、そしてCは細胞移植後の半身パーキンソン症状ラットに相関する。
図7】[0055]図7は、hTS細胞が、適切な誘導後、外胚葉、中胚葉および内胚葉を含む3つの一次胚葉層すべての構成要素を発現することを例示する;各パネルの左カラムは、誘導前の遺伝子発現に相関し;各パネルの右カラムは誘導後の遺伝子発現に相関する。
図8】[0056]図8は、フローサイトメトリー分析結果を例示し、hTS細胞が間葉系幹細胞マーカー(CD90、CD44、CK7、ビメンチンおよび神経フィラメント)を発現し、そして造血幹細胞マーカー(CD34、CD45、α6−インテグリン、E−カドヘリン、およびL−セレクチン)に関しては陰性であることを示す。
図9】[0057]図9は、適切な誘導に際して、hTS細胞が多様な特定の細胞表現型に分化可能であったことを示す。
図10】[0058]図10は、オス重症複合免疫不全(SCID)マウス内へのhTS細胞の皮下移植が、移植6〜8週後に粘液様の異様な細胞を伴う小規模なキメラ反応しか引き起こさなかった組織学的分析を例示する(塗りつぶされた黒い矢印は異様な細胞を示し;塗りつぶされていない矢印は筋繊維を示す;「NT」は針の跡を示す)。
図11】[0059]染色体分析は、hTS細胞が核型パターンを変化させていないことを示す(46、XY)。世代における細胞寿命をチェックするため、サザンブロット分析によれば、培養第三および第七継代の間で、有意なテロメア長短縮は観察されなかった。
図12】[0060]図12は、細胞分化に用いた特定の培地を例示する。
図13】[0061]図13は、RT−PCRに用いたPCRプライマーを例示する。
図14-1】[0062]図14は、形質膜でのシグナル分子としてのAhRの分析を例示し、Huh−7細胞におけるBBP(1μM)の導入による、形質膜でのトランスフェクションpGFP−C1−AhRの活性を含む。(14a)示す画像は、TIRF顕微鏡分析によって測定されたGFPタグ化AhRの相対強度の発現である。円および矢印は、時間に渡って測定した領域を示す:刺激前(最初のパネル)、ピーク時(第二のパネル)および休止時(第三のパネル)。グラフ(第四のパネル)はピーク値が約2分で見られることを示し、矢印は、BBPを添加した時点を示す。(14b)BBPに反応したmemAhRの定量的RT−PCR分析によって、5分で迅速な上昇があり、15分でピークに達し、その後、2時間でより低いプラトーレベルに漸次減少することが示される。エラーバーは、標準偏差を示す。P<0.05、t検定(n=3)。
図14-2】(14c)ウェスタンブロットアッセイの分析によって、BBPが15分でAhR上昇を促進し、その後、30分でわずかに減少させ、そして60分で再上昇させることが明らかになる。(14d)ウェスタンブロットアッセイの分析によって、BBPが30分でGαq/11およびGβ両方の産生を誘導することが明らかになる。(14e)免疫沈降(IP)アッセイによって、BBP刺激後のAhRおよびGαq/11間の相互作用が示され、文字Cは対照に相当する。(14f)siRNAによるAhRのノックアウトによって、BBPが、Huh−7細胞におけるウェスタンブロットによって測定されるAhRおよびGαq/11発現両方を抑制することが立証され、文字Sは陰性対照としてのスクランブル化siRNAを示す。
図15】[0063]図15は、動的免疫蛍光画像化の結果を例示する。(15a)は、未処置対照細胞の免疫染色を例示し;AhRおよびGαq/11発現は、Huh−7細胞において、主に核で、そして細胞質ゾルで弱く観察された。;バースケール:50μm。(15b)BBP(1μM)で5分および15分処理した細胞は、各々、核から細胞質ゾル区画へのAhRおよびGαq/11両方の転位置を明らかにする。免疫染色Gαq/11は、15分で細胞膜に特異的に集積する。(15c)AhR siRNAでトランスフェクションされた細胞は、細胞質ゾルおよび核区画両方で、AhR強度を非常に減少させ(上部パネル)、一方、スクランブル化siRNAでトランスフェクションされた細胞は、免疫染色強度を変化させない(下部パネル)。(15d)BBPは、AhR siRNAでプレトランスフェクションされた細胞において、15分後、AhRおよびGαq/11の両方の強度をレスキューした。
図16】[0064]図16は、二重免疫金透過型電子顕微鏡分析の結果を例示する。(16a)免疫金染色Gαq/11(白い矢印)は、対照として、Huh−7細胞中の細胞膜で、一重または二重または三重の実体として存在可能であった。(16b)20分時、BBP(1μM)処理細胞は、免疫金タグ化AhR粒子(サイズ6nm、黒い矢印)および免疫金タグ化Gαq/11粒子(サイズ20nm、白い矢印)の相互作用を示し、複合体を形成し、異なる実体として現れた:形質膜の単量体(未提示)、二量体(未提示)、三量体(左)および多量体実体(右)。(16c)AhRおよびGαq/11の三量体複合体が細胞膜に現れた。CM:細胞膜、N:核、およびバースケール:500nm。
図17-1】[0065]図17は、「引くおよび押す」機構および生化学プロセスを例示する。(17a)は、Huh−7細胞におけるBBP処理に反応したGαq/11シグナル伝達カスケードの測定を例示する。ウェスタンブロット分析は、BBP(1μM)が、30分時、Gαq/11およびGβ両方の産生を誘発することを明らかにした。活性化されたGαq/11は、PIP2の減少を導き、IP3Rレベルの増加を引き起こす。(17b)は、Huh−7細胞における免疫蛍光Fluo−4標識カルシウムの反応性の分析を例示する。示すのは、未標識細胞(左上部パネル)およびFluo−4標識カルシウム(緑、左下部パネル)である。やはり示すのは、BBS培地(中央上部パネル)およびカルシウム不含培地(中央下部パネル)におけるBBP(1μM)刺激(矢印)後の相対的カルシウムレベルの変化である。カルシウム不含培地中で培養し、IP3R阻害剤2−APB(100μM、1時間)で前処理した細胞(右上部パネル)は、カルシウム強度の減少を示し(右上部パネル)、これは用量反応方式で生じた(y=−0.4x+2.5、R=0.94)(右下部パネル)。エラーバーは、平均の標準偏差を示す(n=5)。
図17-2】(17c)ウェスタンブロット分析の結果は、2−APB(30μM、1時間)での前処理によって、BBP誘導性COX−2発現が阻害されたことを示し、文字Cは対照を示す。(17d)は、ウェスタンブロット分析の結果を例示し、BBP(1μM)がAhR/Ca2+/ERK/COX−2経路を通じて、COX−2の過剰発現を誘導したことを示す。ERK1/2は、BBP処理後、15分でリン酸化され、そして30分で脱リン酸化された。(17e)は、ウェスタンブロット分析の結果を例示し、BBP誘導性COX−2発現が化学薬品PD98059(20μM、1時間、Calciochem)での前処理によって阻害されたことを示し、文字Cは対照を示す。(17f)は、ARNTレベルが一晩測定されたBBP(1μM)での処理によって有意に阻害されたことを例示する。データは、平均±SD、n=3に相当し、そして:スチューデントt検定、p<0.01である。
図17-3】(17g)は、GPCR−Gタンパク質シグナル伝達を通じた、リガンド誘導性非ゲノムAhRシグナル伝達経路の根底にある、「引くおよび押す」機構の模式図を例示する。
図18】[0066]図18は、Nanog発現に対するLIFの影響を例示する。(18a)は、LIFがNanogの発現を促進することを例示する。左パネルは、フローサイトメトリー分析によって、Nanog発現が、hTS細胞において負の用量依存方式で有意に抑制されることを例示する。データは、3つのアッセイに関する平均±SDを示した。p<0.01(スチューデントt検定、n=3)。右パネルは、hTS細胞をRA(10μM)で一晩プレインキュベーションした後、異なるレベルのLIF(すなわち、各々、125、250および500U/ml)で1日処理した際の、相対Nanog発現を例示する。(18b)は、フローサイトメトリー分析によって、hTS細胞におけるRA誘導(1日インキュベーション、10μM)が、NanogおよびOct4の発現を刺激するが、Cdx2およびSox2の発現を刺激しなかったことを例示する。
図19】[0067]図19は、高齢PDラットにおける行動改善の評価を例示する。(19a)は、移植12週後の一連の脳切片(30μm)上のTH+ニューロンの免疫組織化学が、豊富な新規再生TH陽性ニューロンが病変黒質線条体経路に現れることを明らかにしたことを例示する(左部分)。SNC領域において、TH陽性ニューロンは、宿主組織とのニューロン回路網を形成する、細胞体から突き出す多数の伸長を伴う特徴を示した。再生ドーパミン作動性ニューロンの数は、1匹のラットにおいて、反対の正常な側の28.2%を占めた(n=5)。(19b)ラットの病変SNCにおけるドーパミン作動性ニューロンの数は、正常側に比較して、28.2%に再生した。
図20-1】[0068]図20:(20a)は、RT−PCRによって、ICMおよび栄養外胚葉(TE)両方の特定の遺伝子の発現を例示する;(20b)は、F1B−GFPプラスミド構築物のDNA混合物でhTS細胞をトランスフェクションして、95%を超える成功率を得たことを例示する;(20c)は、eIF4BのRA誘導性産生の時間経過を例示する;(20d)は、eIF4Bを用いることによって、c−Srcの活性化が阻害されたことを例示する;(20e)は、活性c−SrcがStat3(シグナル伝達性転写因子)に直接結合することを示すIP分析を例示する;
図20-2】(20f)は、c−Src siRNAがStat3の発現を阻害したことを例示する;(20g)は、Stst3 siRNAによってNanog発現が阻害されたことを例示する;そして(20h)は、hTS細胞における細胞内c−Src mRNA局在を通じた、RA誘導性c−Src/Stat3/Nanog経路のスキームを例示する。
図21-1】[0069]図21は、Gαq/11シグナル伝達経路の活性化を例示する:(21a)は、ウェスタンブロットによって、長期に渡るRA処理(10μM)後のGαq/11経路関連構成要素の発現を例示する;(21b)は、カルシウム不含培地中で培養され、そしてRA処理の20分前にBSS緩衝液中のFluo4(1μM)を前装填されたhTS細胞における、リアルタイム生存細胞画像化顕微鏡観察(Cell−Rシステム、Olympus、東京)を例示する。(a)細胞内カルシウムのRA誘導性枯渇は、CaCl(2mM)を添加することによってSOCEパターンでレスキューされた。(b)RA誘導性細胞内カルシウムレベルは、2−APB(10分)によって、有意な用量依存方式(R=0.8984)で阻害された。(c)ERカルシウムの枯渇後、KCl(60mM)は、L型カルシウムチャネルの活性化を可能にした。(d)KCl依存性L型カルシウムチャネルは、ERカルシウム枯渇後、阻害剤ニフェジピン(5μM)によってブロックされた。n:計数された総細胞;(21c)は、CaMKIIがCREB1およびeIF4Bと直接相互作用したことを例示する;(21d)は、ウェスタンブロットによって、eIF4B siRNAが、CaMKII、カルシニューリン、およびeIF4Bの発現を阻害したことを例示する;
図21-2】(21e)は、ウェスタンブロットによって、KN93(1μM、2時間)がeIF4B発現を阻害したことを例示する;(21f)は、パーキンがCaMKIIおよびMAPTと直接相互作用したことを例示する;(21g)は、SNCAがMAPTと直接相互作用したことを例示する;(21h)は、MAPTがGSK3βおよびα−チューブリンと相互作用したことを例示する;(21i)は、ウェスタンブロットによって、2−APBが、カルシニューリン、NFAT1、およびMEF2Aの発現を阻害したことを例示する;(21j)は、インポーチンおよびNFAT1の間の直接相互作用を例示する;(21k)は、分画アッセイによって、RAがNFAT1核転位置を刺激したことを例示する。ラミンA/C:核マーカーおよびα−チューブリン:細胞質マーカー;(21l)は、Akt2がGSK3βと直接相互作用したことを例示する;
図21-3】(21m)は、異なる抗体とともにRAで4時間(ブランクカラム)および24時間(黒いカラム)処理した細胞におけるGSK3β発現のフロー分析が動的変化を明らかにしたことを例示する。データは、平均±SD、n=3を示す;(21n)は、フローサイトメトリー分析が、Akt2 siRNAがRA誘導性GSK3β発現を阻害することを示したことを例示する。
図22-1】[0070]図22は、転写複合体の形成を例示する:(22a)は、β−カテニンおよびLEF1(上部)間、ならびにLEF1およびPitx2間の相互作用を例示する;(22b)は、LEF1が、RA処理(4時間)によって、遺伝子Pitx2遺伝子を転写するが、Pixt3を転写しなかったことを例示する;(22c)は、ウェスタンブロットによって、MEF2AがNFAT1、MEF2A、Pitx2、SNCA、およびEP300と直接相互作用したことを例示する;(22d)は、ウェスタンブロットによって、RAが、MEF2A、EP300、およびPitx2の産生を長期に渡って誘導したことを例示する;(22e)は、ウェスタンブロットによって、NFAT1 siRNAがMEF2Aの発現を阻害したことを例示する;(22f)は、CREB1が、遺伝子MEF2Aのプロモーターをターゲティングしたことを例示する;
図22-2】(22g)は、MEF2Aが遺伝子SNCA(上部)、TH(中央部)、およびMES2A自身(下部)を転写したことを例示する;(22h)は、ウェスタンブロットによって、MEF2A siRNAが、EP300、Pitx2、およびMEF2Aの発現を阻害したことを例示する;(22i)は、EP300が遺伝子HDAC6(上部)およびTH(下部)のプロモーターをターゲティングしたことを例示する;(22j)は、ウェスタンブロットによって、4時間および24時間の時点での多様な分子活性の同定を例示する。略語、IP:免疫沈降アッセイ;ChIP:クロマチン免疫沈降アッセイ。
図23】[0071]図23は、hTS細胞におけるRA誘導性神経発生の模式的制御ネットワークを例示する(上部パネル)。2つのmRNA翻訳機構:キャップ依存性(左下部)およびキャップ非依存性(右下部)。灰色の線:時空間シグナル伝達経路;黒線:転写経路;双頭の矢印:他の経路への連結がある分子。
図24-1】[0072]図24は、RAシグナル伝達がWnt2B/Fzd6/β−カテニン経路を促進することを例示する:(24a)は、前処理Wnt2B siRNAの阻害作用によって明らかであるように、RA(10μM)一晩で、Wnt2B、Dvl3、およびFRAT1の有意な活性化が誘導されるが、GSK3βが阻害されたことを例示する。データは平均±SD;n=3を示す;(24b)はRA RT−PCRによって、Fzd6 mRNA発現の増加を例示する。データは平均±SD;n=3を示す、*:スチューデントt検定によるp<0.05;(24c)は、ウェスタンブロットによって、RAが、長期に渡るβ−カテニンおよびHDAC6の発現変化を誘導したことを例示する;
図24-2】(24d)は、IPアッセイが、RAとの一晩インキュベーションによる、HDAC6およびβ−カテニンの間の物理的相互作用を明らかにしたことを例示する;(24e)は、一晩インキュベーション後の分画アッセイによって、RAがβ−カテニンの核/細胞質転位置を誘導したことを例示する。ラミンおよびα−チューブリンは、それぞれ、核および細胞質マーカーとして働く;(24f)は、RA誘導性β−カテニンおよびHDAC6の動的変化が、30分でのβ−カテニンの核転位置を示し、これがHDAC6 siRNAによって阻害されたことを示す、共焦点免疫蛍光顕微鏡観察を例示する;(24g)は、RA処理5分後のシナプス領域において、点状にβ−カテニンが現れたことを例示する(矢印)。
図25】[0073]図25は、共焦点免疫蛍光顕微鏡分析を例示する。HDAC6に対するsiRNAの存在下で、β−カテニンの核局在がブロックされた。
図26-1】[0074]図26は、細胞膜での分子事象を例示する:(26a)は、ウェスタンブロットによって、RAが、長期に渡るGαq/11、Gβ、RXRα、およびRARβの産生を誘導したことを例示する。β−アクチンは対照としてである;(26b)は、リアルタイム共焦点免疫蛍光顕微鏡分析を例示し、RA刺激の0、4.5、および13分後の核周辺領域から細胞膜(矢印)に向かう、代表的なGFPタグ化RXRαの移動を明らかにする。核にはRXRαは見えなかった。順相対比(左上部)および蛍光画像(右上部)。バーは30μmを示す;(26c)は、核(N)から細胞膜(M)への時系列での相対的定量的GFPタグ化RXRαの動的移動および強度の変化を例示する。順相対比および蛍光画像を上部右に示す;
図26-2】(26d)は、代表的な画像が、RA5分間による、細胞膜でのRXRαおよびGαq/11の同時発現を明らかにしたことを例示する;(26e)は、20分のRA処理後に観察された、細胞膜でのRXRα(6μm;黒い矢印)およびGαq/11(20μm;白い矢印)の二重免疫金標識を例示する。N:核;(26f)は、RXRα siRNAがGαq/11およびRXRαのRA誘導性相互作用を阻害したことを例示する(24時間);(26g)は、RARβ siRNAがGβおよびRARβのRA誘導性相互作用、ならびにGβおよびPI3Kの相互作用を阻害したことを例示する(24時間)。IP:免疫沈降アッセイ;IgG:陰性対照;C:陽性対照;(26h)は、IPアッセイ分析を例示し、選択的c−Src阻害剤PP1類似体がRXRα−RARβヘテロ二量体の形成を防止可能であったことを示すことを例示する;(26i)は、二重免疫金透過型電子顕微鏡によって観察された小胞体(ER)におけるRA誘導性金粒子タグ化RXRαの係留を例示する。
図27】[0075]図27は、RT−PCRによって、RAが古典的Wnt2B経路を刺激することを例示する;RAは、hTS細胞において、一晩処理(10μM)後、統計的に有意にWnt2Bシグナル伝達経路の構成要素の発現を誘導し;Wnt2B siRNAは、一晩処理後、Wnt2B経路のRAに誘導された構成要素を阻害した。
図28-1】[0076]図28は、RXRαおよびRARβの局所合成を例示する:(28a)は、RT−PCRによって、RA(10μM)が、15分で、RXRα mRNAおよびRARβ mRNA両方の迅速な一過性上昇を誘導したことを例示する。データは、平均±SD;n=3を示す、t検定:p<0.05;(28b)は、ウェスタンブロットによって、RAが、長期に渡って、PI3KおよびAktアイソフォームの発現を誘導したことを例示する;(28c)は、フローサイトメトリーによって、PIK3阻害剤124005が、RA誘導性Aktアイソフォームを阻害した(24時間)ことを例示する。データは、平均±SD;n=3を示す;
図28-2】(28d)は、ウェスタンブロットによって、Akt3がmTORと相互作用するが、Akt3 siRNAによって阻害されたことを例示する;(28e)は、ウェスタンブロットによって、RAが、mTORの一時的発現を誘導することを例示する;(28f)は、Akt3 siRNAが、mTORのRA誘導性リン酸化を阻害したことを例示する;(28g)は、mTORが4EBP1と直接相互作用した(4時間)ことを例示する;(28h)は、mTOR siRNAまたは4EBP1 siRNAのプレインキュベーションを伴いまたは伴わず、RA(4時間)によって処理されたhTS細胞を、mTOR、4EBP1、eIF4EおよびeIF4Bの発現に関してウェスタンブロットによって分析したことを例示する;(28i)は、ウェスタンブロットによって、eIF4E siRNAが、RXRαおよびGαq/11間(上部)のならびにRARβおよびGβ間(下部)のRA誘導性相互作用(4時間)を阻害したことを例示する。
図29】[0077](29a)は、RT−PCRによって、hTS細胞における一晩処理後、PI3K阻害剤が、Aktアイソフォーム、Akt1、2、および3のRA誘導性発現を抑制したことを例示する;(29b)RT−PCRによって、Akt2阻害剤が、β−カテニン mRNAの発現を阻害したことを例示する;(29c)フローサイトメトリーによって、Akt3 siRNAがmTORの発現を抑制したことを例示する。
図30】[0078]図30は、CREB1がTHの転写を促進することを例示する:(30a)は、ウェスタンブロットによって、CREB1が、Akt1およびβ−カテニンと直接相互作用したことを例示する;(30b)は、Akt1 siRNAがCREB1の発現を阻害したことを例示する。β−アクチン:対照;(30c)は、CREB1がTH遺伝子のプロモーターをターゲティングしたことを例示する。(30d)は、ウェスタンブロットによって、CREB1 siRNAがTHの発現を阻害したことを例示する;(30e)は、免疫蛍光組織分析によって、PDラット脳(右パネル)において、tNSCの移植12週後、療法SNC側においてDAニューロン(白い矢印)中、TH−FITC(青色)およびTH−Cy−3(赤色)の同時発現が明らかになったことを例示する。正常側(左上部)および療法側(左下部)における拡大されたDAニューロン。陽性CREB1染色が核に見られた;(30f)は、正常(左;n=86)および療法側(右;n=114)において、DAニューロン中で発現された、THおよびCREB1の相対平均強度を示すヒストグラムを例示する。エラーバー:平均±SD;n;計数された総細胞;p<0.05:統計的有意。
図31】[0079]図31は、免疫組織蛍光分析を例示する:対照のSNCにおけるTH(+)およびNeuN(+)運動ニューロン(矢印)(左上部)。6−OHDA傷害後1週間の減少したTH(+)(矢印)。傷害6週後、TH陽性神経末端(緑色顆粒)の攪乱および多様な変性腔形成(赤い爆発した円)を伴うTH(+)ニューロン減少が見られた。移植後、変性腔(赤い爆発した円;挿入図)の壁でTH(+)ニューロン(矢印)が見られ、TH(+)神経末端(緑色)は、腔内に突き出している(右下部)。
図32-1】[0080]図32は、より少ない免疫反応での、TH(+)およびGFAP(+)細胞のin vivo再生を例示する:(32a)は、傷害後、TH(+)細胞の数が1週後および6週後、それぞれ、病変SNC(濃い灰色)で48%および13%に、そして病変線条体(明るい灰色)で78%および4%に減少したことを例示する。移植後、TH(+)細胞は、病変SNCおよび線条体において、それぞれ、67%および73%に再増殖した(右パネル)。ソフトウェアTissuequest2.0(TissueGnostics Gmbh、オーストリア・ウィーン)によってデータを分析した;(32b)は、損なわれていない側(右上部、挿入図b)に比較した、拡大を伴う病変SNC(下部パネル)(左上部、挿入図a)におけるドーパミン作動性ニューロンの再生を例示する;(32c)は、tNSC移植が、12週後、損なわれていない側に比較して、病変SNCにおいて、TH陽性ニューロン(矢印)の78.4±8.3%(平均±SEM;n=4)の回復率を生じたことを例示する;
図32-2】(32d)は、病変線条体(左カラム)において、傷害6週後、TH−FITC(+)およびGFAP−Cy−3(+)ウィルソン鉛筆(ブランクの矢印)の変性を例示する。移植12週後(右カラム)、いくつかのGFAP(+)細胞(矢印)は、再確立されたウィルソン鉛筆(ブランクの矢印)の細かい線維の内部に現れた;(32e)は、免疫組織蛍光画像分析を例示し、細胞を、細胞サイズ(直径8〜10μm)の位置によって決定したゲート(左のスキャッタープロット)で計数し、そしてGFAP−Cy−3の対応する強度を計測した。ゲート(赤いスキャッタープロット):グリア細胞を計数;黒いスキャッタープロット;異様なサイズの爆発した(exclusive)細胞;青いスキャッタープロット:異常なGFAP強度の細胞。線条体において、GFAP(+)細胞は、損なわれていない側(右パネル)に比較して、処理前の病変側で65.5%であり、そして細胞療法後、93.9%になった;(32f)は、SCIDマウス内へのhTS細胞移植が、小規模な免疫反応しか生じず、そして腫瘍形成は観察されなかったことを例示する。粘液様の異様な細胞(黒い矢印)、筋線維(黒い矢印)および針の跡(NT)。
図33】[0081]図33は、慢性PDラットにおける免疫組織蛍光スキャッタープロットによって測定された、TH−FITCおよびNeuN−Cy−3間の測定の係数を用いて、細胞療法前および後のSNCにおけるTH(+)細胞の資質を例示する。(33左上部)は、正常SNCを例示する:R=0.72;(33右上部)は、6−OHDA損傷によるSNCを例示する(1週);R=0.77;(33左下部)は、6−OHDA損傷によるSNCを例示する(6週);R=0.25;(33右下部)は、tNSC移植後のSNCを例示する(12週);R=0.66。示す結果は2匹のラットの平均に相当する。
【発明を実施するための形態】
【0048】
[0082]神経組織由来幹細胞、多能性胚性幹細胞(ESC)由来の表現型が明記された前駆細胞、および多様な分化転換(transdifferential)非神経幹細胞由来の神経細胞は、すべてニューロンおよびグリアを生成する能力に関して前臨床研究において調べられてきており、そして臨床試験における神経幹細胞の使用が記載されてきている。胚性幹(ES)細胞は、細胞療法剤として潜在能力が示されてきているが(Bjorklund, L. M.ら Proc. Nat. Acad. Sci. 2002, 99, 2344−49)、こうした療法へのアクセスは限定されており、そして道徳的懸念と関連づけられている。
【0049】
[0083]幹細胞は、自己再生能および神経幹細胞を含む関連づけられた前駆体を産生する能力を所持する。Reubinoff B. E.ら, Nat. Biotech. 2001, 19, 1134−1140。
【0050】
[0084]本明細書に提供するのは、トロホブラスト組織由来の単離神経幹細胞である。さらに本明細書に提供するのは、頑強であり、そして細胞培養において数回の継代を生き抜き、そしてまた多能性および免疫特権の特性も所持する、単離神経幹細胞(tNSC)である。本明細書に記載する1つの態様において、ヒト・トロホブラスト幹(hTS)細胞由来のtNSCからドーパミン作動性ニューロンを誘導するための方法を記載する。本明細書にさらに提供するのは、ドーパミン作動性ニューロンになる、移植されたtNSCの生存および増殖を可能にする方法、ならびに現在の療法措置に比較して減少した可変性を伴う結果を達成する、損なわれていない行動の回復の評価法である。
【0051】
[0085]やはり本明細書において提供するのは、マウス胚性フィーダー細胞を用いることなく、問題がある混入を回避して培養されるhTS細胞由来の単離神経幹細胞である。本明細書に提供するのは、他の起源の細胞からドーパミン作動性ニューロンを誘導するのに用いられる他の方法とは区別可能な、hTS細胞由来tNSCを効率的にそして再現可能に生成して、均一な混合集団サブセットを導く方法である。本明細書に提供するのは、ドーパミン作動性tNSCを細胞懸濁物として脳内に移植し、それによって組織移植に関連する不均一な増殖を回避するための方法である。
【0052】
[0086]本明細書に提供するのは、誘導薬剤で幹細胞を調節して、ニューロン特性を持つ細胞に分化させる方法である。1つの態様において、誘導薬剤は、幹細胞における1またはそれより多いタンパク質の発現または調節活性を調節する。1つの態様において、1またはそれより多いタンパク質の1つは、Wnt2B、Fzd6、Dvl3、FRAT1、GSK3β、HDAC6、β−カテニン、Gαq/11、Gβ、RXRα、RARβ、GLuR1、PI3K、AKt1、AKt2、AKt3、mTOR、EIF4EBP、CREB1、TH(チロシンヒドロキシラーゼ)、PLC−β、PIP2、CaMKII、EIF4B、パーキン、SNCA、チューブリン、カルシニューリン、CRMP−2、NFAT1、インポーチン、LEF1、Pitx2、MEF2A、またはEP300である。1つの態様において、幹細胞は、トロホブラスト、胚性または人工前駆体幹細胞である。1つの態様において、ニューロン特性を持つ細胞は、NSC、ドーパミン産生細胞、ドーパミン作動性ニューロン、単極ニューロン、双極ニューロン、多極ニューロン、錐体細胞、プルキンエ細胞、および前角細胞、バスケット細胞、ベッツ細胞、レンショウ細胞、顆粒細胞、または中型有棘細胞である。
【0053】
[0087]やはり本明細書に提供するのは、幹細胞を誘導薬剤で調節して、免疫原性が減少した細胞に分化させる方法である。1つの態様において、誘導薬剤は、幹細胞において、1またはそれより多いタンパク質の発現または調節活性を調節する。1つの態様において、1またはそれより多いタンパク質の1つは、Wnt2B、Fzd6、Dvl3、FRAT1、GSK3β、HDAC6、β−カテニン、Gαq/11、Gβ、RXRα、RARβ、GLuR1、PI3K、AKt1、AKt2、AKt3、mTOR、EIF4EBP、CREB1、TH(チロシンヒドロキシラーゼ)、PLC−β、PIP2、CaMKII、EIF4B、パーキン、SNCA、チューブリン、カルシニューリン、CRMP−2、NFAT1、インポーチン、LEF1、Pitx2、MEF2A、またはEP300である。1つの態様において、幹細胞は、トロホブラスト、胚性または人工前駆体幹細胞である。1つの態様において、免疫原性が減少した細胞は、T細胞、B細胞、マクロファージ、ミクログリア細胞、マスト細胞、またはナチュラルキラー(NK)細胞による免疫反応を誘導しないか、またはこうした免疫反応を阻害可能である。
【0054】
ヒト・トロホブラスト幹細胞(hTS細胞)
[0088]ヒト卵管は、女性において、受精部位であり、そして子宮外妊娠の一般的な部位であり、ここでは、いくつかの生物学的事象、例えば内部細胞塊(ICM)および栄養外胚葉間の区別、ならびに主要なエピジェネティック変化を伴う全能性から多能性への切り換えが起こる。これらの観察は、卵管を、着床前段階の胚盤胞関連幹細胞を採取するニッチ貯蔵所と見る裏付けを提供する。子宮外妊娠は、先進国において、すべての妊娠の1〜2%を占め、そして発展途上国でははるかに多い。ヒト胚性幹細胞(hES細胞)および胎児脳組織の入手可能性が低いことを考慮して、本明細書に記載するのは、前駆細胞生成用の非常に入手しにくいhES細胞の代替物としての子宮外妊娠由来のヒト・トロホブラスト細胞(hTS細胞)の使用である。
【0055】
[0089]1つの態様において、子宮外妊娠由来のヒト・トロホブラスト細胞は、ヒト胚の破壊を伴わない。別の態様において、子宮外妊娠由来のヒト・トロホブラスト細胞は、生存可能なヒト胚の破壊を伴わない。別の態様において、ヒト・トロホブラスト細胞は、非生存性子宮外妊娠と関連するトロホブラスト組織由来である。別の態様において、子宮外妊娠は救うことが不可能である。別の態様において、子宮外妊娠は、生存可能なヒト胚を導かない。別の態様において、子宮外妊娠は母親の生命を脅かす。別の態様において、子宮外妊娠は、卵管、腹部、卵巣または子宮頸のものである。
【0056】
[0090]胚盤胞発生中、ICM接着自体またはそれに由来する拡散可能な「誘導因子」が、極性栄養外胚葉において、高速の細胞増殖を誘発し、胚盤胞段階全体で、壁領域への細胞の移動を導き、そしてこれは、ICMからの栄養外胚葉の区別後であっても続きうる。ICMに重層する壁栄養外胚葉細胞は、ICMの「細胞記憶」を保持することが可能である。通常、着床開始時、子宮内膜からの機械的束縛のため、ICMの反対側の壁細胞は分裂を停止する。しかし、こうした制約は卵管には存在せず、子宮外妊娠の停滞した胚盤胞において、極性栄養外胚葉細胞の分裂が続いて、胚外外胚葉(ExE)が生じる。1つの態様において、ExE由来TS細胞は、ICM分泌線維芽細胞増殖因子4(FGF4)およびその受容体、線維芽細胞増殖因子受容体2(Fgfr2)の相互作用に応じて、少なくとも4日間のウィンドウで増殖状態で存在する。別の態様において、ExE由来TS細胞は、少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日、少なくとも7日、少なくとも8日、少なくとも9日、少なくとも10日、少なくとも11日、少なくとも12日、少なくとも13日、少なくとも14日、少なくとも15日、少なくとも16日、少なくとも17日、少なくとも18日、少なくとも19日、少なくとも20日のウィンドウで、増殖状態で存在する。臨床介入が生じるまで、これらの細胞プロセスは、着床前胚において、無限数のhTS細胞を生じる可能性もあり;こうした細胞は、ICM関連遺伝子の発現によって反映される、ICMからの細胞記憶を保持する。
【0057】
[0091]本明細書に記載する1つの側面は、子宮着床前のhTS細胞および絨毛性栄養膜細胞層である。1つの態様において、hTS細胞は、内部細胞塊(ICM)(Oct4、Nanog、Sox2、FGF4)および栄養外胚葉(Cdx2、Fgfr−2、Eomes、BMP4)の両方の特異的遺伝子を所持し(図1a)、そしてすべての3つの一次胚葉の構成要素を発現する(図7)。別の態様において、hTS細胞は、hES細胞関連表面マーカー、例えばステージ特異的胚性抗原(SSEA)−1、−3および−4(図1b)、ならびに間葉系幹細胞関連マーカー(CD44、CD90、CK7およびビメンチン)を発現し、一方、造血幹細胞マーカー(CD34、CD45、α6−インテグリン、E−カドヘリン、およびL−セレクチン)を発現しなかった(図8)。1つの態様において、hTS細胞は、誘導に際して、3つの一次胚葉の多様な特異的細胞表現型に分化可能であった(図9)。オス重症複合免疫不全(SCID)マウス内にhTS細胞を皮下移植すると、移植6〜8週後、組織学的に小規模なキメラ反応しか引き起こされなかった(図10)。1つの態様において、染色体分析によって、hTS細胞は、核型パターンを変化させなかった(46、XY)(図11)。別の態様において、細胞寿命は、培養第三および第七継代の間でテロメア長において、有意に短縮されなかった(図1c)。
【0058】
[0092]本明細書に提供する1つの側面は、hTS細胞および胎盤由来間葉系幹(PDMS)細胞間の全体的な遺伝子比較のため、GeneChipヒトゲノムU133プラス2.0 GeneChipを調べるAffymetrixTMプラットホームを用いて、hTS細胞およびPDMS細胞の間の区別を記載する。1つの態様において、hTS細胞は、PDMS細胞におけるよりも約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、または約75%少ない遺伝子発現を示した。別の態様において、hTS細胞は、全部で2,140遺伝子(倍変化>2倍)を示し、これはPDMS細胞におけるもの(3,730遺伝子)より約40%少ない(図1d)。1つの態様において、hTS細胞の遺伝子強度分布は、PSMS細胞におけるものとは異なる均質なパターンを示した。別の態様において、hTS細胞は、着床前段階での栄養膜細胞層の別個な群に相当し、これによって、これらは、内部細胞塊(ICM)および/または栄養外胚葉の分子ポートレートを所持する。別の態様において、hTS細胞は、hES細胞のものと類似の多能性および自己再生特性を示す。
【0059】
LIFの退薬は、hTS細胞において、Nanogの過剰発現を仲介する
[0093]栄養膜細胞層は、ヒトにおける合胞体栄養細胞の前駆体である(Benirschke, K., Kaufmann, P. Pathology of the human placenta中, 39−51 Spring−Verlag New York Inc., 1990)。トロホブラスト特定ゾーンは、胚が桑実胚の際に確立され、その細胞ゾーンでの転写因子の別個の組み合わせ、ならびにこれらに対する多様な環境上の合図および増殖因子の影響を反映する。
【0060】
[0094]多くの証拠によって、初期エピブラストおよび真正ES細胞の天然多能性が、3つの転写オーガナイザー、Oct4、性決定領域Y−ボックス2(Sox2)、およびNanogの作用に依存することが示されている(Chambers I.ら, Oncogene, 23:7150−7160(2004); Niwa H. Development, 134:635−646(2007))。ES細胞は、異なるシグナル伝達経路、ならびに白血病阻害因子(LIF)、Nanog、Sox2、およびオクタマー結合転写因子3および4(Oct3/4)を含む転写因子の複雑な相互作用を通じて多能性を維持する。転写因子Nanogは、マウスおよびヒトES細胞の多能性の維持に重要な役割を果たしている一方、LIFは、Oct4およびNanogと協同で、多能性および自己再生を補助するよう働く(Cavaleri, F.ら Cell 113, 551−552(2003))。
【0061】
[0095]インターロイキン6クラスのサイトカインであるLIFは、細胞増殖および分化に影響を及ぼす。LIFは、白血病阻害因子受容体α(LIFR−アルファ)に結合し、該受容体は、膜糖タンパク質130(GP130)共通受容体と、ヘテロ二量体受容体複合体を形成する。LIFの結合は、ヤヌスキナーゼ(JAK)/シグナル伝達性転写因子(STAT)シグナル伝達経路ならびにマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)経路の活性化を導く。LIFは、通常、発生中の胚の栄養外胚葉において発現される。LIFは、未分化状態を維持する際に役割を果たすと考えられる。幹細胞培養からのLIFの除去は、通常、培養幹細胞の分化を導く。LIFはまた、幹細胞維持に必須の役割を果たすことが知られる遺伝子であるNanogの発現にも影響を及ぼす。
【0062】
[0096]通常、多面的サイトカイン、白血病阻害因子(LIF)は、子宮内膜におけるよりも卵管において、より高い濃度で発現され、膨大部から卵管峡部に向かって、漸次減少を示す(図1g)。子宮外妊娠の間、LIFレベルは卵管において2〜4倍増加する(Wanggren, K.ら, Mol. Hum. Reprod. 2007, 13, 391−397)。機能的には、LIFは、他のシグナルを組み込んで、多能性転写因子、例えばOct4およびNanogを活性化して、マウス胚性幹(mES)細胞における多能性および自己再生を維持することも可能である。LIFを退薬すると、細胞増殖は続くが、尾側関連ホメオボックス転写因子Cdx2が活性化され、胚性幹(ES)細胞における栄養外胚葉分化が誘発される。
【0063】
[0097]1つの態様において、多能性および自己再生の特性をhTS細胞がどのように維持するかを決定する方法を記載する。1つの態様において、LIFと多能性転写因子(例えばSmith, A. G.ら, Nature 336, 688−690(1998), Williams, R. L.ら, Nature 336, 684−687,(1998), Cavaleri, F.ら, Cell 113, 551−552(2003); Chambers I.ら, Cell, 2003;113:643−655, Boiani, L. A.ら, Nature Rev. Mol. Cell Biol. 6, 872−884(2005)に記載される因子)の関連をhTS細胞において調べた。
【0064】
[0098]妊娠5〜8週、卵管子宮外妊娠を患っている女性からhTS細胞を得て、そしてこれらの細胞は、栄養膜細胞層の別個の集団として特徴付けられ、ICM由来ヒト胚性幹(hES)細胞および栄養外胚葉の特定の遺伝子マーカー(例えば、Adjaye, J.ら, Stem Cells, 2005, 23, 1514−1525に記載されるマーカー)を所持した(図1a)。
【0065】
[0099]本明細書に提供するのは、1つの態様において、LIFに対する前記細胞の曝露を調節することによって、hTS細胞分化に影響を及ぼす方法である。例えば、hTS細胞を3つの群に分け、そして異なる濃度のLIFに曝露する。1つの態様において、LIFの濃度は、約1000、約750、約600、約550、約525、約500、約450、約400、約350、約300、約250、約200、約150、約125、約100、約75、約50、または約25単位/mLである。別の態様において、LIFの濃度は、500、250、および125単位/mLである。1つの態様において、LIFの濃度は500単位/mLである。別の態様において、LIFの濃度は250単位/mLである。別の態様において、LIFの濃度は125単位/mLである。
【0066】
[00100]1つの態様において、hTS細胞を1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30日間、異なる濃度のLIFに曝露する。別の態様において、hTS細胞を3、6、12、18、24、30、36、48、60、72、84、96、108、120、132、144、156、168、180、192、204、216、228、240、または252時間、異なる濃度のLIFに曝露する。別の態様において、約1〜30、約1〜28、約1〜26、約1〜24、約1〜22、約1〜20、約1〜18、約1〜15、約1〜13、約1〜10、約1〜9、約1〜8、約1〜7、約1〜6、約1〜5、約1〜4または約1〜2日間、hTS細胞を異なる濃度のLIFに曝露する。別の態様において、hTS細胞を3日間、異なる濃度のLIFに曝露する。
【0067】
[00101]本明細書記載の1つの側面は、より低い濃度のLIFが、限定されるわけではないが、Oct4、Sox2、Cdx2、およびNanogを含む特定の遺伝子の発現を変化させることである。別の態様は、RT−PCRによって、LIFの退薬および/または低濃度のLIFが、Oct4およびSox2発現を抑制し、そして対照的にCdx2およびNanogを促進することを立証する。1つの態様において、これらの現象は、用量依存方式でのOct4およびSox2の抑制を示すフローサイトメトリー分析によってさらに確認された(図1f)。
【0068】
[00102]別の態様において、Oct4/Cdx2比の相対発現は、初期胚分化において、細胞の運命を示す。別の態様において、LIF曝露の退薬および/または減少は、Oct4発現減少を導く。別の態様において、LIF曝露の退薬および/または減少は、用量依存方式で、転写因子Cdx2、Nanog、およびSox2の発現を促進し、これは定量的PCR(qPCR)分析と一致する。
【0069】
[00103]本明細書記載の別の側面は、hTS細胞における、卵管のLIFレベルの傾向(図1g)と適合し、それによって、hES細胞に向かう細胞運命の選択を暗示する、卵管峡部に向かう漸次減少を伴う、膨大部での高いOct4/Cdx2比である。1つの態様において、相対的Nanog/Cdx2比の上方制御(2倍)はさらに、細胞における多能性を強制する。1つの態様において、相対的Nanog/Cdx2比の上方制御(2倍)は、hTS細胞における多能性を維持する。別の態様において、Sox2/Cdx2発現比は、hTS細胞の多能性の維持を変化させない。別の態様において、Cdx2過剰発現は、hTS細胞がトロホブラスト表現型を維持するのに好ましい。
【0070】
[00104]本明細書記載の1つの態様は、hTS細胞におけるNanogおよびCdx2間の関係を調べる方法である。別の態様において、siRNAを用いることによるNanogおよびCdx2両方のノックアウト研究は、それぞれ、Cdx2およびNanog発現を促進し(図1h)、細胞運命選択のためのES細胞におけるOct4およびCdx2のものと同様、hTS細胞において、NanogおよびCdx2間の相反性の関係を裏付ける(Niwa, Hら, Cell 123, 917−929)。別の態様において、上昇したNanog/Cdx2比と組み合わせたNanog過剰発現は、減少したOct4/Cdx2比を補償し、そしてhTS細胞において、細胞分化運命を決定する多様性および/または再生の維持に十分である。
【0071】
[00105]本明細書の1つの側面は、LIF退薬に際してのNanog過剰発現が、hTS細胞の多能性を維持する役割を果たす、少なくとも1つの因子であることを示す。
レチノイン酸(RA)および関連経路
[00106]ビタミンAの誘導体であるレチノイン酸(RA)は、ES細胞分化および胚形成において役割を果たす。ES細胞において、RAは、核受容体に結合し、そして特定のターゲット遺伝子の転写を誘導することによって作用して、多くの異なる細胞タイプを生成する。1つの態様において、RAでの誘導は、hTS細胞由来tNSCが特定のパターン形成で安定して未分化の状態を維持することを可能にする。
【0072】
[00107]1つの態様において、hTS細胞をオールトランスレチノイン酸(RA)で処理すると、ラット疾患モデル(例えばパーキンソン病モデル)への移植に適した神経幹細胞が生じる。別の態様において、hTS細胞におけるLIF曝露の退薬および/または減少は、hTS細胞の多能性および自己再生維持に関与するNanogの過剰発現を仲介する。やはり本明細書に記載するのは、可逆性上皮間葉転換(EMT)、骨形成タンパク質(BMP)およびWntシグナル伝達経路クロストークにおいて役割を果たす経路を含み、そして神経幹細胞形成のためにターゲット遺伝子Pitx2を誘発する、RAに誘導されたhTS細胞が神経幹細胞に分化するのを可能にする特定の分子経路である。したがって、1つの態様は、hTS細胞から神経幹細胞を生成するためのRA関連経路の調節因子の使用を記載する。
【0073】
RAは、NSCサブタイプの均一な複合体を誘導する
[00108]1つの態様において、hTS細胞を誘導して神経幹細胞を産生する。1つの態様において、hTS細胞を誘導剤に曝露するかまたは誘導剤で処理する。1つの態様において、誘導剤には、限定されるわけではないが、レチノイン酸、神経増殖因子、塩基性線維芽細胞増殖因子、ニューロトロピン(例えばニューロトロピン3)および/またはその組み合わせが含まれる。さらなる例示的誘導剤には、限定されるわけではないが:エリスロポエチン(EPO)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、ウィングレス型MMTV組込み部位(Wnt)タンパク質(例えばWnt3a)、トランスフォーミング増殖因子アルファ(TGFα)、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGFβ)、骨形成タンパク質(BMP)、甲状腺ホルモン(T3およびT4型の両方を含むTH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、甲状腺放出ホルモン(TRH)、ヘッジホッグタンパク質(例えばソニック・ヘッジホッグ)、血小板由来増殖因子(PDGF)、サイクリックAMP、下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)、濾胞刺激ホルモン(FSH)、成長ホルモン(GH)、インスリン様増殖因子(IGF、例えばIGF−1)、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)、プロラクチン(PRL)、プロラクチン放出ペプチド(PRP)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、エストロゲン、セロトニン、上皮増殖因子(EGF)、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、白血病阻害因子(LIF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、黄体ホルモン(LH)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、フェロモン(例えば、2−sec−ブチル−4,5−ジヒドロチアゾール、2,3−デヒドロ−エキソ−ブレビコミン、アルファおよびベータ・ファルネセン、6−ヒドロキシ−6−メチル−3−ヘプタノン、2−ヘプタノン、トランス−5−ヘプテン−2−オン、トランス−4−ヘプテン−2−オン、n−ペンチルアセテート、シス−2−ペンテン−1−イル−アセテート、2,5−ジメチルピラジン、ドデシルプロピオネート、および(Z)−7−ドデセン−1−イルアセテート)、および/またはその組み合わせが含まれる。別の態様において、誘導剤は、天然誘導剤の活性を有する類似体または変異体である。
【0074】
[00109]限定されない例として、レチノイン酸を用いて、hTS細胞を化学的に誘導する。多面発現因子オールトランスレチノイン酸(RA)は、限定されるわけではないが、ES細胞においてRA/RAR/RXRシグナル伝達、Wntシグナル伝達およびERK経路を含む多数の経路を通じて、神経分化、パターン形成および運動軸索伸長において、in vivo機能を行う(Maden, M. Nat. Rev. Neuroscience 8, 755−765(2007)、Lu Jら, BMC Cell Biol. 2009, 10:57、Wichterle Hら, Cell. 2002; 110:385−397)。RAは、mES細胞(Wichterle Hら, Cell. 2002; 110:385−397)、hES細胞(Li, L.ら Stem Cells 22, 448−456(2004))および成人神経発生(Jacobs Sら, Proc Natl Acad Sci 2006, 103(10):3902−7)において、ドーパミン作動性ニューロンの特徴となる酵素であるチロシンヒドロキシラーゼ(TH)の発現、および神経突起形成を誘導する。
【0075】
[00110]1つの態様において、RAで処理したhTS細胞の運命を決定する方法を記載する。別の態様において、hTS細胞を、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、20、25、30、35、40、45、50、55、60、または65μMのRAで処理する。別の態様において、hTS細胞を0.5〜75、約1〜65、約1〜60、約1〜50、約1〜55、約1〜50、約1〜40、約1〜35、約1〜30、約1〜25、約1〜20、約1〜15、約1〜13、約1〜10、約2〜10、約5〜10、または約8〜10μΜのRAで処理する。別の態様において、hTS細胞を10μMのRAで処理する。
【0076】
[00111]1つの態様において、hTS細胞を1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、または40日間、RAに曝露する。別の態様において、hTS細胞を3、6、12、18、24、30、36、48、60、72、84、96、108、120、132、144、156、168、180、192、204、216、228、240、または252時間、RAに曝露する。別の態様において、hTS細胞を約1〜20、約1〜18、約1〜15、約1〜13、約1〜10、約1〜9、約1〜8、約1〜7、約1〜6、約1〜5、約1〜4または約1〜2日間、RAに曝露する。別の態様において、hTS細胞を異なる期間:各々、1、2、3、4、5、6、7、または8日間、RAに曝露する。別の態様において、hTS細胞を1日間、RAに曝露する。別の態様において、hTS細胞を2日間、RAに曝露する。別の態様において、hTS細胞を3日間、RAに曝露する。別の態様において、hTS細胞を4日間、RAに曝露する。別の態様において、hTS細胞を5日間、RAに曝露する。別の態様において、hTS細胞を6日間、RAに曝露する。別の態様において、hTS細胞を7日間、RAに曝露する。別の態様において、hTS細胞を8日間、RAに曝露する。
【0077】
[00112]1つの態様において、RAは、多様な表現型神経細胞へのhTS細胞分化を誘導し、こうした神経細胞には、限定されるわけではないが、神経幹細胞マーカーであるネスチンを免疫細胞化学的に発現している、グリア制限前駆体(GRP)、ニューロン制限前駆体(NRP)、多能性神経幹(MNS)細胞、アストロサイト(AST)、および未定義トロホブラスト巨細胞(TGC)が含まれる(図2a)。別の態様において、混合RA誘導性神経前駆体の類似の分布比が1〜5日間のRA誘導期間に渡って生じる。別の態様において、細胞分化は、7日間のRA処理に渡って、未定義トロホブラスト巨細胞になる。
【0078】
[00113]したがって、本明細書に提供するのは、1つの態様において、hTS細胞に由来するRA誘導性神経幹細胞である。別の態様において、RA誘導期間は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、または40日間である。別の態様において、RA誘導期間は、3、6、12、18、24、30、36、48、60、72、84、96、108、120、132、144、156、168、180、192、204、216、228、240、または252時間である。別の態様において、RA誘導期間は、約1〜20、約1〜18、約1〜15、約1〜13、約1〜10、約1〜9、約1〜8、約1〜7、約1〜6、約1〜5、約1〜4または約1〜2日間である。別の態様において、RA誘導期間は、1〜7日間である。別の態様において、RA誘導期間は、1日間である。別の態様において、RA誘導期間は、2日間である。別の態様において、RA誘導期間は、3日間である。別の態様において、RA誘導期間は、4日間である。別の態様において、RA誘導期間は、5日間である。別の態様において、RA誘導期間は、6日間である。別の態様において、RA誘導期間は、7日間である。別の態様において、RA誘導期間は、24時間である。別の態様において、RA誘導期間は、12時間である。別の態様において、RA誘導期間は、1時間〜24時間である。
【0079】
[00114]本明細書に記載するのは、1つの態様において、少なくとも1つの神経幹細胞遺伝子およびマーカーを発現するtNSCである。別の態様において、tNSCは、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つまたは少なくとも5つの神経幹細胞遺伝子を発現する。別の態様において、tNSCは、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つまたは少なくとも5つの神経幹細胞マーカーを発現する。神経幹細胞遺伝子およびマーカーの限定されない例には、ネスチン、神経フィラメント、Ngn−3、MAP−2、Neo−D、CD133およびOct4が含まれる(図2b)。1つの態様において、tNSCはまた、RA受容体遺伝子も発現し、これには、限定されるわけではないが、RARβ、RXRα、およびRXRβ、細胞性レチノイン酸結合タンパク質(CRABP)−2、細胞性レチノール結合タンパク質(CRBP)−1、そして特に、ES細胞には存在しないことが見出されたRA−合成酵素、RALDH−2および−3が含まれる。
【0080】
[00115]したがって、1つの態様は、tNSCの分化能を促進するための、ネスチン、神経フィラメント、Ngn−3、MAP−2、Neo−D、CD133およびOct4、RA受容体遺伝子、例えばRARβ、RXRαおよびRXRβ、CRABP−2、CRBP−1、RA−合成酵素、RALDH−2および−3などを含む発現された神経幹細胞遺伝子およびマーカーの使用、および/またはその調節を記載する。1つの態様において、3日間および5日間のRA誘導性hTS細胞はどちらも、同様の比で、ネスチン、GFAPおよび神経フィラメントタンパク質を含む神経幹細胞マーカーを維持する(図2c)。別の態様において、これらのtNSCは、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)および5−ヒドロキシトリプタミン(5−HT)を免疫細胞化学的に発現し(図2d)、ドーパミン作動性ニューロンならびにセロトニン作動性ニューロンに分化するこれらの能力が暗示される。本明細書記載の別の態様は、tNSCのドーパミン作動性ニューロンおよびセロトニン作動性ニューロンへの分化である。
【0081】
[00116]さらに本明細書に提供するのは、細胞培養において、遺伝的および表現型的に定常状態で維持可能な、均一に混合された神経上皮前駆細胞からなるtNSCである。産物におけるこの一貫性は、幹細胞に基づく療法を含む任意の治療措置に望ましい特性である。
【0082】
Nanog発現に関するLIFおよびRA間の関連
[00117]初期胚発生において、tNSCは、典型的にはRALDH−2を発現する。本明細書記載の1つの態様は、hTS細胞において、LIFがRA誘導性神経発生にどのように影響を及ぼすかを評価する方法である。LIFがRA誘導性ニューロン分化をマウスES(mES)細胞において阻害する能力によって、移植がより困難になる(Martin−Ibanez Rら, J. Neuron. Res. 85, 2686−2710(2007)、Bain Gら, Dev Biol 168:342−357)。他の報告は、ES細胞がニューロンに分化する際のLIFの陽性の役割を主張する(Tropepe V, Neuron 2001, 30:65−78)。
【0083】
[00118]1つの態様において、hTS細胞におけるNanog発現に関するLIFおよびRA間の関連を評価する方法を記載する。別の態様において、tNSCをLIFで処理し、そしてフローサイトメトリーによるNanog発現の測定に供する(図18a)。1つの態様において、tNSCを、約1000、約750、約600、約550、約525、約500、約450、約400、約350、約300、約250、約200、約150、約125、約100、約75、約50、または約25単位/mLのLIFで処理する。別の態様において、tNSCを、1〜1000、1〜500、1〜450、1〜400、1〜350、1〜300、1〜250、1〜200、1〜150、1〜125、1〜100、1〜75、または1〜50単位/mLのLIFで処理する。別の態様において、tNSCを、500、250、および/または125単位/mLのLIFで処理する。
【0084】
[00119]1つの態様において、hTS細胞を1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10日間、LIFに曝露する。別の態様において、hTS細胞をLIFに一晩曝露する。別の態様において、hTS細胞を、3、6、12、15、18、22、24、30、36、48、60、72、84、96、108、120、132、144、156、168、180、192、204、216、228、240、または252時間、LIFに曝露する。別の態様において、hTS細胞を、約1〜20、約1〜18、約1〜15、約1〜13、約1〜10、約1〜9、約1〜8、約1〜7、約1〜6、約1〜5、約1〜4または約1〜2日間、LIFに曝露する。
【0085】
[00120]1つの態様において、RAでのhTS細胞の処理は、Nanog過剰発現を誘導する。別の態様において、LIFは、RA誘導性Nanogを用量依存方式で抑制する。別の態様において、LIFは、tNSC発生に対して阻害作用を発揮する。
【0086】
[00121]本明細書記載の1つの側面は、LIFがES細胞の神経分化に対してRAと相互作用することである。1つの態様において、LIFは、hTS細胞において、多能性に対するRAの影響に影響を及ぼす。結果によって、RAは、hTS細胞において、NanogおよびOct4の過剰発現を誘導するが、Cdx2およびSox2の過剰発現を誘導しないことが示された(図18b)。脳の帯状回峡領域において、Nanog発現がLIF誘導細胞の62.5%で観察された(図1F、左および右パネル)が、RA誘導細胞ではわずか26.9%であった(図18b)。より高レベルのLIFは、一般的に、RA誘導性Nanogを抑制し、そしてLIFの退薬は、RA誘導性Nanog発現を有意に増進することもまた観察された(図18a)。これらの結果は、hTS細胞が帯状回峡に向かって移動することを示した。1つの態様において、RAは、Nanog発現によって、細胞多能性を維持する。
【0087】
[00122]1つの態様において、RA濃縮微小環境におけるtNSCの移植は、幹細胞の連続増殖をin vivoで促進する。別の態様において、tNSCは、脳内に移植される。別の態様において、tNSCは、海馬、大脳皮質、線条体、中隔野、間脳、中脳、後脳、または脊髄基底核に移植されるかまたは注入される。別の態様において、tNSCは、脳の線条体内に移植される。別の態様において、tNSCは、中枢神経系の任意の部分に移植されるかまたは注入される。別の態様において、tNSCは、特定の神経変性障害において変性する細胞の神経末端領域内に移植されるかまたは注入される。別の態様において、tNSCは、黒質緻密部中、中脳内に移植されるかまたは注入される。別の態様において、tNSCは、前脳における神経末端領域内に移植されるかまたは注入される。別の態様において、tNSCは、脳室系内に移植されるかまたは注入される。別の態様において、tNSCは、側脳室内に移植されるかまたは注入される。
【0088】
tNSCの多能性維持におけるGタンパク質シグナル伝達
[00123]本明細書に記載する別の側面は、tNSCがその多能性状態をどのように維持しているかを調べる方法である。1つの態様において、RAは、約15分でc−Src mRNA発現ピークを誘導する(図3a)。本明細書に記載する別の態様は、ウェスタンブロット分析によって、RXRα、c−SrcおよびRARβのRA刺激発現に基づくGPCRシグナル伝達経路を評価する(図3b)。1つの態様において、RAは、30分間でGαq/11およびGβ発現の両方を促進する。別の態様において、免疫沈降(IP)アッセイの分析は、RAがRXRαおよびRARβ間の直接結合を誘導するが、この相互作用は、c−Src阻害剤PP1類似体によってブロックされることを立証し、c−Srcが、RXRαおよびRARβ間に関与して、足場タンパク質複合体を形成することを示す(図3c)。
【0089】
[00124]免疫沈降(IP)分析によって(図3d)、本発明者らは、RXRαがGαq/11との結合相互作用を示し、一方、RARβは、Gβと独立に結合相互作用を示すことを観察した。これらの結果は、GPCR−Gタンパク質シグナル伝達の「引くおよび押す」モデルと適合する(Tsaiら, “The ubiquitin ligase gp78 promotes sarcoma metastasis by targeting KAIl for degradation”. Nat. Med. 13, 1504−1509, (2007))。
【0090】
[00125]1つの態様において、RARおよびRXRのヘテロ二量体対は、核および内因性細胞表面シグナル分子において、リガンド活性化転写因子の役割を果たす。恒常的に活性化されたRXRαは、受容体コンホメーションを破壊し、そしてc−Srcを補充して、会合したGαq/11と相互作用させ、そして/または該分子を活性化する。1つの例において、この非ゲノムRAシグナル伝達は、非レチノイン酸応答配列(RARE)仲介性遺伝子発現の解釈を補助する(Maden, M., Nat. Rev. Neuroscience 8, 755−765(2007))。
【0091】
[00126]したがって、本明細書に提供するのは、本明細書に提供する神経幹細胞の移植前および移植後の細胞過剰増殖を防止するための戦略である。1つの態様は、RA関連経路を調節し、それによって過剰増殖および/または移植片拒絶を防止し、そして/または減少させ、そして/または軽減する剤の使用を記載する。
【0092】
癌原遺伝子チロシン−プロテインキナーゼ(Src)およびNanog
[00127]c−Srcは、ES細胞を未分化状態に維持する(Anneren C.ら, J Biol Chem. 279, 590−598(2004))。NanogおよびStat3は、Stat3依存性プロモーターに相乗的に結合して、これを活性化する(Torres J.ら, Nat Cell Biol. 10, 194−201(2008))。1つの態様において、c−Srcは、Tyr705部位でのシグナル伝達性転写因子3(Stat3)リン酸化を誘導し、そしてこの作用は、c−Src阻害剤、プロテインホスファターゼ1(PP−1)類似体によってブロックされ、それによって、c−SrcおよびStat3分子間が関連づけられる(図3f)。別の態様において、Stat3は、Nanogプロモーターに直接作用する(図3g)。別の態様において、Stat3は、Nanogプロモーターには直接作用しない。別の態様において、RXRαは、Nanogプロモーターに直接作用する。別の態様において、RXRαは、Nanogプロモーターには直接作用しない。別の態様において、RARβは、Nanogプロモーターに直接作用する。別の態様において、RARβは、Nanogプロモーターには直接作用しない。別の態様において、RAは、hTS細胞において、c−Src、pStat3(図3e)、およびNanog(図1e)の過剰発現を誘導する。別の態様において、RXRαおよびRARβはどちらも、GPCR−Gタンパク質シグナル伝達を通じて、RAに反応して形質導入の役割を果たす。
【0093】
[00128]本明細書に記載するのは、1つの態様において、tNSCにおける多能性を維持する方法であって、c−Src/Stat3/Nanog転写経路を活性化する工程を含む、前記方法である。別の態様において、c−SrcおよびGαq/11の相互作用は、c−Src/Stat3/Nanog経路を活性化する。画像化研究によって、RXRαおよびGαq/11間の直接相互作用をさらに検証するため、二重免疫金蛍光透過型電子顕微鏡(IEM)を利用した。RAは、形質膜で、金小粒子標識RXRα(6μm)および金大粒子標識Gαq/11(20μm)間の結合相互作用を誘導した(図4)。動的共焦点免疫蛍光顕微鏡観察によって、どちらも免疫染色されたRXRαおよびGαq/11は、主に、細胞質または核いずれかの均質な特徴で現れた(図4、上部パネル)。RAで5分間処理することによって、細胞質ゾルRXRα強度は、核周辺領域で増加した一方、核では減少し(図4、第一のカラム)、刺激後に細胞質ゾルに転位置したことが示された。核RXRα強度は、15分で顕著になり、一方、細胞質ゾルのものは減少した(図3a)。
【0094】
[00129]1つの態様において、細胞核における活性の増加は、細胞の定常状態を維持する。明確な細胞質ゾル転位置が30分で再び観察された。一方、Gαq/11発現の区画変化は、RXRαのものと類似であった(図4、第二のカラム)。1つの態様において、刺激30分後、細胞膜でGαq/11の明確な集積が観察された。別の態様において、RAは、hTS細胞において、RXRαおよびGαq/11両方の合成および恒常的な転位置の促進を可能にする。
【0095】
[00130]したがって、本明細書に提供するのは、tNSCの生成のため、ゲノムRA/RXR/RAR経路から区別可能な、形質膜でのGタンパク質共役受容体(GPCR)−Gタンパク質シグナル伝達を通じた、hTS細胞に対して作用するRAの使用である。本明細書に示すように、hTS細胞をtNSCに分化させる際、RAは、NanogおよびOct4を通じて作用するが、CdxおよびSox2経路では作用しない。本明細書にやはり提供するのは、tNSCにおける多能性および自己再生の維持のための、RA誘導性Nanog活性化の使用である。本明細書に提供するのは、Gタンパク質共役型受容体(GPCR)−Gタンパク質シグナル伝達経路のRA活性化、ならびにRXRα/Gαq/11/c−Src/Stat3/Nanog経路の同時活性化の使用である。本明細書に提供するのは、tNSCにおける多能性の維持のため、形質膜でのシグナル伝達分子としてのRXRαおよびRARβ機能のヘテロ二量体の使用である。やはり本明細書に提供するのは、多能性および再生の維持のため、Nanog過剰発現によるhTS細胞の神経幹細胞(NSC)へのRA誘導性分化の使用である。
【0096】
[00131]本明細書に記載するtNSCは、神経発生を補助する、レチンアルデヒドデヒドロゲナーゼ(RALDH)−2および−3を発現する。本明細書に記載するtNSCにおけるRALDHの存在およびCD33の非存在によって、tNSCが感覚運動ニューロンへの分化において、hES細胞より優れていることが示される。したがって、本明細書に提供するのは、神経発生および/または再生医薬のための、本明細書記載のtNSCの使用である。
【0097】
[00132]線条体および海馬の発生において、増加したSrcキナーゼ活性は、ニューロン分化および増殖のピーク期間と一致する。しかし、RAは、24時間のインキュベーションによって、リボソームS6キナーゼおよびその下流の真核開始因子4B(eIF4B)のリン酸化を抑制して、多くの細胞タイプで増殖抑止を引き起こしうる。RAは、hTS細胞において、15分で、c−Src mRNAピークの迅速な一過性発現を誘導し(図3a)、その後、1時間でc−Srcタンパク質を産生する(図3e)。1つの態様において、c−Src mRNAは、内部リボソーム進入部位を含有する。別の態様において、RAは、eIF4Bを一過性に産生し、4時間でピークとなるが、24時間で徐々に消えていく(図20c)。この作用は、eIF4B siRNAを用いることによって阻害された(図20d)。mTOR/eIF4EBP1シグナル伝達(ラパマイシン/真核開始因子4E結合タンパク質1の機械的ターゲット)の関与は排除された(図20b)。別の態様において、RAは、eIF4Bを細胞内mRNA局在のために活性化して、c−Srcを産生する。
【0098】
[00133]活性c−Srcは、部位Tyr705のリン酸化によって、Stat3(シグナル伝達性転写因子)に直接結合して(図20c)、タンパク質を産生する(図3e)。1つの態様において、この作用は、c−Src siRNAを用いることによって阻害される(図20f)。別の態様において、この作用は、選択的c−Src阻害剤PP−1類似体によって阻害される(図3f)。別の態様において、Nanog遺伝子プロモーターに対するStat3の直接作用は、クロマチン免疫沈降(ChIP)アッセイによって観察される(図3g)。別の態様において、Nanogは4時間で産生され(図3fおよび20f)、これはPP1類似体(図3f)およびStat3 siRNA(図20g)を用いることによって遮断可能であった。
【0099】
[00134]本明細書に記載するのは、1つの態様において、tNSCの多能性を維持する方法であって、細胞を誘導剤に曝露して、非ゲノムeIF4B/c−Src/Stat3/Nanogシグナル伝達経路仲介性c−Src細胞内mRNA局在を調節する工程を含む、前記方法である(図20h)。別の態様において、誘導剤はRAである。
【0100】
RAおよびWntシグナル伝達
[00135]本明細書にやはり提供するのは、hTS細胞を神経幹細胞に誘導する方法である。1つの態様において、方法は、Wnt2B/ベータ−カテニンシグナル伝達経路を調節する工程を含む。別の態様において、方法は、RAR−Aktシグナル伝達経路を調節する工程を含む。別の態様において、方法は、Wnt2B/ベータ−カテニンシグナル伝達経路およびRAR−Aktシグナル伝達経路を調節する工程を含む。別の態様において、hTS細胞は、レチノイン酸(RA)の処理によって誘導される。別の態様において、hTS細胞を神経幹細胞に誘導する方法は、転写因子Pitx2を活性化する工程をさらに含む。別の態様において、hTS細胞を神経幹細胞に誘導する方法は、転写因子ネトリン(NTN)を活性化する工程をさらに含む。別の態様において、hTS細胞を神経幹細胞に誘導する方法は、転写因子Pitx2およびNTNを活性化する工程をさらに含む。別の態様において、RARおよびRXRは、そのDNA結合ドメイン(DBD)を通じてレチノイン酸応答配列(RARE)DR−5に結合するヘテロ二量体として存在する。別の態様において、コリプレッサーはRARに結合し、そしてヒストンデアセチラーゼ(HDAC)を補充して、転写抑制を引き起こす。別の態様において、hTS細胞を神経幹細胞に誘導する方法は、転写因子Pitx2およびNTNの活性化をさらに含む。別の態様において、RAをhTS細胞に添加し、そしてRARへのRA結合によって転写を活性化する。別の態様において、RARはRAに結合し、そして次いで、コアクチベーターおよびHATを補充する。
【0101】
[00136]RA仲介性Wntシグナル伝達経路は、in vivoで成人神経発生および生存中の必須の寄与因子である。神経幹細胞微小環境中に存在するWntタンパク質は、初期胚発生において細胞性の振る舞いの重要な制御因子であり、そして神経幹細胞強度を維持しうる。成人神経発生において、Wntタンパク質は、受容体フリズルド(例えばFzd6)に結合して、例えば特定のターゲット遺伝子に関するベータ−カテニン/LEFシグナル伝達を活性化することによって、多くのシグナル伝達カスケードを形質導入する。
【0102】
[00137]Wntシグナルは、神経発生中、細胞周期調節および形態形成に関与する。これらの中で、Wnt2Bは、網膜ニューロンの分化を阻害可能であり、そして比較インテグロミクス(integromics)分析を用いて、NSCの幹細胞因子であると示唆されてきている。1つの態様において、Wnt2Bは、フリズルドファミリー受容体6(Fzd6)の発現を調節する。別の態様において、Wnt2Bは、Fzd6の発現を誘導する。別の態様において、Fzd6は、Wnt2Bの存在下で過剰発現される。1つの態様において、RAは、hTS細胞におけるドーパミン作動性分化のための古典的Wnt2B/Fzd6/β−カテニンシグナル伝達経路を調節する。1つの態様において、RAは、hTS細胞におけるドーパミン作動性分化のための古典的Wnt2B/Fzd6/β−カテニンシグナル伝達経路を誘導する。
【0103】
[00138]本明細書に提供する1つの態様は、阻害性GSK3βを誘導するとして古典的Wnt経路を記載し、これが細胞において核転位置のためのβ−カテニンの安定化を生じる。別の態様において、RAは、Akt2の下流エフェクターであるGSK3βのリン酸化を、Tyr216部位で迅速に誘導する。別の態様において、RAは、Tyr216部位でGSK3βのリン酸化を迅速に誘導し、最初の数時間でβ−カテニンのリン酸化を導き、これが、後の古典的Wnt経路の「プライミング」効果として働く。別の態様において、これらの活性化されたFzd6およびDvl3は、c−Jun N末端キナーゼ(JNK)と細胞骨格の相互作用を促進するか、または細胞内Ca2+レベルを増加させ、これが次に、非古典的Wnt/Ca2+シグナル伝達経路において、シナプス機能のためCaMKIIを活性化する。時間が進むにつれ、非古典的から古典的Wnt経路への切り換えが起こり、Ser9/21部位でのGSK3βのリン酸化に寄与する。1つの態様において、Gタンパク質は、初期段階で非古典的Wnt2Bシグナル伝達の伝達を制御する。別の態様において、古典的Wnt2Bシグナル伝達は、初期発生ニューロン分化のより後の段階で起こる。
【0104】
HDAC6
[00139]本明細書にやはり提供するのは、hTS細胞を神経幹細胞に誘導する方法であって、ヒストンデアセチラーゼ6(HDAC6)を調節する工程を含む、前記方法である。主に細胞質に位置する酵素であるヒストンデアセチラーゼ6(HDAC6)は、細胞遊走、免疫シナプス形成、ウイルス感染、およびミスフォールディングされたタンパク質の分解を含む、多くの生物学的プロセスを制御する。例えば、HDAC6は、チューブリン、Hsp90およびコルタクチンを脱アセチル化し、そして他のパートナータンパク質と複合体を形成する。
【0105】
[00140]HDAC6は、β−カテニンを核局在のためにシャトルすることが可能である。1つの態様において、HDAC6は、細胞内分画アッセイによれば、β−カテニンと相互作用し、β−カテニンの核転位置を導く。別の態様において、RAは、新規古典的Wnt2B/Fzd6/β−カテニンシグナル伝達経路を誘導し、hTS細胞におけるβ−カテニンの核転位置を可能にする。核において、β−カテニンは、重要な遺伝子発現プログラムを仲介する際に、または転写を刺激する多様な転写コアクチベーターのドッキング・プラットホームとして関与する。
【0106】
HDAC4
[00141]ヒストンデアセチラーゼ4(HDAC4)は、機能性hTS細胞誘導性神経幹細胞の重要なエピジェネティクス制御因子である。HDAC4は、細胞周期進行を阻害し、そしてニューロンを細胞死から保護する。RARによる転写制御は、核コリプレッサーによってRAターゲット遺伝子に補充される、HDACによるクロマチン修飾を伴い、RAに対する示差反応を決定する。
【0107】
LEF/TCF/Pitx2
[00142]Lef−1およびPITX2は、ベータ−カテニンを補充してそしてこれと相互作用して、ターゲット遺伝子を活性化することによって、Wntシグナル伝達経路において機能する。PITX2は、Lef−1タンパク質内の2つの部位と相互作用する。さらに、ベータ−カテニンは、PITX2ホメオドメインと相互作用し、そしてLef−1はPITX2 C末端テールと相互作用する。Lef−1およびベータ−カテニンは、2つの異なる部位を通じてPITX2と同時にそして独立に相互作用して、PITX2転写活性を制御する。これらのデータによって、示差Lef−1アイソフォーム発現、ならびにLef−1およびベータ−カテニンとの相互作用を通じた、細胞増殖、遊走、および細胞分裂におけるPITX2の役割が裏付けられる。
【0108】
ネトリン1(NTN1)
[00143]NTN1の分子機構は、軸索ガイダンスおよびニューロン細胞遊走の調節に主に関与すると見なされる。
【0109】
RAによるWnt/PS1/PI3K/Akt経路の活性化およびGSK3−ベータの阻害
[00144]増加したWntシグナル伝達は、幹細胞プールを拡大し、そして安定化されたβ−カテニンの発現を強制し、増殖性前駆細胞の数の増加および分化したニューロンの対応する減少のため、大きな脳を生じる(Chenn, A.ら, Science 297, 365−369, (2002))。β−カテニンは、接合部タンパク質として、そして古典的Wntシグナル伝達において、二重の役割を有し、表現型は、Wntシグナル伝達増加(NSC自己再生に関連する)または接合部安定性増加による可能性がある。
【0110】
PI3K/Aktシグナル伝達
[00145]本明細書に記載するのは、1つの態様において、tNSCの多能性を維持する方法であって、PI3K/Aktシグナル伝達経路を調節する工程を含む、前記方法である。G−タンパク質ベータ/ガンマヘテロ二量体はまた、ホスホイノシチド−3−キナーゼ、制御サブユニット5(PI3G regクラスIB(p101))も活性化し、これがホスホイノシチド−3−キナーゼ、触媒性ガンマポリペプチド(PI3K catクラスIB(p110−ガンマ))が仲介するホスファチジルイノシトール4,5−ビホスフェート(PtdIns(4,5)P2)のホスファチジルイノシトール3,4,5−トリホスフェート(PtdIns(3,4,5)P3)[3]への変換を導く。PtdIns(3,4,5)P3は、3−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ−1(PDK(PDPK1))およびV−aktネズミ胸腺腫ウイルス癌原遺伝子相同体1(AKT(PKB))に直接結合する二次メッセンジャーである。PDK(PDPK1)は、AKT(PKB)をリン酸化し、そしてAKTシグナル伝達を活性化する[4]。
【0111】
[00146]PI3K/Aktシグナル伝達は、以下の幹細胞系において、自己再生および分化能を制御する。始原生殖細胞(PGC)からの多能性胚性生殖(EG)細胞の派生は、PGC特異的Pten欠損マウスにおいて増進される(Kimura T,ら, Development 130: 1691−1700, (2003))。
【0112】
[00147]Aktシグナル伝達の条件的活性化を用いると、1つの態様において、PI3K/Aktシグナル伝達は、休止幹細胞の活性化において役割を果たすことが示される。別の態様において、PI3K/Aktシグナル伝達は、成人表皮における前駆体の増殖において役割を果たす。
【0113】
[00148]1つの態様において、PI3K/Aktシグナル伝達は、培養に適応したこれらの幹細胞における拘束された前駆体の生成よりも、幹細胞の自己再生を促進する。1つの態様において、RAは、hTS細胞において、タンパク質RXRαおよびRARβをコードする細胞内mRNA翻訳を誘発する、Akt3/mTORシグナル伝達の活性化を調節する。1つの態様において、RAは、hTS細胞において、タンパク質RXRαおよびRARβをコードする細胞内mRNA翻訳を誘発する、Akt3/mTORシグナル伝達の活性化を誘導する。別の態様において、誘導剤は、Akt3/mTORシグナル伝達の活性化を阻害する。別の態様において、選択的移動およびRXRα/Gαq/11およびRARβ/Gβシグナル伝達経路の相互作用は、独立に開始される。
【0114】
[00149]別の態様において、RAは、多指向性および細胞背景依存性の方式に応じて、細胞機能のための遺伝的プログラム転写活性を制御し;すなわち出力表現型は、AP−1および/またはベータ−カテニン−LEF/TCF阻害およびRARE活性化の影響の組み合わせである。
【0115】
GSK3βは微小管集合を制御する
[00150]hTS細胞は、GSK3βの初期活性化がニューロン分化を促進し、そして後期不活性化が神経発生における前駆体増殖を促進する、主なGSK3β機能を含む。休止細胞において、GSK3の基本的な活性は、一般的に比較的高く、一方、細胞がガイダンスの合図に曝露されると、その特異的活性は、10分間で30〜70%減少しうる。GSK3βは、すでにリン酸化されている基質に強い優先性を有し;したがって、古典的Wnt2Bシグナル伝達においては、先にプライミングされたβ−カテニンは、後の阻害性GSK3βに好ましいものとなる。
【0116】
[00151]1つの態様において、迅速な時空間活性GSK3βは、軸索増殖コアに局在するMAPTをリン酸化し、チューブリンヘテロ二量体の活性化を導き(図21aおよび21b)、これが微小管集合、ニューロン極性、および軸索伸長を促進し、これは軸索微小管集合にGSK3βの活性化が関与するという概念と一致する。さらに、GSK3βはまた、CRMP−2のリン酸化を制御可能であり、微小管集合に寄与し、それによって、CRMP−2はチューブリンヘテロ二量体に優先的に結合し、この二量体はMAPTのものとは異なるようである。CRMP−2の突然変異体は、ドミナントネガティブ方式で、軸索成長および分枝を阻害する。
【0117】
[00152]本明細書に提供するのは、1つの態様において、GSK−3シグナル伝達がホメオスタシス調節の重要な仲介因子であり、発生中の脳において神経前駆体を制御するというin vivoでの説明を補助する機械的基礎である。別の態様において、PI3K/Akt経路の最初の局所活性化は、hTS細胞において、Tyr216でのGSK3βの活性化を誘導する。1つの態様において、PI3K/Akt経路の最初の局所活性化は、E18ラット胚から単離された海馬ニューロンにおいて、Ser9/21リン酸化によって誘導されるGSK3βの不活性化とは別である。1つの態様において、GSK3βの異なる部位でのリン酸化は、時間要因に応じて、異なる細胞運命を生じる。リン酸化されたGSK3βは、核排出を促進することによって、カルシニューリン誘導性NFAT1のDNA結合を防止する。NFATは、免疫反応中のT細胞におけるサイトカイン遺伝子を含めて、遺伝子転写を促進する際に中心的な役割を果たす。これらの事実は、少なくとも部分的に、hTS細胞およびtNSCがどちらも、PDラットにおいて頭蓋内移植を促進する免疫上の利点を所持するのはなぜかを説明する。
【0118】
Gタンパク質およびニューロン可塑性
[00153]NSCにおける高い度合いの自律性は、神経発生中、mRNAサブセットの選択的局在および翻訳によって、ガイダンスの合図に対する迅速な局所反応を可能にする。ここで、mTORは、典型的には、NSCにおいて、mRNA翻訳およびリボソーム合成の重要な制御因子をリン酸化することを通じて、タンパク質合成を上方制御する。hTS細胞において、活性Akt3/mTORシグナル伝達は、mRNA翻訳を誘発して、独立にRXRαおよびRARβタンパク質を合成し、これがそれぞれ、Gαq/1およびGβシグナル伝達経路を活性化する。ここで、局所CREB1が活性化され、そして転写のためにTH遺伝子を一過性にターゲティングする誘導性遺伝子発現に役割を果たし、神経伝達因子ドーパミンを産生する。樹状突起RNA顆粒において、RAがRARα発現を促進し、そして局所グルタミン酸受容体1(GluR1)合成を活性化することが示され、ホメオスタシスシナプス可塑性を暗示する。したがって、CREBの上流エンハンサーであるドーパミンD1/D5受容体の活性化は、ニューロンのシナプス部位でのGluR1挿入を誘導可能である。
【0119】
[00154]本明細書に提供するのは、1つの態様において、RAシグナル関連可塑性の研究のための分子モデルである。
ドーパミン作動性神経発生のための転写因子
[00155]1つの態様において、核におけるβ−カテニンおよびCREB1の相互作用は、TH転写の主流に相当する。1つの態様において、活性β−カテニンはリンパ系エンハンサー因子1/T細胞因子1(LEF1)に結合し、転写のリプレッサーからアクチベーターへのLEF1の切り換えを導く。LEF1は、次いで、ビコイド関連因子のスーパーファミリーのメンバーであるPitx2を補充し、そしてこれと相互作用する。1つの態様において、LEF1は、Pitx2遺伝子転写を促進する。別の態様において、LEF1はPitx3遺伝子を促進する。別の態様において、LEF1は、Pitx3およびPitx2遺伝子転写の両方を促進する。1つの態様において、β−カテニン、Pitx2、およびLEF1は相乗的に相互作用して、LEF−1プロモーターを制御する。
【0120】
[00156]さらに、一過性核活性NFAT1は、転写因子として働いて、免疫反応のため、サイトカインおよびTNF−αを産生する。しかし、この作用は、この場合に起こる可能性は低く、これはリン酸化されたGSK3βが、核におけるカルシニューリンに誘導されたNFAT1のDNA結合を阻害し、そして核排出を促進することも可能であるためである。したがって、活性細胞質NFAT1は、細胞質転写因子筋細胞エンハンサー因子2A(MEF2A)と相互作用し、そしてこれを活性化し(図22cおよび22d)、これは、この作用がNFAT1 siRNAによって阻害可能であったためである(図22e)。特に、迅速な誘導性CREB1は核に進入し、そしてMEF2A遺伝子を転写し、MEF2Aタンパク質を産生した(図22f)。MEF2Aは、遺伝子転写で多数の方式で機能可能であり(図22g)、より多くのMEF2Aを産生する自己制御を通じた自身の転写、ドーパミン作動性特定のためのTH遺伝子転写、SNCA/MAPT/パーキン複合体形成のためのSNCA遺伝子の転写、ならびにEP300およびPitx2との相互作用が含まれ、これは、MEF2A siRNAによって阻害された(図22h)。
【0121】
[00157]1つの態様において、活性ER300は、HDAC6遺伝子およびTH遺伝子をターゲティングする。1つの態様において、活性ER300はHDAC6遺伝子をターゲティングする。別の態様において、活性ER300はTH遺伝子をターゲティングする。1つの態様において、活性ER300はHDAC6遺伝子およびTH遺伝子の転写を促進する。別の態様において、活性ER300はHDAC6遺伝子およびTH遺伝子の転写を阻害する。別の態様において、HDAC6は核転位置のため、β−カテニンを輸送する。
【0122】
[00158]本明細書に提供するのは、1つの態様において、TH遺伝子転写のために形成され、そして運命づけられる実行転写複合体の性質決定である。例えば、CREB1、EP300、およびMEF2Aは、TH遺伝子のプロモーターをターゲティング可能であり、一方、β−カテニン、LEF1、およびPitx2は、転写プロセス中のエンハンサーのコアクチベーターとして実行する。本明細書に提供するのは、1つの態様において、これらの遺伝子が、ドーパミン作動性NSCにおいて分化および増殖間のバランスをどのように制御するかを理解する方法であり、これは疾患機構(例えばPD)の評価のための暗示を有する。
【0123】
CaMKIIの多様な面
[00159]NSC発生において、電位開口型カルシウムチャネルまたは神経伝達分子受容体いずれかを通じた局所カルシウム流入は、CaMKIIの活性化を生じ、いくつかのメッセージを先に送達する。1つの態様において、時空間CaMKIIは、活性化されたeIF4Bを通じてc−Src mRNA局在を誘発し、c−Srcタンパク質を合成して、興奮−転写カップリングのため、hTS細胞における自己再生および増殖のためのNanog活性化を生じる。別の態様において、CAMKIIは、局所CREB1の活性化を誘発し、転写のため遺伝子MEF2Aをターゲティングする、核への逆行性の追跡を導く。MEF2Aは、ニューロン分化および増殖においてのみではなく、骨格筋および心筋発生においても細胞性の機能を仲介する。1つの態様において、CaMKIIはMAPT仲介パーキンタンパク質を活性化し、そして次に、MAPTが微小管集合のため、チューブリンヘテロ二量体を活性化する(図22aおよび22j)。これらの結果は、初期時空間CaMKIIシグナルが、初期発生中のNSCにおいて微小管集合、ニューロン遊走、およびニューロン分極を促進するチューブリンの活性化に十分であり、脳における線条体ターゲットとの適切な連結性を確実にすることを示唆する。
【0124】
[00160]L型カルシウムチャネルは、別の方式で、ホメオスタシスのため、細胞内カルシウムを制御し、成人NSCにおいて、興奮−神経発生に関与する。塩化カリウム(KCl)レベルの上昇は、膜脱分極を導き、L型電位感受性カルシウムチャネルを通じたカルシウム流入を生じ、これはニューロンにおいてERおよびミトコンドリア間のクロストークを通じて、ミトコンドリア機能不全を誘導するのに十分である。1つの態様において、RAは、L型カルシウムチャネルと関連する細胞内ERカルシウムを調節する。
【0125】
[00161]L型Ca2+チャネルの下流エフェクターであるCaMKII(カルモジュリン(CaM)依存性プロテインキナーゼII)は、一過性低振幅カルシウムスパイクに反応して、Ca2+/カルモジュリンに対する、より低いアフィニティを示す。1つの態様において、RAはCaMKIIの時空間活性化を調節する。別の態様において、RAは、CaMKIIの時空間活性化を誘導する。別の態様において、RAは、CaMKIIの時空間活性化を阻害する。
【0126】
[00162]CaMKIIは、IPアッセイによれば、CREB1を直接リン酸化し、そして活性化し(図21c)、これは、興奮−転写カップリングにおいて、CaMKIIがL型カルシウムチャネル活性を局所的にコードし、核CREBにシグナルを伝達するという先の研究と一致する。軸索は、特異的タンパク質合成をコードする多様なmRNAを局所的に含有し、これには、発生中のニューロンにおけるCaMKII、カルシニューリンおよびCREB1が含まれ、これらが真核開始因子4B(EIF4B)siRNAによって阻害可能である(図21d)ため、外因性RAが誘発するmRNA翻訳機構が起こっていることが示唆される。したがって、この局所CREB1は、遠位軸索のシグナルに関与する、核における特定の転写プロセスの逆行性追跡を可能にする。これらの結果は、細胞外の合図に際して、遺伝子転写が迅速に誘導されることが示唆された。
【0127】
[00163]これらの結果は、まず、Gαq/11シグナルに由来するCaMKII興奮が、tNSCの自己再生の維持に関与することを調べた。合わせると、これらの結果は、初期神経発生における軸索の振る舞いの重要性を示唆した。SNCAはリン脂質膜と相互作用し、そしてPDおよびアルツハイマー病を含む神経変性障害の病因において、非常に重要な役割を果たす。
【0128】
カルシニューリン/NFAT1シグナル伝達
[00164]1つの態様において、RAはカルシニューリンの産生を調節する。1つの態様において、RAはカルシニューリンの産生を誘導する。別の態様において、ERカルシウムは、先の研究と一致して、カルシニューリン/NFAT1シグナル伝達に関連づけられる。別の態様において、細胞分画アッセイによれば、RAは、NFAT1および核細胞質輸送体であるインポーチンの一過性相互作用を誘導し、NFAT1核転位置を導く。NFAT1のこの一時的効果は、持続性および一過性カルシウムシグナル間を細胞が区別する1つの機構であると考えられる。1つの態様において、RA誘導性カルシニューリン/NFAT1シグナル伝達は、初期神経発生に関与する。
【0129】
初期神経発生での細胞リモデリング
[00165]本明細書に提供するのは、1つの態様において、hTS細胞のtNSCに向かう移行中、分子プロセスを誘導するための方法である。1つの態様において、分子プロセスはRAによって誘導される。1つの態様において、分子カスケードを2つの時点:4時間(初期)および24時間(後期)で調べる。1つの態様において、分子事象は2期で起こる。特定の態様において、1期には、形態形成における時空間反応が含まれる(例えば図23;初期;灰色の線)。別の特定の態様において、1期には細胞分化および増殖における遺伝子転写が含まれる(例えば図23;後期;黒い線)。
【0130】
[00166]1つの態様において、初期ニューロン形態形成における機構が特徴付けられる。幹細胞が外部ガイダンスシグナルを感じ取ると、これに反応して、多様な特異的細胞内mRNA局在が、核における遠い転写プロセスを超えて、特定のタンパク質の局所作製を開始する。タンパク質−タンパク質相互作用および「感覚経験」を通じて、これらの局所タンパク質は細胞内領域に集積して、初期発生NSCにおいて成長円錐形成を開始する。遺伝子転写に付随して、非対称分裂が始まる。例えば、β−カテニンの存在は、5分間のRA処理後にシナプス膜で可視であり(図23g)、そして局所で活性化されたCREB1は、核に戻るように移動して、転写のため、遺伝子MEF2Aをターゲティングする。
【0131】
[00167]1つの態様において、限定されるわけではないが、RXRα、RARβ、β−カテニン、Akt、CREB1、mTOR、CaMKII、カルシニューリン、c−Src、GSK3β、SNCA、およびMAPTを含む、一連の分子プロセスが相乗的に起きて、ミトコンドリア機能、膜の脂質代謝、軸索成長、ニューロン遊走および可塑性、ならびに微小管集合を制御する。別の態様において、MEF2A、EP300、およびCREB1でのTH遺伝子の転写は、誘導性遺伝子発現に相当し、これは染色体テリトリーからのクロマチンループ形成を誘導し、後期遺伝子転写を促進する。別の態様において、RA誘導性Gタンパク質シグナル伝達の構成要素は、ニューロン形態形成において、そしてまたTH遺伝子の転写を活性化する際の組込み部分において、重要な役割を果たす。
【0132】
[00168]本明細書に記載するのは、tNSCの定常状態を維持する分化および増殖間の平衡である。1つの態様において、神経分化は、RAシグナル伝達を調節することによって、調節される。hTS細胞の操作は、これらの制御機構の理解を通じて、再生医薬または薬剤発見におけるさらなる適用の前に、in vitroでより効率的に可能である。
【0133】
tNSCは免疫特権を所持する
[00169]本明細書に提供する1つの態様は、細胞が免疫特権を有する少なくとも1つのtNSCを用いて、神経学的障害を治療する方法を記載する。別の態様において、tNSCは免疫反応を誘発しない。別の態様において、tNSCは、T細胞、B細胞、マクロファージ、ミクログリア、NK細胞、またはマスト細胞からの免疫反応を誘発しない。別の態様において、tNSCは免疫反応を阻害する。別の態様において、tNSCは減少した免疫原性を有する。別の態様において、tNSCは、腫瘍形成を導かない。別の態様において、tNSCは、免疫特権を有するように設計される。本明細書に提供する別の態様において、tNSC細胞集団を用いて神経学的障害を治療する方法であって、細胞が免疫特権を有する、前記方法を記載する。別の態様において、細胞療法としての幹細胞またはその誘導体の適用は、移植後の免疫抑制剤の適用の決定を補助する免疫原性の理解から利益を得る。
【0134】
[00170]本明細書に記載する別の側面は、hTS細胞、tNSCおよびhES細胞の間の免疫関連遺伝子およびマーカーの発現を調べ、そして比較する方法である。1つの態様において、発現をフローサイトメトリー分析によって調べる。
【0135】
[00171]hTS細胞、tNSCおよびhES細胞の間の免疫関連遺伝子およびマーカーの例には、限定されるわけではないが、HLA−ABC、HLA−DR、CD14、CD44、CD73、CD33、CD34、CD45、CD105、およびCD133が含まれる。別の態様において、hTS細胞およびtNSCにおけるHLA−ABCの発現は、hES細胞におけるものと比較してtNSCでより高い。1つの態様において、HLA−DRの陰性発現は3つの幹細胞すべてで観察される(図2e)。別の態様において、hTS細胞(99.4%)およびtNSC(99.7%)におけるHLA−ABCの発現は、hES細胞におけるもの(12.9%)に比較して、tNSCではるかに高かった(図2e)。別の態様において、hTS細胞、tNSCおよびhES細胞の間で、CD14およびCD44発現の相違はまったく見られなかった。別の態様において、hES細胞における陰性発現レベルに比較して、高レベルのCD73がhTS細胞およびtNSCで発現された(図2f)。1つの態様において、tNSCは、間葉系幹細胞の特徴を所持し、これはグリア細胞の増殖のために好ましい。
【0136】
[00172]別の態様において、細胞外部分で免疫グロブリン構造を含有し、そして膜貫通受容体であるCD33は、hTSおよびhES細胞で発現されるがtNSCでは発現されない(図2f)。別の態様において、tNSCにおけるCD33の非存在は、該分子が免疫防御に関与するため、細胞療法には好ましい。したがって、本明細書に提供するのは、低レベルのCD33発現を有し、そしてそれによって低い免疫原性を有するtNSCである。
【0137】
[00173]1つの態様において、間葉系幹細胞マーカーCD105の発現においては、強度の相違は見られない。別の態様において、hTS細胞およびhES細胞に比較して、tNSCにおいて、癌幹細胞マーカーCD133の低レベル発現が見られる。別の態様において、hTS細胞(93.6%)およびhES細胞(98.8%)に比較して、tNSCにおいて、癌幹細胞マーカーCD133の低レベル発現(11.8%)が見られる(図2h)。したがって、本明細書に提供するのは、CD133の低レベルの発現を有し、そしてしたがって低い腫瘍原性を有するtNSCである。
【0138】
[00174]さらに本明細書に提供するのは、幹細胞療法のための移植および組織再生に有用な、CD133+ tNSCの選択的集団である。やはり本明細書に提供するのは、免疫特権状態を有するtNSCであり、これは細胞に基づく療法の実行可能な候補である。
【0139】
[00175]1つの態様において、RAは、免疫関連マーカーの発現変化を誘導し、例えばCD34(+)細胞は増加するが、CD133(+)は減少する。別の態様において、RAは、CD34(+)hES細胞の平滑筋前駆細胞への分化を誘導する。別の態様において、CD34(+)免疫選択移植片でのtNSCの自己移植は、高リスクの神経芽細胞腫を持つ小児において実行可能である。
【0140】
移植後分化および増殖
[00176]神経発生において、RAおよびレチノイン酸応答配列(RARE)間の関連(Maden, M.ら, Nat. Rev. Neuroscience. 8, 755−765, (2007))が知られているが、非RARE作用の存在はほとんど理解されていない。1つの態様において、RAは、Gタンパク質共役受容体(GPCR)シグナル伝達の「引くおよび押す」機構を通じて、RXRα/RARβ/c−Src複合体の活性化を誘導する。別の態様において、RXRαは、まず、Gαq/11との相互作用によって、その後、c−Srcおよびその後の2時間のRXRβの活性化によって活性化されて、複合体を形成する(図3aおよび3b)。それらの中で、c−Srcは、続いて、これらのhTS細胞由来NSCの多能性および自己再生の維持のため、Stat3を通じてNanog過剰発現を誘導する。
【0141】
[00177]このシグナル伝達経路は、古典的RA/RXR/RAR/RARE経路を誘発するのにRAが細胞に進入する必要はなく、その代わり、RAは、シグナル伝達の概念と適合して、GPCRシグナル伝達を通じて、Gタンパク質Gαq/11を活性化することを暗示する。したがって、本明細書に提供するのは、1つの態様において、NSCの多能性および自己再生の、RAが仲介する制御の調節のための方法、ならびに移植前および後のhTS細胞および/または神経幹細胞の操作である。別の態様において、WntおよびRAは、近位プロモーターにおいて、それぞれ、非典型的なRAREおよびLef/転写因子(Tcf)応答配列(LRE)を通じて、尾側ホメオボックス1(Cdx1)に影響を及ぼす。
【0142】
[00178]1つの態様において、RAは、古典的RA/RAREシグナル伝達経路を通じて、ドーパミン作動性NSCへのhTS細胞分化を誘導して、幹細胞特性を維持する。別の態様において、これは、機能性ドーパミン作動性NSCを生じるWnt/β−カテニンシグナル伝達カスケードの活性化を通じた、非RAREシグナル伝達経路である。別の態様において、非RAREシグナル伝達の損傷は、ドーパミン産生の機能不全または喪失を引き起こし、ドーパミン作動性ニューロンの進行性変性変化を生じる。したがって、本明細書に提供するのは、別の態様において、非RAREシグナル伝達経路の活性化を通じて、ドーパミン作動性ニューロンに分化する神経幹細胞である。
【0143】
[00179]RAは、6時間で、RAR−β発現誘導前に、プロテインキナーゼC(PKC)経路を活性化する。RAは、2分で、細胞内ジアシルグリセロール(DG)の一過性の1.3倍の増加を引き起こし、そして5分以内にPKCのガンマアイソザイム(PKC−γ)の転位置を引き起こす。Kurie J.M.ら, Biochim Biophys Acta. 1993, 1179(2):203−7。これらの知見は、PKC経路活性化が、RA仲介性ヒトTC分化において初期段階であり、そしてPKC−γが、RAのRAR転写活性化に対する影響を増強しうることを明らかにする。したがって、本明細書に提供するのは、hTS細胞分化を調節する方法である。1つの態様において、PKCシグナル伝達経路の調節は、hTS細胞分化を調節する。
【0144】
[00180]骨形成タンパク質4(BMP4)は、LIFとともに、未分化mES細胞の拡大を補助する。BMP4は、hES細胞のトロホブラスト分化を誘導する。Qi Xら, Proc Natl Acad Sci U S A. 2004; 101 :6027−6032。Idタンパク質のBMP誘導は、STAT3と共同で分化を抑制し、そして胚性幹細胞自己再生を維持する。Ying, Q. L.ら, Cell. 2003; 115:281−292。骨形成タンパク質(BMP)は、LIFと組み合わされて作用して、自己再生を維持し、そして多系譜分化、キメラコロニー形成、および生殖系列伝達特性を保持する。Xu RHら, Nat Biotechnol. 2002; 20:1261−1264。したがって、本明細書に提供するのは、1つの態様において、PKCおよび/または骨形成タンパク質(BMP)の調節によって、本明細書記載のtNSCのドーパミン作動性分化を誘導するための方法である。
【0145】
疾患の治療
[00181]本明細書に提供するのは、障害を治療する方法であって、純粋なニューロン集団または特定の神経幹細胞集団の複合体を患者に移植する工程を含み、患者はこうした治療の必要がある、前記方法である。1つの態様において、患者は神経学的疾患と診断されている。別の態様において、患者は精神神経障害と診断されている。別の態様において、患者は神経変性障害と診断されている。別の態様において、ニューロンの純粋な集団は、ドーパミン作動性ニューロンを含む。
【0146】
[00182]本明細書記載の任意の方法を用いて、疾患または障害を治療することも可能である。1つの態様において、疾患は、神経学的疾患である。別の態様において、疾患は神経変性疾患または障害である。神経学的障害の限定されない例には、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、フリードライヒ失調症、レビー小体病、脊髄性筋萎縮症、多系統萎縮症、認知症、統合失調症、麻痺、多発性硬化症、脊髄傷害、脳傷害(例えば脳卒中)、脳神経障害、末梢性感覚ニューロパシー、癲癇、プリオン病、クロイツフェルト−ヤコブ病、アルパース病、小脳/脊髄小脳変性、バッテン病、皮質基底核変性、ベル麻痺、ギラン−バレー症候群、ピック病、および自閉症が含まれる。
【0147】
[00183]したがって、本明細書記載のtNSCは、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、脊髄傷害、緑内障等を含み、そしてこれらに限定されない神経変性障害の治療に適している。
【0148】
[00184]さらに、tNSCはまた、神経伝達分子セロトニンも発現する。したがって、1つの態様は、精神神経障害の治療におけるtNSCの使用を記載する。精神神経傷害の限定されない例には、抑鬱、統合失調症、認知症、自閉症、注意欠陥多動障害、および双極性障害が含まれる。
【0149】
[00185]本明細書記載の任意の方法を用いて、神経学的疾患または障害の症状を軽減するかまたは改善することも可能である。神経学的疾患または障害に関連する症状の限定されない例には、振戦、歩行障害、位置異常歩行(maldispositional gait)、認知症、過剰膨張(浮腫)、筋力低下、下肢萎縮、運動障害(舞踏病)、筋硬直、身体運動の緩慢化(動作緩慢)、身体運動の喪失(無動症)、物忘れ、認知(知的)損傷、認識喪失(失認)、意志決定および計画などの機能障害、片側顔面麻痺、感覚消失、しびれ、刺痛、極端な異常痛覚、脱力感、脳神経麻痺、発話困難、目の運動、視野欠損、失明、出血、滲出物、近位筋肉消耗、ジスキネシア、四肢の筋肉の緊張異常、筋緊張の減少、協調運動障害、指−指試験または指−鼻試験における誤った表示、測定障害、ホームズ−スチュワート現象、不完全または完全全身麻痺、視神経炎、複視、眼振などの眼球運動障害、痙性麻痺、有痛性強直性痙攣発作、レルミット症候群、運動失調、言語障害、膀胱直腸障害、起立性低血圧、運動機能の減少、夜尿、言語化障害、睡眠パターン障害、睡眠障害、食欲障害、体重変化、精神運動激越または遅延、活動力減退、倦怠感または過剰なもしくは不適切な罪悪感、思考または集中困難、死または自殺念慮または試みの反復、恐怖、不安、怒りやすさ、くよくよすることまたは強迫的熟考、身体的健康に関する過剰な懸念、パニック発作、および恐怖症が含まれる。
【0150】
[00186]本明細書に記載するのは、特定の望ましい特性を有するtNSCである;まず、tNSCは、表現型が均質で、安定遺伝子発現および多能性特性を持つ、不均一なサブタイプで構成される混合細胞集団である;第二に、これらは、ドーパミン作動性神経発生を実質的に増強する、グリア前駆細胞およびアストロサイトを含有する;第三に、これらは、機能不全ドーパミン作動性ニューロンおよび免疫特権特性を「レスキュー」する本質的能力を所持する;そして最後に、宿主組織に対する、異なる神経前駆体から分泌される神経栄養効果は、構造修復を促進するであろう。
【0151】
[00187]本明細書に提供するのは、いくつかの態様において、移植療法において適切な操作を可能にする、特定の望ましい特性を有するtNSCである:1)ユニークなtNSCは、質の均一さおよび豊富な細胞供給源に関して、単純に、そして効率的に、RAによって誘導され;2)移植されたtNSCは、病変黒質経路において、機能的に、新規ドーパミン作動性ニューロンを生成し、これは少なくとも移植後18週間生存可能であり、3)感覚運動損傷は、早くも移植後3週間で有意に改善され;4)tNSCは、免疫特権を所持し、幹細胞療法を促進し;5)本明細書に記載するような細胞増殖における分子機構の操作によって、移植後の腫瘍形成を防止する戦略の開発が可能になり;6)tNSCは数回の細胞継代を通じて、培養中で増殖可能であり;そして7)tNSCは、マウス胚性フィーダー細胞を含まずに培地中で培養可能である。
【0152】
[00188]本明細書に提供するのは、1つの態様において、急性および慢性疾患を治療する方法であって、hTS細胞由来tNSCの移植を含む、前記方法である。1つの態様において、tNSCは、神経学的障害を患う患者の脳内に移植される。別の態様において、tNSCは、神経学的障害を患う患者の線条体に移植される。
【0153】
[00189]本明細書に記載する1つの側面は、神経学的疾患を治療する方法であって、tNSCの部位特異的組込みを含む、前記方法である。1つの態様において、tNSCは、hTS細胞由来である。別の態様において、腫瘍形成の可能性は、hES細胞療法に比較してより低い。
【0154】
ドーパミン作動性ニューロンの再生による神経変性疾患の治療
[00190]本明細書に提供するのは、哺乳動物においてドーパミン作動性ニューロンを誘導するための方法であって、本明細書記載のニューロン前駆細胞を、細胞懸濁物として移植して、それによって、組織の塊の移植と比較してより均質な神経再生を産生する、前記方法である。1つの態様において、本明細書に記載するようなドーパミン作動性ニューロンの誘導は、ジスキネジアのリスクを減少させ、そして臨床的に有益な効果の可能性を増加させる。1つの態様において、哺乳動物はヒトである。別の態様において、哺乳動物はラット、マウス、ブタ、イヌ、サル、オランウータンまたは類人猿である。
【0155】
[00191]tNSCの移植は、黒質線条体経路において、新規に生成されたドーパミン作動性ニューロンを誘導し、そしてパーキンソンラットにおいて行動損傷を実質的に改善する。これらの結果は、hTS細胞が、神経変性疾患を治療する臨床的適用において使用するのに適したヒト多能性幹細胞であることの証拠を提供する。
【0156】
[00192]第一の実験を行って:1)異なる期間、RAで処理したtNSCが、PDラットにおいて、行動欠陥の改善において、有効性に影響を及ぼすかどうか、そして;2)こうして移植されたtNSCがどのくらい長期間、脳で生存可能であるかを調べる。アポモルフィン誘導性回転アッセイによって、病変線条体の2つの部位内へのGFPタグ化tNSCの移植(1.5x10)は、第3週から12週まで、行動欠陥を有意に改善した(図5a)。5日間のRAで誘導されたtNSCを移植されたPDラットは、移植6週間後から有意に改善したが、この効果は、その後、12週で、対照のものと同程度まで失われた。理由は、5日間に渡る誘導後、神経遺伝学的に運命を制限されたGRP(Gotz)の大部分が、未定義のトロホブラスト巨細胞に分化する際、隆線に配置されることによって説明可能である。行動の改善を考慮して、GFPタグ化tNSCの生存度を調べるため、ラットを18週で屠殺した。脳切片によって、黒質線条体経路において、新規に生成されたドーパミン作動性ニューロンが豊富に明らかとなり、細胞体からは多数の伸長突起が見られ、周囲の脳領域で免疫組織化学的に神経再分布が見られた(図5b)。しかし、こうした現象は5日間のRA誘導性tNSCを投与されたラット(図5c)および対照PD群(図5d)では観察されなかった。免疫蛍光顕微鏡観察によって、第18週、GFPタグ化tNSCがなお、病変領域に存在し、分散されたまたは斑状のパターンで注入部位に分布することが示された。奇形腫形成は見られず、また免疫抑制剤は用いられなかった。
【0157】
[00193]ドーパミン作動性過成長および不均一でそして斑状の神経再分布による不都合な影響を回避するため、「加齢」PDラット(n=16;体重、630〜490グラム)において、病変線条体への1つの部位での注射によって、より少ないtNSC(1x10)を移植する第二の実験を試みた。移植後、3週ごとに、行動評価を分析した。結果によって、アポモルフィン誘導性回転試験において、移植後3週間から12週間、対側性の回転の有意な改善があることが示された(図6a)。無動症、硬直ならびに歩行および平衡障害によって特徴付けられる、体位不均衡および歩行障害(PIGD)における細胞療法の効果を評価するため、歩行速度、ステップ長、ストライド長、および支持基底面などのいくつかの試験を行った。「バーテスト」において、バー上での罹患した前肢の把握時間は、3週までに有意に短くなり、そして12週の終わりで改善し続け(図6b)、前肢の掴む力が非常に迅速に改善したことが示された。ステップ長(図6c)、ストライド長(図6d)、歩行速度(図6e)および支持基底面(図6f)の測定は、tNSCの移植が、早期の3週から12週に向かって、機能的に感覚運動障害を有意に改善することを示した。1つの態様において、tNSCは、再生医薬において、神経変性疾患(例えばパーキンソン病)患者における幹細胞に基づく療法の適切な候補である。12週の終わりに、ラットを屠殺し、そして脳切片をチロシンヒドロキシラーゼ(TH)免疫染色に供した。実験によって、黒質線条体経路において、新規ドーパミン作動性ニューロンの再生が示された(図19)。濃度測定を用いることによって、新規に生成されたドーパミンニューロンを評価して、28.2%の回復が明らかになった。1つの態様において、tNSCは、神経変性疾患患者の治療における、hES細胞および胎児中脳組織両方の代替置換物である。
【0158】
[00194]本明細書に提供するのは、1つの態様において、hES細胞ではないが、初期胚形成における多能性および自己再生の類似の特徴を持つヒト多能性幹細胞であるhTS細胞である。in vivoで、移植tNSCは、病変黒質線条体経路において、新規ドーパミン作動性ニューロンを機能的に生成し、これはPDラットにおいて移植後少なくとも18週間生存可能である。感覚運動損傷は、若いおよび加齢PDラット両方において、行動評価のセットによって、早くも移植後3週間で有意に改善する。hTS細胞由来NSCを、脳の神経毒除神経線条体内に移植すると、失われたドーパミン作動性ニューロンの再生が可能になり、そしてPDラットにおける主な行動欠陥が改善する。
【0159】
[00195]1つの態様において、黒質線条体経路においてDAニューロンが再生する。別の態様において、移植されたtNSCは、線条体において、グリア細胞を増加させる。別の態様において、RAは、GRAPおよびGFAP陽性前駆細胞の発現を誘導し、CNSを通じて、ニューロンおよびオリゴデンドロサイトを生じさせる。
【0160】
アルツハイマー病の治療
[00196]本明細書に提供するのは、アルツハイマー病を治療するための方法であって、哺乳動物脳内にニューロン前駆細胞を移植する工程を含む、前記方法である。1つの態様において、哺乳動物はヒトである。別の態様において、ヒトは、アルツハイマー病と診断された患者であるか、またはアルツハイマー病を発展させるリスクがあり、例えば該疾患の家族歴がある個人または該疾患のリスク要因を有すると同定されている個人である。別の態様において、哺乳動物は、ブタ、イヌ、サル、オランウータンまたは類人猿である。別の態様において、哺乳動物はマウスである。別の態様において、哺乳動物はラットである。別の態様において、ラットまたはマウスは、アルツハイマー病の症状を提示する。1つの態様において、ニューロン前駆細胞は、疾患の非ヒト動物モデル(例えばAD7c−NTPが過剰発現されているマウスモデル、アルツハイマー病ラットモデル、トランスジェニックマウスモデル等)に移植される。
【0161】
[00197]1つの態様において、hTS細胞を誘導剤で処理して、バイオマーカー・シグネチャーを持つニューロン細胞集団を提供する。特定の態様において、誘導剤はRAである。1つの態様において、分子機構またはシグナル経路を調節して多能性を維持する。別の態様において、分子機構またはシグナル伝達経路を調節して、移植後の腫瘍形成を防止する。
【0162】
[00198]別の態様において、哺乳動物の脳内に、tNSCを移植するかまたは挿入する。1つの態様において、ニューロン前駆細胞を細胞懸濁物として移植して、それによってより均質な再神経形成を生じる。別の態様において、ニューロン前駆細胞を前記哺乳動物の脳内に注射する。別の態様において、hTS細胞由来のtNSCを脳の脳室下領域内に挿入する。1つの態様において、哺乳動物はヒトである。
【0163】
[00199]1つの態様において、本明細書記載のニューロンの誘導は、腫瘍形成リスクを減少させ、そして臨床的に有益な効果の可能性を増加させる。別の態様において、tNSCのレシピエントは、アルツハイマー病に関連する症状の改善を示す。別の態様において、脳におけるニューロン間の連結が増加し、そして強化される。
【0164】
統合失調症の治療
[00200]本明細書において提供するのは、統合失調症を治療するための方法であって、哺乳動物脳内にニューロン前駆細胞を移植する工程を含む、前記方法である。1つの態様において、哺乳動物はヒトである。別の態様において、ヒトは、統合失調症と診断された患者であるか、または統合失調症を発展させるリスクがあり、例えば該疾患の家族歴がある個体または該疾患のリスク要因を有すると同定されている個体である。別の態様において、哺乳動物はマウスである。別の態様において、哺乳動物はラットである。別の態様において、哺乳動物は、ブタ、イヌ、サル、オランウータンまたは類人猿である。別の態様において、ラットまたはマウスは、統合失調症の症状を提示する。
【0165】
[00201]1つの態様において、ニューロン前駆細胞は、疾患の非ヒト動物モデル(例えば統合失調症ラットモデル、トランスジェニックマウスモデル等)に移植される。1つの態様において、モデルマウスは、ニューロン系の改変された正常生理学的制御を有する。別の態様において、細胞内レベルで作用する潜在的な療法剤および/または療法措置のスクリーニングのため、モデル動物または組織を利用してもよい。
【0166】
[00202]1つの態様において、hTS細胞を誘導剤で処理して、バイオマーカー・シグネチャーを持つニューロン細胞集団を提供する。特定の態様において、誘導剤はRAである。1つの態様において、分子機構またはシグナル経路を調節して多能性を維持する。別の態様において、分子機構またはシグナル伝達経路を調節して、移植後の腫瘍形成を防止する。
【0167】
[00203]別の態様において、哺乳動物の脳内に、tNSCを移植するかまたは挿入する。1つの態様において、ニューロン前駆細胞を細胞懸濁物として移植して、それによってより均質な再神経形成を生じる。別の態様において、ニューロン前駆細胞を前記哺乳動物の脳内に注射する。
【0168】
[00204]1つの態様において、本明細書記載のニューロンの誘導は、腫瘍形成リスクを減少させ、そして臨床的に有益な効果の可能性を増加させる。別の態様において、tNSCのレシピエントは、統合失調症に関連する症状の改善を示す。
【0169】
投薬および投与
[00205]本明細書に記載する単離神経幹細胞調製物の投与様式には、限定されるわけではないが、全身性静脈内注射および意図される活性部位への直接注射が含まれる。調製物を、好適な経路によって、例えば注入またはボーラス注射によって投与してもよく、そして他の生物学的活性剤と一緒に投与してもよい。1つの態様において、投与は全身性局在投与である。
【0170】
[00206]1つの態様において、神経幹細胞調製物または組成物は、ヒトを含む哺乳動物への静脈内投与に適合する薬学的組成物として配合される。いくつかの態様において、静脈内投与のための組成物は、無菌等張水性緩衝剤中の溶液である。必要な場合、組成物にはまた、注射部位でのいかなる痛みも軽減する、局所麻酔剤も含まれる。組成物を注入によって投与しようとする場合、無菌薬剤等級の水または生理食塩水を含有する注入瓶を用いて分配してもよい。組成物を注射によって投与する場合、注射用無菌水または生理食塩水のアンプルを提供して、投与前に成分を混合するようにしてもよい。
【0171】
[00207]1つの態様において、適切な薬学的組成物は、前駆体幹細胞の療法的有効量および薬学的に許容されうるキャリアーまたは賦形剤を含む。こうしたキャリアーには、限定されるわけではないが、生理食塩水、緩衝生理食塩水、デキストロース、水、およびその組み合わせが含まれる。
【0172】
[00208]1つの態様において、特定の組織に細胞をターゲティングするのに適した送達系によって、本明細書記載の単離tNSCをターゲット部位(例えば脳、脊髄または神経傷害および/または変性の任意の他の部位)に送達する。例えば、ターゲット部位で細胞(単数または複数)の緩慢な放出を可能にする送達ビヒクル中に細胞を被包する。特定の組織を特異的にターゲティングするように送達ビヒクルを修飾する。ターゲティングされた送達系の表面を多様な方式で修飾する。リポソームターゲティング送達系の場合、リポソーム二重層と安定して会合してターゲティングリガンドが維持されるように、脂質基をリポソームの脂質二重層内に取り込む。
【0173】
[00209]別の例において、コロイド分散系を用いる。コロイド分散系には、巨大分子複合体、ナノカプセル、微小球体、ビーズ、および脂質に基づく系が含まれ、水中油エマルジョン、ミセル、混合ミセル、およびリポソームが含まれる。
【0174】
[00210]本明細書記載のtNSCの投与は、場合によって:(1)注射する細胞の量を増加させるかまたは減少させる;(2)注射の回数を変化させる;(3)細胞の送達法を変化させる;あるいは(4)例えば細胞を遺伝的に操作するかまたはin vitro細胞培養由来のものなど細胞供給源を変化させることによって、個体に合わせて仕立てられる。
【0175】
[00211]レシピエントにおいて、細胞の移植を促進するのに有効な量で、tNSC調製物を用いる。医師の判断で、投与を調製して、最適な有効性および薬理学的投与を満たす。
【0176】
スクリーニング法
[00212]本明細書に提供するのは、疾患の治療または防止において使用するための化合物をスクリーニングする方法である。1つの態様において、方法は、単離ヒト・トロホブラスト幹細胞と前記化合物を接触させる工程を含む。別の態様において、方法は、単離神経幹細胞と前記化合物を接触させる工程を含む。別の態様において、方法は、前記ヒト・トロホブラスト幹細胞における少なくとも1つの遺伝子、転写物またはタンパク質の活性の変化を検出する工程をさらに含む。別の態様において、方法は、前記ヒト・トロホブラスト幹細胞における少なくとも1つの転写物またはタンパク質のレベルの変化を検出する工程をさらに含む。別の態様において、方法は、前記神経幹細胞における少なくとも1つの遺伝子、転写物またはタンパク質の活性の変化を検出する工程を含む。
【0177】
[00213]本明細書に提供する1つの態様は、細胞における変化を誘導する能力に関して化合物をスクリーニングする方法を記載する。1つの態様において、方法は、単離ヒト・トロホブラスト幹細胞と前記化合物を接触させる工程を含む。別の態様において、方法は、単離神経前駆幹細胞と前記化合物を接触させる工程を含む。別の態様において、方法は、前記ヒト・トロホブラスト幹細胞の分化の誘導を検出する工程をさらに含む。別の態様において、方法は、前記神経幹細胞の分化の誘導を検出する工程をさらに含む。
【0178】
[00214]本明細書にやはり提供するのは、細胞傷害性または細胞の調節のための化合物をスクリーニングする方法であって、本発明の分化細胞と化合物を接触させる工程を含む、前記方法である。別の態様において、方法は、化合物との接触から生じる、細胞におけるいかなる表現型または代謝変化も決定し、そして変化を細胞傷害性あるいは細胞機能または生化学における任意の他の変化と相関させる工程をさらに含む。別の態様において、薬剤、毒素、または分化の潜在的調節因子のスクリーニングが促進される。これらの物質(例えば薬剤、毒素、または潜在的調節因子)を培地に添加してもよい。
【0179】
[00215]本明細書に提供する1つの態様は、増殖因子、分化因子、および薬剤をスクリーニングする方法を記載した。1つの態様において、ヒト・トロホブラスト幹細胞または神経幹細胞を用いて、培養中のヒト・トロホブラスト幹細胞または神経幹細胞の特性に影響を及ぼす因子(例えば小分子薬剤、ペプチド、ポリヌクレオチド等)または条件(例えば培養条件または操作)をスクリーニングする。1つの態様において、この系は、試験化合物によるフィーダー細胞の混乱によって引き起こされる二次的影響によって複雑になることがないという利点を有する。別の態様において、増殖に影響を及ぼす物質を試験する。別の態様において、馴化培地を培養から抜き取って、そしてより単純な培地で置換する。別の態様において、異なるウェルを、次いで、馴化培地の構成要素と置き換える候補である可溶性因子の異なるカクテルで処理する。処理した細胞が維持され、そして満足できる方式で、場合によってまた馴化培地中で増殖するかどうか、各混合物の有効性を決定する。試験プロトコルにしたがって細胞を処理し、そして次いで、処理した細胞が、特定の系譜の分化した細胞の機能的または表現型的特性を発展させるかどうかを決定することによって、潜在的な分化因子または条件を試験してもよい。
【0180】
[00216]1つの態様において、ヒト・トロホブラスト幹細胞または神経幹細胞を用いて、細胞分化の潜在的な調節因子をスクリーニングする。1つの態様において、細胞分化は、神経分化である。例えば、細胞分化の調節因子をスクリーニングするための1つのアッセイにおいて、ヒト・トロホブラスト幹細胞または神経幹細胞を、状況が必要とするように、LIFの存在下または非存在下、調節剤の存在下、そしてRAの存在下または非存在下で、血清不含、低密度条件下で培養して、そして分化に対する影響を検出してもよい。別の態様において、本明細書記載のスクリーニング法を用いて、細胞発生と関連する状態を研究し、そして状態の潜在的な療法または矯正薬剤または調節因子に関してスクリーニングしてもよい。例えば、1つの態様において、正常ヒト・トロホブラスト幹細胞または神経幹細胞の発生を、状態を有する細胞を用いた発生と比較する。
【0181】
[00217]1つの態様において、遺伝子およびタンパク質発現を、ヒト・トロホブラスト幹細胞または神経幹細胞から得られる異なる細胞集団間で比較して、そしてこれを用いて、分化の経過中で上方制御されるかまたは下方制御される因子を同定し、そして性質決定して、そして影響を受ける遺伝子のヌクレオチド・コピーを産生することも可能である。
【0182】
[00218]1つの態様において、フィーダー不含ヒト・トロホブラスト幹細胞または神経幹細胞培養はまた、薬剤研究における薬学的化合物の試験にも使用可能である。候補薬学的化合物の活性の評価は、一般的に、本発明の分化した細胞と、候補化合物を組み合わせ、生じたいかなる変化も決定し、そして次いで、観察された変化を伴う化合物の影響を相関させる工程を含む。別の態様において、例えば化合物が特定の細胞タイプに対する薬理学的効果を有するように設計されているため、または別の箇所で効果を有するように設計された化合物が意図されない副作用を有するため、スクリーニングを行う。別の態様において、2またはそれより多い薬剤を組み合わせて試験して(細胞と、同時にまたは連続して組み合わせることによって)、ありうる薬剤−薬剤相互作用効果を検出する。別の態様において、化合物をまず、潜在的な毒性に関してスクリーニングする。別の態様において、細胞生存率、生存、形態に対する影響、特定のマーカー、受容体、または酵素の発現または放出に対する影響、DNA合成または修復に対する影響によって、細胞傷害性を決定するものとする。
【0183】
[00219]用語「治療する」、「治療」等は、本明細書において、望ましい薬理学的および/または生理学的効果を得ることを意味する。いくつかの態様において、個体(例えば神経変性障害に罹患している、そして/または遺伝的にその傾向があると推測される個体)を、本明細書記載のtNSCの調製物で予防的に処置して、そしてこうした予防的治療が、完全にまたは部分的に、神経変性障害あるいはその徴候または症状を防止する。いくつかの態様において、個体を療法的に治療する(例えば患者が神経変性障害に罹患している場合)、こうした療法治療は、障害の部分的または完全な治癒を引き起こし、そして/または障害に起因しうる不都合な影響を逆転させ、そして/または障害を安定化させ、そして/または障害の進行を遅延させ、そして/または障害の後退を引き起こす。
【0184】
[00220]治療が必要な領域へのtNSCの投与(例えば移植)は、例えばそして限定としてではなく、手術中の局所注入によって、注射によって、カテーテルの使用によって、または移植物の使用によって、達成され、前記移植物は、多孔性、非多孔性、またはゼラチン性材料であり、これには膜、例えばシラスティック膜または線維が含まれる。
【0185】
[00221]哺乳動物内への組成物の「移植」は、当該技術分野において確立される任意の方法によって、哺乳動物の体に組成物を導入する工程を指す。導入される組成物は「移植物」であり、そして哺乳動物は「レシピエント」である。移植物およびレシピエントは同系、同種、または異種であってもよい。さらに、移植は自己移植であってもよい。
【0186】
[00222]「有効量」は、意図される目的を達成するのに十分な療法剤の量である。例えば、hTS細胞またはtNSCの数を増加させるのに有効な因子の量は、場合によって、in vivoまたはin vitroで神経幹細胞数の増加を生じるのに十分な量である。神経変性疾患または状態を治療するかまたは改善させる組成物の有効量は、神経変性疾患または状態の症状を減少させるかまたは除去するのに十分な組成物の量である。所定の療法剤の有効量は、剤の性質、投与経路、療法剤を投与しようとする動物のサイズおよび種、ならびに投与目的などの要因に応じて多様であろう。
【0187】
[00223]本明細書にさらに提供するのは、1つの態様において、遺伝的に修飾されたtNSCである。操作は、細胞の多様な特性を修飾し、例えば、特定の環境条件により適応するかまたは耐性であるようにし、そして/または例えば細胞の生存を改善しうる、1またはそれより多い特定の物質の産生を誘導する。細胞を移植における使用により適したものにするために、例えばレシピエントからの拒絶を回避するために、こうした遺伝的改変を行ってもよい(遺伝子療法の概説に関しては、Anderson, Science, 256:808; Mulligan, Science, 926; Miller, Nature, 357:455; Van Brunt, Biotechnology, 6(10): 1149;およびYuら, Gene Therapy, 1:13を参照されたい)。
【0188】
[00224]「ベクター」は、組換えDNAまたはRNA構築物、例えばプラスミド、ファージ、組換えウイルス、または適切な宿主細胞への導入に際して、本明細書記載の前駆細胞の修飾を生じる他のベクターを指す。適切な発現ベクターは、一般の当業者に周知であり、そしてこれには、真核および/または原核細胞において複製可能であるもの、そしてエピソームに残ったままのものまたは宿主細胞ゲノムに組み込まれるものが含まれる。
【0189】
[00225]例えば、Sambrookら、1989に記載されるような技術を用いて、ベクターの構築を達成する。1つの態様において、単離プラスミドまたはDNA断片を切断し、仕立てて、そしてプラスミドを生成するのに望ましい型で再連結する。望ましい場合、任意の適切な方法を用いて、構築されたプラスミド中に正しい配列があることを確認する分析を実行する。発現ベクターを構築し、in vitro転写を調製し、DNAを宿主細胞内に導入し、そして遺伝子発現および機能を評価するための分析を実行するための適切な方法が知られる。遺伝子の存在、増幅、および/または発現は、試料において直接、例えば本明細書に提供する配列に基づいてもよい適切に標識したプローブを用いて、慣用的サザンブロッティング、mRNAの転写を定量化するノーザンブロッティング、ドットブロッティング(DNAまたはRNA分析)、またはin situハイブリダイゼーションによって、測定される。
【0190】
[00226]本明細書において、用語、例えば「トランスフェクション」、「形質転換」等は、細胞または生物に、機能する型で核酸をトランスファーすることを示す。こうした用語には、細胞に核酸をトランスファーする多様な手段が含まれ、CaPO4でのトランスフェクション、エレクトロポレーション、ウイルス形質導入、リポフェクション、リポソームを用いた送達、および/または他の送達ビヒクルが含まれる。
【0191】
[00227]アフィニティ技術によって、または細胞ソーティング(例えば蛍光活性化細胞ソーティング)によって、細胞をソートし、ここでこれらは適切な標識、例えばアンチセンス核酸分子または免疫グロブリンにコンジュゲート化されたかまたはその一部であるフルオロフォア、あるいは本質的蛍光タンパク質、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)またはその変異体で標識される。本明細書において、「ソーティング」は、第一の細胞タイプから第二のものの少なくとも部分的な物理的分離を指す。
【0192】
[00228]本明細書において、用語「約」は、±15%を意味する。例えば、用語「約10」には、8.5〜11.5が含まれる。
【実施例】
【0193】
材料
[00229]抗体。イムノブロットおよび免疫細胞化学用:一次抗体:SSEA−1、−2、−3、CD90およびネスチン(Chemicon)。神経フィラメントおよびGFAP(BioGenex)。Nanog、Oct4、Cdx2およびSox2(BD Biosciences、米国カリフォルニア州サンノゼ)。Gαq/11(C−19、sc−392)、Gβ(T−20、sc−378)、RXRα、RARβ、c−Src、pStat3、Stat3、PP1類似体およびβ−アクチン(Santa Cruz Biotechnology、米国カリフォルニア州サンタクルーズ)、TH(Sigma−Aldrich ミズーリ州セントルイスおよびカリフォルニア州テムコウラ)ならびにセロトニン(Sigma−Aldrich ミズーリ州セントルイス)。
【0194】
[00230]二次抗体
[00231]siRNA: Nanog siRNAおよびCdx2 siRNA(Sigma−Aldrich ミズーリ州セントルイス)。
【0195】
[00232]フローサイトメトリー一次抗体のため: HLA−ABC、CD9、CD14、CD34、CD45、CD73、CD90、CK7、ビメンチン、6−インテグリン、E−カドヘリン、L−セレクチン、Nanog、Oct4、Cdx2およびSox2をBD Biosciences、米国カリフォルニア州サンノゼより購入し; HLA−DR、CD33、CD44およびCD105をeBioscience、米国カリフォルニア州サンディエゴより購入し; CD133をMiltenyi Biotec、ドイツより購入した。
【0196】
[00233]TH−2およびセロトニン免疫染色のため、細胞を0.1M PBS中、4℃で一晩インキュベーションした後、PBSで洗浄した。ブロッキング溶液(50ml 0.1M PBS、0.05gアジ化ナトリウム、1%ウマ血清および10%TritonX−100)で室温で1時間インキュベーションした後、細胞を再び洗浄した。細胞を一次抗体、すなわちTH−2(1:200、Sigma−Aldrich、ミズーリ州セントルイス)およびセロトニン(1:100、Sigma−Aldrich、ミズーリ州セントルイス)で2時間インキュベーションし、そしてPBSで洗浄した。抗マウスIgGとFITCまたはPE(Sigma−Aldrich、ミズーリ州セントルイス)と1時間インキュベーションすることによって、細胞をPBSで完全に洗浄し、そして免疫蛍光アッセイに供した。
【0197】
実施例1:単離、分化および細胞培養
[00234]ヒト被験体研究および道徳委員会の施設審査委員会によって認可された腹腔鏡下手術を通じて、女性において、初期子宮外妊娠(妊娠年齢:6〜8週)の卵管から胚性絨毛膜絨毛(embryonic chorionic villious)を得た。血清不含α−MEM(Sigma−Aldrich、ミズーリ州セントルイス)中で組織を切り刻み、そして0.025%トリプシン/EDTA(Sigma−Aldrich、ミズーリ州セントルイス)で15分間トリプシン処理して、そしてこの消化を10%FBSを含有するα−MEMを添加することによって停止させた。この処置を数回反復した。遠心分離後、細胞を収集し、そして20%FBS(JRH、Biosciences、カリフォルニア州サンノゼ)および1%ペニシリン−ストレプトマイシンを含有するα−MEMで、5%CO中、37℃で培養した。培地中のhCG発現は、商業的キット(Dako、カリフォルニア州カーピンテリア)によって測定すると、培養2継代後に検出不能となった。
【0198】
[00235]細胞分化。hTS細胞を、20%FBS、1%ペニシリン−ストレプトマイシン、および10μg/ml bFGF(CytoLab Ltd、イスラエル・レホボト)を含有する馴化α−MEM中、37℃5%CO中で培養した。培地を3日ごとに交換した。5回継代した後、公表されたプロトコルを修飾して用いることによって、多様な特殊化表現型への分化を開始した。Transwellプレート(Corning、ニューヨーク州ニューヨーク)中での細胞培養のため、上部チャンバーを、4:1の比で、PureCol(Inamed Biomaterials、カリフォルニア州フレモント)および馴化L−DMEM(Gibco、ニューヨーク州グランドアイランド)を含有する500μlのコラーゲンゲルでコーティングした。細胞(4x10)を馴化L−DMEM(1ml)中で培養した。下部チャンバーは、馴化H−DMEM(3ml)を含有した。予備実験によって、どちらのチャンバー中のグルコースレベルも、4時間で平衡状態に到達可能であることが示された。
【0199】
[00236]サブ表現型の細胞分化。20%FBS、1%ペニシリン−ストレプトマイシン、および10μg/ml bFGF(CytoLab Ltd、イスラエル・レホボト)を含有する馴化α−MEM中、37℃5%CO中で細胞を培養した。一般的に、培地を3日ごとに交換した。培養を5回継代した後、図12中の表に示すように、多様な戦略によって、多様な特定の細胞表現型への細胞分化を実行した。骨形成性分化のため、アリザリンレッドSアッセイ(Sigma−Aldrich、ミズーリ州セントルイス)を用いて、細胞化学ミネラルマトリックスを分析して、カルシウムミネラル含量を検出した。カルシウム沈着を同定するため、細胞を固定し、そして2%硝酸銀溶液(w/v)で暗所で10分間インキュベーションし、その後、脱イオン水で洗浄して、そして明色光下に15分間曝露した。商業的キット(Sigma−Aldrich、ミズーリ州セントルイス)を用いて、細胞をフォン・コッサ染色で処理して、アルカリホスファターゼ活性を検出した。酸性pHレベルで、アルシアンブルー染色(Sigma−Aldrich、ミズーリ州セントルイス)を用いて、軟骨形成分化を確認した。筋性分化のため、細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の3%過酸化水素と10分間インキュベーションして、内因性ペルオキシダーゼ酵素活性を停止した。10%ヒト血清および0.1%TritonX−100を含有するPBSで60分間処理することによって非特異的部位をブロッキングして、そしてブロッキング緩衝液によって5分間洗浄した。骨格筋ミオシン重鎖特異的モノクローナル抗体(Vector Laboratories、カリフォルニア州バーリンゲーム)を含有するブロッキング緩衝液中で細胞を1時間インキュベーションし、そしてVectaStain ABCキット(Vector Laboratories)を用いて染色した。脂肪生成分化のため、馴化培地によって細胞を誘導し、そして1%カルシウムを含有する4%パラホルムアルデヒド中、60分間固定し、そして70%エタノールで洗浄した。2%オイルレッドO試薬(Sigma−Aldrich、ミズーリ州セントルイス)に5分間曝露した後、70%エタノールによって過剰な染色を除去し、その後、水でリンスした。オイルレッドO染色を細胞内脂質集積の指標として適用した。エタノール中の10μMオールトランスレチノイン酸(Sigma−Aldrich、ミズーリ州セントルイス)によって、神経幹細胞を誘導した。
【0200】
実施例2:プラスミドトランスフェクション
[00237]プラスミドトランスフェクションのため、hTS細胞をオールトランスレチノイン酸(10μM)(Sigma−Aldrich、ミズーリ州セントルイス)で一晩誘導し、その後、先に記載されるように(Myers)、F1B−GFPのDNA混合物中で同時トランスフェクションした。簡潔には、DOTAP(30μl)リポソームトランスフェクション試薬(Roche Applied Science、インディアナ州インディアナポリス)を含有するDOTAP(100μl)溶液、およびNaCl(80ml HO中の867g)に加えて2ml HEPES溶液(1M、pH7.4、Gibco)を含有する70μl HBSS緩衝液内に、DNA混合物をゆっくりと添加した。PBSで洗浄した後、細胞をDNA混合物とよく混合した。一晩インキュベーションした後、2〜3週間の培養を通じて、コロニーが形成されるまで、G418選択(400μg/ml、Roche Applied Science)することによって、安定細胞株を得た。G418耐性細胞をプールし、そして溶解し、そしてモノクローナル抗GFP抗体(Stratagene、カリフォルニア州ラホヤ)を用いてウェスタンブロッティングによって分析して、GFPを発現するトランスフェクタントの割合を定量化した。継代培養によって、トランスフェクションされたhTS細胞をメタノールで固定し(10分間)、免疫蛍光によってGFPの発現を検出した。トランスフェクション率は、95%を超える有効性を生じた。
【0201】
実施例3:RT−PCRおよび定量的PCR(qPCR)
[00238]RT−PCRのため、TRIZOL試薬(Invitrogen)を用いることによって、10〜10細胞から総RNAを抽出し、そしてReady−To−Go RT−PCRビーズキット(Amersham Biosciences、英国バッキンガムシャー)を用いることによって、mRNA発現を調べた。簡潔には、反応産物を1.5%アガロースゲル上で分離し、そしてエチジウムブロミドで視覚化した。β−アクチンまたはβ−2ミクログロブリンを陽性対照として用いた。すべての実験を3つ組で行った。qPCRのため、iQ5リアルタイムPCR検出系(Bio−Rad Laboratories)で遺伝子発現を測定し、そしてBio−Rad iQ5光学系ソフトウェア、バージョン2.0(Bio−Rad Laboratories)で分析した。比較Ct法(Bio−Rad、指示マニュアル)を用いて相対的mRNAレベルを計算し、そして生物学的対照に対する比として示した。1周期内の産物の量がほぼ倍になり、そして予測されるサイズの単一の産物が生じるように、すべてのプライマー対を確認した。
【0202】
実施例4:ウェスタンブロット
[00239]血清不含培地を含む10cmディッシュ内に細胞を一晩植え付け、そして示すように、多様な時間間隔で、RA(10μM)を含みまたは含まずに処理した。刺激後、細胞を氷冷PBSで2回洗浄し、そしてRIPA溶解緩衝液(Minipore)によって溶解した。BCAタンパク質アッセイキット(Thermo)によってタンパク質濃度を決定した。等量のタンパク質(30μg)を8%SDS−PAGEに溶解し、PVDF膜上にトランスファーし、そして室温で1時間、5%脱脂粉乳でブロッキングした。ブロッキング後、膜を一次抗体と4℃で4時間インキュベーションした。細胞をPBSTで3回洗浄し、そして次いで、HRPコンジュゲート化二次抗体と室温で1時間インキュベーションした。細胞をPBSTで3回洗浄し、そして次いで、HRPコンジュゲート化二次抗体と室温で1時間インキュベーションした。PBST緩衝液で6回洗浄した後、膜を化学発光基質(GE Healthcare)と1分間インキュべーションした。化学発光キット(ECL)(Amersham)を用いて、特異的バンドを視覚化した。
【0203】
実施例5:サザンブロット
[00240]先に記載される(Tsai)ようなサザンイムノブロット分析によって、第三および第七継代でhTS細胞のテロメア長を測定した。簡潔には、断片をHybondN+ナイロン膜(Amersham Bioscience)にトランスファーし、そしてReady−To−Go標識ビーズ(Amersham Bioscience)を用い、α−32P−dCTPで標識したTTAGGG反復のプローブに65℃でハイブリダイズさせた。テロメア反復配列に相補的な標識オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションによって、末端制限断片を視覚化した。TRFのサイズ分布をDNA長さ標準と比較した。
【0204】
実施例6:末端制限断片(TRF)サザンブロット
[00241]細胞が癌性変化を開始した後、テロメアは非常に短くなるであろう。hTS細胞培養中、テロメア長を第三および第七継代で測定した。簡潔には、断片をHybond−N+ナイロン膜(Amersham Biosciences)にトランスファーして、そしてReady−To−Go DNA標識ビーズ(Amersham Biosciences)を用いることによって、α−[32P]−dCTPで標識したTTAGGG反復のプローブに65℃でハイブリダイズさせた。テロメア反復配列に相補的な標識オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションによって末端制限断片を視覚化した。末端制限断片のサイズ分布をDNA長標準と比較した。電子顕微鏡観察のため、透過型電子顕微鏡(JEM−2000 EXII、JEOL、日本・東京)によってhTS細胞由来ブドウ様細胞塊を調べて、細胞の基盤を同定した。
【0205】
[00242]ウェル間光学変動の規準化のため、内部受動的参照色素としてフルオレセインを用いる、IQ5リアルタイムPCR検出系(Bio−Rad Laboratories)によって、Oct4、Sox2、NANOG、fgfr2、FGF4、BMP4、Cdx2、および内因性対照β−アクチン(ACTB)をhTSおよび500単位のLIF(Chemicon、カリフォルニア州テメキュラ)によって処理したhTS細胞で測定した。12.5μlの2xSYBRグリーンスーパーミックス(Bio−Rad)、0.5μlの各10μMプライマーおよび0.5μlのcDNA試料を含有し、そして滅菌水と混合された総体積25μl中で、PCR増幅を行った。反応を95℃3分間で開始した後、95℃30秒間の変性、60℃30秒間のアニーリング、72℃15秒間の伸長からなる60回の3工程増幅周期を行った。最終解離段階で、増幅産物特異性の検証のため、融解曲線を生じるために実行した。リアルタイムqPCRを監視し、そしてBio−Rad IQ5光学系ソフトウェアバージョン2.0(Bio−Rad)によって分析した。比較Ct法(Bio−Rad指示マニュアル)を用いて相対的mRNAレベルを計算し、そして生物学的対照に対する比で提示した。ACTB転写レベルを確認して、ウェルと総RNA量を相関させて、そしてしたがって、全体の規準化に用いた。用いたすべてのプライマー対を確認して、1つの周期内の産物の量をほぼ倍にし、そして予測されるサイズの単一の産物を得た。Oct4、Sox2、NANOG、fgfr2、FGF4、BMP4、Cdx2、および内因性対照β−アクチン(ACTB)のプライマー配列を補助データ表3に示す。
【0206】
【化1】
【0207】
表1.遺伝子発現に用いた、多様なPCRプライマー
【0208】
【表1-1】
【0209】
【表1-2】
【0210】
【表1-3】
【0211】
実施例7:免疫細胞化学
[00253]培養を4%パラホルムアルデヒドで、室温で30分間固定し、そして次いでPBSで3回洗浄した。製造者の推奨のように、免疫細胞化学染色のため、LSABキット(Dako、カリフォルニア州)を用いた。SSEA−1および−4染色のため、細胞をトリス−リン酸緩衝生理食塩水(TBS)でリンスし、そしてHで10分間洗浄した。反応をヤギ血清(1:200、Dako)で30分間ブロッキングした後。次いで、細胞を一次抗体と一晩インキュベーションした。TBSで細胞を洗浄し、そしてストレプトアビジンで20分間処理した後、細胞をビオチンによって(20分間)染色し、再び洗浄し、そして四塩化3,3’ジアミノベンジジン(Boehringer−Mannheim、ドイツ・マンハイム)で10分間処理した。最後に、細胞をヘマトキシリン染色で対比染色した。SSEA−3染色のため、類似の方法にしたがったが、例外は、Hで洗浄する前に回収した抗原を添加したことであり、これはクエン酸緩衝液中、圧力鍋を15分間用いることで得られた。最後に、細胞をPBSで徹底的に洗浄し、そして免疫蛍光アッセイに供した。
【0212】
実施例8:免疫沈降(IP)
[00254]細胞を一晩血清枯渇させ、そしてRA(10μM)で30分間処理した。プロテインG−アガロース(Minipore)で30分間プレクリアした後、特異的抗体またはIgGを添加し、そして一晩インキュベーションした。プロテインG−アガロースと2時間インキュベーションし、ビーズをRIPA溶解緩衝液で3回洗浄し、緩衝液中で煮沸し、8%SDS−PAGEによって分離し、そして示すような多様なターゲットに関して免疫ブロット分析を行った。
【0213】
実施例9:フローサイトメトリー
[00255]細胞(5x10細胞/ml)を多様な一次抗体と30分間インキュベーションし、そして次いで、調整した希釈で、適切なフルオレセイン・イソチオシアネート(FITC)、フィコエリトリン(PE)、またはRhoコンジュゲート化二次抗体(Jackson ImmunoResearch、ペンシルバニア州ウェストグローブ)と4℃で1時間インキュベーションした。完全に洗浄した後、細胞をPBS(1ml)中に再懸濁し、そしてフローサイトメトリー(FACScan、BD Biosciences、カリフォルニア州サンノゼ)に供した。Cell−Questソフトウェア(BD Biosciences)でデータを分析した。
【0214】
実施例10:マイクロアレイ
[00256]hTS細胞を、RA(10μM)を伴いまたは伴わずに、各々、1日または5日間処理した。TRIsol試薬を用いて総RNAを抽出し、そして製造者のプロトコル(カリフォルニア州サンタクララ、http://www.affymetrix.com)にしたがい、AffymetrixヒトゲノムU133プラス2.0 GeneChipを用いて、国立台湾大学医学部、台湾・台北のゲノム医学センターで行って、Affymetrixマイクロアレイに供した。
【0215】
実施例11:二重免疫金電子透過型顕微鏡(IEM)
[00257]RA(10μM)の処理を行ったまたは行わなかった細胞を、先に記載されるように(Tsaiら)調べた。簡潔には、固定超薄切片を5%メタ過ヨウ素酸ナトリウムの水溶液で前処理し(10分間)、そして再蒸留水で洗浄した。グリッドを、RXRα(1:50)またはGαq/11(C−19;sc−293;1:50)に対するIgG抗体のアリコットとインキュベーションし、そしてその後、二次抗マウス6nm金粒子(1:10;AB Chem、カナダ・ドーバル)または抗ウサギIgG 20nm金粒子(1:10;BB International、UK)でプロービングした。インキュベーション工程の間にグリッドをPBSで洗浄し、そして1%オボアルブミンを含むPBSの滴上にグリッドを置く(15分間)ことによって、切片をブロッキングした。IgG金の後、グリッドをPBSでジェット洗浄し、その後、蒸留水で洗浄した。すべての工程を室温で行った。次いで、切片を酢酸ウラニルおよびクエン酸鉛で染色し、そしてHitachi H−700モデル透過型電子顕微鏡(Hitachi Ltd、日本)上で性質決定した。
【0216】
実施例12:共焦点免疫蛍光顕微鏡
[00258]2%ゼラチンでコーティングしたカバースリップ上で細胞を培養し、そしてRA(10μM)を伴いまたは伴わずに、各5、15および30分間処理した。次いで、細胞をPBSで3回リンスし、PBS中の4%パラホルムアルデヒドで5分間固定し、そしてPBS中の0.4%TritonX−100を含有する2%FBSで15分間、透過処理した。この反応を5%FBS、4℃で一晩ブロッキングし、その後、PBS中の一次抗体RXRα(1:100)またはGαq/11(1:100)、4℃で一晩インキュベーションした。洗浄後、細胞を色素Light 488または色素Light 549コンジュゲート化二次抗体(1:50;Rockland Immunochemicals Inc.、ペンシルバニア州ギルバーツビル)で1時間インキュベーションした。DAPI(1:5,000)と5分間インキュベーションし、カバーガラスを風乾し、そして共焦点免疫蛍光顕微鏡観察(Olympus、東京)のために密封した。
【0217】
実施例13:hTS細胞と定義されるヒト栄養膜細胞層のユニークな集団の分析
[00259]異所性絨毛膜絨毛から得られる細胞を培養し;コロニーが最初に形成され、そして続いて接着性線維芽細胞様細胞に増殖した(図1a)。免疫細胞化学的に、これらの細胞は、ステージ特異的胚性抗原(SSEA)−1、−3、および−4(図1b)を発現した。異所性絨毛膜絨毛において、これらのSSEA陽性細胞は、栄養膜細胞層と組織学的に同じと提示された。しかし、胎盤絨毛という点では、これらは主に、絨毛核の区画に現れた。
【0218】
[00260]幹細胞の特性を評価するため、フローサイトメトリー分析によって、これらの細胞が高レベルの間葉系幹細胞マーカー:CD90、CD44、ビメンチン、および神経フィラメント、ならびにトロホブラストマーカー、サイトケラチン(CK)−7を発現することが明らかになった。これらは、造血幹細胞マーカー:CD34およびCD45、ならびに上皮細胞マーカー:E−カドヘリン、α6−インテグリン、およびL−セレクチンを発現しなかった。これらはまた、弱くネスチンおよびCD9を発現した(図1c)。これらの事実によって、これらの栄養膜細胞層は、成熟胎盤組織から単離されるトロホブラスト様下位集団とは別個であることが示された(Aboagye−Mathiesenら, 1996; Baczykら, 2006)。さらに、他の裏付けとなる証拠には:1)これらの細胞をオールトランスレチノイン酸(RA)で処理すると、先に記載されたもの(Yanら、2001)と類似の巨細胞の形成が生じ(図1d);2)一連の染色体分析によって、核型が不変であることが示され(補助図1aを参照されたい);3)テロメア長の続く測定によって、染色体安定性が確認され(補助図1bを参照されたい);そして4)重症複合免疫不全マウスに細胞を移植すると、陽性の免疫キメラ反応が生じた(補助図1cを参照されたい)ことが含まれた。総合すると、これらの単離された細胞は、栄養膜細胞層の非常に均質な集団に相当するようであり、間葉系幹細胞の特性を示した。したがって、これらの細胞は、hTS細胞と見なされる。
【0219】
実施例14:hTSおよびhES細胞間の遺伝的および生物学的特性における類似性
[00261]hTS細胞の遺伝子プロファイリングを調べるため、転写酵素−ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)を多様なプライマーで実行した(補助表1を参照されたい)。結果は、hTS細胞がTS細胞マーカー(Cdx2、BMP4、Eomes、およびFgfr−2)だけでなく、ES細胞マーカー(Oct4、Nanog、Sox2、およびFGF4)も発現することを示した(図2a)。AffymetrixヒトゲノムU133プラス2.0 GeneChip(カリフォルニア州サンタクララ、http://www.affymetrix.com)を用いることによって分析された包括的遺伝子プロファイルを比較することによって、hTS細胞は、PDMS細胞(C.−P. Chen博士から寄贈)とは区別された(図2b)。
【0220】
[00262]興味深いことに、hTS細胞は、ES細胞の三胚葉の遺伝子発現を示し、これには:中胚葉のオステオポンチン、オステオカルシン、パールカン、コラーゲンII型、ミオゲニン、myoD1、PPARγ−2、およびアジプシン;外胚葉の神経フィラメント、ニューロゲニン(Ngn)−3、CD133、MAP−2、Neo−D、およびネスチン;ならびに内胚葉のインスリン、Pdx−1、CK−19、ソマトスタチン、Isl−1、Nkx−2.2、Nkx−6.1、およびPax−6(図2c)が含まれる。機能的には、修飾を伴って(補助表2を参照されたい)適切な措置(In’t Ankerら, 2004; Fukuchiら, 2004; Yenら, 2005)を用いることによって、hTS細胞は、hES細胞に見られるように中胚葉細胞系譜の特殊な表現型に分化可能であり、これらの細胞には、骨細胞、軟骨細胞、筋細胞、および脂肪細胞が含まれた(図2d)。hTS細胞を選択的に誘導して、それぞれ、外胚葉および内胚葉由来のものの代表として、ドーパミン作動性NSCおよびインスリン産生膵島前駆細胞(以下を参照されたい)に分化させた。これらの結果は、hTS細胞が、三胚葉の特殊化表現型に分化可能なhES細胞の遺伝的および生物学的特性の両方を所持することを立証した。
【0221】
実施例15:Nanogは、LIF退薬によるヒト・トロホブラスト幹細胞の多能性を維持する
[00263]ヒト・トロホブラスト幹(hTS)細胞は、胚性幹(ES)細胞およびトロホブラスト幹(TS)細胞両方の多能性遺伝子マーカー、例えばOct4、Nanog、Sox2、およびCdx2を発現するため、ヒト・トロホブラスト幹(hTS)細胞に対するLIF退薬の影響を調べた(図1a)。hTS細胞を異なる投薬量のLIF、すなわち500(膨大部を模倣)、250(中央部を模倣)、および125単位(卵管峡部を模倣)で各3日間処理し、LIFがOct4発現を促進するが、Cdx2、Nanog、およびSox2発現を用量依存方式で抑制することを示した(図1b)。定量的PCR分析は、これらの知見を支持した(図1c)。Oct4対Cdx2の相対発現比が初期胚分化における細胞の運命を決定可能である(Niwaら、2000)ため、Oct4/Cdx2比(0.4倍)は、膨大部で最高であるようであり、これが中央部で0.2倍に減少し、そして卵管峡部でほぼ1になった(図1d)。このOct4/Cdx2比の減少傾向は、実際、栄養外胚葉運命に向かう分化を促進する(Niwaら、2005)。驚くべきことに、125単位のLIFで処理した細胞では、より高いNanog/Cdx2比(2倍)が見られ、一方、500単位のLIFでは0.1倍であった。これらの結果は、相対的に減少したOct4発現のレスキュー因子としてのNanogが、hTS細胞が多能性を維持するための重要な決定因子であることを強く示唆した。レスキュー因子のこの役割は、500単位のLIFの比に比較した、125単位のLIFの顕著に高いNanog/Oct4比、および125単位のLIFでのCdx2/Oct4比の見かけの増加によってさらに支持された(図1e)。Sox2/Cdx2の明らかな変化は見られなかった。
【0222】
[00264]総合すると、これらの結果は、ヒト卵管の膨大部から卵管峡部に向かうLIF濃度の漸次退薬によって、主に、hTS細胞におけるNanogの上昇が誘導され、これによって、フィーダー細胞を伴わずに、マウスES(mES)細胞およびヒトES細胞増殖におけるものを模倣した、hTS細胞の自己再生および多能性特性が維持されることを立証する。この結果は、NanogがhTS細胞の多能性を維持する際に役割を果たすことを示す。
【0223】
実施例16:RAがNanog発現を増進する
[00265]RAは、ニューロン分化の強力な制御因子であり、そして通常、これは、ターゲット遺伝子の制御領域におけるレチノイン酸応答配列(RARE)と相互作用する核受容体に結合することによる(Maden)。細胞におけるRA産生の供給因子であるレチノール(ビタミンA)が、ES細胞におけるNanogの上方制御によって仲介される細胞分化を抑制することが示されてきている(Chen)。RAがhTS細胞におけるNanogに対して類似の影響を示すかどうかを調べた。hTS細胞をRAで1日処理し、そしてフローサイトメトリーに供した。この結果は、RAがNanog、Oct4およびSox2の発現を促進するが、Cdx2の発現は促進しないことを示し(図2f)、これは、Affymetrix GeneChipオリゴヌクレオチド・マイクロアレイによるマイクロアレイmRNA発現プロファイリングと一致した(図2g)。さらに、siRNAでのNanogのノックアウトは、RA誘導性Nanogを抑制したが、Cdx発現を増加させた。対照的に、Cdx2 siRNAはNanogを促進し、そしてフローサイトメトリーによって、RA誘導性hTS細胞においてCdx2を抑制した(図2h)。総合すると、これらの結果は、RAがhTS細胞におけるNanogの過剰発現を誘導し、それによって、RAが、細胞運命の決定において、Nanog/Cdx2比を変化させないことを示す。
【0224】
実施例17:RAはその受容体RXRαの活性化を促進する
[00266]RAは、ウェスタンブロッティングアッセイによれば、最初の5分間でその受容体RXRαの活性化を促進するが、この作用は30分間しか持続しなかった。その代わり、増加したRARβ産生が60分以内に観察された(図2i)。RAは、免疫沈降アッセイによれば、RXRαおよびRARβに直接相互作用することが観察された(図2j)。さらに、活性化されたRXRαは、15分をピークとして、核に向かって転位置し、そしてこれ以降、核強度は免疫蛍光顕微鏡観察によれば減少した(図2k)。タンパク質Gαq/11サブユニットはまた、30分で活性化された(図2l)。この目的を達成するために、細胞性レチノイン酸結合タンパク質2(CRABP−2、図1d)の補助を伴わずに、最初の反応段階で、RAがRARと相互作用するようである。
【0225】
実施例18:RXRα/RARβは、Gタンパク質共役受容体(GPCR)スーパーファミリーのメンバーに属するようである
[00267]この概念は、二重免疫金電子顕微鏡観察による、RXRαおよびGαq/11サブユニット間の直接相互作用の観察によって確認された(図2m)。次に、RXRα/RARβおよびNanog間を関連づけるため、免疫沈降アッセイ分析によって、RARβではなくRXRαがNanogのプロモーターに対して直接作用することが示唆される(図2n)。さらに、ES細胞とは異なり、hTS細胞は、hTS細胞がレチノールをRAに代謝するのを可能にする、主要RA生成酵素:レチンアルデヒドデヒドロゲナーゼ2型および3型(RALDH−2および−3)を含有する(図1d)。RAがhTS細胞に作用して、Nanogのプロモーターに結合する、GPCRと関連したRXRα/RARβ複合体との直接相互作用によって、Nanogを産生することが立証される。
【0226】
実施例19:hTS細胞におけるRA誘導性Nanog発現は、卵管において、勾配LIF含量によって影響を受ける
[00268]LIFの退薬は、フローサイトメトリーによれば、hTS細胞において、RA誘導性Nanog発現を有意に増進可能であり(図2i)、hTS細胞由来NSCがLIFの非存在下でのRA誘導による前駆細胞として振る舞うことが可能になる位置にあり、適切な微小環境条件下で、神経サブタイプ特定の多能性特性を維持することが示唆される。
【0227】
実施例20:RAは、非RARE経路を通じてTH発現を促進する
[00269]これらの結果は、ウェスタンブロットによって測定されるhTS細胞において、それぞれ、5、120および5分間で、RAがRXR−α、RAR−βおよびc−Src発現を刺激する、最初の結果に基づいて、RAが非ゲノムシグナル伝達経路を誘導することを示す(図3a)。RXR−α/RAR−β相互作用が、Gタンパク質共役型受容体(GPCR)のスーパーファミリーに属するかどうかを決定するため、二重免疫金電子顕微鏡を用いて、G−タンパク質Gαq/11およびRXR−α間の相互作用を調べた。結果は、RXR−αが、細胞膜で、Gαq/11と結合相互作用を有し(図3b)、そして続いて、解離Gαq/11が膜結合ホスホリパーゼCベータ(PLCβ)を刺激して、PIP(少量の膜ホスホイノシトール)を2つの二次メッセンジャー、IP3およびジアシルグリセロール(DAG)に切断することを示した(図3b)。
【0228】
[00270]続いて、RAは、免疫沈降アッセイおよび特異的c−Src阻害剤PP1類似体を用いることによって、RXRα、RARβおよび[c−Src]の足場形成を誘導した(図3c)。
【0229】
実施例21:RAはWnt2B/Fzd6/β−カテニン経路を活性化する
[00271]ウェスタンブロット分析によって、RAが、4時間および24時間インキュベーション後、Wnt2Bおよび癌原遺伝子FRAT1を有意に上方制御することが立証された(図24a)。hTS細胞を、Wnt2Bに対するsiRNAを伴いまたは伴わず、RAと一晩インキュベーションした。フローサイトメトリー分析によって、RAが、Wnt2B、ならびに仲介タンパク質ディシェベルド3(Dvl3)および癌原遺伝子FRAT1を含むその下流ターゲットを有意に上方制御し、阻害性グリコーゲンシンターゼキナーゼ−3β(GSK3β)を導き、これはsiRNAによってWnt2Bをノックダウンすることによって阻害可能であることが示された(図24bおよび24c)。RT−PCR分析によってもまた、類似の結果が観察された(図27)。RAはまた、7回スパン膜貫通受容体のフリズルドファミリーのメンバーであるFzd6 mRNAの過剰発現も促進した(図24d)。Fzd6のWnt2B仲介発現におけるRAの役割を検証するため、本発明者らはまた、Dvl3およびその下流エフェクターFRAT1の発現レベルも分析し、そしてFzd6のRA仲介増進が、Wnt2Bに対するsiRNAの存在によって抑制可能であり、GSK3βの同時減少が伴うことを示した(図24bおよび24c)。続いて、ウェスタンブロット分析によって、RAが30分および24時間の間に有意にβ−カテニンを活性化することが示された(図24e)。RAは、新規古典的Wnt2B/Fzd6/β−カテニンシグナル伝達経路を誘導し、hTS細胞において、阻害性GSK3βが細胞質β−カテニンを安定化し、そして活性化するのを可能にする。
【0230】
実施例22:RAはヒストンデアセチラーゼ6(HDAC6)を調節する
[00272]ウェスタンブロット分析によって、RAは、転写制御酵素であるヒストンデアセチラーゼ6(HDAC6)の上昇を2時間で促進し、これは、同時免疫沈降(IP)アッセイによれば、24時間のRA処理後、β−カテニンと直接相互作用することが可能であることが示された(図24f)。さらに、本発明者らは、細胞分画アッセイによって、β−カテニンの核転位置が起こることを示し(図24g)、これはhTS細胞における24時間のRA処理後、古典的Wnt2B/Fzd6/β−カテニンシグナル伝達経路の存在を支持した。共焦点免疫蛍光顕微鏡観察によって、これらの観察がさらに確認された。HDAC6に対するsiRNAの存在下で、β−カテニンの核局在がブロックされた(図25)。興味深いことに、本発明者らは、hTS細胞由来ニューロン様細胞において、細胞膜(シナプス)でのRA処理後、5分間で、β−カテニンの非常に早期の発現が見られうることを見出した。核において、β−カテニンは、TCF/LEFファミリーの転写因子と会合することによって、転写制御に関与する。細胞分画アッセイ分析によって、この相互作用がβ−カテニンの核転位置を導くことが示された(図24e)。
【0231】
実施例23:RARβおよびGβ間、ならびにRXRαおよびGαq/11間の相互作用
[00273]hTS細胞におけるウェスタンブロット分析によって、RAが、Gαq/11およびGβ両方の迅速な産生を30分で誘導し、そしてまた、レチノイドX受容体α(RXRα)およびレチノイン酸受容体β(RARβ)を、それぞれ30分および4時間で誘導することが立証された(図26a)。リアルタイム共焦点蛍光顕微鏡分析によって、GFPタグ化RXRαは、RA刺激によって、数分以内に、細胞質ゾル区画から細胞内領域に向かって、迅速に移動し(図26bおよび26c)、ここで、Gαq/11とともに、免疫細胞化学的に同時発現される(図26d)。この現象はさらに、二重免疫金透過型電子顕微鏡観察によって裏付けられ、ここで、RAは、細胞膜で小さい金でタグ化されたRXRαおよび大きい金でタグ化されたGαq/11の結合を刺激した(図26e)。生化学的には、RXRαは、Gαq/11と物理的に相互作用し、そして該作用は、IPアッセイによれば、RXRα siRNAを用いることによって阻害された(図26f)。RARβおよびGβ間でも類似の事象が起こり、そしてこの作用はまた、IPアッセイによれば、RARβ siRNAを用いることによって阻害された(図26g)。IPアッセイは、選択的c−Src阻害剤PP1類似体が、RXRα−RARβヘテロ二量体の形成を妨げることが可能であることを示し(図26h)、RXRαおよびRARβが別個に機能することを可能にする未知の機構の存在が示唆された。この知見はさらに、二重免疫金透過型電子顕微鏡によって観察される小胞体(ER)中のRA誘導性金粒子タグ化RXRαの係留によって裏付けられた(図26i)。総合すると、データは、RA誘導性RXRαおよびRARβが、細胞膜で、それぞれ、Gαq/11およびGβと独立に相互作用することを示唆する。
【0232】
実施例24:Akt3/mTORシグナル伝達およびmRNA翻訳
[00274]リアルタイムPCR(RT−PCR)分析によって、RAがわずか15分間、RXRα mRNAおよびRARβ mRNAの迅速な一過性上昇を誘導し(図28a)、そして1時間以内にRARβおよびRXRαの迅速な産生を誘導することが見出された(図26a)。軸索成長コアにおけるmRNAの濃縮およびニューロンにおけるmRNA局在とのその関連があり、そしてRAが増進するRARαレベルが樹状RNA顆粒における局所GluR1合成を仲介して、ニューロン膜でのシナプス形成のため、RARα修飾翻訳に寄与するという事実に基づき、これらの細胞プロセスにおいて、RXRαの細胞内mRNA局在が関与するかどうかを調べることに重点を置いた。続いて、IPアッセイによって、RAは、Gβおよびホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3K)間の結合を誘導し(図26g)、そしてウェスタンブロット分析によって、30分から4時間の間に、PI3KとAkt1およびAkt2を含むすべてのAktアイソフォームである下流エフェクターを、そして1時間で一過性Akt3を活性化することが示された(図28b)。フローサイトメトリー(図28c)およびRT−PCR分析(図29a)によれば、RAでの24時間処理後、Aktアイソフォームのすべての発現は、PI3K阻害剤ワートマニンでの前処理によって阻害され、Gβ/PI3K/Aktシグナル伝達の存在が示された。特に、Aktは、最近、ニューロン生存を促進する神経突起伸長に必須の制御因子であり、RA誘導性Akt3(4時間)は、ラパマイシンの機械的ターゲット(mTOR)に結合可能であり、これはAkt3に対するsiRNAによって阻害され(図28d)、特異的抗体(Cell Signaling Technology)を用いることによって、4時間で、部位セリン2448でmTORの一時的リン酸化を導くことが、近年、明らかになってきている。しかし、この作用は、24時間のインキュベーション後には消失した(図28e)。この機能は、ウェスタンブロットによって(図28f)そしてフローサイトメトリーによって(図29c)、siRNAを用いたAkt3のノックダウンによって阻害された。直ちに、ウェエスタンブロット分析は、RA処理4時間により、リン酸化されたmTORは真核翻訳開始因子−4E結合タンパク質1(eIG4EBP1)と直接相互作用し(図28g)、そしてeIF4EBP1(図28h)を活性化することを示した。siRNAを用いることによるリン酸化mTORのノックダウン、eIF4EBP1のリン酸化が阻害された;その代わり、伸長開始因子4E(eIF4E)のリン酸化が活性化され(図28h)、eIF4E/eIF4EBP1複合体からのeIF4Eの解離が起こったことが暗示された。eIF4Eのリン酸化は、mRNAのキャップ依存性翻訳を引き起こすことを可能にする。総合すると、これらの観察は、RAが、どのように、RXRα mRNAおよびRARβ mRNAの活性化を通じて細胞内mRNA翻訳を誘導可能にし、局所的にそれぞれRXRαおよびRARβを産生するかを説明し、これはeIF4EのsiRNAによるノックダウンが、IPアッセイによれば、RXRαおよびGαq/11の間の、ならびにRARβおよびGβの間の相互作用両方を阻害したためであった(図28i)。これらの結果は、RXRαおよびRARβの局所合成の開始因子としてAkt3/mTORシグナル伝達が役割を果たすことを裏付ける。RAは、伸長開始因子4B(eIF4B)の上昇を刺激するが、この作用は、mTORまたは4EBP1のいずれに対するsiRNAによっても影響を受けず、eIF4B発現の制御には別の機構があることが示唆された(図28h)。時空間Akt3は、mTORシグナル伝達を通じて、RXRαおよびRARβ産生の細胞内局在を促進する。
【0233】
実施例25:ドーパミン作動性特定の主流に対するCREB1
[00275]Gβ/PI3K下流エフェクターAkt1は、cAMP応答配列結合タンパク質1(CREB1)に、セリン133部位でのリン酸化を通じて直接結合し、そしてこれを活性化する(図30a)。Akt1およびCREB1の相互作用は、Akt1 siRNAによって阻害された(図30b)。リン酸化されたCREB1は、クロマチン免疫沈降(ChIP)アッセイによると、ドーパミン前駆体チロシンヒドロキシラーゼ(TH)遺伝子をターゲティングし、そして転写し(図30c)、これはCREB1 siRNAによって阻害された(図30d)。この目標に向けて、結果によって、RA誘導性RARβ/Gβ/PI3K/Akt1/CREB1経路が、ドーパミン作動性神経発生におけるTH転写における役割を果たすことが示唆された。この知見をin vivoで裏付けるため、病変線条体でhTS細胞由来トロホブラストNSC(tNSC)の頭蓋内移植を受けた6−OHDA誘導性PDラットを用いたモデルを用いた。移植12週後の脳切片の検査によって、免疫蛍光組織分析により、黒質緻密部において、正常側と適合して、療法側における新規ドーパミン作動性(DA)ニューロンにおいて、CREB1およびTHの同時発現が観察された(図30e)。THおよびCREB1活性はどちらも、正常ニューロンに比較して再生DAニューロンにおいて、より高かった(図30f)。興味深いことに、見かけのCREB1発現がDAニューロンの核で観察された。これらの知見は、CREB1不全マウスがなぜ神経変性に感受性であるかを説明しうる。
【0234】
実施例26:ERカルシウム制御におけるRXRα/Gαq/11の研究
[00276]30分から4時間の間のウェスタンブロット分析によって、RAがGαq/11の漸次活性化を誘導し、これが膜結合型ホスホリパーゼC(PLC−β)の触媒を誘発して、膜ホスホイノシトールPIP2の分解を導き(図21a)、先に記載される慣用的Gαシグナル伝達と一致して、二次メッセンジャー、イノシトール(1,4,5)三リン酸(IP3)を産生することが示された。IP3は、ERに位置するその受容体IP3R(図21a)を活性化し、細胞内カルシウム上昇を引き起こす(図21b)。細胞内カルシウムの起源を確認するため、細胞をカルシウム不含培地中で培養し、ここでRAは、リアルタイム生存細胞免疫蛍光顕微鏡測定によって、一過性の細胞内Ca2+放出を誘導した(図21b−a)。ERカルシウムレベルの枯渇は、ホメオスタシスおよび細胞保護に関して、外因性CaClを添加することによってレスキュー可能であり、ストア感受性カルシウム進入(SOCE)のパターンを示した。ERにおけるカルシウム放出のプロセスは、用量依存方式で、IP3R特異的阻害剤2−APBによって阻害された(図21b−b)。これらの結果は、ER放出された細胞内カルシウム上昇が、hTS細胞において、RA誘導性Gαq/11シグナル伝達経路に関与することを示す。
【0235】
[00277]KClは、hTS細胞において、カルシウム不含培地中、ERカルシウムのRA誘導性枯渇後、L型カルシウムチャネルを活性化可能であった(図21b−c)。L型カルシウムチャネルアンタゴニスト、ニフェジピンは、このシグナル伝達を遮断可能であった(図21b−d)。細胞内ERカルシウムのRA制御はL型カルシウムチャネルと関連づけられる。
【0236】
実施例27:興奮−神経発生カップリングにおけるCaMKIIの研究
[00278]ウェスタンブロット分析によって、RAが1〜2時間でCaMKIIの時空間活性化を誘導することが示された(図21a)。免疫沈降アッセイ分析は、CaMKIIがL型カルシウムチャネル活性をコードして、興奮−転写カップリングにおいて核CREBに局所的にシグナル伝達するという先の研究と適合して、CaMKIIがCREB1を直接リン酸化し、そして活性化する(図21c)ことを立証する。ウェスタンブロット分析によって、真核開始因子4B eIF4B siRNAは、CaMKII、カルシニューリン、およびeIF4Bの発現を阻害することが示された(図21d)。軸索は、発生中のニューロンにおいて、特異的タンパク質合成をコードする多様なmRNAを局所的に含有し、これには、CaMKII、カルシニューリン、およびCREB1が含まれる。CREB1は、遠位軸索のシグナルに関与する、核における特異的転写プロセスのための逆行性追跡を可能にする。CaMKIIの外因性RA誘発局所タンパク質合成は、hTS細胞において、eIF4B siRNAによって阻害可能である。したがって、この局所活性化CaMKIIシグナルは、CREB1に対して同様に振る舞い、細胞外の合図に際して、迅速な誘導性遺伝子転写が示唆された。
【0237】
[00279]一過性CaMKIIは、真核開始因子4B(eIF4B)に結合し、そして活性化して(図21c)、キャップ非依存性機構を通じて、mRNA翻訳機構を開始した。ウェスタンブロット分析によって、RA処理後、選択的CaMKII阻害剤KN93によって、この作用は阻害されることが示された(図21e)。このCaMKII/eIF4Bシグナル伝達は、次いで、eIF4B/c−Src/Nanogシグナル伝達経路を統合して、tNSCの自己再生および増殖のため、RXRα/Gαq/11からのシグナル伝達経路を達成した。これらの結果はまず、Gαq/11シグナル由来CaMKII興奮が、tNSCの自己再生の維持に関与することを調べた。
【0238】
[00280]ウェスタンブロットアッセイおよび免疫沈降アッセイ分析は、CaMKIIがパーキンソンタンパク質2(パーキン)に結合し、そしてこれを活性化することを立証した(図21aおよび21f)。続いて、パーキンは、軸索に優先的に位置し、そして微小管集合を刺激する微小管会合タンパク質タウ(MAPT)と直接相互作用し、そしてこれを活性化した(図21aおよび21f)。その結果、MAPTは、SNCAに直接結合して(図21aおよび21g)、パーキン/MAPT/SNCA複合体を形成した。ここで、MAPTは、もっぱらニューロンで発現され、微小管集合を安定化し、そして促進する微小管要素である、チューブリンと相互作用しそしてこれを活性化する(図21aおよび21h)。総合すると、これらの結果は、初期神経形成における軸索の振る舞いの重要性を示唆した。
【0239】
実施例28:カルシニューリン/NFAT1シグナル伝達の活性化
[00281]ウェスタンブロットアッセイ分析は、RAがカルシニューリンの産生を誘導することを立証した(図21a)。2−APBでの前処理によって、カルシニューリン、NFAT1、およびMEF2A発現が阻害され(図21i)、ERカルシウムおよびカルシニューリン分子が関連づけられた。カルシニューリンは、直ちに、T細胞活性化およびアネルギーの重要な制御因子であるNFAT1を脱リン酸化し、これは30分〜2時間の一過性様式を示した(図21a)。この作用はまた、免疫沈降アッセイ分析によって明らかであるように、2−APBによっても阻害され(図21h)、ERカルシウムがカルシニューリン/NFAT1シグナル伝達に関連づけられた。さらに、RAは、NFAT1、および核細胞質輸送体であるインポーチンの一過性相互作用を誘導し(図21aおよび21j)、細胞分画アッセイによるNFAT1核転位置を導いた(図21k)。NFAT1のこの一時的効果は、持続および一過性カルシウムシグナル間を細胞が区別する、1つの機構であると考えられる。
【0240】
実施例29:WntおよびGタンパク質シグナル伝達経路の研究
[00282]古典的Wntシグナル伝達の阻害性GSK3β(セリン/スレオニン部位)は、RAで一晩処理した後の細胞質β−カテニンの安定化を維持したが、30〜120分にわずかに減少したレベルであった(図24d)。予期せぬことに、Aktアイソフォームの中で、Akt2はGSK3βに4時間で結合可能であった(図21l);が、フローサイトメトリー分析によって、GSK3βは、4時間でまず活性化されたが、一晩のRA処理によって、後に阻害性に遷移した(図21m)。この現象はさらに、Akt2 siRNAを用いることによっても確認された(図21n)。この機能的多様性を説明するため、GSK3βの最初の活性化が、Akt2によるTyr216部位でのリン酸化のためであり、続く阻害は、セリン/スレオニン部位でのリン酸化のためであることが確認された(図21m)。これらの結果は、多様なプロテインキナーゼによるGSK3βの部位特異的リン酸化が、下流エフェクターの運命を決定することを立証する。さらに、活性GSK3βは、直接相互作用を通じてMAPTをリン酸化した(図21h)。次いで、MAPTはチューブリンと相互作用して、そしてこれを活性化し(図21aおよび21h)、微小管集合を促進した。特に、初期神経発生中、Wnt2B、Gβ、およびGαq/11シグナル伝達経路の間の対話架橋が構築される。
【0241】
実施例30:ドーパミン作動性神経発生のための転写因子の研究
[00283]核において、β−カテニンおよびCREB1の相互作用は、TH転写における主流に相当した(図30a)。活性β−カテニンは、次に、リンパ系増進因子1/T細胞因子1(LEF1)に結合し(図22a)、LEF1の転写リプレッサーからアクチベーターへの切り換えを導く。次いで、LEF1は、ビコイド関連因子のスーパーファミリーのメンバーであるPitx2を補充し、そしてこれと相互作用した(図22a)。クロマチン免疫沈降(ChIP)アッセイによって、LEF1はPitx2遺伝子転写を促進するが、Pitx3遺伝子を促進せず(図22b)、これは、β−カテニン、Pitx2、およびLEF1が相互作用して、相乗的にLEF−1プロモーターを制御することと適合した。
【0242】
[00284]さらに、一過性核活性NFAT1は、転写因子として働いて、免疫反応のためのサイトカインおよびTNF−αを産生する。しかし、この作用は、この場合には起こらないようであり、これはリン酸化GSK3βが、核においてカルシニューリンに誘導されたNFAT1のDNA結合を阻害可能であり、そして核排出を促進可能であるためである。したがって、活性細胞質NFAT1は、細胞質転写因子筋細胞増進因子2A(MEF2A)と相互作用し、そしてこれを活性化し(図22cおよび22d)、これはこの作用がNFAT1 siRNAによって阻害されたためであった(図22e)。特に、迅速な誘導性CREB1は核に進入し、そしてMEF2A遺伝子を転写し、これはMEF2Aタンパク質を産生した(図22f)。MEF2Aは、多数の方式で、遺伝子転写で機能可能であり(図22g)、これには、より多くのMEF2Aを産生する自己制御を通じた自身の転写、ドーパミン作動性特定のためのTH遺伝子転写、SNCA/MAPT/パーキン複合体形成のためのSNCA遺伝子の転写、ならびにEP300およびPitx2との相互作用が含まれ、これは、MEF2A siRNAによって阻害された(図22h)。
【0243】
[00285]活性ER300は、ChIPアッセイによれば、HDAC6遺伝子だけでなくTH遺伝子もターゲティングする(図22i)。次いで、HDAC6は核転位置のためにβ−カテニンを所持可能にした(図24eおよび24f)。総合すると、実行上の転写複合体が形成され、そしてTH遺伝子転写のために運命付けられた。これらの間で、CREB1、EP300、およびMEF2Aは、TH遺伝子のプロモーターを直接ターゲティングすることも可能であったが、β−カテニン、LEF1、およびPitx2は、転写プロセス中、エンハンサーのコアクチベーターとして働いた。ウェスタンブロット分析は、4時間および24時間で多様な分子活性を示す。
【0244】
実施例31:動物研究
[00286]動物研究のため、F1B(−540)−GFPおよびpSV2neoプラスミドをhTS細胞にトランスフェクションして、その後、G418で選択することによって、レポーター細胞を調製した。95%を超えるhTS細胞が、F1B−GFPおよびTH−2の同時発現を示した。次に、以下に記載するように、ラット脳の片側にニューロトキシン、6−ヒドロキシドーパミン(6−OHDA)を注射することによって、「若い」スプレーグ−ドーリーラット(n=12、体重、225〜250グラム)で、パーキンソン病を誘導した。
【0245】
[00287]すべての実験を、高雄市医科大学病院の病院施設審査委員会の倫理委員会、および国立成功(Chung Kong)大学医学部、台湾・台南の倫理委員会のガイドラインにしたがって実行し、そして行った。
【0246】
パーキンソン症の誘導
[00288]12匹のスプレーグ−ドーリーラット(体重560+65g(前)、548+46g(後))を、6−OHDA障害半身パーキンソン症のモデルとして用いた(Javoyら, Brain Research, 102:201−15, 1976)。手術のため、抱水クロラール(4%、1cc/100g体重)によって麻酔した後、右内側前脳束(前後(AP)2.8/側方(Lat)2.2/深度(Dep)8.0mm)内に、1μg/0.5μl/分の速度で8分間(注入ポンプ:CMA100)、6−ヒドロキシドーパミン(Sigma)の注入によって、定位損傷を実行した。10分後、チューブを取り除いた。2週間後、アポモルフィン皮下注射(25mg/kg)投与の20分後、プラスチックボウル(直径36cm)中で、アポモルフィン誘導性回転を試験した。対側性回転を監視し、そしてビデオカメラを用いて20分間記録した。5分あたり25を超える回転数を示すラットが、研究に適格と見なされた。細胞移植のため、右片側線条体内で、細胞を2つの部位(各部位:3x10/4μl)(第一の部位;前後+1/側方+2.7/深度6.4mm;第二の部位:前後+0/側方+2.7/深度6.4mm)内に移植した。対照群には、同じアプローチでPBSを投与した。細胞注射後、0、3、6、9、および12週で、アポモルフィン誘導性回転を測定した。結果を対側性回転/5分間として表した(図5A)。
【0247】
[00289]RAの異なる時間によって誘導されるNSCの効果を調べるため、適格ラットをランダムに3つの群に分けた:1日および5日RA誘導群、ならびに対照群。移植前に、hTS細胞をF1B−(−540)−緑色蛍光タンパク質(GFP)およびpSV2neo組換えプラスミドDNAでトランスフェクションし、その後、G418選択で95%を超える収率を達成した。各ラットには、総数6x10細胞で、GFPタグ化NSCを投与し、そして対照ラットには、ビヒクルとしてリン酸緩衝生理食塩水を投与した。移植後3週ごとに、アポモルフィン誘導回転試験(Iancuら、2005)によって、療法効果を評価した。
【0248】
[00290]実験1.成体スプレーグ・ドーリーラット(BW:225−250g)を移植レシピエントとして用い、そしてこれらを12時間明暗周期で、食物および水に不断にアクセスさせて飼育した。病変ラット(n=12)をまず3つの群に分けた:(a)病変を有しそして1日RA誘導NSCを移植されたもの(n=4)、(b)病変を有しそして5日RA誘導NSCを移植されたもの(n=4)、ならびに(c)病変を有しそして移植されていない対照(n=4)。ラットをZoletil(50mg/kg、s.c.、Virbac Lab.フランス・カロス)によって麻酔し、そして病変ラットに、6−OHDA(0.1%l−アスコルビン酸−生理食塩水中、8μg/4μl;Sigma−Aldrich、ミズーリ州)を、十字縫合および硬膜に照らして(according to)、mmで、左MFB(前後2.8、側方2.0、深度8.0mm)およびSN(前後5.0、側方2.2、深度7.5mm)内に片側性に注射し、そしてその部位で10分間待った。DA枯渇線条体内への、2つの部位(前後+1.0、側方+2.7、深度6.4および前後+0、側方+2.7、深度6.4)でのhTS細胞由来NSC(1x10細胞/5μ1/5分)の移植を行い、そしてカニューレを5分間その場所に放置し、その後、ゆっくりと引き抜いた。移植処置中、細胞生存度は96〜98%の間で安定なままであった。シャムのラットには細胞を含まないビヒクルを投与した。6−OHDA病変が安定な半身パーキンソン状態(>300回転/時間)を達成した後、1週ごとにアポモルフィン誘導性回転によって、病変を評価した。アポモルフィン誘導性回転試験によって、3週ごとに、12週まで、移植効果を評価した。移植18週後、ラットを屠殺し、そして脳切片をTH−DAB免疫染色に供した。
【0249】
[00291]実験2.PDラットは、試験前に体重560+/−65gそして試験後に548+/−46gで管理された。病変ラット(n=16)を実験1におけるように生成し、そして2群に分けた:1日RA誘導NSCでの移植による、(a)病変を有しそして細胞移植されたもの(n=8)および(b)病変を有しそして対照として細胞を伴わない移植をされたもの(n=8)。前後+1.0、側方+2.7、深度6.4での注射によって細胞を移植した。以下に記載するように、移植後、3週ごとに12週まで行動評価を行った。13週で、すべてのラットを屠殺し、そして脳切片をTH−DAB免疫染色に供し、そしてTH陽性細胞を濃度計によって分析した。
【0250】
行動評価
[00292]自発運動アッセイ。ラットに関して、自然発生的な自発運動を円状廊下において監視した(幅10cmおよび直径60cm、壁の高さ30cm;Med Associates Inc.、バーモント州セントアルバンス)。4つの光電管は、円の壁周囲に等距離に配置され、光線中断によって、動物の水平方向歩行活性を検出した。カスタマイズされたソフトウェア(Med Associates)を装備したPCを通じてデータを記録した。動物の別個の群を10mg/kg(群あたりn=6)および20mg/kg(群あたりn=12)のコカインで試験した。動物を処置群(HSV−LacZおよびHSV−RGS9−2)にランダムに分け、そして自発運動装置に2時間、慣らした。翌日、定位フレーム上、動物の側坐核中にHSVベクターの投与を行った。2日間回復させた後、自発運動に関して、2時間、動物をコカインで試験した。ボンフェローニ事後検定で、データを2方向ANOVA(HSVx時間)によって分析した。
【0251】
[00293]マウスに関しては、活動チャンバーがプラスチックケージ(12x18x33cm)であり、10対の光電光線がチャンバーを11の長方形フィールドに分ける、自動化系(Hiroiら、1997)において、自発運動を測定した。マウスの遺伝子型を知らない実験者が、マウスを各日同じ時間に試験した。急性実験のため、動物を30分間チャンバーに慣らし、その後、生理食塩水か、あるいは多様な用量のアンフェタミン、コカインまたはアポモルフィンのi.p.注射を行い、そして自発運動をさらに30分間評価した。慢性実験のため、最初の3日のi.p.生理食塩水注射直後、動物をチャンバーに入れた。次いで、水平方向の活動を10分間測定した。第4〜8日(C1〜C5)、動物にコカイン(7.5mg/kg i.p.)を投与し、そして活動を10分間測定した。ラットおよびマウスに用いられた短い期間は、先の研究において、歩行自発運動の測定において典型的である、潜在的な混乱させる影響を回避することが示されてきている。
【0252】
[00294]3つの行動試験を行った:(i)病変および移植効果を評価する薬剤誘導性回転、(ii)後足歩行パターンを評価する足跡分析、および(iii)熟練歩行行動(後肢/前肢の組み合わせおよび足配置の正確さ)を評価するはしご段歩行試験。
【0253】
[00295]アポモルフィン誘導性回転試験。簡潔には、アポモルフィンを皮下投与(0.9%正常生理食塩水中の0.01%アスコルビン酸中、0.5mgアポモルフィン/kg体重、Sigma−Aldrich)した後、ラットを広く丸いチャンバー(直径16cm)に40分間入れた。すべての回転をビデオテープ上に記録し、そして純回転非対称性を計算した。データを30分間の総回転数として計算した。Matlabソフトウェアを用いることによって、データを分析した。
【0254】
[00296]また、アポモルフィン誘導性回転(apo)を、0.5mg/kgアポモルフィン溶液(Sigma−Aldrich、0.9%正常生理食塩水の0.01%アスコルビン酸中、0.5mgアポモルフィン)の腹腔内注射後、60分間観察した。先に記載されるように([59];図2)、病変後(LXの2および3週後)および移植後(TXの3および6週後)、回転測定装置(rotometer)ボックス中、回転バイアスを評価した。LX2週後およびTX3週後のデータでは、薬剤誘導性回転は示していない。3日後、1ml/kgアンフェタミン溶液(Sigma−Aldrich、ドイツ・シュタインハイム;1.0ml生理食塩水あたり2.5mgのd−アンフェタミン)の腹腔内注射後、90分間、アンフェタミン誘導性回転(amph)を行った。アポモルフィン注射後の病変側への対側性の<4.0の全身回転、およびアンフェタミン注射後の病変側への同側性の<6.0の全身回転を示したため、5匹の動物を排除した。アポモルフィン誘導性回転は、負の値における純回転として提示し、そしてアンフェタミン誘導性回転は、正の値における純回転として提示する。
【0255】
[00297]アポモルフィンの注射後(A)およびアンフェタミンの注射後(B)の薬剤誘導性回転。回転バイアスを全身回転の総量として示す。ドルマーク($)は、シャムおよびtxラットの間の有意な相違を示す。プレTX=病変6週後、ポストTX=移植6週後。有意な移植効果があることに注目されたい(アポモルフィン注射後の回転バイアスの減少;アンフェタミン注射後の過剰補償)。
【0256】
[00298]無動症に関するバー試験。バー試験のため、対側および同側前肢がどちらも、0.7x9cmサイズの水平アクリルバー上に交互に置かれるような姿勢で、ラットを穏やかにテーブル上に置いた。前肢の配置から、各々が最初にバーから完全に離れるまでの時間を記録した。ブロック上で各前肢が消費した時間の総計を先に記載されるように(Fantin)記録した。
【0257】
[00299]足跡分析(時空間歩行分析)。先に記載されるように(Klein)、歩行速度、ステップ長、ストライド長および支持基底面を含む足跡分析を実行して、後肢歩行パターンを評価した。ラットは、通路(長さ50cm、幅8cm)を通ってプラスチックボード上を歩かなければならない。5回の連続ステップで、ストライド長、肢回転(第三指および掌の中心を通じたバーチャルな線、ならびに歩く方向に平行なバーチャルな線の間の角度)および足の間の距離(左および右ステッピング周期の足の間の距離)を含むパラメーターをビデオカメラ(Casio EX−F1、日本)によって記録し、そしてMatlabソフトウェアによって分析した。
【0258】
[00300]適切な方法を用いて、足首関節の硬直を評価する。適切な電気生理学的アッセイを用いて、脳におけるドーパミン作動性ニューロンの回復%を決定する。
免疫組織化学
[00301]TH免疫組織化学のため、動物に最終用量60mg/kgのペントバルビトンナトリウムをi.p.投与し(Apoteksbolaget、スウェーデン)、そしてこれを50ml生理食塩水(0.9%w/v)で経心的に灌流し、その後、200ml氷冷パラホルムアルデヒド(0.1Mリン酸緩衝生理食塩水中4%w/v)を灌流した。脳を除去し、4%パラホルムアルデヒド中、2時間、事後固定(post−fix)し、そしてスクロース(0.1Mリン酸緩衝生理食塩水中25%w/v)中、一晩、凍結保護し、その後、凍結マイクロトーム(Leica)上で切片作製した。厚さ20μmの冠状切片を連続6枚収集した。
【0259】
[00302]免疫組織化学法を以下のように行った。自由浮遊切片を、5%正常血清および0.25%TritonX−100(Amresco、米国)を含有するカリウムを含む0.1Mリン酸緩衝生理食塩水のインキュベーション溶液中、一次抗体と室温で一晩インキュベーションした。二次抗体を、2%正常血清および0.25%TritonX−100を含有するカリウムを含むリン酸緩衝生理食塩水中で希釈し、そして元来の溶液に室温で2時間適用した。ジアミノ−ベンジジンのペルオキシダーゼ駆動沈降、またはフルオロフォアのコンジュゲート化(二次抗体に直接、または必要な場合、ストレプトアビジン−ビオチン増幅工程を伴う)によって、一次−二次抗体複合体の検出を達成した。c−Fosの検出のため、硫酸ニッケル(2.5mg/ml)を用いて、染色を増感させた。蛍光マーカーで標識し、スライドにマウントした切片を、ポリビニルアルコール−1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンでカバースリップ処理し、そしてジ−アミノ−ベンジジン標識切片をアルコールおよびキシレン中で脱水し、そしてDePeXマウンティング培地(BDH Chemicals、英国)でカバースリップ処理した。一次抗体および希釈因子は以下の通りであった:マウス抗カルビンジン28KD(1:1000:Sigma)、ウサギ抗c−Fos(1:5000、Calbiochem)、ニワトリ抗GFP(1:1000、Abcam)、ウサギ抗GFP(1:20 000;Abcam)、ウサギ抗GIRK2(1:100;Alomone Labs、イスラエル・エルサレム)、ウサギ抗PITX3(1:100;Invitrogen)およびマウス抗チロシンヒドロキシラーゼ(TH:1:4000;Chemicon)。1:200の希釈で用いる二次抗体は以下の通りであった:(i)直接検出−シアニン3またはシアニン5コンジュゲート化ロバ抗マウス、シアニン2コンジュゲート化ロバ抗ニワトリ、シアニン5コンジュゲート化ロバ抗マウス(Jackson ImmunoResearch)および(ii)ストレプトアビジン−ビオチン増幅での間接検出−ビオチンコンジュゲート化ヤギ抗ウサギまたはウマ抗マウス(Vector Laboratories)、その後、ペルオキシダーゼコンジュゲート化ストレプトアビジン(Vectastatin ABCキット、Vector laboratories)、またはシアニン2/シアニン5コンジュゲート化ストレプトアビジン(Jackson ImmunoResearch)。
【0260】
ドーパミン作動性特定におけるCREB1発現に関するin vivo研究
[00303]脳切片を得るため、ペントバルビトンナトリウム(60mg/kg、i.p.、Apoteksbolaget、スウェーデン)によってラットを麻酔し、そして生理食塩水(50ml、0.9%w/v)で、その後、氷冷パラホルムアルデヒド(200ml、0.02M PBS中10%w/v)での経心的灌流を、急性および慢性PDラットにおいて、それぞれ、18週および12週で行った。示すように、脳切片を、免疫細胞化学、免疫組織化学、および免疫蛍光組織分析に供した。
【0261】
[00304]病変線条体で、hTS細胞由来トロホブラストNSC(tNSC)の頭蓋内移植を受けた6−OHDA誘導性PDラットを調べて、CREB1発現を調べた。移植12週後の脳切片の検査によって、黒質緻密部において、CREB1およびチロシンヒドロキシラーゼ(TH)の同時発現が、療法側において、新規ドーパミン作動性(DA)ニューロン中で観察され、これは、免疫蛍光組織分析によって、正常側におけるものと適合した(図30e、挿入図)。THおよびCREB1活性はどちらも、正常のもの(図30f)に比較して、再生DAニューロンでより高かった。明らかなCREB1発現が、DAニューロンの核中で観察された。これらの知見は、CREB1不全マウスがどのように神経変性に感受性であるかの説明を補助しうる。
【0262】
ドーパミン作動性黒質線条体経路の再生に関するin vivo研究
[00305]細胞療法後のドーパミン作動性黒質線条体経路の再生をさらに検証するため、免疫蛍光組織分析を行った(TissueGnostics Gmbh、オーストリア・ウィーン)。14匹の急性PDラット(すなわち傷害の1週後2匹および6週後2匹および2匹の対照、細胞移植12週後6匹および2匹の対照)および4匹の慢性PDラット(すなわち細胞療法の12週後2匹および2匹の対照)を含めて、脳切片を調べた。SNCにおいて、6−OHDAは、進行性の神経変性を引き起こし、傷害6週後に多様なサイズの腔を生じる(図31)。興味深いことに、tNSC療法後、多くのDAニューロンが、腔内へのTH陽性神経末端突起を伴って、腔の壁に見られた(図31、挿入図)。定量的分析によって、損なわれていない側に比較して、SNCにおいて、DAニューロンの数が、傷害1および6週後に、それぞれ、見かけ上48%および13%減少した(図32aおよび33)。顕著なことに、DAニューロンの喪失は、tNSC療法後、最大67%減少する可能性もあった。
【0263】
[00306]一方、線条体において、DAニューロンは、傷害の1週および6週後、それぞれ78%および4%減少した(図32a)。同様に、失われたDAニューロンは、tNSC療法後、最大73%再生可能であった。観察(図6)と一致して、DAニューロン回路は、免疫組織化学的に、損なわれていない側と同様に、SNCの療法側でよく確立された(図32b)。DAニューロンの回収速度は、免疫蛍光分析における67%(図23a)と一致して、SNCにおいて、78.4±8.3%(平均±SEM;n=4)を占めた(図32c)。
【0264】
[00307]グリア細胞は、ニューロン遊走を目的地にガイドする仲介因子として、または神経再生の供給源として、役割を果たすため、6−OHDAは、DAニューロンおよびGFAP(+)細胞両方の変性を引き起こすだけでなく、線条体における線条体−淡蒼球−黒質軸索(ウィルソン鉛筆)の攪乱も引き起こした。これらの現象は、明らかに、tNSC療法後に改善され、多くのGFAP(+)細胞が細かい有髄線維中に包埋されていることが示された(図32d)。注目されるように、GFAP(+)細胞は、病変線条体において、傷害6週後の65.5%から、tNSC療法後には93.9%まで再生した(図32e)。この事実は、アストロサイト活性化を反映する可能性もあり、移植されたtNSCサブタイプ、すなわちGRPおよびアストロサイトに起因しうる。これらの結果は、tNSCの移植が、慢性PDラットにおいてドーパミン作動性黒質線条体経路を再生し、それによって、行動欠陥の改善を説明することを示す。DAニューロンの再生の最適化は、病変経路において、tNSCの保持に基づき、少なくとも移植後18週、続くであろう(図5)。
【0265】
[00308]in vivoで、hTS細胞をオス重症複合免疫不全(SCID)マウスに、6〜8週間、筋内移植した。組織学的に、奇形腫はまったく見られなかった;が、粘液様の異様な細胞を伴う小規模なキメラ反応が観察された(図7H)。これらの結果によって、奇形腫形成に関して、hES細胞に比較して、移植(translational)医薬におけるhTS細胞およびtNSCの利点が明らかになる。
【0266】
統計
[00309]すべてのデータを平均±SEMとして表す。分散の反復測定分析(ANOVA)検定を用いることによって、相違を評価し(SPSSリリース12.0ソフトウェア)、そしてアポモルフィン誘導性回転分析のため、2群間の反復測定ANOVA検定後、最小有意差検定(LSD)事後比較を適用した。適切な場合、スチューデントt検定、ペアードt検定を用いた。p値<0.05を有意と見なした。
【0267】
[00310]動物実験によって、病変線条体内に注射したtNSCは、移植18週後、GFPタグ化免疫蛍光研究によって明らかになる黒質線条体経路を通じて、黒質核下(subnigral nucleus)の上流に遊走可能である。第二に、行動欠陥を改善する有効性は、予期されるより高く、例えば、移植12週後にドーパミン作動性ニューロンの回復は28.2%である。第三に、免疫抑制または腫瘍形成はいずれも観察されなかった。さらに、28.2%のドーパミン作動性ニューロンおよび行動欠陥の改善は、慢性PDラットにおいて、6−OHDA誘導後1年を超えて維持される。これらの結果は、tNSC移植が、ドーパミン作動性黒質線条体経路を再生し、そして急性PDラットにおいて、行動欠陥を機能的に改善することが可能であることを示した。
【0268】
慢性PD動物モデル
[00311]PD患者の病理学的に進行性の性質をより緊密に模倣するため、1年を超える(平均12.3ヶ月)繁殖法によって、慢性PDラットモデルを開発した。アポモルフィン誘導性回転試験を毎月行って、実験を通じて、ラットのPD状態を確認した。群I(n=6)には、tNSCを投与し、一方、群IIは対照であった(n=6)。3週ごとに、アポモルフィン誘導性回転試験、無動症のためのバー試験、硬直のためのステッピング試験、ならびに姿勢不均衡および歩行障害のための足跡分析を含む、行動評価を実行した。
【0269】
[00312]群Iにおいて、急性PDラットにおける先の研究と同様に移植3週〜12週で、アポモルフィン誘導性対側性回転の有意な改善が達成された(図6A)。バー試験によって、3週で、罹患前肢の把握時間は有意に短くなり、そして12週で改善し続けることが示された(図6B)。ステップ長(図6C)、ストライド長(図6D)、歩行速度(図6E)、および支持基底面(図6F)によるすべての評価によって、移植の3週から12週後に有意な改善が明らかになった。これらの結果によって、tNSCの移植は、ドーパミン作動性黒質線条体経路を再生し、そして慢性PDラットにおいて行動欠陥を機能的に改善することが可能であることが示された。
【0270】
実施例32:押すおよび引く機構
[00313]Gタンパク質共役型受容体(GPCR)は、内部および外部環境の間を連絡し、そして細胞膜でヘテロ三量体Gタンパク質と共役する。しかし、活性化されたGPCRがどのようにこのプロセスを開始するかを説明する機構はより明らかでない。最近の報告によって、リガンドの導入に際して、Gα13およびGαq/11サブユニットの両方が、AhR相互作用タンパク質と相互作用し、ここでGα13が細胞質ゾルAhRの脱安定化、転位置およびユビキチン化を導くことが示されてきている。非ゲノムAhR経路におけるGタンパク質シグナル伝達の役割を調べた。BBPは、外因性リガンドとして選択され、そしてCOX−2は活性化ターゲットとして選択されており、これはCOX−2が、肝癌細胞を含む多様なヒト細胞において、炎症、代謝および発癌を引き起こすためである。
【0271】
[00314]免疫蛍光研究は、細胞における分子変化のスナップショットを捕捉する能力を通じて、シグナル伝達の動的研究に重要であると見なされている。LT1トランスフェクション試薬(Mirus Bio LLC、ウィスコンシン州)を用いることによって、ヒト肝臓Huh−7癌細胞をpGFP−C1−AhRでプレトランスフェクションして、そして全反射照明蛍光顕微鏡観察を用いて、形質膜直下の細胞質領域における分子事象を選択的に観察した。BBPを導入した際、GFPタグ化AhRの迅速だが一過性の補充および転位置が細胞内膜領域で生じ、迅速な上昇および115秒でのピーク、その後、数分間に渡って生じるAhRの漸次減少が示された(図14a)。細胞内膜でのmemAhRのこの迅速な動的移動は、緩やかにつながれたシグナル伝達の知見を連想させる。AhRは、生体内分解酵素の制御を通じて、適応型の機能を提供し、そして細胞内での局在を変化させ、それ自体の活性化を誘発することが見出されている。
【0272】
[00315]次に、BBPおよびAhRの間の関連を、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)によって調べた。BBPは、5分間で有意にmAhR発現を誘導し、15分でピークとなり、そして次第にわずかに高い恒常的安定状態に戻った(図14b)。興味深いことに、ウェスタンブロット分析は、AhR産生において、15分でBBP誘導性上昇を示し、30分でわずかに産生が減少し、そして1時間で再上昇することを示した(図14c)。これらの2つのアッセイで見られる時点でのAhR発現の異なるパターンは、細胞内mRNA活性化および恒常的合成間の相違によって説明可能であり、「mRNA輸送における細胞骨格」の概念を裏付ける。したがって、Huh−7細胞が、外因性刺激に反応して局所タンパク質翻訳に必要なmRNAの構造機構を含有し21、そしてこれがその後、memAhRを呼ぶ可能性が高い。より低いmRNAレベルはおそらく、細胞の示差安定性の維持における恒常的AhR活性に相当する。リガンド活性化に際して、ヘテロ三量体Gタンパク質は、Gβγ二量体およびGαサブユニットに解離する可能性もあり、これには、各々異なる機能を行う、G、G、Gq/11およびG12/13が含まれる。BBPは、Gαq/11およびGβ産生の両方を30分で誘導した(図14d)。Gαq/11の上昇は、memAhRおよびGαq/11の間の直接相互作用のためであった(図14e)。細胞においてsiRNAを用いたAhRのノックアウトによって、これらの結果をさらに確認した(図14f)。明らかに、これらのデータは、BBP刺激によって、GPCRが興奮し、そしてヘテロ三量体GαβγをGαおよびGβγサブユニットに解離し、Gαq/11がその上流アクチベーターmemAhRと相互作用することを可能にした。AhRはGα13およびGαq/11活性と関連づけられており、そして肝細胞腫細胞において、AhR活性は細胞運命プロセスを攪乱可能であるため、それによって、AhRの持続発現は、腫瘍細胞増殖を促進しうる。実験は、Gαq/11シグナル伝達に関与する分子事象に対して向けられた。
【0273】
[00316]1つの態様において、AhR活性調節は、細胞増殖を阻害するかまたは減少させることも可能である。別の態様において、AhR活性調節は、細胞を殺すことも可能である。1つの態様において、調節は、細胞におけるAhRタンパク質活性の下方制御を含む。別の態様において、調節は、細胞におけるAhRタンパク質活性の阻害を含む。別の態様において、調節は、細胞におけるGタンパク質とAhRタンパク質の会合の阻害を含む。別の態様において、調節は、細胞におけるAhR遺伝子発現の下方制御を含む。1つの態様において、細胞は腫瘍細胞である。1つの態様において、腫瘍は、肺、乳房、結腸、脳、骨、肝臓、前立腺、胃、食道、皮膚または白血病腫瘍細胞である。1つの態様において、腫瘍は固形腫瘍である。別の態様において、腫瘍は液性腫瘍である。1つの態様において、AhR活性はAhRアゴニストで調節される。別の態様において、AhR活性はAhRアンタゴニストで調節される。別の態様において、AhR活性は、抗エストロゲン活性を有する化合物で調節される。別の態様において、AhR活性は、抗アンドロゲン活性を有する化合物で調節される。1つの態様において、腫瘍細胞は哺乳動物にある。別の態様において、腫瘍細胞はヒトにある。別の態様において、ヒトにおいて腫瘍を治療するための方法は、腫瘍において、AhRタンパク質の活性を阻害するかまたは減少させる化合物をヒトに投与することによって提供される。別の態様において、ヒトにおいて腫瘍を治療するための方法は、腫瘍においてAhRタンパク質の遺伝子発現を阻害するかまたは減少させる化合物をヒトに投与することによって提供される。
【0274】
[00317]共焦点免疫蛍光画像化顕微鏡観察のため、細胞をBBPで各5分間および15分間処理し、その後、AhRおよびGαq/11の両方の免疫蛍光染色を行った。BBPの非存在下で、核におけるよりも細胞質において、AhRおよびGαq/11両方のより少ない発現が観察された(図15a)。BBPによって刺激された細胞において、5分で核および核周辺領域において、AhR発現の明らかな増加が見られ、その後、15分で、AhRの外へ向かう拡散が観察された(図15b、最初のカラム)。これらの結果によって、恒常的AhR活性および細胞質ゾル転位置が示される。Gαq/11の発現に関して、AhRのものと類似の方式で、5分で刺激されるようであった(図15b、二番目のカラム)。しかし、Gαq/11は、15分で細胞質ゾル区画から細胞膜に転位置し、発癌の観点に基づいて、細胞膜への正しい輸送を行うことが可能なGPCR−Gタンパク質複合体の成熟を支持するが、正確な機構は不明である。続いて、AhRのsiRNAノックアウトは、核AhRの発現を抑制したが、細胞質ゾルAhRを抑制せず、これはスクランブル化siRNAを用いたAhRのノックアウトによって確認された(図15c)。しかし、BBPを添加した際、AhR発現は、5分で、核および核周辺領域で増加し、15分で、細胞質ゾルにおいてホメオスタシス状態に到達した(図15d、最初のカラム)。特に、Gαq/11は、AhR siRNAによって抑制され(図15d、第二のカラム)、これはBBPを添加することによって、5分で部分的に回復し、そして15分で完全に回復して、細胞膜でのGαq/11の見かけの集積を示した(図15d、第二のカラム)。これらの結果によって、Gαq/11がmemAhRの下流エフェクターであることが示された。AhRおよびGαq/11両方の動的移動および恒常的活性によって、さらに、細胞における活性化、転位置および成熟を伴う補償効果が示唆された。
【0275】
[00318]空間時間動力学のため、二重免疫金透過型電子顕微鏡(IEM)を用いて、形質膜でのmemAhRの相互作用を示した。細胞をBBPで20分間処理し、そして金大粒子タグ化Gαq/11(サイズ20nm)および金小粒子タグ化AhR(サイズ6nm)の特異的一次抗体および二次抗体を用いた免疫細胞化学に供した。試料を直ちにLR White樹脂(Ted Pella、カリフォルニア州レディング)中に包埋し、そしてIEM用に調製した。リガンドの非存在下で、これらの別個の免疫金タグ化Gαq/11実体は、単一、二重および三重クラスターを含めて細胞膜でディスプレイされ(図16a)、GPCR−Gタンパク質複合体の異なる実体の存在が反映された。細胞をBBPで処理すると、大きい金タグ化Gαq/11に接着した多数の小さい金タグ化AhRが、細胞膜でAhR−Gαq/11複合体を形成することが観察された(図16b)。古典的単量体および最近認められた二量体に加えて、ポリマー性GPCR−Gαq/11の存在が細胞膜で観察された。これによって、単量体、二量体およびポリマーを含むGPCRの多様なコンホメーション変化が示唆される(図16c)。AhR−Gαq/11複合体は、主に、形質膜で見られた。細胞質ゾルにはいくつか見られたが、核区画では見られず、核区画では、豊富なAhRおよびGαq/11が独立に存在した。こうしたAhR−Gαq/11相互作用は、対照細胞ではまったく見られなかった。データによって、memAhRおよびGPCR−Gαq/11複合体のクラスターは、リガンド活性化の前にはあらかじめカップリングされないことが明らかになった。GPCRの重合(ホモまたはヘテロマルチマーいずれか)は、相互作用する分子の機能、細胞内局在、および生物物理特性を調節するのに有効な様式であるため、意味がある。これはおそらく、アゴニストおよびアンタゴニストなどの外因性リガンド、または細胞表面での相乗結合のスクリーニングのための、より空間的なドッキング部位の生成を可能にする。あるいは、これは、生物学的影響の最も不可解な側面の1つ;具体的には、環境中の多環芳香族炭化水素化合物が、細胞における、毒性、代謝性および発癌性反応とどのように関連するかに関する手掛かりを提供する。
【0276】
[00319]Gタンパク質シグナル伝達の生化学的プロセスを研究するため、先に記載されるように、BBPによって活性化された際、memAhRはGαq/11と相互作用可能であることを検証した。続いて、ホスファチジルイノシトール(PIP2)レベルの減少を観察し、PIP2の2つの二次メッセンジャー:ジアシルグリセロール(DAG)およびIP3への切断が生じるのを観察した(図17a、第一のパネル)。IP3は、小胞体で、受容体IP3Rを通じて、細胞内カルシウムの放出を誘導することが知られる(図17a、第二のパネル)。Gタンパク質活性化には、しばしば、カルシウムイオンの流入が付随するため、リアルタイム生存細胞免疫蛍光画像化顕微鏡観察によって、BBP誘発細胞内fluo−4タグ化Ca2+レベルの起源を調べた(図17b、中央上部)。細胞をカルシウム不含培地中で培養し、そして細胞内カルシウムの放出を見出し(図17b、中央下部)、これは、内部カルシウム貯蔵からの放出を示した。この結果はさらに、IP3Rブロッカー2−APBを添加することによって確認され、該ブロッカーは、細胞内カルシウムレベルを用量依存的に阻害することが見出された(図17b、右カラム)。しかし、異常なカルシウム放出は、炎症反応および腫瘍発生を誘導しうる。したがって、BBPは、15分でCOX−2の産生を誘導することが観察され、これは2−APBを添加することによってブロック可能であり(図17c)、細胞内カルシウムの増加とCOX−2の活性化が関連づけられた。さらに、BBPは、細胞外シグナルに制御されるプロテインキナーゼERKのリン酸化およびCOX−2の活性化を誘導し(図17d)、これは、MAPK経路の強力でそして選択的非競合阻害剤である化学薬品PD98059によってブロックされ(図17e)、ERKがCOX−2の上流活性化因子であることが示された。この目的を達成するため、BBPは、分子プロセスにおいて、memAhRが活性化するGαq/11シグナル伝達を通じてCOX−2の活性化を誘導することが示された。BBPが、AhR核転位置因子タンパク質をコードする遺伝子であるARNT発現を有意に阻害するため、これは、非ゲノムAhR経路の存在を示す(図17f)。この阻害性効果は、先に記載されるように、同時活性化されたGα13の作用として解釈可能である。
【0277】
[00320]AhRは、外部シグナルに反応したシグナル伝達分子である可能性があり、GPCR−Gタンパク質シグナル伝達の興奮を生じることが立証される。ヒト肝臓Huh−7癌細胞において、シグナルが、近くにある(活性化因子としての)細胞質ゾルmemAhRを細胞膜に「引き」、解離した(エフェクターとしての)Gαq/11に結合し、そしてこれを活性化して、そして機能のため、下流分子カスケードを「押す」と提唱される。この「引くおよび押す」モデルは、図17gに例示するように、GPCR−Gタンパク質シグナル伝達の制御が、どのように開始され、そしてAhR仲介シグナル伝達が古典的AhR経路を越えてどのように調節されているかを理解するために非常に寄与している。この発見はさらに、GPCRおよびGタンパク質の機械的制御に重点を置いた療法剤の開発にも影響を及ぼしうる。
【0278】
[00321]細胞培養および化学薬品。Huh−7細胞を台湾国家衛生研究院から得て、そして10%ウシ胎児血清(Gibco)、1%ペニシリン(100U/mL)、ストレプトマイシン(10μg)、アンホテリシン−B(0.25mg)を補充したDMEM(Gibco)中で培養し、そして37℃、5%CO中で増殖させた。培地には、CaCl(2mM)、D−グルコース(5.5mM)、NaCl(130mM)、KCl(5.4mM)、HEPES(20mM、pH7.4)およびMgSO(1mM)を含有するBSSが含まれた。カルシウム不含培地は、D−グルコース(5.5mM)、NaCl(130mM)、KCl(5.4mM)、HEPES(20mM、pH7.4)およびMgSO(3mM)を含有した。化学薬品には、Fluo−4(Invitrogen)、フタル酸ベンジルブチル(BBP、Sigma)、2−アミノエトキシジフェニルボレート(2−APB、Sigma)、ERK1/2阻害剤: PD98059(Calbiochem)、6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI、Sigma)が含まれた。抗体には、AhR(Santa Cruz)、Cox−2(Minipore)、Gαq/11(sc−392)およびGβ(sc−378、Santa Cruz)、β−アクチン(Sigma)、p44/42 MAPK(Erk1/2)(Cell Signaling)、ホスホ−p44/42 MAPK(Cell Signaling)、西洋ワサビ(horseradish)ペルオキシダーゼ(HRP)標識抗マウスおよび抗ウサギ二次抗体(Santa Cruz)、色素Light 488コンジュゲート化二次抗体(緑色)および色素Light 549コンジュゲート化二次抗体(赤色)(Rockland)が含まれた。
【0279】
[00322]初期卵管子宮外妊娠の女性において着床前の胚から得られたhTS細胞が、先に記載された。接着性hTS細胞を、10μg/ml bFGF(JRH、Biosciences、カリフォルニア州サンノゼ)、10%FBS、および1%ペニシリン−ストレプトマイシンを含有する馴化α−MEM中、37℃5%CO中で培養した。細胞を実験に応じて多様な時間間隔でRA(10μM)によって処理した。
【0280】
[00323]RNA単離およびRT−PCR。Huh−7細胞(3x10)を6ウェルディッシュ内に植え付け、そして24時間インキュベーションした。血清不含培地中で一晩培養した細胞をBBP(1μM)で多様な時間間隔で処理した。BBP刺激後、細胞をPBSで2回洗浄した。TRIzol法(Invitrogen)によって総RNAを抽出した。RNA(2μg)を用いて、逆転写系(Promega)によって、cDNAを合成した。特異的プライマーによって、cDNAを増幅した。プライマー対は、以下のように設計された:AhR、順方向5’−TAC TCT GCC GCC CAA ACT GG−3’、逆方向5’−GCT CTG CAA CCT CCG ATT CC−3’; β−アクチン、順方向5’−CTC GCT GTC CAC CTT CCA−3’、逆方向5’−GCT GTC ACC TTC ACC GTTC−3’。PCR条件を、95℃5分間および95℃30秒間、54℃30秒間、72℃1分間、その後、72℃10分間(36周期)に設定した。産物を2%アガロースゲルによって分離し、そしてエチジウムブロミドによって視覚化した。
【0281】
[00324]ウェスタンブロッティング分析。Huh−7細胞(1x10)を10cmディッシュに植え付け、そして一晩培養した。培地を血清不含培地に交換してもう一晩培養した。細胞を多様な時間間隔でBBP(1μΜ)で処理した。他の研究のため、細胞を化学薬品PD98059(20μΜ)または2−APB(30μΜ)で1時間、前処理し、その後、BBPで処理した。次いで、細胞を氷冷PBSで2回洗浄し、そしてRIPA溶解緩衝液(Minipore)で溶解した。BCAタンパク質アッセイキット(Thermo)でタンパク質濃度を測定した。等量のタンパク質(30μgタンパク質)を8% SDS−PAGEによって分離し、PVDF膜上にトランスファーし、そして5%脱脂粉乳で室温で1時間ブロッキングした。ブロッキング後、AhR(1:1000)、Cox−2(1:1000)、Gαq/11(1:100)、Gβ(1:100)、β−アクチン(1:5000)、p44/42 MAPキナーゼ(1:1000)またはホスホ−p44/42 MAPキナーゼ(1:1000)を含む一次抗体と膜を4℃で一晩インキュベーションした。細胞をPBSTで3回洗浄し、そして次いでHRPコンジュゲート化二次抗体と室温で1時間インキュベーションした。洗浄後、増進化学発光キット(ECL)(Amersham)を用いて、ブロットを視覚化した。
【0282】
[00325]ChIP。ChIPキット(Upstate Biotechnology、ニューヨーク州レークプラシッド)を用いることによって、細胞を一晩、血清枯渇させ、そしてRA(10μΜ)で4時間処理した。アッセイのため、簡潔には、溶解物を氷上で超音波処理し、DNAを剪断した。架橋クロマチンをプロテインGアガロースに加えて抗RNAポリメラーゼII(陽性対照)、または正常マウスIgG(陰性対照)または示す一次抗体とインキュベーションした。5M NaCl、RNアーゼA、EDTA、Tris、およびプロテイナーゼKで連続処理した後、スピンフィルターによってDNA混合物を得て、そしてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に供した。
【0283】
[00326]免疫沈降。Huh−7細胞を一晩、血清枯渇させ、そしてBBP(1μΜ)で30分間処理した。プロテインG−アガロース(Minipore)で30分間プレクリーニングした後、特異的抗体Gαq/11またはウサギIgGを培養に添加し、これを再び一晩インキュベーションした。プロテインG−アガロースと2時間インキュベーションした後、ビーズをRIPA溶解緩衝液で3回洗浄し、試料緩衝液中で煮沸し、8% SDS−PAGEによって分離し、そしてAhRイムノブロッティング分析に供した。
【0284】
[00327]細胞を一晩、血清枯渇させ、そしてRA(10μM)で4時間処理した。細胞をRIPA溶解緩衝液(Millipore)によって溶解した。溶解物およびプロテインAまたはプロテインGアガロース(Minipore)の混合物を揺動しながら4℃で2時間インキュベーションした。特異的一次抗体またはウサギIgG(対照)を添加し、そして一晩インキュベーションした。次いで、プロテインAまたはプロテインGいずれかを含むビーズ上に免疫タンパク質複合体を捕捉した。抗体−結合タンパク質を一晩揺動することによって沈降させた。免疫沈降タンパク質をRIPA溶解緩衝液で洗浄した後、SDS−PAGEおよび相互作用を測定する別の特異的抗体でイムノブロッティングして分析した。
【0285】
[00328]免疫蛍光。免疫細胞化学のため、細胞をPBS中の4%パラホルムアルデヒドで固定した後、PBS中の2%FBS/0.4%TritonX−100で透過処理した(15分)。5%FBSブロッキング溶液(2時間)、そして3回リンスし、細胞をPBS中の特異的一次抗体と4℃で一晩インキュベーションした。適切なFITCまたはPEまたはテキサスレッド・コンジュゲート化二次抗体を1時間添加し、その後、核のためDAPI染色(5分間)を行って、そして顕微鏡観察に供した。
【0286】
[00329]全反射照明蛍光(TIRF)顕微鏡観察。LT1トランスフェクション試薬(Mirus Bio LLC、ウィスコンシン州マディソン)を24時間用いることによって、pGFP−C1−AhR(H.Liより寄贈)でHuh−7細胞をプレトランスフェクションした。TIRF顕微鏡観察のため、細胞を血清不含培地中、カバースリップ上で一晩培養し、その後、BBP(1μM、Sigma)によって刺激した。Axio Vision Rel. 4.8ソフトウェアを伴うZeiss TIRF顕微鏡を用いることによって、細胞膜でGFPタグ化AhRの動的活性を観察し、そして分析した。
【0287】
[00330]リアルタイム生存細胞画像化顕微鏡観察。細胞を、BSS緩衝液中でCa2+特異的色素であるFluo−4(1μM)で、37℃で20分間、前処理した後、BBP(1μM)で処理した。リアルタイム細胞画像化顕微鏡観察によって相対細胞内カルシウム強度の測定を行い、そしてCell−Rソフトウェア系(Olympus)によって分析した。カルシウム不含培地または多様な濃度で用いるIP3R阻害剤2−APBを用いて、細胞培養中の細胞内カルシウム反応を試験した。
【0288】
[00331]共焦点免疫蛍光画像化顕微鏡観察。AhR siRNAによるトランスフェクションを伴うまたは伴わない細胞をBBP(1μM)で各々、5分間および15分間処理した。AhRおよびGαq/11に関する一次抗体および二次抗体で処理した後、細胞を共焦点免疫蛍光顕微鏡観察に供して、細胞区画における動的運動を分析した。
【0289】
[00332]二重免疫金透過型電子顕微鏡観察。マイクロ波固定およびプロセシングによって得たプラスチック包埋細胞の超薄切片24を5%メタ過ヨウ素酸ナトリウムで前処理した(10分間)。グリッドを、AhRまたはGαq/11に対するIgG抗体(C−19、sc−392、Santa Cruz)のアリコットとインキュベーションし、その後、それぞれ、二次抗マウスIgG金粒子(サイズ6nm)または抗ウサギIgG金粒子(サイズ20nm)でプロービングした。洗浄後、1%オボアルブミンを含むPBSの滴上にグリッドを置く(15分間)ことによって、切片をブロッキングした。次いで、切片を酢酸ウラニルおよびクエン酸鉛で染色し、そして透過型電子顕微鏡(Hitachi H−700モデル、日本)上で性質決定した。
【0290】
[00333]本明細書に言及するすべての刊行物、特許、および特許出願は、各個々の刊行物、特許、または特許出願が具体的に、そして個々に、援用すると示されているのと同じ度合いまで、本明細書に援用される。Olanow, C. W. The scientific basis for the current treatment of Parkinson’s disease. An. Rev. Med. 55, 41−60(2004)。
【0291】
【化2-1】
【0292】
【化2-2】
【0293】
【化2-3】
【0294】
【化2-4】
【0295】
【化2-5】
【0296】
[00383]いくつかの態様を本明細書に示し、そして記載してきているが、当業者には、こうした態様が例としてのみ提供されることが明らかであろう。本発明から逸脱することなく、多くの変動、変化、および置換が当業者には思い浮かぶであろう。本明細書記載の発明の態様に対する多様な代替物を、本発明を実施する際に使用可能であることを理解すべきである。以下の請求項が本発明の範囲を定義し、そしてこれらの請求項およびその同等物の範囲内の方法および構造が本明細書に含まれると意図される。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図2-1】
図2-2】
図3-1】
図3-2】
図4
図5
図6-1】
図6-2】
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14-1】
図14-2】
図15
図16
図17-1】
図17-2】
図17-3】
図18
図19
図20-1】
図20-2】
図21-1】
図21-2】
図21-3】
図22-1】
図22-2】
図23
図24-1】
図24-2】
図25
図26-1】
図26-2】
図27
図28-1】
図28-2】
図29
図30
図31
図32-1】
図32-2】
図33