【実施例】
【0193】
材料
[00229]抗体。イムノブロットおよび免疫細胞化学用:一次抗体:SSEA−1、−2、−3、CD90およびネスチン(Chemicon)。神経フィラメントおよびGFAP(BioGenex)。Nanog、Oct4、Cdx2およびSox2(BD Biosciences、米国カリフォルニア州サンノゼ)。G
αq/11(C−19、sc−392)、Gβ(T−20、sc−378)、RXRα、RARβ、c−Src、pStat3、Stat3、PP1類似体およびβ−アクチン(Santa Cruz Biotechnology、米国カリフォルニア州サンタクルーズ)、TH(Sigma−Aldrich ミズーリ州セントルイスおよびカリフォルニア州テムコウラ)ならびにセロトニン(Sigma−Aldrich ミズーリ州セントルイス)。
【0194】
[00230]二次抗体
[00231]siRNA: Nanog siRNAおよびCdx2 siRNA(Sigma−Aldrich ミズーリ州セントルイス)。
【0195】
[00232]フローサイトメトリー一次抗体のため: HLA−ABC、CD9、CD14、CD34、CD45、CD73、CD90、CK7、ビメンチン、6−インテグリン、E−カドヘリン、L−セレクチン、Nanog、Oct4、Cdx2およびSox2をBD Biosciences、米国カリフォルニア州サンノゼより購入し; HLA−DR、CD33、CD44およびCD105をeBioscience、米国カリフォルニア州サンディエゴより購入し; CD133をMiltenyi Biotec、ドイツより購入した。
【0196】
[00233]TH−2およびセロトニン免疫染色のため、細胞を0.1M PBS中、4℃で一晩インキュベーションした後、PBSで洗浄した。ブロッキング溶液(50ml 0.1M PBS、0.05gアジ化ナトリウム、1%ウマ血清および10%TritonX−100)で室温で1時間インキュベーションした後、細胞を再び洗浄した。細胞を一次抗体、すなわちTH−2(1:200、Sigma−Aldrich、ミズーリ州セントルイス)およびセロトニン(1:100、Sigma−Aldrich、ミズーリ州セントルイス)で2時間インキュベーションし、そしてPBSで洗浄した。抗マウスIgGとFITCまたはPE(Sigma−Aldrich、ミズーリ州セントルイス)と1時間インキュベーションすることによって、細胞をPBSで完全に洗浄し、そして免疫蛍光アッセイに供した。
【0197】
実施例1:単離、分化および細胞培養
[00234]ヒト被験体研究および道徳委員会の施設審査委員会によって認可された腹腔鏡下手術を通じて、女性において、初期子宮外妊娠(妊娠年齢:6〜8週)の卵管から胚性絨毛膜絨毛(embryonic chorionic villious)を得た。血清不含α−MEM(Sigma−Aldrich、ミズーリ州セントルイス)中で組織を切り刻み、そして0.025%トリプシン/EDTA(Sigma−Aldrich、ミズーリ州セントルイス)で15分間トリプシン処理して、そしてこの消化を10%FBSを含有するα−MEMを添加することによって停止させた。この処置を数回反復した。遠心分離後、細胞を収集し、そして20%FBS(JRH、Biosciences、カリフォルニア州サンノゼ)および1%ペニシリン−ストレプトマイシンを含有するα−MEMで、5%CO
2中、37℃で培養した。培地中のhCG発現は、商業的キット(Dako、カリフォルニア州カーピンテリア)によって測定すると、培養2継代後に検出不能となった。
【0198】
[00235]細胞分化。hTS細胞を、20%FBS、1%ペニシリン−ストレプトマイシン、および10μg/ml bFGF(CytoLab Ltd、イスラエル・レホボト)を含有する馴化α−MEM中、37℃5%CO
2中で培養した。培地を3日ごとに交換した。5回継代した後、公表されたプロトコルを修飾して用いることによって、多様な特殊化表現型への分化を開始した。Transwellプレート(Corning、ニューヨーク州ニューヨーク)中での細胞培養のため、上部チャンバーを、4:1の比で、PureCol(Inamed Biomaterials、カリフォルニア州フレモント)および馴化L−DMEM(Gibco、ニューヨーク州グランドアイランド)を含有する500μlのコラーゲンゲルでコーティングした。細胞(4x10
5)を馴化L−DMEM(1ml)中で培養した。下部チャンバーは、馴化H−DMEM(3ml)を含有した。予備実験によって、どちらのチャンバー中のグルコースレベルも、4時間で平衡状態に到達可能であることが示された。
【0199】
[00236]サブ表現型の細胞分化。20%FBS、1%ペニシリン−ストレプトマイシン、および10μg/ml bFGF(CytoLab Ltd、イスラエル・レホボト)を含有する馴化α−MEM中、37℃5%CO
2中で細胞を培養した。一般的に、培地を3日ごとに交換した。培養を5回継代した後、
図12中の表に示すように、多様な戦略によって、多様な特定の細胞表現型への細胞分化を実行した。骨形成性分化のため、アリザリンレッドSアッセイ(Sigma−Aldrich、ミズーリ州セントルイス)を用いて、細胞化学ミネラルマトリックスを分析して、カルシウムミネラル含量を検出した。カルシウム沈着を同定するため、細胞を固定し、そして2%硝酸銀溶液(w/v)で暗所で10分間インキュベーションし、その後、脱イオン水で洗浄して、そして明色光下に15分間曝露した。商業的キット(Sigma−Aldrich、ミズーリ州セントルイス)を用いて、細胞をフォン・コッサ染色で処理して、アルカリホスファターゼ活性を検出した。酸性pHレベルで、アルシアンブルー染色(Sigma−Aldrich、ミズーリ州セントルイス)を用いて、軟骨形成分化を確認した。筋性分化のため、細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の3%過酸化水素と10分間インキュベーションして、内因性ペルオキシダーゼ酵素活性を停止した。10%ヒト血清および0.1%TritonX−100を含有するPBSで60分間処理することによって非特異的部位をブロッキングして、そしてブロッキング緩衝液によって5分間洗浄した。骨格筋ミオシン重鎖特異的モノクローナル抗体(Vector Laboratories、カリフォルニア州バーリンゲーム)を含有するブロッキング緩衝液中で細胞を1時間インキュベーションし、そしてVectaStain ABCキット(Vector Laboratories)を用いて染色した。脂肪生成分化のため、馴化培地によって細胞を誘導し、そして1%カルシウムを含有する4%パラホルムアルデヒド中、60分間固定し、そして70%エタノールで洗浄した。2%オイルレッドO試薬(Sigma−Aldrich、ミズーリ州セントルイス)に5分間曝露した後、70%エタノールによって過剰な染色を除去し、その後、水でリンスした。オイルレッドO染色を細胞内脂質集積の指標として適用した。エタノール中の10μMオールトランスレチノイン酸(Sigma−Aldrich、ミズーリ州セントルイス)によって、神経幹細胞を誘導した。
【0200】
実施例2:プラスミドトランスフェクション
[00237]プラスミドトランスフェクションのため、hTS細胞をオールトランスレチノイン酸(10μM)(Sigma−Aldrich、ミズーリ州セントルイス)で一晩誘導し、その後、先に記載されるように(Myers)、F1B−GFPのDNA混合物中で同時トランスフェクションした。簡潔には、DOTAP(30μl)リポソームトランスフェクション試薬(Roche Applied Science、インディアナ州インディアナポリス)を含有するDOTAP(100μl)溶液、およびNaCl(80ml H
2O中の867g)に加えて2ml HEPES溶液(1M、pH7.4、Gibco)を含有する70μl HBSS緩衝液内に、DNA混合物をゆっくりと添加した。PBSで洗浄した後、細胞をDNA混合物とよく混合した。一晩インキュベーションした後、2〜3週間の培養を通じて、コロニーが形成されるまで、G418選択(400μg/ml、Roche Applied Science)することによって、安定細胞株を得た。G418耐性細胞をプールし、そして溶解し、そしてモノクローナル抗GFP抗体(Stratagene、カリフォルニア州ラホヤ)を用いてウェスタンブロッティングによって分析して、GFPを発現するトランスフェクタントの割合を定量化した。継代培養によって、トランスフェクションされたhTS細胞をメタノールで固定し(10分間)、免疫蛍光によってGFPの発現を検出した。トランスフェクション率は、95%を超える有効性を生じた。
【0201】
実施例3:RT−PCRおよび定量的PCR(qPCR)
[00238]RT−PCRのため、TRIZOL試薬(Invitrogen)を用いることによって、10
5〜10
6細胞から総RNAを抽出し、そしてReady−To−Go RT−PCRビーズキット(Amersham Biosciences、英国バッキンガムシャー)を用いることによって、mRNA発現を調べた。簡潔には、反応産物を1.5%アガロースゲル上で分離し、そしてエチジウムブロミドで視覚化した。β−アクチンまたはβ−2ミクログロブリンを陽性対照として用いた。すべての実験を3つ組で行った。qPCRのため、iQ5リアルタイムPCR検出系(Bio−Rad Laboratories)で遺伝子発現を測定し、そしてBio−Rad iQ5光学系ソフトウェア、バージョン2.0(Bio−Rad Laboratories)で分析した。比較Ct法(Bio−Rad、指示マニュアル)を用いて相対的mRNAレベルを計算し、そして生物学的対照に対する比として示した。1周期内の産物の量がほぼ倍になり、そして予測されるサイズの単一の産物が生じるように、すべてのプライマー対を確認した。
【0202】
実施例4:ウェスタンブロット
[00239]血清不含培地を含む10cmディッシュ内に細胞を一晩植え付け、そして示すように、多様な時間間隔で、RA(10μM)を含みまたは含まずに処理した。刺激後、細胞を氷冷PBSで2回洗浄し、そしてRIPA溶解緩衝液(Minipore)によって溶解した。BCAタンパク質アッセイキット(Thermo)によってタンパク質濃度を決定した。等量のタンパク質(30μg)を8%SDS−PAGEに溶解し、PVDF膜上にトランスファーし、そして室温で1時間、5%脱脂粉乳でブロッキングした。ブロッキング後、膜を一次抗体と4℃で4時間インキュベーションした。細胞をPBSTで3回洗浄し、そして次いで、HRPコンジュゲート化二次抗体と室温で1時間インキュベーションした。細胞をPBSTで3回洗浄し、そして次いで、HRPコンジュゲート化二次抗体と室温で1時間インキュベーションした。PBST緩衝液で6回洗浄した後、膜を化学発光基質(GE Healthcare)と1分間インキュべーションした。化学発光キット(ECL)(Amersham)を用いて、特異的バンドを視覚化した。
【0203】
実施例5:サザンブロット
[00240]先に記載される(Tsai)ようなサザンイムノブロット分析によって、第三および第七継代でhTS細胞のテロメア長を測定した。簡潔には、断片をHybondN+ナイロン膜(Amersham Bioscience)にトランスファーし、そしてReady−To−Go標識ビーズ(Amersham Bioscience)を用い、α−
32P−dCTPで標識したTTAGGG反復のプローブに65℃でハイブリダイズさせた。テロメア反復配列に相補的な標識オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションによって、末端制限断片を視覚化した。TRFのサイズ分布をDNA長さ標準と比較した。
【0204】
実施例6:末端制限断片(TRF)サザンブロット
[00241]細胞が癌性変化を開始した後、テロメアは非常に短くなるであろう。hTS細胞培養中、テロメア長を第三および第七継代で測定した。簡潔には、断片をHybond−N+ナイロン膜(Amersham Biosciences)にトランスファーして、そしてReady−To−Go DNA標識ビーズ(Amersham Biosciences)を用いることによって、α−[
32P]−dCTPで標識したTTAGGG反復のプローブに65℃でハイブリダイズさせた。テロメア反復配列に相補的な標識オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションによって末端制限断片を視覚化した。末端制限断片のサイズ分布をDNA長標準と比較した。電子顕微鏡観察のため、透過型電子顕微鏡(JEM−2000 EXII、JEOL、日本・東京)によってhTS細胞由来ブドウ様細胞塊を調べて、細胞の基盤を同定した。
【0205】
[00242]ウェル間光学変動の規準化のため、内部受動的参照色素としてフルオレセインを用いる、IQ5リアルタイムPCR検出系(Bio−Rad Laboratories)によって、Oct4、Sox2、NANOG、fgfr2、FGF4、BMP4、Cdx2、および内因性対照β−アクチン(ACTB)をhTSおよび500単位のLIF(Chemicon、カリフォルニア州テメキュラ)によって処理したhTS細胞で測定した。12.5μlの2xSYBRグリーンスーパーミックス(Bio−Rad)、0.5μlの各10μMプライマーおよび0.5μlのcDNA試料を含有し、そして滅菌水と混合された総体積25μl中で、PCR増幅を行った。反応を95℃3分間で開始した後、95℃30秒間の変性、60℃30秒間のアニーリング、72℃15秒間の伸長からなる60回の3工程増幅周期を行った。最終解離段階で、増幅産物特異性の検証のため、融解曲線を生じるために実行した。リアルタイムqPCRを監視し、そしてBio−Rad IQ5光学系ソフトウェアバージョン2.0(Bio−Rad)によって分析した。比較Ct法(Bio−Rad指示マニュアル)を用いて相対的mRNAレベルを計算し、そして生物学的対照に対する比で提示した。ACTB転写レベルを確認して、ウェルと総RNA量を相関させて、そしてしたがって、全体の規準化に用いた。用いたすべてのプライマー対を確認して、1つの周期内の産物の量をほぼ倍にし、そして予測されるサイズの単一の産物を得た。Oct4、Sox2、NANOG、fgfr2、FGF4、BMP4、Cdx2、および内因性対照β−アクチン(ACTB)のプライマー配列を補助データ表3に示す。
【0206】
【化1】
【0207】
表1.遺伝子発現に用いた、多様なPCRプライマー
【0208】
【表1-1】
【0209】
【表1-2】
【0210】
【表1-3】
【0211】
実施例7:免疫細胞化学
[00253]培養を4%パラホルムアルデヒドで、室温で30分間固定し、そして次いでPBSで3回洗浄した。製造者の推奨のように、免疫細胞化学染色のため、LSABキット(Dako、カリフォルニア州)を用いた。SSEA−1および−4染色のため、細胞をトリス−リン酸緩衝生理食塩水(TBS)でリンスし、そしてH
2O
2で10分間洗浄した。反応をヤギ血清(1:200、Dako)で30分間ブロッキングした後。次いで、細胞を一次抗体と一晩インキュベーションした。TBSで細胞を洗浄し、そしてストレプトアビジンで20分間処理した後、細胞をビオチンによって(20分間)染色し、再び洗浄し、そして四塩化3,3’ジアミノベンジジン(Boehringer−Mannheim、ドイツ・マンハイム)で10分間処理した。最後に、細胞をヘマトキシリン染色で対比染色した。SSEA−3染色のため、類似の方法にしたがったが、例外は、H
2O
2で洗浄する前に回収した抗原を添加したことであり、これはクエン酸緩衝液中、圧力鍋を15分間用いることで得られた。最後に、細胞をPBSで徹底的に洗浄し、そして免疫蛍光アッセイに供した。
【0212】
実施例8:免疫沈降(IP)
[00254]細胞を一晩血清枯渇させ、そしてRA(10μM)で30分間処理した。プロテインG−アガロース(Minipore)で30分間プレクリアした後、特異的抗体またはIgGを添加し、そして一晩インキュベーションした。プロテインG−アガロースと2時間インキュベーションし、ビーズをRIPA溶解緩衝液で3回洗浄し、緩衝液中で煮沸し、8%SDS−PAGEによって分離し、そして示すような多様なターゲットに関して免疫ブロット分析を行った。
【0213】
実施例9:フローサイトメトリー
[00255]細胞(5x10
6細胞/ml)を多様な一次抗体と30分間インキュベーションし、そして次いで、調整した希釈で、適切なフルオレセイン・イソチオシアネート(FITC)、フィコエリトリン(PE)、またはRhoコンジュゲート化二次抗体(Jackson ImmunoResearch、ペンシルバニア州ウェストグローブ)と4℃で1時間インキュベーションした。完全に洗浄した後、細胞をPBS(1ml)中に再懸濁し、そしてフローサイトメトリー(FACScan、BD Biosciences、カリフォルニア州サンノゼ)に供した。Cell−Questソフトウェア(BD Biosciences)でデータを分析した。
【0214】
実施例10:マイクロアレイ
[00256]hTS細胞を、RA(10μM)を伴いまたは伴わずに、各々、1日または5日間処理した。TRIsol試薬を用いて総RNAを抽出し、そして製造者のプロトコル(カリフォルニア州サンタクララ、http://www.affymetrix.com)にしたがい、AffymetrixヒトゲノムU133プラス2.0 GeneChipを用いて、国立台湾大学医学部、台湾・台北のゲノム医学センターで行って、Affymetrixマイクロアレイに供した。
【0215】
実施例11:二重免疫金電子透過型顕微鏡(IEM)
[00257]RA(10μM)の処理を行ったまたは行わなかった細胞を、先に記載されるように(Tsaiら)調べた。簡潔には、固定超薄切片を5%メタ過ヨウ素酸ナトリウムの水溶液で前処理し(10分間)、そして再蒸留水で洗浄した。グリッドを、RXRα(1:50)またはGα
q/11(C−19;sc−293;1:50)に対するIgG抗体のアリコットとインキュベーションし、そしてその後、二次抗マウス6nm金粒子(1:10;AB Chem、カナダ・ドーバル)または抗ウサギIgG 20nm金粒子(1:10;BB International、UK)でプロービングした。インキュベーション工程の間にグリッドをPBSで洗浄し、そして1%オボアルブミンを含むPBSの滴上にグリッドを置く(15分間)ことによって、切片をブロッキングした。IgG金の後、グリッドをPBSでジェット洗浄し、その後、蒸留水で洗浄した。すべての工程を室温で行った。次いで、切片を酢酸ウラニルおよびクエン酸鉛で染色し、そしてHitachi H−700モデル透過型電子顕微鏡(Hitachi Ltd、日本)上で性質決定した。
【0216】
実施例12:共焦点免疫蛍光顕微鏡
[00258]2%ゼラチンでコーティングしたカバースリップ上で細胞を培養し、そしてRA(10μM)を伴いまたは伴わずに、各5、15および30分間処理した。次いで、細胞をPBSで3回リンスし、PBS中の4%パラホルムアルデヒドで5分間固定し、そしてPBS中の0.4%TritonX−100を含有する2%FBSで15分間、透過処理した。この反応を5%FBS、4℃で一晩ブロッキングし、その後、PBS中の一次抗体RXRα(1:100)またはGαq/11(1:100)、4℃で一晩インキュベーションした。洗浄後、細胞を色素Light 488または色素Light 549コンジュゲート化二次抗体(1:50;Rockland Immunochemicals Inc.、ペンシルバニア州ギルバーツビル)で1時間インキュベーションした。DAPI(1:5,000)と5分間インキュベーションし、カバーガラスを風乾し、そして共焦点免疫蛍光顕微鏡観察(Olympus、東京)のために密封した。
【0217】
実施例13:hTS細胞と定義されるヒト栄養膜細胞層のユニークな集団の分析
[00259]異所性絨毛膜絨毛から得られる細胞を培養し;コロニーが最初に形成され、そして続いて接着性線維芽細胞様細胞に増殖した(
図1a)。免疫細胞化学的に、これらの細胞は、ステージ特異的胚性抗原(SSEA)−1、−3、および−4(
図1b)を発現した。異所性絨毛膜絨毛において、これらのSSEA陽性細胞は、栄養膜細胞層と組織学的に同じと提示された。しかし、胎盤絨毛という点では、これらは主に、絨毛核の区画に現れた。
【0218】
[00260]幹細胞の特性を評価するため、フローサイトメトリー分析によって、これらの細胞が高レベルの間葉系幹細胞マーカー:CD90、CD44、ビメンチン、および神経フィラメント、ならびにトロホブラストマーカー、サイトケラチン(CK)−7を発現することが明らかになった。これらは、造血幹細胞マーカー:CD34およびCD45、ならびに上皮細胞マーカー:E−カドヘリン、α6−インテグリン、およびL−セレクチンを発現しなかった。これらはまた、弱くネスチンおよびCD9を発現した(
図1c)。これらの事実によって、これらの栄養膜細胞層は、成熟胎盤組織から単離されるトロホブラスト様下位集団とは別個であることが示された(Aboagye−Mathiesenら, 1996; Baczykら, 2006)。さらに、他の裏付けとなる証拠には:1)これらの細胞をオールトランスレチノイン酸(RA)で処理すると、先に記載されたもの(Yanら、2001)と類似の巨細胞の形成が生じ(
図1d);2)一連の染色体分析によって、核型が不変であることが示され(補助
図1aを参照されたい);3)テロメア長の続く測定によって、染色体安定性が確認され(補助
図1bを参照されたい);そして4)重症複合免疫不全マウスに細胞を移植すると、陽性の免疫キメラ反応が生じた(補助
図1cを参照されたい)ことが含まれた。総合すると、これらの単離された細胞は、栄養膜細胞層の非常に均質な集団に相当するようであり、間葉系幹細胞の特性を示した。したがって、これらの細胞は、hTS細胞と見なされる。
【0219】
実施例14:hTSおよびhES細胞間の遺伝的および生物学的特性における類似性
[00261]hTS細胞の遺伝子プロファイリングを調べるため、転写酵素−ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)を多様なプライマーで実行した(補助表1を参照されたい)。結果は、hTS細胞がTS細胞マーカー(Cdx2、BMP4、Eomes、およびFgfr−2)だけでなく、ES細胞マーカー(Oct4、Nanog、Sox2、およびFGF4)も発現することを示した(
図2a)。AffymetrixヒトゲノムU133プラス2.0 GeneChip(カリフォルニア州サンタクララ、http://www.affymetrix.com)を用いることによって分析された包括的遺伝子プロファイルを比較することによって、hTS細胞は、PDMS細胞(C.−P. Chen博士から寄贈)とは区別された(
図2b)。
【0220】
[00262]興味深いことに、hTS細胞は、ES細胞の三胚葉の遺伝子発現を示し、これには:中胚葉のオステオポンチン、オステオカルシン、パールカン、コラーゲンII型、ミオゲニン、myoD1、PPARγ−2、およびアジプシン;外胚葉の神経フィラメント、ニューロゲニン(Ngn)−3、CD133、MAP−2、Neo−D、およびネスチン;ならびに内胚葉のインスリン、Pdx−1、CK−19、ソマトスタチン、Isl−1、Nkx−2.2、Nkx−6.1、およびPax−6(
図2c)が含まれる。機能的には、修飾を伴って(補助表2を参照されたい)適切な措置(In’t Ankerら, 2004; Fukuchiら, 2004; Yenら, 2005)を用いることによって、hTS細胞は、hES細胞に見られるように中胚葉細胞系譜の特殊な表現型に分化可能であり、これらの細胞には、骨細胞、軟骨細胞、筋細胞、および脂肪細胞が含まれた(
図2d)。hTS細胞を選択的に誘導して、それぞれ、外胚葉および内胚葉由来のものの代表として、ドーパミン作動性NSCおよびインスリン産生膵島前駆細胞(以下を参照されたい)に分化させた。これらの結果は、hTS細胞が、三胚葉の特殊化表現型に分化可能なhES細胞の遺伝的および生物学的特性の両方を所持することを立証した。
【0221】
実施例15:Nanogは、LIF退薬によるヒト・トロホブラスト幹細胞の多能性を維持する
[00263]ヒト・トロホブラスト幹(hTS)細胞は、胚性幹(ES)細胞およびトロホブラスト幹(TS)細胞両方の多能性遺伝子マーカー、例えばOct4、Nanog、Sox2、およびCdx2を発現するため、ヒト・トロホブラスト幹(hTS)細胞に対するLIF退薬の影響を調べた(
図1a)。hTS細胞を異なる投薬量のLIF、すなわち500(膨大部を模倣)、250(中央部を模倣)、および125単位(卵管峡部を模倣)で各3日間処理し、LIFがOct4発現を促進するが、Cdx2、Nanog、およびSox2発現を用量依存方式で抑制することを示した(
図1b)。定量的PCR分析は、これらの知見を支持した(
図1c)。Oct4対Cdx2の相対発現比が初期胚分化における細胞の運命を決定可能である(Niwaら、2000)ため、Oct4/Cdx2比(0.4倍)は、膨大部で最高であるようであり、これが中央部で0.2倍に減少し、そして卵管峡部でほぼ1になった(
図1d)。このOct4/Cdx2比の減少傾向は、実際、栄養外胚葉運命に向かう分化を促進する(Niwaら、2005)。驚くべきことに、125単位のLIFで処理した細胞では、より高いNanog/Cdx2比(2倍)が見られ、一方、500単位のLIFでは0.1倍であった。これらの結果は、相対的に減少したOct4発現のレスキュー因子としてのNanogが、hTS細胞が多能性を維持するための重要な決定因子であることを強く示唆した。レスキュー因子のこの役割は、500単位のLIFの比に比較した、125単位のLIFの顕著に高いNanog/Oct4比、および125単位のLIFでのCdx2/Oct4比の見かけの増加によってさらに支持された(
図1e)。Sox2/Cdx2の明らかな変化は見られなかった。
【0222】
[00264]総合すると、これらの結果は、ヒト卵管の膨大部から卵管峡部に向かうLIF濃度の漸次退薬によって、主に、hTS細胞におけるNanogの上昇が誘導され、これによって、フィーダー細胞を伴わずに、マウスES(mES)細胞およびヒトES細胞増殖におけるものを模倣した、hTS細胞の自己再生および多能性特性が維持されることを立証する。この結果は、NanogがhTS細胞の多能性を維持する際に役割を果たすことを示す。
【0223】
実施例16:RAがNanog発現を増進する
[00265]RAは、ニューロン分化の強力な制御因子であり、そして通常、これは、ターゲット遺伝子の制御領域におけるレチノイン酸応答配列(RARE)と相互作用する核受容体に結合することによる(Maden)。細胞におけるRA産生の供給因子であるレチノール(ビタミンA)が、ES細胞におけるNanogの上方制御によって仲介される細胞分化を抑制することが示されてきている(Chen)。RAがhTS細胞におけるNanogに対して類似の影響を示すかどうかを調べた。hTS細胞をRAで1日処理し、そしてフローサイトメトリーに供した。この結果は、RAがNanog、Oct4およびSox2の発現を促進するが、Cdx2の発現は促進しないことを示し(
図2f)、これは、Affymetrix GeneChipオリゴヌクレオチド・マイクロアレイによるマイクロアレイmRNA発現プロファイリングと一致した(
図2g)。さらに、siRNAでのNanogのノックアウトは、RA誘導性Nanogを抑制したが、Cdx発現を増加させた。対照的に、Cdx2 siRNAはNanogを促進し、そしてフローサイトメトリーによって、RA誘導性hTS細胞においてCdx2を抑制した(
図2h)。総合すると、これらの結果は、RAがhTS細胞におけるNanogの過剰発現を誘導し、それによって、RAが、細胞運命の決定において、Nanog/Cdx2比を変化させないことを示す。
【0224】
実施例17:RAはその受容体RXRαの活性化を促進する
[00266]RAは、ウェスタンブロッティングアッセイによれば、最初の5分間でその受容体RXRαの活性化を促進するが、この作用は30分間しか持続しなかった。その代わり、増加したRARβ産生が60分以内に観察された(
図2i)。RAは、免疫沈降アッセイによれば、RXRαおよびRARβに直接相互作用することが観察された(
図2j)。さらに、活性化されたRXRαは、15分をピークとして、核に向かって転位置し、そしてこれ以降、核強度は免疫蛍光顕微鏡観察によれば減少した(
図2k)。タンパク質Gα
q/11サブユニットはまた、30分で活性化された(
図2l)。この目的を達成するために、細胞性レチノイン酸結合タンパク質2(CRABP−2、
図1d)の補助を伴わずに、最初の反応段階で、RAがRARと相互作用するようである。
【0225】
実施例18:RXRα/RARβは、Gタンパク質共役受容体(GPCR)スーパーファミリーのメンバーに属するようである
[00267]この概念は、二重免疫金電子顕微鏡観察による、RXRαおよびGα
q/11サブユニット間の直接相互作用の観察によって確認された(
図2m)。次に、RXRα/RARβおよびNanog間を関連づけるため、免疫沈降アッセイ分析によって、RARβではなくRXRαがNanogのプロモーターに対して直接作用することが示唆される(
図2n)。さらに、ES細胞とは異なり、hTS細胞は、hTS細胞がレチノールをRAに代謝するのを可能にする、主要RA生成酵素:レチンアルデヒドデヒドロゲナーゼ2型および3型(RALDH−2および−3)を含有する(
図1d)。RAがhTS細胞に作用して、Nanogのプロモーターに結合する、GPCRと関連したRXRα/RARβ複合体との直接相互作用によって、Nanogを産生することが立証される。
【0226】
実施例19:hTS細胞におけるRA誘導性Nanog発現は、卵管において、勾配LIF含量によって影響を受ける
[00268]LIFの退薬は、フローサイトメトリーによれば、hTS細胞において、RA誘導性Nanog発現を有意に増進可能であり(
図2i)、hTS細胞由来NSCがLIFの非存在下でのRA誘導による前駆細胞として振る舞うことが可能になる位置にあり、適切な微小環境条件下で、神経サブタイプ特定の多能性特性を維持することが示唆される。
【0227】
実施例20:RAは、非RARE経路を通じてTH発現を促進する
[00269]これらの結果は、ウェスタンブロットによって測定されるhTS細胞において、それぞれ、5、120および5分間で、RAがRXR−α、RAR−βおよびc−Src発現を刺激する、最初の結果に基づいて、RAが非ゲノムシグナル伝達経路を誘導することを示す(
図3a)。RXR−α/RAR−β相互作用が、Gタンパク質共役型受容体(GPCR)のスーパーファミリーに属するかどうかを決定するため、二重免疫金電子顕微鏡を用いて、G−タンパク質Gα
q/11およびRXR−α間の相互作用を調べた。結果は、RXR−αが、細胞膜で、Gα
q/11と結合相互作用を有し(
図3b)、そして続いて、解離Gα
q/11が膜結合ホスホリパーゼCベータ(PLCβ)を刺激して、PIP
2(少量の膜ホスホイノシトール)を2つの二次メッセンジャー、IP3およびジアシルグリセロール(DAG)に切断することを示した(
図3b)。
【0228】
[00270]続いて、RAは、免疫沈降アッセイおよび特異的c−Src阻害剤PP1類似体を用いることによって、RXRα、RARβおよび[c−Src]の足場形成を誘導した(
図3c)。
【0229】
実施例21:RAはWnt2B/Fzd6/β−カテニン経路を活性化する
[00271]ウェスタンブロット分析によって、RAが、4時間および24時間インキュベーション後、Wnt2Bおよび癌原遺伝子FRAT1を有意に上方制御することが立証された(
図24a)。hTS細胞を、Wnt2Bに対するsiRNAを伴いまたは伴わず、RAと一晩インキュベーションした。フローサイトメトリー分析によって、RAが、Wnt2B、ならびに仲介タンパク質ディシェベルド3(Dvl3)および癌原遺伝子FRAT1を含むその下流ターゲットを有意に上方制御し、阻害性グリコーゲンシンターゼキナーゼ−3β(GSK3β)を導き、これはsiRNAによってWnt2Bをノックダウンすることによって阻害可能であることが示された(
図24bおよび24c)。RT−PCR分析によってもまた、類似の結果が観察された(
図27)。RAはまた、7回スパン膜貫通受容体のフリズルドファミリーのメンバーであるFzd6 mRNAの過剰発現も促進した(
図24d)。Fzd6のWnt2B仲介発現におけるRAの役割を検証するため、本発明者らはまた、Dvl3およびその下流エフェクターFRAT1の発現レベルも分析し、そしてFzd6のRA仲介増進が、Wnt2Bに対するsiRNAの存在によって抑制可能であり、GSK3βの同時減少が伴うことを示した(
図24bおよび24c)。続いて、ウェスタンブロット分析によって、RAが30分および24時間の間に有意にβ−カテニンを活性化することが示された(
図24e)。RAは、新規古典的Wnt2B/Fzd6/β−カテニンシグナル伝達経路を誘導し、hTS細胞において、阻害性GSK3βが細胞質β−カテニンを安定化し、そして活性化するのを可能にする。
【0230】
実施例22:RAはヒストンデアセチラーゼ6(HDAC6)を調節する
[00272]ウェスタンブロット分析によって、RAは、転写制御酵素であるヒストンデアセチラーゼ6(HDAC6)の上昇を2時間で促進し、これは、同時免疫沈降(IP)アッセイによれば、24時間のRA処理後、β−カテニンと直接相互作用することが可能であることが示された(
図24f)。さらに、本発明者らは、細胞分画アッセイによって、β−カテニンの核転位置が起こることを示し(
図24g)、これはhTS細胞における24時間のRA処理後、古典的Wnt2B/Fzd6/β−カテニンシグナル伝達経路の存在を支持した。共焦点免疫蛍光顕微鏡観察によって、これらの観察がさらに確認された。HDAC6に対するsiRNAの存在下で、β−カテニンの核局在がブロックされた(
図25)。興味深いことに、本発明者らは、hTS細胞由来ニューロン様細胞において、細胞膜(シナプス)でのRA処理後、5分間で、β−カテニンの非常に早期の発現が見られうることを見出した。核において、β−カテニンは、TCF/LEFファミリーの転写因子と会合することによって、転写制御に関与する。細胞分画アッセイ分析によって、この相互作用がβ−カテニンの核転位置を導くことが示された(
図24e)。
【0231】
実施例23:RARβおよびGβ間、ならびにRXRαおよびGα
q/11間の相互作用
[00273]hTS細胞におけるウェスタンブロット分析によって、RAが、Gα
q/11およびGβ両方の迅速な産生を30分で誘導し、そしてまた、レチノイドX受容体α(RXRα)およびレチノイン酸受容体β(RARβ)を、それぞれ30分および4時間で誘導することが立証された(
図26a)。リアルタイム共焦点蛍光顕微鏡分析によって、GFPタグ化RXRαは、RA刺激によって、数分以内に、細胞質ゾル区画から細胞内領域に向かって、迅速に移動し(
図26bおよび26c)、ここで、Gα
q/11とともに、免疫細胞化学的に同時発現される(
図26d)。この現象はさらに、二重免疫金透過型電子顕微鏡観察によって裏付けられ、ここで、RAは、細胞膜で小さい金でタグ化されたRXRαおよび大きい金でタグ化されたGα
q/11の結合を刺激した(
図26e)。生化学的には、RXRαは、Gα
q/11と物理的に相互作用し、そして該作用は、IPアッセイによれば、RXRα siRNAを用いることによって阻害された(
図26f)。RARβおよびGβ間でも類似の事象が起こり、そしてこの作用はまた、IPアッセイによれば、RARβ siRNAを用いることによって阻害された(
図26g)。IPアッセイは、選択的c−Src阻害剤PP1類似体が、RXRα−RARβヘテロ二量体の形成を妨げることが可能であることを示し(
図26h)、RXRαおよびRARβが別個に機能することを可能にする未知の機構の存在が示唆された。この知見はさらに、二重免疫金透過型電子顕微鏡によって観察される小胞体(ER)中のRA誘導性金粒子タグ化RXRαの係留によって裏付けられた(
図26i)。総合すると、データは、RA誘導性RXRαおよびRARβが、細胞膜で、それぞれ、Gα
q/11およびGβと独立に相互作用することを示唆する。
【0232】
実施例24:Akt3/mTORシグナル伝達およびmRNA翻訳
[00274]リアルタイムPCR(RT−PCR)分析によって、RAがわずか15分間、RXRα mRNAおよびRARβ mRNAの迅速な一過性上昇を誘導し(
図28a)、そして1時間以内にRARβおよびRXRαの迅速な産生を誘導することが見出された(
図26a)。軸索成長コアにおけるmRNAの濃縮およびニューロンにおけるmRNA局在とのその関連があり、そしてRAが増進するRARαレベルが樹状RNA顆粒における局所GluR1合成を仲介して、ニューロン膜でのシナプス形成のため、RARα修飾翻訳に寄与するという事実に基づき、これらの細胞プロセスにおいて、RXRαの細胞内mRNA局在が関与するかどうかを調べることに重点を置いた。続いて、IPアッセイによって、RAは、Gβおよびホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3K)間の結合を誘導し(
図26g)、そしてウェスタンブロット分析によって、30分から4時間の間に、PI3KとAkt1およびAkt2を含むすべてのAktアイソフォームである下流エフェクターを、そして1時間で一過性Akt3を活性化することが示された(
図28b)。フローサイトメトリー(
図28c)およびRT−PCR分析(
図29a)によれば、RAでの24時間処理後、Aktアイソフォームのすべての発現は、PI3K阻害剤ワートマニンでの前処理によって阻害され、Gβ/PI3K/Aktシグナル伝達の存在が示された。特に、Aktは、最近、ニューロン生存を促進する神経突起伸長に必須の制御因子であり、RA誘導性Akt3(4時間)は、ラパマイシンの機械的ターゲット(mTOR)に結合可能であり、これはAkt3に対するsiRNAによって阻害され(
図28d)、特異的抗体(Cell Signaling Technology)を用いることによって、4時間で、部位セリン2448でmTORの一時的リン酸化を導くことが、近年、明らかになってきている。しかし、この作用は、24時間のインキュベーション後には消失した(
図28e)。この機能は、ウェスタンブロットによって(
図28f)そしてフローサイトメトリーによって(
図29c)、siRNAを用いたAkt3のノックダウンによって阻害された。直ちに、ウェエスタンブロット分析は、RA処理4時間により、リン酸化されたmTORは真核翻訳開始因子−4E結合タンパク質1(eIG4EBP1)と直接相互作用し(
図28g)、そしてeIF4EBP1(
図28h)を活性化することを示した。siRNAを用いることによるリン酸化mTORのノックダウン、eIF4EBP1のリン酸化が阻害された;その代わり、伸長開始因子4E(eIF4E)のリン酸化が活性化され(
図28h)、eIF4E/eIF4EBP1複合体からのeIF4Eの解離が起こったことが暗示された。eIF4Eのリン酸化は、mRNAのキャップ依存性翻訳を引き起こすことを可能にする。総合すると、これらの観察は、RAが、どのように、RXRα mRNAおよびRARβ mRNAの活性化を通じて細胞内mRNA翻訳を誘導可能にし、局所的にそれぞれRXRαおよびRARβを産生するかを説明し、これはeIF4EのsiRNAによるノックダウンが、IPアッセイによれば、RXRαおよびGα
q/11の間の、ならびにRARβおよびGβの間の相互作用両方を阻害したためであった(
図28i)。これらの結果は、RXRαおよびRARβの局所合成の開始因子としてAkt3/mTORシグナル伝達が役割を果たすことを裏付ける。RAは、伸長開始因子4B(eIF4B)の上昇を刺激するが、この作用は、mTORまたは4EBP1のいずれに対するsiRNAによっても影響を受けず、eIF4B発現の制御には別の機構があることが示唆された(
図28h)。時空間Akt3は、mTORシグナル伝達を通じて、RXRαおよびRARβ産生の細胞内局在を促進する。
【0233】
実施例25:ドーパミン作動性特定の主流に対するCREB1
[00275]Gβ/PI3K下流エフェクターAkt1は、cAMP応答配列結合タンパク質1(CREB1)に、セリン133部位でのリン酸化を通じて直接結合し、そしてこれを活性化する(
図30a)。Akt1およびCREB1の相互作用は、Akt1 siRNAによって阻害された(
図30b)。リン酸化されたCREB1は、クロマチン免疫沈降(ChIP)アッセイによると、ドーパミン前駆体チロシンヒドロキシラーゼ(TH)遺伝子をターゲティングし、そして転写し(
図30c)、これはCREB1 siRNAによって阻害された(
図30d)。この目標に向けて、結果によって、RA誘導性RARβ/Gβ/PI3K/Akt1/CREB1経路が、ドーパミン作動性神経発生におけるTH転写における役割を果たすことが示唆された。この知見をin vivoで裏付けるため、病変線条体でhTS細胞由来トロホブラストNSC(tNSC)の頭蓋内移植を受けた6−OHDA誘導性PDラットを用いたモデルを用いた。移植12週後の脳切片の検査によって、免疫蛍光組織分析により、黒質緻密部において、正常側と適合して、療法側における新規ドーパミン作動性(DA)ニューロンにおいて、CREB1およびTHの同時発現が観察された(
図30e)。THおよびCREB1活性はどちらも、正常ニューロンに比較して再生DAニューロンにおいて、より高かった(
図30f)。興味深いことに、見かけのCREB1発現がDAニューロンの核で観察された。これらの知見は、CREB1不全マウスがなぜ神経変性に感受性であるかを説明しうる。
【0234】
実施例26:ERカルシウム制御におけるRXRα/Gα
q/11の研究
[00276]30分から4時間の間のウェスタンブロット分析によって、RAがGα
q/11の漸次活性化を誘導し、これが膜結合型ホスホリパーゼC(PLC−β)の触媒を誘発して、膜ホスホイノシトールPIP2の分解を導き(
図21a)、先に記載される慣用的Gαシグナル伝達と一致して、二次メッセンジャー、イノシトール(1,4,5)三リン酸(IP3)を産生することが示された。IP3は、ERに位置するその受容体IP3R(
図21a)を活性化し、細胞内カルシウム上昇を引き起こす(
図21b)。細胞内カルシウムの起源を確認するため、細胞をカルシウム不含培地中で培養し、ここでRAは、リアルタイム生存細胞免疫蛍光顕微鏡測定によって、一過性の細胞内Ca
2+放出を誘導した(
図21b−a)。ERカルシウムレベルの枯渇は、ホメオスタシスおよび細胞保護に関して、外因性CaCl
2を添加することによってレスキュー可能であり、ストア感受性カルシウム進入(SOCE)のパターンを示した。ERにおけるカルシウム放出のプロセスは、用量依存方式で、IP3R特異的阻害剤2−APBによって阻害された(
図21b−b)。これらの結果は、ER放出された細胞内カルシウム上昇が、hTS細胞において、RA誘導性Gα
q/11シグナル伝達経路に関与することを示す。
【0235】
[00277]KClは、hTS細胞において、カルシウム不含培地中、ERカルシウムのRA誘導性枯渇後、L型カルシウムチャネルを活性化可能であった(
図21b−c)。L型カルシウムチャネルアンタゴニスト、ニフェジピンは、このシグナル伝達を遮断可能であった(
図21b−d)。細胞内ERカルシウムのRA制御はL型カルシウムチャネルと関連づけられる。
【0236】
実施例27:興奮−神経発生カップリングにおけるCaMKIIの研究
[00278]ウェスタンブロット分析によって、RAが1〜2時間でCaMKIIの時空間活性化を誘導することが示された(
図21a)。免疫沈降アッセイ分析は、CaMKIIがL型カルシウムチャネル活性をコードして、興奮−転写カップリングにおいて核CREBに局所的にシグナル伝達するという先の研究と適合して、CaMKIIがCREB1を直接リン酸化し、そして活性化する(
図21c)ことを立証する。ウェスタンブロット分析によって、真核開始因子4B eIF4B siRNAは、CaMKII、カルシニューリン、およびeIF4Bの発現を阻害することが示された(
図21d)。軸索は、発生中のニューロンにおいて、特異的タンパク質合成をコードする多様なmRNAを局所的に含有し、これには、CaMKII、カルシニューリン、およびCREB1が含まれる。CREB1は、遠位軸索のシグナルに関与する、核における特異的転写プロセスのための逆行性追跡を可能にする。CaMKIIの外因性RA誘発局所タンパク質合成は、hTS細胞において、eIF4B siRNAによって阻害可能である。したがって、この局所活性化CaMKIIシグナルは、CREB1に対して同様に振る舞い、細胞外の合図に際して、迅速な誘導性遺伝子転写が示唆された。
【0237】
[00279]一過性CaMKIIは、真核開始因子4B(eIF4B)に結合し、そして活性化して(
図21c)、キャップ非依存性機構を通じて、mRNA翻訳機構を開始した。ウェスタンブロット分析によって、RA処理後、選択的CaMKII阻害剤KN93によって、この作用は阻害されることが示された(
図21e)。このCaMKII/eIF4Bシグナル伝達は、次いで、eIF4B/c−Src/Nanogシグナル伝達経路を統合して、tNSCの自己再生および増殖のため、RXRα/Gα
q/11からのシグナル伝達経路を達成した。これらの結果はまず、Gα
q/11シグナル由来CaMKII興奮が、tNSCの自己再生の維持に関与することを調べた。
【0238】
[00280]ウェスタンブロットアッセイおよび免疫沈降アッセイ分析は、CaMKIIがパーキンソンタンパク質2(パーキン)に結合し、そしてこれを活性化することを立証した(
図21aおよび21f)。続いて、パーキンは、軸索に優先的に位置し、そして微小管集合を刺激する微小管会合タンパク質タウ(MAPT)と直接相互作用し、そしてこれを活性化した(
図21aおよび21f)。その結果、MAPTは、SNCAに直接結合して(
図21aおよび21g)、パーキン/MAPT/SNCA複合体を形成した。ここで、MAPTは、もっぱらニューロンで発現され、微小管集合を安定化し、そして促進する微小管要素である、チューブリンと相互作用しそしてこれを活性化する(
図21aおよび21h)。総合すると、これらの結果は、初期神経形成における軸索の振る舞いの重要性を示唆した。
【0239】
実施例28:カルシニューリン/NFAT1シグナル伝達の活性化
[00281]ウェスタンブロットアッセイ分析は、RAがカルシニューリンの産生を誘導することを立証した(
図21a)。2−APBでの前処理によって、カルシニューリン、NFAT1、およびMEF2A発現が阻害され(
図21i)、ERカルシウムおよびカルシニューリン分子が関連づけられた。カルシニューリンは、直ちに、T細胞活性化およびアネルギーの重要な制御因子であるNFAT1を脱リン酸化し、これは30分〜2時間の一過性様式を示した(
図21a)。この作用はまた、免疫沈降アッセイ分析によって明らかであるように、2−APBによっても阻害され(
図21h)、ERカルシウムがカルシニューリン/NFAT1シグナル伝達に関連づけられた。さらに、RAは、NFAT1、および核細胞質輸送体であるインポーチンの一過性相互作用を誘導し(
図21aおよび21j)、細胞分画アッセイによるNFAT1核転位置を導いた(
図21k)。NFAT1のこの一時的効果は、持続および一過性カルシウムシグナル間を細胞が区別する、1つの機構であると考えられる。
【0240】
実施例29:WntおよびGタンパク質シグナル伝達経路の研究
[00282]古典的Wntシグナル伝達の阻害性GSK3β(セリン/スレオニン部位)は、RAで一晩処理した後の細胞質β−カテニンの安定化を維持したが、30〜120分にわずかに減少したレベルであった(
図24d)。予期せぬことに、Aktアイソフォームの中で、Akt2はGSK3βに4時間で結合可能であった(
図21l);が、フローサイトメトリー分析によって、GSK3βは、4時間でまず活性化されたが、一晩のRA処理によって、後に阻害性に遷移した(
図21m)。この現象はさらに、Akt2 siRNAを用いることによっても確認された(
図21n)。この機能的多様性を説明するため、GSK3βの最初の活性化が、Akt2によるTyr216部位でのリン酸化のためであり、続く阻害は、セリン/スレオニン部位でのリン酸化のためであることが確認された(
図21m)。これらの結果は、多様なプロテインキナーゼによるGSK3βの部位特異的リン酸化が、下流エフェクターの運命を決定することを立証する。さらに、活性GSK3βは、直接相互作用を通じてMAPTをリン酸化した(
図21h)。次いで、MAPTはチューブリンと相互作用して、そしてこれを活性化し(
図21aおよび21h)、微小管集合を促進した。特に、初期神経発生中、Wnt2B、Gβ、およびGα
q/11シグナル伝達経路の間の対話架橋が構築される。
【0241】
実施例30:ドーパミン作動性神経発生のための転写因子の研究
[00283]核において、β−カテニンおよびCREB1の相互作用は、TH転写における主流に相当した(
図30a)。活性β−カテニンは、次に、リンパ系増進因子1/T細胞因子1(LEF1)に結合し(
図22a)、LEF1の転写リプレッサーからアクチベーターへの切り換えを導く。次いで、LEF1は、ビコイド関連因子のスーパーファミリーのメンバーであるPitx2を補充し、そしてこれと相互作用した(
図22a)。クロマチン免疫沈降(ChIP)アッセイによって、LEF1はPitx2遺伝子転写を促進するが、Pitx3遺伝子を促進せず(
図22b)、これは、β−カテニン、Pitx2、およびLEF1が相互作用して、相乗的にLEF−1プロモーターを制御することと適合した。
【0242】
[00284]さらに、一過性核活性NFAT1は、転写因子として働いて、免疫反応のためのサイトカインおよびTNF−αを産生する。しかし、この作用は、この場合には起こらないようであり、これはリン酸化GSK3βが、核においてカルシニューリンに誘導されたNFAT1のDNA結合を阻害可能であり、そして核排出を促進可能であるためである。したがって、活性細胞質NFAT1は、細胞質転写因子筋細胞増進因子2A(MEF2A)と相互作用し、そしてこれを活性化し(
図22cおよび22d)、これはこの作用がNFAT1 siRNAによって阻害されたためであった(
図22e)。特に、迅速な誘導性CREB1は核に進入し、そしてMEF2A遺伝子を転写し、これはMEF2Aタンパク質を産生した(
図22f)。MEF2Aは、多数の方式で、遺伝子転写で機能可能であり(
図22g)、これには、より多くのMEF2Aを産生する自己制御を通じた自身の転写、ドーパミン作動性特定のためのTH遺伝子転写、SNCA/MAPT/パーキン複合体形成のためのSNCA遺伝子の転写、ならびにEP300およびPitx2との相互作用が含まれ、これは、MEF2A siRNAによって阻害された(
図22h)。
【0243】
[00285]活性ER300は、ChIPアッセイによれば、HDAC6遺伝子だけでなくTH遺伝子もターゲティングする(
図22i)。次いで、HDAC6は核転位置のためにβ−カテニンを所持可能にした(
図24eおよび24f)。総合すると、実行上の転写複合体が形成され、そしてTH遺伝子転写のために運命付けられた。これらの間で、CREB1、EP300、およびMEF2Aは、TH遺伝子のプロモーターを直接ターゲティングすることも可能であったが、β−カテニン、LEF1、およびPitx2は、転写プロセス中、エンハンサーのコアクチベーターとして働いた。ウェスタンブロット分析は、4時間および24時間で多様な分子活性を示す。
【0244】
実施例31:動物研究
[00286]動物研究のため、F1B(−540)−GFPおよびpSV2neoプラスミドをhTS細胞にトランスフェクションして、その後、G418で選択することによって、レポーター細胞を調製した。95%を超えるhTS細胞が、F1B−GFPおよびTH−2の同時発現を示した。次に、以下に記載するように、ラット脳の片側にニューロトキシン、6−ヒドロキシドーパミン(6−OHDA)を注射することによって、「若い」スプレーグ−ドーリーラット(n=12、体重、225〜250グラム)で、パーキンソン病を誘導した。
【0245】
[00287]すべての実験を、高雄市医科大学病院の病院施設審査委員会の倫理委員会、および国立成功(Chung Kong)大学医学部、台湾・台南の倫理委員会のガイドラインにしたがって実行し、そして行った。
【0246】
パーキンソン症の誘導
[00288]12匹のスプレーグ−ドーリーラット(体重560+65g(前)、548+46g(後))を、6−OHDA障害半身パーキンソン症のモデルとして用いた(Javoyら, Brain Research, 102:201−15, 1976)。手術のため、抱水クロラール(4%、1cc/100g体重)によって麻酔した後、右内側前脳束(前後(AP)2.8/側方(Lat)2.2/深度(Dep)8.0mm)内に、1μg/0.5μl/分の速度で8分間(注入ポンプ:CMA100)、6−ヒドロキシドーパミン(Sigma)の注入によって、定位損傷を実行した。10分後、チューブを取り除いた。2週間後、アポモルフィン皮下注射(25mg/kg)投与の20分後、プラスチックボウル(直径36cm)中で、アポモルフィン誘導性回転を試験した。対側性回転を監視し、そしてビデオカメラを用いて20分間記録した。5分あたり25を超える回転数を示すラットが、研究に適格と見なされた。細胞移植のため、右片側線条体内で、細胞を2つの部位(各部位:3x10
6/4μl)(第一の部位;前後+1/側方+2.7/深度6.4mm;第二の部位:前後+0/側方+2.7/深度6.4mm)内に移植した。対照群には、同じアプローチでPBSを投与した。細胞注射後、0、3、6、9、および12週で、アポモルフィン誘導性回転を測定した。結果を対側性回転/5分間として表した(
図5A)。
【0247】
[00289]RAの異なる時間によって誘導されるNSCの効果を調べるため、適格ラットをランダムに3つの群に分けた:1日および5日RA誘導群、ならびに対照群。移植前に、hTS細胞をF1B−(−540)−緑色蛍光タンパク質(GFP)およびpSV2neo組換えプラスミドDNAでトランスフェクションし、その後、G418選択で95%を超える収率を達成した。各ラットには、総数6x10
6細胞で、GFPタグ化NSCを投与し、そして対照ラットには、ビヒクルとしてリン酸緩衝生理食塩水を投与した。移植後3週ごとに、アポモルフィン誘導回転試験(Iancuら、2005)によって、療法効果を評価した。
【0248】
[00290]実験1.成体スプレーグ・ドーリーラット(BW:225−250g)を移植レシピエントとして用い、そしてこれらを12時間明暗周期で、食物および水に不断にアクセスさせて飼育した。病変ラット(n=12)をまず3つの群に分けた:(a)病変を有しそして1日RA誘導NSCを移植されたもの(n=4)、(b)病変を有しそして5日RA誘導NSCを移植されたもの(n=4)、ならびに(c)病変を有しそして移植されていない対照(n=4)。ラットをZoletil(50mg/kg、s.c.、Virbac Lab.フランス・カロス)によって麻酔し、そして病変ラットに、6−OHDA(0.1%l−アスコルビン酸−生理食塩水中、8μg/4μl;Sigma−Aldrich、ミズーリ州)を、十字縫合および硬膜に照らして(according to)、mmで、左MFB(前後2.8、側方2.0、深度8.0mm)およびSN(前後5.0、側方2.2、深度7.5mm)内に片側性に注射し、そしてその部位で10分間待った。DA枯渇線条体内への、2つの部位(前後+1.0、側方+2.7、深度6.4および前後+0、側方+2.7、深度6.4)でのhTS細胞由来NSC(1x10
6細胞/5μ1/5分)の移植を行い、そしてカニューレを5分間その場所に放置し、その後、ゆっくりと引き抜いた。移植処置中、細胞生存度は96〜98%の間で安定なままであった。シャムのラットには細胞を含まないビヒクルを投与した。6−OHDA病変が安定な半身パーキンソン状態(>300回転/時間)を達成した後、1週ごとにアポモルフィン誘導性回転によって、病変を評価した。アポモルフィン誘導性回転試験によって、3週ごとに、12週まで、移植効果を評価した。移植18週後、ラットを屠殺し、そして脳切片をTH−DAB免疫染色に供した。
【0249】
[00291]実験2.PDラットは、試験前に体重560+/−65gそして試験後に548+/−46gで管理された。病変ラット(n=16)を実験1におけるように生成し、そして2群に分けた:1日RA誘導NSCでの移植による、(a)病変を有しそして細胞移植されたもの(n=8)および(b)病変を有しそして対照として細胞を伴わない移植をされたもの(n=8)。前後+1.0、側方+2.7、深度6.4での注射によって細胞を移植した。以下に記載するように、移植後、3週ごとに12週まで行動評価を行った。13週で、すべてのラットを屠殺し、そして脳切片をTH−DAB免疫染色に供し、そしてTH陽性細胞を濃度計によって分析した。
【0250】
行動評価
[00292]自発運動アッセイ。ラットに関して、自然発生的な自発運動を円状廊下において監視した(幅10cmおよび直径60cm、壁の高さ30cm;Med Associates Inc.、バーモント州セントアルバンス)。4つの光電管は、円の壁周囲に等距離に配置され、光線中断によって、動物の水平方向歩行活性を検出した。カスタマイズされたソフトウェア(Med Associates)を装備したPCを通じてデータを記録した。動物の別個の群を10mg/kg(群あたりn=6)および20mg/kg(群あたりn=12)のコカインで試験した。動物を処置群(HSV−LacZおよびHSV−RGS9−2)にランダムに分け、そして自発運動装置に2時間、慣らした。翌日、定位フレーム上、動物の側坐核中にHSVベクターの投与を行った。2日間回復させた後、自発運動に関して、2時間、動物をコカインで試験した。ボンフェローニ事後検定で、データを2方向ANOVA(HSVx時間)によって分析した。
【0251】
[00293]マウスに関しては、活動チャンバーがプラスチックケージ(12x18x33cm)であり、10対の光電光線がチャンバーを11の長方形フィールドに分ける、自動化系(Hiroiら、1997)において、自発運動を測定した。マウスの遺伝子型を知らない実験者が、マウスを各日同じ時間に試験した。急性実験のため、動物を30分間チャンバーに慣らし、その後、生理食塩水か、あるいは多様な用量のアンフェタミン、コカインまたはアポモルフィンのi.p.注射を行い、そして自発運動をさらに30分間評価した。慢性実験のため、最初の3日のi.p.生理食塩水注射直後、動物をチャンバーに入れた。次いで、水平方向の活動を10分間測定した。第4〜8日(C1〜C5)、動物にコカイン(7.5mg/kg i.p.)を投与し、そして活動を10分間測定した。ラットおよびマウスに用いられた短い期間は、先の研究において、歩行自発運動の測定において典型的である、潜在的な混乱させる影響を回避することが示されてきている。
【0252】
[00294]3つの行動試験を行った:(i)病変および移植効果を評価する薬剤誘導性回転、(ii)後足歩行パターンを評価する足跡分析、および(iii)熟練歩行行動(後肢/前肢の組み合わせおよび足配置の正確さ)を評価するはしご段歩行試験。
【0253】
[00295]アポモルフィン誘導性回転試験。簡潔には、アポモルフィンを皮下投与(0.9%正常生理食塩水中の0.01%アスコルビン酸中、0.5mgアポモルフィン/kg体重、Sigma−Aldrich)した後、ラットを広く丸いチャンバー(直径16cm)に40分間入れた。すべての回転をビデオテープ上に記録し、そして純回転非対称性を計算した。データを30分間の総回転数として計算した。Matlabソフトウェアを用いることによって、データを分析した。
【0254】
[00296]また、アポモルフィン誘導性回転(apo)を、0.5mg/kgアポモルフィン溶液(Sigma−Aldrich、0.9%正常生理食塩水の0.01%アスコルビン酸中、0.5mgアポモルフィン)の腹腔内注射後、60分間観察した。先に記載されるように([59];
図2)、病変後(LXの2および3週後)および移植後(TXの3および6週後)、回転測定装置(rotometer)ボックス中、回転バイアスを評価した。LX2週後およびTX3週後のデータでは、薬剤誘導性回転は示していない。3日後、1ml/kgアンフェタミン溶液(Sigma−Aldrich、ドイツ・シュタインハイム;1.0ml生理食塩水あたり2.5mgのd−アンフェタミン)の腹腔内注射後、90分間、アンフェタミン誘導性回転(amph)を行った。アポモルフィン注射後の病変側への対側性の<4.0の全身回転、およびアンフェタミン注射後の病変側への同側性の<6.0の全身回転を示したため、5匹の動物を排除した。アポモルフィン誘導性回転は、負の値における純回転として提示し、そしてアンフェタミン誘導性回転は、正の値における純回転として提示する。
【0255】
[00297]アポモルフィンの注射後(A)およびアンフェタミンの注射後(B)の薬剤誘導性回転。回転バイアスを全身回転の総量として示す。ドルマーク($)は、シャムおよびtxラットの間の有意な相違を示す。プレTX=病変6週後、ポストTX=移植6週後。有意な移植効果があることに注目されたい(アポモルフィン注射後の回転バイアスの減少;アンフェタミン注射後の過剰補償)。
【0256】
[00298]無動症に関するバー試験。バー試験のため、対側および同側前肢がどちらも、0.7x9cmサイズの水平アクリルバー上に交互に置かれるような姿勢で、ラットを穏やかにテーブル上に置いた。前肢の配置から、各々が最初にバーから完全に離れるまでの時間を記録した。ブロック上で各前肢が消費した時間の総計を先に記載されるように(Fantin)記録した。
【0257】
[00299]足跡分析(時空間歩行分析)。先に記載されるように(Klein)、歩行速度、ステップ長、ストライド長および支持基底面を含む足跡分析を実行して、後肢歩行パターンを評価した。ラットは、通路(長さ50cm、幅8cm)を通ってプラスチックボード上を歩かなければならない。5回の連続ステップで、ストライド長、肢回転(第三指および掌の中心を通じたバーチャルな線、ならびに歩く方向に平行なバーチャルな線の間の角度)および足の間の距離(左および右ステッピング周期の足の間の距離)を含むパラメーターをビデオカメラ(Casio EX−F1、日本)によって記録し、そしてMatlabソフトウェアによって分析した。
【0258】
[00300]適切な方法を用いて、足首関節の硬直を評価する。適切な電気生理学的アッセイを用いて、脳におけるドーパミン作動性ニューロンの回復%を決定する。
免疫組織化学
[00301]TH免疫組織化学のため、動物に最終用量60mg/kgのペントバルビトンナトリウムをi.p.投与し(Apoteksbolaget、スウェーデン)、そしてこれを50ml生理食塩水(0.9%w/v)で経心的に灌流し、その後、200ml氷冷パラホルムアルデヒド(0.1Mリン酸緩衝生理食塩水中4%w/v)を灌流した。脳を除去し、4%パラホルムアルデヒド中、2時間、事後固定(post−fix)し、そしてスクロース(0.1Mリン酸緩衝生理食塩水中25%w/v)中、一晩、凍結保護し、その後、凍結マイクロトーム(Leica)上で切片作製した。厚さ20μmの冠状切片を連続6枚収集した。
【0259】
[00302]免疫組織化学法を以下のように行った。自由浮遊切片を、5%正常血清および0.25%TritonX−100(Amresco、米国)を含有するカリウムを含む0.1Mリン酸緩衝生理食塩水のインキュベーション溶液中、一次抗体と室温で一晩インキュベーションした。二次抗体を、2%正常血清および0.25%TritonX−100を含有するカリウムを含むリン酸緩衝生理食塩水中で希釈し、そして元来の溶液に室温で2時間適用した。ジアミノ−ベンジジンのペルオキシダーゼ駆動沈降、またはフルオロフォアのコンジュゲート化(二次抗体に直接、または必要な場合、ストレプトアビジン−ビオチン増幅工程を伴う)によって、一次−二次抗体複合体の検出を達成した。c−Fosの検出のため、硫酸ニッケル(2.5mg/ml)を用いて、染色を増感させた。蛍光マーカーで標識し、スライドにマウントした切片を、ポリビニルアルコール−1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンでカバースリップ処理し、そしてジ−アミノ−ベンジジン標識切片をアルコールおよびキシレン中で脱水し、そしてDePeXマウンティング培地(BDH Chemicals、英国)でカバースリップ処理した。一次抗体および希釈因子は以下の通りであった:マウス抗カルビンジン
28KD(1:1000:Sigma)、ウサギ抗c−Fos(1:5000、Calbiochem)、ニワトリ抗GFP(1:1000、Abcam)、ウサギ抗GFP(1:20 000;Abcam)、ウサギ抗GIRK2(1:100;Alomone Labs、イスラエル・エルサレム)、ウサギ抗PITX3(1:100;Invitrogen)およびマウス抗チロシンヒドロキシラーゼ(TH:1:4000;Chemicon)。1:200の希釈で用いる二次抗体は以下の通りであった:(i)直接検出−シアニン3またはシアニン5コンジュゲート化ロバ抗マウス、シアニン2コンジュゲート化ロバ抗ニワトリ、シアニン5コンジュゲート化ロバ抗マウス(Jackson ImmunoResearch)および(ii)ストレプトアビジン−ビオチン増幅での間接検出−ビオチンコンジュゲート化ヤギ抗ウサギまたはウマ抗マウス(Vector Laboratories)、その後、ペルオキシダーゼコンジュゲート化ストレプトアビジン(Vectastatin ABCキット、Vector laboratories)、またはシアニン2/シアニン5コンジュゲート化ストレプトアビジン(Jackson ImmunoResearch)。
【0260】
ドーパミン作動性特定におけるCREB1発現に関するin vivo研究
[00303]脳切片を得るため、ペントバルビトンナトリウム(60mg/kg、i.p.、Apoteksbolaget、スウェーデン)によってラットを麻酔し、そして生理食塩水(50ml、0.9%w/v)で、その後、氷冷パラホルムアルデヒド(200ml、0.02M PBS中10%w/v)での経心的灌流を、急性および慢性PDラットにおいて、それぞれ、18週および12週で行った。示すように、脳切片を、免疫細胞化学、免疫組織化学、および免疫蛍光組織分析に供した。
【0261】
[00304]病変線条体で、hTS細胞由来トロホブラストNSC(tNSC)の頭蓋内移植を受けた6−OHDA誘導性PDラットを調べて、CREB1発現を調べた。移植12週後の脳切片の検査によって、黒質緻密部において、CREB1およびチロシンヒドロキシラーゼ(TH)の同時発現が、療法側において、新規ドーパミン作動性(DA)ニューロン中で観察され、これは、免疫蛍光組織分析によって、正常側におけるものと適合した(
図30e、挿入図)。THおよびCREB1活性はどちらも、正常のもの(
図30f)に比較して、再生DAニューロンでより高かった。明らかなCREB1発現が、DAニューロンの核中で観察された。これらの知見は、CREB1不全マウスがどのように神経変性に感受性であるかの説明を補助しうる。
【0262】
ドーパミン作動性黒質線条体経路の再生に関するin vivo研究
[00305]細胞療法後のドーパミン作動性黒質線条体経路の再生をさらに検証するため、免疫蛍光組織分析を行った(TissueGnostics Gmbh、オーストリア・ウィーン)。14匹の急性PDラット(すなわち傷害の1週後2匹および6週後2匹および2匹の対照、細胞移植12週後6匹および2匹の対照)および4匹の慢性PDラット(すなわち細胞療法の12週後2匹および2匹の対照)を含めて、脳切片を調べた。SNCにおいて、6−OHDAは、進行性の神経変性を引き起こし、傷害6週後に多様なサイズの腔を生じる(
図31)。興味深いことに、tNSC療法後、多くのDAニューロンが、腔内へのTH陽性神経末端突起を伴って、腔の壁に見られた(
図31、挿入図)。定量的分析によって、損なわれていない側に比較して、SNCにおいて、DAニューロンの数が、傷害1および6週後に、それぞれ、見かけ上48%および13%減少した(
図32aおよび33)。顕著なことに、DAニューロンの喪失は、tNSC療法後、最大67%減少する可能性もあった。
【0263】
[00306]一方、線条体において、DAニューロンは、傷害の1週および6週後、それぞれ78%および4%減少した(
図32a)。同様に、失われたDAニューロンは、tNSC療法後、最大73%再生可能であった。観察(
図6)と一致して、DAニューロン回路は、免疫組織化学的に、損なわれていない側と同様に、SNCの療法側でよく確立された(
図32b)。DAニューロンの回収速度は、免疫蛍光分析における67%(
図23a)と一致して、SNCにおいて、78.4±8.3%(平均±SEM;n=4)を占めた(
図32c)。
【0264】
[00307]グリア細胞は、ニューロン遊走を目的地にガイドする仲介因子として、または神経再生の供給源として、役割を果たすため、6−OHDAは、DAニューロンおよびGFAP(+)細胞両方の変性を引き起こすだけでなく、線条体における線条体−淡蒼球−黒質軸索(ウィルソン鉛筆)の攪乱も引き起こした。これらの現象は、明らかに、tNSC療法後に改善され、多くのGFAP(+)細胞が細かい有髄線維中に包埋されていることが示された(
図32d)。注目されるように、GFAP(+)細胞は、病変線条体において、傷害6週後の65.5%から、tNSC療法後には93.9%まで再生した(
図32e)。この事実は、アストロサイト活性化を反映する可能性もあり、移植されたtNSCサブタイプ、すなわちGRPおよびアストロサイトに起因しうる。これらの結果は、tNSCの移植が、慢性PDラットにおいてドーパミン作動性黒質線条体経路を再生し、それによって、行動欠陥の改善を説明することを示す。DAニューロンの再生の最適化は、病変経路において、tNSCの保持に基づき、少なくとも移植後18週、続くであろう(
図5)。
【0265】
[00308]in vivoで、hTS細胞をオス重症複合免疫不全(SCID)マウスに、6〜8週間、筋内移植した。組織学的に、奇形腫はまったく見られなかった;が、粘液様の異様な細胞を伴う小規模なキメラ反応が観察された(
図7H)。これらの結果によって、奇形腫形成に関して、hES細胞に比較して、移植(translational)医薬におけるhTS細胞およびtNSCの利点が明らかになる。
【0266】
統計
[00309]すべてのデータを平均±SEMとして表す。分散の反復測定分析(ANOVA)検定を用いることによって、相違を評価し(SPSSリリース12.0ソフトウェア)、そしてアポモルフィン誘導性回転分析のため、2群間の反復測定ANOVA検定後、最小有意差検定(LSD)事後比較を適用した。適切な場合、スチューデントt検定、ペアードt検定を用いた。p値<0.05を有意と見なした。
【0267】
[00310]動物実験によって、病変線条体内に注射したtNSCは、移植18週後、GFPタグ化免疫蛍光研究によって明らかになる黒質線条体経路を通じて、黒質核下(subnigral nucleus)の上流に遊走可能である。第二に、行動欠陥を改善する有効性は、予期されるより高く、例えば、移植12週後にドーパミン作動性ニューロンの回復は28.2%である。第三に、免疫抑制または腫瘍形成はいずれも観察されなかった。さらに、28.2%のドーパミン作動性ニューロンおよび行動欠陥の改善は、慢性PDラットにおいて、6−OHDA誘導後1年を超えて維持される。これらの結果は、tNSC移植が、ドーパミン作動性黒質線条体経路を再生し、そして急性PDラットにおいて、行動欠陥を機能的に改善することが可能であることを示した。
【0268】
慢性PD動物モデル
[00311]PD患者の病理学的に進行性の性質をより緊密に模倣するため、1年を超える(平均12.3ヶ月)繁殖法によって、慢性PDラットモデルを開発した。アポモルフィン誘導性回転試験を毎月行って、実験を通じて、ラットのPD状態を確認した。群I(n=6)には、tNSCを投与し、一方、群IIは対照であった(n=6)。3週ごとに、アポモルフィン誘導性回転試験、無動症のためのバー試験、硬直のためのステッピング試験、ならびに姿勢不均衡および歩行障害のための足跡分析を含む、行動評価を実行した。
【0269】
[00312]群Iにおいて、急性PDラットにおける先の研究と同様に移植3週〜12週で、アポモルフィン誘導性対側性回転の有意な改善が達成された(
図6A)。バー試験によって、3週で、罹患前肢の把握時間は有意に短くなり、そして12週で改善し続けることが示された(
図6B)。ステップ長(
図6C)、ストライド長(
図6D)、歩行速度(
図6E)、および支持基底面(
図6F)によるすべての評価によって、移植の3週から12週後に有意な改善が明らかになった。これらの結果によって、tNSCの移植は、ドーパミン作動性黒質線条体経路を再生し、そして慢性PDラットにおいて行動欠陥を機能的に改善することが可能であることが示された。
【0270】
実施例32:押すおよび引く機構
[00313]Gタンパク質共役型受容体(GPCR)は、内部および外部環境の間を連絡し、そして細胞膜でヘテロ三量体Gタンパク質と共役する。しかし、活性化されたGPCRがどのようにこのプロセスを開始するかを説明する機構はより明らかでない。最近の報告によって、リガンドの導入に際して、Gα
13およびGα
q/11サブユニットの両方が、AhR相互作用タンパク質と相互作用し、ここでGα
13が細胞質ゾルAhRの脱安定化、転位置およびユビキチン化を導くことが示されてきている。非ゲノムAhR経路におけるGタンパク質シグナル伝達の役割を調べた。BBPは、外因性リガンドとして選択され、そしてCOX−2は活性化ターゲットとして選択されており、これはCOX−2が、肝癌細胞を含む多様なヒト細胞において、炎症、代謝および発癌を引き起こすためである。
【0271】
[00314]免疫蛍光研究は、細胞における分子変化のスナップショットを捕捉する能力を通じて、シグナル伝達の動的研究に重要であると見なされている。LT1トランスフェクション試薬(Mirus Bio LLC、ウィスコンシン州)を用いることによって、ヒト肝臓Huh−7癌細胞をpGFP−C1−AhRでプレトランスフェクションして、そして全反射照明蛍光顕微鏡観察を用いて、形質膜直下の細胞質領域における分子事象を選択的に観察した。BBPを導入した際、GFPタグ化AhRの迅速だが一過性の補充および転位置が細胞内膜領域で生じ、迅速な上昇および115秒でのピーク、その後、数分間に渡って生じるAhRの漸次減少が示された(
図14a)。細胞内膜でのmemAhRのこの迅速な動的移動は、緩やかにつながれたシグナル伝達の知見を連想させる。AhRは、生体内分解酵素の制御を通じて、適応型の機能を提供し、そして細胞内での局在を変化させ、それ自体の活性化を誘発することが見出されている。
【0272】
[00315]次に、BBPおよびAhRの間の関連を、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)によって調べた。BBPは、5分間で有意にmAhR発現を誘導し、15分でピークとなり、そして次第にわずかに高い恒常的安定状態に戻った(
図14b)。興味深いことに、ウェスタンブロット分析は、AhR産生において、15分でBBP誘導性上昇を示し、30分でわずかに産生が減少し、そして1時間で再上昇することを示した(
図14c)。これらの2つのアッセイで見られる時点でのAhR発現の異なるパターンは、細胞内mRNA活性化および恒常的合成間の相違によって説明可能であり、「mRNA輸送における細胞骨格」の概念を裏付ける。したがって、Huh−7細胞が、外因性刺激に反応して局所タンパク質翻訳に必要なmRNAの構造機構を含有し
21、そしてこれがその後、memAhRを呼ぶ可能性が高い。より低いmRNAレベルはおそらく、細胞の示差安定性の維持における恒常的AhR活性に相当する。リガンド活性化に際して、ヘテロ三量体Gタンパク質は、Gβγ二量体およびGαサブユニットに解離する可能性もあり、これには、各々異なる機能を行う、G
S、G
i、G
q/11およびG
12/13が含まれる。BBPは、Gα
q/11およびGβ産生の両方を30分で誘導した(
図14d)。Gα
q/11の上昇は、memAhRおよびGα
q/11の間の直接相互作用のためであった(
図14e)。細胞においてsiRNAを用いたAhRのノックアウトによって、これらの結果をさらに確認した(
図14f)。明らかに、これらのデータは、BBP刺激によって、GPCRが興奮し、そしてヘテロ三量体GαβγをGαおよびGβγサブユニットに解離し、Gα
q/11がその上流アクチベーターmemAhRと相互作用することを可能にした。AhRはGα
13およびGα
q/11活性と関連づけられており、そして肝細胞腫細胞において、AhR活性は細胞運命プロセスを攪乱可能であるため、それによって、AhRの持続発現は、腫瘍細胞増殖を促進しうる。実験は、Gα
q/11シグナル伝達に関与する分子事象に対して向けられた。
【0273】
[00316]1つの態様において、AhR活性調節は、細胞増殖を阻害するかまたは減少させることも可能である。別の態様において、AhR活性調節は、細胞を殺すことも可能である。1つの態様において、調節は、細胞におけるAhRタンパク質活性の下方制御を含む。別の態様において、調節は、細胞におけるAhRタンパク質活性の阻害を含む。別の態様において、調節は、細胞におけるGタンパク質とAhRタンパク質の会合の阻害を含む。別の態様において、調節は、細胞におけるAhR遺伝子発現の下方制御を含む。1つの態様において、細胞は腫瘍細胞である。1つの態様において、腫瘍は、肺、乳房、結腸、脳、骨、肝臓、前立腺、胃、食道、皮膚または白血病腫瘍細胞である。1つの態様において、腫瘍は固形腫瘍である。別の態様において、腫瘍は液性腫瘍である。1つの態様において、AhR活性はAhRアゴニストで調節される。別の態様において、AhR活性はAhRアンタゴニストで調節される。別の態様において、AhR活性は、抗エストロゲン活性を有する化合物で調節される。別の態様において、AhR活性は、抗アンドロゲン活性を有する化合物で調節される。1つの態様において、腫瘍細胞は哺乳動物にある。別の態様において、腫瘍細胞はヒトにある。別の態様において、ヒトにおいて腫瘍を治療するための方法は、腫瘍において、AhRタンパク質の活性を阻害するかまたは減少させる化合物をヒトに投与することによって提供される。別の態様において、ヒトにおいて腫瘍を治療するための方法は、腫瘍においてAhRタンパク質の遺伝子発現を阻害するかまたは減少させる化合物をヒトに投与することによって提供される。
【0274】
[00317]共焦点免疫蛍光画像化顕微鏡観察のため、細胞をBBPで各5分間および15分間処理し、その後、AhRおよびGα
q/11の両方の免疫蛍光染色を行った。BBPの非存在下で、核におけるよりも細胞質において、AhRおよびGα
q/11両方のより少ない発現が観察された(
図15a)。BBPによって刺激された細胞において、5分で核および核周辺領域において、AhR発現の明らかな増加が見られ、その後、15分で、AhRの外へ向かう拡散が観察された(
図15b、最初のカラム)。これらの結果によって、恒常的AhR活性および細胞質ゾル転位置が示される。Gα
q/11の発現に関して、AhRのものと類似の方式で、5分で刺激されるようであった(
図15b、二番目のカラム)。しかし、Gα
q/11は、15分で細胞質ゾル区画から細胞膜に転位置し、発癌の観点に基づいて、細胞膜への正しい輸送を行うことが可能なGPCR−Gタンパク質複合体の成熟を支持するが、正確な機構は不明である。続いて、AhRのsiRNAノックアウトは、核AhRの発現を抑制したが、細胞質ゾルAhRを抑制せず、これはスクランブル化siRNAを用いたAhRのノックアウトによって確認された(
図15c)。しかし、BBPを添加した際、AhR発現は、5分で、核および核周辺領域で増加し、15分で、細胞質ゾルにおいてホメオスタシス状態に到達した(
図15d、最初のカラム)。特に、Gα
q/11は、AhR siRNAによって抑制され(
図15d、第二のカラム)、これはBBPを添加することによって、5分で部分的に回復し、そして15分で完全に回復して、細胞膜でのGα
q/11の見かけの集積を示した(
図15d、第二のカラム)。これらの結果によって、Gα
q/11がmemAhRの下流エフェクターであることが示された。AhRおよびGα
q/11両方の動的移動および恒常的活性によって、さらに、細胞における活性化、転位置および成熟を伴う補償効果が示唆された。
【0275】
[00318]空間時間動力学のため、二重免疫金透過型電子顕微鏡(IEM)を用いて、形質膜でのmemAhRの相互作用を示した。細胞をBBPで20分間処理し、そして金大粒子タグ化Gα
q/11(サイズ20nm)および金小粒子タグ化AhR(サイズ6nm)の特異的一次抗体および二次抗体を用いた免疫細胞化学に供した。試料を直ちにLR White樹脂(Ted Pella、カリフォルニア州レディング)中に包埋し、そしてIEM用に調製した。リガンドの非存在下で、これらの別個の免疫金タグ化Gα
q/11実体は、単一、二重および三重クラスターを含めて細胞膜でディスプレイされ(
図16a)、GPCR−Gタンパク質複合体の異なる実体の存在が反映された。細胞をBBPで処理すると、大きい金タグ化Gα
q/11に接着した多数の小さい金タグ化AhRが、細胞膜でAhR−Gα
q/11複合体を形成することが観察された(
図16b)。古典的単量体および最近認められた二量体に加えて、ポリマー性GPCR−Gα
q/11の存在が細胞膜で観察された。これによって、単量体、二量体およびポリマーを含むGPCRの多様なコンホメーション変化が示唆される(
図16c)。AhR−Gα
q/11複合体は、主に、形質膜で見られた。細胞質ゾルにはいくつか見られたが、核区画では見られず、核区画では、豊富なAhRおよびGα
q/11が独立に存在した。こうしたAhR−Gα
q/11相互作用は、対照細胞ではまったく見られなかった。データによって、memAhRおよびGPCR−Gα
q/11複合体のクラスターは、リガンド活性化の前にはあらかじめカップリングされないことが明らかになった。GPCRの重合(ホモまたはヘテロマルチマーいずれか)は、相互作用する分子の機能、細胞内局在、および生物物理特性を調節するのに有効な様式であるため、意味がある。これはおそらく、アゴニストおよびアンタゴニストなどの外因性リガンド、または細胞表面での相乗結合のスクリーニングのための、より空間的なドッキング部位の生成を可能にする。あるいは、これは、生物学的影響の最も不可解な側面の1つ;具体的には、環境中の多環芳香族炭化水素化合物が、細胞における、毒性、代謝性および発癌性反応とどのように関連するかに関する手掛かりを提供する。
【0276】
[00319]Gタンパク質シグナル伝達の生化学的プロセスを研究するため、先に記載されるように、BBPによって活性化された際、memAhRはGα
q/11と相互作用可能であることを検証した。続いて、ホスファチジルイノシトール(PIP2)レベルの減少を観察し、PIP2の2つの二次メッセンジャー:ジアシルグリセロール(DAG)およびIP3への切断が生じるのを観察した(
図17a、第一のパネル)。IP3は、小胞体で、受容体IP3Rを通じて、細胞内カルシウムの放出を誘導することが知られる(
図17a、第二のパネル)。Gタンパク質活性化には、しばしば、カルシウムイオンの流入が付随するため、リアルタイム生存細胞免疫蛍光画像化顕微鏡観察によって、BBP誘発細胞内fluo−4タグ化Ca
2+レベルの起源を調べた(
図17b、中央上部)。細胞をカルシウム不含培地中で培養し、そして細胞内カルシウムの放出を見出し(
図17b、中央下部)、これは、内部カルシウム貯蔵からの放出を示した。この結果はさらに、IP3Rブロッカー2−APBを添加することによって確認され、該ブロッカーは、細胞内カルシウムレベルを用量依存的に阻害することが見出された(
図17b、右カラム)。しかし、異常なカルシウム放出は、炎症反応
4および腫瘍発生を誘導しうる。したがって、BBPは、15分でCOX−2の産生を誘導することが観察され、これは2−APBを添加することによってブロック可能であり(
図17c)、細胞内カルシウムの増加とCOX−2の活性化が関連づけられた。さらに、BBPは、細胞外シグナルに制御されるプロテインキナーゼERKのリン酸化およびCOX−2の活性化を誘導し(
図17d)、これは、MAPK経路の強力でそして選択的非競合阻害剤である化学薬品PD98059によってブロックされ(
図17e)、ERKがCOX−2の上流活性化因子であることが示された。この目的を達成するため、BBPは、分子プロセスにおいて、memAhRが活性化するGα
q/11シグナル伝達を通じてCOX−2の活性化を誘導することが示された。BBPが、AhR核転位置因子タンパク質をコードする遺伝子であるARNT発現を有意に阻害するため、これは、非ゲノムAhR経路の存在を示す(
図17f)。この阻害性効果は、先に記載されるように、同時活性化されたGα
13の作用として解釈可能である。
【0277】
[00320]AhRは、外部シグナルに反応したシグナル伝達分子である可能性があり、GPCR−Gタンパク質シグナル伝達の興奮を生じることが立証される。ヒト肝臓Huh−7癌細胞において、シグナルが、近くにある(活性化因子としての)細胞質ゾルmemAhRを細胞膜に「引き」、解離した(エフェクターとしての)Gα
q/11に結合し、そしてこれを活性化して、そして機能のため、下流分子カスケードを「押す」と提唱される。この「引くおよび押す」モデルは、
図17gに例示するように、GPCR−Gタンパク質シグナル伝達の制御が、どのように開始され、そしてAhR仲介シグナル伝達が古典的AhR経路を越えてどのように調節されているかを理解するために非常に寄与している。この発見はさらに、GPCRおよびGタンパク質の機械的制御に重点を置いた療法剤の開発にも影響を及ぼしうる。
【0278】
[00321]細胞培養および化学薬品。Huh−7細胞を台湾国家衛生研究院から得て、そして10%ウシ胎児血清(Gibco)、1%ペニシリン(100U/mL)、ストレプトマイシン(10μg)、アンホテリシン−B(0.25mg)を補充したDMEM(Gibco)中で培養し、そして37℃、5%CO
2中で増殖させた。培地には、CaCl
2(2mM)、D−グルコース(5.5mM)、NaCl(130mM)、KCl(5.4mM)、HEPES(20mM、pH7.4)およびMgSO
4(1mM)を含有するBSSが含まれた。カルシウム不含培地は、D−グルコース(5.5mM)、NaCl(130mM)、KCl(5.4mM)、HEPES(20mM、pH7.4)およびMgSO
4(3mM)を含有した。化学薬品には、Fluo−4(Invitrogen)、フタル酸ベンジルブチル(BBP、Sigma)、2−アミノエトキシジフェニルボレート(2−APB、Sigma)、ERK1/2阻害剤: PD98059(Calbiochem)、6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI、Sigma)が含まれた。抗体には、AhR(Santa Cruz)、Cox−2(Minipore)、Gα
q/11(sc−392)およびGβ(sc−378、Santa Cruz)、β−アクチン(Sigma)、p44/42 MAPK(Erk1/2)(Cell Signaling)、ホスホ−p44/42 MAPK(Cell Signaling)、西洋ワサビ(horseradish)ペルオキシダーゼ(HRP)標識抗マウスおよび抗ウサギ二次抗体(Santa Cruz)、色素Light 488コンジュゲート化二次抗体(緑色)および色素Light 549コンジュゲート化二次抗体(赤色)(Rockland)が含まれた。
【0279】
[00322]初期卵管子宮外妊娠の女性において着床前の胚から得られたhTS細胞が、先に記載された。接着性hTS細胞を、10μg/ml bFGF(JRH、Biosciences、カリフォルニア州サンノゼ)、10%FBS、および1%ペニシリン−ストレプトマイシンを含有する馴化α−MEM中、37℃5%CO
2中で培養した。細胞を実験に応じて多様な時間間隔でRA(10μM)によって処理した。
【0280】
[00323]RNA単離およびRT−PCR。Huh−7細胞(3x10
5)を6ウェルディッシュ内に植え付け、そして24時間インキュベーションした。血清不含培地中で一晩培養した細胞をBBP(1μM)で多様な時間間隔で処理した。BBP刺激後、細胞をPBSで2回洗浄した。TRIzol法(Invitrogen)によって総RNAを抽出した。RNA(2μg)を用いて、逆転写系(Promega)によって、cDNAを合成した。特異的プライマーによって、cDNAを増幅した。プライマー対は、以下のように設計された:AhR、順方向5’−TAC TCT GCC GCC CAA ACT GG−3’、逆方向5’−GCT CTG CAA CCT CCG ATT CC−3’; β−アクチン、順方向5’−CTC GCT GTC CAC CTT CCA−3’、逆方向5’−GCT GTC ACC TTC ACC GTTC−3’。PCR条件を、95℃5分間および95℃30秒間、54℃30秒間、72℃1分間、その後、72℃10分間(36周期)に設定した。産物を2%アガロースゲルによって分離し、そしてエチジウムブロミドによって視覚化した。
【0281】
[00324]ウェスタンブロッティング分析。Huh−7細胞(1x10
6)を10cmディッシュに植え付け、そして一晩培養した。培地を血清不含培地に交換してもう一晩培養した。細胞を多様な時間間隔でBBP(1μΜ)で処理した。他の研究のため、細胞を化学薬品PD98059(20μΜ)または2−APB(30μΜ)で1時間、前処理し、その後、BBPで処理した。次いで、細胞を氷冷PBSで2回洗浄し、そしてRIPA溶解緩衝液(Minipore)で溶解した。BCAタンパク質アッセイキット(Thermo)でタンパク質濃度を測定した。等量のタンパク質(30μgタンパク質)を8% SDS−PAGEによって分離し、PVDF膜上にトランスファーし、そして5%脱脂粉乳で室温で1時間ブロッキングした。ブロッキング後、AhR(1:1000)、Cox−2(1:1000)、Gα
q/11(1:100)、Gβ(1:100)、β−アクチン(1:5000)、p44/42 MAPキナーゼ(1:1000)またはホスホ−p44/42 MAPキナーゼ(1:1000)を含む一次抗体と膜を4℃で一晩インキュベーションした。細胞をPBSTで3回洗浄し、そして次いでHRPコンジュゲート化二次抗体と室温で1時間インキュベーションした。洗浄後、増進化学発光キット(ECL)(Amersham)を用いて、ブロットを視覚化した。
【0282】
[00325]ChIP。ChIPキット(Upstate Biotechnology、ニューヨーク州レークプラシッド)を用いることによって、細胞を一晩、血清枯渇させ、そしてRA(10μΜ)で4時間処理した。アッセイのため、簡潔には、溶解物を氷上で超音波処理し、DNAを剪断した。架橋クロマチンをプロテインGアガロースに加えて抗RNAポリメラーゼII(陽性対照)、または正常マウスIgG(陰性対照)または示す一次抗体とインキュベーションした。5M NaCl、RNアーゼA、EDTA、Tris、およびプロテイナーゼKで連続処理した後、スピンフィルターによってDNA混合物を得て、そしてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に供した。
【0283】
[00326]免疫沈降。Huh−7細胞を一晩、血清枯渇させ、そしてBBP(1μΜ)で30分間処理した。プロテインG−アガロース(Minipore)で30分間プレクリーニングした後、特異的抗体Gα
q/11またはウサギIgGを培養に添加し、これを再び一晩インキュベーションした。プロテインG−アガロースと2時間インキュベーションした後、ビーズをRIPA溶解緩衝液で3回洗浄し、試料緩衝液中で煮沸し、8% SDS−PAGEによって分離し、そしてAhRイムノブロッティング分析に供した。
【0284】
[00327]細胞を一晩、血清枯渇させ、そしてRA(10μM)で4時間処理した。細胞をRIPA溶解緩衝液(Millipore)によって溶解した。溶解物およびプロテインAまたはプロテインGアガロース(Minipore)の混合物を揺動しながら4℃で2時間インキュベーションした。特異的一次抗体またはウサギIgG(対照)を添加し、そして一晩インキュベーションした。次いで、プロテインAまたはプロテインGいずれかを含むビーズ上に免疫タンパク質複合体を捕捉した。抗体−結合タンパク質を一晩揺動することによって沈降させた。免疫沈降タンパク質をRIPA溶解緩衝液で洗浄した後、SDS−PAGEおよび相互作用を測定する別の特異的抗体でイムノブロッティングして分析した。
【0285】
[00328]免疫蛍光。免疫細胞化学のため、細胞をPBS中の4%パラホルムアルデヒドで固定した後、PBS中の2%FBS/0.4%TritonX−100で透過処理した(15分)。5%FBSブロッキング溶液(2時間)、そして3回リンスし、細胞をPBS中の特異的一次抗体と4℃で一晩インキュベーションした。適切なFITCまたはPEまたはテキサスレッド・コンジュゲート化二次抗体を1時間添加し、その後、核のためDAPI染色(5分間)を行って、そして顕微鏡観察に供した。
【0286】
[00329]全反射照明蛍光(TIRF)顕微鏡観察。LT1トランスフェクション試薬(Mirus Bio LLC、ウィスコンシン州マディソン)を24時間用いることによって、pGFP−C1−AhR(H.Liより寄贈)でHuh−7細胞をプレトランスフェクションした。TIRF顕微鏡観察のため、細胞を血清不含培地中、カバースリップ上で一晩培養し、その後、BBP(1μM、Sigma)によって刺激した。Axio Vision Rel. 4.8ソフトウェアを伴うZeiss TIRF顕微鏡を用いることによって、細胞膜でGFPタグ化AhRの動的活性を観察し、そして分析した。
【0287】
[00330]リアルタイム生存細胞画像化顕微鏡観察。細胞を、BSS緩衝液中でCa
2+特異的色素であるFluo−4(1μM)で、37℃で20分間、前処理した後、BBP(1μM)で処理した。リアルタイム細胞画像化顕微鏡観察によって相対細胞内カルシウム強度の測定を行い、そしてCell−Rソフトウェア系(Olympus)によって分析した。カルシウム不含培地または多様な濃度で用いるIP3R阻害剤2−APBを用いて、細胞培養中の細胞内カルシウム反応を試験した。
【0288】
[00331]共焦点免疫蛍光画像化顕微鏡観察。AhR siRNAによるトランスフェクションを伴うまたは伴わない細胞をBBP(1μM)で各々、5分間および15分間処理した。AhRおよびGα
q/11に関する一次抗体および二次抗体で処理した後、細胞を共焦点免疫蛍光顕微鏡観察に供して、細胞区画における動的運動を分析した。
【0289】
[00332]二重免疫金透過型電子顕微鏡観察。マイクロ波固定およびプロセシングによって得たプラスチック包埋細胞の超薄切片
24を5%メタ過ヨウ素酸ナトリウムで前処理した(10分間)。グリッドを、AhRまたはGα
q/11に対するIgG抗体(C−19、sc−392、Santa Cruz)のアリコットとインキュベーションし、その後、それぞれ、二次抗マウスIgG金粒子(サイズ6nm)または抗ウサギIgG金粒子(サイズ20nm)でプロービングした。洗浄後、1%オボアルブミンを含むPBSの滴上にグリッドを置く(15分間)ことによって、切片をブロッキングした。次いで、切片を酢酸ウラニルおよびクエン酸鉛で染色し、そして透過型電子顕微鏡(Hitachi H−700モデル、日本)上で性質決定した。
【0290】
[00333]本明細書に言及するすべての刊行物、特許、および特許出願は、各個々の刊行物、特許、または特許出願が具体的に、そして個々に、援用すると示されているのと同じ度合いまで、本明細書に援用される。Olanow, C. W. The scientific basis for the current treatment of Parkinson’s disease. An. Rev. Med. 55, 41−60(2004)。
【0291】
【化2-1】
【0292】
【化2-2】
【0293】
【化2-3】
【0294】
【化2-4】
【0295】
【化2-5】
【0296】
[00383]いくつかの態様を本明細書に示し、そして記載してきているが、当業者には、こうした態様が例としてのみ提供されることが明らかであろう。本発明から逸脱することなく、多くの変動、変化、および置換が当業者には思い浮かぶであろう。本明細書記載の発明の態様に対する多様な代替物を、本発明を実施する際に使用可能であることを理解すべきである。以下の請求項が本発明の範囲を定義し、そしてこれらの請求項およびその同等物の範囲内の方法および構造が本明細書に含まれると意図される。