特許第6163107号(P6163107)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6163107
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】ブレーキピストンとピストンノーズ
(51)【国際特許分類】
   F16D 65/18 20060101AFI20170703BHJP
   F16D 125/04 20120101ALN20170703BHJP
   F16D 125/06 20120101ALN20170703BHJP
【FI】
   F16D65/18
   F16D125:04
   F16D125:06 A
【請求項の数】25
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-549554(P2013-549554)
(86)(22)【出願日】2012年1月13日
(65)【公表番号】特表2014-502715(P2014-502715A)
(43)【公表日】2014年2月3日
(86)【国際出願番号】US2012021164
(87)【国際公開番号】WO2012097203
(87)【国際公開日】20120719
【審査請求日】2015年1月8日
(31)【優先権主張番号】61/433,194
(32)【優先日】2011年1月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513178023
【氏名又は名称】シーダブリュディー, リミテッド ライアビリティ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】CWD, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(72)【発明者】
【氏名】ルイス, ステファン ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ボタ, サンダー
【審査官】 山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第07367433(US,B2)
【文献】 特表2003−511636(JP,A)
【文献】 特開2006−029442(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 65/18
F16D 125/04
F16D 125/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストン本体と、
前記ピストン本体の外側の端を超えてのびている頂部表面とを備え、
前記頂部表面は、前記頂部表面の残りに対してわずかに隆起している小さな部分を有し、使用時に前記隆起している小さな部分のみがブレーキパッドの背面プレートと接触し、
前記わずかに隆起している小さな部分は角度方向に間隔を開けて配置された隆起している領域のリングで構成されることを特徴とする、ブレーキピストン。
【請求項2】
前記頂部表面は、前記ピストン本体の円周の周りの各位置において、前記ピストン本体の外側の端を超えて少なくとも1ミリメートルの距離をのびていることを特徴とする、請求項1に記載のブレーキピストン。
【請求項3】
前記頂部表面は、前記ピストン本体の円周の周りの各位置において、前記ピストン本体の外側の端を超えて少なくとも2ミリメートルの距離をのびていることを特徴とする、請求項1に記載のブレーキピストン。
【請求項4】
前記頂部表面は、熱放射の遮蔽を提供することを特徴とする、請求項1に記載のブレーキピストン。
【請求項5】
前記リングのなかの隆起している領域は、均一な寸法を有し且つ角度方向に均一に間隔を開けて配置されていることを特徴とする、請求項1に記載のブレーキピストン。
【請求項6】
前記リングの外側の端は、半径方向に、前記ピストン本体の外側の端に一致することを特徴とする、請求項1に記載のブレーキピストン。
【請求項7】
前記均一な寸法を有し且つ角度方向に均一に間隔を開けて配置された隆起している領域は、均一な寸法を有し且つ角度方向に均一に間隔を開けて配置されたギャップにより隔てられていることを特徴とする、請求項5に記載のブレーキピストン。
【請求項8】
前記均一な寸法を有し且つ角度方向に均一に間隔を開けて配置された隆起している領域のみが、前記頂部表面の前記残りより高いことを特徴とする、請求項5に記載のブレーキピストン。
【請求項9】
前記頂部表面は、前記ピストン本体の頂部に取り付けられた分離するピストンノーズ構成部品によって提供されることを特徴とする、請求項1に記載のブレーキピストン。
【請求項10】
前記ピストン本体はアルミニウムで構成され、前記ピストンノーズ構成部品は
チタンで構成されることを特徴とする、請求項9に記載のブレーキピストン。
【請求項11】
前記ピストンノーズ構成部品は、スナップリングを使用することにより前記ピストン本体に取り付けられることを特徴とする、請求項9に記載のブレーキピストン。
【請求項12】
前記ピストンノーズ構成部品はチタンで構成されていることを特徴とする、請求項9に記載のブレーキピストン。
【請求項13】
前記隆起している小さな部分は、ギャップによって隔てられた複数の隆起している領域を含むことを特徴とする、請求項1に記載のブレーキピストン。
【請求項14】
前記隆起している領域は、前記頂部表面の前記残りからおおよそ1ミリメートル高いことを特徴とする、請求項13に記載のブレーキピストン。
【請求項15】
前記隆起している領域は、前記頂部表面の前記残りから少なくとも2ミリメートル高いことを特徴とする、請求項13に記載のブレーキピストン。
【請求項16】
前記頂部表面の端は、二つの向かい合う側部に沿っては直線であり、それ以外は丸まっていることを特徴とする、請求項1に記載のブレーキピストン。
【請求項17】
前記ピストン本体を超えて延びる前記頂部表面の部分は、おおよそ0.5〜1.0ミリメートルの厚さであることを特徴とする、請求項1に記載のブレーキピストン。
【請求項18】
前記ピストン本体に取り付けられたダストブートをさらに備え、
前記頂部表面の幅は、前記ダストブートと少なくとも同じであることを特徴とする、請求項1に記載のブレーキピストン。
【請求項19】
受け入れ空洞を有するキャリパ本体と、
前記キャリパ本体の前記受け入れ空洞に挿入されるピストンと、を備えるディスクブレーキキャリパアセンブリであって、
前記ピストンは、
(a)ピストン本体と、
(b)前記ピストン本体の外側の端を超えてのびている頂部表面とを備え、
前記頂部表面は、前記頂部表面の残りに対してわずかに隆起している小さな部分を有し、使用時に前記隆起している小さな部分のみがブレーキパッドの背面プレートと接触し、及び、前記わずかに隆起している小さな部分は角度方向に間隔を開けて配置された隆起している領域のリングで構成される
ことを特徴とする、ディスクブレーキキャリパアセンブリ。
【請求項20】
ピストンの頂部側に取り付けるように構成された底部側と、
前記底部側の外側の端を超えて延び且つ頂部表面を含む、頂部側とを備え、
前記頂部表面は、前記頂部表面の残りに対してわずかに隆起している小さな部分を有し、
前記わずかに隆起している小さな部分は角度方向に間隔を開けて配置された隆起している領域のリングで構成される
ことを特徴とする、ピストンノーズ。
【請求項21】
前記ピストン本体は内側表面を有する中空コアを定め、且つ前記リングの内側の端は少なくともおおよそ前記ピストン本体の前記内側表面に対応することを特徴とする、請求項6に記載のブレーキピストン。
【請求項22】
前記ピストン本体は中空コアを定め、及び前記ブレーキピストンは前記中空コアの上に配置され、且つ前記頂部表面より低い位置において且つ前記頂部表面よりへこんで提供される二次的表面を、さらに備えることを特徴とする、請求項1に記載のブレーキピストン。
【請求項23】
前記頂部表面は、少なくとも1ミリメートル前記ピストン本体の外側の端を超えてのびており、従って、前記リングの外側の端を超えてのびていることを特徴とする、請求項21に記載のブレーキピストン。
【請求項24】
前記隆起している小さな部分は、前記頂部表面の残りよりも少なくとも1ミリメートル高いことを特徴とする請求項1に記載のブレーキピストン。
【請求項25】
前記リングの中の前記隆起している領域のみが、前記頂部表面の残りよりも高いことを特徴とする請求項1に記載のブレーキピストン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車用ディスクブレーキシステムで使用するための、ブレーキピストンとブレーキノーズに関する。
【背景技術】
【0002】
ディスクブレーキキャリパにおいては、液圧力を適用するピストンと摩擦産生物質を保持するパッドアセンブリの背面との間に、直接的な接触が存在する。摩擦産生材料は典型的に非常に良好な熱の導体であり、及び、背面プレート材料はしばしば高強度鋼でありそしてまた非常に熱伝導的である。ピストンはそしてキャリパ本体とピストン背面の空洞内の液圧フルード(hydraulic fluid)への伝導経路になる。液圧フルードは、それが動作可能な限界温度範囲を有するので、その範囲より高い温度を産生するであろう熱伝導から離されなければならない。
【0003】
ピストンは、鋼、アルミニウム、ステンレス鋼、チタンまたはフェノール類やセラミック等の人工的な合成物などの多くの材料から作ることができる。好適には、ピストンに使われる材料は、キャリパ本体に使われる材料と同じであるため、熱膨張に起因する寸法の変化はキャリパ本体と同様にピストンに影響を与え、特に重要な寸法はおおよそ一緒に変化するであろう。そうすることで、より狭い範囲におけるピストン、ピストンシール、ピストン溝とピストンボアのような主要な構成要素の間の関係もしくは公差(tolerances)を維持する。適切な公差のこのような維持はキャリパに性能と耐久性とを付加する。
【0004】
しかし、現在のベストプラクティスは、1つ以上の材料から高温環境において使用されるピストン(例えば、高性能ブレーキングシステム)を作ることであり、例えば、(アルミニウム製キャリパがまた使用される場合には)アルミニウムで作られたピストン本体はステンレス鋼、チタン若しくはセラミックのノーズを装着する。本開示は、とりわけ、ノーズの性能を向上させるようなノーズの外形に関する。
【0005】
熱伝導率の存在を制限することを企てる、従来のピストンノーズの設計が存在する。これらの従来の設計は、材料の選択(例えば、ステンレス鋼、チタンまたはセラミック)を介するか、又は、低減した断面積を有する構造を使用するかのうち少なくとも一方によって、伝導性熱伝導を低減する機能を含む。
【0006】
図1から図3に示す一つの従来の設計では、アルミニウム製ピストン本体12に取り付けたセラミック製ノーズ10を含む簡潔な設計を使用している。概して、この設計は、単純に熱伝導率を低減するために、材料(セラミック)の選択に依存している。図4から図6に示すように、他の従来の設計は、アルミニウム製ピストン本体22に取り付けたチタン製ノーズ20を使用している。しかし、ノーズ20に低熱伝導率材料(チタン)を使用することに加えて、この設計はまた、ピストンとブレーキパッドとの接触面積を低減するようにノーズ20を成形することによって、つまり接触表面としてただ外部リング24を使用すること及びリング24にホール25を開けることによって、熱伝導率を低減している。ピストンノーズ20の既存の実施形態では、リング24は、高さ5ミリメートル(mm)又は8mmであり、それぞれ、直径が3mmまたは5mmであるホール25を有している。
【0007】
最後に、別の従来の設計(不図示)において、熱伝導は、ピストンとブレーキパッドの背面の高強度鋼との間に、例えばステンレス鋼またはチタンなどのような、典型的には1mm厚の薄い低熱伝導率材料のシートを使用することによって、対処される。残念なことに、本発明者らは、この解決策の問題は、低熱伝導率材料のこの薄いシートは、高温とピストンノーズによって負荷される不均一な力のために、典型的には歪められる状態になることであることを発見した。それが発生すると、プレートはもはや平らではなく、代わって波状を呈する。また、本発明者らは、金属材料のこの薄い層は、圧縮性のばねの様な働きをするばねに似た特性を示すことと、このために、直接力がブレーキパッド上に作用される前に、より長い又は変化する距離がピストンによって移動されることを必要とすること、を発見した。ブレーキパッドの背面上に実現されるピストンの力のこの遅延は、ブレーキがかみ合うために必要とされる時間と、ブレーキペダルが移動しなければならない距離と、を増加させるため、好ましくない影響をブレーキシステムの性能に与える。
【発明の概要】
【0008】
本発明はとりわけこの問題に、広く、且つ、小さくわずかに隆起している部分を含む頂部表面を利用して対処する。
【0009】
本発明の1つの実施形態は、ピストン本体と、前記ピストン本体よりも広い頂部表面とを備え、前記頂部表面は、前記頂部表面の残りに対してわずかに隆起している小さな部分を有し、使用時に前記隆起している小さな部分のみがブレーキパッドの背面プレートと接触する、ブレーキピストンに向けられたものである。
【0010】
前述の組み合わせによって、ブレーキフルードとキャリパへと伝達される熱エネルギーの量を有意に低減することが可能である。
【0011】
もう一つの実施形態は、受け入れ空洞を有するキャリパ本体と、前記キャリパ本体の前記受け入れ空洞に挿入されるピストンと、を含むディスクブレーキキャリパアセンブリに向けられたものである。引き続いて、前記ピストンは、(a)ピストン本体と、(b)前記ピストン本体よりも広い頂部表面とを備え、前記頂部表面は、前記頂部表面の残りに対してわずかに隆起している小さな部分を有し、使用時に前記隆起している小さな部分のみがブレーキパッドの背面プレートと接触する。
【0012】
更なる実施形態は、ピストンの頂部側に取り付けるように構成された底部側と、前記底部側より実質的に広く且つ頂部表面を含む、頂部側とを有し、前記頂部表面は、前記頂部表面の残りに対してわずかに隆起している小さな部分を有する、ピストンノーズに向けられる。
【0013】
前述の概要は、単に発明の一定の態様についての簡潔な記載を提供することを意図したものである。発明のさらなる完結した理解は、請求項及び、添付の図面と関連した好ましい実施形態の後述する詳細な説明の参照によって得られることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
以下の開示では、発明は添付図面を参照しながら記載される。しかし、図面は、単に特定の代表的か、例示的かのうち少なくとも一方の本発明の実施形態と特長が記載され、いかなる方法でも本発明の範囲を限定するものではないことを理解すべきである。以下は、添付図面のそれぞれの簡潔な説明である。
【0015】
図1】第1の従来のピストンの斜視図である。
図2】第1の従来のピストンの破断図である。
図3】第1の従来のピストンの断面図である。
図4】第2の従来のピストンの斜視図である。
図5】第2の従来のピストンの破断図である。
図6】第2の従来のピストンの断面図である。
図7】本発明の第1の代表的な実施形態に係るピストンの断面図である。
図8】本発明の第1の代表的な実施形態に係るキャリパアセンブリ及びブレーキパッドの分解断面図である。
図9】本発明の第2の代表的な実施形態に係るピストンの斜視図である。
図10】第2の代表的な実施形態に係るピストンの破断図である。
図11】第2の代表的な実施形態に係るピストンの断面図である。
図12】本発明の第2の代表的な実施形態によるキャリパアセンブリ及びブレーキパッドの分解破断図である。
図13】本発明の第2の代表的な実施形態によるキャリパアセンブリ及びブレーキパッドの分解断面図である。
図14】本発明の第3の代表的な実施形態による単一のキャリパアセンブリに使用される3つの隣接するピストンの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の好ましい実施形態に係るピストンノーズは、従来のノーズに比べて広い頂部の部分を含む。ノーズ100を取り付けたピストン本体80の基本的な構成(共に全体ピストン105を形成する)は図7に示されている。好ましい実施形態において、ピストン本体80はアルミニウムで作られ、そして、ノーズ100はチタンで作られている(熱伝導を低減する目的のために)。しかし、例えばピストンノーズ100には低熱伝導性を有する他の材料のような、他の材料を代替に用いることができる。
【0017】
図に示すように、ノーズ100の頂部の部分110はピストン本体80よりも広く、熱放射の遮蔽の追加という結果につながる。好ましい実施形態では、頂部の部分110は、遮蔽の最大量を提供するために、他の実用的な配慮の上、可能な限りできるだけ広い。ある実施形態では、頂部の部分110は少なくとも1−2mm(ミリメートル)の距離をピストン本体80の外側の端を越えて延びており、かつ、いくつかの実施形態では、頂部の部分110は少なくとも4−6mm(ミリメートル)の距離をピストン本体80の外側の端を越えて延びている。他の実施形態では、頂部の部分110は、少なくとも1−2mm(ミリメートル)の平均値か、または、少なくとも4−6mm(ミリメートル)の平均値、ピストン本体80の外側の端を越えて延びている。
【0018】
同時に、好ましい実施形態において、ノーズ100の頂部の表面114の比較的小さい部分113は頂部の表面114の残り115に対してわずかに隆起しており、そのため隆起部分113のみがブレーキパッドの背面プレートに接触している。この構造の主な利点は、ブレーキパッドの背面プレートに接触することが要求される表面の面積をできるだけ小さくする(それによってピストンへの直接的な熱伝導をできるだけ少なくする)一方で、熱遮蔽(頂部の表面より広い114)が提供されることである。付加的な利点は、ブレーキパッドと頂部の表面の114の低い部分115の間に生じたエアポケットと空気循環領域がさらに熱伝導率を減少させる、ということである。より好ましくは、以下でより詳細に説明するように、隆起部分113は均一な寸法を有し均一な角度方向の間隔を開けて配置されたギャップにより隔てられた、均一な寸法を有し均一な角度方向の間隔を開けて配置された高くされた(または隆起した)領域のリングで構成される。
【0019】
本発明の好ましい実施形態では、所望の形状を得るように例えば旋盤とクロスカッターとのうち少なくとも一方を用いてチタンなどの円板を切断することによって、分離した構成品としてノーズ100は製造される。より好ましくは、隆起部分113を残すように、金属(例えば、低い部分115の上側)を切除することによって形成される。完了したら、ノーズ100は、図8に示す方法により、完全なブレーキキャリパアセンブリを製造するために使用することができる。特に、ノーズ100はピストン本体80に取り付けられ、そして、(液圧ピストン空洞135の中でまた、高圧シール138を対応するサーキュラーグルーブ139に取り付け、そして、任意的なダストブートを任意的なダストブートグルーブ140を取り付けた後の)キャリパ本体137の中の受け入れ空洞135の中に挿入される。最後に、ピストンノーズ100は、ブレーキパッド143の背面プレート142に接するように配置される。動作において、空洞135の中の圧力をかけられた液圧ブレーキフルード(不図示のラインによって液体貯蔵器に接続されている)はブレーキパッド143にピストン105に向かって力をかけ、引き続いて、ブレーキパッドはブレーキディスクを押し(不図示)、そして、摩擦によってその回転運動が減速する(このことは、前述の熱蓄積を産生する)。
【0020】
図9−11は、本発明のより具体的な実施形態に係るピストン本体180と取り付けられたノーズ200を示す。図9図10はより明確に、前述したギャップ215によって隔てられた隆起領域213のリングを示している。本実施形態において、8つのこのようなギャップ215に隔てられた8つのこのような隆起領域213が存在する。しかし、他の数を代わりに用いてもよい。図に示すように、このリングの外側の端は好適には少なくともおおよそピストン本体180の外側の端に対応し、リングの内側の形は少なくともおおよそピストン本体180の内側表面に対応する(これは中空コア224を定義する)。より具体的には、この特定の実施形態では隆起領域213だけがノーズ200の頂部の表面214の残りより高く、それによってこのような頂部の表面214の残りの上の空気層を生じさせ、かつ、このような空気の動きを促進させる。現在の実施形態では、隆起領域213は頂部の表面214の残りの部分よりも1mm程度高い。さらにより大きな高さの距離は、熱伝導をさらに低減することができるが、しかしそのようにすることはまた、得られるピストンの全長を増大させ、そして、高性能な車両では空間は貴重であるから、一般的にキャリパアセンブリの全長はできるだけ小さく維持することが望ましい。好適にはこれらの考慮事項に従属して、頂部の表面214の残り(または頂部の表面214の周囲の部分)より高い、例えば、0.5〜7.0mm以内のいずれの高さ、または、少なくとも1−6mmのいずれかの高さである、望ましい値であることができる。また、図に示すように、二次的表面223はまた、(例えば、コア224の上に)頂部の表面214より(そこからへこんで)低い位置に提供されることができ、それによって、その領域内においてさらに大きい熱隔離を提供する。
【0021】
また本実施形態において、ノーズ200はスナップリング217を使用することにより、確実にピストン本体180に取り付けられ、且つ、ピストン本体180はダストブート222を据え付けるための溝218を含む。別の実施形態では、ノーズ200は、様々な他の方法のいずれかでピストン本体180に取り付けることができる。同様に、別の実施形態では、溝218と対応するダストブート222(図12及び図13に示される)は、省略されることができる。
【0022】
本明細書で説明する他の実施形態と同様に、ピストン本体180は中空コアを有する。ピストンノーズ200はピストン本体180の頂部(又は遠位)の端の上から嵌合するための幾分浅い張出部226(本実施形態では円形)と、ピストン本体180のコア224の中にやや延長する中央部分227とを含む。しかし、別の実施形態においては、他の手段がピストン本体80にピストンノーズ200を取り付けるために用いられる。例えば、張出部226は代わりに、中空コア224の内壁内に収まるように、より小さい直径を有するように作製されることができる。
【0023】
図12図13は、分解された様式において、ブレーキパッド230と前述のキャリパアセンブリの構成要素を示している。これらの図面から分かるように、ノーズ200のより広い頂部部分220は、好ましくはダストブート222と少なくとも同じ幅であり、それによってダストブート222を熱放射から保護する。より好ましくは、このマージンは実質的に可能な限り大きく、例えば円周の周りの各位置で少なくとも1−2mmであるか、または円周の周りで平均が少なくとも1−2mmである。図12図13においては、キャリパの構成要素235と237−240は、構成要素135と137−140(前述)にそれぞれ対応する。
【0024】
前述した実施形態において、ノーズの頂部の部分(例えば、110または220)は形状が円形である。しかしながら、別の実施形態では他の形状を使用されてもよく、時として望ましい。例えば、多くの従来の高性能なキャリパは、複数のピストンを含む。この状況では、好適に前述されたノーズの形状は、例えば図14に示すように、集合的遮蔽効果を最大化するように変更される。図14に示すように、ノーズ300の頂部の部分280は、ノーズが互いに隣接している側面282に沿って直線(または、ほぼ直線)であるが、それ以外は円形(または少なくとも丸まっている)である。隣接するノーズ300の間の(側面282に沿う)隙間は、好ましくは約0.05〜0.1mmの幅である。しかし、外側端部284をまた丸くすることは可能であるが、それらをまた直線につくることは単一のノーズ形状の製造を可能にする。
【0025】
さらに、単一の複合構成要素を複数のピストンに使用する(例えば、図14に示されているノーズ300の機能を端部282に沿って効果的に接合する)ために製造することが可能である。このような実施形態の一例は、複数のリング型の接触要素をチタン製シートに(例えば溶接によって)取り付けることであり、ここで、構成要素がピストンとブレーキパッド背面プレートの間に備え付けられるとき(例えば、そしてブレーキパッドと同様の方法で所定の位置に保持されるとき)に、リング型の接触要素はピストンと整列する(例えば、これらの中心軸が整列する)。この方法では、前述した実施形態と同様の、チタン熱遮蔽(シールド)のオフセットが達成される。このような実施形態は、その広義の「ノーズ」(すなわち、ノーズは本実施形態においてピストンに固定して取り付けられていないが)と考えることができる。
【0026】
好適な実施形態において、ノーズの上部110または220の公称厚さは、約0.5〜1.0mmで、且つ、前述のように、隆起した区域113または213は好適にはそれより付加的に1mm上に延びている。結果として、好適な実施形態において、ピストンノーズによって提供される全ての付加的な長さは、約2mm、又はそれ以下とすることができる。これは、従来のノーズ(図4−6に示されるピストンノーズ20などのように)によって提供される付加的な長さよりも実質的に短く、これは前述のように5mmまたは8mmとすることができる。同時に、本発明者らは、本発明に係るピストンノーズは、一般的に有意にブレーキパッドからピストンに伝達される熱の量を減らすことができることを発見した。最後に、本発明に係るピストンノーズは、典型的には、従来のピストンノーズに比較して製造することがたいへん速くかつ簡単である。例えば、図4−6に示す従来のノーズ20とは異なり、本発明に係るピストンノーズは穴を開けることを必要とせず、そして、有意により少ない旋盤加工しか必要としない。
【0027】
なお、本発明に係るブレーキピストンは、自動車のブレーキシステムに利用することができ、かつ高性能なブレーキシステムにおいて特に有用であることに留意されたい。付け加えて、ヘリコプターのローターを減速させるなどの、他の高性能な用途に使用することができる。
【0028】
その他の考慮事項。
一方では本件若しくは添付図面において明示的に記述された開示と、他方では本件において参照により組み込まれたマテリアルとの間において、いかなる不一致若しくは矛盾が生じた場合において、本開示は優先する。いかなる出願の開示若しくは本件において組み込まれた特許発明の間において、いかなる不一致若しくは矛盾が生じた場合において、より最近提出された開示が優先する。
【0029】
本発明の幾つかの異なる実施形態が、それぞれの実施形態が特定の特徴を含むように記載されながら、前述されている。しかしながら、任意の単一の実施形態の説明に関連して説明した特徴は、その実施形態に限定されず、当業者にとって理解されるように任意のその他の実施形態において様々な組み合わせに含まれるか、配置されるかのうち、少なくとも1つであってよいことが意図される。
【0030】
同様に、上記の検討では、機能性は時として、特定のモジュールまたは構成要素に起因している。しかし、機能性は一般的に、異なるモジュール若しくは構成要素において所望に応じて再分配されてもよく、いくつかの場合においては、特定の構成要素若しくはモジュールの必要性を完全に不要にすることと、新しい構成要素若しくはモジュールの追加を要求することとのうちの少なくとも1つであってもよい。機能性の正確な分配は、好ましくは、当業者によって理解されるように、本発明の特定の実施形態を参照しながら、公知の技術上のトレードオフに応じて行われる。
【0031】
また、本発明を、その例示的な実施形態と添付の図面に対する言及と共に詳細に説明してきたが、当業者においては、本発明の様々な適応及び変更を本発明の主旨及び範囲から逸脱することなくして成し遂げることができるということは、明らかであろう。従って、本発明は、図面に示され及び前述された正確な実施形態に限定されるものではない。むしろ、本発明の趣旨を逸脱しないような全てそのような変形は、ここに添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるその範囲内にあるとみなされることが意図される。
【0032】
本出願は、2011年1月14日に出願し、「ブレーキピストンとピストンノーズ」と題する米国仮特許出願第61/433,194号の利益を主張し、この仮出願は、本明細書であたかも完全に述べられているものとして、参照として本明細書に組み込まれる。
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