特許第6163112号(P6163112)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6163112
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】ポジショナ
(51)【国際特許分類】
   G05D 7/06 20060101AFI20170703BHJP
   F16K 37/00 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
   G05D7/06 Z
   F16K37/00 F
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-9167(P2014-9167)
(22)【出願日】2014年1月22日
(65)【公開番号】特開2015-138365(P2015-138365A)
(43)【公開日】2015年7月30日
【審査請求日】2016年3月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】奥田 浩二
【審査官】 黒田 暁子
(56)【参考文献】
【文献】 特表平11−514761(JP,A)
【文献】 特許第2552177(JP,B2)
【文献】 特開2003−044134(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 7/06
F16K 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上位装置から送られてくる設定開度に実開度が一致するようにバルブの開度を制御するポジショナにおいて、
前記設定開度を示す制御信号と前記バルブの実開度を示す開度信号とを入力とし、この制御信号と開度信号との偏差に応じたドライブ信号を生成する制御演算部と、
前記制御演算部からのドライブ信号を前記バルブへの出力空気圧に変換する電空変換部と、
前記バルブの現在の開度を検出し前記制御演算部への開度信号とする弁開度検出部と、
前記制御信号が示す百分率で表される値と前記開度信号が示す百分率で表される値と前記ドライブ信号が示す百分率で表される値とを比較し、少なくとも何れか1つの信号が示す値が他の信号が示す値と異なる場合に、異常と判断する異常診断部と
を備えることを特徴とするポジショナ。
【請求項2】
請求項1に記載されたポジショナにおいて、
前記異常診断部は、
異常と判断した場合、異常である旨の判断結果と合わせて、前記制御信号が示す百分率で表される値と前記開度信号が示す百分率で表される値と前記ドライブ信号が示す百分率で表される値との比較結果を通知する
ことを特徴とするポジショナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、上位装置から送られてくる設定開度に実開度が一致するようにバルブの開度を制御するポジショナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、バルブの開度を制御するポジショナとして、例えば図4にその要部の構成を示すようなものがある(例えば、特許文献1参照)。同図において、100(100A)はポジショナ、200はバルブである。ポジショナ100Aは、信号電流変換部1と、制御演算部2と、電空変換部3と、弁開度検出部4とを備えている。
【0003】
このポジショナ100Aにおいて、信号電流変換部1は、上位装置から4〜20mAの信号として送られてくる設定開度を示す入力信号Iを制御信号Voに変換する。弁開度検出部4は、バルブ200の実開度を検出し、その検出した実開度を示す開度信号Vsを出力する。制御演算部2は、信号電流変換部1からの制御信号Voと弁開度検出部4からの開度信号Vsとの偏差を求め、この偏差にPID制御演算を施して得られる電気信号をドライブ信号Vdとして出力する。
【0004】
電空変換部3は、制御演算部2からのドライブ信号Vdをバルブ200への出力空気圧Poに変換し、バルブ200の操作器201へ出力する。これにより、操作器201内のダイアフラム室に空気圧Poの空気が流入し、バルブ本体202における弁の開度が調整される。
【0005】
このポジショナ100Aでは、弁開度検出部4によって検出されるバルブ200の実開度を開度信号Vsとして制御演算部2に送ることにより、制御信号Voに対する制御のフィードバック信号としている。したがって、この開度信号Vsを正確に読み取ることは、バルブ制御において非常に重要である。この開度信号Vsは、制御演算部2において、電気回路である受信回路で受けて、A/D変換を実施してCPU(Central Processing Unit)へ取り込み、制御のフィードバック信号としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−83203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、プラントなど現場機器の設置状況では動力源など様々な機器が稼働しており、様々なノイズが発生している環境にあり、ポジショナ100Aもその影響を受ける場合がある。その影響として、弁開度検出部4や開度信号Vsのラインへのノイズ印加があった場合に、開度信号Vsの受信回路が誤動作を起こし、例えば受信回路の出力が本来の開度信号Vsから少しずれた、シフトを起こした形で出力され、A/D変換されてしまうことがある。
【0008】
この場合、ポジショナ100Aは、バルブ200の正しい開度を認識できず、間違った(シフトした)開度信号Vsで制御のフィードバックを掛けてしまい、結果としてバルブ200の開度を間違った(シフトした)状態で制御してしまい、プラントでの生産に悪影響や損失を与えてしまうことになる。
【0009】
例えば、4〜20mAの範囲で変化する入力信号Iが12mA(50%)であり、制御信号Vo=50%、バルブ開度Vs(本来の開度信号)=75%、ノイズを含んだ結果受信回路でシフトした誤開度信号=60%の場合に、ポジショナ100Aは、誤開度信号=60%を、制御信号Vo=50%に合わせるように動作して、誤開度信号を60%→50%へ下げる操作をし、バルブ開度Vs(本来の開度信号)=75%は10%低下して、75%→65%となる。結果として、制御信号Vo=50%に対して、バルブ開度Vs(本来の開度信号)=65%となり、ここで安定する。また、制御演算部において、制御信号Vo=50%と誤開度信号=50%とは合致しているとCPUが認識しているので、バルブ開度Vs(本来の開度信号)=65%がずれていることに気がつかない。
【0010】
なお、特許文献1の第1例では、電空変換部3からの出力空気圧Poを圧力信号Vaに変換し、この圧力信号Vaと開度信号Vsとを比較することによって異常を判断するようにしている。また、特許文献1の第2例では、開度信号Vsとドライブ信号Vdとを比較することによって異常を判断するようにしている。また、特許文献1の第3例では、開度信号Vsと制御信号Voとを比較することによって異常を判断するようにしている。しかしながら、このような方法では、何れの例においても、2つの信号を比較しているのみであるので、異常に気づかないケースを見逃してしまうことがある。
【0011】
例えば、特許文献1の第2例では、開度信号Vsとドライブ信号Vdとが一致していて、制御が正常に行われているように見えても、実際には間違った開度で制御が行われているというような異常を見逃してしまうし、特許文献1の第3例では、制御信号Voと開度信号Vsとが一致していて、制御が正常に行われているように見えても、実際には間違った開度で制御が行われているというような異常を見逃してしまう。
【0012】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、異常に気づかないケースを見逃さないようにすることが可能なポジショナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このような目的を達成するために本発明は、上位装置から送られてくる設定開度に実開度が一致するようにバルブの開度を制御するポジショナにおいて、設定開度を示す制御信号とバルブの実開度を示す開度信号とを入力とし、この制御信号と開度信号との偏差に応じたドライブ信号を生成する制御演算部と、制御演算部からのドライブ信号をバルブへの出力空気圧に変換する電空変換部と、バルブの現在の開度を検出し制御演算部への開度信号とする弁開度検出部と、制御信号が示す百分率で表される値と開度信号が示す百分率で表される値とドライブ信号が示す百分率で表される値とを比較し、少なくとも何れか1つの信号が示す値が他の信号が示す値と異なる場合に、異常と判断する異常診断部とを備えることを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、制御信号(Vo)が示す値(%)と開度信号(Vs)が示す値(%)とドライブ信号(Vd)が示す値(%)とのうち、少なくとも何れか1つの信号が示す値が他の信号が示す値と異なる場合に、異常と判断される。すなわち、制御信号(Vo)が示す値(%)と開度信号(Vs)が示す値(%)とドライブ信号(Vd)が示す値(%)とが一致していれば正常と判断され、それ以外は異常と判断される。これにより、例えば、制御信号(Vo)が示す値(%)と開度信号(Vs)が示す値(%)とが一致していて、制御が正常に行われているように見えても、実際には間違った開度で制御が行われているというような異常や、開度信号(Vs)が示す値(%)とドライブ信号(Vd)が示す値(%)とが一致していて、制御が正常に行われているように見えても、実際には間違った開度で制御が行われているというような異常を見逃すことがなくなる。
【0015】
なお、本発明において、異常診断部は、制御信号(Vo)が示す値(%)と開度信号(Vs)が示す値(%)とドライブ信号(Vd)が示す値(%)とを比較することによって異常を判断するが、異常と判断した場合、異常である旨の判断結果と合わせて、制御信号(Vo)が示す値(%)と開度信号(Vs)が示す値(%)とドライブ信号(Vd)が示す値(%)との比較結果を上位装置などに通知するようにしてもよい。制御信号(Vo)が示す値(%)と開度信号(Vs)が示す値(%)とドライブ信号(Vd)が示す値(%)との比較結果は異常箇所を特定する際の手助けとなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、制御信号が示す百分率で表される値(%)と開度信号が示す百分率で表される値(%)とドライブ信号が示す百分率で表される値(%)とを比較し、少なくとも何れか1つの信号が示す値が他の信号が示す値と異なる場合に異常と判断するようにしたので、異常に気づかないケースを見逃すことをなくすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係るポジショナの一実施の形態の要部を示す構成図である。
図2】このポジショナにおける異常診断部が有する機能をより詳細に説明するためのフローチャートである。
図3】制御信号Voと開度信号Vsとドライブ信号Vdとの比較結果の一例を判断結果と合わせて示す図である。
図4】従来のポジショナの要部の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明に係るポジショナの一実施の形態の要部を示す構成図である。同図において、図4と同一符号は図4を参照して説明した構成要素と同一或いは同等の構成要素を示し、その説明は省略する。
【0019】
本実施の形態のポジショナ100(100B)では、信号電流変換部1、制御演算部2、電空変換部3および弁開度検出部4の基本的な構成に加えて異常診断部5を設け、この異常診断部5に制御信号Voと開度信号Vsとドライブ信号Vdとを分岐して与えるようにしている。
【0020】
異常診断部5は、入力される制御信号Voと開度信号Vsとドライブ信号Vdとを比較し、少なくとも何れか1つの信号が示す値が他の信号が示す値と異なる場合に異常と判断し、異常である旨の判断結果と合わせて、制御信号Voと開度信号Vsとドライブ信号Vdとの比較結果を上位装置へ通知する。
【0021】
なお、ポジショナ100Bにおける制御演算部2、異常診断部5などの機能は、プロセッサや記憶装置からなるハードウェアと、これらのハードウェアと協働して各種機能を実現させるプログラムとによって実現される。
【0022】
異常診断部5が有する機能について、図2に示すフローチャートを参照して、より詳細に説明する。
【0023】
異常診断部5は、制御信号Voを監視し、制御信号Voに変化がない状態が所定時間T以上継続した場合(ステップS101のNO、ステップS103のYES)、開度信号Vsとドライイブ信号Vdを入力し(ステップS104)、制御信号Voと開度信号Vsとドライイブ信号Vdとを比較する(ステップS105)。
【0024】
また、異常診断部5は、制御信号Voの監視中、制御信号Voに変化が生じた場合(ステップS101のYES)、予め定められた整定時間TAの経過を待ち(ステップS102のYES)、制御信号Voに変化がない状態が所定時間T以上継続したことを確認して(ステップS103のYES)、ステップS104,S105へ進み、制御信号Voと開度信号Vsとドライイブ信号Vdとの比較を行う。
【0025】
ここで、制御信号Voと開度信号Vsとドライブ信号Vdとが一致していれば(ステップS105のYES)、すなわち制御信号Voが示す百分率で示される値(%)と開度信号Vsが示す百分率で示される値(%)とドライブ信号Vdが示す百分率で示される値(%)とが一致していれば、異常診断部5は、制御状態は正常であると判断し(ステップS106)、ステップS101へ戻り、上述と同様の動作を繰り返す。
【0026】
これに対し、制御信号Voと開度信号Vsとドライブ信号Vdとが一致していなければ(ステップS105のNO)、すなわち少なくとも何れか1つの信号が示す値が他の信号が示す値と異なっていれば、制御状態は異常であると判断し(ステップS107)、異常である旨の判断結果と合わせて、制御信号Voと開度信号Vsとドライブ信号Vdとの比較結果を上位装置へ通知する(ステップS108)。
【0027】
すなわち、図3にその一例を示すように、制御信号Voと開度信号Vsとドライブ信号Vdとが一致していれば(ケースI)、正常と判断する。これに対し、制御信号Voと開度信号Vsとドライブ信号Vdとが全て異なっていれば(ケースII)、異常と判断する。また、制御信号Voとドライブ信号Vdとが一致していても、開度信号Vsが一致していなければ(ケースIII)、異常と判断し、開度信号Vsとドライブ信号Vdとが一致していても、制御信号Voが一致していなければ(ケースIV)、異常と判断し、制御信号Voと開度信号Vsとが一致していても、ドライブ信号Vdが一致していなければ(ケースV)、異常と判断する。
【0028】
これにより、例えば、制御信号Voと開度信号Vsとが一致していて、制御が正常に行われているように見えても、実際には間違った開度で制御が行われているというような異常や、開度信号Vsとドライブ信号Vdとが一致していて、制御が正常に行われているように見えても、実際には間違った開度で制御が行われているというような異常や、制御信号Voとドライブ信号Vdとが一致していて、制御が正常に行われているように見えても、実際には間違った開度で制御が行われているというような異常などを見逃すことがなくなる。
【0029】
また、異常診断部5から上位装置へ、異常である旨の判断結果と合わせて、制御信号Voと開度信号Vsとドライブ信号Vdとの比較結果を通知することにより、この通知される情報が異常箇所を特定する際の手助けとなる。
【0030】
例えば、ケースIIIの場合には、バルブ200の異常、弁開度検出部4(開度センサ)の異常などがその原因として考えられる。ケースIVの場合には、制御演算部2(制御演算回路)と弁開度検出部4(開度センサ)が連動して壊れた場合などがその原因として考えられる。ケースVの場合には、開度信号Vsへのノイズの重畳、弁開度検出部4(開度センサ)の異常、制御演算部2(制御演算回路)の異常などがその原因として考えられる。
【0031】
上位装置において、オペレータは、ポジショナ100Bから通知される制御信号Voと開度信号Vsとドライブ信号Vdとの比較結果をヒントとして、大凡ではあるが異常箇所を特定することが可能となる。
【0032】
このようにして、本実施の形態では、バルブ制御の健全性を監視して、バルブ開度に異常が認められる場合は、すぐにオペレータに伝達するようにして、プラントの重大な損失を最小限に抑えることが可能となる。
【0033】
なお、上述した実施の形態では、異常診断部5より上位装置へ異常である旨を通知するようにしたが、バルブ200に対して別の空気系統を設けて、バルブ200を強制的にオフとするようにしてもよい。また、異常診断部5より上位装置へ異常を通知する手段は、4〜20mAの電流信号の他、HART(Highway Addressable Remote Transducer)、FF(Fieldbus Foundation)、SFN(Single Frequency Network)などの通信手段、DOシグナルなどでもよい。
【0034】
〔実施の形態の拡張〕
以上、実施の形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明の技術思想の範囲内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0035】
1…信号電流変換部、2…制御演算部、3…電空変換部、4…弁開度検出部、5…異常診断部、100(100B)…ポジショナ、200…バルブ、201…操作器、202…バルブ本体。
図1
図2
図3
図4