(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記カバー部材は、前記ボビンの前記第1のフランジ部および前記磁心の下方において前記第1のフランジ部の前記他方側の部分から前記一方側の部分まで延びるように形成される、請求項1記載のトランス。
前記カバー部材は、前記ボビン、前記第1および第2のコイルならびに前記磁心の前方および両側方において前記第1のフランジ部から前記第2のフランジ部まで延びるように形成される、請求項1または2記載のトランス。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電力供給線の被雷時に雷サージが電力供給線から電子機器に伝わり、電子機器が損傷する場合がある。近年、小型の電子機器の増加に伴い、電力供給線への被雷時の電子機器の損傷の発生件数が増加している。雷サージによる電子機器の動作回路の損傷を防止するためには、電力供給線に発生した雷サージを電源回路で吸収することが考えられる。そこで、例えば10KV以上または15KV以上の雷サージが1次側から2次側へ通過しないトランスの実現が望まれる。そのためには、1次コイルと2次コイルとの間の絶縁距離をさらに大きくすることが必要となる。しかし、従来のトランスの構造において、1次コイルと2次コイルとの間の絶縁距離をさらに大きくすると、トランスが大型化する。
【0008】
本発明の目的は、小型化を妨げることなく1次コイルと2次コイルとの間の絶縁距離を大きくすることが可能なトランスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明に係るトランスは、所定の取り付け面に取り付け可能なトランスであって、取り付け面に略垂直に配置される巻線部ならびに巻線部の下端および上端にそれぞれ形成される第1および第2のフランジ部を有するボビンと、ボビンに装着される磁心と、巻線部に巻回される第1および第2のコイルと、巻線部の一方側における第1のフランジ部の下面に設けられ、第1のコイルの
複数の引き出し線が接続される
複数の1次側端子と、巻線部の他方側においてボビン、第1および第2のコイルならびに磁心の前方および両側方を覆うとともにボビンの第1のフランジ部および磁心の下方を覆うように設けられるカバー部材と、他方側におけるカバー部材の下面に設けられる
第1および第2の2次側端子とを備え、
ボビンの第2のフランジ部に第2のコイルの第1および第2の引き出し線がそれぞれ通る第1および第2の引き出し部が設けられ、第2のフランジ部の上面上に、磁心と第1および第2の引き出し部との間を区画するとともに第1の引き出し部と第2の引き出し部との間を区画する第1の突条部が設けられ、カバー部材は、巻線部の他方側においてボビン、第1および第2のコイルならびに磁心の前方に位置する前面部を含み、カバー部材の前面部の上端には、第1および第2の切欠きが設けられ、カバー部材の前面部の外側の面上に第2の突条部が上下方向に延びるように設けられ、第2の突条部の両側における前面部の外側の面上に第1および第2の放熱用凸部が上下方向に延びるように設けられ、第1の切欠きと第2の切欠きとの間隔は、第1の引き出し部と第2の引き出し部との間隔よりも大きく、かつ第1の放熱用凸部と第2の放熱用凸部との間隔よりも大きく、第1の2次側端子と第2の2次側端子との間隔は、第1の引き出し部と第2の引き出し部との間隔よりも大きく、かつ第1の放熱用凸部と第2の放熱用凸部との間隔よりも大きく、第1の引き出し線は、第1の引き出し部および第1の切欠きを通って第1の放熱用凸部の内側の側面に接触して第1の2次側端子に接続され、第2の引き出し線は、第2の引き出し部および第2の切欠きを通って第2の放熱用凸部の内側の側面に接触して第2の2次側端子に接続されるものである。
【0010】
そのトランスにおいては、ボビンに磁心が装着され、巻線部に第1および第2のコイルが巻回される。巻線部の一方側における第1のフランジ部の下面に第1の端子が設けられ、第1のコイルの引き出し線が第1の端子に接続される。カバー部材は、巻線部の他方側においてボビン、第1および第2のコイルならびに磁心の前方および両側方を覆うとともにボビンの第1のフランジ部および磁心の下方を覆うように設けられる。他方側におけるカバー部材の下面に第2の端子が設けられる。第2のコイルの引き出し線は、第2のフランジ部側から引き出され、カバー部材の上部からカバー部材の外側の表面上を経由して第2の端子に接続される。
【0011】
このような構成において、第2の端子と磁心との間の第1の沿面距離は、第2の端子からカバー部材の下面、他方側の端面および上面を経由して磁心の下端に至る距離となる。この場合、第1のフランジ部および磁心の下方を覆うカバー部材の部分により第1の沿面距離を十分に長くすることができる。
【0012】
また、第2の端子と磁心との間の第2の沿面距離は、第2の端子からカバー部材の外側の面を経由して磁心の上端に至る距離となる。この場合、ボビン、第1および第2のコイルならびに磁心の前方および両側方を覆うカバー部材の部分により第2の沿面距離を十分に長くすることができる。
【0013】
これらの結果、小型化を妨げることなく1次コイルと2次コイルとの間の絶縁距離を大きくすることが可能となる。
【0014】
(2)カバー部材は、ボビンの第1のフランジ部および磁心の下方において第1のフランジ部の他方側の部分から一方側の部分まで延びるように形成されてもよい。
【0015】
この場合、トランスの前後方向の寸法を増加させることなく、第1の沿面距離を十分に長くすることができる。
【0016】
(3)カバー部材は、ボビン、第1および第2のコイルならびに磁心の前方および両側方において第1のフランジ部から第2のフランジ部まで延びるように形成されてもよい。
【0017】
この場合、トランスの高さ方向の寸法を増加させることなく、第2の沿面距離を十分に長くすることができる。
【0018】
(4)カバー部材は
、第1および第2のコイルならびに磁心の両側方にそれぞれ位置する一対の側面部と、ボビンの第1のフランジ部および磁心の下方に位置する底面部とを含み、前面部、側面部および底面部は互いに連続するように一体的に形成されてもよい。
【0019】
この場合、最小限の部品点数および最小限の工程数でカバー部材を作製することが可能である。
【0021】
この場合、第2の端子に第2のコイルの引き出し線が半田付けされる際に、第2の端子から第2のコイルの引き出し線に伝わる熱が放熱用凸部に移動する。それにより、第2のコイルの引き出し線が放熱され、放熱用凸部の位置で引き出し線の被覆の溶融を止めることが可能となる。
【0023】
この場合、第2のコイルの引き出し線がカバー部材の外側の表面上を通って容易に第2の端子に導かれる。それにより、第2の端子への引き出し線の半田付け作業を容易に行うことができる。
【0024】
(
5)カバー部材の上端が磁心の上端よりも高い位置まで延びるようにカバー部材が形成されてもよい。
【0025】
このような構成により、トランスの第2の端子の周辺に電解コンデンサが配置される場合に、電解コンデンサと磁心との間の空間距離を大きくすることができる。それにより、電解コンデンサをトランスの第2の端子の直近に実装することが可能となり、電源回路を小型化することができる。
【0026】
また、トランスの巻線部または磁心から電解コンデンサへ向かう熱をカバー部材により十分に遮断することができるので、電解コンデンサの長寿命化が可能になるとともに、電源回路の出力電圧の安定化が可能になる。
【0027】
(
6)
第1および第2の2次側端子の代わりに、
第1および第2の引き出し線を位置決めする位置決め部が設けられてもよい。
【0028】
この場合、第2のコイルの引き出し線が位置決め部材により位置決めされるので、第2の端子が不要となる。また、トランスの製造時に、第2の端子をカバー部材に設ける工程、および第2のコイルの引き出し線を第2の端子に接続する工程が不要になる。
【0029】
(
7)位置決め部は、
第1および第2の引き出し線が挿入される貫通孔を有する案内部を含んでもよい。
【0030】
このような構成により、トランスをプリント回路基板に実装する場合に、第2の端子を設けることなく、第2のコイルの引き出し線をプリント回路基板のスルーホールに容易に導くことができる。
【0031】
(
8)位置決め部は、
第1および第2の引き出し線が圧入されることにより当該引き出し線を固定する固定部を含んでもよい。
【0032】
このような構成により、トランスをプリント回路基板に実装する場合に、第2の端子を設けることなく、第2のコイルの引き出し線をプリント回路基板の所定箇所で容易に固定することができる。また、トランスをフロー方式の半田付けによりプリント回路基板に実装する場合には、噴流半田により第2のコイルの引き出し線が浮き上がる現象を抑制することができるので、半田付けの信頼性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、小型化を妨げることなく1次コイルと2次コイルとの間の絶縁距離を大きくしつつ小型化が可能なトランスが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0035】
(1)第1の実施の形態に係るトランスの構成
以下の
図1〜
図23において、互いに直交する方向を矢印X、YおよびZで表す。矢印Xの方向を右側方、矢印Xと逆の方向を左側方、矢印Yの方向を前方、矢印Yと逆の方向を後方、矢印Zの方向を上方、矢印Zと逆の方向を下方とする。
【0036】
図1は本発明の第1の実施の形態に係るトランスを前方斜め上方から見た場合の斜視図である。
図2は
図1のトランスを後方斜め下方から見た場合の斜視図である。
図3は
図1のトランスの前後方向に沿った縦断面図である。
図4は
図1のトランスの側面図であり、
図5は
図1のトランスの正面図であり、
図6は
図1のトランスの背面図であり、
図7は
図1のトランスの平面図であり、
図8は
図1のトランスの底面図である。
【0037】
図1〜
図8に示すトランスは、ボビンBB、1次コイルC1、2次コイルC2(
図3)、E型コア(磁心)EC1,EC2(
図3)、1次側ピン端子P11〜P15、2次側ピン端子P21,P22およびカバー部材CVを備える。
【0038】
まず、ボビンBBの詳細な構成について説明する。
図9はボビンBBを前方斜め上から見た場合の斜視図、
図10はボビンBBを後方斜め下から見た場合の斜視図である。
【0039】
図9および
図10に示すように、ボビンBBは、角筒状の巻線部WP、および一対のフランジ部FL1,FL2からなる。フランジ部FL1は巻線部WPの下端に設けられ、フランジ部FL2は巻線部WPの上端に設けられる。ボビンBBはプラスチック等の絶縁材料により一体的に形成される。ボビンBBの巻線部WPには、1次コイルC1および2次コイルC2が巻回される(
図3参照)。
【0040】
図9に示すように、フランジ部FL2の上面上の後方部分(一方側の部分)に左右方向(矢印Xの方向)に直線状に延びる突条部T1が形成される。また、フランジ部FL2の上面上の前方部分にT字状の突条部T2が形成される。突条部T2は、左右方向(矢印Xの方向)に直線状に延びる直線部T21と、左右の領域間を仕切るように直線部T21の中心から前方に延びる仕切り部T22とを有する。巻線部WPには、上下に開口する内部空間INが形成される。巻線部WPの内部空間IN、フランジ部FL2の左右側および突条部T1,T2間に
図3のE型コアEC2が嵌め込まれる。
【0041】
フランジ部FL2の上面上の前端部には、円柱状の一対の突起部T31,T32が設けられる。突起部T31と仕切り部T22との間におけるフランジ部FL2の前端部には凹状の切欠きN1が形成され、突起部T32と仕切り部T22との間におけるフランジ部FL2の前端部には凹状の切欠きN2が形成される。
【0042】
図10に示すように、フランジ部FL1の下面上の後方部分に端子取付部T4が形成される。端子取付部T4の後端面には、1次コイルC1の引き出し線CP11,CP12を案内するための複数の案内溝G11,G12,G13,G14が形成される。端子取付部T4の下面には、左右方向に並ぶように金属製の複数の1次側ピン端子P11〜P15が圧入または一体成形等により取り付けられる。さらに、端子取付部T4の下面の中央部に開口OPが形成される。
【0043】
また、フランジ部FL1の下面上の前方部分(他方側の部分)に突条部T5が形成される。突条部T5は、左右方向に直線状に延びる直線部T51と、直線部T51の両端部近傍から前方に延びる仕切り部T52,T53とを有する。巻線部WPの内部空間IN、フランジ部FL1の左右側および端子取付部T4と突条部T5との間に
図3のE型コアEC1が嵌め込まれる。
【0044】
次に、カバー部材CVの詳細な構成について説明する。
図11はカバー部材CVを前方斜め下方から見た場合の斜視図、
図12はカバー部材CVを後方斜め上方から見た場合の斜視図である。
図13はカバー部材CVの側面図、
図14はカバー部材CVの前後方向に沿った縦断面図、
図15はカバー部材CVの正面図、
図16はカバー部材CVの左右方向に沿った縦断面図、
図17はカバー部材CVの平面図、
図18はカバー部材CVの底面図である。
【0045】
図11〜
図18に示すように、カバー部材CVは、前面部FR、一対の傾斜前面部SL1,SL2、一対の側面部SD1,SD2、および底面部BTからなる。カバー部材CVの上部側および後部側は開放されている。
図11、
図12、
図17および
図18に示すように、傾斜前面部SL1,SL2は、前面部FRと側面部SD1,SD2との間に形成される。カバー部材CVは、プラスチック等の絶縁材料により一体的に形成される。
【0046】
図11および
図15に示すように、前面部FRの外側の面上に上下方向に直線状に延びる突条部T6が形成される。また、突条部T6の両側における前面部FRの外側の面上に略直方体形状の一対の放熱用凸部T7,T8が上下方向に延びるように形成される。突条部T6および放熱用凸部T7,T8は、プラスチック等の絶縁材料により前面部FRに一体的に形成される。放熱用凸部T7,T8の下面には、上下方向に延びる複数の金属製の2次側ピン端子P21,P22がそれぞれ圧入または一体成形等により取り付けられる。
【0047】
図15および
図16に示すように、突条部T6の両側における前面部FRの上端部には、一対の凹状の切欠きN11,N12がそれぞれ形成される。また、傾斜前面部SL1,SL2の上端部には、一対の凹状の切欠きN13,N14がそれぞれ形成される。
【0048】
図12および
図17に示すように、底面部BTの上面上の後端部の中央に凸部T9が形成される。凸部T9は、
図10の端子取付部T4の開口OPに嵌合する。また、底面部BTの上面上の前端部の中央に凸部T10が形成される。凸部T10は、
図10の突条部T5の仕切り部T52,T53間に嵌合する。
【0049】
図11、
図13、
図14および
図18に示すように、底面部BTの下面には、左右方向に延びる帯状の凹部REが形成される。
【0050】
次に、
図1〜
図8を参照しながら本実施の形態に係るトランスの構成について詳細に説明する。
【0051】
図3に示す1次コイルC1としては、例えば、エナメル線等の電線が用いられる。1次コイルC1は、ボビンBBの巻線部WPに巻回される。1次コイルC1の両端の引き出し線CP11,CP12(
図2参照)はフランジ部FL1付近から引き出される。
図2に示すように、1次コイルC1の引き出し線CP11,CP12は、案内溝G11〜G14のいずれか2つを通って1次側ピン端子P11〜P15のいずれか2つに半田付けにより接続される。
【0052】
図3に示す2次コイルC2としては、例えば、三層絶縁電線が用いられる。2次コイルC2は、1次コイルC1上に巻回される。2次コイルC2の両端の引き出し線CP21,CP22(
図1参照)は、フランジ部FL2近傍から引き出される。2次コイルC2の外周部には絶縁テープが巻回される。
【0053】
ボビンBBには、上下からE型コアEC2,EC1がそれぞれ装着され、所定の磁気回路が構成される。なお、コアの形状は、本例のE型コアE1,E2の形状に限定されず、他の形状のコアを用いてもよい。例えば、E型コアとI型コアとの組み合わせを用いてもよい。
【0054】
図3に示すように、E型コアEC1の下面にグランドプレートGPが配置され、組み合わされたE型コアEC1,EC2およびグランドプレートGPの外周部がコアテープCTで固定される。
【0055】
ボビンBBは、カバー部材CVに嵌め込まれる。この場合、
図10のボビンBBの突条部T5の仕切り部T52,T53間に
図12の凸部T10が嵌合する。また、
図10のボビンBBの端子取付部T4の開口OP内に
図12の凸部T9が嵌合する。
【0056】
図1〜
図3に示すように、カバー部材CVは、巻線部WPの前方側(他方側)においてボビンBB、1次コイルC1、2次コイルC2およびE型コアEC1,EC2の前方および両側方を覆うとともに、ボビンBBのフランジ部FL1およびE型コアEC1の下方を覆うように設けられる。
【0057】
カバー部材CVの前面部FRおよび傾斜前面部SL1,SL2はボビンBB、1次コイルC1、2次コイルC2およびE型コアEC1,EC2の前方に位置する。カバー部材CVの側面部SD1,SD2はボビンBB、1次コイルC1、2次コイルC2およびE型コアEC1,EC2の左右の両側方に位置する。カバー部材CVの底面部BTは、ボビンBBのフランジ部FL1およびE型コアEC1の下方に位置する。
【0058】
カバー部材CVの前面部FR、傾斜前面部SL1,SL2および側面部SD1,SD2は、ボビンBBのフランジ部FL2に達する高さまで延びる。また、カバー部材CVの底面部BTは、ボビンBBのフランジ部FL1の後部でかつ1次側ピン端子P11,P12の前方の位置に達するように延びる。
【0059】
この状態で、
図1〜
図8に示すように、固定テープFTがE型コアEC2の上面、E型コアEC1,EC2の両側面およびカバー部材CVの凹部RE(
図11)に巻回される。それにより、ボビンBBにカバー部材CVが固定される。
【0060】
図1および
図5に示すように、2次コイルC2の一方の引き出し線CP21は、フランジ部FL2の切欠きN1(
図9)を通して突起部T31(
図9)に係止された後、カバー部材CVの切欠きN13を通り、前面部FRの表面上で放熱用凸部T7の内側の側面に接触しつつ2次側ピン端子P21に導かれる。2次コイルC2の他方の引き出し線CP22は、フランジ部FL2の切欠きN2(
図9)を通して突起部T32(
図9)に係止された後、カバー部材CVの切欠きN14を通り、前面部FRの表面上で放熱用凸部T8の内側の側面に接触しつつ2次側ピン端子P22に導かれる。
【0061】
引き出し線CP21の端部は2次側ピン端子P21に半田付けされ、引き出し線CP22の端部は2次側ピン端子P22に半田付けされる。このとき、溶融半田の熱により2次側ピン端子P21,P22付近の引き出し線CP21,CP22の部分が高温になり、引き出し線CP21,CP22の被覆が溶融する。2次側ピン端子P21,P22から引き出し線CP21,CP22を伝わる熱は、放熱用凸部T7,T8との接触面を通して放熱用凸部T7,T8に移動する。すなわち、引き出し線CP21,CP22は、放熱用凸部T7,T8により放熱される。これにより、引き出し線CP21,CP22の半田付けによる被覆の溶融を放熱用凸部T7,T8の位置で止めることができる。
【0062】
上記のトランスは、配線回路基板等の取り付け面に取り付けられる。この場合、ボビンBBの巻線部WPが取り付け面に垂直に配置される。
【0063】
本実施の形態に係るトランスにおいては、1次側ピン端子P11〜P15および2次側ピン端子P21,P22を除く部分の最大高さ(矢印Zの方向の寸法)は例えば19mmであり、最大幅(矢印Xの方向の寸法)は例えば20mmであり、最大奥行き(矢印Yの方向の寸法)は例えば22mmである。
【0064】
(2)沿面距離
ここで、2次側ピン端子P21,P22とE型コアEC1,EC2との間の沿面距離について説明する。
【0065】
図3に一点鎖線の矢印で示すように、2次側ピン端子P21とE型コアEC1との間の沿面距離は、2次側ピン端子P21からカバー部材CVの底面部BTの下面、底面部BTの後側の端面、底面部BTの上面(ボビンBBのフランジ部FL1の下面側)を通ってE型コアEC1の下端に至る距離L1となる。同様に、2次側ピン端子P22とE型コアEC1との間の沿面距離も距離L1と等しい。このように、2次側ピン端子P21,P22とE型コアEC1との間の沿面距離をカバー部材CVの側面部SD1,SD2および底面部BTにより長くすることができる。
【0066】
次に、
図1および
図4に一点鎖線の矢印で示すように、2次側ピン端子P22とE型コアEC2との間の沿面距離は、2次側ピン端子P22からカバー部材CVの前面部FRの放熱用凸部T8の下面、傾斜前面部SL2の表面、側面部SD2の表面および側面部SD2の上端を通ってE型コアEC2の上端に至る距離L2となる。同様に、2次側ピン端子P21とE型コアEC2との間の沿面距離も距離L2と等しい。このように、2次側ピン端子P21,P22とE型コアEC2との間の沿面距離をカバー部材CVの前面部FR、傾斜前面部SL1,SL2および側面部SD1,SD2により長くすることができる。
【0067】
(3)第1の実施の形態に係るトランスの効果
以下、本実施の形態に係るトランスの効果について比較例のトランスと比較しつつ説明する。
【0068】
図19は比較例のトランスの前後方向に沿った縦断面図である。
図19に示すように、ボビン10は、巻線部101の下端および上端にそれぞれフランジ部102,103を有する。フランジ部102の一方側(後方側)の部分の下面に1次側ピン端子104が取り付けられ、フランジ部102の他方側(前方側)の部分の下面に2次側ピン端子105が取り付けられる。巻線部101には1次コイルC1が巻回され、1次コイルC1上に2次コイルC2がさらに巻回される。1次コイルの引き出し線CP1は、フランジ部102付近から引き出され、フランジ部102の案内溝を通って1次側ピン端子104に半田付けにより接続される。2次コイルC2の引き出し線CP2は、フランジ部103付近から引き出され、2次側ピン端子105に半田付けにより接続される。ボビン10には上下からE型コアE2,E1が装着され、所定の磁気回路が形成される。
【0069】
ここで、2次側ピン端子105とE型コアE1との間の沿面距離は、2次側ピン端子105からフランジ部102の下面および内面を通ってE型コアE1の下端に至る距離L11となる。
【0070】
また、2次側ピン端子105と1次コイルC1との間の沿面距離は、2次側ピン端子105からフランジ部102の下面、前面および上面を通って1次コイルC1の下端に至る距離L13となる。
【0071】
2次側ピン端子105からボビン10の内面までの最短距離は例えば3mmであり、ボビン10の下端からE型コアE1の下端までの最短距離は例えば2mmである。したがって、2次側ピン端子105とE型コアE1との間の沿面距離L11は5mmとなる。
【0072】
波高値15KVの雷サージが1次側から2次側へ通過することを防止するためには、2次側ピン端子105とE型コアE1との間の沿面距離を15mm以上に設定する必要がある。
【0073】
図19のトランスにおいて、2次側ピン端子105とE型コアE1との間の沿面距離を15mmにするためには、点線で示すように、フランジ部102を前方に突出させることにより2次側ピン端子105を前方に10mm移動させる必要がある。それにより、2次側ピン端子105と1次コイルC1との間の沿面距離も長くなる。この場合、2次側ピン端子105からボビン10の内面までの最短距離Lbは13mmとなる。その結果、トランスが前後方向に大型化する。
【0074】
これに対して、
図3に示すように、本実施の形態に係るトランスにおいて、2次側ピン端子P21からボビンBBの内面までの最短距離Laを例えば5mmとする。また、2次側ピン端子P21からカバー部材CVの底面部BTの後端までの距離を例えば16mmとする。これにより、2次側ピン端子P21とE型コアEC1との間の沿面距離L1が15mmよりも十分に長くなる。したがって、トランスを前後方向に大型化することなく、2次側ピン端子P21,P22とE型コアEC1との間の沿面距離L1を十分に長くすることが可能となる。
【0075】
また、カバー部材CVの最大高さ(矢印Zの方向の寸法)を例えば16mmとする。それにより、
図1に示すように、2次側ピン端子P22からE型コアEC2までの沿面距離L2が15mmよりも十分に長くなる。したがって、トランスを高さ方向に大型化することなく、2次側ピン端子P21,P22とE型コアEC2との間の沿面距離L2を十分に長くすることが可能となる。
【0076】
この場合、波高値15KVの雷サージが1次側から2次側へ伝わることが防止される。それにより、本実施の形態に係るトランスを用いた電源回路において雷サージを吸収することができる。
【0077】
上記のように、本実施の形態に係るトランスにおいては、1次コイルC1と2次コイルC2との間の絶縁距離を大きくしつつ小型化が可能となる。
【0078】
さらに、上記のように、2次側ピン端子P21,P22への引き出し線CP21,CP22の半田付け時の熱により引き出し線CP21,CP22の一部の被覆が溶融した場合でも、被覆の溶融が放熱用凸部T7,T8の位置で止まる。この場合、引き出し線CP21,CP22の被覆の溶融部分と1次コイルC1との間にカバー部材CVの前面部FRが存在するため、引き出し線CP21,CP22の被覆の溶融部分から1次コイルC1までの沿面距離を十分に長くすることができる。
【0079】
(4)変形例
(a)上記実施の形態では、2次コイルC2の引き出し線CP21,CP22が突起部T31,T32に係止された後、カバー部材CVの切欠きN13,N14を通り、前面部FRの表面上で放熱用凸部T7,T8の内側の側面に接触しつつ2次側ピン端子P21,P22に導かれるが、2次コイルC2の引き出し線CP21,CP22の経路はこれに限定されない。例えば、2次コイルC2の引き出し線CP21,CP22が突起部T31,T32に係止された後、カバー部材CVの切欠きN11,N12を通り、前面部FRの表面上で放熱用凸部T7,T8の内側の側面に接触しつつ2次側ピン端子P21,P22に導かれてもよい。
【0080】
(b)上記実施の形態では、カバー部材CVがそれぞれ略平面状の前面部FR、略平面状の傾斜前面部SL1,SL2、略平面状の側面部SD1,SD2および略平面状の底面
部BTにより形成されるが、カバー部材CVの形状はこれに限定されない。例えば、前面部FR、傾斜前面部SL1,SL2、側面部SD1,SD2および底面部BTが連続する曲面状に形成されてもよい。また、カバー部材CVが傾斜前面部SL1,SL2を含まず、前面部FRの両側辺が側面部SD1,SD2の側辺につながっていてもよい。
【0081】
(c)上記実施の形態では、放熱用凸部T7,T8の正面形状が略長方形であるが、放熱用凸部T7,T8の形状はこれに限定されない。例えば、放熱用凸部T7,T8の正面形状が円形、楕円形、台形その他の形状であってもよい。また、放熱用凸部T7,T8の前後方向の断面形状が円弧状等の湾曲形状であってもよい。
【0082】
(d)2次コイルC2の引き出し線CP21,CP22の被覆の一部が溶融した場合でも、2次コイルC2の引き出し線CP21,CP22の溶融部分と1次コイルC1との間の沿面距離を十分に確保することができる場合には、放熱用凸部T7,T8が設けられなくてもよい。
【0083】
(e)カバー部材CVの前面部FR上の突条部T6は、半田付けの際に2次コイルC2の引き出し線CP21,CP22を互いに絡み合わないように2次側ピン端子P21,P22に円滑に案内する機能を有するが、引き出し線CP21,CP22の半田付けの際に支障が生じない場合には突条部T6が設けられなくてもよい。
【0084】
(f)ボビンBBのフランジ部FL2上の突条部T1,T2の形状は上記実施の形態の形状に限定されない。例えば、突条部T2が直線状に形成されてもよい。また、特に支障が生じない場合には、フランジ部FL2上の突条部T1,T2が設けられなくてもよい。
【0085】
(g)1次側ピン端子の数および2次側ピン端子の数は、上記実施の形態の数に限定されない。また、1次コイルおよび2次コイルの数も、上記実施の形態の数に限定されず、ボビンBBに複数の1次コイルまたは複数の2次コイルが巻回されてもよい。
【0086】
(5)第2の実施の形態
図20は本発明の第2の実施の形態に係るトランスの前後方向に沿った縦断面図である。
図20に示すように、本実施の形態によるトランスでは、カバー部材CVの上端がE型コアEC2の上端より上方に位置するように、カバー部材CVの高さ方向(Z方向)の寸法が設定される。本実施の形態に係るトランスの他の部分の構成は、第1の実施の形態に係るトランスの構成と同様である。
【0087】
図21はプリント回路基板CBに実装された
図20のトランスおよび電解コンデンサCAにより構成される電源回路の一部を示す図である。一般的な電源回路においては、
図21に示すように、トランスの2次側ピン端子P21,P22の近傍に、E型コアEC2(
図20参照)の上端と同等の高さを有する電解コンデンサCAが実装されることがある。
【0088】
この場合、電解コンデンサCAのケースはトランスの2次側の電位となる。したがって、波高値15kVの雷サージが1次側から2次側へ通過することを防止するためには、E型コアEC2と電解コンデンサCAとの間の空間距離(沿面距離よりも小さい空間距離)を15mm以上にする必要がある。
【0089】
本実施の形態に係るトランスでは、カバー部材CVの上端がE型コアEC2の上端よりも上方に位置する。それにより、カバー部材CVは、E型コアEC2,EC1と電解コンデンサCAとにより挟み込まれるように、E型コアEC2,EC1と電解コンデンサCAとの間に位置する。この場合、一点鎖線で示すように、E型コアEC2の上端とカバー部材CVとの間の空間距離L3が十分に長くなる。ここで、カバー部材CVの上端の高さは、電解コンデンサCAの高さに応じて、E型コアEC2と電解コンデンサCAのケースとの間の空間距離が15mm以上となるように設定される。これにより、電解コンデンサCAをトランスの2次側ピン端子P21,P22の直近に実装することができる。その結果、電源回路を小型化することが可能となる。
【0090】
電解コンデンサは、周囲温度が高いほど、寿命が短くなる性質を有している。本実施の形態に係るトランスでは、1次コイルC1、2次コイルC2およびE型コアEC1,EC2の前方、両側方および下方を覆うようにカバー部材CVが設けられている。それにより、1次コイルC1、2次コイルC2およびE型コアEC1,EC2から電解コンデンサCAへ向かう熱がカバー部材CVにより遮断される。この場合、カバー部材CVが断熱部材として機能する。その結果、電解コンデンサCAの長寿命化が可能となる。
【0091】
また、電解コンデンサは、周囲温度が変化すると、静電容量が変化する性質を有している。本実施の形態に係るトランスでは、1次コイルC1、2次コイルC2およびE型コアEC1,EC2から電解コンデンサCAへ向かう熱がカバー部材CVにより遮断される。それにより、電解コンデンサCAの静電容量の変化を低減することができるので、電源回路の出力電圧を安定化させることができる。
【0092】
(6)第3の実施の形態
図22は本発明の第3の実施の形態に係るトランスを前方斜め上方から見た場合の模式的斜視図である。本実施の形態に係るトランスでは、
図22に示すように、第1の実施の形態に係るトランスにおける2次側ピン端子P21,P22は設けられていない。カバー部材CVの前面部FRの下端には、2次側ピン端子P21,P22の代わりに、2次側引き出し線CP21,CP22の位置決め部として機能する円形の案内部C11,C12が設けられている。案内部C11,C12には、貫通孔h1,h2がそれぞれ形成されている。
【0093】
プリント回路基板へのトランスの実装時には、案内部C11,C12の貫通孔h1,h2がプリント回路基板のスルーホール上に位置決めされ、貫通孔h1,h2に2次側引き出し線CP21,CP22がそれぞれ通される。それにより、2次側引き出し線CP21,CP22がプリント回路基板のスルーホール上に案内され、スルーホールに挿入される。この状態で、2次側引き出し線CP21,CP22がプリント回路基板の配線パターン等に半田付けされる。
【0094】
本実施の形態に係るトランスによれば、トランスの2次側ピン端子P21,P22が不要となる。また、トランスの製造時に、2次側ピン端子P21,P22をカバー部材CVに圧入または一体成形する工程、およびトランスの2次側引き出し線CP21,CP22を2次側ピン端子P21,P22に半田付けする工程が不要となる。
【0095】
(7)第4の実施の形態
図23は本発明の第4の実施の形態に係るトランスを前方斜め上方から見た場合の模式的斜視図である。本実施の形態に係るトランスでは、
図23に示すように、第1の実施の形態に係るトランスにおける2次側ピン端子P21,P22が設けられていない。カバー部材CVの前面部FRの下端には、2次側ピン端子P21,P22の代わりに、2次側引き出し線CP21,CP22の位置決め部として機能する固定部F11,F12が設けられている。固定部F11,F12の各々は、一対の突出部fa,fbからなる。
【0096】
プリント回路基板へのトランスの実装時には、固定部F11,F12がプリント回路基板のスルーホール上に位置決めされる。固定部F11,F12の突出部fa,fb間に2次側引き出し線CP21,CP22がそれぞれ圧入されることにより、2次側引き出し線CP21,CP22がスルーホール上に位置決めされるとともに固定され、スルーホールに挿入される。この状態で、2次側引き出し線CP21,CP22がプリント回路基板の配線パターン等に半田付けされる。
【0097】
本実施の形態に係るトランスによれば、トランスの2次側ピン端子P21,P22が不要となる。また、トランスの製造時に2次側ピン端子P21,P22をカバー部材CVに圧入または一体成形する工程、およびトランスの2次側引き出し線CP21,CP22を2次側ピン端子P21,P22に半田付けする工程が不要となる。さらに、トランスをプリント回路基板にフロー方式の半田付けにより実装する場合には、噴流半田により2次側引き出し線CP21,CP22が浮き上がる現象を抑制することができるので、半田付けの信頼性を向上させることができる。
【0098】
(8)請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
【0099】
上記実施の形態では、ボビンBBがボビンの例であり、巻線部WPが巻線部の例であり、フランジ部FL1が第1のフランジ部の例であり、フランジ部FL2が第2のフランジ部の例であり、E型コアEC1,EC2が磁心の例である。1次コイルC1が第1のコイルの例であり、1次コイルC1の引き出し線CP11,CP12が第1のコイルの引き出し線の例であり、2次コイルC2が第2のコイルの例であり、2次コイルC2の引き出し線CP21,CP22が第2のコイルの引き出し線の例であり、1次側ピン端子P11〜P15が第1の端子の例であり、2次側ピン端子P21,P22が第2の端子の例であり、カバー部材CVがカバー部材の例である。前面部FRおよび傾斜前面部SL1,SL2が前面部の例であり、側面部SD1,SD2が側面部の例であり、底面部BTが底面部の例であり、放熱用凸部T7,T8が放熱用凸部の例である。また、案内部C11,C12が位置決め部または案内部の例であり、固定部F11,F12が位置決め部または固定部の例である。
【0100】
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。
(9)参考形態
(1)本参考形態に係るトランスは、所定の取り付け面に取り付け可能なトランスであって、取り付け面に略垂直に配置される巻線部ならびに巻線部の下端および上端にそれぞれ形成される第1および第2のフランジ部を有するボビンと、ボビンに装着される磁心と、巻線部に巻回される第1および第2のコイルと、巻線部の一方側における第1のフランジ部の下面に設けられ、第1のコイルの引き出し線が接続される第1の端子と、巻線部の他方側においてボビン、第1および第2のコイルならびに磁心の前方および両側方を覆うとともにボビンの第1のフランジ部および磁心の下方を覆うように設けられるカバー部材と、他方側におけるカバー部材の下面に設けられる第2の端子とを備え、第2のコイルの引き出し線は、第2のフランジ部側から引き出され、カバー部材の上部からカバー部材の外側の表面上を経由して第2の端子に接続されるものである。
そのトランスにおいては、ボビンに磁心が装着され、巻線部に第1および第2のコイルが巻回される。巻線部の一方側における第1のフランジ部の下面に第1の端子が設けられ、第1のコイルの引き出し線が第1の端子に接続される。カバー部材は、巻線部の他方側においてボビン、第1および第2のコイルならびに磁心の前方および両側方を覆うとともにボビンの第1のフランジ部および磁心の下方を覆うように設けられる。他方側におけるカバー部材の下面に第2の端子が設けられる。第2のコイルの引き出し線は、第2のフランジ部側から引き出され、カバー部材の上部からカバー部材の外側の表面上を経由して第2の端子に接続される。
このような構成において、第2の端子と磁心との間の第1の沿面距離は、第2の端子からカバー部材の下面、他方側の端面および上面を経由して磁心の下端に至る距離となる。この場合、第1のフランジ部および磁心の下方を覆うカバー部材の部分により第1の沿面距離を十分に長くすることができる。
また、第2の端子と磁心との間の第2の沿面距離は、第2の端子からカバー部材の外側の面を経由して磁心の上端に至る距離となる。この場合、ボビン、第1および第2のコイルならびに磁心の前方および両側方を覆うカバー部材の部分により第2の沿面距離を十分に長くすることができる。
これらの結果、小型化を妨げることなく1次コイルと2次コイルとの間の絶縁距離を大きくすることが可能となる。
(2)カバー部材は、ボビンの第1のフランジ部および磁心の下方において第1のフランジ部の他方側の部分から一方側の部分まで延びるように形成されてもよい。
この場合、トランスの前後方向の寸法を増加させることなく、第1の沿面距離を十分に長くすることができる。
(3)カバー部材は、ボビン、第1および第2のコイルならびに磁心の前方および両側方において第1のフランジ部から第2のフランジ部まで延びるように形成されてもよい。
この場合、トランスの高さ方向の寸法を増加させることなく、第2の沿面距離を十分に長くすることができる。
(4)カバー部材は、巻線部の他方側においてボビン、第1および第2のコイルならびに磁心の前方に位置する前面部と、第1および第2のコイルならびに磁心の両側方にそれぞれ位置する一対の側面部と、ボビンの第1のフランジ部および磁心の下方に位置する底面部とを含み、前面部、側面部および底面部は互いに連続するように一体的に形成されてもよい。
この場合、最小限の部品点数および最小限の工程数でカバー部材を作製することが可能である。
(5)カバー部材の外側の表面上に放熱用凸部が設けられ、第2のコイルの引き出し線は、放熱用凸部に接触するように設けられてもよい。
この場合、第2の端子に第2のコイルの引き出し線が半田付けされる際に、第2の端子から第2のコイルの引き出し線に伝わる熱が放熱用凸部に移動する。それにより、第2のコイルの引き出し線が放熱され、放熱用凸部の位置で引き出し線の被覆の溶融を止めることが可能となる。
(6)カバー部材の上端に第2のコイルの引き出し線を案内するための切欠きが設けられてもよい。
この場合、第2のコイルの引き出し線がカバー部材の外側の表面上を通って容易に第2の端子に導かれる。それにより、第2の端子への引き出し線の半田付け作業を容易に行うことができる。
(7)カバー部材の上端が磁心の上端よりも高い位置まで延びるようにカバー部材が形成されてもよい。
このような構成により、トランスの第2の端子の周辺に電解コンデンサが配置される場合に、電解コンデンサと磁心との間の空間距離を大きくすることができる。それにより、電解コンデンサをトランスの第2の端子の直近に実装することが可能となり、電源回路を小型化することができる。
また、トランスの巻線部または磁心から電解コンデンサへ向かう熱をカバー部材により十分に遮断することができるので、電解コンデンサの長寿命化が可能になるとともに、電源回路の出力電圧の安定化が可能になる。
(8)第2の端子の代わりに、第2のコイルの引き出し線を位置決めする位置決め部が設けられてもよい。
この場合、第2のコイルの引き出し線が位置決め部材により位置決めされるので、第2の端子が不要となる。また、トランスの製造時に、第2の端子をカバー部材に設ける工程、および第2のコイルの引き出し線を第2の端子に接続する工程が不要になる。
(9)位置決め部は、第2のコイルの引き出し線が挿入される貫通孔を有する案内部を含んでもよい。
このような構成により、トランスをプリント回路基板に実装する場合に、第2の端子を設けることなく、第2のコイルの引き出し線をプリント回路基板のスルーホールに容易に導くことができる。
(10)位置決め部は、第2のコイルの引き出し線が圧入されることにより当該引き出し線を固定する固定部を含んでもよい。
このような構成により、トランスをプリント回路基板に実装する場合に、第2の端子を設けることなく、第2のコイルの引き出し線をプリント回路基板の所定箇所で容易に固定することができる。また、トランスをフロー方式の半田付けによりプリント回路基板に実装する場合には、噴流半田により第2のコイルの引き出し線が浮き上がる現象を抑制することができるので、半田付けの信頼性を向上させることができる。