特許第6163121号(P6163121)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6163121
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】自立運転システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/38 20060101AFI20170703BHJP
   H02J 3/46 20060101ALI20170703BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20170703BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
   H02J3/38 110
   H02J3/46
   H02J7/00 L
   H02J7/35 A
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-34908(P2014-34908)
(22)【出願日】2014年2月26日
(65)【公開番号】特開2015-162911(P2015-162911A)
(43)【公開日】2015年9月7日
【審査請求日】2016年4月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000106276
【氏名又は名称】サンケン電気株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】末廣 豊
(72)【発明者】
【氏名】上田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】土屋 静男
(72)【発明者】
【氏名】三瀬 農士
【審査官】 高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−162686(JP,A)
【文献】 特開2013−121205(JP,A)
【文献】 特開2008−278700(JP,A)
【文献】 特開2008−035665(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00 − 5/00
H02J 7/00 − 7/12
H02J 7/34 − 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用電源からの電力を負荷に供給するための電力系統と、
前記商用電源の異常を検出する第1モニタ手段と、
前記電力系統に対して充放電動作を行う系統連系機能及び前記電力系統に定電圧定周波数の電力を供給する自立運転機能を有し、蓄電池を備える第1充放電装置と、
前記電力系統に対して充放電動作を行う系統連系機能及び前記電力系統に定電圧定周波数の電力を供給する自立運転機能を有し、蓄電池を備える充放電装置を少なくとも1つ以上並列に接続して構成される第2充放電装置と、
前記第1充放電装置の電力の状態を検出し検出出力を前記第2充放電装置に伝達する第2モニタ手段と、
前記商用電源と前記電力系統との接続及び遮断を行う切替手段とを備え、
前記商用電源が正常時には,前記切替手段は、前記商用電源と前記電力系統とを接続し、前記第1及び第2充放電装置は、系統連系し、
前記商用電源が異常時には、前記切替手段は、前記商用電源と前記電力系統とを切り離し、前記第1充放電装置は、自立運転し、前記第2充放電装置は、前記第2モニタ手段の検出出力に応じて充放電動作し前記第1充放電装置の自立運転電力が一定になるように制御し、
前記電力系統に電力を供給する互いに異なる種類の複数の分散型電源を備え、
前記第1及び第2充放電装置の各々は、系統連系時に前記電力系統に接続する連系開閉器と自立運転時に前記電力系統に接続する自立開閉器とを有し、
前記電力系統は、前記複数の分散型電源と各々の前記連系開閉器と前記負荷とを接続した第1ラインと、各々の前記自立開閉器を接続した第2ラインとを有し、
前記商用電源が正常時には、前記第1及び第2充放電装置は、前記自立開閉器を開き、前記連系開閉器を閉じて充放電動作させ、前記切替手段は、前記商用電源と前記第1ラインを接続し、
前記商用電源が異常時には、前記第1充放電装置は、前記連系開閉器を開き、前記自立開閉器を閉じて自立運転により出力させ、前記第2充放電装置は、前記連系開閉器を閉じ自立開閉器を開き、前記第2モニタ手段により充放電動作させ、前記切替手段は、前記第1ラインと前記第2ラインとを接続することを特徴とする自立運転システム。
【請求項2】
前記商用電源が異常時には、前記第2充放電装置は、さらに、前記第1充放電装置の自立運転電力が低出力放電になるように動作することを特徴とする請求項1に記載の自立運転システム。
【請求項3】
前記第2充放電装置の電力の状態を検出し検出出力を前記第1充放電装置に伝達する第3モニタ手段を備え、
前記第1及び前記第2充放電装置は、前記蓄電池の充電量に基づき前記自立運転動作と前記充放電動作を切り替えることを特徴とする請求項1又は2記載の自立運転システム。
【請求項4】
前記第1及び第2充放電装置の各々の自立開閉器の出力と前記切替手段との間の前記第2ラインにトランスを設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の自立運転システム。
【請求項5】
前記複数の分散型電源は、逆潮流可能な分散型発電システムと逆潮流不可である負荷追従型発電システムとを有し、
前記逆潮流可能な分散型発電システムは、逆潮流するように前記第1及び第2充放電装置を制御することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の自立運転システム。
【請求項6】
前記第1モニタ手段に代えて、前記第1及び第2充放電装置の各々の連系開閉器の出力に前記商用電源と前記第1ラインとのいずれかに接続切替できる第1及び第2切替スイッチを備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の自立運転システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自立運転が可能な自立運転システムに関し、特に、商用電源異常時にも安定した電力を負荷に供給することができる分散型電源、蓄電池システム等で構成されるエネルギーマネージメントシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光発電システムや燃料電池システムに代表される創エネ分野の分散型電源の開発が進み、実用化へ向けて加速している。さらに分散型電源で発電された電力や夜間電力を貯蔵し、電力ピーク時に放電し、エネルギーの平準化を可能とする蓄電池システムが実用化されつつある。
【0003】
図7は従来の自立運転システムの構成図である。図7では商用電源、電力メーター、分散型電源、負荷、制御部で構成されるHEMS(ホームエネルギーマネージメントシステム)やBEMS(ビルディングエネルギーマネージメントシステム)等のエネルギーマネージメント構成の1例が示されている。分散型電源は商用電源の位相に合わせて系統連系を行い、逆潮流可能な太陽光発電システムは日射量に応じて電力を放電し、負荷以上に発電した時は、系統へ逆潮流させて売電することが可能である (特許文献1) 。
【0004】
また、逆潮流ができない燃料電池システムは発電した電力を負荷で消費し、蓄電池システムは分散型電源の余剰電量を貯蔵、放電しエネルギーを効率よく使用するようにマネージメントされている。
【0005】
さらに、停電が発生した際、各分散電源の出力には特許文献1に公開されているような自立運転専用の出力が搭載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−131056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図7の分散型電源は、商用電圧に同期して系統連系を行うため、商用電源が停電、過電圧、過周波数となった場合、系統連系動作が停止してしまう。また、停電の際には、分散電源に個別に設けられた系統連系とは別のコンセントに自立運転出力(主に単相2線交流100V)を使用することができる。
【0008】
しかしながら、停電時に自立運転出力を用いるためには、各分散電源の専用コンセントに負荷機器を接続しなければならない上に、商用電源受電時に行われていた最適なエネルギーマネージメントにより負荷機器を動作させることができない。
【0009】
さらに、PWM 制御を行うCVCF (定電圧定周波数)インバータによる自立運転出力は、負荷が重くなり、非線形負荷が接続されると電圧歪みが大きくなり、他の分散型電源にも悪影響を与える。
【0010】
本発明は、商用電源が異常時に商用電源を切り離して自立運転による低歪み電圧源を負荷に供給できる自立運転システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決させるために、請求項1の発明は、商用電源からの電力を負荷に供給するための電力系統と、前記商用電源の異常を検出する第1モニタ手段と、前記電力系統に対して充放電動作を行う系統連系機能及び前記電力系統に定電圧定周波数の電力を供給する自立運転機能を有し、蓄電池を備える第1及び第2充放電装置と、前記第1充放電装置の電力の状態を検出し検出出力を前記第2充放電装置に伝達する第2モニタ手段と、前記商用電源と前記電力系統との接続及び遮断を行う切替手段とを備え、前記商用電源が正常時には,前記切替手段は、前記商用電源と前記電力系統とを接続し、前記第1及び第2充放電装置は、系統連系し、前記商用電源が異常時には、前記切替手段は、前記商用電源と前記電力系統とを切り離し、前記第1充放電装置は、自立運転し、前記第2充放電装置は、前記第2モニタ手段の検出出力に応じて充放電動作し前記第1充放電装置の自立運転電力が一定になるように制御することを特徴とする。
【0012】
また、請求項の発明は、前記電力系統に電力を供給する互いに異なる種類の複数の分散型電源を備え、前記第1及び第2充放電装置の各々は、系統連系時に前記電力系統に接続する連系開閉器と自立運転時に前記電力系統に接続する自立開閉器とを有し、前記電力系統は、前記複数の分散型電源と各々の前記連系開閉器と前記負荷とを接続した第1ラインと、各々の前記自立開閉器を接続した第2ラインとを有し、前記商用電源が正常時には、前記第1及び第2充放電装置は、前記自立開閉器を開き、前記連系開閉器を閉じて充放電動作させ、前記切替手段は、前記商用電源と前記第1ラインを接続し、前記商用電源が異常時には、前記第1充放電装置は、前記連系開閉器を開き、前記自立開閉器を閉じて自立運転により出力させ、前記第2充放電装置は、前記連系開閉器を閉じ自立開閉器を開き、前記第2モニタ手段により充放電動作させ、前記切替手段は、前記第1ラインと前記第2ラインとを接続することを特徴とする。
【0013】
請求項の発明は、前記商用電源が異常時には、前記第2充放電装置は、さらに、前記第1充放電装置の自立運転電力が低出力放電になるように動作することを特徴とする。
【0014】
請求項の発明は、前記第2充放電装置の電力の状態を検出し検出出力を前記第1充放電装置に伝達する第3モニタ手段を備え、前記第1及び前記第2充放電装置は、前記蓄電池の充電量に基づき前記自立運転動作と前記充放電動作を切り替えることを特徴とする。
【0015】
請求項の発明は、前記第1及び第2充放電装置の各々の自立開閉器の出力と前記切替手段との間の前記第2ラインにトランスを設けたことを特徴とする。
【0016】
請求項の発明は、前記複数の分散型電源は、逆潮流可能な分散型発電システムと逆潮流不可で2ある負荷追従型発電システムとを有し、前記逆潮流可能な分散型発電システムは、逆潮流するように前記第1及び第2充放電装置を制御することを特徴とする。
【0017】
請求項の発明は、前記第1モニタ手段に代えて、前記第1及び第2充放電装置の各々の連系開閉器の出力に前記商用電源と前記第1ラインとのいずれかに接続切替できる第1及び第2切替スイッチを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明によれば、商用電源の異常時に、第2充放電装置は第1充放電装置の出力する電力が一定になるように制御するので、低歪みの自立運転電圧を負荷に供給できる。
【0019】
また、請求項の発明によれば、商用電源と電力系統との間に2線を入り切りする遮断機ではなく、2線のうち1線を選択する切替手段を用いて、第1ラインを商用電源、第2ラインを充放電装置の自立運転出力とすることで、切替器に不具合があっても確実に商用バスと自立運転バスが接続されないため、電圧源の短絡が起こらない。また、充放電装置の出力に設けた開閉器と切替器を制御することにより、いずれかが溶着したアブノーマル状態にあっても、支障をきたさない。さらに、充放電装置の開閉器を制御することにより、バスを共通化でき、第1及び第2充放電装置の自立運転出力を最も選択数の小さい切替器で系統に連系できる。
【0020】
請求項の発明によれば、第1充放電装置の電力を微小な電力を放電するように第2充放電装置が動作することにより、歪みの極めて小さい自立運転電圧を出力できる。
【0021】
請求項の発明によれば、第1及び第2充放電装置の蓄電池のSOC(state of capacity) 状態に合わせて、動作モードを切り替えることにより、長時間安定した電力システム状態を維持することができる。
【0022】
請求項の発明によれば、第1及び第2充放電装置の自立運転出力が単相2線の場合に、単相2線―単相3線商用トランスを接続することによって、単相3線系統に接続が可能となる。また、トランスの単相3線側で片相のみ逆潮流が発生した場合においても、単相2線の電力変換されるため、インバータがフルブリッジ構成でも電力を吸い込むことができる。
【0023】
請求項の発明によれば、複数の分散型電源のうち、太陽光発電システムのような逆潮流可能な分散型発電システムの発電量が負荷に供給する電力よりも大きい場合は、第1及び第2充放電装置の充電電力を維持または増加させ逆潮流する電力を制御し、また、逆潮流不可である負荷追従型発電システムの発電量が負荷に供給する電力より大きい場合は、第1及び第2充放電装置は放電出力を減らして負荷追従型発電システムの発電量を負荷に供給させ、逆潮流を発生させないように制御することができる。
【0024】
請求項の発明によれば、第1充放電装置の電圧センサにより、商用電源状態を判別することができるため、第1モニタ手段を削除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施例1の自立運転システムの構成図である。
図2】本発明の実施例2の自立運転システムの構成図である。
図3】本発明の実施例3の自立運転システムの構成図である。
図4】本発明の実施例4の自立運転システムの構成図である。
図5】本発明の実施例4の自立運転システム内のトランスの構成図である。
図6】本発明の実施例5の自立運転システムの構成図である。
図7】従来の自立運転システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の自立運転システムの実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0027】
(実施例1)
図1は本発明の実施例1の自立運転システムを示す構成図である。図1において、自立運転システムは、商用電源1、モニタ2〜7、分散型電源10,20、充放電装置30,40、切替器SW1を備える。逆潮流可能な分散型電源10は、太陽電池PV11、パワーコンデショナシステムPCS12を備える。逆潮流不可の分散型電源20は、FC21、パワーコンデショナシステムPCS22を備える。
【0028】
充放電装置30,40は、商用電源1からの電力を負荷RLに供給する電力系統に対して充放電動作を行う系統連系機能及び電力系統に定電圧定周波数の電力を供給する自立運転機能を有する。充放電装置30(第1充放電手段)は、蓄電池31、双方向インバータ(双方向INV)32、連系リレー33、自立リレー34、制御部35を備える。充放電装置(第2充放電手段)40は、蓄電池41、双方向INV42、連系リレー43、自立リレー44、制御部45を備える。連系リレー33,43は、系統連系時に電力系統に接続する連系開閉器からなる。自立リレー34,44は、自立運転時に電力系統に接続する自立開閉器からなる。
【0029】
モニタ2(第1モニタ手段)は、商用電源1の電力を計測するとともに商用電源1の異常を検出する。モニタ6(第2モニタ手段)は、充放電装置30の電力の状態を検出し検出出力を充放電装置40に伝達する。モニタ3〜5は、切替器SW1と負荷RLとの間に接続されている。モニタ3は、逆潮流不可の分散型電源20の逆潮流を防止するため電力調整用の電力を計測する。
【0030】
切替器(切替手段)SW1は、商用電源1と電力系統との接続及び遮断を行う。前記電力系統は、分散型電源10,20と各々の連系開閉器33,43と負荷RLとを接続した第1ラインL1と、各々の自立開閉器34,44を接続した第2ラインL2とを有する。
【0031】
商用電源1が正常時には、切替器SW1は、商用電源1と電力系統とを接続し、充放電装置30,40は、系統連系し、商用電源1が異常時には、切替器SW1は、商用電源1と電力系統とを切り離し、充放電装置30は、自立運転し、充放電装置40は、モニタ6の検出出力に応じて充放電動作し充放電装置30の自立運転電力が一定になるように制御する。
【0032】
また、商用電源1が正常時には、充放電装置30,40は、自立リレー34,44を開き、連系リレー33,43を閉じて充放電動作させ、切替器SW1は、商用電源1と第1ラインL1を接続する。
【0033】
商用電源1が異常時には、充放電装置30は、連系リレー33を開き電力系統から切り離し、自立リレー34を閉じて自立運転によりCVCF 動作による一定電圧を出力させ、充放電装置40は、連系リレー43を閉じ自立リレー44を開き、モニタ6により充放電動作させ、切替器SW1は、第1ラインL1と第2ラインL2とを接続する。これにより、自立運転出力を外部に供給できる。
【0034】
切替器SW1は、商用電源1が異常時に自立運転出力に切り替える。自立運転出力を連系リレー33,43から出力すれば、切替器SW1は開閉器で置き換えられるが、開閉器が閉路故障した場合、商用電源系統に電力が与えられてしまい、電源復旧者が感電の危険が伴う。切替器SW1及び自立運転出力を別に設けることにより、商用電源1が異常時にも商用電源1に電力が供給されるのを防止することができる。
【0035】
次に、商用電源1が電源系統に接続された時の動作について説明する。負荷RLには商用電源1から電力が供給されるが、太陽光発電による分散型電源10により、分散型電源10が発電されている時には、分散型電源10の電力は負荷RLへ供給され、商用電源1からの順潮流電力が小さくなる。また、負荷RLの消費電力よりも分散型電源10の発電電力が大きい場合には、充放電装置30,40に有する蓄電池31,41に充電し又は商用電源1へ逆潮流させることによって、売電が可能である。
【0036】
燃料電池の分散型電源20が発電された場合にも、その電力が負荷RLへ供給され、商用電源1からの順潮流電力が小さくなる。発電量が負荷RLよりも大きい場合、太陽光の場合は逆潮流が可能であるが、燃料電池は逆潮流することができない。このため、負荷量に応じて発電量を制御する必要があり、モニタ3によって逆潮流しないように制御する。
【0037】
充放電装置30,40は、分散型電源20と同様、逆潮流ができないため、モニタ3,4によって、逆潮流が起こらないように出力を低減する制御が行われる。蓄電池31,41を搭載しているため、太陽光や燃料電池が発電している時に充電したり、負荷量が大きい時に放電し、商用電源1のピークを減らすことができる。
【0038】
次に、商用電源1が異常時の動作を説明する。商用電源1が異常状態(停電、過電圧、過不足周波数)となった場合、切替器SW1によって、商用電源1を切り離し、充放電装置30,40の自立運転出力に電力系統を接続する。充放電装置30は、自立リレー34を閉路し、CVCFの正弦波を出力し、充放電装置40は連系リレー43を閉路し、力率1の充電動作あるいは放電動作を行う。また、充放電装置30の逆潮流を防止するために、モニタ6の情報を用いて、充放電装置40を制御する。充放電装置40の逆潮流を防止するために、モニタ7の情報を用いて、充放電装置30を制御する。
【0039】
充放電装置30がCVCF 動作することによって、系統の役割を果たす。ただし、負荷容量<分散型電源10,20の関係が成り立つ時、分散型電源10,20で発電された電力は充放電装置30に逆潮流する。これは、蓄電池31,41に充電するが、逆潮流電力>充放電装置30の容量の関係となった時、充放電装置30の蓄電池が満充電の場合、停止しなければならない。
【0040】
そこで、充放電装置40を用いて、充放電装置30に逆潮流が発生しても、充放電装置40が充電することにより、充放電装置30が常に微小な電力を放電するようにモニタ6を用いて制御する。モニタ6により電力の向きがわかるため、充放電装置30が放電する方向を正として、充放電装置30の放電電力が微小放電電力量基準を下回り、逆潮流が発生した時、充放電装置40は充電動作で充放電装置30に逆潮流する電力を引き込んで、逆潮流を回避する。
【0041】
このように分散型電源10,20の発電量が充放電装置容量よりも大きい時に、充放電装置40で充電し、動作を継続することができる。
【0042】
分散型電源10,20の発電量が小さく、負荷が大きく、負荷容量が充放電装置30,40の容量よりも大きい場合、自立運転出力が過負荷によって、停止する可能性がある。そこで、充放電装置40が放電することにより、充放電装置30が常に微小な電力を放電するようにモニタ6を用いて制御する。モニタ6により電力の向きがわかるため、充放電装置30が放電する方向を正として、微小放電電力量基準を上回った時、充放電装置40は、放電動作で充放電装置30が放電する電力を小さくする。このように分散型電源10,20と負荷容量よりも充放電装置容量が大きい時に、充放電装置40で放電し、動作を継続することができる。
【0043】
また、充放電装置40の充放電によって、充放電装置30の自立運転出力を微小出力とする効果として、高品質な歪みの少ない正弦波電圧とすることができる。一般的なCVCF インバータは、負荷が重い程、正弦波波形に歪みが生じてしまうため、自立運転出力を充放電装置40の制御により、常に軽負荷状態とすることによって歪みの少ない正弦波電圧を供給することができる。
【0044】
なお、充放電装置40を自立運転、充放電装置30を充放電動作とすることも当然のことながら可能であり、蓄電池の充電量に応じて機能を変更することができる。
【0045】
このように、実施例1によれば、商用電源1と電力系統にモニタ2を設置することで、系統の正常、異常判別が行うことができる。また、商用電源1が異常時には、切替器SW1は、商用電源1と電力系統とを切り離し、充放電装置30は、自立運転し、充放電装置40は、モニタ6の検出出力に応じて充放電動作し充放電装置30の自立運転電力が一定になるように制御するので、低歪みの自立運転電圧を負荷RLに供給できる。
【0046】
また、商用電源1と電力系統との間に2線を入り切りする遮断機ではなく、2線のうち1線を選択する切替器SW1を用いて、第1ラインL1を商用電源1、第2ラインL2を充放電装置30の自立運転出力とすることで、切替器SW1に不具合があっても確実に商用バスと自立運転バスが接続されないため、電圧源の短絡が起こらない。また、充放電装置30,40の開閉器33,34,43,44と切替器SW1を制御することにより、いずれかが溶着したアブノーマル状態にあっても、支障をきたさない。さらに、充放電装置30,40の開閉器33,34,43,44を制御することにより、バスを共通化でき、充放電装置30,40の自立運転出力を最も選択数の小さい切替器で系統に連系できる。
【0047】
また、充放電装置30の電力を微小な電力を放電するように充放電装置40が動作することにより、歪みの極めて小さい自立運転電圧出力が可能となる。
【0048】
また、一般的に充放電装置の自立運転出力の負荷が重いほど電圧歪みが大きくなり、自立運転出力と連系した分散型電源に悪影響を及ぼすため、他方の充放電電力調整によって、自立運転充放電装置がエネルギーを吸い込んでいる状態(Wr<Wp Wr:負荷電力 Wp:分散型電源電力)は、充放電装置40を充電モードとし、充放電装置30の吸い込み状態を0に近づけることができる。
【0049】
また、自立運転充放電装置がエネルギーを放電している状態(Wr>Wp)では、充放電装置40を放電モードとし、自立運転出力を無負荷に近づけて、電圧歪みを低減させることができる。
【0050】
また、充放電装置30,40の蓄電池のSOC 状態に合わせて、自立運転動作モードと充放電動作モードとを切り替えることにより、長時間安定した電力システム状態を維持することができる。
【0051】
また、複数の分散型電源10,20のうち、太陽光発電システムのような逆潮流可能な分散型発電システムの発電量が負荷に供給する電力よりも大きい場合は、充放電装置30,40の放電電力を維持または増加させ逆潮流する電力を制御し、また、逆潮流不可である負荷追従型発電システムの発電量が負荷に供給する電力より大きい場合は、充放電装置30,40は放電出力を減らして負荷追従型発電システムの発電量を負荷に供給させ、逆潮流を発生させないように制御することができる。
【0052】
(実施例2)
図2は本発明の実施例2の自立運転システムを示す構成図である。図2において、商用電源1が異常となった場合について説明する。商用電源1が異常状態(停電、過電圧、過不足周波数)となった場合、切替SW1によって、商用電源1を切り離し、充放電装置30,40の自立運転出力に電力系統を接続する。充放電装置30は自立リレー34を閉路し、CVCFの正弦波を出力し、充放電装置40は連系リレー43を閉路し、力率1の充電動作あるいは放電動作を行う。
【0053】
実施例1では、充放電装置30に逆潮流が発生しても、充放電装置40が充電することにより、充放電装置30が常に微小な電力を放電するようにモニタ6を用いて制御していた。
【0054】
これに対して、実施例2では、充放電装置30を制御する制御部35を充放電装置30に設け、充放電装置40を制御する制御部45を充放電装置40に設けている。制御部35と制御部45とは、互いに通信することによって双方の状態量を取得し、取得した状態量に基づき、充放電装置30が常に微小な電力を放電するように充放電装置40を制御する。
【0055】
また、実施例2も実施例1と同様に、蓄電池の充電量に応じて充放電装置2を自立運転、充放電装置1を充放電動作とすることができる。
【0056】
なお、実施例2は、制御部35と制御部45とが互いに通信することによって双方の状態量を取得するので、充放電装置30,40は互いに他方の動作状態を取得するためのモニタ6、モニタ7は必要ない。
【0057】
(実施例3)
図3は本発明の実施例3の自立運転システムを示す構成図である。実施例2では制御部35と制御部45との通信によって双方の状態量を取得し、充放電装置30が常に微小な電力を放電するように充放電装置40を制御していた。
【0058】
これに対して、実施例3では制御部50を設けている。制御部50はモニタ2から商用電源1の状態を検出した検出信号を入力し、充放電装置30,40の状態を判断し、充放電装置30が常に微小な電力を放電するように充放電装置40を制御する。
【0059】
また、実施例3も実施例1及び実施例2と同様に、蓄電池の充電量に応じて充放電装置40を自立運転、充放電装置30を充放電動作とすることができる。
【0060】
なお、実施例3は、制御部50は、モニタ2からの信号を受けて、制御部35,45に制御信号を送出するので、充放電装置30及び充放電装置40は互いに他方の動作状態を取得するためのモニタ6、モニタ7は必要ではない。
【0061】
(実施例4)
図4は本発明の実施例4の自立運転システムを示す構成図である。充放電装置30,40の自立運転出力に単相2線―単相3線商用トランス60を接続する。図5は本発明の実施例4の自立運転システム内のトランス60の構成図である。トランス60は単相2線の一次巻線Pと単相3線の二次巻線S1,S2からなる。
【0062】
実施例4によれば、トランス60により単相3線系統に接続が可能となる。また、トランス60の単相3線側で片相のみ逆潮流が発生した場合においても、単相2線で電力変換されるため、インバータがフルブリッジ構成でも電力を吸い込むことができる。
【0063】
(実施例5)
図6は本発明の実施例5の自立運転システムを示す構成図である。実施例5は充放電装置30,40の系統連系出力に商用電源1と電力系統とのいずれかに接続切替できる切替スイッチSW2,SW3を設けたことを特徴とする。
【0064】
充放電装置30が自立運転、充放電装置40が充放電動作する時に、切替スイッチSW2により充放電装置30の系統連系出力を商用電源側に接続し、切替スイッチSW3により充放電装置40の系統連系出力を電力系統に切り替える。
【0065】
一般的にパワーコンディショナシステムPCS には系統連系出力に電圧センサを設けているため、充放電装置30の電圧センサにより、商用電源状態を判別することができるため、モニタ2を削除することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 商用電源
2〜7 モニタ
10,20 分散型電源
11 PV
12,22 PCS
21 FC
30,40 充放電装置
31,41 蓄電池
32,42 双方向INV
33,43 連系リレー
34,44 自立リレー
35,45,50 制御部
SW1,SW2,SW3 切替器
RL 負荷
T トランス
P 一次巻線
S1,S2 二次巻線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7