(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0015】
1.建設機械
図1は本発明に係る稼働状態記録装置を適用する建設機械の側面図である。
【0016】
図1では建設機械として油圧ショベルを例示している。同図に示した油圧ショベル1は、走行体10、走行体10上に旋回可能に設けた旋回体20、及び旋回体20に俯仰動可能に設けた作業装置(フロント作業機)30を備えている。
【0017】
走行体10は、左右一対の走行装置(クローラ)11及び走行装置フレーム12、左右の走行装置11をそれぞれ駆動する走行用油圧モータ13、走行用油圧モータ13の減速機等を備えている。走行装置11及び走行装置フレーム12についてはそれぞれ左側のもののみ同図に示す。
【0018】
旋回体20は、旋回フレーム21、運転室22、動力室23、カウンタウェイト24を有している。旋回フレーム21は、走行装置フレーム12上に旋回輪を介して搭載されていて、旋回用油圧モータ(不図示)を駆動することで鉛直軸20aを中心にして旋回し、これによって旋回体20が旋回する。運転室22は旋回体20の前部、カウンタウェイト24は旋回体20の後端部、動力室23は旋回体20とカウンタウェイト24の間に位置するように、それぞれ旋回フレーム21に搭載されている。
【0019】
作業装置30は、ブーム31、アーム32、バケット33を備えた多関節構造の掘削作業機である。ブーム31は旋回フレーム21に上下方向(上方向31a及び下方向31b)に俯仰動可能にピン等で連結されている。アーム32はブーム31の先端部に前後方向(クラウド方向32a及びダンプ方向32b)に回動可能にピン等で連結されている。バケット33はアーム32の先端部に前後方向(クラウド方向33a及びダンプ方向33b)に回動可能にピン等で連結されている。そして、ブーム31、アーム32及びバケット33は、ブームシリンダ34、アームシリンダ35及びバケットシリンダ36でそれぞれ駆動される。ブームシリンダ34、アームシリンダ35及びバケットシリンダ36は油圧シリンダである。
【0020】
作業装置30の基本動作を簡単に説明する。例えばブームシリンダ34を後述する油圧システムによって伸ばすとブーム31が上方向31aに回動し、作業装置30全体が上がる。このことから一般的にブーム31の動作方向は上下で表され、上方向31aへの動作はブーム上げ動作、下方向31bへの動作はブーム下げ動作と称される。アーム32及びバケット33は、それぞれアームシリンダ35及びバケットシリンダ36を伸ばすとクラウド方向32a,33aに回動し、運転室22の前方にある土砂(一般的には運転室22よりも低位置の地山の土砂)を掻き込む方向に動作する。反対にアームシリンダ35及びバケットシリンダ36を縮めるとアーム32及びバケット33はダンプ方向32b,33bに回動する。掘削作業時にはこれらの動作をブーム上げ動作及びブーム下げ動作と組み合わせて指示することが多く、例えば、バケット33に土砂を掻き込んだ後、ブーム31を上げてアーム32及びバケット33をダンプさせてダンプトラックのベッセル等(不図示)に放土する。
【0021】
次に、作業装置30を用いた油圧ショベル1の典型的な一作業例として、油圧ショベル1の下方の地山を掘削して土砂をトラックのベッセル等に積み込む作業について簡単に説明する。
【0022】
・手順1
作業装置30を下してバケット33の先端を地山の位置Vの辺りに移動させる。この動作を「掘削位置決め動作」と記載する。
【0023】
・手順2
アーム32及びバケット33をクラウド方向32a,33aに回動させてバケット33内に土砂を掻き込む。この動作を「掘削動作」と記載する。このとき、十分に掘削できなければ再度アーム32及びバケット33を動かして掘削位置を若干ずらして掘削動作をする。この動作は掘削位置決め動作と掘削動作の組み合わせである。
【0024】
・手順3
バケット33に十分な土砂が入ったらブーム上げ動作と旋回動作、必要であればアームダンプ動作を同時に実行する。例えば油圧ショベル1の右側(紙面に直交する方向の奥側)に配置したダンプトラック(不図示)のベッセルに土砂を積み込む場合を例に挙げると、ベッセルの上方まで作業装置30を上げながら右旋回することになる。これは一般にフロント上げ旋回動作といって油圧ショベルではよく見られる複合動作であり、本願明細書では便宜的に「積込動作」と記載する。
【0025】
・手順4
ベッセルの上方で、必要に応じてアーム32をダンプ方向32bに回動させつつバケット33をダンプ方向33bに回動させ、バケット33内の土砂をベッセルに放土する。この動作を「放土動作」と記載する。
【0026】
以上の手順1〜4を繰り返すことによって、掘削した土砂がトラックのベッセル等に積み込まれる。
【0027】
2.操作装置
図2は運転室22内の運転席周りを上から見た模式図である。
【0028】
図2に示したように、運転室22内には運転席25があり、運転者は運転席25に座って操作装置を操作することによって油圧ショベルを運転する。操作装置には、左右の操作装置26L,26R及び27L,27Rが含まれる。左右の操作装置26L,26Rは、作業装置30の動作及び旋回体20の旋回動作を指示するレバー装置である。左右の操作装置27L,27Rは、それぞれ左右の走行装置11の動作を指示するレバー装置である。同図に例示した操作装置の配置は多くの油圧ショベルで採用されている。
【0029】
走行操作用の操作装置27L,27Rは運転席25の前方に位置していて、上部のノブ27aを手で前後に操作することも下部のペダル27bを足で踏んで前後に操作することもできる。この例では操作装置27L,27Rを共に前に倒せば左右の走行装置11の各走行用油圧モータ13が正転し、操作装置27L,27Rの操作量に応じた速度で油圧ショベル1が前進する。このとき、右の操作装置27Rに対して左の操作装置27Lの操作量が小さくすれば左右の走行用油圧モータ13の回転速度差によって油圧ショベル1は前進しながら進行方向を左方向に変化させる。操作装置27L,27Rを共に後(手前)に倒せば左右の走行用油圧モータ13が逆転し、操作装置27L,27Rの操作量に応じた速度で油圧ショベル1が後進する。左右の操作装置27L,27Rを異なる方向に操作すれば、左右の走行用油圧モータ13が互いに逆方向に回転し、ピボットターン等の動作出力がなされる。
【0030】
操作装置26L,26Rは運転席25のそれぞれ左右に位置している。右の操作装置26Rはブーム31とバケット33の動作を指示するためのレバー装置であり、左の操作装置26Lはアーム32と旋回体20の動作を指示するためのレバー装置である。つまり、操作装置26L,26Rは、1本で2つの自由度を制御する複合レバーである。
【0031】
右の操作装置26Rを前に操作するとブームシリンダ34が縮んで操作量に応じた速度でブーム31が下方向31bに動き、後(手前)に操作するとブームシリンダ34が伸びて操作量に応じた速度でブーム31が上方向31aに動く。また、操作装置26Rを右に操作するとバケットシリンダ36が縮んで操作量に応じた速度でバケット33がダンプ方向33bに回動し、左に操作するとバケットシリンダ36が伸びて操作量に応じた速度でバケット33がクラウド方向33aに回動する。ブーム31とバケット33の同時操作も可能であり、例えば操作装置26Rを右後に操作すればブーム上げ動作とバケットダンプ動作が同時に実行される。
【0032】
同様に、左の操作装置26Lを左に操作するとアームシリンダ35が縮んで操作量に応じた速度でアーム32がダンプ方向32bに回動し、右に操作するとアームシリンダ35が伸びて操作量に応じた速度でアーム32がクラウド方向32aに回動する。操作装置26Lを前に操作すると旋回モータが正転して操作量に応じた速度で旋回体20が右に旋回し、後(手前)に操作すると旋回モータが逆転して操作量に応じた速度で旋回体20が左に旋回する。勿論、アーム32と旋回体20の複合動作を指示することもできる。
【0033】
3.油圧システム
図3は油圧アクチュエータを駆動する油圧システムを模式的に表した油圧回路図である。同図では、例えばブームシリンダ34に関する部分を抜き出して例示してあるが、他の油圧アクチュエータに関する部分も同様の構成である。
【0034】
図3に示したように、操作装置26Rにはパイロット弁26Ra,26Rbが備わっている。パイロット弁26Ra,26Rbは比例減圧弁であり、レバー操作によってプッシャ26Pcが押下されると、パイロットポンプ(油圧ポンプ)P2を発生源として押下量(レバー操作量)に対応する大きさの操作信号(パイロット圧)Pa,Pbを出力する機能を持つ。
【0035】
パイロット弁26Ra,26Rbの出力は、ブーム31に対する圧油の流量及び方向を制御する方向流量制御弁28のそれぞれ入力ポート28a,28bに入力される。また、方向流量制御弁28にはPポート、Tポート、Aポート、Bポートが備わっている。Pポート、Tポート、Aポート、Bポートは、それぞれ油圧ポンプP1、タンクT、ブームシリンダ34のボトム側油室、ロッド側油室に接続されている。油圧ポンプP1,P2は原動機Eで駆動される。本実施の形態において原動機Eはエンジン(内燃機関)とする。
【0036】
例えば、操作装置26Rでブーム上げ動作を指示すると、操作量に応じた操作信号Paがパイロット弁26Raから出力される。このとき、反対側の操作信号Pbはタンク圧のままであるため、方向流量制御弁28の入力ポート28aの油圧の上昇に対応して油圧ポンプP1からの作動油がPポート及びAポートを介してブームシリンダ34のボトム側油室に供給され、その結果ブームシリンダ34が伸びてブーム31が上がる。伸長動作に伴ってブームシリンダ34のロッド側油室から排出される作動油は、方向流量制御弁28のBポート及びTポートを経由してタンクTに戻る。
【0037】
上記の油圧ポンプP1、パイロットポンプP2、原動機E、タンクT、方向流量制御弁28等は、旋回体20の動力室23に収容されている。他の油圧アクチュエータの油圧システムは特に説明しないが、ブームシリンダ34の油圧システムと同様である。
【0038】
4.操作信号検出システム
油圧ショベル1を動作させたか否かは、操作装置26L,26R,27L,27Rからの操作信号を検出することで判定することができる。
【0039】
図4は操作装置26L,26R,27L,27Rからの操作信号を検出する操作信号検出システムの模式的な回路図である。同図では、操作装置26L,26R,27L,27Rから出力された操作信号を、作業装置30の動作を指示する作業操作信号Sf、走行装置11の動作を指示する走行操作信号St、旋回体20の動作を指示する旋回操作信号Ssの3種に代表させて検出する場合を例示している。
【0040】
例示した操作信号検出システムには、先に説明したパイロット弁26Ra,26Rbに、パイロット弁26Rc,26Rd,26La〜26Ld,27Ra,27Rb,27La,27Lbを加えた12個のパイロット弁が備わっている。パイロット弁26Rc,26Rdは、パイロット弁26Ra,26Rbと同様に右の操作装置26Rに備えられていて、操作装置26Rの操作によってバケットダンプ、バケットクラウドを指示する操作信号をそれぞれ出力するものである。パイロット弁26La,26Lb,26Lc,26Ldは、左の操作装置26Lに備えられていて、操作装置26Lの操作によってアームダンプ、アームクラウド、旋回右、旋回左を指示する操作信号をそれぞれ出力するものである。パイロット弁27Ra,27Rbは、右走行用の操作装置27Rに備えられていて、操作装置27Rの操作によって右走行装置13の前進、後進を指示する操作信号をそれぞれ出力するものである。パイロット弁27La,27Lbは、左走行用の操作装置27Lに備えられていて、操作装置27Lの操作によって左走行装置13の前進、後進を指示する操作信号をそれぞれ出力するものである。
【0041】
ブーム動作に関するパイロット弁26Ra,26Rbから対応する方向流量調整弁28に接続するパイロットライン(
図3参照)は、それぞれ分岐してシャトル弁41に接続している。同じように、バケット動作に関するパイロット弁26Rc,26Rdから対応する方向流量調整弁(不図示)に接続するパイロットラインは、それぞれ分岐してシャトル弁42に接続している。アーム動作に関するパイロット弁26La,26Lbのパイロットラインはそれぞれ分岐してシャトル弁43に接続している。更に、シャトル弁41,42の出力線はシャトル弁44に、シャトル弁43,44の出力線はシャトル弁45に、シャトル弁45の出力線は作業操作信号検出器40fに接続している。この回路では、作業装置30の動作を指示する少なくとも1種の操作信号が操作装置26L,26Rから出力された場合、最大の信号が選択されて作業操作信号検出器40fに入力される。要するに、操作装置26L,26Rから出力された操作信号がブーム31、アーム32、バケット33のいずれのどちら向きの動作を指示した信号であったかに関係なく、一律に作業操作信号Sfとして作業操作信号検出器40fで検出される。
【0042】
同じ要領で、旋回動作に関するパイロット弁26Lc,26Ldのパイロットラインはそれぞれ分岐してシャトル弁46に接続している。シャトル弁46の出力線は旋回操作信号検出器40sに接続している。この回路では、旋回動作を指示する操作信号が操作装置26Lから出力された場合、左右どちら向きの旋回動作を指示した信号であったかに関係なく、一律に旋回操作信号Ssとして旋回操作信号検出器40sで検出される。
【0043】
同様に、右走行動作に関するパイロット弁27Ra,27Rbのパイロットラインはそれぞれ分岐してシャトル弁47に接続している。左走行動作に関するパイロット弁27La,27Lbのパイロットラインはそれぞれ分岐してシャトル弁48に接続している。そして、シャトル弁47,48の出力線はシャトル弁49に、シャトル弁49の出力線は走行操作信号検出器40tに接続している。この回路では、走行動作を指示する操作信号が操作装置27L,27Rから出力された場合、左右どちらの走行装置13のどちら向きの動作を指示した信号であったかに関係なく、一律に走行操作信号Stとして走行操作信号検出器40tで検出される。
【0044】
操作信号検出器40f,40s,40tは圧力スイッチである。圧力スイッチは油圧を入力としてON/OFFの電圧信号を発生させるもので、この例の場合にはパイロット圧力の大きさが、前述した方向流量制御弁を作動させて油圧アクチュエータ(ブームシリンダ34等)が作動し始める値(又はそれよりも若干少し低く設定した値)に達した場合に設定電圧(例えば5V程度)のON信号を出力し、当該値に至らない場合に設定電圧(例えば0Vに近い値)のOFF信号を出力するように設定されている。
【0045】
従って、作業装置30の何らかの動作が指示された場合には作業操作信号SfはONとなり、作業装置30の動作が何ら指示されない場合には作業操作信号SfがOFFとなる。同様に、旋回操作信号Ssは、旋回動作が指示されればONとなり、指示されなければOFFとなる。走行操作信号Stも、走行動作が指示されればONとなり、指示されなければOFFとなる。
【0046】
5.稼働状態記録装置
稼働状態記録装置は、建設機械(ここでは油圧ショベル1)の稼働状態データを独自方式で取得し、取得した情報を基に作業内容を判定し、判定結果及び燃料消費量を含む稼働状態を記録して、運転者、管理者、サービスマン、その他建設機械の利用、管理、提供、製造、修理等に関連する者(以下「運転者等」という)に稼働状態のデータ(以下、適宜「レポート」という)を適宜の形式で提供するものである。
【0047】
図5は本発明の一実施の形態に係る稼働状態記録装置の機能ブロック図である。
【0048】
同図に示した稼働状態記録装置は、車載マイコン50、サーバ60及び出力装置66を備えており、これら車載マイコン50、サーバ60及び出力装置66に機能が分担されている。
【0049】
(5−1)車載マイコン50
車載マイコン50は、入力インタフェイス51、RTC52、電源装置53、記憶装置54、GPS55、通信装置56、演算処理装置57、及び出力インタフェイス58を備えている。次に各装置の機能について簡単に説明する。
【0050】
・入力インタフェイス51
入力インタフェイス51は、電源信号Sp、作業操作信号Sf、旋回操作信号Ss、走行操作信号St、原動機稼働信号Se、燃料消費量信号Sqを含む油圧ショベル1の稼働信号を入力しデジタル信号化するものである。この入力インタフェイス51を介することで、電源信号Sp及び燃料消費量信号Sqを除く各信号はONであれば「1」、そうでなければ「0」の値に変換される。信号Sf,Ss,Stは、それぞれ作業操作信号検出器40f、旋回操作信号検出器40s、走行操作信号検出器40tからの入力信号である。車載マイコン50に電源信号Spを出力する電源供給切換器40pにはキースイッチを用いることができる。キースイッチは閉状態のときに車載マイコン50に電源を供給するスイッチであり、開状態になると車載マイコン50への電源供給が遮断されて電源信号SpがOFFになる。原動機稼働信号Se及び燃料消費量信号Sqを出力する原動機稼働検出器40eには、例えば電子ガバナのコントローラを用いることができる。原動機稼働検出器40eはCAN等の通信回路を介して入力インタフェイス51に接続している。原動機稼働検出器40eは、エンジン回転数[rpm]を原動機稼働信号Seに変換し、例えばエンジン回転数Neが停止状態0rpmから仮に最大2100rpmまで変化するとした場合、エンジン回転数Neが設定した閾値Ne0(例えば500rpm)以上であればエンジン稼働状態を表す原動機稼働信号Se(=1)、閾値Ne0未満であればエンジン停止状態を表す原動機稼働信号Se(=0)を、入力インタフェイス51に出力する。また、原動機稼働検出器40eは、例えば単位時間当たりの燃料消費量である燃料消費率Δq[L/s]を燃料消費量信号Sqとして入力インタフェイス51に出力する。
【0051】
・RTC52
RTC(リアルタイムクロック)52は車載マイコン50の時計であり、RTC52が刻む時刻(日付を含む)を基に車載マイコン50のデータ処理に使用する時刻、例えば“電源が入った時刻は2012年6月22日5:00:40”という記録が残る。電源が供給されない間もRTC52の時計機能は継続する。
【0052】
・電源装置53
電源装置53には、電源供給切換器40pによって電源供給が遮断された場合に、演算処理装置57によるプログラム処理により所定の条件が満たされてから車載マイコン50の各構成要素への電源供給を停止し、次に電源供給切換器40pによって電源供給がされるまで待機する機能がある。この機能によって、例えば作業の終了又は中断の際に電源供給切換器40pで電源が切られても演算処理装置57や通信装置56等への電源供給が確保され、各処理部の所定の処理が遂行される。
【0053】
・記憶装置54
記憶装置54には、演算処理装置57が実行するプログラム、車載マイコン50に入力された各データ、演算処理装置57の演算データ、各データの時刻等を格納する記憶領域が含まれている。
【0054】
・GPS55
GPS55はGPS衛星Lからの油圧ショベル1の現在の位置データを受信し取得するものである。位置情報を活用する必要がない場合には、GPS55は省略することもできる。
【0055】
・通信装置56
通信装置56は、離れた場所(例えば事務所)にあるサーバ60等との間でデータを授受するための装置であり、記憶装置54に一時記憶されたデータは通信装置56を介してサーバ60に送信される。通信装置56には、携帯電話や衛星通信機器、無線装置等を用いることができる。
【0056】
・出力インタフェイス58
出力インタフェイス58は、通信装置56の他、外部の端末X(パーソナルコンピュータや携帯端末等)との間でデータを授受するためのもので、記憶装置54に格納されたデータや入力インタフェイス51への入力データ、GPS55で受信した位置情報の現在のデータ等を有線通信又は無線通信(赤外線通信等)により端末Xに出力する機能を持つ。通信装置56が使えない地域では、この出力インタフェイス58を介して車載マイコン50を端末Xに接続することで、車載マイコン50からデータをダウンロードすることができる。この端末Xを有線通信、無線通信、又はインターネットによってサーバ60と接続することで、端末Xを介して車載マイコン50とサーバ60との間でデータを授受することができる。
【0057】
・演算処理装置57
演算処理装置57は、電源供給の開始をトリガとして記憶装置54内のプログラムに従って稼働状態データ(作業内容やその時間及び燃料消費に関するデータを含む)を取得又は演算し、サーバ60に送信する手順(後の
図6〜
図8参照)を実行し処理を終了するものである。一連の手順を実行するために、演算処理装置57には、電源入り時間演算装置57a、原動機稼働時間演算装置57b、操作信号判定装置57c、無操作時間演算装置57d、走行単独操作時間演算装置57e、作業単独操作時間演算装置57f、操作時間演算装置57g、作業時間演算装置57h、作業判定装置57i、燃料消費量演算装置57jの各処理部が含まれている。
【0058】
電源入り時間演算装置57aは、電源が入ってから切れるまでの時間、すなわち電源信号SpがONになってからOFFになるまでの時間(以下「電源入り時間T0」という)を演算する機能を果たす。
【0059】
原動機稼働時間演算装置57bは、原動機Eの稼働時間(以下「原動機稼働時間T1」という)を演算する機能を果たす。
【0060】
操作信号判定装置57cは、操作装置26L,26R,27L,27Rから入力された操作信号、厳密には作業操作信号検出器40f、旋回操作信号検出器40s、及び走行操作信号検出器40tからの信号を基に操作パターンを判定する機能を果たす。具体的には、操作装置26L,26R,27L,27Rが操作されたか否か、操作された場合には、走行装置11の動作のみを指示する操作であったか、作業装置30のみの動作を指示する操作であったか、それ以外の動作を指示する操作であったかを判定する。
【0061】
無操作時間演算装置57dは、操作装置26L,26R,27L,27Rから操作信号が入力されなかった時間(以下「無操作時間Ti」という)を演算する機能を果たす。
【0062】
走行単独操作時間演算装置57eは、走行装置11に対する操作信号のみが入力された時間(以下「走行単独操作時間Tt’」という)を演算する機能を果たす。
【0063】
作業単独操作時間演算装置57fは、作業装置30に対する操作信号のみが入力された時間(以下「作業単独操作時間Tf’」という)を演算する機能を果たす。
【0064】
操作時間演算装置57gは、原動機稼働時間T1から無操作時間Tiを差し引いて、操作装置26L,26R,27L,27Rのいずれか1つでも操作された時間(以下「操作時間T2」という)を演算する機能を果たす。
【0065】
作業時間演算装置57hは、操作時間T2と走行単独操作時間Tt’を基に単独又は旋回体20とともに作業装置30を動作させた時間(以下「作業時間To」という)を演算する機能を果たす。
【0066】
作業判定装置57iは、無操作時間Ti、走行単独操作時間Tt’、作業単独操作時間Tf’を基に油圧ショベル1の作業内容を判定する機能を果たす。
【0067】
燃料消費量演算装置57jは、操作判定装置57cの判定に従って、無操作時の燃料消費量(以下「無操作時燃料消費量Qi」という)、走行単独操作時の燃料消費量(以下「走行単独操作時燃料消費量Qt’」という)、それ以外の操作時(作業操作時)の燃料消費量(以下「作業操作時燃料消費量Qo」という)を演算する機能を果たす。なお、後述するが、作業時間Toはセッション単位で掘削操作時間TD又は積込操作時間TLに振り分けられるため、作業操作時燃料消費量Qoは、セッション単位で掘削操作時燃料消費量QD、積込操作時燃料消費量QLのいずれかに振り分けられる。
【0068】
(5−2)サーバ60
サーバ60は、油圧ショベル1から離れた場所に設置されていて、入出力インタフェイス61、記憶装置62、及び演算処理装置63を備えている。各装置の機能について簡単に説明する。
【0069】
・入出力インタフェイス61
入出力インタフェイス61は、通信装置65や出力装置66との間で有線通信、無線通信、又はインターネット等によってデータを授受するための装置である。通信装置65は、通信装置56と同等の装置であり、通信装置56との間で無線通信によってデータを授受するものである。出力装置66は、運転者等に作業内容のレポートを出力する装置であり、表示装置、プリンタ、スピーカ等を含み、表示出力、印刷出力、音声出力等の出力態様については特に限定されない。出力装置66により出力されるレポートには、作業内容別の時間及び燃料消費量が含まれる。
【0070】
・記憶装置62
記憶装置62には、演算処理装置63が実行するプログラム、サーバ60に入力された各データ、演算処理装置63の演算データ等を格納する記憶領域が含まれている。
【0071】
・演算処理装置63
演算処理装置63は、車載マイコン50で取得された情報を記憶装置62内のプログラムに従って処理する機能を果たす(後述する
図9及び
図10参照)。一連の手順を実行するために、演算処理装置63には、レポート作成装置63eが含まれている。
【0072】
レポート作成装置63eは、作業内容のレポート(作業内容別の時間及び燃料消費量を含む稼働状態データ)を出力装置66に出力したり、作業判定結果に位置情報を付加して出力装置66に出力して作業履歴を地図に重ねて表示させたりする機能を果たす。
【0073】
なお、車載マイコン50側の機能を、電源入り時間T0、原動機稼働時間T1、無操作時間Ti、走行単独操作時間Tt’、作業単独操作時間Tf’、燃料消費量等の基礎的なデータを取得しサーバ60に送信する機能に制限し、これらデータを処理する機能を全体としてサーバ60で実行する場合、操作時間演算装置57g、作業時間演算装置57h、作業判定装置57iに相当する操作時間演算装置63a、作業時間演算装置63b、作業判定装置63c(それぞれ点線参照)をサーバ60の演算処理装置63に持たせても良い。反対に、車載マイコン50側でレポート出力ができるようにする場合には、レポート作成装置63eに相当するレポート作成装置57k(点線参照)を車載マイコン50の演算処理装置57に持たせても良い。
【0074】
6.作業判定処理
次に稼働状態記録装置による油圧ショベル1の作業判定処理について説明する。作業判定処理は、稼働状態データ取得の手順、セッション単位の稼働状態データの送信手順、電源入り時間単位の稼働状態データ送信手順、セッション単位のデータ処理手順、及び電源入り時間単位のデータ処理手順に大別される。ただ、本実施の形態の場合、前者を車載マイコン50で実行し、後者をサーバ60で実行する例であるため、車載マイコン50によるサーバ60への稼働状態データ送信の手順が間に入る。
【0075】
以下、稼働状態データ取得手順、稼働状態データ送信手順、作業内容判定手順を順に説明していく。
【0076】
(6−1)稼働状態データ取得手順
図6は本発明の一実施の形態に係る稼働状態記録装置による稼働状態データ取得手順を表すフローチャートである。同図の手順は車載マイコン50の演算処理装置57により実行される手順である。また、この手順は、電源供給切換装置40pにより電源信号SpがOFFにされるまでの間、ステップS102〜ステップS114の手順を設定周期(この例では1秒周期)でサンプリングして無操作時間Ti、走行単独操作時間Tt’、作業単独操作時間Tf’を計時する手順である。本願明細書では、稼働状態データ取得手順を開始してから稼働状態データ送信手順に移行するまでの1期間を便宜的に「セッション」と呼ぶ。本実施の形態は、一定の時間間隔でセッションが更新されていく例である。
【0077】
・スタート
電源供給切換装置40pが閉状態になって入力インタフェイス51に入力される電源信号SpがONになると、車載マイコン50は、記憶装置54のプログラムに従って演算処理装置57により
図6の手順を開始する。
【0078】
・ステップS101
同図の手順を開始すると、演算処理装置57は、まずRTC52及びGPS55から現在の時刻及び位置情報を取得して作業開始時の時刻と場所のデータとして記憶装置54に記録する。
【0079】
また、演算処理装置57は、セッションカウンタC、各時間T0,T1,Ti,Tt’,Tf’、各時間の燃料消費量Qi,Qt’,Qf’,Qo,QD,QL、各時間の積算値ΣT0,ΣT1,ΣTi,ΣTt’,ΣTf’,ΣTD,ΣTL、及び各時間の燃料消費量の積算値ΣQi,ΣQt’,ΣQf’,ΣQD,ΣQLを全てリセットして0(ゼロ)にする。セッションカウンタCはタイマの一種である。
【0080】
そして、電源が入った時刻に応じてセッションカウンタCの初期値を設定する。本実施の形態では、時刻を時・分・秒で管理し、分の値が0となる条件でセッションを分ける場合を例示する。例えば、現在時刻(時、分、秒)が(H,M,S)だとする。H,M,Sは整数で、それぞれ0≦H≦23,0≦M≦59,0≦S≦59の範囲の値である。本実施の形態では、これらH,M,Sを用いてセッションカウンタCの初期値を次の条件で設定する。
【0081】
0≦M<10の場合、C=M×60+S;
10≦M<20の場合、C=(M−10)×60+S;
20≦M<30の場合、C=(M−20)×60+S;
30≦M<40の場合、C=(M−30)×60+S;
40≦M<50の場合、C=(M−40)×60+S;
50≦Mの場合は、C=(M−50)×60+S
例えば、現在の時刻が8時5分20秒であれば、0≦M<10であるため、C=M×60+S=5×60+20=320となる。
【0082】
・ステップS102
続くステップS102において、演算処理装置57は、作業操作信号Sf,旋回操作信号Ss,走行操作信号St、原動機稼働信号Se、燃料消費量信号Sqを入力する。また、電源入り時間演算装置57aにより電源入り時間T0に1秒(操作信号のサンプリング周期)を加算し、電源が入ってからの経過時間をカウントアップする(T0=T0+1)。さらに、演算処理装置57は、セッションカウンタCをカウントアップする(C=C+1)。
【0083】
・ステップS103,S104
ステップS103に手順を移すと、演算処理装置57は、原動機稼働信号Seが1(稼働中)か0(停止中)かを判定し、原動機Eが停止していると判定した場合には操作信号の判定手順をバイパスしてステップ112に手順を移す。原動機Eが停止している場合、油圧ポンプP1,P2も動いておらず操作装置26L,26R,27L,27Rから操作信号が入力され得ないからである。反対に、原動機Eが稼働していると判定した場合、演算処理装置57はステップS104に手順を移し、原動機運転時間演算装置57bによって原動機稼働時間T1を1秒カウントアップする(T1=T1+1)。原動機稼働時間T1をカウントアップしたら、演算処理装置57は、ステップS104からステップS105に手順を移す。
【0084】
・ステップS105,S106
ステップS105では、演算処理装置57は、操作装置26L,26R,27L,27Rからの操作信号Sf,Ss,Stを基に、操作判定装置57cが無操作状態であるか否かを判定する。すなわち、操作信号Sf,Ss,Stがいずれも入力されなかったか否かを判定し、いずれの入力もなかった場合(Sf=Ss=St=0の場合)にはステップS106に手順を移す。ステップS106では、無操作時間演算装置57dによって無操作時間Tiを1秒カウントアップする(Ti=Ti+1)とともに、燃料消費量演算装置57jによって無操作時の燃料消費量Qiの積算値をカウントアップする(Qi=Qi+Sq、Sqは燃料消費率Δq[L/s])。反対に、操作信号Sf,Ss,Stのいずれか1種でも入力があった場合(Sf,Ss,Stの少なくとも1つが1であった場合)には、演算処理装置57はステップS105からステップS107に手順を移す。
【0085】
・ステップS107,S108
ステップS107では、演算処理装置57は、操作装置26L,26R,27L,27Rから入力された操作信号が走行操作信号Stのみか否かを操作判定装置57cによって判定する。入力された操作信号が走行操作信号Stのみであった場合(St=1,Sf=Ss=0の場合)にはステップS108に手順を移す。ステップS108では、走行単独操作時間演算装置57eによって走行単独操作時間Tt’を1秒カウントアップする(Tt’=Tt’+1)とともに、燃料消費量演算装置57jによって走行単独操作時の燃料消費量の積算値をカウントアップする(Qt’=Qt’+Sq、Sqは燃料消費率Δq[L/s])。それ以外の場合には、演算処理装置57はステップS107からステップS109に手順を移す。
【0086】
・ステップS109〜S111
ステップS109では、演算処理装置57は、燃料消費量演算装置57jによって作業操作時の燃料消費量の積算値をカウントアップする(Qo=Qo+Sq、Sqは燃料消費率Δq[L/s])。作業操作とは、エンジン稼働状態にあって無操作でも走行単独操作でもない状態をいい、具体的には作業操作信号Sf及び旋回操作信号Ssの少なくとも一方が入力されている状態である。作業操作時は走行作業以外の作業の最中であり、例えば掘削作業か積込作業をしているものと推定される。
【0087】
続くステップS110では、演算処理装置57は、操作装置26L,26R,27L,27Rから入力された操作信号が作業操作信号Sfのみか否かを操作判定装置57cによって判定する。入力された操作信号が作業操作信号Sfのみであった場合(Sf=1,St=Ss=0の場合)にはステップS111に手順を移し、作業単独操作時間演算装置57fによって作業単独操作時間Tf’を1秒カウントアップする(Tf’=Tf’+1)。それ以外の場合には、演算処理装置57はステップS110からステップS112に手順を移す。
【0088】
・ステップS112,S113
ステップS112では、演算処理装置57は、セッションカウンタCがまだ設定値C0に達していないか否かを判定する。Cの値が設定値C0未満である場合には(C<C0)、演算処理装置57は、ステップS112から直接ステップS114に手順を移し、Cの値が設定値C0である場合(C=C0)には、ステップS112からステップS113のセッションデータ送信手順(詳細は後述)を実行した上でステップS114に手順を移す。C0の値は適宜変更可能であるが、ここではC=600とする。この場合、C=C0の条件下では、時刻の分・秒の値が0(0分00秒、10分00秒、20分00秒、30分00秒、40分00秒、50分00秒のいずれか)となる。したがって、本実施の形態では電源が入っている間、毎時0分丁度、10分丁度、20分丁度、30分丁度、40分丁度、50分丁度と定時かつ10分間隔でセッション単位の稼働状態データがサーバ60に送信される。
図6の手順は電源が入っている間毎秒処理されるので、例えば電源が入った時のセッションカウンタCの初期値が320の場合、278秒でC=600となる。なお、例えばRTC52の精度によりセッションの区切りが正確な時刻とずれる場合はあるが、その程度の誤差は作業判定やレポートの結果に影響しないので許容される。
【0089】
・ステップS114
ステップS114では、演算処理装置57は、電源が切られたか否か、すなわち電源信号SpがOFFになったか否かを判定する。電源が入っていれば、演算処理装置57はステップS114からステップS102に手順を戻し、電源が入っている限りステップS102〜S114の毎秒処理を繰り返し実行する。電源が切れていれば、演算処理装置57は
図6の稼働状態データ取得手順を終了し、ステップS114から
図8のステップS115に手順を移して稼働状態データ送信手順に移行する。
【0090】
(6−2)セッション単位の稼働状態データの送信手順
図7は本発明の一実施の形態に係る稼働状態記録装置によるセッション単位の稼働状態データの送信手順を表すフローチャートである。
図7のステップS113a〜S113fの手順は、ステップS112(
図6参照)でC=C0となる度に車載マイコン50の演算処理装置57により実行され、セッション毎に稼働状態データがサーバ60に送信される。
【0091】
・ステップS113a
図7の手順は現在のセッションの終了処理であると同時に次のセッションの開始処理でもある。電源が入ってからi番目のセッションS(i)の作業が終了して
図7の手順に移行したとして、演算処理装置57は、まずステップS113aで次のセッションS(i+1)の開始時の時刻及び位置のデータとして現在の時刻及び位置情報をRTC52及びGPS55から取得して記憶装置54に記録する。
【0092】
・ステップS113b,S113c
ステップS113bでは、演算処理装置57は次のデータ処理を実行する。まず、演算処理装置57は、操作時間演算装置57gにより、セッションS(i)の間に操作装置26L,26R,27L,27Rの少なくとも1つが操作されていた時間(以下「操作時間T2」という)を演算する。ここでは、操作時間T2は、原動機稼働時間T1と無操作時間Tiの差分として求められる(T2=T1−Ti)。次に、演算処理装置57は、作業時間演算装置57hにより、操作時間T2から走行単独操作時間Tt’の差分をとって作業時間Toを求める(To=T2−Tt’)。最後に、演算処理装置57は、作業判定装置57iにより、作業内容を表す評価係数Rとして作業時間Toに占める作業単独操作時間Tf’の割合(%)を求める(R=Tf’/To)。本実施の形態の場合、原動機稼働時間T1、無操作時間Ti、作業単独操作時間Tf’はいずれも積算値ではなくセッション終了時に後のステップS113fでリセットされる値であるため、これらを基に演算される操作時間T2、作業時間To、評価係数Rは現在のセッションS(i)における値である。
【0093】
続くステップS113cでは、演算処理装置57は、作業判定装置57iによりセッションS(i)の作業内容を判定し、セッションS(i)の作業別の燃料消費量を演算する。この例では、作業時間To中の操作の傾向によりセッションの作業内容を総括的に判定する。例えば評価係数Rの値に応じて、作業装置30の操作が主に掘削動作を指示するものであったか積込動作を指示するものであったかを判定する。具体的には、Rが設定値R0(例えば20%)より大きい場合(R>R0の場合)は作業内容を掘削作業、R0以下の場合(R≦R0の場合)は積込作業と判定する。したがって、作業が掘削作業と判定された場合には、セッションS(i)の時間は掘削操作時間TD、その間の燃料消費量は掘削操作時燃料消費量QDとされる(TD=To,TL=0,QD=Qo,QL=0)。反対に作業が積込作業と判定された場合には、セッションS(i)の時間は積込操作時間TL、その間の燃料消費量は積込操作時燃料消費量QLとされる(TD=0,TL=To,QD=0,QL=Qo)。設定値R0は、経験則から設定することができるが、油圧ショベル1の大きさや稼働現場における地山の性状、運転者の熟練度等に応じて、現場ごと機械ごとに調整することができる。
【0094】
・ステップS113d
ステップS113dでは、演算処理装置57はセッションS(i)の稼働状態データを通信装置56からサーバ60に送信する。ここで送信される稼働状態データは、例えば、(a)開始時刻、(b)開始時の油圧ショベル1の位置、(c)電源入り時間T0、(d)原動機稼働時間T1、(e)無操作時間Ti、(f)操作時間T2、(g)走行単独操作時間Tt’、(h)掘削操作時間TD、(i)積込操作時間TL、(j)無操作時燃料消費量Qi、(k)走行単独操作時燃料消費量Qt’、(l)掘削操作時燃料消費量QD、(m)積込操作時燃料消費量QLである。これらは全てセッションS(i)に関する情報である。
【0095】
・ステップS113e
ステップS113dでは、演算処理装置57は、電源入り時間T0単位の稼働状態データとして電源が入ってから現在までの各時間の積算値を求める。ここで演算される積算値は、例えば、電源入り時間の積算値ΣT0、原動機稼働時間の積算値ΣT1、無操作時間の積算値ΣTi、走行単独操作時間の積算値ΣTt’、掘削操作時間の積算値ΣTD、積込操作時間の積算値ΣTL、無操作時燃料消費量積算値ΣQi、走行単独操作時燃料消費量積算値ΣQt’、掘削操作時燃料消費量積算値ΣQD、及び積込操作時燃料消費量積算値QLである。
【0096】
・ステップS113f
ステップS113fでは、演算処理装置57は、セッションS(i)の終了処理の手順として各計時時間、及び各燃料消費量をリセットし(C=T0=T1=Ti=Tf’=Tt’=0,Qi=Qt’=QD=QL=0)、セッション番号iをカウントアップして(i=i+1)、
図6の手ステップS114に手順を移行する。これにより次のセッションS(i+1)が
図6の手順で開始される。
【0097】
(6−3)電源入り時間単位の稼働状態データ送信手順
図8は本発明の一実施の形態に係る稼働状態記録装置による電源入り時間単位の稼働状態データ送信手順を表すフローチャートである。同図の手順は車載マイコン50の演算処理装置57により記憶装置54のプログラムに従って1サイクルだけ実行される処理であり、電源信号SpがOFFになった場合に、セッションカウンタCの値に関わらずステップS114(
図6参照)から移行して実行される。この手順により電源入り時間T0を通した総括的な稼働状態データがサーバ60に送信される。
【0098】
・ステップS115
演算処理装置57は、まずステップS115で現在の(最後の)セッションS(f)の終了時、すなわち作業終了時の時刻及び位置のデータとして現在の時刻及び位置情報をRTC52及びGPS55から取得して記憶装置54に記録する。
【0099】
・ステップS116〜S119
続くステップS116〜S119の手順は
図7のステップS113b〜S113eの手順と同様である。これら手順を実行することによって、最後のセッションS(f)の稼働状態データがサーバ60に送信され(ステップS118)、各時間の積算値が求められる(ステップS119)。
【0100】
・ステップS120,S121
ステップS120では、演算処理装置57は、これまでの手順で得られた電源入り時間T0を通しての稼働状態データをサーバ60に送信し、ステップS121で電源装置53により車載マイコン50の電源を切断して
図8の手順を終了する。ステップS120で送信される稼働状態データは、ステップS119で演算した各積算値、具体的には(C)合計電源入り時間ΣT0、(D)合計原動機稼働時間ΣT1、(E)合計無操作時間ΣTi、(F)合計走行単独操作時間ΣTt’、(G)合計掘削操作時間ΣTD、(H)合計積込操作時間ΣTL、(I)合計無操作時燃料消費量ΣQi、(J)合計走行単独操作時燃料消費量ΣQt’、(K)合計掘削操作時燃料消費量ΣQD、(L)合計積込操作時燃料消費量ΣQLに、ステップS101で取得した(A)作業開始時の時刻及び位置、及びステップS115で取得した(B)作業終了時の時刻及び位置を加えたものである。
【0101】
(6−4)セッション単位のデータ処理手順
図9は本発明の一実施の形態に係る稼働状態記録装置によるセッション単位のデータ処理手順を表すフローチャートである。同図の手順は、サーバ60において記憶装置62のプログラムに従って演算処理装置63によって実行される処理である。
【0102】
・ステップS151
演算処理装置63は、まずステップS151で車載マイコン50からの稼働状態データの受信があったか否かを判定する。受信がなければ、演算処理装置63は待機してステップS151の手順を繰り返す。
図7のステップS113d又は
図8のステップS118で車載マイコン50から送信されるセッション毎の稼働状態データを受け取ると、演算処理装置63は、ステップS151からステップS152に手順を移す。
【0103】
・ステップS152
ステップS152では、演算処理装置63は、送信されてきた1セッション分の稼働状態データを記憶装置62に記録する。記録する稼働状態データは、前述した項目(a)〜(m)である。
【0104】
・ステップS153
続くステップS153では、演算処理装置63は、レポート作成装置63eによって油圧ショベル1の位置情報を予め与えられた稼働現場の地図データに照合し、地図データ上で油圧ショベル1の位置する区画を判別するとともに、GPS55の位置情報に対応する地図上の位置にプロットし、その位置に時刻や作業内容等の稼働状態データを表示するレポートを作成する。作成されたレポートは、出力装置66に出力される。
【0105】
ステップS153の手順を実行したら、演算処理装置63は
図9の手順の1サイクルを終了する。演算処理装置63は、車載マイコン50から稼働情報データを受信する度に以上のステップS151〜S153を繰り返し実行する。
【0106】
(6−5)電源入り時間単位のデータ処理手順
図10は本発明の一実施の形態に係る稼働状態記録装置による電源入り時間単位のデータ処理手順を表すフローチャートである。
【0107】
同図の手順はサーバ60の演算処理装置63により実行される手順である。
図8のステップS120で車載マイコン50から送信される電源入り時間T0の総括的な稼働状態データ(A)〜(L)を受け取ると、演算処理装置63は、ステップS161からステップS162に手順を移し、送信されてきた電源入り時間T0の稼働状態データを基にレポートを作成し、出力装置66に出力して
図10の手順を終える。レポートに出力する稼働状態データには、受信した稼働状態データの他、受信した稼働状態データから演算した値を含まれ得る。レポートに出力する稼働状態データの例としては、例えば作業の日付、作業開始時刻、作業終了時刻、合計電源入り時間ΣT0、合計原動機稼働時間ΣT1、合計操作時間ΣT2(=ΣT1−ΣTi)、合計無操作時間ΣTi、合計走行単独操作時間ΣTt’、合計掘削操作時間ΣTD、合計積込操作時間ΣTL、合計無操作時燃料消費量ΣQi、合計走行単独操作時燃料消費量ΣQt’、合計掘削操作時燃料消費量ΣQD、合計積込操作時燃料消費量ΣQL、無操作時燃料消費率Δqi(=ΣQi/ΣTi)、走行単独操作時燃料消費率Δqt’(=ΣQt’/ΣTt’)、掘削操作時燃料消費率ΔqD(=ΣQD/ΣTD)、積込操作時燃料消費率ΔqL(=ΣQL/ΣTL)等である。ステップS161,S162の手順により、電源入り時間T0を通した総括的な作業レポートが作成される。
【0108】
7.レポート
図11はレポートの一例であってセッション毎に稼働状態データをまとめた例である。
【0109】
図11のレポートの欄200aには、セッションの開始日時が出力されている。本例では、欄200aに日付を出力しているが、例えば日付はレポート全体の表題にして、欄200aには時刻のみを出力する態様としても良い。欄200cにはセッション終了時刻を出力してあるが、これはプログラムのデバッグの意味合いが強く、レポートとしては無くても成立する。欄200dには、セッション毎に行を変えて、電源入り時間T0、原動機稼働時間T1、操作時間T2、無操作時間Ti、無操作時燃料消費量Qi、走行単独操作時間Tt’、走行単独操作時燃料消費量Qt’、掘削操作時間TD、掘削操作時燃料消費量QD、積込操作時間TL、積込操作時燃料消費量QLが出力されている。原動機入り時間T1=無操作時聞Ti+操作時間T2、操作時間T2=走行単独操作時間Tt’+掘削操作時間TD+積込操作時間TLである。
【0110】
欄200bに表示されたデータは、セッションスタート時の機体の位置情報、すなわち油圧ショベル1の稼働位置を示す緯度経度の数値データであるが、緯度経度の情報を見てもレポートを見る者が現場における油圧ショベルの稼働位置を端的に把握することは難しいため必要なければ出力を省略できる。油圧ショベル1の稼働位置の履歴を端的に把握できるようにするには、例えば欄200eのように緯度経度の数値データを地図上の位置に変換して出力すると良い。具体的には、
図13に示したように地図データ上で作業現場をメッシュ状に複数の領域に仕切っておき、緯度経度のデータ(欄200b)の値に対応する領域の番号(例えば領域100b)を求めて欄200e欄に出力する。
【0111】
図12はレポートの他の例であって電源入り時間T0(通常は一日又は午前午後単位)を一期間として各行に稼働状態データをまとめた例である。
図12のレポートにおいて、
図11のレポートと対応する項目には同図と同符号が付してある。
【0112】
図12のレポートでは、燃料消費量と作業時間の比(燃料消費率)及び燃料消費量の合計値を作業内容毎に計算して出力してある(欄200d参照)。合計燃料消費量は、無操作時燃料消費量Qi、走行単独操作時燃料消費量Qt’、掘削操作時燃料消費量QD及び積込操作時燃料消費量QLの和である。位置情情報については省略してある。
【0113】
電源入り時間T0には通常はエンジンEも作動しているので、電源入り時間T0は原動機稼働時間T1と等しいが、運転者が原動機Eを停止させてラジオやエアコンを使って休憩することもある。
図11又は
図12のレポートで電源入り時間T0と原動機稼働時間T1を確認すればこの点が推測できる。欄200dを参照することにより、セッション毎に作業内容や作業毎の燃料消費量を把握することができ、作業内容と燃料消費量の比較検討に役立つ。また、1日における作業内容等の各項目の時間変化を細かく調査する場合には
図11のレポートの出力態様が適しており、大まかな作業状況を把握することが目的である場合には行数が少なく見易い
図12のレポートが推奨される。
【0114】
8.効果
(1)基本的効果
前述したように、油圧ショベルの典型的な作業では、「掘削位置決め動作」→「掘削動作」→「ダンプへの積込動作又は放土動作」が繰り返され、走行装置11を駆動して掘削位置や掘削場所を変える。こうした作業中の掘削場所の変更は頻繁に発生するが、多くの場合はバケット33の幅程度の移動である。こうした掘削場所をずらす際の走行動作は短距離で時間も短く、離れた場所に移動するような走行動作とは作業としての性質が異なる。また、走行用の操作装置27L,27Rにはペダル27b(
図2参照)が備わっていて、通常は足による操作が主体となる。そのため、掘削や積込の作業中に無意識に足に力が入ってペダル27bを踏み込んでしまう場合がある。但し、踏込量が小さいために方向流量制御弁の作動には至らないため、又は方向流量制御弁が作動しても走行用油圧モータ13の駆動には至らないため、ペダル7bを踏み込んでいることに運転者が気付かないことが多い。以上のような場合に検出された走行操作信号Stを基に走行操作時間が加算されてしまうと、意図しない走行操作や実効を伴わない走行操作の時間が計時されてしまい、作業判定の妥当性を欠いてしまう。そこで、本実施の形態では“走行単独操作”の概念を導入し、運転者が意図的に走行動作を指示した時間として計測することとした。
【0115】
次に、何らかの操作をした時間(操作時間T2=T1−Ti)から走行単独操作時間Tt’を除いた時間を作業時間To(=T2−Tt’)と定義した。油圧ショベル1の作業は掘削積込作業が主であり、走行単独操作の時間は主たる作業のために必要な移動時間とする考えに基づく。作業時間Toは油圧ショベル1が純粋に掘削動作や積込動作をした時間の合計である。
【0116】
また、前述したように油圧ショベル1の典型的な作業では、油圧ショベル1の位置を固定した状態で作業装置30と旋回体20を同時に動かして目標の地山にバケット33を移動させ、作業装置30のみを動かしてバケット33に土砂を掻き入れた後、作業装置30と旋回体20を同時に動かして土砂をダンプに積み込んだり地面に放土したりする。しかし、同じ一連の動作でも、例えば地山が固い又は発破が不十分なためにバケット33に土砂が十分入るまでに掘削動作を繰り返し行わなければならない場合には、作業時間Toに占める作業単独操作時間Tf’の割合が大きくなる。反対に、例えばブルドーザで集積されたルーズな土砂や軟らかい地山の場合、少ない掘削動作でバケット33に十分な土砂が入るので作業単独操作時間Tf’の割合は相対的に下がる。そこで、本実施の形態では評価係数R(%)を導入し、作業単独操作時間Tf’が作業時間ToのR0(%)以上であれば主たる作業が掘削作業であり、それ以下であれば主たる作業が積込作業であったと判定することとした。
【0117】
以上のように、無操作時間Ti、走行単独操作時間Tt’、作業単独操作時間Tf’を基にして作業内容を判定することにより、各作業内容の操作時間の合計が操作時間T2に一致し、現実の作業内容と照らして妥当性の高い判定をすることができる。そして、
図11や
図12に例示したようなレポートにまとめることで一見して容易かつ直接的に油圧ショベル1の作業内容を把握することができる。また、各操作装置の操作時間を単に集計したレポートに比べて、レポートの項目がシンプルで見易くなることもメリットである。また、
図4に示したように、12種の操作信号を走行操作信号St、旋回操作信号Ss、作業操作信号Sfの3種にまとめる構成を採用したことにより、車載マイコン50の処理負担を軽減することができ、センサやケーブル等の部品点数を抑制することができる。これらの効果については特願2013−106338に詳しい。
【0118】
(2)燃料消費を併せて記録するメリット
燃料消費量のデータを併せてレポートすることにより、例えばある時期から走行作業時(走行単独操作時)の燃料消費量が大きくなったのであれば、その時期から地面の状態に変化があって走行抵抗が増加した可能性を知ることができる。また、走行動作に関する油圧切換弁や油圧モータ等の機器の劣化も疑われる。この場合、ユーザは油圧ショベル1の製造元やディーラに問い合わせをすることができるし、反対に製造元やディーラはメンテナンスをユーザに勧めたり、路面の状態や斜度の変化等に関してユーザに問い合わせたりすることもできる。
【0119】
また、「掘削作業」や「積込作業」と判定された作業内容について更なる分析をすることができる。「掘削作業」「積込作業」という分類はあくまでデータに基づく推定であり、操作時間T2から走行単独操作時間Tt’を差し引いた作業時間Toにおいて、例えば作業単独操作時間Tf’が支配的であれば(本例では20%以上)掘削主体であると推定しているに過ぎない。作業単独操作時間Tf’が支配的になる場面は固い地盤を掘削する場合以外にもあり、例えば圃場整備や整地といった軽作業でもあまり旋回動作を伴わずに作業装置30を多用する場合がある。そのため、作業時間Toに占める作業単独操作時間Tf’の割合だけで判断した「掘削作業」との判定結果が現実の作業内容と必ずしも一致するとは限らない。「積込作業」に関しても同様であり、例えばクレーン作業のように、旋回角度が大きいが故に旋回時間が長くなって作業時間Toに占める作業単独操作時間Tf’の割合が減少する結果「積込作業」と判定されることも起こり得る。
【0120】
そこで、本実施の形態の場合には、燃料消費量のデータを併せて記録することによって「掘削作業」「積込作業」と判定された作業内容について更に詳細に作業内容を推定することができる。掘削主体の作業であれば燃料消費量が大きくなり、クレーン作業のような軽負荷作業では燃料消費量が小さくなるため、燃料消費量のデータを併せて継続的に記録しておけば、「掘削作業」と判定される場合であっても、燃料消費量を併せて見ることで表示通り掘削主体の作業であったのか否かが推定できる。
【0121】
積込作業に関しても同様であり、重量物である土砂等をダンプに積み込む作業であれば、バケット33に入れた土砂を作業装置30で持ち上げながら旋回動作をしてダンプに積み込むので、油圧ショベル1の負荷が大きく原動機Eの出力は最大となるため燃料消費量が大きくなる。対して、均し作業やクレーン作業では「積込作業」と判定され得る状況であっても燃料消費量が少なくなる。したがって、燃料消費量の項目を併せて参照することにより、積込作業と分類された作業内容が、表示通り重量物の積込作業であったのかその他の軽作業であったのかを推定することができる。
【0122】
以上のように、作業時間に加えて作業内容毎の燃料消費量を記録することにより、油圧ショベル1の使用状況をレポートでより詳細に推定することができる。
【0123】
9.その他
以上の各実施の形態において、電源入り時間T0を通した稼働状態データは、電源が切れる度に車載マイコン50から送信される態様としたが、サーバ60からの要求に応じて車載マイコン50からサーバ60に送信される構成とすることもできる。また、RTC52と電源装置53の機能によって特定の時刻(例えば午前0時)に自動的に車載マイコン50の電源が入ってサーバ60に送信される構成とすることもできる。後者の場合、特定時刻に稼働状態データを受信して一日単位のレポートを作成したい場合に有用である。
【0124】
また、演算処理装置57による操作信号の判定を毎秒処理とした(操作信号のサンプリング周期を1秒とした)場合を例に挙げて説明したが、サンプリング周期は適宜変更可能である。サンプリング周期を短くした場合には作業判定の基となるデータが増えるので作業内容の判定精度の向上が期待でき、長くしても精度上特に問題なければ作業内容処理システムの処理負担を軽減することができる。更には、サンプリング周期毎に作業内容別の操作時間をカウントアップする計時方法に限らず、例えば操作信号の判定結果から、入力パターンの変化した時刻を取得していき、時刻の差分をとって作業内容別の操作時間を計時する方法も考えられる。
【0125】
また、
図4に示したように、走行装置11、旋回体20及び作業装置30の動作を指示する各操作信号として、3種の操作信号St,Ss,Sfを車載マイコン50に入力する構成を例示したが、このようにまとめず、左走行装置の前進を指示する信号、右旋回を指示する信号、ブーム上げ動作を指示する信号、バケットクラウドを指示する信号・・・等の個々の信号を直接車載マイコン50に入力し、車載マイコン50側で走行操作信号St、作業操作信号Sf、旋回操作信号Ssのいずれに該当するのかを判断する構成とすることもできる。
【0126】
また、稼働状態データ取得手順からレポート作成手順を含めた一連の作業判定手順を車載マイコン50とサーバ60とで分担して実行する場合を例に挙げて説明したが、車載マイコン50とサーバ60の役割分担については適宜変更可能である。また、車載マイコン50かサーバ60のいずれか一方で一連の作業判定手順を実行する構成とすることも考えられる。例えば、油圧ショベル1の運転室22の車載モニタを出力装置66として、一連の手順を車載マイコン50で全て実行し車載モニタにレポートを出力する構成とすることもできる。また、レポート作成の手順までを車載マイコン50で実行し、サーバ60にレポートを送信する構成も考えられる。この場合、サーバ60で多数の油圧ショベル1を管理する場合にはサーバ60の負担を軽減できるメリットがある。反対に、油圧ショベル1では操作信号を処理せず、検出された操作信号を逐次サーバ60に送信し、サーバ60側で操作信号の判定の手順から実行する構成も考えられる。この場合には、車載マイコン50の負担が軽減される。
【0127】
また、油圧ショベル1を本発明に係る稼働状態記録装置の適用対象として例示したが、ホイールローダやクレーン等の他の建設機械にも本発明は適用し得る。また、クローラ式の建設機械に限らず、ホイール式の建設機械にも本発明は適用可能である。さらに、原動機Eとしてエンジン(内燃機関)を用いた建設機械を適用対象として例示したが、電動モータを原動機とする建設機械にも本発明は適用可能である。
【0128】
さらに、パイロット操作式の操作装置を搭載した建設機械を適用対象とし、パイロット圧(油圧信号)を操作信号とする場合を例に挙げて説明したが、例えば電気レバー装置等の電気操作式の操作装置を搭載した建設機械を適用対象とすることもでき、この場合には操作信号は電気信号となる。また、建設機械がリモコン操作される場合もあり、このような場合でも本発明は適用可能である。この場合には無線信号を操作信号として受信することで同様の処理をすることができ、更にはサーバ60に繋げた受信機をリモコンの信号の到達距離の範囲内に設置しておけば、車載マイコン50を経由せずにリモコンの操作信号を直接サーバ60に送信することも可能である。この場合、稼働状態記録装置の構成要素としての車載マイコン50は省略し得る。