(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記上塗り塗料における前記硬化性シリコーンの含有量は、前記ポリイミドの前駆体100質量部に対して、1〜10質量部である、請求項8〜12のいずれか一項に記載の、塗装鋼板の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る塗装鋼板は、鋼板上に塗膜を有する。塗膜は、例えば最表面の塗膜として、後述する上塗り塗膜を含んでいればよい。上記塗膜は、例えば、鋼板の表面に形成される下塗り塗膜や、下塗り塗膜の表面に形成される中塗り塗膜をさらに含んでいてもよい。たとえば、本発明に係る塗装鋼板10は、
図1に示されるように、鋼板11、化成処理皮膜12、下塗り塗膜13および上塗り塗膜14がこの順で重ねられて構成される。下塗り塗膜13は、主に樹脂131で構成され、後述するように種々の顔料などの添加剤132を含みうる。上塗り塗膜14は、後述するように、ポリイミド141で主に構成され、アルミニウム粒子142や無機添加剤143などの添加剤を含みうる。また、上塗り塗膜14は、少なくともその表面に存在する硬化シリコーン144を含む。
【0013】
[鋼板]
上記鋼板は、塗装鋼板の用途や所期の特性などに応じて、公知の鋼板から適宜に選ばれうる。鋼板の例には、亜鉛めっき鋼板(電気Znめっき、溶融Znめっき)、合金化亜鉛めっき鋼板(溶融Znめっき後に合金化処理した合金化溶融Znめっき)、亜鉛合金めっき鋼板(溶融Zn−Mgめっき、溶融Zn−Al−Mgめっき、溶融Zn−Alめっき)、溶融Alめっき鋼板、溶融Al−Siめっき鋼板、ステンレス鋼板、および、溶融Alめっきステンレス鋼板、が含まれる。高温環境における耐食性を向上させる観点によれば、溶融Alめっき鋼板や溶融Al−Siめっき鋼板、ステンレス鋼板が好ましく、さらに耐食性とマイクロ波の反射効率とを高める観点によれば、溶融Alめっきステンレス鋼板であることが好ましい。
【0014】
[化成処理皮膜]
鋼板は、塗装鋼板の耐食性および塗膜密着性を向上させる観点から、化成処理皮膜を有していてもよい。化成処理皮膜は、塗装の下地処理で形成される薄層である。化成処理の例には、クロメート処理、クロムフリー処理、およびリン酸塩処理が含まれる。化成処理皮膜の付着量は、耐食性および塗膜密着性の向上に有効な範囲内から適宜に決められる。たとえば、クロメート皮膜の付着量は、全Cr換算付着量が5〜100mg/m
2となる量である。また、クロムフリー皮膜、例えばTi−Mo複合皮膜の付着量は、全TiおよびMo換算付着量が10〜500mg/m
2となる量であり、フルオロアシッド系皮膜の付着量は、フッ素換算付着量または総金属元素換算付着量が3〜100mg/m
2となる量である。さらに、リン酸塩皮膜の付着量は、リン換算付着量が0.1〜5g/m
2となる量である。
【0015】
化成処理皮膜は、公知の方法で形成されうる。たとえば、化成処理液をロールコート法、スピンコート法、バーコート法、スプレー法などの方法で鋼板の表面に塗布し、水洗せずに乾燥させればよい。乾燥温度および乾燥時間は、水分を蒸発させることができれば特に限定されない。生産性の観点からは、乾燥温度は、鋼板の到達温度で60〜150℃が好ましく、乾燥時間は、2〜10秒が好ましい。
【0016】
[下塗り塗膜]
塗装鋼板は、塗装鋼板の耐食性および塗膜密着性を向上させる観点から、鋼板表面または化成処理皮膜の表面に下塗り塗膜をさらに有していてもよい。通常、下塗り塗膜は、ベースとしての樹脂と防錆顔料とを含有する。下塗り塗膜の樹脂は、上塗り塗膜などの他の塗膜のベースとしての樹脂と同じであってもよいし、異なっていてもよい。下塗り塗膜の樹脂の種類の例には、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノキシ樹脂、および、シリケート樹脂などの無機系樹脂が含まれる。上記防錆顔料の種類の例には、リン酸マグネシウム、リン酸ジルコニウム、リン酸亜鉛、トリポリリン酸アルミニウム、リンモリブデン酸亜鉛、メタホウ酸バリウムおよびシリカ系化合物が含まれる。
【0017】
下塗り塗膜は、他の成分をさらに含有していてもよい。たとえば、下塗り塗膜は、上記有機樹脂を架橋する架橋剤を含有していてもよい。架橋剤の種類の例には、メラミン樹脂およびイソシアネート樹脂が含まれる。また、下塗り塗膜は、着色顔料、メタリック顔料または体質顔料をさらに含有していてもよい。着色顔料の例には、酸化チタン、カーボンブラック、酸化クロム、酸化鉄、ベンガラ、チタンイエロー、コバルトブルー、コバルトグリーン、アニリンブラックおよびフタロシアニンブルーが含まれる。メタリック顔料の例には、アルミニウムフレーク(ノンリーフィングタイプ)、ブロンズフレーク、銅フレーク、ステンレス鋼フレークおよびニッケルフレークが含まれる。体質顔料の例には、硫酸バリウム、シリカおよび炭酸カルシウムが含まれる。
【0018】
さらに、下塗り塗膜は、顔料分散剤を含有していてもよい。顔料分散剤の例には、不飽和カルボン酸のポリアミノアマイドの溶液(溶剤は、例えば、アルキルベンゼン/エチレングリコールモノブチルエーテル=5/1)、ポリエーテルエステル酸のアミン塩、および、低分子ポリエステル系化合物が含まれる。
【0019】
下塗り塗膜の膜厚は、例えば0.5〜30μmである。
【0020】
[上塗り塗膜]
上塗り塗膜は、塗装鋼板の表面を構成する。上塗り塗膜は、ポリイミドおよび硬化シリコーンを含む。
【0021】
[ポリイミド]
上記ポリイミドは、一種でも二種以上でもよい。当該ポリイミドは、芳香族基を主鎖中に含むことが、耐熱性および上塗り塗膜の強度を高める観点から好ましい。上記ポリイミドのガラス転移温度(Tg)は、耐熱性および接着性の観点から、通常、好ましくは270〜400℃、より好ましくは300〜380℃、さらに好ましくは320〜360℃である。上記ポリイミドのTgは、動的粘弾性測定装置によって測定することができる。
【0022】
ポリイミドは、ジアミンとテトラカルボン酸二無水物を溶剤中で混合することによる反応生成物(ポリイミドの前駆体)を硬化して得られる。上記ポリイミドのガラス転位点(Tg)は、用いるジアミンとテトラカルボン酸二無水物との組合せや含有比率などによって設計することが可能である。たとえば、Tgが270〜400℃のポリイミドを調製するのに好ましいジアミンの例には、4,4’−オキシジアミノベンゼン(4,4’−ジアミノジフェニルエーテル)のようにアミノ基がパラ位にあるジアミンや、1,3−ビス−(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス−(3−アミノフェノキシ)ビフェニルのようにアミノ基がメタ位にあるジアミン、が含まれる。中でも、上記ジアミンが4,4’−オキシジアミノベンゼン(4,4’−ジアミノジフェニルエーテル)または4,4’−ビス−(3−アミノフェノキシ)ビフェニルを含むことが好ましい。上記Tgのポリイミドを調製するのに好ましいテトラカルボン酸二無水物の例には、無水ピロメリット酸(1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物)、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物および3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が含まれる。中でも、上記テトラカルボン酸二無水物が3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物を含むことが好ましい。
【0023】
[硬化シリコーン]
硬化シリコーンは、上塗り塗膜の焼き付け時の加熱などによって硬化したシリコーンである。硬化シリコーンは、後述する硬化性シリコーンの熱硬化などによって得られる。
【0024】
上塗り塗膜における硬化シリコーンの含有量は、少なすぎると、塗装鋼板の繰返し使用によって上塗り塗膜の表面に位置する硬化シリコーンが早期に削り取られることがある。このため、長期間にわたる防汚性の維持が困難となることがある。上塗り塗膜における硬化シリコーンの含有量が多すぎると、硬化シリコーン中に未硬化のシリコーンが含まれることがある。このため、上塗り塗膜の表面でべたつきが発生し、このべたつきに起因して塗装鋼板の加工性が低下することがある。さらに、上塗り塗膜における硬化シリコーンの含有量が多すぎると、ポリイミドと硬化シリコーンの高温での線膨張係数の違いによって、上塗り塗膜における硬化シリコーンの密着性が不十分となり、硬化シリコーンが上塗り塗膜から剥離することがある。このため、塗装鋼板の防汚性が不十分となることがある。このような観点から、上塗り塗膜における硬化シリコーンの含有量は、ポリイミド100質量部に対して1〜10質量部であることが好ましく、2〜6質量部であることがより好ましい。
【0025】
上塗り塗膜は、本発明の効果が得られる範囲で、他の成分をさらに含有していてもよい。他の成分の例には、アルミニウム粒子、前述した着色顔料、顔料分散剤、および、無機添加剤、が含まれる。
【0026】
アルミニウム粒子は、上塗り塗膜に意匠性(メタリック感)を付与するために、上塗り塗料に配合される。アルミニウム粒子におけるアルミニウムの純度は、特に限定されない。たとえば、アルミニウム粒子は、アルミニウムのみから構成されていてもよいし、アルミニウム基合金から構成されていてもよい。アルミニウム粒子の形状の例には、鱗片状(フレーク状)、粒状、板状および塊状が含まれる。上塗り塗膜にメタリック感を付与する観点から、アルミニウム粒子の形状は、鱗片状であることが好ましい。上塗り塗膜におけるアルミニウム粒子の含有量は、例えばポリイミド100質量部に対し0.1〜50質量部である。
【0027】
無機添加材は、上塗り塗膜の硬度および耐摩耗性を向上させるために、上塗り塗料に配合してもよい。無機添加材の例には、ガラスフレーク、グラファイトフレーク、合成マイカフレーク、シリカフレークなどの鱗片状無機添加材;および、チタン酸カリウム繊維、ウォラストナイト繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、アルミナシリケート繊維、シリカ繊維、ロックウール、スラグウール、ガラス繊維、炭素繊維などの無機繊維;が含まれる。
【0028】
上塗り塗膜の膜厚は、特に限定されないが、上塗り塗膜が薄すぎると、塗装鋼板における耐熱性および防汚性が不十分となることがあり、厚すぎると、耐熱性および防汚性は十分に得られるが、製造コストの上昇や塗装鋼板の加工性の低下などの他の理由の観点から好ましくない場合がある。このような観点から、上塗り塗膜の膜厚は、2〜20μmであることが好ましく、3〜15μmであることがより好ましく、5〜10μmであることがさらに好ましい。
【0029】
上塗り塗膜の表面における硬化シリコーンの占有面積率は、5%以上である。上記占有面積率が5%未満であると、後述するロータス効果様の防汚効果が不十分となることがある。上記占有面積率が大きすぎると、前述したように、ポリイミドと硬化シリコーンの高温での線膨張係数の違いによって硬化シリコーンが上塗り塗膜から剥離し、塗装鋼板の防汚性がやや不十分となることがある。このような観点から、上記占有面積率は、5〜70%であることが好ましい。
【0030】
また、上塗り塗膜の表面は、ポリイミドと、硬化シリコーンによる海島構造を含むことが好ましい。なお、「海」は、上塗り塗膜の表面における連続相を、「島」は、上塗り塗膜の表面における分散相を、それぞれ意味する。ポリイミドは、上記海島構造の「海」であってもよいし「島」であってもよく、硬化シリコーンは、上記海島構造の「島」であってもよいし、「海」であってもよい。上記海島構造のうち、ポリイミドが「海」であり、硬化シリコーンが「島」である海島構造は、硬化シリコーンの含有量が多すぎることによるべたつきの発生や塗装鋼板の加工性の低下などを防止する観点から好ましい。
【0031】
さらに、上記島は、略円形であり、個々の島の面積は、300μm
2以下であることが、上記の観点からより好ましい。島の形状について、「略円形」とは、長径と短径との比が0.9〜1.1であることを言う。略円形の島の割合については、島の形状が上記の「略円形」で代表されればよく、例えば、全島の80%以上が上記の略円形に該当すればよい。
【0032】
上塗り塗膜の表面における硬化シリコーンの配置は、
図4Aに示されるような、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた反射電子像によって確認することができる。上記占有面積率、島の形状および島の面積は、当該反射電子像の画像処理によって求められる。
【0033】
また、上塗り塗膜は、下記Bに対する下記Aの比(A/B)が1.1〜100であることが好ましい。ここで、「A」とは、塗り塗膜の表面をATR法による赤外分光分析で測定したときの、1375cm
−1のピーク強度に対する1014cm
−1のピーク強度の比である。また、「B」とは、上塗り塗膜をKBr法による赤外分光分析で測定したときの、1375cm
−1のピーク強度に対する1014cm
−1のピーク強度の比である。上記AおよびBのいずれにおいても、1014cm
−1のピーク強度は、ケイ素原子(Si−O−Si)に由来し、上塗り塗膜中の硬化シリコーンの存在量を示している。また、1375cm
−1のピーク強度は、窒素原子(C−N)に由来し、上塗り塗膜中のポリイミドの存在量を示している。
【0034】
上記のピーク強度は、ピークの強度が検出される赤外分光分析法、例えばFT−IRによって測定される。また、ATR法は、公知の通り、表面における赤外分光分析を行う方法である。KBr法は、公知の通り、上塗り塗膜の切片が均一に分散されているKBrの錠剤、または、上記切片がKBrの板で挟持されている試料、を検体として赤外分光分析を行う方法である。KBr法における上塗り塗膜の切片には、上塗り塗膜を剥がしたもの、または、上塗り塗膜を、その表面から上塗り塗膜の厚さの80%、またはそれ以上の深さまで削り取ったものを用いることができる。あるいは、上塗り塗膜を製造する場合には、別途準備された上塗り塗膜の試料を用いることが可能である。
【0035】
上記の比A/Bが1.1未満であることは、上塗り塗膜の内部にも均一に硬化シリコーンが分散していることを意味する。よって、上記の比A/Bが、1.1未満であると、上塗り塗膜の表面に現れる硬化シリコーンの量が不十分となることがある。このため、塗装鋼板の防汚性が十分に得られない場合がある。また、上塗り塗膜内部に存在する硬化シリコーンの量が多くなり、上塗り塗膜の密着性が低下し、上塗り塗膜が剥離することがある。一方、上記の比A/Bが100を超えると、上塗り塗膜の表面近傍における硬化シリコーンの量が多くなり、高温下におけるポリイミドと硬化シリコーンとの線膨張係数の違いによる前述の剥離と防汚性の低下とが生じることがある。
【0036】
上記Aは、0.1〜1.0であることが、前述した上塗り塗膜における塗膜の部分的な剥離の防止と防汚性との両方を発現させる観点から好ましい。上記Aが0.1未満であると、防汚性が不十分となることがある。上記Aが1.0を超えると、前述した上塗り塗膜の部分的な剥離が生じることがある。上記Bは、特には限定されないが、通常、硬化シリコーンは、上塗り塗膜において、その表面に偏在することから、通常、0.01〜0.09である。
【0037】
[塗装鋼板の製造方法]
上記塗装鋼板は、鋼板を含む塗装原板に上塗り塗料を塗布して、上塗り塗料の層を形成する第一の工程と、上塗り塗料の層を加熱し、塗装原板に焼き付けることによって上記上塗り塗膜を形成する第二の工程と、を含む方法によって製造することが可能である。この製造方法は、本発明の効果が得られる範囲で、他の工程をさらに含んでいてもよい。
【0038】
[第一の工程]
塗装原板は、鋼板そのものであってもよいし、上記化成処理皮膜を有する鋼板であってもよいし、上記下塗り塗膜を有する鋼板であってもよい。下塗り塗膜は、下塗り塗料を、鋼板または化成処理皮膜の表面に塗布し、焼き付けることによって作製されうる。
【0039】
下塗り塗料は、例えば、前述した下塗り塗膜の樹脂またはその前駆体や添加剤などの材料と、溶剤とを混合することによって調製される。
【0040】
上記溶剤は、一種でも二種以上でもよい。溶剤の例には、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)やN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジメチルイミダゾリジノン(DMI)、メチルイソブチルケトン(MIBK)などの非プロトン性極性溶剤;ジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)やジエチレングリコールジエチルエーテル(DEDG)などのエーテル類;塩化メチレンや四塩化炭素などのハロゲン化脂肪族炭化水素;キシレンなどの炭化水素;およびアルコール;が含まれる。
【0041】
下塗り塗料は、ロールコート法、フローコート法、カーテンフロー法、バーコート法およびスプレー法などの公知の方法によって塗布することができる。下塗り塗膜の焼き付け温度は、例えば鋼板の到達温度が150〜400℃となる温度であることが好ましく、上記焼き付け時間は、30〜180秒であることが好ましい。
【0042】
上記上塗り塗料は、ポリイミドの前駆体、硬化性シリコーンおよび溶剤を含有する。上塗り塗料は、前述したアルミニウム粒子などの他の成分をさらに含有していてもよい。ポリイミドの前駆体は、第二の工程における加熱などによって上塗り塗膜を構成するポリマーであり、例えば、熱閉環によって上記ポリイミドとなるポリマーや、上塗り塗料中に溶解されているポリイミドなどである。すなわち、ポリイミドの前駆体の例には、ポリアミド酸および可溶性ポリイミドが含まれる。
【0043】
硬化性シリコーンは、例えば、シロキサンの構造単位で構成されるシリコーンと、官能基とから構成される。この官能基は、熱、活性エネルギー線、触媒などによって、シリコーンに、または官能基同士で結合する。官能基の例には、ビニル基や(メタ)アクリロイル基などの炭素間二重結合を有する基、モノヒドロキシシリル基などのヒドロキシシリル基、メトキシシリル基などのアルコキシシリル基、水酸基、カルビノール基、フェノール基、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基が含まれる。
【0044】
上記硬化性シリコーンの分子量は、小さすぎるとシリコーンの硬化性が低下する傾向にあり、大きすぎると粘度が上昇し、上塗り塗膜の表面に十分に現れない恐れがある。このような観点から、上記硬化性シリコーンにおけるシロキサンの構造単位の数は、2〜5000であることが好ましく、10〜2000であることがより好ましい。上記構造単位の数は、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)によって測定することができる。
【0045】
また、硬化性シリコーンにおける上記官能基の当量(g/mol)は、反応性の観点から2〜60000であることが好ましく、10〜30000であることがより好ましい。上記官能基の当量は、例えば核磁気共鳴分光法(NMR)によって測定することができる。
【0046】
硬化性シリコーンの例には、各種の変性シリコーンが含まれ、当該変性シリコーンの例には、アミノ基変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、メタクリル変性シリコーン、ビニル変性シリコーン、シラノール変性シリコーン、フェノール変性シリコーン、エポキシ基変性シリコーン、イソシアネート基変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーンが含まれる。長期の耐食品汚染性の点から、ポリエーテル変性シリコーンが特に好ましい。
【0047】
溶剤は、一種でも二種以上でもよい。溶剤は、ポリイミドの前駆体と硬化性シリコーンの相溶性の向上や、上塗り塗料の粘度の調整などの観点から使用される。上塗り塗料の溶剤には、上記下塗り塗料の溶剤と同様の溶剤を用いることができる。上塗り塗料の溶剤は、一種でもそれ以上でもよく、下塗り塗料の溶剤と同じであっても異なっていてもよい。また、上塗り塗料は、下塗り塗料の塗布方法と同様の方法によって、鋼板、化成処理皮膜または下塗り塗膜の表面に塗布することができる。
【0048】
上記上塗り塗料における上記ポリイミドの前駆体100質量部に対する上記硬化性シリコーンの含有量は、1.0質量部以上である。上記含有量が1.0質量部未満であると、上塗り塗膜の表面における硬化シリコーンの占有面積率が5%未満になることがある。上塗り塗料における上記硬化性シリコーンの含有量は、前述したように、繰り返し使用による防汚性の低下や、上塗り塗膜の部分剥離による防汚性の低下を防止する観点から、ポリイミドの前駆体100質量部に対して、1〜10質量部であることが好ましく、2〜6質量部であることがより好ましい。
【0049】
上塗り塗料は、上塗り塗膜の膜厚が2〜20μmとなるように、鋼板、化成処理皮膜または下塗り塗膜に塗布されることが好ましい。上塗り塗膜の厚さは、上塗り塗料の層の厚さ(当該塗料の塗布量)で調整することが可能である。上塗り塗料の層の厚さは、上塗り塗料の粘度や当該塗料の塗布方法、当該塗料の塗布回数などによって調整することが可能である。
【0050】
[第二の工程]
第二の工程は、その表面に硬化性シリコーンの少なくとも一部が浮き上がっている上塗り塗料の層を、鋼板の到達温度が180℃以上となるように加熱して、上塗り塗膜を形成する。ここで、「その表面に硬化性シリコーンの少なくとも一部が浮き上がっている上塗り塗料の層」とは、硬化性シリコーンの一部がその表面に現れている当該層、を言い、さらに、硬化性シリコーンの一部がその表面に到達しつつあり、表面にはまだ現れていない当該層(実質的には表面に現れていると言える当該層)、も含む。
【0051】
硬化性シリコーンが熱硬化性を有する場合では、上記の加熱により、ポリイミドの前駆体のイミド化とともに、硬化性シリコーンの硬化を行うことが可能である。硬化性シリコーンが上記の熱硬化性を有さない場合では、上記製造方法は、硬化性シリコーンを硬化させるさらなる工程を含んでもよい。たとえば、硬化性シリコーンが光硬化性を有する場合では、上記の加熱工程に加えて、当該加熱工程により形成されたポリイミド膜への光の照射をさらに行うことによって、硬化性シリコーンを硬化させることが可能である。さらに、硬化性シリコーンが熱および光の両方で硬化する性質を有する場合では、上記製造方法は、上記加熱工程の後に、硬化性シリコーンを硬化させる光を上塗り塗膜の表面に照射する工程をさらに含んでもよい。この場合、上塗り塗膜の表面の硬化性シリコーンを十分に硬化させる観点から好ましい。照射される光の例には、紫外線が含まれる。
【0052】
上記到達温度が180℃未満であると、硬化性シリコーンが熱硬化性を有していたとしても、硬化性シリコーンの硬化が不十分となり、上塗り塗膜にベタツキ感が出てくるとともに、硬化性シリコーンの未硬化に起因して塗装鋼板の加工性が低下することがある。また、高温下におけるポリイミドと硬化性シリコーンとの線膨張係数の違いによる剥離と防汚性の低下とが生じることがある。上記到達温度が200℃以上であると、ポリイミドの前駆体のポリイミド化を迅速に行う観点から、より好ましい。
【0053】
上記上塗り塗料の層を上記到達温度となるように加熱することによって、またはその後に硬化性シリコーンの硬化のための適当な工程をさらに含むことによって、硬化性シリコーンが上塗り塗膜の表面に適当に現れた状態で、当該層におけるポリイミドの前駆体のポリイミド化および硬化性シリコーンの熱硬化が行われ、前述した上塗り塗膜が形成される。当該層における、硬化性シリコーンの浮き出す量は、上塗り塗料の層を形成した後の加熱速度、加熱までの待機時間または上記到達温度によって調整することが可能である。すなわち、上塗り塗料の層を加熱しながら硬化性シリコーンを浮き出させてもよいし、上塗り塗料の層で硬化性シリコーンを十分浮き出させた後に、その状態を維持するように迅速に加熱してもよい。後者は、上塗り塗膜における硬化性シリコーンの所期の分布を安定して実現する観点から好ましい。
【0054】
前者の場合、上塗り塗料を塗装原板に塗布してから鋼板の温度が上記到達温度に達するまでの時間(加熱時間)は、30〜240秒であることが、上塗り塗膜の表面における硬化性シリコーンの分布を制御する観点から好ましい。上記加熱時間が30秒未満であると、上塗り塗膜の表面に現れる硬化性シリコーンの量が不十分となることがある。上記加熱時間が240秒を超えると、上塗り塗膜の表面に現れる硬化性シリコーンの量が多すぎる場合がある。このような観点から、上記加熱時間は、30〜240秒であることがより好ましい。
【0055】
後者の場合、上塗り塗料を塗装原板に塗布してから加熱開始までの時間(待機時間)は、5〜60秒であることが好ましい。上記待機時間が5秒未満であると、硬化性シリコーンが上塗り塗料の層の表面に表層に十分に現れず、当該層の内部の硬化性シリコーンの存在量が多くなることがある。この場合、前述したように、上塗り塗膜の密着性が低下し、上塗り塗膜が剥離することがある。上記待機時間が60秒を超えると、実質的に全量の硬化性シリコーンが上塗り塗料の層の表面に現れ、高温下におけるポリイミドと硬化シリコーンとの線膨張係数の違いによる剥離と防汚性の低下とが生じることがある。上記待機時間は、例えば、上塗り塗料の塗布装置と鋼板の加熱装置との間における鋼板の搬送速度によって調整することが可能である。
【0056】
また、後者の場合の加熱時間、すなわち上記待機時間後から鋼板の温度が上記到達温度に達するまでの時間は、30〜180秒であることが、前者の加熱時間と同様の観点から好ましく、30〜150秒であることがより好ましい。
【0057】
図2Aは、上塗り塗料の層中の成分の挙動を模式的に示す図である。上塗り塗料の層31では、
図2Aに示されるように、
図2A中の「△」で表される溶剤311が蒸発し、
図2A中の「○」で表される硬化性シリコーン312は、ベース樹脂(ポリイミドの前駆体)との表面自由エネルギー差によって、当該層の表面に向けて移動する。この際、硬化性シリコーンの液粒子同士が集合しながら当該層の表面に向けて移動する、と考えられる。
【0058】
図2Bは、上塗り塗料の層の表面に硬化性シリコーンが分散して存在する状態を模式的に示す図である。
図2Bに示されるように、上塗り塗料の層の表面に現れた硬化性シリコーンの上記液粒子の集合が十分進まないうちに当該層を加熱、硬化させることにより、微細な島(島が硬化性シリコーン)が分散する微細な海島構造をその表面に有する上塗り塗膜が作製される(
図3A参照)。
【0059】
図2Cは、上塗り塗料の層の表面で硬化性シリコーンが集合した状態を模式的に示す図であり、
図3Bは、硬化性シリコーンが集合した上塗り塗膜の表面の、走査型電子顕微鏡で撮影した反射電子像を示す電子顕微鏡写真である。
図2Cに示されるように、上塗り塗料の層の表面に現れた硬化性シリコーンの上記液粒子を十分に集合させると、
図3Bの写真に示されるように、比較的大きな島が存在する海島構造をその表面に有する上塗り塗膜が作製される。いずれの海島構造における島も、その厚さは数10nmと薄い。
【0060】
上塗り塗膜の耐熱性は、主にポリイミドによってもたらされ、上塗り塗膜の表面における防汚性は、主に硬化シリコーンによってもたらされる。したがって、
図2Bまたは
図2Cに示されるような上塗り塗料の層から形成される上塗り塗膜では、硬化シリコーンの島が存在するために、高い防汚性が発現される。
【0061】
図4は、上塗り塗膜における海島構造と当該塗膜に付着した液状汚染物を模式的に示す図である。上塗り塗膜51は、ポリイミド513の連続相と硬化シリコーン512の分散相とからなる微細な海島構造を有する。
【0062】
上塗り塗膜51の表面には、
図4に示すように、液状の汚染物514が付着する。海島構造における硬化シリコーン512の島の大きさは、汚染物514の液滴に比べて十分に小さい。また、上塗り塗膜51の表面における硬化シリコーン512の島の密度は、十分に高い。このため、汚染物514の液滴は、複数の島にまたがって、上塗り塗膜51の表面に付着する。
【0063】
海であるポリイミド513に比べて、島である硬化シリコーン512の表面張力は小さいので、汚染物514の液滴は、海島構造における各島との接触面で、当該接触面に対する接触角が大きくなる方向の作用を受ける。このため、上塗り塗膜51の表面が優れた撥液性を発現し、汚染物514の液滴の除去を容易にしており、また加熱時には、汚染物を焦げ付きにくくしていると考えられる。
【0064】
このように、上塗り塗膜51の防汚効果は、付着する液滴に対する接触性の観点から、ロータス効果(凹凸が微細で粗い面では、液体が入り込めない多数の隙間が生じ、液体との見かけの接触角が大きくなる現象)と同様の作用による、と考えられる。
【0065】
以上の説明から明らかなように、ポリイミドをベース樹脂とする上塗り塗膜の表面に硬化シリコーンを安定して分布させることにより、優れた耐熱性を有し、かつ親水性および親油性のいずれの液体成分に対しても優れた防汚性を有する上塗り塗膜を形成することが可能である。特に、硬化シリコーンを島とする微細な海島構造を上塗り塗膜の表面に構築することが、防汚性の耐久性および均一性を高める観点から、より一層効果的である。
【0066】
本発明に係る塗装鋼板は、前述したように、耐熱性と防汚性の両方に優れている。よって、特に防汚性については、前述した微細な海島構造を採用することにより、液状の汚れに対してより優れた防汚性を発現する。よって、スチーム加熱が可能な電子レンジなどの調理用器具の、当該電子レンジの加熱室のように、350℃近い温度での使用と、液滴の付着とが生じる部分を構成するための部材またはそのプレコート鋼板として好適に用いられる。
【0067】
以下、実施例を参照して本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されない。
【実施例】
【0068】
[ポリイミド前駆体A〜Eの調製]
300mLのセパラブルフラスコに、溶剤であるDMAc(N,N−ジメチルアセトアミド)120.3g、およびジアミンである1,3−ビス−(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(三井化学株式会社製)23.0g(78.7mmol)を入れて溶解させた。この中に、テトラカルボン酸二無水物である無水ピロメリット酸(1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物)(株式会社ダイセル製)17.1g(78.3mmol)を添加し、ポリイミド前駆体(ポリアミド酸)Aを含有するワニスAを得た。
【0069】
DMAcを138.3g、ジアミンに、78.7mmolの4,4’−ビス−(3−アミノフェノキシ)ビフェニル(三井化学株式会社製)を用いた以外は、ワニスAと同じ方法で、ポリイミド前駆体Bを含有するワニスBを得た。
【0070】
DMAcを103.1g、ジアミンに、4,4’−オキシジアミノベンゼン(4,4’−ジアミノジフェニルエーテル)(セイカ株式会社製)と(1,3−ビス−(3−アミノフェノキシ)ベンゼンとを、モル比9:1で、計78.7mmol用い、テトラカルボン酸二無水物に、無水ピロメリット酸(1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物)と3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(株式会社ダイセル製)とを、モル比9:1で、計78.3mmol用いた以外は、ワニスAと同じ方法で、ポリイミド前駆体Cを含有するワニスCを得た。
【0071】
DMAcを101.0g、ジアミンに、78.7mmolの4,4’−オキシジアミノベンゼン(4,4’−ジアミノジフェニルエーテル)を用い、テトラカルボン酸二無水物に、無水ピロメリット酸(1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物)と3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(株式会社ダイセル製)とを、モル比9:1で、計78.3mmol用いた以外は、ワニスAと同じ方法で、ポリイミド前駆体Dを含有するワニスDを得た。
【0072】
DMAcを98.7g、ジアミンに、78.7mmolの4,4’−オキシジアミノベンゼンを用いた以外は、ワニスAと同じ方法で、ポリイミド前駆体Eを含有するワニスEを得た。
【0073】
得られたポリイミド前駆体A〜Eの原料および当該前駆体のガラス転移温度Tgを下記表1に示す。ワニスA〜Eにおけるポリイミド前駆体A〜Eの含有量は、25.0質量%である。
【0074】
【表1】
【0075】
[上塗り塗料の調製]
下記表2に示す硬化性シリコーンF〜Hを用意した。硬化性シリコーンF〜Hは、いずれも、熱によって硬化する熱硬化性シリコーンである。表2中、「BYK−377」はビックケミー社製であり、「BYK」は同社の登録商標である。「X22−4039」は信越化学工業株式会社製である。「FZ−2191」は東レ・ダウコーニング株式会社製である。
【0076】
【表2】
【0077】
ポリ容器に、下記のワニスA、溶剤、顔料分散剤、着色顔料を仕込み、適量のガラスビーズを加えて、当該ポリ容器をペイントシェーカーで8時間振とうした。その後、ガラスビーズを除去し、得られた混合液に硬化性シリコーンFを加え、プロペラ攪拌機を用いて1000rpmで当該混合液を撹拌し、上塗り塗膜用の塗料(上塗り塗料)aを調製した。上塗り塗料a中の不揮発成分(固形分)の含有率は、22.13質量%である。なお、「カーボンブラックMA100」は、三菱化学株式会社製である。「DISPERBYK−130」は、ビックケミー社製であり、「DISPERBYK」は、同社の登録商標である。また、不揮発成分の含有率は、ポリイミド前駆体、熱硬化性シリコーン、着色顔料、および顔料分散剤中の不揮発成分の合計(28.56質量部)の、下記材料の総量(129.05質量部)に対する割合である。
ワニスA 100質量部
硬化性シリコーンF 1.25質量部
溶剤(N,N−ジメチルアセトアミド) 25質量部
着色顔料(カーボンブラックMA100) 1.8質量部
顔料分散剤(DISPERBYK−130) 1質量部
【0078】
下記表3に示す原料を表3に示す量で用いた以外は、上塗り塗料aと同様にして、上塗り塗料b〜mをそれぞれ調製した。
【0079】
【表3】
【0080】
[塗装鋼板1〜30の作製]
表面仕上げがNo.4研磨仕上げであるSUS430の板(板厚:0.4mm)を用意した。そして、塗装前処理として、アルカリ脱脂と化成処理を行った。アルカリ脱脂は、日本ペイント株式会社製 サーフクリーナー155(濃度:2質量%)を、上記ステンレス鋼板の表面にスプレーし、60℃、10秒間後に湯洗し、次いで水洗する処理である。化成処理は、日本ペイント株式会社製 NRC300を、Cr付着量で50mg/m
2となるように上記ステンレス鋼板の表面に塗布し、次いで上記ステンレス鋼板の到達温度が80℃となる温度で塗布液を乾燥するクロメート処理である。
【0081】
次いで、塗装前処理後のステンレス鋼板の表面、すなわちステンレス鋼板上の化成処理皮膜上に、上塗り塗料aを、バーコーターで乾燥膜厚が5μmとなるように塗布し、上塗り塗料aの層をステンレス鋼板上に形成した。
【0082】
次いで、ステンレス鋼板の到達温度が350℃となる温度で、上塗り塗料aの層を加熱し、当該層をステンレス鋼板に焼き付け、当該層から形成された上塗り塗膜を有する塗装鋼板1を得た。塗装鋼板1の作製において、上塗り塗料aを塗布後、加熱開始までの待機時間は15秒であり、加熱開始から上記到達温度に達するまでの加熱時間は130秒であった。
【0083】
上塗り塗料の種類、待機時間、加熱時間、および、上塗り塗料を塗布後、焼き付けまでの時間、を下記表4および5に示すように変更した以外は、塗装鋼板1と同様にして、塗装鋼板2〜29をそれぞれ作製した。そして、塗装鋼板1〜29のそれぞれについて、乾燥膜厚、占有面積率、硬化シリコーンの分布およびその形状、島の最大面積、および、FT−IRのピーク強度比を求めた。
【0084】
乾燥膜厚は、重量法、すなわち、塗装後の鋼板の重量から、塗膜をビーズショット法などで機械的に除去した後の鋼板の重量を差し引いて塗膜の重量を求め、鋼板面積および塗膜密度で除する方法、によって求めた。
【0085】
また、上塗り塗膜の表面を、走査型電子顕微鏡を用いて、反射電子像100〜3000倍(分布形態が明確にわかる倍率)で観察し、任意の5箇所における当該電子像の写真画像を撮影し、得られた写真画像をデジタル処理し、各写真画像における硬化シリコーンの部分の面積率を算出し、上記5箇所の写真画像の面積率の平均値を占有面積率とした。
【0086】
また、当該写真画像を観察し、ポリイミドまたは硬化シリコーンの連続相中に硬化シリコーンまたはポリイミドの分散相が認められる場合を海島構造の「島」と判定した。また、上記海島構造が認められない場合を「連続」と判定した。そして、島の形状と島の面積を求めた。なお、走査型電子顕微鏡で海島構造の有無を十分合理的に判定できると考えられる5mm
2の領域の任意の5箇所を観察しても海島構造が認められなかった場合は「連続」と判定した。
【0087】
島の形状については、当該写真画像中の島の形状の扁平率(長辺と短辺の比率)を算出した。そして、扁平率が0.9〜1.1である島の個数が、当該写真画像中の全島の個数の95%以上である場合を「略円形」と判定し、80%以上95%未満の場合を「一部略円形」と判定し、80%未満の場合を「不定形」と判定した。
【0088】
一例として、実施例の塗装鋼板3における上塗り塗膜の表面の、走査型電子顕微鏡で撮影した反射電子像を示す電子顕微鏡写真を、
図3Aに示す。塗装鋼板3では、微細な島(島が硬化シリコーン)が分散する微細な海島構造をその表面に有する上塗り塗膜が作製されていることがわかる。
【0089】
また、5つの上記写真画像中の最大の島の面積を、島の最大面積とした。島の形状が一部略円形または不定形の場合では、形状の複雑さのために最大面積の測定が困難な場合があり、この場合の島の最大面積は、概略値として求め、表4および表5中、括弧内に表示した。
【0090】
また、上塗り塗膜の表面を、FT−IR ATR法で、入射角:45°、測定範囲:1000〜3000cm
−1の条件で測定し、得られた測定結果から、1375cm
−1のピーク強度(a2)に対する1014cm
−1のピーク強度(a1)の比(a1/a2)を求め、ピーク強度比における「A」とした。また、塗装鋼板から上塗り塗膜を剥がし、またはミニプレーン(株式会社エス・テイ・ジャパン製)などで深さ4μmまで削って試料片を採取し、KBr法によって作製した試料をFT−IRで測定し、得られた結果から、1375cm
−1のピーク強度(b2)に対する1014cm
−1のピーク強度(b1)の比(b1/b2)を求め、ピーク強度における「B」とした。
【0091】
【表4】
【0092】
【表5】
【0093】
塗装鋼板12は、上塗り塗料lが熱硬化性シリコーンを含有しないことから、塗膜表面における硬化シリコーンの分布(島)が見られなかった。よって、ピーク強度比A/BのAおよびBのいずれも求められなかった。また、塗装鋼板13は、上塗り塗料mがポリイミド前駆体を含有しないことから、硬化シリコーンは、塗膜表面の全体を構成しており、塗膜表面における硬化シリコーンの島は、見られなかった。よって、ピーク強度比A/BのAおよびBのいずれも求められなかった。また、塗装鋼板28では、硬化シリコーンが海となり、ポリイミドが不定形な島として分布した。また、塗装鋼板19および塗装鋼板29では、いずれも、「分布状態」が「連続」であったので、「島の最大面積」は、いずれの塗装鋼板でも求められなかった。
【0094】
さらに、上記化成処理を行わない以外は、塗装鋼板3と同様にして、塗装鋼板30を作製した。塗装鋼板30の上塗り塗膜について、塗装鋼板1と同様に観察、測定したところ、硬化シリコーンの占有面積率は35%であり、分布状態は「島」であり、分布形状は「略円形」であり、島の最大面積は100μm
2であり、ピーク強度比A/Bは30であった。
【0095】
[評価]
塗装鋼板1〜30を下記の項目について評価した。
【0096】
[塗膜密着性]
(1)加工密着性
塗装鋼板1〜30のそれぞれを、幅70mmで幅の2倍程度の長さを切り出し、上塗り塗膜を表側にして2T曲げした後、加工部(折れ曲がった部分)をセロハンテープでテープ剥離した際の上塗り塗膜の残存率を求め、下記の基準で評価した。なお、上塗り塗膜の残存率は、折り曲げ部の両端10mmを除いた50mmの中で、塗膜が残存している部分の寸法を定規で測り、当該50mm幅の領域の面積に対する当該残存部分の面積の割合を算出して求めた。
(塗膜密着性の評価基準)
◎:残存率が100%
○:残存率が95%以上100%未満
●:残存率が90%以上95%未満
△:残存率が80%以上90%未満
▲:残存率が70%以上80%未満
×:残存率が50%以上70%未満
××:残存率が50%未満
【0097】
[耐水二次密着性]
塗装鋼板1〜30のそれぞれを沸騰水に2時間浸漬後、上塗り塗膜の碁盤目テープ剥離を実施した時の塗膜残存率を求め、上記の評価基準で評価した。
【0098】
[耐熱性]
塗装鋼板1〜30のそれぞれを、250℃、300℃および350℃のそれぞれの温度で24時間保管後、上塗り塗膜の碁盤目テープ剥離を実施した時の塗膜残存率を求め、上記の評価基準で評価した。
【0099】
[耐食品汚染性]
(1)初期の耐食品汚染性
未試験状態の塗装鋼板1〜30のそれぞれの上塗り塗膜上に食品を載せ、当該塗装鋼板を250℃で1時間加熱後、塗装鋼板から食品汚染物をティッシュで拭き取ったときの拭き取り状態を観察した。食品には、サラダ油、バター、醤油およびソースの四種を用い、拭き取り状態を食品の種類毎に観察した。そして、下記の評価基準で評価した。
(耐食品汚染性の評価基準)
◎:各食品がティッシュで拭くと容易に除去可能
○:各食品がティッシュで擦ると除去可能(後残りなし)
●:1種類の食品がティッシュで擦ると除去できるが、後残りあり(他の3種は除去可能)
△:1種類の食品がティッシュで擦っても除去不可能(他の3種は除去可能)
▲:2種類の食品がティッシュで擦っても除去不可能(他の2種は除去可能)
×:3種類の食品がティッシュで擦っても除去不可能(他の1種は除去可能)
××:全種類の食品が擦っても除去不可能
【0100】
(2)耐熱試験後の耐食品汚染性
350℃で24時間加熱した後の塗装鋼板に食品を載せる以外は、上記(1)の条件の試験を行い、各食品の拭き取り状態を観察し、上記の評価基準で評価した。
【0101】
(3)連続使用時の耐食品汚染性(連続試験)
上記(1)の条件の試験を同一の塗装鋼板で繰り返し10回行い、10回目の各食品の拭き取り状態を観察し、上記の基準で評価した。
結果を表6に示す。
【0102】
【表6】
【0103】
[クリア塗装鋼板の作製、評価]
下記の原料を、プロペラ攪拌機を用いて1000rmpで攪拌し、上塗り塗膜用の塗料(クリア塗料)を調製した。すなわち、クリア塗料は、着色顔料と顔料分散剤を配合しない以外は上塗り塗料cと同様に調製されている。当該クリア塗料の不揮発成分の含有量は、16.83質量%であり、ポリイミド前駆体(P)100質量部に対する硬化性シリコーン(S)の量は、5.0質量部である。
ワニスC 100質量部
硬化性シリコーンF 1.25質量部
N,N−ジメチルアセトアミド 25質量部
【0104】
上記クリア塗料を用いる以外は塗装鋼板1と同様にして、塗装鋼板31を作製した。塗装鋼板31の上塗りクリア塗膜について、塗装鋼板1と同様に観察、測定したところ、硬化シリコーンの占有面積率は35%であり、分布状態は「島」であり、分布形状は「略円形」であり、島の最大面積は100μm
2であり、ピーク強度比A/Bは30であった。
【0105】
また、塗装鋼板31を、前述した塗膜密着性、耐熱性および耐食品汚染性のそれぞれについて評価したところ、表6中の塗装鋼板3と同じ結果を得た。
【0106】
[塗装鋼板32、33の作製]
鋼板として、溶融Al−9%Siめっき鋼板(板厚:0.4mm、片面めっき付着量40g/m
2)を用意した。塗装前処理として、前述したアルカリ脱脂を行い、化成処理として、Ti系クロムフリー処理を行った。化成処理液にはチタンフッ化水素酸(H
2TiF
6:0.1mol/L)を用い、Tiの付着量が10mg/m
2となるように当該化成処理液を上記めっき鋼板の表面に塗布し、乾燥させた。
【0107】
一方で、100質量部のポリイミド前駆体Bに、防錆顔料として、トリポリリン酸2水素アルミニウム・マグネシウムを30質量部添加し、下塗り塗膜用塗料を調製した。この下塗り塗膜用塗料を、乾燥膜厚が5μmとなるように上記めっき鋼板の化成処理皮膜に塗布し、めっき鋼板の到達温度が280℃となる温度で加熱し、ポリイミドで構成された下塗り塗膜を作製した。
【0108】
室温になった、作製した下塗り塗膜の表面に、上塗り塗料cを、塗装鋼板3と同じ条件で塗布、加熱して、上塗り塗膜を作製した。こうして、塗装鋼板32を作製した。また、下塗り塗膜を作製しない以外は、塗装鋼板32と同様にして、塗装鋼板33を作製した。
【0109】
[評価]
塗装鋼板32、33を、前述した塗膜密着性、耐熱性および耐食品汚染性のそれぞれについて評価した。さらに、塗装鋼板32、33を、下記の耐食性について評価した。
【0110】
[耐食性]
塗装鋼板32および33における平坦部(端部切断面以外の部分)にクロスカットをいれ、35℃に保持した環境で5%塩水を塗装鋼板の塗膜に噴霧する塩水噴霧試験(SST、JIS Z2371に準拠)を240時間実施した。試験後、クロスカット部の最大膨れ幅を観察し、下記の評価基準で評価した。結果を表7に示す。
(耐食性の評価基準)
◎ : 最大膨れ幅が1mm未満
○ : 最大膨れ幅が1mm以上2mm未満
△ : 最大膨れ幅が2mm以上3mm未満
▲ : 最大膨れ幅が3mm以上4mm未満
× : 最大膨れ幅が4mm以上
【0111】
【表7】
【0112】
塗装鋼板1〜5、7〜11および14〜33は、いずれも、塗膜密着性、耐熱性、耐食品汚染性において、少なくとも調理器具用部材として実用上問題のない性能を示している。塗装鋼板32および33は、さらに耐食性において、少なくとも調理器具用部材として実用上問題のない性能を示している。
【0113】
これに対して、塗装鋼板6は、耐食品汚染性において実用上不十分であった。これは、上塗り塗膜の表面における硬化シリコーンの占有面積率が4%と不十分であったため、と考えられる。また、塗装鋼板12も、耐食品汚染性において実用上不十分であった。これは、上塗り塗膜の基材がポリイミドのみであるため(上塗り塗膜が硬化シリコーンを含有していないため)、と考えられる。さらに、塗装鋼板13は、塗膜密着性、耐熱性および耐食品汚染性のいずれにおいても、実用上不十分であった。これは、上塗り塗膜の基材が硬化シリコーンのみであるため(上塗り塗膜がポリイミドを含有していないため)、と考えられる。
【0114】
以上より、鋼板と、塗膜とがこの順で重なって構成され、上記塗膜が上塗り塗膜を含み、上記上塗り塗膜がポリイミドおよび硬化シリコーンを含むとともに塗装鋼板の表面を構成し、上記上塗り塗膜の表面における硬化シリコーンの占有面積率が5%以上である塗装鋼板は、調理器具用部材用の塗装鋼板として、耐熱性と防汚性の両方に優れていることがわかる。
【0115】
また、例えば、塗装鋼板3、7は、いずれも、塗装鋼板6に比べて、耐食品汚染性においてより優れている。また、例えば、塗装鋼板3、8は、いずれも、塗装鋼板9に比べて、耐熱試験後の耐食品汚染性においてより優れている。以上より、上塗り塗膜における硬化シリコーンの含有量がポリイミド100質量部に対して1〜10質量部であることが、防汚性の耐久性の観点からより効果的であることがわかる。
【0116】
また、例えば、塗装鋼板3、7、14は、いずれも、塗装鋼板6に比べて、耐食品汚染性においてより優れている。また、例えば、塗装鋼板3、8、17は、いずれも、塗装鋼板9に比べて、耐熱試験後の耐食品汚染性においてより優れている。以上より、上塗り塗膜の表面における硬化シリコーンの占有面積率が5〜70%であることが、防汚性の耐久性の観点からより効果的であることがわかる。
【0117】
また、例えば、塗装鋼板3は、塗装鋼板29に比べて、耐熱試験後および連続試験における耐食品汚染性においてより優れている。以上より、上塗り塗膜の表面がポリイミドと硬化シリコーンとの海島構造となっていることが、防汚性の耐久性の観点からより効果的であることがわかる。また、例えば、塗装鋼板27は、塗装鋼板28に比べて、耐熱試験後の耐食品汚染性においてより優れている。以上より、上塗り塗膜の表面がポリイミドの海と硬化シリコーンの島による海島構造となっていることが、防汚性の耐久性の観点からより効果的であることがわかる。
【0118】
また、塗装鋼板15〜18において、塗装鋼板15〜17は、塗装鋼板18に比べて、耐熱試験後における耐食品汚染性において、より優れている。また、塗装鋼板20〜22において、塗装鋼板20、21、22の順で、塗膜密着性、耐熱試験後における耐食品汚染性、および、連続試験における耐食品汚染性において、より優れている。以上より、上塗り塗膜の表面における個々の硬化シリコーンの島の面積が300μm
2以下であること、または、上塗り塗膜の表面における硬化シリコーンの島の形状が略円形であること、は、防汚性の耐久性の観点または塗膜密着性の観点からより効果的であることがわかる。
【0119】
また、塗装鋼板15〜18において、塗装鋼板15、16は、塗装鋼板17、18に比べて、耐熱試験後における耐食品汚染性において、より優れている。また、塗装鋼板24〜27において、塗装鋼板25、26は、塗装鋼板24に比べて、耐食品汚染性においてより優れており、塗装鋼板27に比べて、耐熱試験後および連続試験における耐食品汚染性においてより優れている。以上より、上塗り塗膜の表面をATR法による赤外分光分析で測定したときの、1375cm
−1のピーク強度に対する1014cm
−1のピーク強度の比Aとし、上塗り塗膜をKBr法による赤外分光分析で測定したときの、1375cm
−1のピーク強度に対する1014cm
−1のピーク強度の比をBと定義したときに、Bに対するAの比A/Bが1.1〜100であることは、防汚性の耐久性の観点からより効果的であることがわかる。
【0120】
また、塗装鋼板1〜5において、250℃での耐熱性では、塗装鋼板1よりも塗装鋼板2〜5が優れており、300℃での耐熱性では、塗装鋼板1よりも塗装鋼板2、5が優れており、塗装鋼板3、4がより優れており、350℃の耐熱性では、塗装鋼板1よりも塗装鋼板2および5が優れており、塗装鋼板4がより優れており、塗装鋼板3がさらに優れている。また、初期の耐食品汚染性では、塗装鋼板1よりも塗装鋼板2〜5が優れており、耐熱試験後または連続試験における耐食品汚染性では、塗装鋼板1よりも塗装鋼板2〜5が優れており、塗装鋼板2よりも塗装鋼板3〜5がより優れている。以上より、ポリイミドのTgが270〜400℃であることは、耐熱性および防汚性の耐久性の観点からより効果的であることがわかる。
【0121】
また、塗装鋼板20〜23において、塗膜密着性では、塗装鋼板20、21、22、23の順で優れており、耐熱性では、いずれの塗装鋼板も概ね良好であり、耐熱試験後および連続試験における耐食品汚染性では、塗装鋼板20よりも塗装鋼板21〜23が優れており、塗装鋼板21よりも塗装鋼板22、23がより優れている。以上より、鋼板を含む塗装原板に上塗り塗料を塗布して、上塗り塗料の層を形成する工程と、上塗り塗料の層を加熱し、塗装原板に焼き付けることによって上塗り塗膜を形成する工程と、を含み、上塗り塗料は、ポリイミドの前駆体、硬化性シリコーン、および、溶剤、を含有し、その表面に硬化性シリコーンの少なくとも一部が浮き上がっている上塗り塗料の層を、鋼板の到達温度が180℃以上となるように加熱して、上塗り塗膜を形成することは、調理器具用部材用の塗装鋼板として、耐熱性と防汚性の両方に優れている塗装鋼板を提供し得ることがわかる。
【0122】
また、塗装鋼板24〜27において、塗装鋼板25、26は、塗装鋼板24に比べて、耐食品汚染性においてより優れており、塗装鋼板27に比べて、耐熱試験後および連続試験における耐食品汚染性においてより優れている。以上より、上塗り塗料を塗装原板に塗布してから加熱を開始するまでの時間(待機時間)が5〜60秒であることは、防汚性の耐久性に優れる塗装鋼板を提供する観点からより効果的であることがわかる。
【0123】
また、塗装鋼板24、25において、塗装鋼板25は、耐食品汚染性において、塗装鋼板24よりも優れている。また、塗装鋼板27、29において、塗装鋼板27は、耐熱試験後の耐食品汚染性において、塗装鋼板29よりも優れている。以上より、加熱を開始してから到達温度に達するまでの時間(焼き付け時間)が30〜240秒であることは、防汚性の耐久性に優れる塗装鋼板を提供する観点からより効果的であることがわかる。
【0124】
また、塗装鋼板21、22において、塗装鋼板22は、塗膜密着性と、耐熱試験後および連続試験における耐食品汚染性とにおいて、塗装鋼板21よりも優れている。以上より、鋼板の到達温度が200℃以上であることは、塗膜密着性と、防汚性の耐久性とに優れる塗装鋼板を提供する観点からより効果的であることがわかる。
【0125】
また、塗装鋼板14、15において、塗装鋼板15は、連続試験における耐食品汚染性において、塗装鋼板14よりも優れている。また、塗装鋼板16、17において、塗装鋼板16は、耐熱試験後における耐食品汚染性において、塗装鋼板17よりも優れている。以上より、上塗り塗膜の膜厚が2〜20μmとなるように上塗り塗料を塗布することは、防汚性の耐久性に優れる塗装鋼板を提供する観点からより効果的であることがわかる。
【0126】
また、例えば、塗装鋼板3、7は、いずれも、塗装鋼板6に比べて、耐食品汚染性においてより優れている。また、例えば、塗装鋼板3、8は、いずれも、塗装鋼板9に比べて、耐熱試験後の耐食品汚染性においてより優れている。以上より、上塗り塗料における硬化性シリコーンの含有量がポリイミドの前駆体100質量部に対して1〜10質量部であることは、防汚性の耐久性に優れる塗装鋼板を提供する観点からより効果的であることがわかる。
【0127】
また、例えば、塗装鋼板3は、塗装鋼板30に比べて、塗膜密着性において、より優れている。以上より、鋼板の表面に化成処理皮膜を有することは、塗膜密着性に優れる塗装鋼板を提供する観点からより効果的であることがわかる。