特許第6163155号(P6163155)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6163155ディスクフィルタおよびこれに用いられるフィルタディスク
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6163155
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】ディスクフィルタおよびこれに用いられるフィルタディスク
(51)【国際特許分類】
   B01D 29/46 20060101AFI20170703BHJP
【FI】
   B01D29/46 C
   B01D29/46 A
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-519839(P2014-519839)
(86)(22)【出願日】2013年6月4日
(86)【国際出願番号】JP2013003508
(87)【国際公開番号】WO2013183285
(87)【国際公開日】20131212
【審査請求日】2016年5月9日
(31)【優先権主張番号】特願2012-127024(P2012-127024)
(32)【優先日】2012年6月4日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000208765
【氏名又は名称】株式会社エンプラス
(74)【代理人】
【識別番号】100105050
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲田 公一
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 真育
【審査官】 目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−515206(JP,A)
【文献】 特開平03−047505(JP,A)
【文献】 特開2004−181272(JP,A)
【文献】 特開昭59−218298(JP,A)
【文献】 米国特許第03648843(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0173580(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D29/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の入口および出口を有するフィルタケースと、
前記フィルタケース内に配置された長尺なセンタシャフトと、
前記フィルタケース内に着脱可能に収容された所定の厚みを有する円環板状の複数のフィルタディスクと
を備えるディスクフィルタであって、
前記複数のフィルタディスクは、前記フィルタディスクの孔に前記センタシャフトが挿通されて互いに積み重ねられ、
前記フィルタディスクのそれぞれは、
前記フィルタディスクの表面および裏面の少なくとも一方に、前記フィルタディスクの外周と内周とを結ぶ、前記液体の流路を構成するための複数の溝を、前記フィルタディスクの周方向に所定の間隔で有し、
前記溝のそれぞれは、
前記外周から前記内周に向けて曲率が漸増する曲線の形状に形成され、
前記外周における前記溝の前記周方向の開口幅は、前記内周における前記溝の前記周方向の開口幅よりも大きく、
前記溝の向きは、前記フィルタディスクの内周縁で、前記フィルタディスクの径方向に平行である
ディスクフィルタ。
【請求項2】
前記曲線は、クロソイド曲線である、
請求項1に記載のディスクフィルタ。
【請求項3】
前記曲線は、インボリュート曲線である、
請求項1に記載のディスクフィルタ。
【請求項4】
前記曲線は、サイクロイド曲線である、
請求項1に記載のディスクフィルタ。
【請求項5】
前記フィルタディスクのそれぞれは、前記表面および前記裏面の双方に前記複数の前記溝を有し、
平面視における前記表面の前記溝のそれぞれの形状は、平面視における前記裏面の前記溝のそれぞれの形状と異なる、
請求項1〜4のいずれか1項に記載のディスクフィルタ。
【請求項6】
前記表面の溝および前記裏面の溝は、前記周方向における同一方向に向けて前記外周から前記内周に向かうように形成されている、請求項5に記載のディスクフィルタ。
【請求項7】
前記入口は、そこから前記フィルタケース内に流入した液体が前記フィルタケース内においてサイクロン流を発生させるように構成されている、請求項1〜6のいずれか一項に記載のディスクフィルタ。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか1項に記載のディスクフィルタに用いられる、所定の厚みを有する円環板状のフィルタディスクであって、
前記フィルタディスクの表面および裏面の少なくとも一方に、前記フィルタディスクの外周と内周とを結ぶ、前記液体の流路を構成するための複数の溝を、前記フィルタディスクの周方向に所定の間隔で有し、
前記溝のそれぞれは、
前記外周から前記内周に向けて曲率が漸増する曲線の形状に形成され、
前記外周における前記溝の前記周方向の開口幅は、前記内周における前記溝の前記周方向の開口幅よりも大きく、
前記溝の向きは、前記フィルタディスクの内周縁で、前記フィルタディスクの径方向に平行である
フィルタディスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクフィルタおよび当該ディスクフィルタに用いられるフィルタディスクに係り、特に、液体の濾過に好適なディスクフィルタおよび当該ディスクフィルタに用いられるフィルタディスクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、灌漑用等の各種の用途に用いられる水を濾過する手段として、いわゆるディスクフィルタが採用されている。
【0003】
前記ディスクフィルタは、円環板状の複数のフィルタディスクを、センタシャフトの外周に嵌合して上下に積み重ねてフィルタケース内に収容することによって構成されている。
【0004】
各フィルタディスクの表面および裏面には、径方向の外端(外周)から内端(内周)に亘る溝が形成されている。前記溝は、第一のフィルタディスクと第二のフィルタディスクを積み重ねたときに、例えば第一のフィルタディスクの表面の溝と第二のフィルタディスクの裏面とによって水の流路(導水路)を構成する。
【0005】
また、前記フィルタケースは、水源から供給された水を流入させる入口と、濾過後の水を供給先(下流側)に向けて流出させる出口とを有する。
【0006】
前記ディスクフィルタにおいては、入口からフィルタケース内に流入した水が、各フィルタディスクの溝によって構成される流路内に流入する際に、各フィルタディスクの周面または流路内において水中の異物が捕捉され、前記水が濾過される。
【0007】
前記ディスクフィルタは、例えば、特許文献1に示されている。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載のディスクフィルタの溝の形状は、直線形状である。このため、フィルタディスクの外周側の開口率が、フィルタディスクの内周側の開口率に比べて小さい。なお、開口率とは、溝が存在しないと仮定した場合におけるフィルタディスクの外周面または内周面の総面積に対する、前記外周面または前記内周面における溝の全開口部の総面積の比率である。
【0009】
このため、水源側からディスクフィルタに供給された水を、フィルタディスクの外周側から、溝によって形成された流路内に流入させる場合(すなわち、フィルタディスクの外周面を異物の捕捉面として機能させる場合)には、前記流路への前記水の流入が困難であった。
【0010】
したがって、特許文献1に記載のディスクフィルタは、水源側に高圧ポンプを用いて水圧を高めなければ濾過を適切に行うことができないといった欠点を有している。
【0011】
フィルタディスクの外周側の開口率を高める方法としては、例えば、フィルタディスクの内周側から外周側に向けて溝の幅を広げる方法や、前記内周側から外周側に向けて溝の深さを深くする方法がある。
【0012】
しかし、前者の方法では、前記溝の幅は、前記内周側から前記外周側に向けて漸増する。このため、前者の方法では、大きい異物が前記流路内に流入し易くなってしまい、濾過能力が低下してしまうといった不具合がある。
【0013】
また、後者の方法では、フィルタディスクの表面に形成された溝と裏面に形成された溝とがフィルタディスクの厚み方向において重なる位置に形成されたときに、フィルタディスクに孔があいてしまう虞があるといった不具合がある。
【0014】
一方、特許文献2には、金属製板材の板面に、曲線形状の溝を有する金属製濾過器が記載されている。このような濾過器の構成によれば、前記の二方法の不具合を生じさせずに外周側の開口率を高めることは可能である。
【0015】
しかしながら、特許文献2に記載の曲線形状の溝は、直線形状の溝に比べて、圧力損失(換言すれば、溝によって形成された流路の配管抵抗)を抑えることが困難となる。
【0016】
とりわけ、特許文献2の図10に示す溝8cおよび図11に示す溝8eのように、溝の曲率変化が急峻である場合や、特許文献2の図12のように、溝が徒に長い場合には、圧力損失が大きくなることは避けられない。
【0017】
したがって、特許文献2に記載の濾過器においても、濾過を適切に行うためには、発生する圧力損失を考慮すると、直線形状の溝を有する前記ディスクフィルタと同様に、高圧ポンプを要する。このように、前記の溝によって開口率を高めても、圧力損失を下げる効果が得られない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開平3−47505号公報
【特許文献2】特開2004−181272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的は、低い圧力損失と高い開口率とを有し、低圧の液体も適切かつ効率的に濾過することができるディスクフィルタおよびこれに用いるフィルタディスクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
前述した目的を達成するため、本発明は、以下のディスクフィルタを提供する。
【0021】
[1]液体の入口および出口を有するフィルタケースと、前記フィルタケース内に配置された長尺なセンタシャフトと、前記フィルタケース内に着脱可能に収容された所定の厚みを有する円環板状の複数のフィルタディスクとを備えるディスクフィルタであって、前記複数のフィルタディスクは、前記フィルタディスクの孔に前記センタシャフトが挿通されて互いに積み重ねられ、前記フィルタディスクのそれぞれは、前記フィルタディスクの表面および裏面の少なくとも一方に、前記フィルタディスクの外周と内周とを結ぶ、前記液体の流路を構成するための複数の溝を、前記フィルタディスクの周方向に所定の間隔で有し、前記溝のそれぞれは、前記外周から前記内周に向けて曲率が漸増する曲線の形状に形成され、前記外周における前記溝の前記周方向の開口幅は、前記内周における前記溝の前記周方向の開口幅よりも大きい、ディスクフィルタ。
【0022】
[2]前記曲線は、クロソイド曲線である、[1]に記載のディスクフィルタ。
【0023】
[3]前記曲線は、インボリュート曲線である、[1]に記載のディスクフィルタ。
【0024】
[4]前記曲線は、サイクロイド曲線である、[1]に記載のディスクフィルタ。
【0025】
[5]前記フィルタディスクのそれぞれは、前記表面および前記裏面の双方に前記複数の前記溝を有し、平面視における前記表面の前記溝のそれぞれの形状は、平面視における前記裏面の前記溝のそれぞれの形状と異なる、[1]〜[4]のいずれか1項に記載のディスクフィルタ。
【0026】
[6]前記表面の溝および前記裏面の溝は、前記周方向における同一方向に向けて前記外周から前記内周に向かうように形成されている、[5]に記載のディスクフィルタ。
【0027】
[7][1]〜[6]のいずれか1項に記載のディスクフィルタに用いられる、所定の厚みを有する円環板状のフィルタディスクであって、前記フィルタディスクの表面および裏面の少なくとも一方に、前記フィルタディスクの外周と内周とを結ぶ、前記液体の流路を構成するための複数の溝を、前記フィルタディスクの周方向に所定の間隔で有し、前記溝のそれぞれは、前記外周から前記内周に向けて曲率が漸増する曲線の形状に形成され、前記外周における前記溝の前記周方向の開口幅は、前記内周における前記溝の前記周方向の開口幅よりも大きい、フィルタディスク。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、前記流路の圧力損失が低く、前記流路の開口率が高いことから、低圧の液体も適切かつ効率的に濾過することができる。
【0029】
すなわち、[1]に係る発明によれば、前記溝の形状の曲率は、前記フィルタディスクの外周から内周に向けて漸増し、前記外周における前記溝の開口幅は、前記内周における前記溝の開口幅よりも大きい。よって、フィルタディスクの外周側の開口率を高めることができるとともに、溝によって形成される流路の急峻な方向転換に起因する圧力損失の増加を抑制することができる。
【0030】
[2]に係る発明によれば、前記外周側から前記内周側に向かう方向における前記流路の方向転換を緩やかにするのに好適な緩和曲線が選択される。よって、前記圧力損失を有効に抑制することができる。
【0031】
[3]に係る発明によれば、前記外周側から前記内周側に向かう方向における前記流路の急峻な方向転換を抑えて前記圧力損失を緩和することができるとともに、前記流路における内周側での流体の流速が減少する。よって前記溝内で異物を捕捉する能力を高めることができる。
【0032】
[4]に係る発明によれば、クロソイド曲線と同様の緩和曲線が選択される。よって、前記圧力損失を有効に抑制することができるとともに、前記流路内における流体の流速を高く維持してバイオフィルムの増殖を抑制することができる。
【0033】
[5]に係る発明によれば、センタシャフト上に積み重ねられた隣接するフィルタディスク同士の間で、平面視において互いに交差する前記溝によって網状の流路が構成される。よって、前記溝内で異物を捕捉する能力を高めることができる。
【0034】
[6]に係る発明によれば、積み重ねられた隣接するフィルタディスクの溝同士の間で構成される、平面視において交差の位置関係にある流路の曲がる向きが揃えられる。このため、流路の交差箇所において、液体が一方のフィルタディスクの溝によって形成される流路内から他方のフィルタディスクの溝によって形成される流路内に流れる場合であっても、液体の急激な方向転換を抑制して圧力損失の増大を緩和することができる。
【0035】
[7]に係る発明によれば、圧力損失を抑制しつつ開口率を高めることができるディスクフィルタを、簡易な構成によって実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の一実施形態に係るディスクフィルタの断面を概略的に示す図である。
図2図1のディスクフィルタにおけるフィルタカートリッジの断面を概略的に示す図である。
図3図1中のフィルタカートリッジを図2のA−A線で切断した断面を示す図である。
図4図1中のフィルタカートリッジの平面図である。
図5図1中のディスクフィルタにおけるフィルタディスクの概略的な平面図である。
図6図5のフィルタディスクの概略的な下面図である。
図7図5のフィルタディスクの一部を拡大して概略的に示す図である。
図8図5のフィルタディスクの一部を拡大して概略的に示す斜視図である。
図9図1のディスクフィルタにおける液体の流路を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明に係るディスクフィルタおよびこれに用いるフィルタディスクの実施形態について、図1図9を参照して説明する。
【0038】
図1は、本実施形態におけるディスクフィルタ1を概略的に示す縦断面図である。また、図2は、図1のディスクフィルタ1におけるフィルタカートリッジ2を概略的に示す断面図である。さらに、図3は、図2のフィルタカートリッジ2のA−A断面図である。さらにまた、図4は、図2のフィルタカートリッジ2の平面図である。また、図5は、図1のディスクフィルタ1におけるフィルタカートリッジ2に搭載された本実施形態におけるフィルタディスク21を示す平面図である。さらに、図6は、図5のフィルタディスク21の下面図である。
【0039】
図1に示すように、ディスクフィルタ1は、大別して、中空のフィルタケース3と、フィルタケース3内に着脱(収容/取り出し)可能に収容されたフィルタカートリッジ2と、フィルタカートリッジ2を、付勢力を以てフィルタケース3内に保持する圧縮ばね4とによって構成されている。
【0040】
〔フィルタケースの具体的構成〕
図1に示すように、フィルタケース3は、上側ケース31と下側ケース32とによって構成されている。上側ケース31および下側ケース32は、ポリプロピレン等の樹脂材料によって構成されてもよい。
【0041】
まず、上側ケース31について詳述する。図1に示すように、上側ケース31は、円筒形状の外周壁部311と、外周壁部311の上端部に連接された天壁部312とを有している。天壁部312の形状は、半球殻形状である。
【0042】
図1に示すように、天壁部312上には、図1における左右2カ所の開口部312a、312bが穿設されている。開口部312a、312bには、上側ケース31の外側に向けて、筒状部313、314が延設されている。筒状部313、314は、一対をなしている。
【0043】
筒状部313、314のうち、図1における左側の筒状部313は、液体の供給源側から供給された液体をディスクフィルタ1の流路内に流入させるための入口313である。入口313の外周面は、液体の供給源側である上流側の配管を螺合させるためのねじ溝を有していてもよい。なお、前記液体の例には、ポンプによって水源から汲み上げられた水、および、水と液肥との混合液が含まれる。
【0044】
一方、図1における右側の筒状部314は、入口313から流入した液体をディスクフィルタ1による濾過後にディスクフィルタ1の流路外に流出させるための出口314である。出口314は、図1に示すように、開口部312bから、上側ケース31の内側にも延びている。出口314の始端部314aは、上側ケース31の内側の筒状部314の部分のうち、下方に向けて垂直に折り曲げられている部分の先端部であり、上側ケース31の内部の中央の位置に位置している。始端部314aは、フィルタカートリッジ2を上方から押さえて保持する保持部としても機能するように構成されている。出口314における末端部側(上側ケース31の外側の端部)の外周面は、濾過後の液体の供給先側である下流側の配管を螺合させるためのねじ溝を有していてもよい。
【0045】
また、図1に示すように、外周壁部311の下端部の外周面は、下側ケース32を螺合させるための雄ねじ部311aを有する。
【0046】
次に、下側ケース32について詳述する。図1に示すように、下側ケース32は、円筒形状の外周壁部321と、外周壁部321の下端部に連接された丸皿状の底壁部322とを有している。なお、外周壁部321の内径は、上側ケース31の外周壁部311の内径と同径であってもよい。
【0047】
また、図1に示すように、底壁部322の上面の中央位置には、圧縮ばね4を下方から支持するためのばね受け座323が配置されている。
【0048】
さらに、図1に示すように、外周壁部321の上端部の内周面は、上側ケース31を外周壁部321に螺合させるための雌ねじ部321aを有する。ただし、上側ケース31に外周壁部321を接合する構成は、前述のねじ部の構成に限定されない。たとえば、上側ケース31の下端部が雌ねじ部を有し、下側ケース32の上端部が雄ねじ部を有してもよい。
【0049】
〔フィルタカートリッジの具体的構成〕
図1図4に示すように、フィルタカートリッジ2は、所定の厚みを有する円環板状の複数枚の、濾材としてのフィルタディスク21と、フィルタディスク21が着脱可能に嵌合されたセンタシャフト22と、センタシャフト22に嵌合されたフィルタディスク21を上方(上側ケース31側)から押さえる押さえフランジ23と、押さえフランジ23およびフィルタディスク21がセンタシャフト22から抜けることを防止するための抜け止め24とによって構成されている。
【0050】
より具体的には、図1および図2に示すように、フィルタディスク21は、上下方向に長尺のセンタシャフト22の長手方向に積み重ねられ、センタシャフト22の外周に配置されている。センタシャフト22の長手方向は、フィルタディスク21の厚み方向に相当する。フィルタディスク21は、ポリプロピレン等の樹脂材料によって形成されていてもよく、また、複数のフィルタディスク21は、互いに同寸に形成されていてもよい。
【0051】
また、図1および図2に示すように、センタシャフト22の下端部には、上方に向けて凹む凹部221が形成されている。凹部221には、ばね受け座323に支持された圧縮ばね4が嵌入されている。
【0052】
さらに、図1および図2に示すように、センタシャフト22の下端部には、センタシャフト22の径方向の外方に向けて延出する円環状のフランジ部222が配置されている。フランジ部222は、各フィルタディスク21を下方から支持している。
【0053】
図1図2および図4に示すように、センタシャフト22の上端側の所定範囲の部位(「上端側の部位」とも言う)22aの横断面の形状は、十字形状である。上端側の部位22aの径方向(短手方向)の外端縁は、センタシャフト22の他の部位(以下、本体部と称する)22bの短手方向の外端縁よりも、前記短手方向の内側に位置する。
【0054】
また、図3に示すように、センタシャフト22の本体部22bの横断面の形状も十字形状である。本体部22bの十字形状は、上端側の部位22aの十字形状の下に重なる位置にある。本体部22bの十字形状は、上端側の部位22aの十字形状よりも太幅に形成されていてもよい。たとえば、本体部22bは、上端側の部位22aよりも、厚くてもよいし、センタシャフト22の中心軸からより突出していてもよい。本体部22bの外径(前記中心軸からの突出長さ)は、フィルタディスク21の着脱が行い易いように、フィルタディスク21の内径よりも僅かに小さい。
【0055】
前述の十字形状のセンタシャフト22は、フィルタディスク21と出口314との間における液体の流路(出口314に連通される空間)を構成している。
【0056】
さらに、図1および図2に示すように、押さえフランジ23は、円環状の小フランジ部231と、小フランジ部231の外周縁で小フランジ部231と接合する円筒部233と、円筒部233の外周面から外方に延出する円環状の大フランジ部232とから構成されている。小フランジ部231は、円筒部233の下端の内周縁に接合している。大フランジ部232は、小フランジ部231よりも上方に配置されている。小フランジ部231、大フランジ部232および円筒部233は、いずれも、同一の軸を中心軸として配置されている。ただし、小フランジ部231と大フランジ部232の上下方向の位置関係は、逆転していてもよい。小フランジ部231の内径は、センタシャフト22の上端側の部位22aの外径よりも僅かに大きい。小フランジ部231の外径は、センタシャフト22の本体部22bの外径と同じである。また、大フランジ部232の内径は、小フランジ部231の外径と同じである。大フランジ部232の外径は、フィルタディスク21の外径とほぼ同じである。さらに、円筒部233の外径は、小フランジ部231の外径と同じであり、出口314の始端部314aの内径よりも僅かに小さい。
【0057】
押さえフランジ23は、図1に示すように、センタシャフト22の上端側の部位22aに外挿されるとともに、出口314の始端部314aに内挿される。さらに、押さえフランジ23は、フィルタディスク21を介して伝えられる、圧縮ばね4による下方からの付勢力によって、フィルタディスク21を押圧し、保持する。すなわち、大フランジ部232は、前記付勢力によって始端部314aに圧接され、前記付勢力に抗する反作用の力は、大フランジ部232をフィルタディスク21に押圧する。
【0058】
さらにまた、図1および図2に示すように、センタシャフト22の上端側の部位22aには、抜け止め24用の溝22aAが形成されている。抜け止め24は、溝22aAに係止している。なお、抜け止め24は、特許文献1に記載されたものと同様であってよい。
【0059】
フィルタカートリッジ2をフィルタケース3内に収容するには、以下のようにすればよい。まず、下側ケース32のばね受け座323上に圧縮ばね4を配置する。次いで、フィルタカートリッジ2を、センタシャフト22の凹部221に圧縮ばね4を嵌入して下側ケース32内に入れる。その後、上側ケース31を下側ケース32に螺合させる。当該螺合の過程で、出口314の始端部314aが大フランジ部232に当接しながら上側ケース31を下側ケース32に螺合する。その結果、大フランジ部232によるフィルタディスク21の押圧により、圧縮ばね4がばね受け座323に次第に押し込まれる。そして、上側ケース31と下側ケース32との螺合によるフィルタカートリッジ2の収容が完了すると、厚み方向において互いに隣接する(積み重なった)フィルタディスク21同士は、圧縮ばね4の付勢力によって互いに圧接される。そして、出口314の始端部314aは、大フランジ部232に密接する。その結果、入口313から流入した液体が後述するフィルタディスク21の溝211で構成される流路を経なければ出口314に流入しないように、入口313と出口314との間が仕切られる。
【0060】
〔フィルタディスクについて〕
フィルタカートリッジ2に搭載される各フィルタディスク21は、図5図8に示すように、表面21aおよび裏面21bのそれぞれに、外周側から内周側に向かう液体の流路を構成するための複数の溝211を有している。
【0061】
溝211は、表面21aまたは裏面21bの外周縁から内周縁に亘って形成されており、表面21aまたは裏面21bの周方向に等間隔で放射状に配置されている。
【0062】
図7および図8に示すように、溝211は、所定の曲線に沿った形状に形成されている。前記所定の曲線の形状は、外端側から内端側に向かうにしたがって曲率が漸増する形状である。よって、溝211は、フィルタディスク21の径方向に対して、斜めに交わる方向から平行の向きに漸次近づく形状に形成されている。溝211の幅wおよび深さdは、それぞれ一定である。溝211の幅wは、前記曲線に直交する向きにおける溝211の両側縁間の距離であり、溝211の深さdは、フィルタディスク21の表面21aまたは裏面21bから溝211の底までの距離である。なお、溝211の向きは、フィルタディスク21の内周縁で、前記径方向に平行であってもよい。
【0063】
溝211における外周側の開口部211aは、図7および図8に示すように、フィルタディスク21の円筒形状の外周面21cが切り欠かれることによって当該外周面に構成されている。溝211における内周側の開口部211bは、フィルタディスク21の円筒形状の内周面21dが切り欠かれることによって当該内周面に構成されている。
【0064】
よって、図7および図8に示すように、外周側の開口部211aの、フィルタディスク21の周方向に沿った開口幅Wout(V字状の開口部211aの最大幅)は、内周側の開口部211bの上記周方向に沿った開口幅Win(V字状の開口部211bの最大幅)よりも大きい。
【0065】
前述のように、フィルタディスク21同士が圧縮ばね4の付勢力によって圧接された状態において、あるフィルタディスク21の溝211は、フィルタディスク21の厚み方向に隣接する他のフィルタディスク21の表面21aまたは裏面21bによって覆われる。こうして、表面21aまたは裏面21bと溝211の間に、外周側から内周側に向かう液体の流路が構成される。
【0066】
また、図7に示すように、表面21aの溝211におけるフィルタディスク21の外周側から内周側に向けての前記曲率の変化は、裏面21bの溝211の当該曲率の変化とは異なっている。このように、平面視における表面21aの溝211の形状は、平面視における裏面21bの溝211の形状とは異なっている。よって、積み重ねられた隣接する二枚のフィルタディスク21の間には、一方のフィルタディスク21の裏面21bの溝211(例えば、図7中、破線で示される部分)と他方のフィルタディスク21の表面21aの溝211(例えば、図7中、実線で示される部分)とを交差させた網状(換言すれば、格子状)の流路が構成される。
【0067】
なお、溝211を沿わせるべき所定の曲線は、クロソイド曲線、インボリュート曲線およびサイクロイド曲線からなる群から選ばれうる。
【0068】
また、図7に示すように、表面21aおよび裏面21bの溝211は、ともに、フィルタディスク21の外周側から内周側に向かうにしたがって、フィルタディスク21の周方向における同一方向(図7における反時計回り方向)に向かうような形状に形成されていてもよい。すなわち、フィルタディスク21の径方向の直線に対して溝211の軸線がなす角度が漸次減少する方向を溝211の方向としたとき、表面21aの溝211の方向は、フィルタディスク211の周方向において、裏面21bの溝211の向きと同じ向き(すなわち、時計回りまたは反時計回り)であってもよい。このように、表面21aの溝211および裏面21bの溝211は、フィルタディスク21の周方向における同一方向に向けて、フィルタディスク21の外周から内周に向かうように形成されている。
【0069】
さらに、表面21aおよび裏面21bの溝211は、前記所定の曲線のうち、互いに同一の曲線の異なる部位に沿った形状であってもよい。または、表面21aおよび裏面21bの溝211は、前記所定の曲線のうち、互いに異なる曲線(寸法が異なる同種の曲線または異種の曲線)に沿った形状であってもよい。
【0070】
さらにまた、図7および図8においては、溝211は、V溝であるが、必要に応じてV溝以外の形状の溝であってもよい。
【0071】
〔本実施形態の作用・効果〕
本実施形態においては、図9における矢印に示すように、入口313からディスクフィルタ1に流入した液体が、互いに隣接する複数のフィルタディスク21の外周面21cで濾過される。液体中の異物は、外周面21cで捕捉される。液体は、外周面21cに開口する、溝211によって形成される流路内に流入する。
【0072】
ここで、図7および図8に示したように、溝211の外端における開口幅Woutが大きい。このため、供給源(ポンプ)側から供給された液体の液圧が低い場合であっても、液体を前記流路内に容易に流入させることができる。
【0073】
次いで、前記流路に流入した液体は、フィルタディスク21の内周面21d側に向かって流路内を進行する。前記流路内においては、隣接するフィルタディスク21の間で溝211によって網状の流路が構成されている。このため、外周面21cにおいて捕捉しきれなかった異物が効率よく補足される。
【0074】
前記流路は、液流の方向を急峻に転換させない、滑らかに変化する曲率で曲がっている。このため、前記流路内における圧力損失の増加を抑制することができる。
【0075】
例えば、溝211がクロソイド曲線に沿っていれば、クロソイド曲線が前記流路の方向転換を緩やかにするのに好適であるので、圧力損失を有効に抑制することができる。あるいは、溝211がインボリュート曲線に沿っていれば、前記流路の急峻な方向転換を抑えて圧力損失を緩和することができる。さらに、前記流路における内周側での流速が減少するので、溝211内における異物の捕捉能力を高めることができる。もしくは、溝211がサイクロイド曲線に沿っていれば、クロソイド曲線と同様に、圧力損失を有効に抑制することができる。さらに、溝211がサイクロイド曲線に沿っていれば、前記流路内における流速が高く維持されるので、バイオフィルムの増殖を抑制することができる。
【0076】
次いで、前記流路中の液体は、フィルタディスク21の内周面21dの開口部211bを介して前記流路から流出する。
【0077】
そして、前記流路から流出した濾過後の液体は、フィルタディスク21とセンタシャフト22の本体部22bとの間に形成された流路、および、押さえフランジ23とセンタシャフト22の上端側の部位22aとの間に形成された流路、を順次経た後に、出口314からディスクフィルタ1の外部に流出する。
【0078】
なお、本発明に係るディスクフィルタおよびフィルタディスクは、前述した実施の形態に限定されず、本発明の特徴を損なわない限度において種々変更されてもよい。
【0079】
例えば、溝211を、フィルタディスク21の表面21aおよび裏面21bのいずれか一方にのみ形成してもよい。
【0080】
または、フィルタケース3における入口313の位置および向きを調整して、入口313から流入した液体がフィルタケース3内においてサイクロン流を発生させるように構成してもよい。当該構成によれば、液体を溝211によって形成される前記流路(始端側)に、前記流路の軸方向に対してほぼ平行の向きで流入させることが可能となる。よって、濾過を迅速に行うことができる。
【0081】
さらに、本発明は、カートリッジ方式のディスクフィルタに限らない。たとえば、本発明は、ケースに備え付けのセンタシャフトにフィルタディスク21を嵌合するディスクフィルタにも有効に適用することができる。
【0082】
本出願は、2012年6月4日出願の特願2012−127024号に基づく優先権を主張する。当該出願明細書および図面に記載された内容は、すべて本願明細書に援用される。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明によれば、圧力損失の抑制と濾過能力の向上との両方を実現可能なディスクフィルタが提供される。当該ディスクフィルタは、灌漑用液体の濾過のような、低圧の液体の濾過にも好適に用いられる。よって、本発明は、灌漑などの、低圧の液体の移送を要する事業の普及および発展に寄与することが期待される。
【符号の説明】
【0084】
1 ディスクフィルタ
3 フィルタケース
21 フィルタディスク
21a 表面
21b 裏面
211 溝
313 入口
314 出口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9