特許第6163163号(P6163163)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6163163
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】航空機用タイヤのためのクラウン
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/03 20060101AFI20170703BHJP
【FI】
   B60C11/03 D
   B60C11/03 100C
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-547925(P2014-547925)
(86)(22)【出願日】2012年12月18日
(65)【公表番号】特表2015-504808(P2015-504808A)
(43)【公表日】2015年2月16日
(86)【国際出願番号】EP2012075943
(87)【国際公開番号】WO2013092581
(87)【国際公開日】20130627
【審査請求日】2015年9月25日
(31)【優先権主張番号】1162030
(32)【優先日】2011年12月20日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(73)【特許権者】
【識別番号】508032479
【氏名又は名称】ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】シャンブリアール フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】ロシュ ジル
【審査官】 岩田 行剛
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第03494401(US,A)
【文献】 米国特許第02575439(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00−19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機用タイヤ(1)であって、
‐トレッド表面(3)を介して路面に接触するようになっていて、底面(6)と前記トレッド表面(3)との間で半径方向に延びるトレッド(2)を有し、
‐前記トレッド(2)は、少なくとも1つの周方向溝(5)に隣接して位置する少なくとも2つの周方向リブ(4)を有し、
‐各周方向リブ(4)は、前記底面(6)と前記トレッド表面(3)との間で半径方向に且つ軸方向幅(l)にわたり2つの側方フェース(7)相互間で軸方向に且つ前記タイヤ(1)の周囲全体にわたりぐるりと周方向に延びている、航空機用タイヤ(1)において、
前記トレッド(2)は、少なくとも1つの周方向リブ(4)中に形成され且つ前記トレッド表面(3)上に開口した第1のキャビティ(9)の列(8)を有し、前記第1のキャビティ(9)の前記列(8)は、互いに平行であり、前記第1のキャビティ(9)の列(8)は、前記タイヤ(1)の周方向(XX′)に対して少なくとも45°に等しい角度(i)をなして傾けられており、前記第1のキャビティ(9)の列(8)は、周方向間隔(p)が前記タイヤ(1)の前記周囲の周長の少なくとも0.02倍に等しく且つ多くとも0.12倍に等しい状態で前記タイヤ(1)の前記周囲の少なくとも一部にわたって周方向に分布して配置されており、前記トレッド表面(3)に垂直な前記キャビティ(9)の平均平面と前記トレッド表面(3)との交線である直線に沿って測定された前記第1のキャビティ(9)の長さ(b)は、前記周方向リブ(4)の軸方向幅(l)の4分の1以下である、航空機用タイヤ(1)。
【請求項2】
前記トレッド(2)は、各周方向リブ(4)内に形成された第1のキャビティ(9)の列(8)を有する、請求項1記載の航空機用タイヤ(1)。
【請求項3】
前記第1のキャビティ(9)の列(8)は、前記周方向(XX′)に対して少なくとも80°に等しい角度(i)をなして傾けられている、請求項1記載の航空機用タイヤ(1)。
【請求項4】
前記第1のキャビティ(9)の列(8)は、前記タイヤ(1)の前記周囲の前記周長の少なくとも0.06倍に等しい周方向間隔(p)で周方向に分布して配置されている、請求項1に記載の航空機用タイヤ(1)。
【請求項5】
前記第1のキャビティ(9)の列(8)は、一定である周方向間隔(p)で前記タイヤ(1)の前記周囲全体にわたって周方向に分布して配置されている、請求項1に記載の航空機用タイヤ(1)。
【請求項6】
キャビティの各列(8)は、周方向リブ(4)に対して内側に位置し且つ前記トレッド表面(3)上にのみ開口した少なくとも1つの第2のキャビティ(10)を有する、請求項1に記載の航空機用タイヤ(1)。
【請求項7】
周方向リブ(4)が半径方向高さ(h)にわたり前記底面(6)と前記トレッド表面(3)との間で半径方向に延び、第1又は第2のキャビティ(9,10)の半径方向最も内側の箇所(A)を通り且つ前記トレッド表面(3)に垂直な直線に沿って測定された前記第1又は第2のキャビティ(9,10)の半径方向高さ(a)は、少なくとも前記周方向リブ(4)の前記半径方向高さ(h)の半分に等しく且つ多くとも前記周方向リブ(4)の前記半径方向高さ(h)に等しい、請求項6に記載の航空機用タイヤ(1)。
【請求項8】
前記トレッド表面(3)に垂直な第2のキャビティ(10)の平均平面と前記トレッド表面(3)との交線である直線に沿って測定された前記第2のキャビティ(10)の長さ(b)は、多くとも前記周方向リブ(4)の前記軸方向幅(l)の1/4に等しい、請求項1〜7のうちいずれか一に記載の航空機用タイヤ(1)。
【請求項9】
前記トレッド表面(3)に垂直な第1又は第2のキャビティ(9,10)の平均平面に垂直な前記トレッド表面(3)内で測定された前記第1又は第2のキャビティ(9,10)の幅(c)は、少なくとも1mmに等しい、請求項に記載の航空機用タイヤ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機用のタイヤ、特に航空機用タイヤのクラウンに関する。
【背景技術】
【0002】
航空機製造業者は、乗客の安全性、従って、各種装置の故障の恐れの軽減に常時関心をもっている。検討対象である故障モードのうち、航空機着陸装置に搭載されているタイヤのトレッドの部分欠損又は完全欠損は、航空機の離陸又は着陸段階中に起こる重大な故障モードである。
【0003】
この故障モードは、特に、タイヤが滑走路上に偶然存在する恐れのあるずんぐりとした物体を踏んだときに起こる。高いインフレーション圧力、大きな静荷重及び高速を特徴とする航空機用タイヤの過酷な使用条件を念頭に置くと、タイヤのトレッドがずんぐりとした物体を踏むことにより、タイヤの損傷が生じ、その結果、一般に、トレッドが切れ、次に、様々な幾何学的寸法及び質量又は重さ(本発明との関連において、質量と重さは同義である)のトレッドの断片が飛び散る。
【0004】
次に、トレッド断片は、航空機の構造体にぶつかつ場合があり、それにより、これら断片によって蓄えられた機械的エネルギーに鑑みて、相当大きな構造的損傷が生じる場合があり(断片の質量及び飛散速度が高ければ高いほど、この機械的エネルギーがそれだけ一層高くなる)、或いは、トレッド断片は、航空機エンジンに入り込の場合があり、それにより、トレッドの断片のサイズが大きすぎるので航空機エンジンがこれらトレッドの断片を吸収することができない場合、航空機エンジンの動作に関して問題が生じる場合がある。
【0005】
潜在的な衝撃、特にトレッドの断片の衝撃に耐えるために航空機の構造体を強化することが検討されてきた。しかしながら、同種材料の場合、この解決手段は、構造体の質量の増加を必然的に伴い、このことは、ますます軽量の構造材料が利用されつつあるので航空機性能に関する限り不利である。しかしながら、構造体の機械的強化は、エンジン内に投げ込まれる断片の問題を解決するわけではない。
【0006】
トレッドの断片が飛散されることがないように保護を提供する装置も又検討された。国際公開第2010/012913号は、外面が複合材料から成る保護パネルを記載しており、この保護パネルは、変形可能なコンポーネントを介して航空機の構造体に連結された支持体に取り付けられる。幾つかの支持体補剛コンポーネントに固定され且つ保護パネルの外面に垂直な変形可能なコンポーネントがトレッドの飛散された断片による衝撃の影響を受けて座屈するよう設計されている。国際公開第2010/052447号は、航空機のエンジンを飛散したタイヤトレッドデブリから保護する装置を記載している。この装置は、回動可能に航空機主着陸装置に連結された保護バーを有し、この保護バーは、第1の位置と第2の位置との間で動くことができる。第1の位置では、保護バーは、トレッドデブリの考えられる経路を遮るようタイヤとホイールとから成る取り付け型組立体を横切って側方に延びている。
【0007】
別の系列をなす解決手段は、トレッドの断片のサイズを最小限に抑え、従って航空機への衝撃を最小限に抑えることを目的としてトレッドを粉砕する装置に関する。米国特許第7669798号明細書は、ホイールと航空機の別の部分との間に位置していて、タイヤから剥離状態になって航空機の他の部分に向かって飛散しているトレッドのかけらを数個の断片の状態にばらばらにすることができる粉砕手段を記載している。これら粉砕手段、例えばトレッドの材料を切り刻むことができるブレードを備えたグレーチングがこれら断片を分散させるよう設計されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2010/012913号
【特許文献2】国際公開第2010/052447号
【特許文献3】米国特許第7669798号明細書
【0009】
上述の保護又は粉砕装置は、追加の構造体を構成しなければならないという欠点を有し、これら追加の構造体の追加の質量は、航空機のペイロード(有効搭載量)にとって不利である。
【0010】
したがって、本発明者は、タイヤの外部に位置する追加の装置を用いないで、従って、航空機のペイロードを損なわないで、偶発的なタイヤトレッド分離が起きてもトレッドの断片の寸法及びかくして質量を減少させるという目的の達成に取り組んだ。
【0011】
この目的は、本発明によれば、航空機用タイヤであって、
‐トレッド表面を介して路面に接触するようになっていて、底面とトレッド表面との間で半径方向に延びるトレッドを有し、
‐トレッドは、少なくとも1つの周方向溝に隣接して位置する少なくとも2つの周方向リブを有し、
‐各周方向リブは、底面とトレッド表面との間で半径方向に且つ2つの側方フェース相互間で軸方向に且つタイヤの周囲全体にわたりぐるりと周方向に延びている、航空機用タイヤにおいて、
トレッドは、少なくとも1つの周方向リブ中に形成され且つトレッド表面上に開口したキャビティの列を有し、キャビティの列は、互いに平行であり、キャビティの列は、タイヤの周方向に対して少なくとも45°に等しい角度をなして傾けられており、キャビティの列は、周方向間隔がタイヤの周囲の周長の少なくとも0.02倍に等しく且つ多くとも0.12倍に等しい状態でタイヤの周囲の少なくとも一部にわたって周方向に分布して配置されていることを特徴とする航空機用タイヤによって達成された。
【0012】
タイヤは、回転軸線に関して回転対称を呈する幾何学的形状を有するので、タイヤの幾何学的形状は、一般に、タイヤの回転軸線を含む子午面内に描かれる。所与の子午面の場合、半径方向、軸方向及び周方向は、それぞれ、タイヤの回転軸線に垂直な方向、タイヤの回転軸線に平行な方向及び子午面に垂直な方向を示している。タイヤの回転軸線に垂直であり且つタイヤのトレッドの中間を通る平面は、赤道面と呼ばれる。
【0013】
以下において、「半径方向」、「軸方向」及び「周方向」という表現は、それぞれ、「半径(ラジアル)の方向に」、「軸線の方向に」及び「円周の方向に」を意味している。
【0014】
一般に、タイヤは、トレッド表面(「踏み面」ともいう)を介して路面に接触するようになったトレッドを含むクラウンを有し、クラウンは、2つのサイドウォールによってリムに接触するようになった2つのビードに連結されている。
【0015】
トレッドは、半径方向内側の底面と半径方向外側のトレッド表面との間に半径方向に位置したトーラス又はドーナツ形の体積部又は塊であり、これは、タイヤの摩耗部分である。
【0016】
底面は、最大許容摩耗度を定める理論的に考えられた表面であり、摩耗レベルがこの底面に達すると、タイヤは、供用状態から外される。
【0017】
トレッド表面は、路面に接触するようになっている。慣例によれば、トレッド表面の軸方向幅は、新品状態にあるタイヤが垂直荷重とインフレーション圧力の組み合わせ作用を受けて32%に等しい半径方向撓みを生じたときにトレッド表面の軸方向接触限度相互間の軸方向距離であるとして定められている。定義によれば、タイヤの半径方向撓みは、タイヤが無負荷インフレート状態から静荷重を受けたインフレート状態に移った際のその半径方向変形量又は半径方向高さの相対変化である。この半径方向撓みは、タイヤの半径方向高さの変化分と、タイヤの外径とリムフランジ上で測定されたリムの最大直径との差の半分の比によって定められる。タイヤの外径は、例えばタイヤ・リム協会(Tire and Rim Association)、即ちTRAによって推奨される公称圧力までインフレートされた無負荷状態における静的条件下で測定される。
【0018】
トレッドは、一般に、底面から半径方向外方に延びる隆起要素で構成され、これら隆起要素は、ボイド(空所)によって互いに隔てられている。航空機用タイヤの場合、隆起要素は、通常、周方向溝と呼ばれる周方向ボイドにより互いに隔てられた周方向リブである。周方向リブは、半径方向高さと呼ばれる半径方向距離にわたって底面とトレッド表面との間で半径方向に延びている。周方向リブは、軸方向幅と呼ばれる軸方向距離にわたって2つの側方フェース相互間で軸方向に延び、軸方向幅は、トレッド表面のところで測定される。最後に、周方向リブは、タイヤの周囲全体にわたって周方向に且つ連続的に延びている。一例を挙げると、航空機用タイヤのトレッドは、軸方向外側がトレッドのエッジ(縁)によって画定され、軸方向内側が周方向溝によって画定されたショルダ側リブと呼ばれていて赤道面に関して対称である2つの軸方向最も外側のリブと、2つの中間リブと、トレッドの中間部に位置した中央リブとを有すると言える。中央又は中間リブは、2つの周方向溝相互間に軸方向に設けられ、これに対し、ショルダ側リブは、トレッドの軸方向内側で周方向溝に隣接して位置している。
【0019】
トレッドの半径方向内側にはクラウン補強材が配置され、このクラウン補強材は、タイヤのクラウン補強構造体である。航空機用タイヤのクラウン補強材は、一般に、クラウン層と呼ばれる少なくとも1つのクラウン補強層を有する。各クラウン層は、エラストマー材料、即ち、天然又は合成ゴムを主成分とするエラストマー材料で被覆された補強要素で構成され、相互に平行な補強要素は、周方向と+20°〜−20°の角度をなしている。航空機用タイヤでは、クラウン層の補強要素は、一般に、波状に起伏した曲線の状態をなして周方向に配列されている。
【0020】
クラウン層のうちで、通常はテキスタイル補強要素から成る実働補強材を構成する実働層と通常は金属又はテキスタイル補強要素から成っていて実働補強材の半径方向外側に配置された保護補強材を構成する保護層とが区別される。実働層は、クラウンの機械的挙動を支配する。実働層の補強要素は、通常、好ましくは脂肪族ポリアミド又は芳香族ポリアミドで作られた延伸テキスタイルフィラメントで作られたコードである。保護層は、本質的に、トレッドを通ってタイヤの内側に向かって半径方向に広がる恐れのある攻撃から実働層を保護する。保護層の補強要素は、金属細線で作られたコードであるか延伸テキスタイルフィラメントで構成されたコードであるかのいずれかであるのが良い。
【0021】
本発明によれば、トレッドは、少なくとも1つの周方向リブ内に形成され且つトレッド表面上に開口したキャビティの列を有する。
【0022】
キャビティは、本発明との関連において、トレッド表面上に開口した周方向リブに設けられている穴である。キャビティは、周方向リブのエッジに設けられるのが良く、そしてキャビティは、周方向リブの側方フェース上で周方向溝に開口するのが良い。キャビティは又、トレッド表面上にのみ開口するが、周方向溝には開口しない状態で、周方向リブの側方フェース相互間に軸方向に設けられても良く、この場合、キャビティは、周方向リブに対して内側に位置すると呼ばれる。キャビティは、周方向リブの半径方向高さの少なくとも半分に等しい相当大きな半径方向高さにわたって内側に向かって半径方向に延びる穴である。
【0023】
キャビティは、一般に、トレッド表面に垂直な平面に関して多少なりとも対称なので、この対称平面は、キャビティの平均平面と呼ばれる。かくして、キャビティの平均平面により、キャビティをタイヤの周方向に対して位置決めすることができる。
【0024】
キャビティは、本発明との関連において、不規則タイヤ摩耗に抵抗するために、例えば、重量物運搬車両用タイヤの周方向リブのエッジに用いられるサイプではなく、なお、これらサイプは、一般に、数ミリメートルのオーダの僅かな周方向間隔を有する。本発明との関連において、キャビティは、重量物運搬車両の被動アクスル用のタイヤのトラクションを向上させることを目的とし又は建設プラント車両又は農業車両用のタイヤの場合、建設現場又はフィールド型の路面とのトレッドの係合状態を向上させるためにトレッドに設けられた横方向切れ目でもない。キャビティは、本発明との関連において、トレッドをこのキャビティのところで切れやすくするトレッドの局所弱体化領域である。
【0025】
キャビティの列は、それぞれの平均平面が一致したキャビティの組である。キャビティの列は、周方向に対するその角度的位置決めが行われることを特徴としている。
【0026】
トレッドは、互いに平行であり且つタイヤの周方向と少なくとも45°に等しい角度をなして傾けられたキャビティの列を有する。キャビティの列は、互いに平行であり、このことは、言ってみれば、これらキャビティが全て、周方向と同一の角度をなすことを意味する。この角度は、少なくとも45°に等しく、このことは、言ってみれば、キャビティの列の方向が周方向ではなく軸方向に近いことを意味している。
【0027】
キャビティの列は、タイヤの周囲の周長の少なくとも0.02倍に等しく且つ多くとも0.12倍に等しい周方向間隔でタイヤの周囲の少なくとも一部にわたって周方向に分布して配置されている。周方向間隔は、2つの連続して位置するキャビティ列相互間の周方向距離であり、この周方向間隔は、タイヤの周囲にわたり一定であり又は可変であることが可能である。タイヤの周囲の周長は、トレッド表面の展開長さであり、かかる周方向長さは、リムに取り付けられておらず且つ非インフレート状態の新品状態にあるタイヤについて例えば巻尺を用いて測定されるのが良い。
【0028】
航空機用タイヤが離陸又は着陸段階の際に、ずんぐりとした物体を踏むと、このずんぐりとした物体は、トレッドを切り、そして或る特定の半径方向厚さにわたりトレッドの亀裂発生を開始させる場合がある。この亀裂は、トレッド表面が路面と接触状態にある接触パッチに入ると、ホイールの各回転による機械的繰り返し応力の作用を受けて、この亀裂は、タイヤの内部に向かって半径方向最も外側の層のクラウン層まで半径方向に広がり、次に、半径方向最も外側のクラウン層の半径方向外側フェースに沿って軸方向且つ周方向に広がり、それにより、タイヤのクラウンが半径方向最も外側のクラウン層のところで切断される。機械的応力及び特に遠心力の作用を受けて、亀裂は、タイヤの種々の方位角でトレッドを介してタイヤの外部に向かって半径方向に広がることにある。その結果、様々な寸法の断片の形態でこのようにして切り出されたトレッドの部分又はそれどころか事実上トレッド全体は、タイヤからとれ、そして航空機の構造体にぶつかり又はエンジンに入る恐れをもった状態で外方に飛び散る。
【0029】
従来型トレッド(これは、周方向溝によって互いに隔てられた周方向リブだけを有するが、本発明により構成されるキャビティの列を有していないトレッドであることを意味する)の場合、トレッドの断片は、軸方向部分にわたり又はトレッドの軸方向幅全体にわたり軸方向に延びていると言える。トレッドの断片は、タイヤの周囲の大部分にわたり又はそれどころかその周囲全体にわたり周方向に延びる場合がある。その結果、飛び散るトレッドの断片は、航空機の構造体又はエンジンを損傷させる恐れのある不都合な寸法及び質量を有する。
【0030】
本発明のトレッド、即ち、周方向溝によって互いに隔てられた周方向リブに加えて、キャビティの列を有するトレッドの場合、トレッドの断片は、従来型トレッドの場合よりもはるかに小さい軸方向及び周方向寸法を有する。
【0031】
これは、キャビティがトレッドの半径方向厚さの局所減少を可能にする限り、トレッドの優先的な切断領域を構成するからである。半径方向厚さのこの減少により、ヒンジ効果が得られる。というのは、キャビティが、トレッド表面が路面と接触状態にある接触パッチに入ってこれから出るからである。かくして、かかる減少は、半径方向最も外側のクラウン層の半径方向外側フェースから半径方向外方に広がる亀裂の出現を促進する。キャビティがホイールの各回転により接触パッチを通過するときにキャビティの開閉を交互に行う機械的応力により、亀裂は、広がりやすくなり、これら亀裂は又、トレッドの半径方向厚さの局所減少が行われるとすれば、より迅速に開く。換言すると、キャビティは、亀裂の出現及びトレッドの切断を促進する局所弱体化領域を構成する。
【0032】
キャビティの列は又、トレッドの優先的亀裂発生の平面を構成し、それにより、トレッドの断片の周方向長さが制限される。その結果、トレッドの一断片の周方向長さは、理論的に言って、2つの連続して位置するキャビティ列相互間の周方向距離又は周方向間隔を超えるはずがない。かくして、周方向間隔の選択は、トレッドの断片の最大周方向長さを定める。
【0033】
周方向リブ中にキャビティが設けられていることにより、周方向リブが切断され、従って、周方向リブは、隣接のリブとは別個独立にタイヤから外れることができる。かくして、トレッドの断片の軸方向幅をリブの軸方向幅に減少させる。
【0034】
かくして、本発明者は、最大寸法が航空機製造業者の仕様を満たしたトレッドの断片を得るために周方向リブ相互間のキャビティの軸方向幅分布状態及びタイヤの周囲に沿うキャビティの列の周方向分布状態を最適化しようとした。
【0035】
本発明によれば、キャビティの列は、周方向と少なくとも45°に等しい角度をなして傾けられる。かくして、キャビティの列の傾斜角度は、周方向ではなく軸方向に近く、このことは、キャビティが接触パッチに入り、次にこれを出る際のキャビティの周期的開閉運動を促進する。これら周期的開閉は、ホイールの各回転時、亀裂の広がりを促進する。
【0036】
キャビティの列は、周方向間隔がタイヤの周囲の周長の少なくとも0.02倍に等しく且つ多くとも0.12倍に等しい状態で周方向に分布して配置される。周方向間隔に関するこの値の範囲は、タイヤから取れた状態になる可能性のあるトレッドの断片の所望の最大周方向長さに従って定められる。さらに、タイヤの周囲の周長の0.12倍に等しい最大周方向間隔は、接触パッチ内に存在する周方向リブ1つ当たり少なくとも1つのキャビティが存在するのを保証する。基準接触パッチは、32%の半径方向撓みをもたらす垂直荷重及びインフレーション圧力の組み合わせを受ける新品タイヤの接触パッチである。定義によれば、タイヤの半径方向撓みは、タイヤが無負荷インフレート状態から静荷重を受けたインフレート状態に移った際のその半径方向変形量又は半径方向高さの相対変化である。この半径方向撓みは、タイヤの半径方向高さの変化分と、タイヤの外径とリムフランジ上で測定されたリムの最大直径との差の半分の比によって定められる。タイヤの外径は、公称圧力までインフレートされた無負荷状態における静的条件下で測定される。
【0037】
有利には、トレッドは、各周方向リブ内に形成されたキャビティの列を有する。各周方向リブ内にキャビティが設けられていることにより、各周方向リブは、切れ、従って、隣接の周方向リブとは別個独立にタイヤから取れることができるようになる。
【0038】
好ましくは、キャビティの列は、周方向に対して少なくとも80°に等しい角度をなして傾けられる。したがって、キャビティが接触パッチを通過している時のキャビティの周期的開閉の作用効果が最大に高められる。
【0039】
本発明の好ましい一実施形態では、キャビティの列は、タイヤの周囲の周長の少なくとも0.06倍に等しい周方向間隔で周方向に分布して配置されている。この周方向間隔は、接触パッチ中に周方向リブ1つ当たり少なくとも2つのキャビティが存在することを意味する。この最小周方向間隔は又、周方向リブの頑丈さを保証し、かくして、周方向リブの切断具合は、控えめであり、又、最小周方向間隔は、トレッドの断片の最大サイズが小さすぎることはないということを保証する。
【0040】
好ましくは、キャビティの列は、一定である周方向間隔でタイヤの周囲全体にわたって周方向に分布して配置される。キャビティの列の一様な周方向分布は、製造にとって簡単であり、かかる一様な周方向分布により、トレッドの断片の周方向長さを一定に作ることができる。しかしながら、タイヤ走行時騒音に対する制約を考慮に入れるために可変間隔が必要であることがわかる場合がある。確かに、当業者であれば知っているように、キャビティの非一様な周方向分布は、タイヤが走行しているときにタイヤのトレッドにより生じる騒音の大幅な減少に寄与することができ、これは、非常に高い速度で走行するようになった航空機用タイヤの場合に制約条件であると言える。
【0041】
キャビティの各列は、有利には、周方向リブに対して内側に位置し且つトレッド表面上にのみ開口した少なくとも1つのキャビティを有する。幅の広い周方向溝の軸方向切断、即ち、代表的にはトレッド表面の軸方向幅の1/4を超える軸方向幅の軸方向切断を保証するため、周方向リブの側方フェース相互間で軸方向に配置されると共に周方向溝上ではなくトレッド表面上に開口した追加のキャビティを配置することが有利である。この場合、このキャビティは、周方向リブに対して内部に位置していると呼ばれる。したがって、亀裂は、周方向リブの一方の側方フェースから周方向溝に開口した1つ又は複数のキャビティと内部キャビティとの間の他方の側方フェースまで容易に広がることができる。
【0042】
キャビティの半径方向最も内側の箇所を通り且つトレッド表面に垂直な直線に沿って測定されたキャビティの半径方向高さは、有利には、少なくとも周方向リブの半径方向高さの半分に等しく且つ多くとも周方向リブの半径方向高さに等しい。最小半径方向高さは、キャビティの底部には、トレッドの亀裂発生を容易にするのに十分に小さいトレッドの半径方向厚さを保証する。最大半径方向高さは、最大許容トレッド摩耗を超える広がりが生じないことを保証する。キャビティの半径方向高さの最適化は、タイヤの意図した耐摩耗性に関して必要とされるトレッドの体積でも左右される。
【0043】
これ又、有利には、トレッド表面に垂直なキャビティの平均平面とトレッド表面との交線である直線に沿って測定されたキャビティの長さは、多くとも周方向リブの軸方向幅の1/4に等しい。この値を超えた場合、この場合、ずんぐりとした物体によるトレッドの損傷が生じていない状態で、キャビティが通常の作動中に周方向リブに亀裂の発生を開始させる恐れがある。
【0044】
トレッド表面に垂直なキャビティの平均平面の直線(この直線は、所与の半径方向距離のところでトレッド表面に平行である)に沿って測定されたキャビティの長さは又、有利には、トレッド表面とキャビティの半径方向最も内側の箇所との間で減少する。この特徴は、長さがトレッド表面からキャビティの底部まで減少するキャビティに対応している。また、この設計により、キャビティを通常の作動下において亀裂発生が生じないよう頑丈に作ることができる。
【0045】
最後に、トレッド表面に垂直なキャビティの平均平面に垂直なトレッド表面内で測定されたキャビティの幅は、少なくとも1mmに等しく、好ましくは少なくとも3mmに等しければ有利である。1mmという値は、タイヤの分野において従来用いられているサイプの形態のキャビティの場合、技術的に最小値に一致している。3mmという値は、トレッドの切断の開始を保証する好ましい最小値に一致している。
【0046】
本発明の特徴及び他の利点は、図1図7の助けにより良好に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】航空機用タイヤのクラウンの子午線断面図である。
図2】先行技術の航空機用タイヤのトレッドの平面図である。
図3】本発明の第1の実施形態としての航空機用タイヤのトレッドの平面図である。
図4】本発明の第1の実施形態の変形形態としての航空機用タイヤのトレッドの平面図である。
図5】本発明の第2の実施形態としての航空機用タイヤのトレッドの平面図である。
図6】本発明の第2の実施形態の変形形態としての航空機用タイヤのトレッドの平面図である。
図7】キャビティの平均平面上における周方向リブのエッジのところのキャビティの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明を理解しやすくするために、図1図7は、縮尺通りには描かれておらず、これらの図は、単純化された図である。
【0049】
図1は、タイヤ1のクラウンの子午線断面、即ち、子午面(YY′,ZZ′)における断面を示しており、この場合、方向YY′及び方向ZZ′は、それぞれ、軸方向及び半径方向である。
【0050】
図1は、航空機用のタイヤ1を示しており、このタイヤは、トレッド表面3を介して路面に接触するようになっていて底面6とトレッド表面3との間に半径方向に位置したトレッド2を有している。トレッド2は、この場合少なくとも1つの周方向溝5に隣接して位置する5つの周方向リブ4を有している。各周方向リブ4は、底面6とトレッド表面3との間で半径方向に且つ周方向溝5の壁を形成する2つの側方フェース7相互間で軸方向に延びている。タイヤ1は、底面6の半径方向内側に位置したクラウン層で構成されているクラウン補強材8を更に有している。
【0051】
図2は、先行技術の航空機用タイヤのトレッドの平面図である。トレッド2は、5つの周方向リブ4、即ち、方向(XX′)に関して対称である2つのショルダ側周方向溝、同様に方向(XX′)に関して対称である2つの中間周方向リブ及び中央周方向リブを有している。各ショルダ側周方向リブは、軸方向内側が周方向溝5の一方の壁を形成する側方フェース7により境界付けられ、軸方向外側が、トレッド表面3が路面と接触状態にある接触パッチの軸方向限度によって境界付けられ、この軸方向限度は、慣例によれば、32%の半径方向撓みを生じた新品タイヤについて定められる。2つの周方向溝5相互間にそれぞれ軸方向に設けられた中間周方向リブ及び中央周方向リブは、軸方向が、周方向溝5の壁を形成している側方フェース7によって境界付けられている。
【0052】
図3は、本発明の第1の実施形態としての航空機用タイヤのトレッド2の平面図である。図1の場合と同様、トレッド2は、それぞれ軸方向が周方向溝5の壁を形成している2つの側方フェース7により画定された5つの周方向リブ4を有している。トレッド2は、タイヤの周方向XX′に対して傾けられ、相互に平行であり、しかもタイヤの周囲の周長の少なくとも0.02倍に等しい周方向間隔pでタイヤの周囲(図示せず)全体にわたり周方向に分布して配置されたキャビティ9から成る列8を有している。この場合、キャビティ9の列8は、周方向XX′に対して45°に等しい角度iをなして傾けられている。各キャビティ9は、幅cを有する。各ショルダ側周方向リブ4は、キャビティ9を有し、他の周方向リブ4の各々は、2つのキャビティ9を有している。したがって、キャビティ9の各列8は、本発明のこの第1の実施形態では、各々が周方向溝5に開口したキャビティ9の列8を有している。
【0053】
図4は、本発明の第1の実施形態の変形形態としての航空機用タイヤのトレッド2の平面図である。この変形形態は、中央周方向リブ4に対して内部に位置すると共にトレッド表面3上にのみ開口したキャビティ10がキャビティ9の各列8内に存在していることにより図3に示された本発明の第1の実施形態とは異なっている。中央周方向リブ4に対して内側に位置するキャビティ10の追加は、中央周方向リブ4の軸方向幅がトレッド表面3の軸方向幅の1/4を超えているということによって妥当とされる。かくして、この変形形態では、キャビティ9の各列8は、9つのキャビティを有し、これらのうち8つは各々、周方向溝5に開口している。
【0054】
図5は、本発明の第2の実施形態としての航空機用タイヤのトレッド2の平面図である。この第2の実施形態は、キャビティ9の列8が周方向XX′となす角度iにより第1の実施形態とは異なっており、なお、この角度は、この場合、90°に等しい。
【0055】
図6は、本発明の第2の実施形態の変形形態としての航空機用タイヤのトレッド2の平面図である。この変形形態は、キャビティ9の各列8中に周方向リブ4に対して内側に位置し且つトレッド表面3上にのみ開口したキャビティ10が設けられているという点で図5の本発明の第2の実施形態とは異なっている。中央周方向リブ4に対して内側に位置するキャビティ10の追加は、中央周方向リブ4の軸方向幅がトレッド表面3の軸方向幅の1/4を超えているということによって妥当とされる。かくして、この変形形態では、キャビティ9の各列8は、9つのキャビティを有し、これらのうち8つは各々、周方向溝5に開口している。
【0056】
図7は、キャビティの平均平面上における周方向リブ4のエッジのところのキャビティ9の断面図である。底面6とトレッド表面3との間で半径方向に設けられると共に軸方向が側方フェース7によって境界付けられた周方向リブ4に形成されたキャビティ9が溝5内とトレッド表面3上の両方に開口している。キャビティ9の半径方向最も内側の箇所Aを通り且つトレッド表面3に垂直な直線に沿って測定されたキャビティ9の半径方向高さaは、少なくとも周方向リブ4の半径方向高さhの半分に等しく且つ多くとも周方向リブ4の半径方向高さhに等しい。トレッド表面3に垂直なキャビティ9の平均平面とトレッド表面3との交線である直線に沿って、即ち、トレッド表面に含まれる平均平面の軸方向直線に沿って測定されたキャビティ9の長さbは、多くとも周方向リブ4の軸方向幅lの1/4に等しい。この場合、キャビティ9の長さbは、キャビティの底部における側方フェースへの連結領域を除き、キャビティの半径方向高さa全体にわたってほぼ一定である。
【0057】
本発明者は、サイズ46×17R20の航空機用タイヤに関し、周方向リブのエッジのところにキャビティの列を有し、これらキャビティの列が周方向に垂直である図5の実施形態に従って本発明を実現しており、この航空機用タイヤの使用は、15.9barの公称圧力、20473daNの公称静荷重及び225km/hの最高基準速度を特徴としている。
【0058】
検討対象のタイヤに関し、クラウン補強材は、アラミド系の脂肪族ポリアミドとナイロン系の芳香族ポリアミドを組み合わせたハイブリッド材料で作られている補強要素を含む7つの実働層を有し、これら補強要素は、周方向と0°〜12°の可変角度をなす。クラウン補強材は、実働層の半径方向外側に、実質的に周方向金属補強要素から成る保護層を有する。トレッドは、34.5mm、33.5mm及び82mmのそれぞれの軸方向幅を有する5つのショルダ側周方向リブ、中間周方向リブ及び中央周方向リブを有している。トレッドは、周方向溝のエッジのところに位置したキャビティの列を有する。キャビティの列は、周方向と90°の角度をなしている。タイヤの周囲全体にわたって一定であるキャビティの列の間隔は、121mmに等しく、それにより、周方向に、周方向リブのエッジ1つ当たり3つのキャビティ及び軸方向に列1つ当たり8つのキャビティ、即ち、新品のタイヤが32%の半径方向撓みを生じたときにトレッド表面が路面と接触状態にある接触パッチ内に24個のキャビティを提供することが可能である。各キャビティは、3mmの幅、12mmの半径方向高さ及び10mmの長さを有する。
【0059】
基準設計の場合、トレッドの断片の質量は、0.1kg〜3.5kgであり、本発明の設計では、トレッドの断片の質量は、0.1kg〜0.8kgである。
【0060】
トレッドの断片の最大寸法を一層良好に調節するため、本発明は、有利には、適当なクラウン設計と組み合わされるのが良い。
【0061】
例えば、クラウン補強材、特に一般に金属保護層である半径方向最も外側のクラウン層を底面にできるだけ近く、例えば2mmオーダの半径方向距離離れたところに位置させることが想定できる。これにより、対応の量だけ半径方向最も外側のクラウン層とキャビティの底部との間の半径方向距離及びかくして亀裂発生が半径方向外方に広がっているときに亀裂発生距離を減少させることが可能である。加うるに、トレッドの断片の半径方向厚さを減少させ、従って、これらの質量も又減少させる。
【0062】
本発明の有効性を一段と高める可能性が多分にある別のクラウン設計例では、トレッド分離手段を各周方向リブの半径方向内側に配置して分離に続くトレッドの断片の寸法を制限し、かかる寸法は、言ってみれば、断片の半径方向厚さ、軸方向幅及び周方向長さを意味している。
【0063】
トレッド分離手段が底面とクラウン補強材との間で少なくとも1つの周方向リブの半径方向内側に配置されるので、ずんぐりとした物体により開始される亀裂は、トレッド分離手段まで半径方向内方に広がり、その後、軸方向及び周方向に進展する。換言すると、亀裂は、亀裂の半径方向広がりを妨げるこのトレッド分離手段によってそれほど深いところまでは広がらない。トレッド分離手段は、クラウン補強材の半径方向外側に位置しているので、トレッドの断片の最大半径方向厚さは、トレッド分離手段が設けられていない場合に得られる最大半径方向厚さよりも小さいであろう。さらに、トレッド分離手段が底面の半径方向内側に位置していることにより、トレッド分離手段は、周方向リブが摩耗しているときには見えるようにはならず、かくして、タイヤの摩耗寿命を制限する。
【0064】
さらに、トレッド分離手段は、トレッド表面内の周方向リブの2つのエッジコーナ相互間で軸方向に配置される。換言すると、各周方向リブは、トレッド表面内の周方向リブのエッジコーナを軸方向に超えることのないそれ自体の個々のトレッド分離手段を有する。このことは、トレッドを構成する周方向リブのそれぞれのトレッド分離手段相互間に不連続部が存在することを意味している。その結果、トレッド分離手段は、周方向リブの全てに共通の単一の手段であるというわけではない。それにより、亀裂が1つの周方向リブから別の周方向リブに軸方向に広がるのを阻止することが可能である。かくして、ただ1つのリブがずんぐりとした物体によって損傷を受けた場合、このリブは、亀裂発生の唯一の犠牲であるというべきである。換言すると、問題の周方向リブだけがタイヤから取れるようになる。
【0065】
最後に、トレッド分離手段は、タイヤの周囲の少なくとも一部にわたって周方向に配置される。一般に、トレッド分離手段は、タイヤの周囲全体にわたって連続であるが、必ずしもそうである必要はない。トレッド分離手段は、該当する場合には、最適化されるべき角度セクタにわたり分布して配置されても良い。
【0066】
本発明者は、トレッド分離手段の存在により、トレッドの断片の周方向長さを減少させることも又可能であることに注目することができた。本発明者は、この事実を周方向リブ中に形成されたキャビティに多少なりとも相当すると言えるトレッド分離手段の或る特定の周方向分布箇所のところでの軸方向回りのトレッド分離手段の周期的撓みの結果であると解釈した。換言すると、トレッド分離手段は、その周囲に沿って、トレッド分離手段の局所破断の際に最高潮に達する場合のあるヒンジ効果を受ける。
【0067】
注目すべき重要なこととして、トレッド分離手段の材料は、これがクラウンの動作に対して機械的な起用をなすことがないよう選択されることが必要である。
【0068】
トレッド分離手段は、有利には、好ましくは(しかしながら、次に記載するものだけではない)ナイロン系の脂肪族アミドで作られた相互に平行な補強要素を含む少なくとも1つのトレッド分離層を有するのが良い。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7