特許第6163166号(P6163166)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6163166
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】アルカリ土類金属複合金属アミド
(51)【国際特許分類】
   C07F 3/06 20060101AFI20170703BHJP
【FI】
   C07F3/06CSP
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-557018(P2014-557018)
(86)(22)【出願日】2013年2月13日
(65)【公表番号】特表2015-506998(P2015-506998A)
(43)【公表日】2015年3月5日
(86)【国際出願番号】EP2013052833
(87)【国際公開番号】WO2013120878
(87)【国際公開日】20130822
【審査請求日】2015年8月17日
(31)【優先権主張番号】12155980.1
(32)【優先日】2012年2月17日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】12155977.7
(32)【優先日】2012年2月17日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】12171860.5
(32)【優先日】2012年6月13日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】12171862.1
(32)【優先日】2012年6月13日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512137348
【氏名又は名称】バイエル・インテレクチュアル・プロパティ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Bayer Intellectual Property GmbH
(73)【特許権者】
【識別番号】507203353
【氏名又は名称】バイエル・クロップサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】230105223
【弁護士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】フオード,マーク・ジエイムズ
(72)【発明者】
【氏名】モスラン,マルク
【審査官】 井上 千弥子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/092096(WO,A1)
【文献】 特表2010−526853(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/014844(WO,A1)
【文献】 Silvia Daniela Zimdars,A new Pathway for the Total Functionalization of the Purine Scaffold and for the Preparation of new Materials Based on Benzo[c][1,2,5]thiadiazole via Mg and Zn Intermediates,Dissertation zur Erlangung des Doktorgrades der Fakultat fur Chemie und Pharmazie der Ludwig-Maximilians-Universitaet Muenchen ,2011年,p.1-157(特に、p.28,p.39,p.66,p.67),Avail.: Deutsche Nationalbibliothek, Order No. 1012173623 (URL: http://d-nb.info/1012173623/34 より入手)
【文献】 KRINNINGER, C.,Knochel-Hauser bases for selective deprotonation reactions,Speciality Chemicals Magazine,2010年,30(3),p.20-21
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)のAE複合金属アミド
【化1】

〔式中、
AEは、CaまたはMgであり;
Mは、ZnまたはMnであり;
Xは、塩素であり;
およびRは、一緒に、−C(CH(CH−C(CH−基を形成している〕を、式(II)のクロロアミン
【化2】

と、元素の形態の1以上のアルカリ土類金属(AE)およびZnClまたはMnClから選択されるハロゲン化物の形態の1以上の金属(M)とを反応させることによって製造する方法(ここで、R、R、AEおよびMは、各々上記定義の通りである)。
【請求項2】
AEが、CaまたはMgであり;
Mが、Znであり;
Xが、塩素であり;かつ
およびRが、一緒に、−C(CH(CH−C(CH−基を形成している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
+20〜−20℃の温度範囲内で実行されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記反応が、THF、2−メチルテトラヒドロフラン、t−ブチルメチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、ジ−n−ブチルエーテルおよびメチルシクロペンチルエーテル、またはその混合物から選択される配位性溶媒中で実施されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記反応が、THF、2−メチルテトラヒドロフラン、t−ブチルメチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ジ−n−ブチルエーテル、メチルシクロペンチルエーテルおよびジエチルエーテルから選択される配位性溶媒と、芳香族化合物、アルキル置換芳香族化合物、アルカン、シクロアルカンおよび/またはアルキル置換シクロアルカンら選択される非配位性溶媒との混合物中で実施されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
式(I)のAE複合金属アミド
【化3】

〔式中、前記R、R、M、AEおよびXラジカルは、各々請求項1に定義される通りである〕。
【請求項7】
式(I−i)のAE複合金属アミド
【化4】

〔式中、
AEは、CaまたはMgであり;
Mは、ZnまたはMnであり;
Xは、塩素である〕。
【請求項8】
式(I−ii)のAE複合亜鉛アミド
【化5】

〔式中、
AEは、請求項1に定義される通りである〕。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか一項に記載の前記式(I)、(I−i)または(I−ii)のAE複合金属アミドの、芳香族化合物、ヘテロ芳香族化合物、アルケン、アルキンおよびその他の活性化C−H結合を有する有機化合物の金属化のための塩基としての使用。
【請求項10】
リチウム塩の存在下での、請求項9に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I)の金属アミド、その製造のための方法、ならびに、芳香族化合物、ヘテロ芳香族化合物、アルケン、アルキンおよびその他の活性化C−H結合を有する有機化合物の金属化のための塩基としてのその使用に関する。
【化1】
【背景技術】
【0002】
芳香族および複素芳香族分子の製造は、その高い生物学的効力のために非常に重要である。結果的に、これらの構成要素は、多くの医薬および農薬活性材料の構成成分である。芳香族化合物、さらにまた活性化C−H結合の直接金属化は、芳香族化合物、ヘテロ芳香族化合物およびその他の有機化合物の官能基化のための優れたツールとして確立されてきた。
【0003】
この目的のため、主にリチウムアルキルまたはリチウムアミドがこれまで塩基として使用されてきた。
【0004】
代替形態として、芳香族化合物およびヘテロ芳香族化合物のマグネシウム化および亜鉛化のための効率的な塩基が開発されている。亜鉛アミドまたはマグネシウムアミド塩基、例えば、Mg−TMPおよびZn−TMP(TMP=2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)の、塩化リチウムと複合体を形成したもの、例えば、TMPMgCl・LiCl、TMPZnCl・LiCl、TMPZn・2MgCl・2LiClは、国際公開第2010/092096号または同第2008/138946号に記載されるように、汎用の金属化試薬である。それらは、非常に優れた化学選択性および位置選択性と相まって、非常に高い動力学的塩基性を有する。その上、亜鉛アミド塩基は、その活性を失うことなく、保護ガス下でTHF中の溶液として数週間貯蔵することができる。
【0005】
これらの塩基の合成には、一般にアミン、例えばTMPが等モル量のブチルリチウムでリチウム化される。ブチルリチウムは高コストであるために、亜鉛アミド塩基は、多くの工業的合成には高価すぎる。そのため、特に、高価なブチルリチウムを使用せずに済む、金属アミド塩基へのより好ましい経路に対する切迫した必要性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2010/092096号公報
【特許文献2】国際公開第2008/138946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そのため、本発明が対処する問題は、上記の欠点を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、本発明に従って、式(I)の金属アミドを
【化2】
【0009】
〔式中、
AEは、カルシウムおよびマグネシウムから選択されるアルカリ土類金属であり;
Mは、元素周期律表の第3族、第4族、第7族、第8族、第9族、第10族、第11族、第12族、第13族およびランタノイド族の金属から選択される金属であり;
Xは、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素からなる群から選択されるハロゲン原子であり;
およびRは、各々独立に、1〜2個のRラジカルにより置換されていてもよい(C−C)アルキルからなる群から選択され;
あるいは
およびRは、一緒に、−(CH−、−(CH−または−(CHO(CH−基を形成し、ここで、これらの基の各々は、1〜4個のRラジカルにより置換されていてもよく;
は、独立に、ハロゲン、(C−C)アルコキシ、(C−C)ハロアルコキシおよび(C−C)ジアルキルアミノから選択され;
は、ハロゲン、(C−C)アルキル、(C−C)アルコキシ、(C−C)ハロアルコキシおよび(C−C)ジアルキルアミノから選択される〕を、
式(II)のクロロアミン
【化3】
【0010】
〔式中、RおよびRラジカルは、各々上記定義の通りである〕と、1以上の金属性(すなわち、元素の形態で存在する)アルカリ土類金属(AE)および/または1以上の金属(M)(すなわち、元素の形態)とを反応させることによって製造する方法により達成された(ここで、AEおよびMは、各々上記定義の通りである)。
【0011】
金属(M)および/またはアルカリ土類金属(AE)が酸化挿入される結果、本発明による方法は、ブチルリチウムを必要としない。
【0012】
上に定義される式(I)のAE複合金属アミドの製造のための本発明による好ましい方法では、上に定義される式(II)のクロロアミンを、金属(M)(元素形態)および/または対応する金属ハロゲン化物(Mn+)の存在下で、金属性アルカリ土類金属(AE)および所望によりそのハロゲン化物と反応させる。
【0013】
ここで、指数nは、本発明による方法で使用されるいずれの金属ハロゲン化物(Mn+)においても、金属(M)の金属イオンの原子価に対応する整数であることが理解される。好ましくは、n=2、3または4、特にn=2である。
【0014】
本発明による方法は、各等量(eq.)の式(II)のクロロアミンに対して、合計1当量以上の金属性アルカリ土類金属(AE)および金属(M)を元素の形態で使用するように実施することが好ましい。好ましくは、合計1当量以上の金属性アルカリ土類金属(AE)および金属(M)を元素の形態で使用する、すなわち、この点に関して過剰に作用させる。さらに好ましくは、各等量の式(II)のクロロアミンに対して、合計1.5当量以上、特に2当量以上の金属性アルカリ土類金属(AE)および金属(M)を元素の形態で使用する。
【0015】
上に定義される式(I)のAE複合金属アミドの製造のための本発明による方法の別の構成では、上に定義される式(II)のクロロアミンを、元素の形態の金属(M)および所望により対応する金属ハロゲン化物(Mn+)と、金属性マグネシウム、金属性カルシウム、ハロゲン化マグネシウムおよび/またはハロゲン化カルシウムの存在下で、好ましくは、各等量の式(II)のクロロアミンに対して、合計1当量以上の元素の形態の金属(M)を用いて、さらに好ましくは1.5当量以上、特に好ましくは2当量以上を用いて反応させる。
【0016】
上に定義される式(I)のAE複合金属アミドの製造のための本発明による方法の好ましい構成では、上に定義される式(II)のクロロアミンを、金属性アルカリ土類金属(AE)(すなわち、金属性マグネシウムおよび/または金属性カルシウム)と、Mが上に定義される通りである元素の形態の金属(M)の存在下で、所望によりハロゲン化マグネシウムおよび/またはハロゲン化カルシウムの存在下で、所望により金属ハロゲン化物(Mn+)の存在下で、好ましくは、各等量の式(II)のクロロアミンに対して、合計0.8当量以上の金属性アルカリ土類金属(AE)を用いて、さらに好ましくは1.0当量以上を用いて反応させる。
【0017】
上に定義される式(I)のAE複合金属アミドの製造のための本発明による方法の好ましい構成では、上に定義される式(II)のクロロアミンを、金属性マグネシウムおよび/または金属性カルシウムと、MおよびXが上に定義される通りである、過剰な金属ハロゲン化物(Mn+)の存在下で、所望によりハロゲン化マグネシウムおよび/またはハロゲン化カルシウムの存在下で、所望により金属(M)の存在下で反応させる。
【0018】
本発明は、本発明による方法によって得ることのできる式(I)の金属アミドをさらに提供する
【化4】
【0019】
〔式中、R、R、ならびにM、AEおよびXラジカルは、各々上に定義される通りである〕。
【0020】
用語「ハロゲン」または「ハロゲン原子」は、例えば、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を意味する。この用語がラジカルに使用される場合、「ハロゲン」または「ハロゲン原子」は、例えば、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素原子を意味する。
【0021】
アルキルは、直鎖、分枝状または環状のヒドロカルビルラジカルを意味する。「(C−C)−アルキル」という表現は、例えば、炭素原子について述べられた範囲に従う、1〜4個の炭素原子を有するアルキルの簡潔な表記であり、例えば、メチル、エチル、1−プロピル、2−プロピル、1−ブチル、2−ブチル、2−メチルプロピル、tert−ブチル、シクロプロピルおよびシクロブチルラジカルを包含する。
【0022】
指定された炭素原子の範囲がより大きい一般的なアルキルラジカル、例えば、「(C−C)−アルキル」は、相応してより多くの数の炭素原子をもつ直鎖、分枝状または環状のアルキルラジカルも包含する、すなわち、前記例によれば、5および6個の炭素原子を有するアルキルラジカルも包含する。
【0023】
具体的に述べられていない限り、複合ラジカル中を含む、アルキルラジカルなどの炭化水素ラジカルに関して、低級炭素骨格、例えば1〜6個の炭素原子を有する、または不飽和基の場合には2〜6個の炭素原子を有するものが好ましい。アルコキシ、ハロアルキルなどの複合ラジカル中を含むアルキルラジカルとは、例えば、メチル、エチル、シクロ−、n−もしくはi−プロピル、シクロ−、n−、i−、t−もしくは2−ブチル、ペンチル、ヘキシル、例えばシクロヘキシル、n−ヘキシル、i−ヘキシル、および1,3−ジメチルブチルなど、ヘプチル、例えばシクロヘプチル、n−ヘプチル、1−メチルヘキシルおよび1,4−ジメチルペンチルなどを意味する。
【0024】
好ましい環状アルキルラジカルは、好ましくは3〜8個の環炭素原子を有する、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルまたはシクロヘキシルである。置換されていてもよい環状アルキルラジカルの場合、置換基をもつ環系が含まれ、同様に、環状アルキルラジカルに二重結合を有する置換基、例えばメチリデンなどのアルキリデン基も含まれる。
【0025】
置換されていてもよい環状アルキルラジカルの場合、多環式脂肪族系、例えば、ビシクロ[1.1.0]ブタン−1−イル、ビシクロ[1.1.0]ブタン−2−イル、ビシクロ[2.1.0]ペンタン−1−イル、ビシクロ[2.1.0]ペンタン−2−イル、ビシクロ[2.1.0]ペンタン−5−イル、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−イル(ノルボルニル)、アダマンタン−1−イルおよびアダマンタン−2−イルなども含まれる。
【0026】
置換されていてもよい環状アルキルラジカルの場合、スピロ環式脂肪族系、例えば、スピロ[2.2]ペンタ−1−イル、スピロ[2.3]ヘキス−1−イル、スピロ[2.3]ヘキス−4−イル、3−スピロ[2.3]ヘキス−5−イルも含まれる。
【0027】
アリールは、好ましくは6〜14個、特に6〜10個の環炭素原子を有する、単環式、二環式もしくは多環式芳香族系、例えば、フェニル、インダニル、ナフチル、アントリル、フェナントレニルおよび同類のものであり、好ましくはフェニルである。
【0028】
2以上のラジカルが1以上の環を形成する場合、これらは、炭素環式、複素環式、飽和、部分飽和、不飽和の、例えばまた芳香族化合物であってもよく、所望によりさらに置換されていてもよい。縮合環は、好ましくは5員もしくは6員環であり、特に好ましいのは、ベンゾ縮合環である。
【0029】
例として述べた置換基(「第1置換基レベル」)は、それらが炭化水素系部分を含有する場合、所望によりその中で、例えば第1置換基レベルについて定義されるような置換基の1つによってさらに置換されていてもよい(「第2置換基レベル」)。対応するさらなる置換基レベルが可能である。用語「置換ラジカル」は、1つだけ、または2つの置換基レベルを包含することが好ましい。
【0030】
置換基レベルに好ましい置換基は、例えば、ハロゲン、ニトロ、シアノアルキル、ジアルキルアミノ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ベンジル、ベンジルオキシ、ヘテロシクリルおよびトリアルキルシリルである。
【0031】
2以上の置換基レベルからなる置換基は、好ましくは、例えば、モノアルコキシアルキルまたはジアルコキシアルキルなどのアルコキシアルキル、モノアルコキシアルコキシまたはジアルコキシアルコキシなどのアルコキシアルコキシ、ベンジル、フェネチル、ベンジルオキシ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、ハロアルコキシアルコキシ、ハロアルコキシアルキルである。
【0032】
炭素原子を有するラジカルの場合、1〜6個の炭素原子、好ましくは1〜4個の炭素原子、特に1または2個の炭素原子を有するものが好ましい。一般に、ハロゲン、例えばフッ素および塩素、(C−C)アルキル、好ましくはメチルもしくはエチル、(C−C)ハロアルキル、好ましくはトリフルオロメチル、(C−C)アルコキシ、好ましくはメトキシもしくはエトキシ、(C−C)ハロアルコキシ、ニトロおよびシアノからなる群からの置換基が好ましい。特に、ここでは置換基メチル、メトキシ、フッ素および塩素が好ましい。
【0033】
一置換もしくは二置換アミノなどの置換アミノは、例えば、アルキル、アルコキシおよびアリールの群からの1個または2個の同一または異なるラジカルによってN−置換されている置換アミノラジカルの群からのラジカルであり;好ましくはジアルキルアミノおよびジアリールアミノ、例えば置換されていてもよいN−アルキル−N−アリールアミノ、および飽和N−複素環であり;1〜4個の炭素原子を有するアルキルラジカルが好ましい;アリールは、好ましくはフェニルまたは置換フェニルである。
【0034】
置換されていてもよいフェニルは、好ましくは、非置換であるか、あるいは、ハロゲン、(C−C)アルキル、(C−C)アルコキシ、(C−C)アルコキシ−(C−C)アルコキシ、(C−C)アルコキシ−(C−C)アルキル、(C−C)ハロアルキル、(C−C)ハロアルコキシ、シアノおよびニトロ、例えば、o−、m−およびp−トリル、ジメチルフェニル、2−、3−および4−クロロフェニル、2−、3−および4−フルオロフェニル、2−、3−および4−トリフルオロメチル−ならびに−トリクロロメチルフェニル、2,4−、3,5−、2,5−および2,3−ジクロロフェニル、o−、m−およびp−メトキシフェニルの群からの同一または異なるラジカルによって一置換もしくは多置換されている、好ましくは三置換までのフェニルである。
【0035】
置換されていてもよいヘテロシクリルは、好ましくは、非置換であるか、あるいは、ハロゲン、シアノ、(C−C)アルキル、(C−C)アルコキシ、(C−C)アルコキシ−(C−C)アルコキシ、(C−C)アルコキシ−(C−C)アルキル、(C−C)ハロアルキル、(C−C)ハロアルコキシ、ニトロおよびオキソの群からの同一または異なるラジカルによって一置換もしくは多置換されている、好ましくは三置換までのヘテロシクリルであり、特に、ハロゲン、(C−C)アルキル、(C−C)アルコキシ、(C−C)ハロアルキルおよびオキソの群からのラジカルによって、非常に特に、1または2個の(C−C)アルキルラジカルによって、一置換もしくは多置換されている。
【0036】
ハロアルキルは、同一または異なるハロゲン原子、例えばモノハロアルキル、例えばCHCHCl、CHCHF、CHClCH、CHFCH、CHCl、CHFなど;ペルハロアルキル、例えばCClまたはCFまたはCFCFなど;ポリハロアルキル、例えばCHF、CHF、CHCHFCl、CHCl、CFCFH、CHCFなどによって部分的にまたは完全に置換されたアルキルである;ハロアルコキシは、例えば、OCF、OCHF、OCHF、OCFCF、OCHCFおよびOCHCHClである。
【0037】
活性化C−H結合を有する有機化合物は、炭素原子に結合した水素原子をプロトンとして放出する傾向が強く、そのため、形式的な意味で、酸として機能する。これは、例えば、炭素原子が、電子吸引性の高い基、例えばカルボニル(エステル、ケトンまたはアルデヒド中)、スルホン、ニトリル、トリフルオロメチル基またはニトロ基などに結合している場合に当てはまる。例えば、マロン酸(pKa=約13)またはアセチルアセトン(pKa=約9)の誘導体は、活性化C−H結合を有する。C−C多重結合は、炭素原子が近接する結果として、同様により強い分極化を確実にし、そのためα−アルケニルおよび−アルキニル基は、例えば、ビニルおよびプロパルギル基中で、CH活性化を導く。その上、芳香族系の形成もCHの酸度を増強することができる。
【0038】
本発明によれば、式(I)はまた、形成される構造に配位性溶媒が含まれていてもよい、平衡状態に存在するすべての互変異性体および/またはオリゴマー複合体もしくはポリマー複合体を包含する。結合は、ハロゲン化物Xを介するか、または、窒素原子を介して形成されてよい。
【0039】
本発明による方法によって得られる式(I)のAE複合金属アミドは、穏和条件下での金属化に特に適している。したがって、それらは感受性のある(ヘテロ)芳香族化合物の変換に特に適し、感受性のある官能基、例えばニトロ、アルデヒドまたはFによって許容される(これは、対応するリチウム塩基またはマグネシウム塩基にはそうでないことが多い)。
【0040】
TMPZnCl・LiClは、20℃前後の温度での感受性のある(ヘテロ)芳香族化合物の金属化のための穏和な塩基として文献に記載されている(Org.Lett.2009,11(8),1837−1840参照)。しかし、社内研究では、例えば、感受性のある複素芳香族4,6−ジクロロ−5−ニトロピリミジンの20℃でのTMPZnCl・LiClによる金属化、および、これに続く、ヨウ素などの求電子物質との反応は、4,6−ジクロロ−5−ニトロピリミジンの破壊につながることが見出された。
【0041】
対照的に、4,6−ジクロロ−5−ニトロピリミジンのこの反応が、同じ条件下で式(I)の本発明の金属アミドによって実施される場合、所望の変換が可能であり、本発明のTMPZnCl・MgClおよび求電子物質としてヨウ素を用いた以下の例として示されるように、求電子物質(「E」)として、例えば、ヨウ素またはその他の求電子物質を使用することが可能である。
【化5】
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明による方法は、下のスキーム1Aおよび1Bに示される、TMPZnCl・MgClおよびTMPZnCl・CaClの製造の例によって詳細に説明される。各例で使用される金属性アルカリ土類金属(AE)は、Mg(0)またはCa(0)である。
【0043】
スキーム1A:
【化6】
【0044】
スキーム1B:
【化7】
【0045】
式(II)のクロロアミンは、先行技術、例えばBodor et al.Jour.Pharm.Sci.1974,63,1387;Kovacic et al.,Chemical Reviews 1970,70,6,639;Zakrzewski et al,Synthetic Communications 1988,18(16&17),2135;J.Org.Chem.1997,62,16,5631に記載される方法により得ることができる。JACS,1973,6400またはToshimasa et al.Bull.Chem.Soc.Jap.,1972,45,1802およびDeno et al.JACS 1971,93,2065に記載されるように、対応する第二級アミンと次亜塩素酸塩を反応させることにより合成をもたらすことが好ましい。
【0046】
本発明の好ましい実施形態は、カルシウムまたはマグネシウムと複合体化した式(I)の金属アミド、およびその製造のための方法に関し、ここで、
AEは、カルシウムまたはマグネシウムであり、
Mは、Sc、Ti、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、ZnおよびAlから選択される金属であり;
Xは、塩素および臭素から選択されるハロゲン原子であり;
およびRは、一緒に、これらの基の各々が1、2、3または4個のRラジカルにより置換されていてもよい、−(CH−、−(CH−または−(CHO(CH−基を形成し;その中で、
は、メチル、エチル、n−プロピルおよびi−プロピルから選択される。
【0047】
本発明の特に好ましい実施形態は、カルシウムまたはマグネシウムと複合体化した式(I)の金属アミド、およびその製造のための方法に関し、ここで、
AEは、カルシウムまたはマグネシウムであり、
Mは、Ti、Mn、Fe、ZnおよびAlから選択される金属であり;
Xは、塩素および臭素から選択されるハロゲン原子であり;
およびRは、一緒に、4個のメチル基によって置換されている−(CH−基を形成する。
【0048】
非常に特に好ましいのは、本発明による方法において式(II)のクロロアミンとして1−クロロ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンを使用することである。
【0049】
よって、本発明は、式(I−i)のAE複合金属アミドにも関する。
【化8】
【0050】
〔式中、
AEは、CaおよびMgから選択され;
Mは、Sc、Ti、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、ZnおよびAlから選択される金属であり;かつ
Xは、塩素および臭素から選択されるハロゲン原子、好ましくは塩素である〕。
【0051】
本発明の文脈において特に好ましいのは、式(I−ii)のAE複合亜鉛アミドおよびその互変異性体、オリゴマーおよびポリマーである
【化9】
【0052】
〔式中、AEは、CaまたはMgである〕。
【0053】
本発明による方法は、好ましくは+20〜−20℃、好ましくは+10〜−10℃、より好ましくは+5〜−5℃の温度範囲内で実行される。
【0054】
反応は、好ましくは保護ガス雰囲気下、エーテルおよび芳香族化合物、またはその混合物からなる群から選択される非プロトン性無水溶媒中で実施される。特に好ましいのは、配位性溶媒、例えば、THF、2−メチルテトラヒドロフラン、tert−ブチルメチルエーテル、1,2−ジメトキシエタンまたはジエチルエーテル、あるいは、そうでなければ、芳香族化合物、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼンまたはキシレンとのその混合物、および/あるいは、そうでなければ、アルカンまたはシクロアルカンまたはアルキル−置換シクロアルカン、例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、イソオクタンまたはメチルシクロヘキサンとのその混合物を用いることである。
【0055】
反応混合物の希釈は、好ましくは、AE複合金属アミドの得られる溶液をその後の反応においてさらに濃縮することなく使用することができるように調節される。
【0056】
反応混合物は、デカンテーションまたは濾過により金属残渣から分離することができる。
【0057】
式(II)のクロロアミンに基づいて、アルカリ土類金属(AE)とそのハロゲン化物(EAX)との組合せ、ならびに金属(M)とその金属ハロゲン化物(Mn+)との組合せは、過剰に使用されることが好ましい。
【0058】
本発明によれば、各等量の式(II)のクロロアミンに対して、各々5当量までの、好ましくは各々3当量までの、より好ましくは各々2当量までの、アルカリ土類金属(AE)、金属(M)、アルカリ土類金属ハロゲン化物(EAX)および/または金属ハロゲン化物(Mn+)が使用される。式(II)のクロロアミンの完全な変換を達成するために、総計で少なくとも1.0当量の金属性アルカリ土類金属(AE)および/または金属(M)が使用されなければならない。その上、合計で少なくとも1.0当量の金属(M)および/または金属ハロゲン化物(Mn+)が使用されなければならず、アルカリ土類金属ハロゲン化物(EAX)なしで済ますことは特に有利である。
【0059】
マグネシウムおよびカルシウムおよび/またはそれらのハロゲン化物を組み合わせて使用することは、式(I)の化合物の混合物を得ることを可能にし、相乗作用のために、例えば高い溶解度といった利点を有しうる。
【0060】
金属マグネシウムは、反応において削りくず、ビーズまたは粉末の形態で使用することができる。高い活性表面積のために、マグネシウム粉末が好ましい。金属カルシウムは、一般に、反応においてカルシウム粉末の形態で使用される。本明細書の文脈において使用されるカルシウム源は、好ましくはフッ化カルシウム、塩化カルシウムまたは臭化カルシウムであり、より好ましくは塩化カルシウムである。
【0061】
ハロゲン化マグネシウムは、フッ化マグネシウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウムおよびヨウ化マグネシウムから選択される。塩化マグネシウムまたは臭化マグネシウムを使用することが好ましく、塩化マグネシウムを使用することが特に好ましい。
【0062】
金属のさらなる活性化のために、所望により活性化試薬、例えばi−BuAlH(DIBAL−H)、ジブロモエタンまたはヨウ素を、単独で、あるいは、組み合わせて使用することが可能である。
【0063】
本発明の文脈において使用される金属(M)は、元素周期律表の第3族、第4族、第7族、第8族、第9族、第10族、第11族、第12族、第13族(IUPAC命名法)またはそのハロゲン化物、好ましくは塩化物、およびランタノイド族またはそのハロゲン化物、好ましくは塩化物の金属から選択される;この金属(M)は、好ましくは、Sc、Ti、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、ZnおよびAlまたはそのハロゲン化物、好ましくは塩化物から選択される;この金属(M)は、より好ましくは、Ti、Mn、Fe、ZnおよびAlまたはそのハロゲン化物、好ましくは塩化物から選択される。本発明の文脈において、亜鉛(Zn)および塩化亜鉛(ZnCl)が特に重要である。その上、本発明の文脈において、マンガン(Mn)およびハロゲン化マンガン、好ましくはMnClが特に重要である。
【0064】
本発明は、本発明の方法に従って得られる式(I)のAE複合金属アミドの、芳香族化合物、ヘテロ芳香族化合物、アルケン、アルキンおよび活性化C−H結合をもつその他の有機化合物の塩基としての使用をさらに提供する。その塩基度、選択性または活性は、製造の過程または使用の過程において、リチウム塩、例えば塩化リチウムの添加により、あるいはクラウンエーテルまたはその他の配位性試薬によって、促進されるか、あるいは有利に影響を受けることができる。
【0065】
本発明は、以下の実施例により詳細に説明される。
【0066】
[実施例]
【0068】
MgおよびZnClによる(TMP)ZnCl・MgClの製造
マグネチックスターラーバーおよび隔壁を備えた、乾燥した、アルゴンを充填したシュレンク管の中に、マグネシウム粉末(325メッシュ−1458mg、60mmol)および塩化亜鉛(42.9ml、30mmol、THF中0.7M)を最初に装入し、DIBAL−H(0.5ml、THF中1M)の添加によって活性化させた。5分間撹拌した後、混合物を0℃に冷却し、撹拌を停止した。ヨウ素(65mg、0.25mmol)の添加の後、混合物を再び撹拌し、無水THF(15ml)中の1−クロロ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン(TMPCl;3514mg、20mmol)を、注入ポンプ(速度:15ml/時)によって0℃で滴下した。その後、反応混合物を25℃でさらに8時間撹拌し、黄色の溶液を、安息香酸および指示薬としてのN−フェニル−4−(フェニルアゾ)アニリンで滴定した。濃度は0.17Mであった(収率=50%)。