特許第6163168号(P6163168)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6163168陽極酸化アルミニウムのプラスチックへの接着のための潜在的反応性接着フィルムの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6163168
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】陽極酸化アルミニウムのプラスチックへの接着のための潜在的反応性接着フィルムの使用
(51)【国際特許分類】
   C09J 175/04 20060101AFI20170703BHJP
   C09J 7/00 20060101ALI20170703BHJP
   B32B 15/095 20060101ALI20170703BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20170703BHJP
   B29C 65/52 20060101ALI20170703BHJP
   C09J 201/02 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
   C09J175/04
   C09J7/00
   B32B15/095
   B32B15/08 N
   B29C65/52
   C09J201/02
【請求項の数】16
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-559154(P2014-559154)
(86)(22)【出願日】2013年2月22日
(65)【公表番号】特表2015-513589(P2015-513589A)
(43)【公表日】2015年5月14日
(86)【国際出願番号】EP2013053542
(87)【国際公開番号】WO2013127697
(87)【国際公開日】20130906
【審査請求日】2016年2月8日
(31)【優先権主張番号】102012203249.5
(32)【優先日】2012年3月1日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】509120403
【氏名又は名称】テーザ・ソシエタス・ヨーロピア
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】シュミッツ−シュタペーラ・ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ドラーゼ・ティーロ
(72)【発明者】
【氏名】ライター・スヴェン
(72)【発明者】
【氏名】ハンネマン・フランク
【審査官】 菅野 芳男
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭49−107036(JP,A)
【文献】 特表2001−525468(JP,A)
【文献】 特開2005−336494(JP,A)
【文献】 特表2012−516365(JP,A)
【文献】 特表2013−527872(JP,A)
【文献】 特開昭56−155750(JP,A)
【文献】 特開2001−261773(JP,A)
【文献】 特表2013−509468(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0048632(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 175/04
C09J 7/00
C09J 201/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融温度T(溶融)(ここで、35℃≦T(溶融)≦90℃、特に40℃≦T(溶融)≦60℃)を有し、かつ、イソシアネートと反応することができる官能基を有する熱可塑性成分と、該熱可塑性成分への微粒子分散液の状態で存在し、かつ、粒子(該粒子は、40℃≦T(開始)≦100℃の開始温度T(開始)を有し、T(開始)≧T(溶融)である)表面の領域内で実質的に不活性化されるイソシアネート含有成分とを含む潜在的反応性接着フィルムの少なくとも1つの層を有する製品の、陽極酸化アルミニウムをプラスチックに接着させるための使用。
【請求項2】
前記粒子が、45℃≦T(開始)≦90℃、特に45℃≦T(開始)≦75℃の開始温度T(開始)を有することを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
T(開始)>T(溶融)であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記熱可塑性成分がOH及び/又はNH基で官能化された化合物であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の使用。
【請求項5】
前記潜在的反応性接着剤フィルムの層厚が10μm〜500μm、特に20μm〜250μmであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の使用。
【請求項6】
前記製品が少なくとも1個の一時的キャリア及び/又は少なくとも1個の永久的キャリアを含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の使用。
【請求項7】
前記少なくとも1個の永久的キャリアが箔、紙、スクリム、織布若しくは編布又はニットであり、ここで、該キャリアの表面は、化学的及び/又は物理的に前処理されていることが可能であることを特徴とする、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記少なくとも1個の一時的キャリアが、片面若しくは両面付属の特にシリコーン処理剥離箔又は片面若しくは両面付属の特にシリコーン処理剥離紙であることを特徴とする、請求項6に記載の使用。
【請求項9】
前記潜在的反応性接着フィルムが室温では粘着性であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の使用。
【請求項10】
前記潜在的反応性接着フィルムが室温では非粘着性であることを特徴とする、請求項1〜8項のいずれかに記載の使用。
【請求項11】
前記製品が多層であり及び/又は永久的キャリアを有し、該製品は、50μm〜1000μm、特に75μm〜300μmの厚さを有することを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の使用。
【請求項12】
前記永久的キャリアが化学的又は物理的に前処理されてから被覆されていることを特徴とする、請求項〜11のいずれかに記載の使用。
【請求項13】
積層体であって、
・陽極酸化アルミニウム部材
・溶融温度T(溶融)(ここで、35℃≦T(溶融)≦90℃、特に40℃≦T(溶融)≦60℃)を有し、かつ、イソシアネートと反応することができる官能基を有する熱可塑性成分と、該熱可塑性成分への微粒子分散液の状態で存在し、かつ、粒子(該粒子は、40℃≦T(開始)≦100℃、特に45℃≦T(開始)≦90℃の開始温度T(開始)を有し、T(開始)≧T(溶融)である)表面の領域内で実質的に不活性化されるイソシアネート含有成分とを含む潜在的反応性接着フィルムの少なくとも1つの層を有する両面接着製品、及び
・プラスチック基材
からなる積層体。
【請求項14】
次の工程:
(a)プラスチック部品を成形用部品上に固定し;
(b)結合されるべき陽極酸化アルミニウムを、溶融温度T(溶融)(ここで、35℃≦T(溶融)≦90℃、特に40℃≦T(溶融)≦60℃)を有し、かつ、イソシアネートと反応することができる官能基を有する熱可塑性成分と、該熱可塑性成分への微粒子分散液の状態で存在し、かつ、粒子(該粒子は、40℃≦T(開始)≦100℃、特に45℃≦T(開始)≦90℃、より好ましくは45℃≦T(開始)≦75℃の開始温度T(開始)を有し、T(開始)≧T(溶融)である)表面の領域内で実質的に不活性化されるイソシアネート含有成分とを含む潜在的反応性接着フィルムの少なくとも1つの層を有する両面粘着製品と共に、該プラスチック部品上に設置し;
(c)特に加熱プレスのラムにより圧力及び温度を加え;
(d)結合した部品を該成形用部品から除去すること
を含み、或いは工程(c)と工程(d)との間で同様に冷却を実施することも可能である、陽極酸化アルミニウム部品をプラスチック部品に接着させるための方法。
【請求項15】
85℃未満において陽極酸化アルミニウムをプラスチックに接着させるための、請求項1〜12のいずれかに記載の使用。
【請求項16】
工程(c)において、特に加熱プレスのラムにより圧力及び85℃未満の温度を加えることを含む、請求項14に記載の陽極酸化アルミニウム部品をプラスチック部品に接着させるための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イソシアネートと反応することができる官能基を有する熱可塑性成分と、該熱可塑性成分への微粒子分散液の状態にありかつ粒子表面の領域内で実質的に不活性化されるイソシアネート含有成分とを含む潜在的反応性接着フィルムの少なくとも1つの層を有する製品の使用に関する。
【0002】
さらに、本発明は、少なくとも1つの接着層と少なくとも1つの一時的キャリアとを有する又は少なくとも2つの接着層と少なくとも1つの永久的キャリアとを有するシート状構成部材の製造方法に関するものであり、ここで、少なくとも1つの接着層は、イソシアネートと反応することができる官能基を含む熱可塑性成分と、該熱可塑性成分への粒子分散液の状態にありかつ粒子表面の領域内で実質的に不活性化されるイソシアネート含有成分とを含む潜在的反応性配合物からなる潜在的反応性接着フィルムである。
【背景技術】
【0003】
現代の家庭用電子機器では、場合によっては非常に低いストラット幅しか有しない様々な部品を互いに結合させることが必要な場合が多い。この場合、感圧接着テープの接着強度は不十分な場合が多いため、このような場合には、反応性液体接着剤を当てにすることが必要になる場合が多い。しかし、液体接着剤の使用は、それ自体がかなりの有害臭と関連するという所定の欠点を伴う。さらに、液体接着剤は、取り扱いが厄介である。したがって、低い蒸気圧を有し、かつ、より整理された処理加工のために実質的に二次元の形で利用できる接着剤系が求められている。一つの選択肢は、熱活性化フィルム(HAF)である。互いに結合される基材には感熱基材が含まれるため、非常に低い温度(T<100℃)で処理加工することができるHAFを与えるための要件が存在する。
【0004】
近年において特にエレクトロニクス分野、例えば、携帯電話やいわゆるノートパソコンにおいて特に需要がますます生まれている接着のタイプは、陽極酸化アルミニウムとプラスチックとの接着である。陽極酸化アルミニウムは、電子デバイス用の装飾材料としてこれまで以上に重要になってきている。いわゆる陽極酸化アルミニウム、すなわち、陽極酸化プロセスを用いて処理されたアルミニウムは、その表面に酸化物保護層がアルミニウムの陽極酸化により形成されたアルミニウムである。ここで、電気めっき技術とは対照的に、この保護層は加工物上には堆積されない。その代わりに、酸化物又は水酸化物が金属の最上層の変換によって形成される。したがって、このものは、アルミニウムに対して特に良好な結合を有する。5〜25μmの厚さ層が形成されるが、これは、例えば機械的損傷の結果として間隙がこの層に形成されない限り、下位層を腐食から保護する。陽極酸化アルミニウムの欠点は、その熱感度である。酸化アルミニウムは、アルミニウム自体とは異なる膨張係数を有し、かつ、脆性であるため、酸化アルミニウムの層は、100℃付近の温度の熱の影響下であっても、応力亀裂を生じさせる。言い換えれば、上記の望ましくない間隙が保護層中に生じる。さらに、この温度範囲の熱応力であっても、視覚的欠陥、すなわち装飾構成部材にとって望ましくない現象が生じる。
【0005】
基材上の接着強度について、これは、特に、基材に関連して重要な化学的及び物理的表面特性である。したがって、その表面への接着層の固定に関する限りにおいて、陽極酸化アルミニウムは、金属よりもセラミック(酸化アルミニウム基及び水酸化アルミニウム基)に近く(これらの特定の課題はセラミックへの接着層の固定に関連する)、かつ、金属上への接着層の固定に関連したより課題をより少なく与える傾向がある。
【0006】
HAFダイカットのホットプレスは、現在では確立された業務であり、例えばチップモジュールをチップカードに接着するために知られている。装飾的なアルミニウム部分へのポリカーボネート携帯電話ケーシングの高温接着が本出願人のDE102005035905A1に記載されている。ここでは、180℃の押圧温度が使用される。陽極酸化アルミニウムは、180℃の結合温度については感熱的過ぎるため、その明細書にも明示的には記載されていない。
【0007】
本出願人のDE102009006935A1には、金属とプラスチックとの結合のための不織布キャリアを含む熱活性化フィルムが記載されている。基材うち、列挙されているのは陽極酸化(eloxed)アルミニウムである。85℃を超える溶融温度を有する熱可塑性材料を使用することが好ましい。しかしながら、この温度であっても、陽極酸化アルミニウムの結合には高すぎる。熱可塑性ポリウレタンが記載されているが、水性分散液から得られるものは明示的には記載されていない。イソシアネートが反応性樹脂として使用できるが、イソシアネートの特定の処理は記載されていない。また、この反応性樹脂成分は、熱可塑性ポリウレタンに添加するための成分としても記載されている。熱可塑性マトリックス自体は、反応系ではない。
【0008】
WO93/25599A1号(Thomas Abend)には、55℃を超える温度で反応性を有する不活性化ポリイソシアネートを含み、かつ、40℃を超える温度で溶融可能であり、しかもイソシアネートと反応することができる重合体を含む潜在的反応性ポリウレタン系のための配合物が記載されている。これらの配合物を基材上に塗布することができ、その後これを結合させることができる。また、これらのものは、キャリアを有しないフィルムの形でも成形でき、その後、このものを基材に積層して結合させることができる。この種の接着システムは、木材、プラスチック、金属、ガラス、繊維、合成シート状構造、カード、紙及び箔の結合、密封、積層又は被覆のために役立つ。これらの材料はこれ以上詳細には定義されていない。プラスチック/金属の組合せについては言及されていない。また、陽極酸化アルミニウムに対する言及もない。
【0009】
J.ブフナー、W.ヘニング,Adhasion,2007,51(6),16−21には、潜在的反応性ポリウレタンの水性分散液の乾燥方法のみならず、2つの基材の接着のためのプレスアプローチが記載されている。引用された例示基材は、PVC、革及びMDF(中密度木質繊維板)である。金属/プラスチックの組合せの接着について言及はなく、陽極酸化アルミニウムは記載されていない。
【0010】
DE102010013145A1(ローマン)には、熱活性化可能でかつ潜在的反応性である接着剤が記載されている。室温では、これらのものはわずかに粘着性があり、依然として初期加熱及び冷却後の一定時間にわたって接着性を示す。これらの接着剤は、好ましくは、ポリウレタンをベースとする。結合のために記載された基材としては、金属及びプラスチック(さらなる特殊化なし)が挙げられ、エレクトロニクス産業において結合性感熱プラスチックの適用について特に言及されている。プラスチック/金属の組合せは記載されていない。陽極酸化アルミニウムが言及されていない。
【0011】
WO93/25599号(Thomas Abend)には、水性ポリウレタン分散液をベースとする反応性ポリウレタン接着剤系が記載されている。イソシアネートとの反応のための官能基を保持する熱可塑性ポリウレタンのマトリックスに分散しているのは、表面上で不活性化されるポリイソシアネート粒子である。第1温度で熱可塑性ポリウレタンが溶融する。これを上回る温度では、不活性化粒子表面が溶解し、そしてイソシアネート基が熱可塑性ポリウレタンの官能基と反応できる。接着に好適であると考えられる基材は、一般に、金属、プラスチック、ガラス、木材、木材複合材、カード、フィルム/箔、合成シート状構造物及び織物である。複数の材料の組み合わせの可能性は記載されておらず、また陽極酸化アルミニウムに関するいかなる言及もない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】独国特許出願公開第102005035905号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102009006935号明細書
【特許文献3】国際公開第93/25599号パンフレット
【特許文献4】独国特許出願公開第102010013145号明細書
【特許文献5】国際公開第93/25599号パンフレット
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】J.ブフナー、W.ヘニング,Adhasion,2007,51(6),16−21
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記特許文献の明細書のいずれにも、陽極酸化アルミニウムのプラスチックへの接着のための解決手段を提供していない。したがって、実質的に二次元の形で提供することができ、室温より高い低温、すなわち、85℃を下回る温度で基材(陽極酸化アルミニウム又はプラスチック)に適用することができ、しかも、技術面において、第2基材(プラスチック又は陽極酸化アルミニウム)に熱プレスした後にいわゆる押し抜き試験に合格し、また、これを特定の湿度/熱貯蔵前のみならずその後も達成する、陽極酸化アルミニウムをプラスチックに接着させる好適な手段についての探索が続いている。これらの要件は、家庭用電化製品部門における接着の適格性にとって典型的なものである。
【0015】
極性プラスチック(例えば、ポリカーボネート又はPMMA)の湿気不透過性基材(本願の場合には、陽極酸化アルミニウム)への結合は、格別な困難を伴う。この種の複合積層体は、湿度/熱貯蔵において厳しいストレスを受ける。というのは、極性プラスチックは環境からかなりの量の水分を取り込むことができるからである。この水分は、プラスチック基材と接触している接着フィルム表面に圧力をかける。この接着フィルムは、ある程度までプラスチックから水分を吸収し、そしてそれを環境に再び放出することができる。しかし、プラスチック/陽極酸化アルミニウムの結合では、この水分は、全表面領域にわたって逃げることができず、その代わりに端部表面を介してのみ逃げることができる。というのは、この接着フィルムは、湿気不透過性基材(陽極酸化アルミニウム)によって支えられているからである。接着フィルムがプラスチックの表面から局所的かつ部分的に剥離するという望ましくない現象のリスクが存在する。したがって、適切な接着手段は、それ自体がかなり低い水分含量を有し、かつ、乾燥にもかかわらず、かなりの残留水分の可能性が存在する水ベースの分散液からは得られない接着剤であると結論付けることができる。
【0016】
さらに、金属の場合、特に陽極酸化アルミニウムについて、水分は、陽極酸化アルミニウムの表面、言い換えると、典型的には5μm〜25μmの厚さのセラミック層と、接着フィルムとの間をゆっくり進む傾向があり、これがなければ良好な接着性能を損なう場合があることが分かった。したがって、陽極酸化アルミニウムのプラスチックへの結合は、見いだされる任意の結合解決手段に特に厳格な要件を課す。アルミニウム金属/プラスチックシステムに好適な結合手段を使用できないとは限らない。というのは、陽極酸化アルミニウムの表面層の酸化アルミニウムは、金属アルミニウムとは完全に異なり、後者よりも非常に脆弱であるという特性を有するからである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
驚くべきことに、溶融温度T(溶融)(ここで、35℃≦T(溶融)≦90℃、特に40℃≦T(溶融)≦60℃)を有し、かつ、イソシアネートと反応することができる官能基を有する熱可塑性成分と、該熱可塑性成分中において特に微細化(d50<50μm、特に<15μmの粒度分布を有する)した微粒子分散液の状態で存在し、かつ、粒子表面(該粒子は、40℃≦T(開始)≦100℃、特に45℃≦T(開始)≦90℃、非常に好ましくは45℃≦T(開始)≦75℃の開始温度T(開始)を有し、T(開始)≧T(溶融)である)の領域内で実質的に不活性化されるイソシアネート含有成分とを含む潜在的反応性接着フィルムの少なくとも1つの層を有する製品が、陽極酸化アルミニウムをプラスチックに接着させるのに非常に好適であることが分かった。熱プレス後、陽極酸化アルミニウムのプラスチックへの必要な結合強度が湿度/熱貯蔵の前後の両方で存在する。
【0018】
ここで、T(溶融)とは、熱可塑性成分の溶融温度のことであり、T(開始)とは、熱可塑性成分への分散状態の粒子のイソシアネート基が熱可塑性ポリウレタンの官能基と反応することができる温度のことである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
このような潜在的反応性接着フィルムは、水性ポリウレタン分散液から得られた、いわゆる1K潜在的反応性ポリウレタン、好ましくは、Bayer AG製のDispercoll U(登録商標)をベースとする。潜在的反応性接着剤フィルムは、溶融温度T(溶融)を有しかつイソシアネートと反応することができる官能基を有する熱可塑性成分のみならず、この熱可塑性成分中に特に微細化(好ましくはd50<50μm、特に<15μmの粒度分布を有する)した粒状分散液の状態にあり、かつ、粒子表面の領域内で実質的に不活性化されるイソシアネート含有成分も含む。粒子は、開始温度T(開始)(T(溶融)≦T(開始))を有する。T(溶融)は、35℃〜90℃、好ましくは40℃〜60℃である。T(開始)は、40℃〜100℃、好ましくは45℃〜90℃、非常に好ましくは45℃〜75℃の間である。潜在的反応性接着フィルムは、処理加工操作における他のHAF系のために既に確立された良好な(再)配置可能性を確保するために、好ましくは室温で非粘着性である。
【0020】
特に好ましくは、T(溶融)<T(開始)である。というのは、こうすることで、ウェブ状の接着製品の製造の間に架橋反応が不必要に生じることを防ぐのが確実に可能になるからである。
【0021】
熱可塑性成分として優先的に使用されるのは、OH及び/又はNH基で官能化される化合物である。非常に好ましくは、熱可塑性成分は、少なくとも1種の半結晶性ポリエステルウレタンを含む。
【0022】
潜在的反応性接着フィルムは、好ましくは、35℃≦T(溶融)≦90℃、特に40℃≦T(溶融)≦60℃の溶融温度T(溶融)を有し、かつ、イソシアネートと反応することができる官能基とを有する、熱可塑性成分としての陰イオン性高分子量ポリウレタン分散液を含む。これは、例えば、Dispercoll U53、Dispercoll U54、Dispercoll U56、Dispercoll U 8755、Dispercoll U XP 2815、Dispercoll VP KA 8758、Dispercoll U XP 2682、Dispercoll U XP 2701、Dispercoll U XP 2702、Dispercoll U XP 2710及び/又はDispercoll BL XP 2578(Dispercollはバイエル社の登録商標である)などのDispercoll Uファミリーから商業的に入手可能な製品の状態である。
【0023】
潜在的反応性接着フィルムは、熱可塑性成分中において特に細かく分割された粒子状分散液の状態で存在しかつ粒子表面の領域内で実質的に不活性化されるイソシアネート含有成分として、好ましくはトリレンジイソシアネート化合物(TDI化合物)、例えばDispercoll BL XP 2514(TDI二量体)及び/又はAqualink U(ブロックTDI二量体の分散液)及び/又はイソホロンジイソシアネート(IPDI)、例えばAqualink D(ブロックIPDI三量体の分散液)をさらに含む。ジイソシアネートは、例えば、それぞれの潜在的反応性固体イソシアネートの水性懸濁液の状態で使用される。Aqualinkは、Aquaspersions社から入手できる。特に熱可塑性成分(上記Dispercoll U製品など)としての陰イオン性高分子量ポリウレタン分散液と共に、上記ジイソシアネート製品を架橋剤成分として使用することができる。
【0024】
潜在的反応性接着フィルムは、他の配合成分をさらに含んでもよい。これらのものとしては、増粘剤、湿潤剤、消泡剤、充填剤(例えば、熱伝導性充填剤)、顔料、触媒、老化防止剤、光安定剤及び特定の接着特性を確立するための他の重合体が挙げられる。特定の接着特性は、例えば、非晶質重合体(例えば、ポリエーテルウレタン若しくはポリアクリレート)の水性分散液を混合することによって及び/又は水性樹脂分散液(特にロジンエステルをベースとするもの)を混合することによって確立できる。
【0025】
好ましくはDispercoll Uといった上記の定義に沿った潜在的反応性接着フィルムの少なくとも1つの層を有する接着製品は、驚くべきことに、ポリウレタンベースの材料が水性分散液から得られるため、この系が、必然的に、接着の安定性及び耐久性に対して実際には不利に作用するであろう追加の水を有することができるという事実にもかかわらず、陽極酸化アルミニウムとプラスチックとの接着のために好適である。
【0026】
本発明の製品の場合には、少なくとも10μm〜多くとも500μm、好ましくは少なくとも20μm〜多くとも250μmの層厚を有する潜在的反応性接着フィルムの少なくとも1つの層を使用する。
【0027】
本発明の製品は、両面接着製品である。少なくとも1つの潜在的反応性接着フィルムを含むこの種の製品は、最も単純には、再剥離可能な(一時的)キャリア(支持体)材料上に適用される単層の形で使用される。適切な一時的キャリア材料は、従来技術により知られており、かつ、剥離層と共に片側又は両側に設けられる全ての剥離箔及び剥離紙である。紙は、ポリエチレン又はポリプロピレンが片面又は両面に被覆されていてもよい。また、製品が巻かれた形ではない場合であっても、接着フィルムの表面及び裏面の両方がライニングされた、再剥離性キャリア材料の2つの層を使用することも可能である。
【0028】
少なくとも1つの潜在的反応性接着フィルムを含む製品は、結合後に製品中に残るさらなるキャリア材料(永久的キャリア)を含むこともできる。同様に、この目的のための適切なものは、箔及び紙だけでなく、スクリム、織布及びニットである。これらのキャリア材料の表面は、それぞれの場合において互いに独立して、潜在的反応性接着フィルムのキャリア材料上への特に効果的な固定を可能にするように、化学的に(プライマー、プラズマ)及び/又は物理的(コロナ、火炎、プラズマ)で前処理されていてもよい。不織布が好ましい。永久的キャリア層は、接着フィルムの一部分について、加圧条件下において溶融状態で結合線から横方向に圧迫される任意の傾向を減少させる(この点に関しては、DE102009006935A1参照)。
【0029】
この好ましい場合において不織キャリアウェブとして用いられるのは、個々の繊維からなるシート状の構造である。この文脈において、DIN EN 29092規格に従って定義される不織布ウェブの全てを使用することが可能である。不織布ウェブは、まだ互いに結合していない緩く撚られた繊維からなる。強度は、固有の繊維の付着により生じる。また、固定不織布及び非固定不織布とでも区別される。繊維は、統計的に分布する。不織布は、繊維材料によって区別できる。使用される繊維材料は、例えばガラス、ミネラルウール若しくは玄武岩などの鉱物繊維、例えば絹や羊毛などの動物繊維、例えば綿などの植物繊維、セルロース、化学繊維、例えばポリアミド、ポリプロピレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、アラミド若しくはポリエステル又は上記物質の混合物とすることができる。これらの繊維は、ニードリング又は水ジェットで機械的に、結合剤の添加により化学的に、又は好適なガス流中での軟化、加熱ロール間若しくは蒸気流れ中で熱的に固定できる。
【0030】
本発明の非常に好ましい一実施形態では、セルロースをベースとする不織布を使用する。不織布の基本質量は、好ましくは4〜100g/m、より好ましくは10〜70g/mである。このような不織布は、例えばGlatfelter社から市販されている。これらの不織布の厚さは、好ましくは20〜100μm、非常に好ましくは30〜60μmである。
【0031】
永久的キャリアを有する接着製品は、異なる厚さの潜在的反応性接着フィルム層及び/又は好ましくは表面と裏面とに異なる種類の潜在的反応性接着フィルム層を有することができる。異なる潜在的反応性接着フィルム層を使用する場合には、これらの両方は、上で示したような潜在的反応性接着フィルムの要件を満たす。この種の系では、接着層の一方が潜在的反応性ではなく、その代わりに、例えば、熱可塑性、熱活性化性及び/又は粘着性であることが可能である。
【0032】
また、少なくとも1つの潜在的反応性接着フィルムを含む製品は、永久的キャリアなしの二層又は多層の形態でも使用できる。好ましくは、最上層、非常に好ましくは、同様に最下層は、それぞれ潜在的反応性接着剤フィルムの層であり、これらのフィルムは、厚さ及び/又は種類の点で異なることが可能である。異なる潜在的反応性接着フィルム層を使用する場合には、それらの両方は、上に示したような潜在的反応性接着フィルムの要件を満たす。この種の系では、接着層(例えば、外側の接着層)の一つが潜在的反応性ではなく、その代わりに、例えば、熱可塑性、熱活性化性及び/又は粘着性である可能性も存在する。
【0033】
永久的キャリアを含む多層接着製品は、50μm〜1000μm、好ましくは75μm〜300μmの厚さを有することができる。
【0034】
製品は、ロール製品、シート製品又はダイカットとしてウェブの形で変換できる。潜在的反応性接着フィルムは、好ましくは室温では非粘着性である。というのは、この材料は、その後、一時的キャリア(例えば、ダイカット)なしでも非常に有利に変換され、さらなる処理加工操作のために提供され得るからである。しかしながら、粘着性の実施形態も考えられ、また有利である。
【0035】
潜在的反応性接着剤フィルムのための配合物の製造方法が、例えば、WO99/29755A1号又はEP1172390A1に記載されている。存在する困難さは、水性分散液の乾燥条件を、潜在的反応性接着系がこれらの状況下で発現を示さないように選択しなければならないことである。詳細及び提案された解決策については、Adhasion、2007,51(6),16〜21を参照されたい。潜在的反応性接着フィルムを製造するための一つの可能性は、WO99/29755A1号に記載されるように、一時的又は永久的キャリアに水性分散液を塗布することである。この塗布は、従来通りドクターブレード又はノズルを用いて行う。その後乾燥を行う。後者は、強制循環システム又は乾燥トンネルで行うことができる。特に有利でかつこの明細書に記載されていないことは、複数のシートを、中心をずらしたものの上に他のものを二列で配置されたロッドの周りを曲がりくねって動き、それによって高い乾燥機滞留時間及びそれにもかかわらず高い被覆速度と共に乾燥の際の効果的な空間利用を達成する、懸濁液乾燥として知られている技術である。懸濁液乾燥のより詳細な説明は、EP2151484A1に記載されている。塗布温度は、有利には室温である。乾燥温度は、有利にはT(溶融)を超えない。45℃程度で水性分散液の十分な乾燥には十分であるが、ただし、乾燥操作における空気の十分な交換及び十分な乾燥−組立体滞留時間を確保することを条件とする。
【0036】
織物、スクリム又はニットの形態、特に不織布の形態の永久的キャリアを使用する場合、永久的キャリア材料を、被覆操作の後に、接着層及び一時的キャリアからなる潜在的反応性接着フィルム上に積層する。この操作は、反応系の開始温度未満の温度で、かつ、有利には熱可塑性材料の溶融温度以上で加熱により実施される。したがって、積層操作の前に潜在的反応性接着フィルムを加熱することが必要な場合がある。これは、例えば、IR源又は加熱ロールを用いて実施できる。キャリア不織布を使用する場合には、温度及び積層圧力の選択を使用して、キャリア不織布への浸透の深さを変更することができる。
【0037】
永久的キャリアを使用する場合には、両面接着製品を与えるためにキャリアの第2側にも同様に接着層を設けることが必要である。キャリア材料の反対側への被覆は、第2工程で行われる。これについての手順は、一時的キャリア、潜在的反応性接着フィルム及び永久的キャリアからなる第1コートを、その後加熱しながら第2コートの上に積層する第1工程での被覆の手順に類似する場合がある。別法として、潜在的反応性接着フィルムの第2コートを第1コートの永久的キャリアの反対側に直接行うことができる。また、キャリア不織布(使用する場合)への浸透の深さは、温度及び積層圧力によって変更できる。ここで適用される規則は、第1積層のために使用したのと同じである。
【0038】
第2接着層のために使用される配合物は、第1接着層のために使用されるものと同じであってもよい。また、異なる潜在的反応性接着剤系を使用することや、感圧接着剤を使用することも可能である。適切な接着剤は、結合される基材に依存して選択できる。
【0039】
その最も単純な形態では、本発明の製品は、一時的キャリアを有する接着層から構成される。永久的キャリアを使用する場合には、少なくとも2つの接着層が必要となる。この最も単純な構成の他に、追加の接着層及び/又はキャリア層との任意の他の組み合わせが考えられる。特に、接着層のそれぞれは、処理段階まで輸送ために一時的キャリアで保護できる。
【0040】
本発明の用途は、陽極酸化アルミニウムのプラスチックへの接着に関する。陽極酸化アルミニウムは、圧縮、非圧縮及び/又は着色されていてよい。陽極酸化アルミニウムの一例はE6EV1である。家庭用電化製品の構成部品について、プラスチック部品は、好ましくは、射出成形によって処理加工できるプラスチックをベースとする。したがって、この群には、例えば、ABS、PC、ABS/PCブレンド、PMMA、ポリアミド、ガラス繊維強化ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニレン、酢酸セルロース、シクロオレフィン共重合体、液晶重合体(LCP)、ポリラクチド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリメタクリロイルメチルイミド、ポリメチルペンテン、ポリフェニルエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリフタルアミド、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、スチレンアクリロニトリル共重合体、ポリアクリレート及びポリメタクリレート、ポリオキシメチレン、アクリル酸エステルスチレン−アクリロニトリル共重合体、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン又はポリエステル(例えば、PBT、PET)が含まれる。このリストは完全性を主張するものではない。これらの構成部品は、家庭用電化製品用の部品や筐体の製造に必要な任意の形態をとることができる。最も単純な形態では、それらは平面である。しかし、さらに、3次元の構成部品も同様に完全に慣用されている。構成部品は、例えば、ケーシング、窓又は補強部材として、非常に多種多様の機能のいずれかを呈することができる。好ましくは、使用されるプラスチックは、ポリカーボネート、PMMA又はABSである。
【0041】
したがって、本発明は、
・陽極酸化アルミニウム部材、
・溶融温度T(溶融)(ここで、35℃≦T(溶融)≦90℃、特に40℃≦T(溶融)≦60℃)を有し、かつ、イソシアネートと反応することができる官能基を有する熱可塑性成分と、該熱可塑性成分への特に微細化した微粒子分散液の状態で存在し、かつ、粒子表面(該粒子は、40℃≦T(開始)≦100℃、特に45℃≦T(開始)≦90℃、非常に好ましくは45℃≦75℃≦T(開始)の開始温度T(開始)を有し、T(開始)≧T(溶融)である)の領域内で実質的に不活性化されるイソシアネート含有成分とを含む潜在的反応性接着フィルムの少なくとも1つの層を有する両面粘着製品、及び
・プラスチック基材
からなる積層体をさらに提供する。
【0042】
プラスチック部品は、塗装又はそうでなければ被覆されていてもよい。プラスチックの表面機能化/改変のために使用される塗料は、例えば、反射防止塗料、指紋防止塗料、耐傷性塗料又は装飾プリント(バックプリントとして知られている)である。さらに、プラスチックは、導電層などの(無機)層を備えていることもできる。このような特定の導電層はインジウムスズ酸化物である。これらの塗料及び層は、場合によっては感熱性であるため、それ自体低温で処理加工できる接着製品の使用を既に要する。
【0043】
一例として、家庭用電化製品への適用について、潜在的反応性接着フィルムの少なくとも1層を有する接着製品は、通常ダイカットにさらに処理加工される。これらのダイカットは、レーザー切断プロセス、フラットベッド型抜きす又は回転型抜きのいずれかによって製造される。ダイカットは、通常、陽極酸化アルミニウム部分の寸法を有するだけでなく、接着操作中にわずかな押し出しを可能にするために、それよりも若干小さくてもよい。
【0044】
その最も単純な形態では、潜在的反応性接着フィルムの少なくとも1層を有する接着製品のダイカットは、例えば、陽極酸化アルミニウム部分上又は組み立てられる構成部品間に、ピンセットを使用して、一時的キャリアなしに手作業で配置される。
【0045】
さらなる変形例では、潜在的反応性接着フィルムの少なくとも1層を有する接着製品のダイカットを、陽極酸化アルミニウム上に設置した後に熱源で処理し、それによってダイカットの陽極酸化アルミニウムへの接着性を向上させる。最も単純なケースでは、使用される熱源は、IR源、アイロン又はホットプレートであることができる。この操作について、ダイカットは、接着フィルムが工具及び/又は熱源に付着しないようにするために、一時的キャリア材料をさらに備える場合に有利である。
【0046】
さらに有利な実施形態では、陽極酸化アルミニウム部分は、潜在的反応性接着フィルムの少なくとも1層を有する接着製品のダイカット上に配置される。配置は開放側で行う。一時的キャリア材料は依然として反対側に位置している。その後、熱源を使用して、潜在的反応性接着フィルムの少なくとも1層を有する接着製品に陽極酸化アルミニウムを介して熱を導入する。これは、接着製品をべとつかせ、すなわち粘着性にし、そして、一時的キャリアよりも陽極酸化アルミニウムの方により強く付着する。加熱は、陽極酸化アルミを介して行う。
【0047】
好ましい一変形例は、加熱プレスを使用して熱を導入する。この場合には、加熱プレスのラムを、例えば、アルミニウム、真鍮又は青銅から製造し、そして、その成形中に、一般的には、金属部品の外形及び/又はダイカットの寸法に適合させる。陽極酸化アルミニウム部分上へのダイカットの正確な配置を確保にするために、結合する構成部品の外形に合致し、それによって滑りを防止する成形用部品が一般に使用される。成形用部品のガイドピンと、潜在的反応性接着フィルムの少なくとも1層を有する接着製品の一時的キャリア材料における対応するガイド孔とを使用して、ダイカットと陽極酸化アルミニウム部分との正確な配置を確保することができる。他の設置の選択肢も考えられる。熱活性化後に、潜在的反応性接着フィルムの少なくとも1層を有する積層接着製品と共に陽極酸化アルミニウム部分を成形用部品から除去する。また、全体的な操作を自動プロセスに移すこともできる。
【0048】
したがって、本発明は、次の工程:
(a)プラスチック部品を成形用部品上に固定し;
(b)結合される陽極酸化アルミニウムを、溶融温度T(溶融)(ここで、35℃≦T(溶融)≦90℃、特に40℃≦T(溶融)≦60℃)を有し、かつ、イソシアネートと反応することができる官能基を有する熱可塑性成分と、該熱可塑性成分への特に微細化した微粒子分散液の状態で存在し、かつ、粒子表面(該粒子は、40℃≦T(開始)≦100℃、特に45℃≦T(開始)≦90℃、非常に好ましくは45℃≦75℃≦T(開始)の開始温度T(開始)を有し、T(開始)≧T(溶融)である)の領域内で実質的に不活性化されるイソシアネート含有成分とを含む潜在的反応性接着フィルムの少なくとも1つの層を有する両面粘着製品と共に、プラスチック部品上に設置し;
(c)特に加熱プレスのラムにより圧力及び温度を加え;
(d)結合した部品を該成形用部品から除去すること
を含み、或いは工程(c)と工程(d)との間で同様に冷却を実施することも可能である、陽極酸化アルミニウム部品をプラスチック部品に接着させるための方法も提供する。
【0049】
工程(c)において、圧力及び温度を加える。これは、良好な熱伝導性を有する材料からなる加熱ラムを介して行われる。有利な材料の例としては、銅、真鍮、青銅及びアルミニウムが挙げられる。しかし、他の金属又は合金も使用することができる。さらに、加熱プレスラムは、好ましくは、金属部品の上面の形状を呈するべきである。この形状は、同様に2次元又は3次元形状であってもよい。圧力は、有利には、空気圧シリンダを介して適用される。しかし、その適用は、必ずしも空気圧により行う必要はない。例えば、スピンドルを介して動作する油圧プレス装置又は電気機械的調節器も可能である。さらに、例えば、直列化又は回転の原理によって操作処理能力を増大させるために、圧力及び温度を何度も導入することが有利な場合もある。この場合、加熱プレスのラムは、全て同一の温度及び/又は同一の圧力で操作する必要はない。また、これらのラムの選択された接触時間を相違させることもできる。
【0050】
上記試験方法について:
【0051】
押し抜き試験:
押し抜き試験は、通常の接着層の方向での両面接着製品の接着強度についての情報を提供する。この試験のために、21mmの直径を有する円形のプラスチック基材を、金属フレーム上にある調査中の接着製品に結合させる。金属フレームは、9mmの直径の円形孔を有する。同様に、接着製品は、21mmの直径を有し、それに従って所定のサイズに打ち抜き又は切断される。用いられるプラスチック基材はPC板である。金属板の構成は、プラスチック板の構成を超え、組立体を金属板の突出領域によってレイダウンテーブル上に配置することを可能にする。
【0052】
引張り試験機に固定された円筒形ラム(直径7mm)を使用して、圧力を金属中の孔を介してプラスチック板に作用させ、このようにして力を結合継ぎ目に作用させる。試験速度は10mm/sである。プラスチック基材を金属フレームから離脱させる力を記録する。力は、ラムの面積に基づき、N/mmの単位で表される押し抜き強度をもたらす。押し抜き強度が1N/mmを超える場合に、接着製品の試験片は測定に合格する。試験条件は、23℃及び50%相対湿度である。
【0053】
湿気/熱貯蔵:
湿気/熱貯蔵について、結合積層体を例えば60℃及び95%の相対大気湿度で運転されるワイス社製コンディショニングキャビネット内に配置する。貯蔵時間は72時間である。
【0054】
湿気/熱貯蔵:
湿気/熱貯蔵について、結合積層体を例えば60℃及び95%の相対大気湿度で運転されるワイス社製コンディショニングキャビネット内に配置する。貯蔵時間は72時間である。
【0055】
【表1】
【実施例】
【0056】
例1:
潜在的反応性接着フィルムをDispercoll U XP 2682の100部、Dispercoll BL XP 2514の13部及びBorchigel 0625の1.5部から製造した。これらの配合成分をアンカー攪拌機付きガラスビーカー内で水分散液として室温で15分にわたり毎分60回転で混合した。固形分を脱イオン水の添加により46質量%に調整した。
【0057】
実験室用被覆テーブルをドクターブレードと共に使用して、両面ポリエチレン被覆及びシリコーン処理紙上に被膜を生じさせた。得られた見本試験片をまず30分間室温で空気中に放置し、次いで20分間45℃で強制空気乾燥キャビネット内で乾燥させた。試験片は100μmの層厚を有していた。
【0058】
型抜き用アイロンを使用して、21mmの直径を有する円形接着テープダイカットを単層接着フィルムから製造した。それぞれの場合に1個のダイカットをプラスチック(ポリカーボネート)ディスクと陽極酸化アルミニウム(E6EV1)基材との間に設置し、そしてこの組立体を80℃のラム温度及び3バールで120秒間実験用加熱プレスでプレスした。
【0059】
押し抜き試験により、新たな試料について2.6N/mm、60℃及び95%湿度で保管した試験片について1.1N/mmが得られた。
【0060】
例2:
潜在的反応性接着フィルムを、Dispercoll U XP 2702の100部、Dispercoll BL XP 2514の11部及びBorchigel 0625の1.5部から製造した。これらの配合成分をアンカー攪拌機付きガラスビーカー内で水分散液として室温で15分にわたり60 1/分(毎分60回転)で混合した。固形分を脱イオン水の添加により46質量%に調整した。
【0061】
実験室用被覆テーブルをドクターブレードと共に使用して、両面ポリエチレン被覆及びシリコーン処理紙上に被膜を生じさせた。得られた見本試験片をまず30分間室温で空気中に放置し、次いで20分間45℃で強制空気乾燥キャビネット内で乾燥させた。試験片は100μmの層厚を有していた。
【0062】
型抜き用アイロンを使用して、21mmの直径を有する円形接着テープダイカットを単層接着フィルムから製造した。それぞれの場合に1個のダイカットをプラスチック(ポリカーボネート)ディスクと陽極酸化アルミニウム(E6EV1)基材との間に置き、そしてこの組立体を120秒間90℃のラム温度及び3バールで実験用加熱プレスでプレスした。
【0063】
押し抜き試験により、新たな試料について2.2N/mm、60℃及び95%湿度で貯蔵した試料について1.9N/mmが得られた。
【0064】
実施例3:
潜在的反応性接着フィルムを、Dispercoll U 56の100部、Aqualink Dの20部及びBorchigel 0625の1.5部から製造した。これらの配合成分を、アンカー攪拌機を備えたガラスビーカー中で水性分散液として室温で15分間にわたり毎分60回転で混合した。固形分を脱イオン水の添加により46質量%に調整した。
【0065】
実験室用被覆テーブルをドクターブレードと共に使用して、両面ポリエチレン被覆及びシリコーン処理紙上に被膜を生じさせた。得られた見本試験片をまず30分間室温で空気中に放置し、次いで20分間45℃で強制空気乾燥キャビネット内で乾燥させた。試験片は100μmの層厚を有していた。
【0066】
型抜き用アイロンを使用して、21mmの直径を有する円形接着テープダイカットを単層接着フィルムから製造した。それぞれの場合に、1個のダイカットをプラスチック(ポリカーボネート)ディスクと陽極酸化アルミニウム(E6EV1)基材との間に配置し、そしてこの組立体を240秒間にわたり90℃のラム温度及び3バールで実験用加熱プレスでプレスした。
【0067】
押し抜き試験により、新たな試料について1.9N/mm、60℃及び95%湿度で貯蔵した試料について1.5N/mmが得られた。