特許第6163180号(P6163180)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6163180
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】偏光板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20170703BHJP
【FI】
   G02B5/30
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-142618(P2015-142618)
(22)【出願日】2015年7月17日
(62)【分割の表示】特願2010-124178(P2010-124178)の分割
【原出願日】2010年5月31日
(65)【公開番号】特開2015-180975(P2015-180975A)
(43)【公開日】2015年10月15日
【審査請求日】2015年7月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067736
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100096677
【弁理士】
【氏名又は名称】伊賀 誠司
(72)【発明者】
【氏名】花島 直樹
【審査官】 野田 定文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−031538(JP,A)
【文献】 特開2009−086127(JP,A)
【文献】 特開2005−017408(JP,A)
【文献】 特開2007−052316(JP,A)
【文献】 特開2005−107232(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0217008(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェハ基板の一面全体に形成された下地膜に、グリッドを形成するパターン及び上記ウェハ基板の周縁部に上記グリッドを形成しない非形成領域を形成するパターンを有するレジストを設け、上記下地膜を用いた上記グリッド及び上記非形成領域を形成する工程と、
上記グリッド及び上記非形成領域を保護する保護膜を形成する工程とを備える偏光板の製造方法において、
更に、上記ウェハ基板上に形成された上記偏光板の非形成領域において切断することにより、所定の大きさに切断固片化された偏光板を複数得る切断工程を有し、
上記非形成領域は、上記ウェハ基板の周縁部から内側に向かって、上記グリッドの長手方向と略直交する辺のみに0.2mm以上設けられている偏光板の製造方法。
【請求項2】
上記切断工程は、上記保護膜を形成する工程の前に行う請求項1記載の偏光板の製造方法。
【請求項3】
上記切断工程は、上記保護膜を形成する工程の後に行う請求項1記載の偏光板の製造方法。
【請求項4】
上記非形成領域には、遮光部が形成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の偏光板の製造方法。
【請求項5】
上記非形成領域は、上記ウェハ基板の周縁部から上記グリッドの長手方向と略直交する辺に2〜3mmの位置まで設けられている請求項1記載の偏光板の製造方法。
【請求項6】
上記ウェハ基板は、略矩形状に形成され、
上記非形成領域は、上記ウェハ基板の、上記グリッドの長手方向と略直交する辺の周縁部に設けられている請求項1〜5のいずれか1項に記載の偏光板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射光を偏光方向に応じて透過光と反射光とに分離する偏光板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置などでは、薄型の偏光板としてポリビニルアルコール(PVA)フィルムにヨウ素化合物を吸着しこれを延伸配向させて可視光の吸収二色性を発現させた偏光フィルムが多く用いられている。偏光フィルムは、機械強度、耐熱性、耐湿性を確保するために、トリアセチルセルロース(TAC)などの透明フィルムによって両面から挟み込まれ、その上に傷防止や汚れ付着防止などのためにハードコート処理がなされている。
【0003】
偏光フィルムに入射する光のうち通過しない偏光成分の光は、偏光フィルム内で吸収されて熱としてフィルム外に放出される。このため、強い光が照射される場合には、発熱によりフィルムの温度が上昇し偏光特性が劣化してしまうという問題がある。これは有機材料自体の耐熱性に原因があり本質的な改善は難しい。
【0004】
この問題に対して、完全に無機の材料だけから構成された偏光板が用いられる。薄型のものとして代表的なのは、偏光ガラスとワイヤグリッド偏光板である。偏光ガラスは、ガラス内に析出された金属の島状微粒子からなり、微粒子のプラズマ共鳴吸収の異方性によって吸収二色性を発現させるものである。通過しない偏光成分は吸収されるが無機材料で構成されているために高い耐熱性を有する。
【0005】
一方、ワイヤグリッド偏光板は、基板の表面に、光の波長以下の周期を持つ微細な金属線からなるワイヤグリッドが形成される(特許文献1参照)。このワイヤグリッド偏光板は、自由電子のプラズマ振動によって通過しない偏光成分は反射するため、入射光をより有効に利用できるメリットがある。
【0006】
またワイヤグリッドに類似のタイプとして、基板表面に楕円形状の金属微粒子を配列してなる微粒子型偏光板がある(特許文献2参照)。これは、微粒子のプラズマ共鳴吸収を利用したもので、ワイヤグリッド偏光板とは異なり、通過しない偏光成分を吸収することから、例えば、偏光板からの反射光で液晶パネルが温度上昇や劣化してしまうことを防止するため、液晶パネルの出射側に用いられる。
【0007】
これらの無機材料からなる偏光板は、有機偏光フィルムに見られる耐熱性による特性劣化の問題がなく、強いランプの光が照射される液晶プロジェクタ用の偏光板として用いられるようになってきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2003−502708号公報
【特許文献2】特開2008−216956号公報
【特許文献3】特開平10−073722号公報
【特許文献4】特開2006−126464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
これらの無機偏光板は、高温で分解する有機材料成分を含まないために高い耐熱性が得られるが、ワイヤグリッド偏光板や微粒子型偏光板のように基板表面にワイヤグリッドや微粒子などの偏光膜が形成されるタイプでは、偏光膜材料によっては、高湿度や高温環境で、表面からの酸化などによって特性が劣化してしまう場合がある。これを防ぐには、金属線からなるワイヤグリッド或いは金属微粒子を何らかの保護膜で被覆することが有効である。保護膜には、有機の単分子層からなるものや、一般的に半導体デバイスのバリア層として用いられるSiO、Alなどの酸化膜、SiNなどの窒化膜などを用いることができる。
【0010】
特許文献3では、10nm以下のアルミノフォスフォネートからなる腐食防止剤の単分
子層で被覆することで、ワイヤグリッド偏光板の信頼性を向上させることが記載されている。これによれば、ワイヤグリッド偏光板では、ナノレベルの微細構造を有するために、耐蝕性に関して通常用いられている材料や形成方法をそのまま適用した場合、著しい光学特性の劣化を招いてしまう場合があることが記載されている。
【0011】
特許文献4では、ワイヤグリッドを構成するAlの表面を被覆することでワイヤグリッド偏光板の耐環境性を改善することが記載されている。ここではAlの熱処理による表面熱酸化膜を用いているが、この方法では、電子ビーム描画で必要となる導電性下地Al膜を一緒に熱酸化できるため、この部分を透明化できるという利点がある。従って、エッチングを用いてこの下地膜を除去する必要がなく、リフトオフ法をパターニング方法として用いることができ、エッチング工程の不安定性を回避することができる、という利点についても述べられている。
【0012】
これらのように、ワイヤグリッド偏光板及び微粒子偏光板においては、耐環境性を高めるために保護膜を被覆することが一般的に認識されている。しかしながら、ワイヤグリッドや微粒子など表面に微細な構造が存在する場合、保護膜として同じ材料を用いた場合でも、その形成方法によってその信頼性の改善効果に著しい違いが生じてしまうという問題がある。
【0013】
こうした偏光膜上の保護膜の形成は、偏光特性の劣化を伴うため一般的には膜厚を薄くすることが望ましい。しかしながら、保護膜自体に内在する微小な欠陥の影響が大きくなるためその薄膜化には限界があり、厚さはその保護機能が低下しない範囲で最適に決められる。例えば、Ge等反応性に富む材料を偏光材料として用いる場合、ピンホールや切り出し端面の保護膜の微小な欠陥部から酸化反応が進行し偏光特性を劣化させてしまう場合がある。特に欠陥上に皮脂などの異物が存在する場合に著しい劣化を示すことがある。この偏光膜の変質はワイヤグリッド偏光板や微粒子型偏光板の構造上、偏光材料が配列しているグリッドに沿って進行する傾向があり、欠陥自体が偏光板の有効範囲外にあったとしても、時間の経過とともに変質領域が有効範囲内に拡大していくこともある。
【0014】
こうした保護膜の欠陥としては、ピンホールなど膜自体に内在するものの他に、基板の切断端面に生じるものがある。低価格化のため大型のウェハ上に偏光板を一括作成し最後に個片化するプロセスを用いる場合、ダイシングやスクライブなどによる個片化によって、偏光膜上に形成された保護膜の一部が破壊されてしまうことが生じる。また、基板の切断端面部分は取り扱いの際などで異物などが付着する可能性が高く、個片後に劣化が進行しやすくなってしまう一因でもあった。
【0015】
そこで、本発明は、高温や高湿度環境下においても、高い信頼性を持つ偏光板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述した課題を解決するために、本発明に係る偏光板の製造方法は、ウェハ基板の一面全体に形成された下地膜に、グリッドを形成するパターン及び上記ウェハ基板の周縁部に上記グリッドを形成しない非形成領域を形成するパターンを有するレジストを設け、上記下地膜を用いた上記グリッド及び上記非形成領域を形成する工程と、上記グリッド及び上記非形成領域を保護する保護膜を形成する工程とを備える偏光板の製造方法において、更に、上記ウェハ基板上に形成された上記偏光板の非形成領域において切断することにより、所定の大きさに切断固片化された偏光板を複数得る切断工程を有し、上記非形成領域は、上記ウェハ基板の周縁部から内側に向かって、上記グリッドの長手方向と略直交する辺のみに0.2mm以上設けられている
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、基板の周縁部にグリッドを形成しない領域を設けているため、基板周縁部の保護膜に破壊が生じた場合にも偏光膜の劣化が生じることがない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】ワイヤグリッド偏光板を示す断面図である。
図2】微粒子型偏光板を示す断面図である。
図3】偏光板を示す平面図である。
図4】光を透過させた偏光板を示す図である。
図5】光を透過させた従来の偏光板を示す図である。
図6】基板の周縁部を示す断面図である。
図7】他の偏光板を示す平面図である。
図8】他の偏光板を示す平面図である。
図9】ワイヤグリッド偏光板の製造工程を示す図である。
図10】微粒子型偏光板の製造工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明が適用された偏光板及びその製造方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。本発明が適用された偏光板1は、例えば、図1に示すように、基板2上に光の波長以下のピッチをもつ微細な金属線からなるワイヤグリッド3が形成されるとともに、ワイヤグリッド3を保護する保護膜4が基板2の全面に亘って形成されたワイヤグリッド偏光板1A、あるいは、図2に示すように、基板5上に光の波長以下のピッチを持つグリッドパターン6が形成されるとともに、当該グリッドパターン6上に金属層9を介して微粒子7が配列され、さらに基板5の全面に亘って保護膜8が形成された微粒子型偏光板1Bである。
【0020】
そして、この偏光板1は、図3に示すように、基板2,5の周縁部に、ワイヤグリッド3やグリッドパターン6上に配列される微粒子7といった偏光膜が形成されるグリッドGを形成しない領域(以下、「非形成領域10」という。)が設けられている。これにより、偏光板1は、切断個片化等によって基板2,5の周縁部に形成された保護膜4,8に欠陥が生じた場合にも、基板2,5の周縁部分からグリッドGに沿って進行する偏光膜の劣化を回避できる。
【0021】
偏光板1A、1Bを構成する基板2,5は、ガラスをはじめ光学的に透明なものであればどんなものでも使用可能である。液晶プロジェクタなどの用途では吸収によって発生する熱によって偏光膜が破壊してしまうことを避けるため、高い耐熱性、放熱性を有する基板を使用する場合が多い。
【0022】
例えば、水晶基板はガラスに比べて高い熱伝導率を有するのみならず、組成が石英ガラスと同じであるため基板自体をエッチングして偏光板の光学特性を高めたい場合に好都合である。またサファイヤ基板の場合には、水晶を凌ぐ高い熱伝導率を持つため放熱特性に優れ、同じ冷却構成であっても基板温度を水晶に比べて低く抑えることができ光学系自体の温度を抑えることができる利点がある。
【0023】
また、ワイヤグリッド3やグリッドパターン6上に配列される微粒子7といった偏光膜は、例えばワイヤグリッド偏光板1Aの場合、偏光膜材料としてAl或いはAlSi等を用いることができるが、勿論これらの材料に限定されることはない。一方、微粒子型偏光板1Bの場合にはGeやSiなどが用いられるが、こちらもこれらの材料に限定されることはない。
【0024】
非形成領域10は、基板2,5の周縁部の偏光膜が形成されるグリッドGを形成しない領域である。偏光板1は、例えば、保護膜4,8が形成された後にウェハ基板の切断により個片化された場合に、当該切断部分に基板2,5の微小な欠けであるチッピング領域が存在し得る。保護膜4,8は、個片化に伴って生じる切断領域と、この切断領域に隣接するチッピング領域において破壊される。
【0025】
したがって、偏光板1は、このような保護膜4,8が破壊される周縁部に非形成領域10を形成することにより、保護膜4,8の破壊によってもワイヤグリッド3やグリッドパターン6上に配列される微粒子7が外部に曝されることが防止され、偏光膜の劣化を防止することができる。
【0026】
図4に示すように、周縁部に非形成領域10を設けた偏光板1は、全面に亘って偏光膜の変色が見られず、劣化が防止されている。一方、図5に示すように、周縁部までグリッドGが形成され、非形成領域10が設けられていない偏光板では、周縁部を起点としたスジAが観察され、偏光膜の劣化が生じていることがわかる。なお、図5では、基板上に残留していた異物を起点としたスジBも観察された。
【0027】
また、非形成領域10は、基板2,5の周縁部から内側に向かって、グリッドGのピッチよりも遥かに大きな幅を有し、好ましくは0.2mm以上である。これによりチッピングが多く存在する場合でも保護膜4,8の破壊に伴う偏光膜の劣化の可能性を小さくすることができるからである。すなわち、チッピングが生じうる範囲は、切断面より基板内側に向かって多くとも0.1mmの範囲であることから、非形成領域10を基板2,5の周縁部から基板内側に向かって0.2mm以上設けることにより、偏光膜がチッピングによる影響を受けることがない。
【0028】
なお、非形成領域10は、基板2,5の周縁部から内側に向かって2mm〜3mmの範囲まで形成される。これは、光線が入射する偏光板1の有効領域の境界は基板端から2mm〜3mmの位置にあることが多いため、非形成領域10を、基板2,5の周縁部から幅0.2mm以上2mm〜3mmの範囲で設けることにより、偏光板1としての有効面積を低下させずに保護膜4,8の破壊に伴う偏光膜の劣化を防止することができる。
【0029】
また、非形成領域10は、予め個片化された基板2,5に保護膜4,8を形成する場合でも有効である。すなわち、偏光板1は、基板2,5の周縁部近傍では、保護膜4,8のグリッド構造の乱れや基板形状の乱れによって欠陥が発生しやすい。また、偏光板1は、基板2,5の取り扱い時などで周縁部近傍に異物が付着する可能性も高く、異物の種類や偏光膜の種類によってはわずかな欠陥でも偏光膜へ与える劣化度合いは大きいものとなる場合がある。このため、偏光板1は、基板2,5の周縁部付近にグリッドGを形成しない非形成領域10を設けることにより、保護膜4,8の形成後に切断工程を含まない場合であっても、信頼性を向上するうえで大きな効果がある。
【0030】
ここで、非形成領域10とは、格子状の微細なパターン(グリッドG)が形成されていない領域を意味し、図6に示すように、保護膜4,8を介してAl膜等の金属膜15が露出している場合の他、基板2,5自体の平坦な表面がそのまま露出している場合や、基板2,5の表面を覆う平坦膜が露出している場合も含まれる。
【0031】
また、グリッドGがAl等の金属材料で形成されているワイヤグリッド偏光板1Aや類似の構造を持つ偏光板の場合には、非形成領域10は、金属膜15がそのまま残存している状態となる。この場合、非形成領域10の金属膜は、光学的には反射膜若しくは遮光膜として機能し、非形成領域10は遮光部となる。
【0032】
非形成領域10は、偏光特性的には何ら機能しない領域であり、偏光板1として、有効領域を大きくしたい場合には当該非形成領域10が小さい方が好ましい。さらに、この非有効部分を通過した光が漏れ光となって悪影響を及ぼす場合には、この部分には遮光膜(反射膜や吸収膜等、その一部を遮光するもの)が形成されていることが好ましく、非形成領域10に形成されている金属膜15はこの目的には好適である。一方、反射した膜が悪影響を及ぼす場合には遮光膜をエッチングによって除去して透過性を持たせることも可能である。
【0033】
また、偏光板1は、基板2,5の周縁部の非形成領域10まで保護膜4,8が形成される。仮に、ワイヤグリッド3やグリッドパターン6上に配列される微粒子7が形成されるグリッドGの領域に応じて基板2,5の周縁部を除いて保護膜を形成した場合には、保護膜の成膜領域の周縁部分が膜厚減少によって保護性能が不十分となってしまう可能性がある。したがって、保護膜は、グリッドGの形成領域よりも大きく形成されることが好ましく、さらに、基板周縁部を含む基板全面に形成されることが好ましい。
【0034】
そして、偏光板1は、基板2,5の周縁部の非形成領域10まで保護膜4,8が形成されているため、ワイヤグリッド3やグリッドパターン6上に配列される微粒子7の保護性能が向上され、また、基板2,5の周縁部における保護膜4,8の不良がワイヤグリッド3やグリッドパターン6上に配列される微粒子7の形成領域と重なることもなく、この保護性能に影響することがない。
【0035】
また、非形成領域10は、図3に示すように、基板2,5の全周に亘って形成してもよく、また、図7に示すように、基板2,5のワイヤグリッド3の方向や微粒子7の配列方向と直交する辺2A,5Aのみに形成し、あるいは、図8に示すように、基板2,5のワイヤグリッド3の方向や微粒子7の配列方向と直交する辺2A,5Aの非形成領域10をワイヤグリッド3の方向や微粒子7の配列方向と平行な辺2B,5Bよりも大きく形成してもよい。
【0036】
偏光膜の劣化は、ワイヤグリッド3や微粒子7に沿ってグリッドGの方向に進行しやすい。したがって、ワイヤグリッド3の方向や微粒子7の配列方向に直交する切断端面で保護膜4,8の破壊が生じている場合、ワイヤグリッド3の方向や微粒子7の配列方向に平行な切断端面で保護膜4,8が破壊されている場合に比べて、偏光膜の劣化が基板2,5の周縁部から内部に広がっていく可能性が高い。
【0037】
従って、非形成領域10を、ワイヤグリッド3の方向や微粒子7の配列方向に直交する辺2A,5Aのみに形成、あるいは当該直交する辺2A,5Aでの大きさを平行な辺2B,5Bよりも大きくすることによっても、偏光板1は、ワイヤグリッド3の方向や微粒子7の配列方向と平行な辺に対しては有効領域を大きく保ったまま、偏光膜の劣化が内部に広がって偏光板1の有効領域まで進行することを防止し、保護膜の性能を確保することができる。
【0038】
次いで、ワイヤグリッド偏光板1Aの製造方法について、図9を参照しながら説明する。ワイヤグリッド偏光板1Aは、ウェハ基板11に複数形成された後、所定サイズに切断されることにより個片化される。先ず、ウェハ基板11の裏面に反射防止膜(ARC)12を形成した後(図9(a))、ウェハ基板11の表面にAl薄膜13をスパッタ等により成膜する(図9(b))。次に、反射防止膜(BARC)と化学触媒型フォトレジストをこの順にスピンコータで塗布する。次いで、DUV(遠紫外線)レーザによる二光束干渉露光を行って現像後、所定のピッチ、幅、高さのレジストのグリッドパターンを形成する。このとき、ウェハ基板11の表面に角形遮光開口マスクを設け、ウェハ基板11上に形成される基板2の周縁部に、二光束干渉露光時に露光されない領域を形成する(図9(c))。
【0039】
次に、RIEエッチングでAlのグリッドパターンを形成するため、まずClガスによるAlエッチングを行った後(図9(d))、残存レジストをArガスによって除去する(図9(e))。これにより、各基板2の周縁部には、ワイヤグリッド3及び非形成領域10が形成される。なお、図9(e)では、非形成領域10にAl薄膜を残し、遮光部として機能させているが、Alエッチング工程で非形成領域10のAl薄膜を除去することにより、遮光部を設けないこともできる。
【0040】
次いで、ウェハ基板11の全面に、化学気相蒸着(CVD)等により、SiO等からなる保護膜14を形成する(図9(f))。最後に、このウェハ基板11に形成したワイヤグリッド偏光板1Aを汎用のガラススクライバ等によって所定のサイズに切断し個片化する。なお、ワイヤグリッド偏光板1Aは、保護膜14を形成する前に個片化し、最後に保護膜14を形成してもよい。また、ワイヤグリッド偏光板1Aは、予め個片化された基板2に上述した工程を施すことにより形成してもよい。
【0041】
次いで、微粒子型偏光板1Bの製造方法について、図10を参照しながら説明する。微粒子型偏光板1Bも、水晶基板等からなるウェハ基板16に複数形成された後、所定のサイズに切断される。先ず、ウェハ基板16の裏面に反射防止膜17を形成した後(図10(a))、ウェハ基板16の表面にAl薄膜18をスパッタ等により成膜する(図10(b))。次に、反射防止膜と化学触媒型フォトレジストをこの順にスピンコータで塗布する。次いで、DUVレーザによる二光束干渉露光を行って現像後、所定のピッチ、幅、高さのレジストのグリッドパターンを形成する。このとき、ウェハ基板16の表面に角形遮光開口マスクを設け、ウェハ基板16上に複数形成される基板5の各周縁部に、二光束干渉露光時に露光されない領域を形成する(図10(c))。
【0042】
その後、ClガスによるAlエッチングを行った後((図10(d)))、残存レジストをArガスによって除去する(図10(e))。ここではAl膜は、エッチングマスクとして一部機能させており、結果的に水晶基板に所定ピッチの凸凹グリッドパターン6が形成される。また、必ずしもグリッドパターン6上にAl膜を設ける必要はなく、適宜Al膜を除去しても良い。この基板に対しGe等からなる微粒子7をスパッタにて配列形成する(図10(f))。これにより、各基板5の周縁部には、グリッドG及び非形成領域10が形成される。なお、図10(e)では、非形成領域10にAl薄膜を残し、遮光部として機能させているが、Alエッチング工程で非形成領域10のAl薄膜を除去することにより、遮光部を設けないこともできる。
【0043】
次いで、ウェハ基板16の全面に化学気相蒸着(CVD)等により、SiO等からなる保護膜19を形成する。最後に、このウェハ基板16に形成した微粒子型偏光板1Bを所定のサイズに切断し、個片化する(図10(g))。なお、微粒子型偏光板1Bにおいても、保護膜19を形成する前に個片化し、最後に保護膜19を形成してもよく、また、予め個片化された基板5に上述した工程を施すことにより形成してもよい。
【実験例1】
【0044】
実験例1では、非形成領域10を設けたワイヤグリッド偏光板1Aと、非形成領域10を設けないワイヤグリッド偏光板と、保護膜を形成しないワイヤグリッド偏光板について、それぞれ偏光膜の変化を観察した。
【0045】
本実験例1では、裏面に誘電体多層膜によって反射防止膜(ARC)が形成された4インチ石英基板の表面にDCスパッタ装置でAl薄膜を230nm成膜する。次に、厚さ28nmの反射防止膜(BARC)と厚さ230nmの化学触媒型フォトレジストをこの順にスピンコータで塗布する。次いで、DUV(遠紫外線)レーザによる二光束干渉露光を行って現像後、ピッチ150nm、幅70nm、高さ180nmのレジストのグリッドパターンを形成する。次に、RIEエッチングでAlのグリッドパターンを形成するため、まずClガスによるAlエッチングを行った後、残存レジストをArガスによって除去した。この4インチウェハに形成したワイヤグリッド偏光板を汎用のガラススクライバによって25mm×25mmのサイズに切断し比較例1とした。
【0046】
比較例1に化学気相蒸着(CVD)によってSiOからなる保護膜を厚さ20nm程度形成したものを比較例2とし、切断前の4インチ基板の状態で保護膜を同じ条件で形成した後にスクライブで25mm×25mmに切断したものを比較例3とした。次に、干渉露光時に基板表面に角形遮光開口マスクを設けて24.5mm×24.5mmの外側が露光されない領域を形成し、非形成領域10を設けた以外は比較例2及び比較例3と同じ条件で作製したものを各々実施例1、実施例2とした。これら完成した5種類のワイヤグリッド偏光板を、各10枚ずつ温度60℃湿度90%の環境下に100時間放置し、偏光膜の変化を観察した。
【0047】
【表1】
【0048】
結果を表1に示す。保護膜を形成していない比較例1では、すべてのサンプルについて、Al表面酸化などの変質が原因と考えられるうっすらとした偏光膜のムラが基板全面に発生した。
【0049】
基板の切断後に保護膜を形成しているが、基板の周縁部に非形成領域10を設けずに個片化された基板の周縁部までワイヤグリッドが形成されている比較例2では、基板中央に変色や特性劣化はなかったが、基板周囲から中央に向かって伸びる筋状の変色領域が観察されたサンプルがあった。基板の周縁部に非形成領域10を設けず基板の周縁部までワイヤグリッドが形成されるとともに、保護膜を形成した後に基板を切断した比較例3では、変色領域が観察されたサンプル数は比較例2よりも多かった。比較例2及び比較例3について、変色領域の偏光特性を評価したところ、本来反射すべき偏光成分の一部が透過しており、偏光特性の劣化が観察された。
【0050】
一方、かかる比較例2及び比較例3に対して、保護膜があり、かつ基板の周縁部に非形成領域10を設けた実施例1及び実施例2では、保護膜の形成が基板切断の前であるか後であるかにかかわらず、全てのサンプルについて、基板中央や基板周縁部を含め、全面に亘って変色領域などは観察されなかった。
【実験例2】
【0051】
実験例2では、非形成領域10を設けた微粒子型偏光板1Bと、非形成領域10を設けない微粒子型偏光板と、保護膜を形成しない微粒子型偏光板について、それぞれ偏光膜の変化について観察した。
【0052】
実験例2では、裏面に誘電体多層膜によって反射防止膜(ARC)が形成された25mm角の水晶基板の表面にスパッタでAl薄膜を60nm成膜する。次に、反射防止膜(BARC)と化学触媒型フォトレジストを、この順に各々28nm、230nmの厚さに、スピンコータで塗布する。次いで、DUV(遠紫外線)レーザによる二光束干渉露光を行って現像後、ピッチ150nm、幅70nm、高さ230nmのレジストのグリッドパターンを形成する。その後、ClガスによるAlエッチングを行った後、残存レジストをArガスによって除去した。ここではAl膜はエッチングマスクとして一部機能させており結果的に水晶基板にピッチ150nmの凸凹グリッドパターンが形成される。この基板に対しGe微粒子をスパッタにて配列形成することで微粒子型偏光板の比較例4を得た。次に、比較例4に化学気相蒸着(CVD)によってSiOからなる保護膜を厚さ20nm程度形成したものを比較例5とした。
【0053】
また、干渉露光時に基板全面に遮光マスクを設けてグリッドに直交する方向だけが端から1mm程度の露光されない領域を形成し、非形成領域10を設けた以外は比較例5と同じ条件で作製したものを実施例3とした。これら完成した3種類の微粒子型偏光板に対し、取り扱い時に生じる極端な例として基板の周囲4面に人為的に皮脂を付着させたものを、各10枚ずつ温度60℃湿度90%の環境下に100時間放置し、偏光特性の変化を観察した。
【0054】
【表2】
【0055】
結果を表2に示す。保護膜を形成していない比較例4では、すべてのサンプルについて、Geの酸化が基板全面で生じ偏光膜が完全に透明化した。保護膜が形成されているが非形成領域10を設けず、基板の周囲部分にもグリッドが形成されている比較例5では、基板中央に変色や特性劣化はなかったが基板周囲から中央に向かって伸びる筋状の変色領域が観察されたサンプルがあった。変色領域の偏光特性を評価したところ、本来反射吸収すべき偏光成分の一部が透過しており、偏光特性の劣化が観察された。
【0056】
一方、比較例5に対して、保護膜があり、かつグリッドパターンに直交する辺の付近に非形成領域10を設けた実施例3では、基板周囲にも変色領域や抜けなどは発生しなかった。
【0057】
比較例5では、保護膜形成後での切断処理がないため、この劣化は切断による保護膜の一部破壊によるものではなく、基板端に存在する保護膜欠陥部分から皮脂によって何らかの偏光膜の変質が誘起されグリッドパターンに沿って進行していったと考えられる。実施例3の結果からは、グリッドパターンが形成されていない非形成領域10では、このような保護膜の欠陥にかかわらず、グリッドパターンに沿った劣化の進行が生じないため十分な保護機能を保持していると考えられる。
【0058】
このように、ワイヤグリッド偏光板と微粒子型偏光板において、基板端付近にグリッドが形成されていない非形成領域10を設けたものでは、偏光膜の劣化が生じることがなく、高湿度試験において優れた信頼性を有することが検証された。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、ここに述べたワイヤグリッド偏光板1Aや微粒子型偏光板1Bに限らず、微細なグリッド及びグリッドに類似な構造を有する偏光に依存するデバイスであれば、例えば波長板のようなものでも適用が可能である。この場合、微細なグリッドとは、主に使用波長の1/2以下程度のピッチを有する凸凹断面の構造が想定される。グリッドの断面形状は、所望の偏光特性を有する範囲で適切に決められるが、「凸凹深さ/ピッチ」が1/2以上であると良好な偏光特性を生じさせるために好適である。
【符号の説明】
【0060】
1 偏光板、1A ワイヤグリッド偏光板、1B 微粒子型偏光板、2 基板、3 ワイヤグリッド、4 保護膜、5 基板、6 グリッドパターン、7 微粒子、8 保護膜、9 反射防止膜、10 非形成領域、11 ウェハ基板、12 反射防止膜、13 Al薄膜、14 保護膜、16 ウェハ基板、17 反射防止膜、18 Al薄膜、19 グリッドパターン、20 Ge微粒子、21 保護膜
図1
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