【文献】
Qibing et al.,Polymer Light-Emitting Electrochemical Cells,Science,米国,The American Association for the Advancement of Science,1995年 8月25日,269 (5227),P.1086-1088
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記有機塩が、ホスホニウム塩、アンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリウム塩及びピロリジニウム塩から選ばれる有機塩である請求項1に記載の電気化学発光セル。
前記有機溶媒がトルエン、ベンゼン、テトラヒドロフラン、ジメチルクロライド、クロロベンゼン又はクロロホルムである請求項7ないし12のいずれか一項に記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の電気化学発光セルの好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1に示すとおり、本実施形態の電気化学発光セル10は、発光層12と、その各面に配された電極13,14とを有する。電気化学発光セル10は、互いに対向する一対の電極である第1電極13及び第2電極14と、一対の電極13,14間に挟持された発光層12とを備えている。電気化学発光セル10は、電圧が印加されることにより発光層が発光するようになっている。電気化学発光セル10は、各種ディスプレイ等として使用されるものである。
図1においては、電源として直流電源を用い、第1電極13を直流電源の陽極に接続し、第2電極14を陰極に接続している状態が示されている。しかしながら、図示とは反対に、第1電極13を陰極に接続し、第2電極14を陽極に接続してもよい。また、電源として直流電源の代わりに交流電源を用いることも可能である。
【0017】
第1電極13及び第2電極14は、透光性を有する透明電極であってもよいし、半透明又は不透明な電極であってもよい。透光性を有する透明電極としては、インジウムドープ酸化錫(ITO)やフッ素ドープ酸化錫(FTO)などの金属酸化物からなるもの、不純物を添加したポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)等の透明性を有する高分子からなるもの、カーボンナノチューブやグラフェンなどの炭素系材料からなるものなどを挙げることができる。半透明又は不透明な電極としては、例えば、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、錫(Sn)、ビスマス(Bi)、銅(Cu)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)等の金属材料が挙げられる。
【0018】
第1電極13及び第2電極14のうち少なくとも一方を透明電極とすると、発光層12から発せられた光を容易に外部に取り出せるため好ましい。また一方を透明電極とし、他方を不透明な金属電極とした場合には、発光層12から発せられた光を金属電極で反射させつつ外部に取り出せるので好ましい。また、第1電極13及び第2電極14の両方を透明電極としてシースルー発光体としてもよい。更に、第1電極13及び第2電極14の両方を高い反射率を有する材質であるAg等からなる金属電極とし、発光層12の膜厚を制御することで、電気化学発光セル10をレーザー発振素子とすることもできる。
【0019】
第1電極13を透明電極とし、第2電極14を不透明又は半透明な金属電極とした場合、第1電極13は、適切な抵抗率及び光透過性を実現する観点から、例えば10nm以上500nm以下の厚さを有していることが好ましい。第2電極14は、第1電極13と同様に適切な抵抗率及び光透過性を実現する観点から、例えば10nm以上500nm以下の厚さを有していることが好ましい。
【0020】
発光層12は、有機高分子発光材料と有機塩とが混合されてなるものである。発光層12は固体状及び液体状のいずれの状態であってもよい。発光層12が固体状である場合、一定の形状を維持して、外から加えられる力に抵抗することができる。
【0021】
発光層12に含まれる有機塩は、イオンの移動性が確保され電気二重層が形成されやすく、正孔や電子の注入を容易なものとするための物質である。本実施形態では、有機塩としてホスホニウム塩、アンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリウム塩及びピロリジニウム塩などを用いることができる。これらの有機塩のうち、ホスホニウム塩及びアンモニウム塩としては、例えば後述する式(1)で表されるものを用いることができる。ピリジニウム塩、イミダゾリウム塩及びピロリジニウム塩としては、アニオンが例えば、フッ素、臭素、ヨウ素及び塩素等のハロゲン化物イオン、テトラフルオロボレート(BF
4)、ベンゾトリアゾレート(N
3(C
6H
4))、テトラフェニルボレート(B(C
6H
5)
4)、ヘキサフルオロホスフェート(PF
6)、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(N(SO
2CF
3)
2)、ビス(フルオロスルホニル)イミド(N(SO
2F)
2)、トリフルオロメタンスルホネート(SO
3CF
3)、メタンスルホネート(SO
3CH
3)、トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート((C
2H
5)
3PF
3)、トリフルオロ酢酸(CF
3COO)、アミノ酸、ビスオキサラトボレート(B(C
2O
4)
2)、p-トルエンスルホネート(SO
3C
6H
4CH
3)、チオシアネート(SCN)、ジシアナミド(N(CN)
2)、ジアルキルリン酸((RO)
2POO)、ジアルキルジチオリン酸((RO)
2PSS)、脂肪族カルボン酸(RCOO)等であるものを用いることができる。有機塩におけるカチオンの分子量は270以上900以下、特に300以上850以下、とりわけ330以上800以下であることが、電気化学発光セルの発光効率が一層高くなり、発光輝度が一層優れたものになる点から好ましい。
【0022】
有機塩は、常温(25℃)において固体であっても液体であってもよい。有機塩のうち固体有機塩としては、例えば以下の式(1)で表されるものを用いることができる。
【0023】
【化1】
(式中、R
1、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ官能基で置換されていてもよい、アルキル基、アルコキシアルキル基、トリアルキルシリルアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又は複素環基を表す。R
1、R
2、R
3及びR
4は互いに同一でも異なっていてもよい。MはN又はPを表す。X
−はアニオンを表す。)
【0024】
有機塩のうち液体有機塩としては、イオン種でありながら常温(25℃)において液体状態を維持するイオン液体を挙げることができる。液体有機塩としては、例えば前記の式(1)で表される物質を用いることができる。前記の式(1)で表される有機塩は、選択されるカチオン及びアニオンの組み合わせや、カチオンの側鎖であるR
1ないしR
4の構造により、固体又は液体の状態となるものである。
【0025】
式(1)で表される複数の有機塩を用いる場合、それらのすべてが常温において固体であってもよく、あるいはそれらのすべてが常温において液体であってもよい。更に、それらのうちの少なくとも1種が常温において液体であり、かつそれらのうちの少なくとも1種が常温において固体であってもよい。
【0026】
前記の式(1)において、R
1ないしR
4は、アルキル基、アルコキシアルキル基、トリアルキルシリルアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又は複素環基であり得る。R
1ないしR
4は互いに同一でもよく、異なっていてもよい。
【0027】
前記の式(1)において、R
1ないしR
4のいずれか一つとして用いられるアルキル基としては、炭素原子数が1ないし20の直鎖又は分岐鎖の飽和脂肪族基や、炭素原子数が3ないし20の飽和脂環式基が挙げられる。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソブチル基、アミル基、イソアミル基、t−アミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、イソヘプチル基、t−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、2−エチルヘキシル基、t−オクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イコシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロヘキシルメチル基、シクロデシル基等が挙げられる。
【0028】
前記の式(1)において、R
1ないしR
4のいずれか一つとして用いられるアルコキシアルキル基におけるアルコキシ基としては、上述したアルキル基のアルコキシドが挙げられる。アルコキシアルキル基におけるアルキル基としては、上述したアルキル基と同様のものが挙げられる。
【0029】
前記の式(1)において、R
1ないしR
4のいずれか一つとして用いられるアルケニル基としては、炭素原子数が2ないし20のものが好ましく用いられる。例えばビニル基、アリル基、イソプロペニル基、2−ブテニル基、2−メチルアリル基、1,1−ジメチルアリル基、3−メチル−2−ブテニル基、3−メチル−3−ブテニル基、4−ペンテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基等の直鎖状又は分岐鎖状のアルケニル基が挙げられる。
【0030】
前記の式(1)において、R
1ないしR
4のいずれか一つとして用いられるアルキニル基としては、例えばエチニル基、プロパ−2−イン−1−イル基等が挙げられる。
【0031】
前記の式(1)において、R
1ないしR
4のいずれか一つとして用いられるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられる。複素環基としては、例えばピリジン、ピロール、フラン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、イミダゾリン、ピラジン等から誘導される一価の基が挙げられる。
【0032】
以上の各基は、それに含まれる水素原子のうちの1個又は2個以上が官能基で置換されていてもよい。官能基としては、例えばアミノ基、ニトリル基、フェニル基、ベンジル基、カルボキシル基、炭素数が1以上12以下のアルコキシ基などが挙げられる。例えば上述したアルキル基が、官能基としてのフェニル基等で置換された基、すなわち芳香族アルキル基を用いることができる。具体的には、アルキル基としてのメチル基が、官能基としてのフェニル基で置換された基であるベンジル基を用いることができる。
【0033】
前記の式(1)におけるX
−であるアニオンとしては、例えばフッ素、臭素、ヨウ素、塩素等のハロゲンのイオン、テトラフルオロボレート(BF
4)、ベンゾトリアゾレート(N
3(C
6H
4))、テトラフェニルボレート(B(C
6H
5)
4)、ヘキサフルオロホスフェート(PF
6)、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(N(SO
2CF
3)
2)、ビス(フルオロスルホニル)イミド(N(SO
2F)
2)、トリフルオロメタンスルホネート(SO
3CF
3)、メタンスルホネート(SO
3CH
3)、トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート((C
2H
5)
3PF
3)、トリフルオロ酢酸(CF
3COO)、アミノ酸、ビスオキサラトボレート(B(C
2O
4)
2)、p−トルエンスルホネート(SO
3C
6H
4CH
3)、チオシアネート(SCN)、ジシアナミド(N(CN)
2)、ジアルキルリン酸((RO)
2POO)、ジアルキルジチオリン酸((RO)
2PSS)、脂肪族カルボン酸(RCOO)、ジメチルホスフェート(P(OCH
3)
2(=O)O )、ジブチルホスフェート(P(OC
4H
9)
2(=O)O )、ビス−2−エチルヘキシルホスフェート(P(O(C
6H
12)((C
2H
5)))
2(=O)O )等が挙げられる。
【0034】
本実施形態の電気化学発光セル10は、発光層12に含まれる有機塩として、異なる2種以上を組み合わせて用いる点に特徴の一つを有する。2種以上の複数種の有機塩を組み合わせて用いることにより、正孔及び電子の発光層12への注入能力がほぼ等しいものになり、それによって発光効率を高めることが可能になる。発光効率が高まることで本実施形態の電気化学発光セル10は発光輝度に優れたものとなる。
【0035】
2種以上の複数の有機塩の組み合わせとしては、2種の組み合わせの場合を例にとると、(イ)カチオンが同種でアニオンが異種である有機塩の組み合わせ、(ロ)カチオンが異種でアニオンが同種である有機塩の組み合わせ、及び(ハ)カチオンが異種でアニオンが異種である有機塩の組み合わせなどが挙げられる。(イ)の場合には、例えばカチオンであるピリジニウムイオンが共通しており、テトラフルオロボレートイオンやビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン等の前記したアニオンのうち異なる種類のアニオンを有する有機塩の組み合わせが挙げられる。(ロ)の場合には、例えばテトラフルオロボレートイオンやビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン等の前記したアニオンが共通しており、カチオンがイミダゾリウムイオン及びピロリジニウムイオンである有機塩の組み合わせが挙げられる。(ハ)の場合には、例えばピリジニウムイオンのビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド塩と、ピロリジニウムイオンのテトラフルオロボレートイオン塩との組み合わせ等が挙げられる。
【0036】
上記2種以上の複数の有機塩の組み合わせの態様のうち、(イ)カチオンが同種でアニオンが異種である有機塩の組み合わせ、又は(ロ)カチオンが異種でアニオンが同種である有機塩の組み合わせ、のいずれかであると、発光層の組成について設計しやすくなるため好ましい。すなわち、(ハ)カチオンが異種でアニオンが異種である有機塩の組み合わせ、である場合、カチオンAとカチオンBが存在し、また、アニオンaとアニオンbが存在するため、発光層中のカチオンとアニオンの組み合わせとしては、
(i)カチオンA+アニオンa
(ii)カチオンA+アニオンb
(iii)カチオンB+アニオンa
(iv)カチオンB+アニオンb
の4種類の組み合わせが考えられ、これがそのまま有機塩の種類となって存在することになる。つまり、例えば当初に想定していた(i)と(ii)の組み合わせの複数塩で設計していたところ、(iii)と(iv)の有機塩も混入してくる恐れがあり、これが発光輝度に影響を及ぼす可能性が否定できない。
【0037】
以上の観点から鑑みると、有機塩の組み合わせとしては、(イ)カチオンが同種でアニオンが異種である有機塩の組み合わせ(上記(i)と(ii)、又は、(iii)と(iv)の組み合わせ)、又は(ロ)カチオンが異種でアニオンが同種である有機塩の組み合わせ(上記(i)と(iii)、又は、(ii)と(iv)の組み合わせ)、のいずれかであることが好ましい。
【0038】
また、2種以上の有機塩が、液体有機塩の組み合わせであることが好ましい。あるいは、2種以上の有機塩が固体有機塩の組み合わせであることも好ましい。更に、2種以上の有機塩の組み合わせは、液体有機塩と固体有機塩の組み合わせであってもよい。
【0039】
好ましい有機塩の組み合わせとしては、式(1)で表されるものの組み合わせが挙げられる。この場合、式(1)で表される互いに異なる複数種の有機塩を組み合わせるに際しては、正孔及び電子の発光層12への注入能力がほぼ等しくなるような組み合わせを採用することが有利である。本発明者の検討の結果、式(1)に示される互いに異なる複数種の有機塩として例えば2種の組み合わせを採用する場合、第1の有機塩と第2の有機塩とは、(イ)同種のカチオンを有し、かつアニオンが異種であることが好ましいことが判明した。また、(ロ)同種のアニオンを有し、かつカチオンが異種であることも好ましいことが判明した。
【0040】
(イ)の場合、第1の有機塩と第2の有機塩は同種のカチオン、例えば同種のアンモニウムイオン又は同種のホスホニウムイオンを有している。そして、第1の有機塩と第2の有機塩は異種のアニオンを有している。一方、(ロ)の場合、第1の有機塩と第2の有機塩は同種のアニオン、例えばビストリフルオロメタンスルホニルイミド、フッ素、臭素等のハロゲンのイオン、あるいはテトラフルオロボレート(BF
4)、ヘキサフルオロホスフェート(PF
6)等のハロゲン含有化合物のイオンを有している。そして、第1の有機塩と第2の有機塩は異種のカチオンを有している。異種のカチオンはいずれもアンモニウムイオンであり得る。あるいは、異種のカチオンはいずれもホスホニウムイオンであり得る。更に、異種のカチオンのうちの一方がアンモニウムイオンであり、他方がホスホニウムイオンであり得る。
【0041】
(イ)及び(ロ)のいずれの場合であっても、カチオンとしては、式(1)において、R
1、R
2、R
3及びR
4のうち三つが同一のアルキル基であり、残りの一つが該アルキル基と異種のアルキル基であるか、又は芳香族アルキル基であることが好ましい。この理由は、R
1、R
2、R
3及びR
4のうち一つが異種の基であることで、構造的に非対称となり、炭素数が多くなっても有機塩の流動性が得やすいためである。炭素数を多くすることで、カチオンの分子量を大きくすることができるため、構造的に電荷密度が小さくなることから、電荷を安定化させるために必要となる極性成分を減らすことができ、このことは極性を持たない有機発光材料との相溶性が増すことにつながる。
【0042】
第1の有機塩と第2の有機塩の好ましい組み合わせとしては、(イ)の場合には、カチオンが、同種のテトラアルキルアンモニウムイオン、同種のトリアルキルベンジルアンモニウムイオン、同種のテトラアルキルホスホニウムイオン又は同種のトリアルキルベンジルホスホニウムイオンであり、異種のアニオンがビストリフルオロメタンスルホニルイミドのイオン、フッ素、臭素等のハロゲンのイオン、あるいはテトラフルオロボレート(BF
4)、ヘキサフルオロホスフェート(PF
6)等のハロゲン含有化合物のイオンとの組み合わせが挙げられる。(ロ)の場合には、同種のアニオンがビストリフルオロメタンスルホニルイミドや、フッ素、臭素等のハロゲンのイオン、あるいはテトラフルオロボレート(BF
4)、ヘキサフルオロホスフェート(PF
6)等のハロゲン含有化合物のイオンであり、異種のカチオンが、異種のテトラアルキルアンモニウムイオンの組み合わせ、異種のトリアルキルベンジルアンモニウムイオンの組み合わせ、異種のテトラアルキルホスホニウムイオンの組み合わせ、異種のトリアルキルベンジルホスホニウムイオンの組み合わせ、テトラアルキルアンモニウムイオンとトリアルキルベンジルアンモニウムイオンの組み合わせ、テトラアルキルホスホニウムイオンとトリアルキルベンジルホスホニウムイオンの組み合わせ、テトラアルキルアンモニウムイオンと、トリアルキルベンジルホスホニウムイオンの組み合わせ、テトラアルキルホスホニウムイオンと、トリアルキルベンジルアンモニウムイオンの組み合わせ、テトラアルキルホスホニウムイオンと、テトラアルキルアンモニウムイオンの組み合わせが挙げられる。
【0043】
第1の有機塩と第2の有機塩との比率は、これらの有機塩の種類に応じて、広い範囲から選択可能である。例えば、後述する実施例で例証されるとおり、略等質量比のときに、最高発光輝度を示す組み合わせの場合もあり、あるいは第1の有機塩と第2の有機塩とが20:80や80:20の質量比のときに最高発光輝度を示す組み合わせの場合もある。
【0044】
前述したように、第1の有機塩と第2の有機塩との組み合わせは、あくまでも例示であり、正孔及び電子の発光層12への注入能力をほぼ等しくするという本発明の目的を達成するために、例えば3種以上等の複数種のイオン液体の組み合わせを採用することもできる。
【0045】
式(1)で表される有機塩は例えば、以下のように製造できる。カチオンがホスホニウムイオンである場合には、目的とするホスホニウムカチオンに対応した三級ホスフィン化合物とハロゲン化炭化水素化合物とを反応させて得られる四級ホスホニウムハライドを用い、アニオンがハロゲンであるイオン液体を得ることができる。アニオン成分がハロゲン以外のものは、前記の四級ホスホニウムハライドとアニオン成分の金属塩とを反応させアニオン交換することにより得ることができる。例えば式(1)中のR
1、R
2、R
3及びR
4のうち三つがアルキル基であり、残り一つが芳香族アルキル基であるホスホニウムカチオンを有し、アニオン成分がハロゲンであるイオン液体は、前記の三級ホスフィン化合物としてトリアルキルホスフィンを用い、前記のハロゲン化炭化水素化合物として芳香族アルキル基がハロゲンと結合した化合物を用いることで得ることができる。また、式(1)中のR
1、R
2、R
3及びR
4のうち三つがアルキル基であり、残り一つが芳香族アルキル基であるホスホニウムカチオンを有し、アニオン成分がハロゲン以外である有機塩は、前記したアニオン成分がハロゲンである有機塩を、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、テトラフルオロボレート(BF
4)、ヘキサフルオロホスフェート(PF
6)、ビスオキサラトボレート(B(C
2O
4)
2)、チオシアネート(SCN)等とアニオン交換することで得ることができる。
【0046】
発光層12における有機塩の比率は、イオン移動度を確保し、かつ発光層12の製膜性を高める観点から、1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、5質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。発光層12中の有機塩の含有量は、有機高分子発光材料100質量部に対し、10質量部以上25質量部以下であることが好ましい。
【0047】
発光層12に含まれる有機高分子発光材料は、アニオン及びカチオンがドープされることにより電子及び正孔のキャリア体として働くとともに、電子及び正孔の結合により励起して発光する。このような有機高分子発光材料としては、各種のπ共役系ポリマーを挙げることができる。具体的には、ポリ(パラフェニレンビニレン)、ポリ(フルオレン)、ポリ(1,4−フェニレン)、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリ(パラフェニレンスルフィド)、ポリベンゾチアジアゾール、ポリビオチオフィン等を挙げることができる。またこれらに置換基を導入させた誘導体、及びこれらのコポリマーも、有機高分子発光材料として用いることができる。そのような置換基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜18のアリール基、〔(−CH
2CH
2O−)
nCH
3〕で表される基(ただし、nが1〜10の整数である)等を挙げることができる。またコポリマーとしては、前記で挙げたπ共役系ポリマーのうち2種類以上のポリマーの各繰り返し単位を結合させてなるものが挙げられる。コポリマーにおける各繰り返し単位の配列としては、ランダム配列、交互配列、ブロック配列、又はそれらを組み合わせた配列が挙げられる。更に有機高分子発光材料として市販品を用いることもできる。そのような市販品としては、例えばLT-S934の名称でLuminescence technology社から入手可能な化合物であるPFO−DMP(Poly(9,9-dioctylfluorenyl-2,7-diyl) end capped with dimethylphenyl)や、アルドリッチ社から入手可能な化合物である(Poly[(9,9-di-n-octylfluorenyl-2,7-diyl)-alt-(benzo[2,1,3]thiadiazol-4,8-diyl)])などが挙げられる。
【0048】
これらの有機高分子発光材料は、その機能を十分に発揮させる観点から、発光層12における比率が、10質量%以上95質量%以下であることが好ましく、20質量%以上90質量%以下であることがより好ましい。
【0049】
発光層12には、有機高分子発光材料及び有機塩以外の物質を含有させていてもよい。そのような物質としては、例えば界面活性剤、導電性向上のためのポリマー成分(ポリエチレンオキシド等)、製膜性向上のためのポリマー成分(ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等)、有機塩以外の塩等を挙げることができる。発光層12における有機高分子発光材料及び有機塩以外の成分(ただし溶媒を除く)の量は、発光層12全体を100質量部としたときに、90質量部以下とすることが好ましく、60質量部以下とすることが更に好ましく、30質量部以下とすることが特に好ましい。
【0050】
このようにして構成される発光層12の膜厚は、10nm以上200nm以下であることが好ましく、50nm以上150nm以下であることがより好ましい。発光層12の膜厚がこの範囲であると、発光層12から十分かつ効率よく発光を得ることができることや発光予定部分の欠陥を抑えることができ短絡防止になること等の観点から好ましい。
【0051】
本実施形態の電気化学発光セル10は、例えば以下の製造方法により製造できる。まず、第1電極13が設けられた基板を準備する。第1電極13を例えばITOから形成する場合は、ガラス基板等の表面に、フォトリソグラフィー法又はフォトリソグラフィー法及びリフトオフ法を組み合わせて用いてITOの蒸着膜をパターン状に形成することによって、基板の表面にITOからなる第1電極13を形成することができる。
【0052】
次に、有機溶媒に有機塩と有機高分子発光材料とを溶解させて、電気化学発光セルの発光層形成用組成物を調製する。有機塩と有機高分子発光材料とを効率よく混合する等の観点から、有機溶媒としてトルエン、ベンゼン、テトラヒドロフラン、ジメチルクロライド、クロロベンゼン又はクロロホルム等を用いることが好ましい。これらの有機溶媒は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。発光層形成用組成物中の有機塩と有機高分子発光材料との配合比率(質量比)は前者:後者が1:1〜20であることが好ましい。この発光層形成用組成物を、基板の第1電極13上に、スピンコーティング法等により塗布する。その後、この塗布によって形成された塗膜を乾燥させて有機溶媒を蒸発させ、発光層12を形成する。発光層形成用組成物の調製及び発光層12の形成は、好ましくは水分率100ppm以下の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。この場合の不活性ガスとしては、アルゴン、窒素、ヘリウム等が挙げられる。
【0053】
次に、形成された発光層12に第2電極14を形成する。この場合、発光層12上に、例えばマスクを介した真空蒸着法等によってアルミニウム(Al)を膜状に蒸着することにより、所定のパターンの電極を形成する。このようにして、発光層12上に第2電極14を形成する。これによって、
図1に示す電気化学発光セル10が得られる。この得られた電気化学発光セル10は、発光層12の膜質改善の観点から、真空乾燥してもよい。この真空乾燥は、常温下で行ってもよく、あるいは加熱下に行うこともできる。
【0054】
本実施形態の電気化学発光セル10は、以下の発光機構により発光する。
図2(a)及び(b)に示すように、第1電極13が陽極となり第2電極14が陰極となるように発光層12に電圧が印加される。このことにより、発光層12内のイオンが電界に沿って移動し、発光層12における第1電極13との界面近傍にアニオン種が集まった層が形成される。一方、発光層12における第2電極14との界面近傍にカチオン種が集まった層が形成される。このようにして、それぞれの電極の界面に電気二重層が形成される。これにより陽極である第1電極13近傍にpドープ領域16が自発形成され、陰極である第2電極14近傍にnドープ領域17が自発形成される。そして、これらのドープ領域が高キャリア密度のp−i−n接合を構成する。その後、陽極と陰極から発光層12の有機高分子発
光材料に正孔と電子がそれぞれ注入され、i層で再結合する。この再結合した正孔と電子
とから励起子が生成され、この励起子が基底状態に戻ることにより光が発せられる。このようにして、発光層12から発光が得られる。所望の波長の光を得るためには、最高被占軌道(Highest Occupied Molecular Orbital)と最低空軌道(Lowest Unoccupied Molecular Orbital)のエネルギー差(バンドギャップ)が当該所望の波長に対応する有機高分子発光材料を選択すればよい。
【0055】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明の範囲はかかる実施形態に制限されない。また本発明は更に以下の電気化学発光セルを開示する。
〔1〕
発光層と、その各面に配された電極とを有する電気化学発光セルにおいて、
前記発光層が、有機高分子発光材料、及び2種以上の有機塩の組み合わせを含む電気化学発光セル。
〔2〕
前記有機塩が、ホスホニウム塩、アンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリウム塩及びピロリジニウム塩から選ばれる有機塩である〔1〕に記載の電気化学発光セル。
〔3〕
前記有機塩がイオン液体である〔1〕又は〔2〕に記載の電気化学発光セル。
〔4〕
前記有機塩が、以下の式(1)で表される有機塩である〔1〕ないし〔3〕のいずれか一項に記載の電気化学発光セル。
【化2】
(式中、R
1、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ官能基で置換されていてもよい、アルキル基、アルコキシアルキル基、トリアルキルシリルアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又は複素環基を表す。R
1、R
2、R
3及びR
4は互いに同一でも異なっていてもよい。MはN又はPを表す。X
−はアニオンを表す。)
〔5〕
前記有機塩がとして式(1)で表される複数の有機塩を用い、それらのすべてが常温において固体である〔4〕に記載の電気化学発光セル。
〔6〕
前記有機塩がとして式(1)で表される複数の有機塩を用い、それらのすべてが常温において液体である〔4〕に記載の電気化学発光セル。
【0056】
〔7〕
前記有機塩がとして式(1)で表される複数の有機塩を用い、それらのうちの少なくとも1種が常温において液体であり、かつそれらのうちの少なくとも1種が常温において固体である〔4〕に記載の電気化学発光セル。
〔8〕
前記発光層が、式(1)で表される2種の有機塩の組み合わせを含み、
2種の有機塩は、同種のカチオンを有し、かつアニオンが異種である〔4〕ないし〔7〕のいずれか一項に記載の電気化学発光セル。
〔9〕
異種のアニオンのうちの一方がビストリフルオロメタンスルホニルイミドであり、他方がハロゲンである〔8〕に記載の電気化学発光セル。
〔10〕
前記発光層が、式(1)で表される2種の有機塩の組み合わせを含み、
2種の有機塩は、同種のアニオンを有し、かつカチオンが異種である〔4〕ないし〔7〕のいずれか一項に記載の電気化学発光セル。
〔11〕
異種のカチオンがいずれもアンモニウムイオンであるか、又はホスホニウムイオンである〔10〕に記載の電気化学発光セル。
〔12〕
異種のカチオンのうちの一方がアンモニウムイオンであり、他方がホスホニウムイオンである〔10〕に記載の電気化学発光セル。
〔13〕
式(1)において、R
1、R
2、R
3及びR
4のうち三つが同一のアルキル基であり、残りの一つが該アルキル基と異種のアルキル基であるか、又は芳香族アルキル基である〔4〕ないし〔12〕のいずれか一項に記載の電気化学発光セル。
〔14〕
有機高分子発光材料、有機溶媒及び2種以上の有機塩の組み合わせを含有する、電気化学発光セルの発光層形成用組成物。
【実施例】
【0057】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0058】
〔実施例1及び比較例1〕
市販のITO膜付きガラス基板(ジオマテック株式会社製、ITO膜厚200nm)を第1電極として用いた。有機高分子発光材料として、PFO−DMP(Poly(9,9-dioctylfluorenyl-2,7-diyl) end capped with dimethylphenyl、Luminescence technology社製、LT-S934、平均分子量(Mn)=50000〜150000)を用いた。有機塩としてイオン液体のトリブチルオクチルアンモニウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(N4448TFSI)と、イオン液体のトリブチルオクチルアンモニウムブロミド(N4448Br)との組み合わせを用いた。両者の質量比は
図3(a)に示すとおりとした(
図3(a)中、横軸のxは、質量分率を示す。以下の
図4ないし
図12の横軸についても同じである。)。
【0059】
アルゴン雰囲気のグローブボックス中、室温下で有機高分子発光材料のトルエン溶液(濃度:9g/L)と、混合イオン液体のトルエン溶液(濃度:9g/L)とを体積比で有機高分子発光材料溶液:イオン液体溶液=4:1で混合して発光層形成用組成物を調製した。次に、アルゴン雰囲気のグローブボックス中、室温下でガラス基板の第1電極上に、前記で調製された発光層形成用組成物をスピンコートにより塗布して、更に50℃のホットプレート上で30分間加熱して有機溶媒を蒸発させた。このようにして、100nmの膜厚からなる固体状の発光層を形成した。更に、形成された発光層上に、上述した方法により、30nm厚さのアルミニウム(Al)からなる第2電極を形成した。このようにして、発光予定部分の面積2mm×2mm角からなる電気化学発光セルを作製した。
【0060】
得られた電気化学発光セルに、第1電極を直流電流の陽極に接続し、第2電極を陰極に接続して、20Vまで電圧を印加し、その間の輝度の最高値を発光輝度とした。発光輝度はCS−2000(コニカミノルタ製)を用いて測定した。結果を
図3に示す。
【0061】
〔実施例2及び比較例2〕
有機塩としてイオン液体のトリブチルオクチルアンモニウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(N4448TFSI)と、イオン液体のトリオクチルメチルアンモニウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(N8881TFSI)との組み合わせを用いた。両者の質量比は
図4に示すとおりとした(
図4中、横軸のxは、質量分率を示す)。これ以外は実施例1と同様にして電気化学発光セルを作製した。得られた電気化学発光セルについて、実施例1と同様の測定を行った。その結果を
図4に示す。
【0062】
〔実施例3及び比較例3〕
有機塩としてイオン液体のトリオクチルベンジルホスホニウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(P888BzTFSI)と、イオン液体のトリオクチルベンジルホスホニウムブロミド(P888BzBr)との組み合わせを用いた。両者の質量比は
図5に示すとおりとした。これ以外は実施例1と同様にして電気化学発光セルを作製した。得られた電気化学発光セルについて、実施例1と同様の測定を行った。その結果を
図5に示す。
【0063】
〔実施例4及び比較例4〕
有機塩としてイオン液体のトリオクチルベンジルホスホニウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(P888BzTFSI)と、イオン液体のトリエチルペンチルホスホニウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(P2225TFSI)との組み合わせを用いた。両者の質量比は
図6に示すとおりとした。これ以外は実施例1と同様にして電気化学発光セルを作製した。得られた電気化学発光セルについて、実施例1と同様の測定を行った。その結果を
図6に示す。
【0064】
〔実施例5及び比較例5〕
市販のITO膜付きガラス基板(ジオマテック株式会社製、ITO膜厚200nm)を第1電極として用いた。有機高分子発光材料としてF8BT(Poly[(9,9-di-n-octylfluorenyl-2,7-diyl)-alt-(benzo[2,1,3]thiadiazol-4,8-diyl)])、アルドリッチ社製、平均分子量(Mn)=10000〜20000)を用いた。有機塩として、イオン液体のトリブチルオクチルアンモニウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(N4448TFSI)と、イオン液体のトリブチルオクチルアンモニウムブロミド(N4448Br)との組み合わせを用いた。両者の質量比は
図7に示すとおりとした。これ以外は実施例1と同様にして電気化学発光セルを作製した。得られた電気化学発光セルについて、実施例1と同様の測定を行った。その結果を
図7に示す。
【0065】
〔実施例6及び比較例6〕
有機塩としてイオン液体のトリオクチルメチルアンモニウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(N8881TFSI)と、イオン液体のトリオクチルヘキサデカアンモニウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(N888(16)TFSI)との組み合わせを用いた。両者の質量比は
図8に示すとおりとした。これ以外は実施例5と同様にして電気化学発光セルを作製した。得られた電気化学発光セルについて、実施例5と同様の測定を行った。その結果を
図8に示す。
【0066】
〔実施例7及び比較例7〕
有機塩としてイオン液体のトリオクチルベンジルホスホニウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(P888BzTFSI)と、イオン液体のトリエチルペンチルホスホニウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(P2225TFSI)との組み合わせを用いた。両者の質量比は
図9に示すとおりとした。これ以外は実施例5と同様にして電気化学発光セルを作製した。得られた電気化学発光セルについて、実施例5と同様の測定を行った。その結果を
図9に示す。
【0067】
〔実施例8及び比較例8〕
有機塩としてイオン液体のトリオクチルメチルアンモニウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(N8881TFSI)と、イオン液体のトリオクチルベンジルホスホニウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(P888BzTFSI)との組み合わせを用いた。両者の質量比は
図10に示すとおりとした。これ以外は実施例5と同様にして電気化学発光セルを作製した。得られた電気化学発光セルについて、実施例5と同様の測定を行った。その結果を
図10に示す。
【0068】
〔実施例9及び比較例9〕
有機塩としてイオン液体のトリブチルオクチルアンモニウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(N4448TFSI)と、固体状のトリブチルオクチルアンモニウムテトラフルオロボレート(N4448BF
4)との組み合わせを用いた。両者の質量比は
図11に示すとおりとした。これ以外は実施例1と同様にして電気化学発光セルを作製した。得られた電気化学発光セルについて、実施例1と同様の測定を行った。その結果を
図11に示す。
【0069】
〔実施例10及び比較例10〕
有機塩としてイオン液体のトリブチルオクチルアンモニウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(N4448TFSI)と、固体状のトリブチルオクチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート(N4448PF
6)との組み合わせを用いた。両者の質量比は
図12に示すとおりとした。これ以外は実施例1と同様にして電気化学発光セルを作製した。得られた電気化学発光セルについて、実施例1と同様の測定を行った。その結果を
図12に示す。
【0070】
〔実施例11及び比較例11〕
市販のITO膜付きガラス基板(ジオマテック株式会社製、ITO膜厚200nm)を第1電極として用いた。有機高分子発光材料として、PFO−Spiro(Poly[(9,9-dioctylfluorenyl-2,7-diyl)-alt-co-(9,9’-spirobifluorene-2,7-diyl)]、Solaris Chem社製、型番SOL2412)を用いた。有機塩として、固体状のテトラオクチルホスホニウムブロミド(P8888Br)と、固体状のテトラオクチルホスホニウムパラトルエンスルフォネート(P8888TS)との組み合わせを用いた。両者の質量比は
図13に示すとおりとした。これ以外は実施例1と同様にして電気化学発光セルを作製した。得られた電気化学発光セルについて、実施例1と同様の測定を行った。その結果を
図13に示す。
【0071】
〔実施例12及び比較例12〕
市販のITO膜付きガラス基板(ジオマテック株式会社製、ITO膜厚200nm)を第1電極として用いた。有機高分子発光材料として、PFO−Spiro(Poly[(9,9-dioctylfluorenyl-2,7-diyl)-alt-co-(9,9’-spirobifluorene-2,7-diyl)]、Solaris Chem社製、型番SOL2412)を用いた。有機塩として、固体状のテトラブチルホスホニウムジブチルホスフェート(P4P4)と、液体状のテトラブチルホスホニウムジメチルホスフェート(P4P1)との組み合わせを用いた。両者の質量比は
図14に示すとおりとした。これ以外は実施例1と同様にして電気化学発光セルを作製した。得られた電気化学発光セルについて、実施例1と同様の測定を行った。その結果を
図14に示す。
【0072】
図3ないし
図14に示す結果から明らかなとおり、単独の有機塩を用いるよりも、2種の有機塩の組み合わせを用いる方が、発光輝度が増すことが判る。