(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6163188
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】水溶性バインダーを含む水溶液から得られた薄膜により被覆された電極、その製造方法及び使用
(51)【国際特許分類】
H01M 4/1397 20100101AFI20170703BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20170703BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20170703BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
H01M4/1397
H01M4/36 C
H01M4/58
H01M4/62 Z
【請求項の数】9
【外国語出願】
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-204686(P2015-204686)
(22)【出願日】2015年10月16日
(62)【分割の表示】特願2013-518(P2013-518)の分割
【原出願日】2003年11月13日
(65)【公開番号】特開2016-40775(P2016-40775A)
(43)【公開日】2016年3月24日
【審査請求日】2015年10月22日
(31)【優先権主張番号】2,411,695
(32)【優先日】2002年11月13日
(33)【優先権主張国】CA
(73)【特許権者】
【識別番号】597164909
【氏名又は名称】イドロ−ケベック
【氏名又は名称原語表記】Hydro−Quebec
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100126985
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 充利
(72)【発明者】
【氏名】ザギブ,カリム
(72)【発明者】
【氏名】アルマン,ミッシェル
(72)【発明者】
【氏名】ガーフィ,アブデルバースト
(72)【発明者】
【氏名】ペリエ,ミッシェル
(72)【発明者】
【氏名】デュピュイ,エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】シャレスト,パトリック
【審査官】
小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−225982(JP,A)
【文献】
特開2002−117902(JP,A)
【文献】
特開2002−256129(JP,A)
【文献】
特開2002−158012(JP,A)
【文献】
特開2001−155737(JP,A)
【文献】
特開平04−342966(JP,A)
【文献】
特開2002−117836(JP,A)
【文献】
特開2002−151072(JP,A)
【文献】
特開2002−151082(JP,A)
【文献】
国際公開第00/060680(WO,A1)
【文献】
特開2001−283837(JP,A)
【文献】
特開2001−250553(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/1397
H01M 4/36
H01M 4/58
H01M 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性増粘剤と水と少なくとも1種の活性材料とゴムバインダーとを含む水性組成物を電極支持体上に塗布して乾燥させることにより得られる、少なくとも部分的に薄膜で被覆された電極を製造するための方法であって、
前記増粘剤の分子量が27000〜250000であり、前記活性材料が、黒鉛及び/又は炭素により被覆されたLiFePO4であり、LiFePO4は、平均粒子径が10nm〜50μmである粉末の形態であり、
炭素及び/又は黒鉛によるLiFePO4の被覆が機械溶融により実施され、
周囲の空気中で、ドクターブレード法及び/又は静電的方法によって水性組成物が塗布される、上記方法。
【請求項2】
前記粉末が、200nm〜25μmの平均粒子径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記増粘剤が、天然セルロース、修飾セルロース、天然多糖及び修飾多糖からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記増粘剤が、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース及びメチルエチルヒドロキシセルロースからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ゴムバインダーが、室温にてペーストの形態であることを特徴とするスチレンブタジエンゴム(SBR)である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
溶液中のゴムバインダーの割合が1〜70%であり、増粘剤の量が1〜10%であり、増粘剤/ゴムバインダーの比率が10〜70%である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
電極がカソードであり、前記組成物が、
少なくとも64重量%のLiFePO4;及び
3重量%以上のゴムバインダー、
0.1〜2重量%の増粘剤;及び
27重量%以下の水;
を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記組成物中に存在する水の少なくとも95%が、塗布後に蒸発させられる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
被覆中に存在する黒鉛及び/又は炭素の比表面積が、BETにより測定して≧50m2/gである、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、電気化学電極を製造するための新規な方法及びその方法により得られた電極に関する。本方法は、水溶性バインダー及び活性材料を含有する水溶液を電極上に塗布し乾燥させることにより得られた薄膜により、完全に又は部分的に被覆された電極の製造を可能にする。
【0002】
本発明の第二の側面は、本発明にしたがった電極を製造するための少なくとも1つの工程を包含する、電気化学系を製造するための方法と、そのようにして得られる電気化学系とに関する。
【0003】
本発明の第二の側面は、電極の一部分又は全体を被覆する薄膜を調製するための水溶液中のバインダーとしての、水溶性ポリマーの使用に関する。
また、本発明は、すべて液体、ゲル又は固体である、Liイオン天然黒鉛/電解質/LiFePO
4電池を製造するための新規な方法も提供する。
【背景技術】
【0004】
従来技術
米国特許
6,280,882B1には、セパレータ中及び活性材料の粉末を含有する少なくとも1つの合成電極中に配置された、非プロトン性電解質組成物が記載されている。使用される電解質は、ポリマーからなる第一のポリマーマトリックス及び少なくとも1つの第二のポリマーマトリックス、並びに少なくとも1つのアルカリ塩及び極性非プロトン性溶媒を含んでいる。この方法には、環境に関して毒性と分類される溶媒中に希釈されたPVDFタイプのバインダーの使用に関係する不都合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
米国特許出願第6,680,882号明細書
【発明の概要】
【0006】
本発明は、少なくとも1つの活性材料、少なくとも1つの水溶性バインダー及び少なくとも1つの水溶性増粘剤を含む水溶液を、電極支持体上に塗布し乾燥させることにより得られた薄膜により少なくとも部分的に被覆された電極を製造するための方法に関する。その経済的な利点のほかに、本方法は、有機溶媒を使用する場合に関係する環境問題を克服する。このようにして得られる電極は、安定であり高度に機能する電気化学系の製造において機能し、そして有利に使用することができる。
本発明は、以下の態様を包含する。
(1) 少なくとも1種の活性材料、少なくとも1種の水溶性バインダー及び少なくとも1種の水溶性増粘剤を含む水溶液を電極支持体上に塗布して乾燥させることにより得られた、少なくとも部分的に薄膜で被覆された電極を製造するための方法。
(2) 活性材料が、a.金属酸化物;b.セラミック;c.炭素、天然黒鉛及び合成黒鉛;d.金属;e.半導体材料;及びf.これらのうち少なくとも2種の混合物;からなる群から選択される、(1)記載の方法。
(3) a.金属酸化物が、LiMn2O4、LiCoO2及びLiNiO2からなる群から選択され;b.炭素が、高表面積炭素、黒鉛、炭素繊維及びコークスからなる群から選択され;c.金属が、Ag、Sn及びCuからなる群から選択され;そして、d.半導体材料がSiである、(2)記載の方法。
(4) 化学的及び/又は電気化学的に活性のある材料が粉末の形態であり、その平均粒子径が10ナノメートル〜50マイクロメートルである、(1)〜(3)のいずれか1項に記載の方法。
(5) 粉末が、200ナノメートル〜25マイクロメートルの粒状分散を有する、(4)記載の方法。
(6) バインダー及び/又は増粘剤の少なくとも20%が、室温にて水100g中20gの割合で水溶性である、(1)〜(5)のいずれか1項に記載の方法。
(7) バインダー及び/又は増粘剤の少なくとも50%が溶解性である、(6)記載の方法。
(8) バインダー及び/又は増粘剤の少なくとも90%が溶解性である、(7)記載の方法。
(9) 水溶性増粘剤が、天然セルロース、修飾セルロース、天然多糖及び修飾多糖からなる群から選択される、(8)記載の方法。
(10) 水溶性増粘剤が、27,000〜250,000の分子量を有する、(9)記載の方法。
(11) 増粘剤が、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース及びメチルエチルヒドロキシセルロースからなる群から選択される、(9)又は(10)に記載の方法。
(12) 増粘剤が、セロゲン(登録商標)タイプのカルボキシメチルセルロースからなる群から選択される、(1)〜(11)のいずれか1項に記載の方法。
(13) 増粘剤が、日本の第一工業製薬により販売されたEP、7A、WSC、BS−H及び3Hカルボキシメチルセルロースからなる群から選択される、(12)記載の方法。
(14) バインダーが天然ゴム又は合成ゴムである、(1)〜(14)のいずれか1項に記載の方法。
(15) バインダーが、非フッ素化タイプ又は低フッ素化タイプである、(1)〜(14)のいずれか1項に記載の方法。
(16) ゴムが、SBR、NBR、HNBR、CHR及びACMからなる群から選択される、(14)又は(15)に記載の方法。
(17) ゴムが、室温にてペーストの形態であることを特徴とするSBRである、(15)又は(16)に記載の方法。
(18) 選択されたスチレンブタジエンゴム(SBR)が、日本ゼオンにより販売された電池用バインダー(BM−400B)などである、(17)記載の方法。
(19) 増粘剤がEP及び/又は3Hである、(13)〜(18)のいずれか1項に記載の方法。
(20) 電極がアノードであり、塗布するために使用される水溶液が、重量基準で:a.少なくとも64%の黒鉛;及びb.少なくとも3%の水溶性バインダー、c.0.1〜2%の増粘剤;及びd.多くとも27%の水;を含有する、(1)〜(19)のいずれか1項に記載の方法。
(21) 電極がカソードであり、塗布するために使用される水溶液が、重量基準で:a.少なくとも64%のLiFePO4;及びb.少なくとも3%の水溶性バインダー、c.0.1〜2%の増粘剤;及びd.多くとも27%の水;を含有する、(1)〜(19)のいずれか1項に記載の方法。
(22) 塗布用溶液中に存在する水の少なくとも95%を、塗布後に蒸発させる、(1)〜(21)のいずれか1項に記載の方法。
(23) 電極の表面に存在する極微量のH2Oを、水溶液により電極の表面を被覆した後に、好ましくは80〜130℃の温度で、1〜12時間、EXT法、DBH法及び/又はDB法、又は赤外線による熱処理により除去する、(22)記載の方法。
(24) 電極が塩処理されていないタイプである、(10)記載の方法。
(25) 周囲の空気中で、ドクターブレード抽出法及び/又は静電的方法を用いて実施する、(1)〜(24)のいずれか1項に記載の方法。
(26) 電極が負極であり、使用される電気化学的活性材料が、黒鉛の粉末、Snの合金、Siの合金、Li4Ti5O12タイプ、WO2タイプ、及びこれらの成分のうち少なくとも2種の混合物からなる群から選択される、(1)〜(20)及び(22)〜(25)のいずれか1項に記載の方法。
(27) 黒鉛粉末が、プリズム状の形をした黒鉛粒子で被覆された楕円形の粒子からなる、(26)記載の方法。
(28) プリズム状黒鉛による楕円形黒鉛の被覆が、機械溶融及び/又はハイブリダイゼーションにより得られる、(20)記載の方法。
(29) 電極が正極であり、電気化学的活性材料が、LiCoO2の粉末、LiNiO2、Li2Mn2O4、LiNi0.5Mn0.5O2、黒鉛及び炭素により被覆されたLiFePO4及びこれらのうち少なくとも2種の混合物からなる群から選択される、(1)〜(19)、(21)及び(22)のいずれか1項に記載の方法。
(30) 電極を、黒鉛及び/又は炭素により被覆されたLiFePO4の粒子から調製する、(29)記載の方法。
(31) 被覆中に存在する炭素の比表面積が、BETにより測定して≧50m2/gである、(30)記載の方法。
(32) 炭素及び/又は黒鉛によるLiFePO4の被覆が、機械溶融又はハイブリダイゼーションにより実施される、(30)又は(31)に記載の方法。
(33) 1種の活性材料を含有する薄膜により少なくとも部分的に被覆された支持体からなる電極であって、(1)〜(25)のいずれか1項に記載の方法を実行することにより得られた前記電極。
(34) カソードであり、電極支持体が、少なくとも部分的にステンレス、アルミニウム、銅、炭素、金属−プラスチック又はこれらの材料のうち少なくとも2種の混合物からなる、(33)記載の電極。
(35) アノードであり、電極支持体が、少なくとも部分的に銅、金属−プラスチック、又はこれらのうち少なくとも2種の混合物からなる、(33)記載の電極。
(36) 次の性質:a.50%より高い水分含量の存在下、20℃より高い温度で、好ましくは1年より長い貯蔵安定性;b.電極が黒鉛を基材とする場合、10〜100μm、更により好ましくは20〜45μmの膜厚、最も有利な様式にしたがえば薄膜は約45μmの厚さを有する;c.電極が鉄及び/又はフォスフェートを基材とする場合、20〜200μm、更により好ましくは20〜110μmの膜厚、最も有利な様式は、薄膜が約90μmの厚さを有する様式である;d.同じ活性材料によるが、有機溶媒溶液を用いることにより得られた、対応する電極に匹敵する電気化学的性能;及びe.ゴムの粒子が電極支持体に直接付着していることを特徴とする電極薄膜のうち少なくとも1つを有する、(33)〜(35)のいずれか1項に記載の電極。
(37) 一以上の電極を被覆している薄膜の多孔度が、厚さ測定の方法にしたがって測定して10〜90%である、(36)記載の電極。
(38) 多孔度が30〜40%である、(37)記載の電極。
(39) 少なくとも1つのアノード、少なくとも1つのカソード及び少なくとも1つのセパレータを含むその構成要素から電気化学系を調製するための方法であって、少なくとも1つのアノード及び/又は少なくとも1つのカソードが、(1)〜(32)又は(33)〜(38)のいずれか1項に記載の方法により得られた、前記方法。
(40) セパレータが多孔性である電池を調製するための、(39)記載の方法。
(41) セパレータが、好ましくは、PP若しくはPEタイプ、又は(PP,PE)混合タイプである、(40)記載の電気化学電池を調製するための方法。
(42) セパレータが、好ましくは、押出しにより得られた、(39)〜(41)のいずれか1項に記載の方法。
(43) セパレータがゲルタイプである、(39)記載の方法。
(44) セパレータが、以下のタイプのポリマー材料から得られる、(41)記載の方法:
ポリエステル;
化学式 (CH2−CF2)n
(式中、nは好ましくは1000〜4000であり、好ましくは、nは150に近い)のポリ(ビニリデンフルオライド)、好ましくは、10,000〜1,000,000の平均分子量を有するものであり、更に好ましくは、100,000〜250,000の平均分子量を有するものである;
式 [(CH2−CF2)x(CF2−CF(CF3))1−x]n
(式中、nは1000〜4000であり、好ましくは、nは2000〜3000であり、更により好ましくは、nは150に近く、xは好ましくは0.12〜0.5である)
のポリ(ビニリデン フルオロ−コ−ヘキサフルオロプロペン)コポリマー、好ましくは、10,000〜1,000,000の平均分子量を有するものであり、更に好ましくは、100,000〜250,000の平均分子量を有するものである;
化学式 (CF2−CF2)n
(式中、nは5〜20,000であり、好ましくは、nは50〜10,000である)
のポリ(テトラフルオロエチレン)、好ましくは、500〜5,000,000の平均分子量を有するものであり、更に好ましくは、5000〜1,000,000、好ましくは、約200,000の平均分子量を有するものである;
ポリ(エチレン−コ−プロピレン−コ−5−メチレン−2−ノルボルネン)又はEPDMとも呼ばれるエチレンプロピレン−ジエンコポリマー、好ましくは、10,000〜250,000の平均分子量を有するものであり、好ましくは、20,000〜100,000の平均分子量を有するものである;及び
式 [(CH2−C(CH3)/(CO2CH3)]n
(式中、nは好ましくは100〜10,000であり、更に好ましくは、nは500〜5000である)
のPMMAとも呼ばれるポリ(メチルメタクリレート)、好ましくは、10,000〜1,000,000の平均分子量を有するものであり、好ましくは、50,000〜500,000の平均分子量を有するものである;及び
これらのうち少なくとも2種の混合物。
(45) セパレータがポリエーテルPEO−PPOコポリマータイプである、(44)記載の方法。
(46) セパレータが3分枝ポリエーテルタイプ又は4分枝ポリマータイプである、(44)記載の方法。
(47) セパレータが、好ましくは、ディー・ケー・エスジャパンにより製造され、エレクセル(登録商標)ERM1の商標で販売された4分枝ポリマータイプである、(46)記載の方法。
(48) (39)〜(47)のいずれか1項に記載の少なくとも1つの方法工程を含む方法により得ることができる、電気化学系。
(49) (1)〜(32)のいずれか1項に記載の方法を実行することにより得られたか又は(33)〜38)のいずれか1項に記載の少なくとも1つの電極、ゲルのセパレータ、固体又は液体の電解質タイプを含む、電気化学系。
(50) 電解質ゲルを含む、(48)又は(49)記載の電気化学系。
(51) 電解質が少なくとも1種の塩及び少なくとも1種の溶媒を含む、すべて液体電池タイプである、(50)記載の電気化学系。
(52) 電解質中の塩モル濃度が1以下であり、溶媒モル濃度が1以上である、(51)記載の電気化学系。
(53) 塩が、好ましくは、LiPF6、LiBF4、LiBOB、LiTFSI、若しくはLiFSIタイプのイミドファミリーの塩、又はLiBOB及びLiFSIの混合物などのこれらのうち少なくとも2種の混合物である、(51)又は(52)記載の電気化学系。
(54) 保持された溶媒が高い沸点を有する、(51)〜(53)のいずれか1項に記載の電気化学系。
(55) 溶媒が100℃より高い沸点を有する、(54)記載の電気化学系。
(56) 溶媒がγBLタイプ、TESAタイプ、若しくは修飾TESAタイプ、又はこれらの混合物である、(55)記載の電気化学系。
(57) EC及びPC溶媒が、炭素を基材とするアノードの場合に、不動態化膜の形成のために使用され、PC溶媒が低温用途のために使用される、(51)〜(55)のいずれか1項に記載の電気化学系。
(58) すべてのゲル電池について電解質が、a)ポリマー+b)液体電解質で作られた前駆体から得られた、(57)記載の電気化学系。
(59) a)含量が1〜99%であり、好ましくはこの含量は5〜25%であり;そしてb)含量が1〜99%であり、好ましくはこの含量は75〜95%であり、a及びbの含量が次の関係(a)+(b)=100%である(%は重量で与えられる)、(58)記載の電気化学系。
(60) 温度開始剤が、a)+b)の全体重量に比例した量、又は好ましくは100〜5000ppm、好ましくは500〜1000ppmの量で添加される、(59)記載の電気化学系。
(61) 前駆体の成分が、約5%の好ましくはELECELタイプの4分枝ポリエーテル、及び約95%の成分(1.5LiTFSI+EC+PC+TESA+γBL(1:1:1:2))の電解質である、(60)記載の系。
(62) リチウム塩の濃度が、ゲルについて1M(1モル濃度)より高いか又は等しい、(61)記載の系。
(63) リチウム塩の濃度が、液体電解質中において1M(1モル濃度)より低いか又は等しい、(61)記載の系。
(64) 電極支持体の一部分又は全体を被覆する薄膜を調製するための水溶液中のバインダーとしての、水溶性ポリマー、好ましくはスチレンブタジエンゴムタイプのポリマー、更により好ましくは日本ゼオンのバインダーバッテリーグレード(BM−400B)として販売されるSBRの使用。
(65) HFの形成が無い、(64)記載の使用。
(66) HFの形成を、イミド塩を用いることにより防止する、(65)記載の使用。
(67) 電極を電池に配置し、電池を閉鎖し密封した後、熱放射を用いることにより、電極を被覆するポリマー溶液を架橋させて薄膜の調製を実施する、(64)〜(66)のいずれか1項に記載の使用。
(68) ポリマー溶液の架橋を好ましくは赤外線により実施する、(67)記載の使用。
(69) 重合温度が40〜80℃である、(67)又は(68)記載の使用。
(70) ポリマーの架橋が5分〜2時間継続する、(64)〜(69)のいずれか1項に記載の使用。
(71) 重合を80℃で約10分間実施する、(70)記載の使用。
(72) 電池が可撓性であり、多層金属プラスチックタイプである、(64)〜(71)記載の使用。
(73) 方法の間に除去されるHFに対して保護層を必要としないという事実により、重量と製造のコストを低減するための、(72)記載の使用。
(74) スーパーコンデンサーを製造するため、好ましくはハイブリッドタイプのスーパーコンデンサーを製造するための(64)〜(73)のいずれか1項に記載の使用。
(75) カソード支持体がアルミニウムタイプ、好ましくはEXMET(登録商標)エクスパンデッド金属タイプである、(64)〜(73)のいずれか1項に記載の使用。
(76) 平均電圧が1.6ボルトより低いか又は等しい場合に、アノード支持体は完全な銅タイプ、好ましくはEXMET(登録商標)又は導電性金属プラスチックであり、平均電圧が1.6ボルトより高い場合に、カソード支持体は完全なアルミニウム、好ましくはEXMET(登録商標)又は導電性金属プラスチックである、(64)〜(73)のいずれか1項に記載の使用。
(77) ポリマータイプのフィルム、好ましくは水溶性であるSBRタイプにより少なくとも部分的に被覆された、電気化学セパレータを製造するための方法。
(78) 使用される水性ポリマー溶液が、活性材料も炭素も含有しないか又はその非常に少量を含有する以外は、(1)〜(32)のいずれか1項に記載の電極を製造するための方法にしたがった、電気化学セパレータを製造するための方法。
(79) 少なくとも3つの構成要素、すなわち、少なくとも1つのアノード、少なくとも1つのカソード及び少なくとも1つのセパレータを含む電気化学系であって、該系の構成要素のうち少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つが、(1)〜(32)のいずれか1項に記載の方法を実施することにより及び/又は(77)又は(78)に記載の方法を実施することにより製造された前記系。
(80) 構成要素が有機溶媒を使用することなく製造された、(79)記載の電気化学系。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、押出しによりリチウムイオン電池を製造するための本発明の一態様にしたがった方法の概略図である。
【
図2】
図2は、本発明にしたがったリチウムイオン電池の要素の楕円形断面を示す。
【
図3】
図3は、ポリマーセルのための二重セル構造の概略図である。
【
図4】
図4は、非ポリマー電池のためのHF保護層のない金属プラスチック包装の概略図である。
【
図5】
図5は、水溶性バインダーにより製造した黒鉛/セルガード(EC−DMC−LiBF
4)アノードの充電−放電曲線を示す。
【
図6】
図6は、水溶性バインダーにより製造したLiFePO
4/セルガード(EC−DMC−LiBF
4)Liカソードの充電−放電曲線を示す。
【0008】
発明の具体的な説明
本発明の枠組みの範囲内では、バインダーという用語は、その機能が、伝導に好都合な化学的又は電気化学的ネットワークを提供するために、活性粒子を互いに連結させることである任意の化学的化合物を意味する。
【0009】
本発明の枠組みの範囲内では、増粘剤という用語は、関係する溶液中に存在する疎水性粒子の粘度及び湿潤性を増加させることができる任意の化学的化合物を意味する。
本発明の第一の目的は、少なくとも1種の活性材料(すなわち、化学的に及び/又は電気化学的に活性である)、少なくとも1種の水溶性バインダー及び少なくとも1種の水溶性増粘剤を含む水溶液を電極支持体上に塗布して乾燥させることにより得られた薄膜により、少なくとも部分的に被覆された電極を製造するための方法からなる。
【0010】
塗布は、都合のよいことには、例えば、Coating Technology Handbook by Satas Armek
1991, partII, CoatingandProcessing Technics 103〜321ページに記載される従
来の手法により実施する。電極上に塗布された薄膜の乾燥は、都合のよいことには、1〜2時間、好ましくは80〜130℃の温度で実施する。
【0011】
使用する活性材料は、都合のよいことには、
金属酸化物;
セラミック;
炭素、天然グラファイト及び合成グラファイト;
金属;
半導体材料;及び
これらのうち少なくとも2種の混合物
からなる群から選択される。
【0012】
別の都合のよい態様にしたがえば、金属酸化物は、LiMn
2O
4、LiCoO
2及びLiNiO
2からなる群から選択される。都合のよい態様としては、炭素は、高表面積炭素、黒鉛、炭素繊維、及びコークスの群から選択してもよい。都合よく保持される金属は、Ag、Sn及びCuからなる群から選択される。半導体材料の中では、ケイ素が特に興味深い結果をもたらす。
【0013】
使用される化学的に及び/又は電気化学的に活性のある材料は、一般に、粉末の形態であり、その平均寸法は10ナノメートル〜10ミリメートルで、都合のよいことにD50−D10=30のギャップ及びD90−D50=30のギャップに相当する、比較的低い粒分散度を有する。
【0014】
好ましい様式にしたがえば、例えば、自動車用バッテリー用の電極を製造するため、保持される粉末は、200ナノメートル〜25マイクロメートルの粒分散度を有する。
保持されるバインダー及び増粘剤の少なくとも20%は、一般的には、室温で、200グラムの水中20グラムの割合で導入した場合に、水溶性である。好ましくは、少なくとも50%、更により都合のよいことには、少なくとも90%は溶解性である。
【0015】
水溶性増粘剤は、天然セルロース、物理的に及び/又は化学的に修飾したセルロース、
天然多糖、物理的に及び/又は化学的に修飾した多糖からなる群から選択してもよく、27,000〜250,000の分子量を有する。
【0016】
増粘剤は、都合のよいことには、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース及びメチルエチルヒドロキシセルロースからなる群から選択する。
好ましい様式にしたがえば、増粘剤は、例えば、EP、7A、WSC、BS−H及び3Hの商品名で、日本の第一工業製薬(Daiichi Kogyo Seiyaku Co.)により販売されるセロ
ゲン(Cellogen)(登録商標)タイプのカルボキシメチルセルロースからなる群から選択する。
【0017】
溶解性バインダーは、都合のよいことには、天然及び/又は合成ゴムからなる群から選択する。
バインダーは、非フッ素化タイプ又は低フッ素化タイプのものである。実際に、例として、水中に溶解しないLiFは、本発明の事情においては使用することができない。
【0018】
ゴムの中では、合成タイプのゴム、より特定的にはSBR(スチレンブタジエンゴム)、NBR(ブタジエン−アクリロニトリルゴム)、HNBR(水素化NBR)、CHR(エピクロルヒドリン)及びACM(アクリレートゴム)からなる群から選択されるゴムが特に都合がよい。
【0019】
使用される溶解性ゴム、例えばSBRファミリーのゴムは、好ましくは、ペーストの形態である。
例として、商品名(BM−400B)で日本ゼオンにより販売される電池用グレードのSBR又は等価物、及び、略称EP及び/又は3Hとして既知のセロゲン(登録商標)の増粘剤を挙げることができる。
【0020】
通常は、増粘剤/バインダーの比率は、10〜70%であり、好ましくは30〜50%である。
水溶液中において、バインダー含量は、都合のよいことには、1〜70%、増粘剤の含量は1〜10%である。
【0021】
アノード支持体上に塗布するために適切に使用される水溶液は、以下のように配合することができる(パーセントは重量で与える):
少なくとも64%の黒鉛;及び
少なくとも3%の水溶性バインダー、
0.1〜2%の増粘剤;及び
多くとも27%の水。
【0022】
カソード支持体に関して適合された水溶液は、以下のように配合することができ、塗布するために使用される水溶液は重量基準で:
少なくとも64%のLiFePO
4;及び
少なくとも3%の水溶性バインダー、
0.1〜2%の増粘剤;及び
多くとも27%の水
を含有する。
【0023】
本方法を実行する場合、好ましくは、塗布工程を実施するために使用される溶液中存在する水の薄くなくとも95%を除去することにより、電極を乾燥させる。
電極の表面を水溶液で被覆した後、当業者に既知である種々の手法を用いて、電極の表面上に存在する極微量のH
2Oを除去することができる。
【0024】
これらの極微量の水は、80〜130℃の都合のよい温度で1〜12時間、EXT法、DBH法及び/又はDB法、あるいは赤外線の熱的手段により除去する。
薄膜は、都合のよいことには、その残留水分含量が2000ppm、好ましくは50ppmより低くなるまで乾燥する。
【0025】
この方法は、都合のよいことには、塩処理されていないタイプの電極、すなわち活性材料、炭素、及び増粘剤及び/又はバインダーから作られた本発明の電極に適用される。
本方法は、通常、室温及び常圧で実施する。不活性雰囲気を使用してもよく、並びに乾燥工程の間は部分的に真空を使用してもよい。有機溶媒を使用しないことから、押出し法は、特に重要である。実際に、爆発危険性などの溶媒使用に固有の危険が除外され、例えば、20%ほど高い押出し速度での、よりエネルギーの高い条件下での押出しによる態様にしたがって作業を実施することができる。
【0026】
本発明にしたがった負極の製造のためには、使用する電気化学的に活性のある材料は、黒鉛、Sn合金、Si合金、Li
4Ti
5O
12、WO
2タイプの粉末及びこれらの粉末のうち少なくとも2種から得られた混合物からなる群から選択してもよい。プリズム状の形態をした黒鉛粒子により被覆された楕円形の黒鉛核を有する粒子からなるものを挙げることができる。楕円形黒鉛のプリズム状黒鉛による被覆は、機械溶融
(メカノフュージョン)及び/又はハイブリダイゼーションにより得ることができる。
【0027】
正極を製造するのが望ましい場合は、電気化学的に活性のある材料は、好ましくは、黒鉛及び炭素により被覆された、LiCoO
2、LiNiO
2、Li
2Mn
2O
4、LiNi
0.5Mn
0.5O
2、LiFePO
4粉末、及びこれらのうち少なくとも2種の混合物から選択する。
【0028】
例えば、黒鉛及び/又は炭素により被覆されたLiFePO
4タイプの電極を得ることができる。LiFePO
4を黒鉛及び/又は炭素により被覆することは、通常、機械溶融及び/又はハイブリダイゼーションにより実施する。
【0029】
被覆中に存在する炭素の比表面積は広く変動してもよい;BETにより測定した比表面積は、殆どの場合において、50m
2/gより高いか又は等しいと確認された。
また、この方法は、ポリマータイプ、好ましくは水溶性SBRタイプの薄膜により少なくとも部分的に被覆された電気化学的セパレータを製造することを可能とする。
【0030】
電気化学的セパレータを製造するためのそのような方法は、使用される水性ポリマー溶液が活性材料も炭素も含有していないか、又はごく少量含有していること以外は、これまでに定義した電極を製造する方法にしたがっている。実際に、セパレータは、アノードとカソードの間のイオン輸送のために使用され、電気的に伝導性ではない。
【0031】
本発明の第二の目的は、活性材料を含有する薄膜による少なくとも一部分が被覆されている支持体で作られた電極からなる。この電極は、これまでに定義した第一の目的にしたがった方法のうちの一つを実施することにより得られる。これらの電極は、バインダーが、塗布薄膜を構成するために使用される水溶液を乾燥した後に、支持体から引き離されていることを特徴とする。
【0032】
カソードの場合は、電極支持体は、都合のよいことには、少なくとも部分的に、ステンレス、アルミニウム、銅、炭素、金属−プラスチック、又はこれらの材料のうち少なくとも2種の混合物を含む。
【0033】
アノードの場合は、電極支持体は、都合のよいことには、少なくとも部分的に、銅、金属−プラスチック、又はこれらの混合物を含む。
本発明の電極は、都合のよいことには、以下の性質:
50%より高い水分含量の存在下、20℃より高い温度で、好ましくは1年より長い貯蔵安定性;
電極が黒鉛を基材とする場合、10〜100μm、更により好ましくは20〜45μmの膜厚、最も有利な様式にしたがえば薄膜は約45μmの厚さを有する;
電極が鉄及び/又はフォスフェートに基づく場合、20〜200μm、更により好ましくは20〜110μmの膜厚、最も有利な様式は、薄膜が約90μmの厚さを有する様式である;
同じ活性材料によるが、有機溶媒溶液を用いることにより得られた、対応する電極に匹敵する電気化学的性能;
ゴムの粒子が電極支持体に直接付着していることを特徴とする電極薄膜;及び
厚さ測定方法により測定して、10〜90%、好ましくは30〜40%である、一又はそれより多い電極を被覆する薄膜の多孔度
のうち少なくとも1つを有する。
【0034】
第三の目的は、少なくとも1つのアノード、少なくとも1つのカソード及び少なくとも1つのセパレータを含む構成要素を組み合わせることにより、電気化学系を製造するための方法であって、少なくとも1つのアノード及び/又は少なくとも1つのカソードが、本発明の第一の目的にしたがった方法又は本発明の第二の目的に定義される方法により得られた前記方法からなる。
【0035】
この方法は、都合のよいことには、セパレータが多孔性である電池を製造するために使用する。セパレータは、例えば、ポリプロピレン又はポリエチレンタイプのもの、あるいは、(PP,PE)混合物タイプのものであり、押出しにより得られたもの及び/又はゲルタイプのものである。
【0036】
セパレータは、好ましくは、次のタイプ:
ポリエステル
化学式(CH
2−CF
2)
n(式中、nは好ましくは1000〜4000であり、好ましくは、nは150に近い)のポリ(ビニリデンフルオライド)、好ましくは、10,000〜1,000,000の平均分子量を有するものであり、更に好ましくは、100,000〜250,000の平均分子量を有するものである;
式[(CH
2−CF
2)
x(CF
2−CF(CF
3))
1−x]
n(式中、nは1000〜4000であり、好ましくは、nは2000〜3000であり、更により好ましくは、nは150に近く、xは好ましくは0.12〜0.5である)のポリ(ビニリデン フル
オロ−コ−ヘキサフルオロプロペン)コポリマー、好ましくは、10,000〜1,000,000の平均分子量を有するものであり、更に好ましくは、100,000〜250,000の平均分子量を有するものである;
化学式(CF
2−CF
2)
n(式中、nは5〜20,000であり、好ましくは、nは50〜10,000である)のポリ(テトラフルオロエチレン)、好ましくは、500〜5,000,000の平均分子量を有するものであり、更に好ましくは、5000〜1,000,000、好ましくは、約200,000の平均分子量を有するものである;
ポリ(エチレン−コ−プロピレン−コ−5−メチレン−2−ノルボルネン)又はEPDMとも呼ばれるエチレンプロピレン−ジエンコポリマー、好ましくは、10,000〜250,000の平均分子量を有するものであり、好ましくは、20,000〜100,000の平均分子量を有するものである;及び
式[(CH
2−C(CH
3)/(CO
2CH
3)]
n(式中、nは好ましくは100〜10,000であり、更に好ましくは、nは500〜5000である)PMMAとも呼ばれ
るポリ(メチルメタクリレート)、好ましくは、10,000〜1,000,000の平均分子量を有するものであり、好ましくは、50,000〜500,000の平均分子量を有するものである;及び
これらのうち少なくとも2種の混合物
のポリマー材料から得られる。
【0037】
このタイプのセパレータの製造は、都合のよいことには、Coating Technology Handbook by Satas Armek 1991, part II, 103〜321ページ, Coating and Processing Techniquesに記載された手法を利用することにより実施する。
【0038】
既知のセパレータの例として、PEO−PPOポリエーテルコポリマータイプのもの、例えば
米国特許6,190,804B1に定義される3分枝ポリエーテルタイプのもの、又は、
米国特許6,280,882B1に定義される4分枝ポリマータイプのものを挙げることができる。これら2つの特許の内容、特にそれぞれカラム1及び2は、参照により本明細書中に援用する。
【0039】
ディー・ケー・エスジャパン(DKS Japan)により製造され、商標エレクセル
(ELEXCEL)(登録商標)ERM1で販売される4分枝ポリエーテルから得られたセパレータを用いることにより、特に興味深い結果が得られている。
【0040】
本発明の第四の目的は、本発明の第三の目的にしたがった方法により得ることができる電気化学系、並びに本発明の第一の目的にしたがった方法を実施することにより得られる少なくとも1つの電極を含む電気化学系からなる。
【0041】
この性質の系において、独自性の一つは、ポリマー溶液が電極支持体の表面で乾燥されているという事実、及び、例えばSBRの水溶液の場合の結果は電極支持体の表面でSBRを結合するという事実にある。
【0042】
この性質の系において、セパレータは、ゲル、固体又は液体電解質タイプであってもよく、都合のよいことにはゲルタイプである。
都合のよい態様にしたがえば、電解質には、少なくとも1種の塩と少なくとも1種の溶媒が含まれる。
【0043】
次いで、電解質中の塩のモル濃度は、好ましくは、1より低いか又は等しく、溶媒のモル濃度は、都合のよいことには、1より高いか又は等しい。
使用される塩は、好ましくは、LiPF
6、LiBF
4、LiBOB、LiTFSI若しくはLiFSIタイプ、又はこれらの混合物(LiBOB及びLiFSIの混合物など)であるイミドファミリーの塩である。
【0044】
使用される溶媒としては、好ましくは、100℃より高い沸点を有する。そのような溶媒には、γBLタイプ、TESAタイプ、若しくは修飾TESAタイプ、又はこれらの溶媒のうち少なくとも2種の混合物を挙げることができる。
【0045】
EC(エチレンカーボネート)溶媒及びPC(プロピレンカーボネート)溶媒は、通常、炭素を基材とする電極の場合に、不動態化膜を形成するために使用し、PC溶媒は、低温用途を達成するために使用する。
【0046】
そのような系においては、すべてのゲル電池用の電解質は、都合のよいことには、a)ポリマー+b)液体電解質の化合物の前駆体から得られる。
a)の含量は、1〜99%であることができ、好ましくはこの含量は5〜25%であり
;そして、b)の含量は、1〜99%であることができ、好ましくはこの含量は75〜95%である。a及びbの含量は(a)+(b)=100%の関係を満たし、%は重量基準で与えられる。
【0047】
別の有利な態様にしたがえば、熱開始剤を、全重量a)+b)に比例した量、すなわち、好ましくは100〜5000ppmの量、更により好ましくは500〜1000ppmの量で添加する。
【0048】
ポリマーの組成は、好ましくは低く、すなわち、4分枝ポリマー、好ましくは
エレクセル(Elexel)タイプが約5%で、組成(1.5LiTFSI+EC+PC+TESA+γBL(1:1:1:1))の電解質が約95%である。
【0049】
リチウム塩濃度は、都合のよいことには、ゲルの場合1M(1モル濃度)より高いか又は等しく、リチウム塩濃度は、液体電解質中1M(1モル濃度)より低いか又は等しい。これらの電気化学系のなかでは、都合のよいことには、少なくとも1つのアノード、少なくとも1つのカソード及び少なくとも1つのセパレータを含む系であって、系の構成要素のうち少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つは、本発明の第四の目的にしたがった方法のいずれか1つを実施することにより製造されたものを挙げることができる。
【0050】
同様に、構成要素が実質的に有機溶媒を使用することなく製造された電気化学系は、特に興味深く、有機溶媒無しで得られたものは好ましい。
本発明の第五の目的は、水溶性ポリマー、好ましくはスチレンブタジエンゴムタイプ、更により好ましくは日本ゼオンのバインダーバッテリーグレード(BM−400B)として販売されているSBRの、電極支持体の一部又は全部を被覆するための薄膜を調製するための水溶液中におけるバインダーとしての使用に関する。
【0051】
この使用は、例えば、商業的な電池において見られるLiPF
6の代わりにイミド塩を使用するという事実により、HFが形成されることなく使用するという利点を有する。
薄膜の調製は、電極を電池内に配置して電池を密封した後に、例えば熱放射により、電極を被覆するポリマー溶液を架橋することにより実施する。
【0052】
ポリマー溶液は、通常、重合温度が40〜80℃であり、ポリマー溶液の架橋を赤外線により実施するように選択する。
ポリマーの架橋時間は、都合のよいことには、5分間〜2時間である。
【0053】
例として、重合は、約80℃で約10分間実施する。
本発明の使用は、多層金属プラスチックタイプの電池などの可撓性タイプの電池の製造のために特に適合される。
【0054】
この使用により、例えば、もはやHFに対する保護層を有する必要がなく、また、有機溶媒に関するコストが削除されるという事実により、製造コストを低減することが可能となる。
【0055】
別の特に興味深い適用は、スーパーコンデンサーの製造、好ましくはハイブリッドタイプのスーパーコンデンサーの製造、並びにEXMET(
エクスパンデッドメタル)タイプのアルミニウムタイプの支持体からのカソードの製造である。
【0056】
別の興味深い変体は、平均電圧が1.6ボルトより低いか又は等しい場合に、アノードを製造するための、銅タイプ、好ましくはEXMETのアノード支持体の使用であり、平均電圧が1.6ボルトより高い場合に、カソード支持体はアルミニウムでつくられる。
【0057】
本発明の好ましい態様の説明
一般的には、本発明の方法を実施する間に、EXMET上への押出し又は垂直塗布(vertical spreading)などのいわゆる高速手法を使用してもよいが、押出しが推奨される方法である。
【0058】
フッ素を含まないバインダーを水中に溶解し、それにより、押出しの処理が促進され、処理速度が増加する。
アノード中及びカソード中の黒鉛の存在は、滑剤として作用し、例えば押出しを利用する場合に、電極の厚さを均一にし、多孔度を制御することによりその抵抗を低下させることが可能となる。
【0059】
使用される溶媒は、アノードを扱うか又はカソードを扱うかに関わらず、水であり、それにより、方法が安全で、環境的に無害で、費用がかからなくなる。イミドタイプの塩の使用(HFを形成しない)により、良好な電解質の伝導性が提供され、電池の保証が高くなる。
【0060】
本発明にしたがった新規な方法は、例えば、費用のかからない安全なLiイオン電池の製造に適用可能である。そのような電池には、少なくとも4つの以下の部分:アノード;カソード;セパレータ;電解質が含まれる。
【実施例】
【0061】
実施例
以下の実施例は純粋に例示として与えられ、本発明のいかなる限定を構成するものと解釈すべきではない。
【0062】
1.アノードの製造のための本方法の使用
アノードは、平均サイズ20μmの球状黒鉛粒子製であり、1%のプリズム状黒鉛の粒子で被覆され、そのサイズは4μmである;混合物は機械溶融又はハイブリダイゼーションにより確実なものとなる。この様式において、95%の黒鉛を、バインダーとして使用される日本ゼオンのバインダーバッテリーグレード(BM−400B)などの5%のSBRと混合して、水中にいれて溶液にする。
【0063】
最適な濃度は、銅上(好ましくはEXMETと呼ばれるエクスパンデッドメタル上)への押出し又は塗布のために選択する。
球状黒鉛は、その表面でのリチウム拡散速度、及びその約370mAh/gの可逆容量のために選択する。プリズム状黒鉛は、球状粒子の間の伝導性架橋として選択する。伝導性架橋は電極の抵抗を低下させる。(基底面の存在に関係して)プリズム状黒鉛を使用する目的は、電極を確実に滑らかにすることである;これにより、特に押出し又は塗布の間に、電極の厚さと多孔度を均一にする効果を与える。赤外線によるオンライン乾燥により、機械装置と方法は簡単になる。
【0064】
また、加熱を使用して微量の水(H
2O)を除去する。電極が塩処理されていない(塩無し)という事実により、HFを生成させることなく、電極の電気化学性能を改良することが可能となる。
【0065】
この電極に関係する他の利点は、非フッ素化バインダーの使用であり、これにより、電解質とのすべての反応又はHFの形成を伴うすべての寄生反応は排除される。このことは、バッテリーのケーシングとして使用する金属プラスチックの多層材料の選択に影響を与え、HFに対する保護層を用いることを避けることができ、これにより、製造コストは制
限される。
【0066】
この方法において、出発溶媒は水である。このことは、環境に有益であり、特別な設備(特別な予防策を伴う溶媒回収のための無水チャンバーなど)を何も必要としない。
2.カソードの製造のための本方法の使用
カソードは、好ましくはLiFePO
4(Phostech Inc.より)からなる。LiFePO
4を、3%ケッチェンブラック及び3%天然又は合成黒鉛で被覆する。被覆加工は、機械溶融又はハイブリダイゼーションにより行うことができる。
【0067】
ケッチェンブラックを使用して、電極中に電導性ネットワークを構成する。黒鉛は二重の機能を有する。第一には、LiFePO
4とケッチェンブラックとの間に接合架橋を提供する。接合架橋は、電極に対して低い抵抗をもたらす。また、黒鉛は、滑剤として作用して、特に押出しにより、良好な均一性及び制御された多孔度をもつ電極を提供することにより、塗布を促進する。
【0068】
LiFePO
4/カーボン(ケッチェンブラック)/黒鉛の混合物を、日本ゼノンのバインダーバッテリーグレード(BM−400b)よりの5%SBRゴムと混合して、水中に溶解することにより溶液とする。
【0069】
この混合物の塗布を、押出し又はドクターブレード(水平又は垂直)により、好ましくは押出しにより実施する。乾燥は、1で説明したアノードを製造する場合と同様、赤外線を使用して達成する。
【0070】
カソードの製造のために使用する方法は、アノードを製造するために使用するものと同じである。
次のものの使用を必要とする:
溶媒としてのH
2O;
潤滑性及び導電性の黒鉛;
乾燥手段としての赤外線;及び
フッ素を含まないSBRタイプのバインダー;(日本ゼオンのバインダーバッテリーグレード(BM−400B))。
【0071】
次のものの使用を避けることが可能となる:
塩;
無水チャンバー;及び
特別な予防策。
【0072】
LiFeO
4は、この理由のために(日本ゼオンのバインダーバッテリーグレード(BM−400B))のSBRを分解することなく、3.8ボルトで完全に充電する。イミドタイプの塩の使用は、好ましくはEXMETタイプのアルミニウム製コレクターの腐食には影響を与えず、バッテリーのエネルギー密度のためには都合がよい。
【0073】
3.セパレータを製造するための方法
a.液体及び電解質ゲル用のセパレータ
セパレータは、好ましくはPP(ポリプロピレン)若しくはPE(ポリエチレン)タイプ、又はこれらの混合物製である。好ましくは、押出しにより得られる。このセパレータの多孔度は約30〜50%であり、これにより、電極、特にゲルに対してより多くの空間が与えられる。この膜は、「溶媒フリー」と呼ばれる。セパレータは、UV熱加熱、電子ビーム、又はIR(熱)により架橋する。架橋は、好ましくは保護ライン上でIRにより実施する。
【0074】
b.ポリマーセパレータ
このセパレータの電池における使用は、更に、PP又はPEの使用を限定する。ポリマー製のセパレータの利点は、電解質と物理的及び化学的なゲルを形成することから、安全性の理由のためである。
【0075】
セパレータは、好ましくは、3分枝又は4分枝のPEO−PPOコポリマータイプ(ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン)のポリエーテル製であり、好ましくは4分枝ポリエーテル(
Elexel217という商品名でディー・ケー・エスにより販売される)製である。これらのポリエーテルは、室温で実際には液体である。押出し加工の枠組み内での使用であれば、追加の溶媒をまったく必要とせず、環境に対する有害問題を克服している。
【0076】
このタイプのポリマーの架橋は、電子ビーム、IR又はUVにより熱的に実施する。
4.リチウムイオン電池の組立て(
図1〜4)
a.すべての液体
三枚の薄膜であるアノード/セパレータ:PP又はPE/カソードを、所望の容量(mAh又はAh)にしたがって巻きつける:巻きつけるときに、10psiの圧力を施用する。Al及びニッケルタイプのタブ(電流コネクタ)を、超音波(ATM207)により、それぞれカソードのAlコレクタ及びアノードの銅上に溶接した。
【0077】
この三枚の薄膜巻物を、HF保護無しで、金属プラスチック製バッグ中に導入する。
液体電解質の注入は、金属プラスチック製バッグ中を完全に真空にした後に実施する。液体電解質は塩及び溶媒の混合物であり、塩はLiTFSI及び/又はLiFSIなどのイミドタイプであり、使用する溶媒又は溶媒混合物は、高い沸点を有する。本発明において使用することができる溶媒の例としては、以下の混合物が挙げられる:
EC+γBL
EC+TESA(又は修飾TESA)
又は
PC+EC+γBL
PC+EC+TESA(又は修飾TESA)
PC+EC+γBL+TESA(又は修飾TESA)。
【0078】
液体の場合の塩の濃度は≦1M(1モル濃度)である。一旦電池を密封したら、小さい電流を施用して、アノード(黒鉛/楕円体)の表面上に不動態化膜を得ることにより、電池の電気化学的形成を実施する。
【0079】
b.PP又はPEセパレータに関するゲル
4bの加工は、本質的には4aにおいて説明したものと同じである。
電解質ゲル前駆体は、5%ポリマー(
Elexel)+95%(1.5M LiTFSI)+EC+PC+γBL 1:1:3)+1000ppmの熱開始材(好ましくはPerkadox16である)とから作られている。この組み合わせは、電解質の選択を限定しない。
【0080】
電解質は、3枚の薄膜(アノード/セパレータPP/カソード)を含んでいる電池のバッグ中で完全な真空を達成した後で注入される。
一旦電池を密封したら、80℃での10分間の熱処理、好ましくはIRによる10分間の熱処理によりゲルを得る。in situでのインピーダンス測定を、電解質の抵抗を展開させ
た後に行う。重合を実施した後、4bと同様に、電池を電気化学的に形成する。ゲル濃度はセパレータ、アノード及びカソードにおいて一定である。
【0081】
c.ポリエチレンセパレータに関するゲル
3枚の薄膜であるアノード/ポリエーテル/カソードを巻きつけて、金属プラスチック製のバッグ中に導入する。ゲル前駆体は、既に説明した4bの前駆体と同じ性質である。ゲル前駆体は、完全に真空にした後で金属プラスチックバッグ中に導入する。一旦電池を密封したら、重合は、80℃で10分間、又は好ましくはIR(赤外線)により得る。4bの場合にように形成物を電池に施用する。セパレータと電極におけるゲル濃度は異なる。
【0082】
5.他の技術
この新規な方法の実行は、アノードの活性材料としての黒鉛の使用、又はカソードの活性材料としてのLiFePO
4の使用には限定されない。
【0083】
例として、いくつかのアノードとしては、Si、Li
4Ti
5O
12又はSnを基材とするタイプの合金などが挙げられる;カソードは、LiCoO
2又はLiMn
0.5Ni
0.5O
2、LiMn
0.5Ni
0.5O
2、LiNi
xCo
yAl
zなどを含んでもよい。
【0084】
また、ゲルは、PVDFタイプであってもよく、ポリエーテル+PVDF又はポリエーテル+PMMAなどの混合物からなってもよい。この方法は、次のタイプのハイブリッドスーパーコンデンサーに簡単に適合させることができる:
5a)Li
4Ti
5O
12/電解質/炭素;
5b)WO
2/電解質/炭素;
5c)黒鉛/電解質/炭素;及び
5d)Si/電解質/炭素又は他の組み合わせ。
【0085】
実験例1
アノードの製造は、その粒子が20μmの平均サイズを有する球状黒鉛を用いて実施する。これらの粒子は、機械溶融(ホソカワ,日本)による得られたものである。黒鉛95%を、スチレンブタジエンゴム
(SBR)8%と混合して、水中に溶解する。この混合物を、ドクターブレー
ド法により、銅コレクタ上に施用する。このようにして得られる電極を、真空下、120℃で24時間乾燥させる。この電極を、金属リチウムの反対側に取付け、セルガード(EC−DMC−LIBF
4)タイプの薄膜により隔てる。このようにして得られる電気化学電池は4cm
2の表面をもつ。
【0086】
この電池は、C/12の速度にて0.0〜2.5ボルトでサイクルする。
図5は、第一及び第二のサイクルの間で、それぞれ、82.0%及び96.1%のクーロン効率をもつ電池の最初の2サイクルの電気化学的結果を示す。
【0087】
実験例2
製造されるカソードは、3%ケッチェンブラックで被覆されたLiFePO
4(Phostech Inc.)の粒子を含有する。被
覆加工は、機械溶融(ホソカワ,日本)により実施する。
【0088】
混合物であるLiFePO
4/炭素(ケッチェンブラック)を、水中に溶解させた5%のスチレンブタジエンゴム
(SBR)と混合する。この混合物を、ドクターブレー
ド法により、アルミニウムコレクタ上に施用する。このようにして得られる電極を、真空下、120℃で24時間乾燥させる。この電極を、金属リチウムの反対側に取付け、セルガードタイプの薄膜(EC−PC−DMC−LIBF
4)により隔てる。このようにして得られる電気化学電池は4cm
2の表面をもつ。
【0089】
この電池は、C/24の速度にて2.5〜4.0ボルトでサイクルする。
図6は、第一及び第二のサイクルの間で、それぞれ、90.0%及び99.7%のクーロン効率をもつ電池の最初の2サイクルの電気化学的結果を示す。
【0090】
本発明を具体的な態様により説明してきたが、前記態様に多くの変更及び修飾を施すことができること、本発明は、一般に本発明の原理にしたがっており、本発明の分野において既知となるか又は慣用的である本発明のあらゆる変態を含む、そのような本発明の修飾、使用又は適合を包含することを意図すること、そして、これまでに説明した本質的要素を特許請求の範囲にしたがって適用し得ることは理解すべきである。