(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記シール部材は、弾性体により形成され、オスコネクタにより構成される前記接続部が前記接続孔に接続されたときに開く弁体であることを特徴とする請求項1に記載のキャップ。
【背景技術】
【0002】
従来から、薬液等の液体を医療用のチューブを通して体内へ送るようにした輸液ラインに他の輸液ラインを接続して、メインの輸液ラインを流れる液体に抗がん剤等の他の液体を混注することが行われている。この場合、他の輸液ラインの末端にはルアー等のオスコネクタが設けられ、このオスコネクタをメインの輸液ラインの途中に設けられたメスコネクタに挿し込むことで、他の輸液ラインはメインの輸液ラインに接続される。
【0003】
メインの輸液ラインに他の輸液ラインを接続する際には、他の輸液ラインのチューブ内の空気が患者の体内へ送られることを防止するために、当該接続の前にチューブ内の空気を液体に置換するプライミングが行われる。プライミングには種々の方法があるが、他の輸液ラインの末端に設けられるオスコネクタにプライミング用キャップを接続し、このキャップを通じて液体流路内の空気のみを外部に排出し、液体を液体流路内に保持してプライミングを行うようにした技術が開発されている。
【0004】
このようなキャップとして、例えば特許文献1には、内部容量を備える円筒状の貯蔵装置の一端に、オスコネクタの開口に接続される第1開口部を設けるとともに、他端に気体は透過させるが液体は透過させないフィルタを設けたものが記載されている。このキャップでは、オスコネクタに接続されてチューブ内の空気が接続孔を介して貯蔵装置の内部に流入すると、フィルタを通してこの空気を外部に排出することができる。そして、チューブ内の空気が全て排出され、貯蔵装置内が液体で満たされることによりプライミングが完了する。
【0005】
このようなキャップに接続されるオスコネクタは、液体の不意の流出を防止するために、メスコネクタに接続されたときにのみ開く内部弁を備えた構成のものが用いられ、当該内部弁を開閉するための作動片がオスコネクタに設けられている。一方、従来のキャップの貯蔵装置の外側には軸方向に沿って移動自在にハウジングが設けられ、このハウジングを操作することにより、オスコネクタの作動アームを押し下げて内部弁を開放できるように構成されている。また、オスコネクタは、キャップが取り外されたときに、操作片の押込みが解除されてオスコネクタは内部弁が閉じた状態に戻されるとともに、キャップの貯蔵装置からプライミング後の液体を引き戻すように構成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のキャップでは、プライミングの完了後、キャップを輸液ラインのオスコネクタから取り外すと、貯蔵装置の接続孔が開放された状態となるので、貯蔵装置内に残った液体が接続孔から外部に漏れ出すおそれがある。そのため、プライミング後のキャップを慎重に取り扱う必要があり、その作業は不便であった。
【0008】
本発明は、従来技術が抱えるこのような問題を解決することを課題とするものであり、その目的とするところは、プライミングの完了後、接続部から取り外されたときに液体が外部へ漏れ出すことを防止することができるキャップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のキャップは、液体流路に設けられた接続部に接続される接続孔、該接続孔に連なる液体収容室および該液体収容室に連な
り前記接続孔とは異なる位置に配置される排気用開口を備えるケース体と、気体を透過させ、かつ、液体を透過させない材質で形成され、前記ケース体に装着されて前記排気用開口を覆うフィルタと、を有し、前記液体流路をプライミングする際に用いられるキャップであって、前記ケース体に装着され、前記接続孔を閉塞するとともに、前記接続部を前記接続孔に接続したときに、前記流体流路が前記液体収容室に連通可能に構成されるシール部材を有することを特徴とする。
【0010】
上記構成においては、前記シール部材は、弾性体により形成され、オスコネクタにより構成される前記接続部が前記接続孔に接続されたときに開く弁体であるのが好ましい。
【0011】
上記構成においては、前記シール部材は、針状に形成された前記接続部を刺し込み可能な栓体であるのが好ましい。
【0012】
上記構成においては、前記ケース体に通気孔を備えたカバーが装着され、前記ケース体と前記カバーとの間に前記フィルタが配置されるのが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ケース体に、液体収容室に連なる接続孔を閉塞するとともに、接続部を接続孔に接続したときに流体流路が液体収容室に連通可能に構成されるシール部材を装着することにより、キャップを接続部から取り外したときに、シール部材により液体収容室に連なる接続孔を閉塞することができるので、プライミングの完了後、キャップが接続部から取り外されたときに、液体収容室から接続孔を通って液体が外部へ漏れ出すことを防止することができる。特に、抗がん剤を投与するための液体流路のプライミングに本発明のキャップを用いることで、キャップから抗がん剤が漏れ出すことによる被爆を防止することができる。このように、プライミング完了後には、キャップを接続部から取り外すだけの簡単な手順で、液体収容室から液体を外部に漏出させることなく容易かつ安全にキャップを取り扱う行うことができる。
【0014】
本発明によれば、シール部材を、弾性体により形成され、オスコネクタにより構成される接続部が接続孔に接続されたときに開く弁体とすることにより、接続孔を閉塞するシール部材を簡単な構成として、このキャップのコストを低減することができる。
【0015】
本発明によれば、シール部材を、針状に形成された接続部を刺し込み可能な栓体とすることにより、接続孔を閉塞するシール部材を簡単な構成として、このキャップのコストを低減することができる。
【0016】
本発明によれば、ケース体に通気孔を備えたカバーを装着し、ケース体とカバーとの間でフィルタを配置するようにしたので、フィルタの取り付け構造を簡素化することができる。また、カバーによりフィルタを保護することができるので、フィルタが破れて液体収容室から液体が漏れ出すことを防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ本発明の一実施の形態であるキャップの詳細について例示説明する。
【0019】
本発明の一実施の形態であるキャップ1はプライミング用キャップとも呼ばれるものであり、
図1に示すように、例えば輸液ライン2をプライミングする際に用いられる。
【0020】
この輸液ライン2は、患者に薬液等の液体を投与するメインの輸液ライン(不図示)に接続されて、メインの輸液ラインに抗がん剤を混注するためのものであり、調剤済みの抗がん剤を収容する輸液バッグ3、輸液バッグ3にコネクタ4を介して接続される医療用のチューブ5およびチューブ5の末端に接続されたオスコネクタ6を有している。メインの輸液ラインの途中にはメスコネクタが設けられ、このメスコネクタに輸液ライン2のオスコネクタ6を接続することにより、輸液ライン2から抗がん剤をメインの輸液ラインに混注することができる。なお符号7は輸液ライン2からの抗がん剤を投与するときに開放する固定式のクレンメである。
【0021】
輸液ライン2をメインの輸液ラインに接続する前に、輸液ライン2のチューブ5内の空気が患者の体内へ送られることを防止するために、チューブ5内つまり輸液ライン2の液体流路内の空気を抗がん剤に置換するプライミングが行われる。プライミングは輸液ライン2の液体流路の末端に設けられるオスコネクタ6に本発明のキャップ1を接続することにより、容易かつ安全に行うことができる。
【0022】
図2、
図3に示すように、キャップ1はケース体10を有している。このケース体10は本体部11とこの本体部11の一端に固定されるコネクタ部12とを有している。
【0023】
本体部11は樹脂材料により円筒状に形成され、その一端の開口にコネクタ部12が圧入、接着、融着(溶着)等の固定手段により固定されている。本体部11は樹脂材料に限らず、各種材質で形成することができるが、その内部が視認可能となるように透明な樹脂材料により形成されるのが好ましい。
【0024】
コネクタ部12は樹脂材料により本体部11に固定される大径部分と先端側の小径部分とを有する略円筒状に形成され、その先端側の小径部分の開口は接続孔12aとなっている。つまり、このコネクタ部12は接続孔12aが設けられることによりメスコネクタに構成されている。また、コネクタ部12の小径部分の外周にはオスコネクタ6への固定部分となる雄ねじ12bが一体に設けられている。
【0025】
一方、本体部11の他端には隔壁11aが一体に設けられ、この隔壁11aの軸心には排気孔11bが設けられている。この排気孔11bは隔壁11aの外面に開口しており、この開口が排気用開口13となっている。また、本体部11の他端には隔壁11aよりも大径の筒状に形成された把持部11cが一体に設けられ、把持部11cの外側にはカバー14が圧入、接着、融着(溶着)等の固定手段により固定されている。このカバー14は把持部11cの外径に対応した外径の円板状に形成され、把持部11cに固定されて排気用開口13を覆っている。また、カバー14は複数の通気孔14aを備え、これらの通気孔14aを介して排気用開口13は外部に連通している。また、カバー14の外周部には滑り止めのための凹凸部14bが設けられている。
【0026】
ケース体10の内部にはシール部材として弁体20が設けられている。この弁体20は円板部20aと胴部20bとを有し、これらが一体となった有底筒状に形成されている。この弁体20は、例えばゴム材料や熱可塑性エラストマー等の弾性体により形成することができるが、その内部が視認可能となるように、例えば透明なゴム材料等の弾性体で形成されるのが好ましい。
【0027】
円板部20aはコネクタ部12の接続孔12aの内径に対応した外径を有する円板状に形成されており、接続孔12aの内側(内部)に配置されている。また、円板部20aの中央には表面から裏面にまで達する開閉可能なスリット20cが設けられている。胴部20bは蛇腹の円筒状に形成され、その一端において円板部20aと一体化され、その他端は排気孔11bの縁部において隔壁11aから突出するボス部11dに嵌合している。胴部20bは蛇腹の伸縮により軸方向に弾性変形自在となっており、円板部20aの外面がコネクタ部12の先端面と同一面状となるように当該円板部20aを接続孔12aに向けて付勢している。また、胴部20bの内部は液体収容室21となっており、この液体収容室21はボス部11dを介して排気孔11bつまり排気用開口13に通じている。
【0028】
円板部20aは、自然状態のときにスリット20cが開かれる形状に形成され、接続孔12aに配置された状態においてスリット20cが閉じられるように弾性変形して接続孔12aを閉塞している。一方、円板部20aは、胴部20bを弾性変形させながらケース体10の内部に向けて押し込まれ、接続孔12aから離脱すると、スリット20cを開いて接続孔12aを液体収容室21に連通させる。
【0029】
本体部11の隔壁11aの排気用開口13が開口する外面には、フィルタ22が装着されている。このフィルタ22は、気体を透過させ、且つ液体を透過させない機能を有する材質で膜状に形成され、隔壁11aとカバー14との間に配置されて排気用開口13を覆っている。なお、フィルタ22は、隔壁11aとカバー14との間で挟持固定するようにしてもよい。
【0030】
ここで、フィルタ22としては、その表面が疎水化処理されたもの、または疎水性膜(疎水膜)であるものを用いるのが好ましい。このような疎水性膜の構成材料としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルの共重合体(PFA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等を用いることができる。フィルタ22は、これらの材料を、延伸法、ミクロ相分離法、電子線エッチング法、焼結法、アルゴンプラズマ粒子等の方法で多孔質としたものが好適に用いられる。また、疎水化処理の方法は、特に限定されず、例えば、フィルタ22の表面に疎水性を有する構成材料をコーティングする方法等を用いることもできる。さらに、フィルタ22としては、気体を透過させ、且つ液体を透過させない機能を有していれば上記構成のものに限らず、例えば親水性のものなど他の材質のものを用いることもできる。
【0031】
図4は、
図1に示すオスコネクタ6の詳細を示す斜視図である。
【0032】
オスコネクタ6は円筒状のハウジング30を有し、このハウジング30の基端には輸液バッグ3側から延びるチューブ5の末端が接続されている。ハウジング30の内側には接続部としてのルアー(オスコネクタ)31が設けられ、このルアー31の先端には開口31aが設けられている。また、ハウジング30の内部には図示しない内部弁が設けられ、ハウジング30の内周面とルアー31の外周面との間には内部弁を開閉操作するための一対の操作片32が設けられている。操作片32が
図4に示す初期位置から軸方向に沿ってハウジング30の内部に向けて押し込まれると、内部弁が開いてハウジング30に接続されたチューブ5がルアー31の開口31aに連通される。反対に、押込みが解除されて操作片32が初期位置に復帰すると内部弁は閉じられる。
【0033】
図5は、
図2に示すキャップ1のオスコネクタ6に接続された状態の断面図である。
【0034】
キャップ1は、コネクタ部12に設けられた雄ねじ12bをオスコネクタ6のハウジング30の内周面に設けられた雌ねじ30bにねじ結合させることにより、オスコネクタ6に接続される。このとき、キャップ1の把持部11cを持ってキャップ1をハウジング30に対して回転させることで、そのねじ込み作業を容易に行うことができる。
【0035】
なお、キャップ1の接続孔12a、雄ねじ12bの形状およびオスコネクタ6のルアー31の形状、雌ねじ30bが設けられるハウジング30の形状等は、国際標準化機構による規格番号ISO 594-1、ISO 594-2等により規定された形状とされている。
【0036】
キャップ1がオスコネクタ6に固定されると、ルアー31がコネクタ部12の接続孔12aに挿し込まれ、つまり接続孔12aに接続される。ルアー31が接続孔12aに接続されると、弁体20の円板部20aがルアー31によりケース体10の内部に向けて押し込まれて接続孔12aから離脱して接続孔12aが開かれる。また、円板部20aが接続孔12aから離脱すると、円板部20aのスリット20cが開かれる。したがって、接続孔12aに接続されたルアー31の開口31aはスリット20cを介して液体収容室21に連通される。
【0037】
また、キャップ1がオスコネクタ6に固定されると、コネクタ部12の先端により押されて操作片32がハウジング30の内部に押し込まれ、オスコネクタ6の内部弁が開かれる。内部弁が開かれると、チューブ5が開口31aと連通し、チューブ5内の空気が輸液バッグ3からの液体により押されてルアー31の開口31aから弁体20のスリット20cを介して液体収容室21に流入する。つまり、ルアー31が接続孔12aに接続されると、チューブ5つまり流体流路が液体収容室21に連通される。液体収容室21に流入した空気は排気孔11bを通って排気用開口13に達し、フィルタ22を透過するとともにカバー14の通気孔14aを通って外部に排出される。
【0038】
一方、チューブ5内の空気が全てキャップ1に流出すると、チューブ5内の液体がルアー31の開口31aから弁体20のスリット20cを介して液体収容室21に流入する。液体収容室21に流入した液体は排気孔11bを通って排気用開口13に達するがフィルタ22を透過することができず、液体収容室21の内部に保持される。
【0039】
液体収容室21を構成する弁体20の胴部20bおよびケース体10の本体部11はともに透明な材料で形成されているので、液体収容室21が液体のみで満たされていることを外部から視認することができる。そして、液体収容室21が液体のみで満たされていることを視認することにより、輸液ライン2の空気が全て外部に排出されてプライミングが完了したことを確認することができる。
【0040】
プライミングが完了すると、キャップ1はオスコネクタ6から取り外される。キャップ1がオスコネクタ6から取り外されると、
図3に示すように、弁体20の円板部20aが胴部20bの弾性力により接続孔12aの内部に向けて押し戻され、初期位置に復帰する。円板部20aが初期位置に復帰すると、接続孔12aが円板部20aにより閉塞され、また、円板部20aのスリット20cが閉じられる。したがって、接続孔12aは弁体20により閉塞された状態となり、液体収容室21が閉じた状態となってルアー31から取り外された後にキャップ1の液体収容室21から外部に液体が漏れ出すことがない。
【0041】
このように、本発明のキャップ1では、ケース体10に弁体20を設け、キャップ1をオスコネクタ6から取り外したときに弁体20により接続孔12aを閉塞するようにしたので、プライミングの完了後、キャップ1をオスコネクタ6から取り外したときに、液体収容室21から液体が外部へ漏れ出すことを確実に防止することができる。これにより、キャップ1をオスコネクタ6に接続し、液体流路に液体を流し、プライミング完了後にキャップ1をオスコネクタ6から取り外すだけの簡単な手順で、抗がん剤等の薬液を外部に漏出させることなく容易かつ安全に輸液ライン2をプライミングすることができる。
【0042】
また、弾性体により形成された弁体20により接続孔12aを閉塞する構成としたので、簡単な構成で液漏れを防止することを可能として、このキャップ1のコストを低減することができる。
【0043】
さらに、本実施の形態においては、ケース体10とカバー14との間にフィルタ22を配置するようにしたので、フィルタ22の取り付け構造を簡素化することができる。また、カバー14により覆われてフィルタ22が保護されるので、フィルタ22が不意に異物等に触れて破れを生じ、そこから液体が漏れ出すことを防止して、このキャップ1の安全性を高めることができる。
【0044】
図6は
図2に示すキャップの変形例を示す斜視図であり、
図7は
図6に示すキャップの断面図、
図8は
図6に示すキャップのオスコネクタに接続された状態の断面図である。なお、
図6〜
図8においては前述した部材に対応する部材には同一の符号を付してある。
【0045】
図2に示すキャップ1では、シール部材として、円板部20aと胴部20bとを備えた有底筒状の弁体20が用いられている。これに対して、
図6に示す変形例においては、シール部材として円板状の弁体40を用いるようにしている。
【0046】
この弁体40は、例えばゴム材料や熱可塑性エラストマー等の弾性体により円板状に形成された弁本体部40aと、弁本体部40aの外周に全周に亘って一体に設けられた被保持部40bとを備えている。コネクタ部12の内側にはコネクタ部12よりも小径の円筒状の内挿体41が嵌め込まれ、この内挿体41とコネクタ部12の端面との間に被保持部40bが挟み込まれて、弁体40はコネクタ部12の内側に固定されている。
【0047】
なお、内挿体41は本体部11と一体に形成した構成とすることもできる。
【0048】
この変形例では、コネクタ部12の内側の接続孔12aに弁本体部40aが配置され、この弁本体部40aにより接続孔12aが閉塞されている。弁本体部40aの外部を向く軸方向の一端面は押込み面40cとなっており、この押込み面40cはコネクタ部12の先端面と同一面状となって接続孔12aから外部に露出している。弁本体部40aの押込み面40cには、ルアー31の挿入用の直線状のスリット40dが設けられている。
【0049】
また、この変形例では、本体部11には排気孔が設けられず、本体部11の内部に設けられる液体収容室21の一端がそのまま排気用開口13となっている。この排気用開口13は本体部11のコネクタ部12とは反対側の端面に開口し、本体部11とカバー14との間に挟持固定されたフィルタ22により覆われている。
【0050】
図7に示すように、キャップ1がオスコネクタ6に接続されていない状態では、接続孔12aは弁本体部40aにより閉塞されている。
【0051】
一方、
図8に示すように、キャップ1がオスコネクタ6に固定され、ルアー31がコネクタ部12の接続孔12aに挿し込まれると、弁体40がルアー31により押されてコネクタ部12の内側へ向けて弾性変形するとともにスリット40dが押し開かれてルアー31の開口31aがスリット40dを介して液体収容室21に連通される。
【0052】
したがって、キャップ1がオスコネクタ6に接続され、オスコネクタ6の内部弁が開かれると、チューブ5内の空気が輸液バッグ3からの液体により押されてルアー31の開口31aから弁体40のスリット40dを介して液体収容室21に流入し、液体収容室21に流入した空気が排気用開口13からフィルタ22を透過して外部に排出される。そして、チューブ5内の空気が全てキャップ1に流入すると、チューブ5内の液体がルアー31の開口31aから弁体40のスリット40dを介して液体収容室21に流入する。そして、輸液ライン2の空気がキャップ1により全て外部に排出されるとプライミングが完了する。
【0053】
プライミングが完了し、キャップ1がオスコネクタ6から取り外されると、
図7に示すように、弁本体部40aが弾性力により接続孔12aを閉塞する初期形状に復帰し、弁体40により接続孔12aが閉塞される。したがって、液体収容室21は弁体40により閉塞された状態となり、オスコネクタ6から取り外された後にキャップ1の液体収容室21から外部に液体が漏れ出すことがない。
【0054】
図9は
図7に示すキャップの変形例であってシール部材として栓体を用いた場合の断面図である。
図9においても前述した部材に対応する部材には同一の符号を付してある。
【0055】
図7に示す変形例では、接続孔12aを閉塞するシール部材として円板状の弁体40を用いるようにしているが、
図9に示す変形例では、シール部材として栓体50を用いるようにしている。この栓体50は天然ゴムやイソプレンゴム等の各種合成ゴムにより円板状に形成されたゴム栓となっており、
図7に示す弁体40と同様の構造でコネクタ部12の内部に固定されて接続孔12aを閉塞している。
【0056】
一方、この栓体50に対応する接続部としては針状のものが用いられる。図示する場合では、接続部として輸液ライン2のチューブ5の末端には接続用の針51が設けられる。この針51としては、例えば金属等により形成され、内部に液体流路に連なる流路を備えるとともに先端に流路の開口を備えたものが用いられる。
【0057】
栓体50は、上記針51が刺し込み可能な硬度ないし厚みに形成され、栓体50に針51を刺して貫通させることにより、輸液ライン2の液体流路はキャップ1の液体収容室21に接続される。そして、針51を介してチューブ5を液体収容室21に接続することで、輸液ライン2をプライミングすることができる。
【0058】
なお、栓体50としては、天然ゴムやイソプレンゴム等の各種合成ゴムにより形成されたゴム栓に限らず、エラストマーや樹脂等の他の材質により形成されたものを用いることもできる。
【0059】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0060】
例えば、前記実施の形態においては、排気用開口13は液体収容室21の一端に円形に開口するものとされ、フィルタ22として排気用開口13を覆う円形の膜状のものが用いられているが、これに限らず、液体収容室21に連通する排気用開口13と、この排気用開口13を覆うフィルタ22は、液体収容室21の内部の気体を外部に透過させ、且つ液体を透過させないように構成されていれば種々の構成とすることができる。例えば、液体収容室21の径方向外側の全周または一部を開口させて排気用開口13とし、その外周を円筒状またはU字形状のフィルタ22で覆う構成とすることもできる。
【0061】
また、前記実施の形態においては、ケース体10は直線状に形成され、その一端に接続孔12a、他端に排気用開口13が設けられるが、例えばケース体10をL字形状に形成し、接続孔12aと排気用開口13の方向を直行させるなど、接続孔12aと排気用開口13の向きや大きさ等は種々変更することができる。
【0062】
また、前記実施の形態においては、このキャップ1を用いて、メインの輸液ラインに抗がん剤を混注する輸液ライン2をプライミングする場合について説明したが、このキャップ1は、液体流路にルアー31や接続用の針51等の接続部を備えたものであれば、例えばシリンジの先端に設けられたオスコネクタに接続されてシリンジ内をプライミングする場合やメインの輸液ラインをプライミングする場合等にも用いることができる。