(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記破損判定部が、前記反力検出部により検出された反力の変化状態が、予め設定された設定変化状態に対して設定状態以上異なった場合に、電子回路部品が破損したと判定する反力変化状態依拠判定部を有する請求項1ないし3のいずれかに記載の電子回路部品実装システム。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を、図を参照しつつ説明する。なお、本発明は、下記実施形態の他、当業者の知識に基づいて種々の変更を施した態様で実施することができる。
【0011】
図1に電子回路部品実装システムの主要部である電子回路部品実装機10を示す。以下それぞれ実装システム,実装機10と略称する。実装機10は、実装機本体12と、その実装機本体12に支持された部品供給装置としてのテープフィーダ14およびトレイフィーダ16とを含む。テープフィーダ14は、それぞれ1種類ずつの部品を取り出し可能に保持した保持テープをリールから引き出して1ピッチずつ送り、所定の供給位置において供給するものであり、支持台18にX軸方向に並べて設置される。トレイフィーダ16は、トレイに部品を平面状に並べて位置決め支持するものであり、支持台20にやはりX軸方向に並べて設置される。
【0012】
実装機本体12上には、さらに、回路基板,電子回路等の実装対象材22をX軸方向に搬送する対象材コンベヤ24と、その搬送された実装対象材22を位置決めして保持する対象材保持装置26と、テープフィーダ14あるいはトレイフィーダ16から部品を受け取り、対象材保持装置26に保持された実装対象材22に実装する実装装置28とが設けられている。実装装置28は、実装ヘッド30およびそれをX軸およびY軸により規定される水平面内の任意の位置へ移動させ得るヘッド移動装置32を備えている。ヘッド移動装置32は、X軸駆動装置34により実装機本体12上をX軸軸方向に移動させられるXスライド36と、そのXスライド36上においてY軸駆動装置38によりY軸方向に移動させられるYスライド40とを含んでおり、実装ヘッド30はそのYスライド40に着脱可能とされている。
【0013】
実装ヘッド30の一例を
図2に示す。実装ヘッド30は、Yスライド40に着脱されるヘッド本体50を備え、そのヘッド本体50が、回転昇降軸52を、その回転昇降軸52の軸線に平行な方向の昇降とその軸線まわりの回転とを許容する状態で保持する第1部54と、第1リニアモータ58を固定的に保持する第2部60とを備えている。本実施形態においては、第1部54と第2部60とは互いに固定されている。回転昇降軸52は下端部に部品保持具としての吸着ノズル62を保持している。回転昇降軸52は、
図3(a)に拡大して示すように、昇降軸本体66およびそれに着脱可能なノズル保持部68を備えており、ノズル保持部68は吸着ノズル62を軸方向に相対移動可能かつ相対回転不能に保持して昇降軸本体66に着脱される。ノズル保持部68は昇降軸本体66に装着された後は回転昇降軸52の一部として機能する。
【0014】
昇降軸本体66は、下端部に断面形状が円形の嵌合穴70を備え、ノズル保持部68は円筒状のノズル保持部材74を備え、そのノズル保持部材74が外周面において嵌合穴70に相対回転可能かつ軸方向に相対移動可能に嵌合される一方、内周面において吸着ノズル62の軸部76と軸方向に相対移動可能に嵌合されている。ノズル保持部材74にはそれを直径方向に貫通するピン78が固定されている。ピン78は中央部において、吸着ノズル62の軸部76にそれの軸方向に長く形成された長穴80を摺動可能に貫通する一方、両端部がノズル保持部材74の外周面から突出し、昇降軸本体66の下端部に形成された2つの切欠82を摺動可能に貫通して、昇降軸本体66の外周面から突出している。各切欠82は、
図3(b)に示すように、昇降軸本体66の下端面から上向きに延びた後、直角に曲がって周方向に延び、さらにその先端から下方へ短く垂下した形状を有し、ノズル保持部材74が嵌合穴70の下端開口から昇降軸本体66に嵌合され、一定角度回転させられた後、下降させられるのに伴って、ピン78の両端部が切欠82と係合し、最終的には、切欠82の短く垂下したピン受け部84に受けられる。この状態では、ピン78が昇降軸本体66,ノズル保持部材74および吸着ノズル62の軸部76を貫通して、それら三者の相対回転を防止する状態となる。したがって、回転昇降軸52が回転させられれば、吸着ノズル62も共に回転させられる。
【0015】
昇降軸本体66の中心部に負圧通路90が形成され、嵌合穴70と連通している。吸着ノズル62の軸部76がノズル保持部材74を貫通させられた後、圧縮コイルスプリング92が嵌合されるとともに、軸部76の上端にはフランジ部材94が固着されている。上記のように、ノズル保持部材74が嵌合穴70に嵌合され、ピン78がピン受け部84に受けられた状態では、フランジ部材94が、嵌合穴70と負圧通路90との境界に形成された段付面96から離間する一方、吸着ノズル62の段付面98がノズル保持部材74の下端面100に押付けられた状態に保たれる。この下端面100が、吸着ノズル62の昇降軸本体66に対する相対的な上昇限度を規定するストッパを構成しているのである。上記のように、負圧通路90が嵌合穴70と連通しているため、負圧通路90に負圧が供給されれば、吸着ノズル62およびノズル保持部材74にそれらを上方に引き上げる力が作用するが、この力に基づくピン78のピン受け部84からの浮き上がりを防止するために、ロック機構が設けられている。昇降軸本体66の外周面にロックスリーブ102が摺動可能に嵌合され、圧縮コイルスプリング104により下方に付勢されてピン78をピン受け部84に押し付けているのである。回転昇降軸52内の負圧通路90は吸着ノズル62内の負圧通路106に連通している。吸着ノズル62は、
図3(a)に示すように、軸方向の中間部に大径部110を備えるとともに、その大径部110から前記軸部76とは反対向きに延び出す小径部112を備え、その小径部112にノズルスリーブ114が摺動可能に嵌合されている。ノズルスリーブ114は圧縮コイルスプリング116によって吸着ノズル62の基端側へ付勢され、常には段付面118に当接させられている。
【0016】
図2に示すように、前記第1リニアモータ58は、第1昇降部材としての回転昇降軸52と第2昇降駆動装置としての第2リニアモータ120とを共に昇降させる第1昇降駆動装置として機能する。そのために、第1リニアモータ58には第2昇降部材としての昇降駆動部材122が取り付けられている。昇降駆動部材122は、ヘッド本体50の第1部54の外側を、回転昇降軸52に沿って上下方向に延びており、中間部に第1係合部124を有し、下端部に第2リニアモータ120を保持している。その第2リニアモータ120が第2係合部126(水平軸線まわりに回転可能なローラにより構成されている)を有している。第1係合部124は回転昇降軸52の上端近傍に設けられたフランジ128に、第2係合部126はノズルスリーブ114のフランジ130に、それぞれ回転昇降軸52および吸着ノズル62の回転を許容する状態で係合している。ヘッド本体50の第2部60にはガイド132が取り付けられ、昇降駆動部材122を案内している。
【0017】
回転昇降軸52のフランジ128の上方にはギヤ140が設けられ、ヘッド本体50に取り付けられた回転駆動源たる電動モータ142の回転軸に固定のギヤ144と噛み合わされている。ギヤ140,144は回転昇降軸52の昇降を許容するとともに、電動モータ142の回転を回転昇降軸52に伝達する。電動モータ142,ギヤ140,144によって回転昇降軸52の回転駆動装置が構成されているのであり、回転昇降軸52の回転はピン受け部84とピン78との係合によりノズル保持部材74に伝達されるとともに、ピン78と長穴80との係合により吸着ノズル62に伝達される。
【0018】
以上のように構成された実装ヘッド30は、前記ヘッド移動装置32により、X−Y平面に沿って前記テープフィーダ14あるいはトレイフィーダ16の上方と、前記対象材保持装置26の上方とへ移動させられるとともに、前記第1リニアモータ58が昇降駆動部材122を下降させ、回転昇降軸52と第2リニアモータ120とを下降させる。また、第2リニアモータ120がノズルスリーブ114および圧縮コイルスプリング116を介して吸着ノズル62を回転昇降軸52に対して相対的に下降させる。さらに、それと並行して図示を省略する負圧制御弁により負圧通路90の負圧が制御され、吸着ノズル62による部品146の保持および解放が制御される。また、必要に応じて電動モータ142が作動させられて、吸着ノズル62に保持された部品の回転姿勢が修正ないし変更される。以上の作動における第1リニアモータ58,負圧制御弁,電動モータ142等の制御は通常の実装ヘッドと同様であるため説明を省略し、以下、特殊である第2リニアモータ120の制御を説明する。
【0019】
第2リニアモータ120は、
図4に示す制御系150によって制御される。制御系150は、実装ヘッド30を含む実装装置28全体を制御するコントローラ152の一部と、駆動回路154と、第2リニアモータ120に付属するエンコーダ156とにより構成されている。コントローラ152は第2リニアモータ120の位置を指令し、駆動回路154はこの指令された位置とエンコーダ156の示す位置とを一致させるために必要な電流を第2リニアモータ120に供給する。その際、第2リニアモータ120が受ける反力は、当初は圧縮コイルスプリング92の弾性力であるが、吸着ノズル62が部品供給装置に保持された部品146に当接し、あるいは吸着ノズル62に保持された部品146が対象材保持装置26に保持された実装対象材22に当接して圧縮コイルスプリング116が圧縮されるようになった後は、圧縮コイルスプリング116の弾性力を受けるようになる。すなわち、圧縮コイルスプリング116のセット荷重が圧縮コイルスプリング92の弾性力よりは大きくされており、上記当接が発生するまではノズルスリーブ114が吸着ノズル62と一体的に下降し、当接後に圧縮コイルスプリング116が弾性変形を開始して当接力を緩和するようにされているのである。この圧縮コイルスプリング116のセット荷重は、それ単独では部品146を破損させることがなく、かつ、部品146の実装対象材22への押付力が不足することがない大きさとされているが、当接時には、さらに吸着ノズル62とノズルスリーブ114との間の摩擦力とともに、吸着ノズル62の慣性力が付加的に作用し、この慣性力が過大であると脆弱な部品146を破損する恐れがある。換言すれば、第2リニアモータ120による吸着ノズル62の下降速度が十分に低ければ、圧縮コイルスプリング116のセット荷重により部品146が破損させられることはないが、実装能率を向上させるために吸着ノズル62の下降速度が高められると、上記当接時における吸着ノズル62の慣性力が増し、部品146を破損させる恐れがあるのである。
【0020】
破損は一重の回路基板に部品146が実装される平面実装基板の製造時にも起こり得るが、特に、製造されるのが部品内蔵基板や積層基板である場合には、部品146が抵抗やコンデンサのような受動部品である場合も、ICのような能動部品である場合も薄形とされ、かつ、電気的性能確保のために脆性材料製とされることが多く、破損し易い。なお、部品内蔵基板や積層基板の製造時には、基板が基板上に実装されることとなるため、実装対象材22と言い、部品146と言っても、後者が吸着ノズル62により保持されて前者上に実装されるということであって、部品146と実装対象材22との間に実質的な違いがない場合が多い。
【0021】
本実装ヘッド30は、上記のように薄形で脆性材料製の部品146であっても、破損を回避しつつ、しかも能率良く実装作業を行うために工夫されたものである。すなわち、吸着ノズル62を下降させる際、まず第1リニアモータ58が作動させられ、昇降駆動部材122を下降させて回転昇降軸52と第2リニアモータ120とを下降させる。第1リニアモータ58は、主として吸着ノズル62の昇降距離が大きい場合にその要求を満たすために作動させられるものであり、少なくとも部品146の吸着ノズル62あるいは実装対象材22との当接前には、第1リニアモータ58の作動が停止させられ、第2リニアモータ120の作動により吸着ノズル62が圧縮コイルスプリング92の付勢力に抗してストッパたる下端面100から設定距離離間させられる。
図5における巡航期間がこの状態で吸着ノズル62が下降させられる期間である。
【0022】
やがて、吸着ノズル62が部品供給装置に支持された部品146に当接し、あるいは吸着ノズル62に保持された部品146が対象材保持装置26に支持された実装対象材22に当接する。仮に、第2リニアモータ120および制御系150が設けられておらず、従来の実装ヘッドにおけるようにクッションとして機能する圧縮コイルスプリング116が設けられているのみとすれば、上記当接時に当接力、すなわち吸着ノズル62に対する反力が急増し、部品146が破損する可能性があり、また、制御系150の制御が不十分である場合には、第2リニアモータ120への反力が
図5に二点鎖線で例示するように大きく変動し、やはり部品146が破損する可能性があるのであるが、本実施形態においては、駆動回路154をはじめとする制御系150が高周波制御の可能な系、すなわち、上記当接に起因して反力が急増し、当接力が許容当接力を超えて過大となるまでの間に少なくとも2サイクルの制御サイクルが実行可能である高周波制御系とされており、かつ、駆動回路154に反力検出部158が設けられていて、上記当接に起因して反力検出部158の検出反力が急増しはじめるやいなや、制御系150は反力を目標反力に制御するために第2リニアモータ120への供給電流の制御を開始する。その結果、反力の変動が実線で示すように小さく抑制されるのであり、上記当接時における当接力が部品146を破損させることのない大きさに抑制される。制御系150の上記のような電流制御を行う部分が当接衝撃緩和部を構成しているのである。
【0023】
上記反力検出部158の主体部として、例えば、吸着ノズル62と第2リニアモータ120との間に設けたロードセルを採用することが可能であり、本実施形態においては、
図2に示すように、第2係合部126と第2リニアモータ120との間に設けられたロードセル159が採用されている。駆動回路154には、上記反力検出部158と共に破損検知装置としての破損検知部160が設けられている。反力検出部158により検出される検出反力は、上記のように、吸着ノズル62の部品146への当接、あるいは吸着ノズル62に保持された部品146の実装対象材22への当接に起因して第2リニアモータ120に対する反力が急増するのに応じて急増するのであるが、この急増部を、拡大するとともに、時間軸である横軸を反力軸である縦軸より大きく引き延ばして示せば
図6のようになり、やがて目標反力に制御されるのであるが、もしその途中で
図7に例示するように部品146が破損すれば、
図6に二点鎖線で例示するように検出反力が急減する。本実施形態においては、破損検知部160がこの検出反力の急減を検知することにより部品146の破損を検知するものとされている。検出反力の急減量が設定値より大きくなった場合に、反力の急減が検知されるようになっているのである。なお、
図6において、○印で示すのが駆動電流の制御時点を示し、×印で示すのが部品146の破損時点を示している。また、
図7において符号166はクリーム状はんだを示す。
【0024】
上記反力の「急減量」の取得は、
図6に縦軸に平行な複数の細線で示す反力の検出時点の互いに隣接する2時点における検出反力の差(
図6にΔF
1で示す)を求めることによって行うことや、急減が発生するまでの検出反力の増加傾向に基づいて予測される次時点における予想反力と実際に検出された同時点における検出反力との差(
図6にΔF
2で示す)を求めることによって行うことができる。前者により取得される急減量が設定値以上の場合に破損が発生したと判定する判定部は、「反力検出部により検出された反力が増加中に設定量以上急減した場合に部品146が破損したと判定する反力急減量依拠判定部」の一種と考えることができ、後者により取得された急減量が設定値以上の場合に破損が発生したと判定する判定部は、「反力検出部により検出された反力の変化状態が、予め設定された設定変化状態に対して設定状態以上異なった場合に、部品が破損したと判定する反力変化状態依拠判定部」の一種と考えることができる。なお、上記「急減が発生するまでの検出反力の増加傾向」は、実際に破損が発生した実装時における破損発生前の2時点以上の反力に基づいて取得された増加勾配でも、破損が発生しなかった過去複数回の実装時における検出反力の増加勾配の平均値でもよい。
【0025】
前記コントローラ152には、上記破損検知部160により部品の破損が検知された場合にその事実を報知する破損報知部162と、実装機10の実装動作を停止させる実装動作停止部164とが設けられている。破損報知部162は、図示を省略するディスプレイに破損が生じた旨の表示を行わせる部分である。実装動作停止部164は、ヘッド移動装置32,第1リニアモータ58,第2リニアモータ120等、実装動作を行う部分の作動を停止させるものであり、コントローラ152,ディスプレイ等の作動は停止させられない。実装動作を行う部分の作動が停止させられれば、オペレータはなんらかの異常が発生したことを知ることができるため、実装動作停止部164を破損報知部として利用することも可能であるが、実装装置28の異常は部品146の破損以外にも種々あるため、作動停止と共にその原因が部品146の破損にあることが報知されることが望ましい。
【0026】
コントローラ152には、さらに、反力検出部158および破損検知部160を利用して、吸着ノズル62の部品146への当接時、あるいは吸着ノズル62に保持された部品146の実装対象材22への当接時における適正動作パラメータを決定するための適正動作パラメータ決定部168が設けられている。この適正動作パラメータ決定部168は、各種類の部品供給装置(本実施形態においてはテープフィーダ14およびトレイフィーダ16)と各種類の部品146との組合せ、ならびに各種類の対象材保持装置26および実装対象材22と各種類の部品146との組合せについて、
図8のフローチャートで表される適正動作パラメータ決定ルーチンの実行により適正動作パラメータを決定する。なお、上記実装対象材22には、それにクリーム状はんだ166や接着剤が塗布されている場合には、それら塗布物も含まれるものとする。塗布物も部品146の破損に影響を与えるからである。
【0027】
適正動作パラメータ決定ルーチンの実行時にはまず、S1において、適正動作パラメータを決定すべき上記組合せのいずれかが入力され、S2において、その組合せに含まれる部品146についての予想適正当接力F
0が入力される。この予想適正当接力F
0としては、実装システムのユーザにおける過去の経験等に基づいて予想される値が使用されるが、それがない場合には部品メーカにより推奨されている推奨当接力の値が使用される。続いて、S3において予想適正動作パラメータの一種として、吸着ノズル62の予想適正下降速度V
0が決定される。当接力は一般に吸着ノズル62の下降速度が小さいほど小さくなるものであるため、本実施形態においては、S2において入力された予想適正当接力F
0が小さいほど予想適正下降速度V
0が小さい値に決定される。例えば、式V
0=a・F
0によって演算されるのである。ここにおいて、aは比例係数であるが、部品146が同じであっても、それを保持している部品供給装置の支持面や、部品146が当接させられる実装対象材22自体の剛性やそれを保持している対象材保持装置
26の支持面の剛性が高いほど小さい下降速度で大きな当接力が発生するため、比例定数aはそれら剛性に応じて変えられることが望ましい。部品供給装置や対象材保持装置26は小さいながらも弾性変形能力を有しており、また、実装対象材22は相当な変形能力(弾性,塑性の少なくとも一方の変形能力)を有していることが多い(クリーム状はんだ166や接着剤が塗布されている場合は特に)ため、それら弾性,塑性の変形能力が当接力を低減させるクッションの機能を果たすからである。
【0028】
続いて、S4において式V
i=b×V
0により当初下降速度V
iが演算される。ここにおいて、bは1より小さい正数に予め定められている係数であり、例えば、当初下降速度V
iを予想適正下降速度V
0の1/2としたい場合は0.5に定められる。次に、S5において、式ΔV=(V
0−V
i)/sにより、下降速度増分
ΔVが演算される。符号sは、当初下降速度V
iから予想適正下降速度V
0まで段階的に下降速度Vを増加させる際の段階数を表し、予め定められている。S6において正整数Nが1に初期化された後、S7において1回の試行が行われる。S1において入力された組合せにテープフィーダ14またはトレイフィーダ16が含まれている場合は、それらに支持された部品146に吸着ノズル62を当接させることが、また、上記組合せに実装対象材22が含まれている場合は、吸着ノズル62に保持させた部品146を対象材保持装置26に保持された実装対象材22に当接させることが、それぞれの時点における下降速度Vで(最初はS4において決定された当初下降速度V
iで)1回実行されるのである。その試行後にS8において破損が検知されたか否かが判定されるが、当初下降速度V
iは十分小さい値に設定されているため部品146が破損することはなく、判定はNOであって、S9において下降速度VがΔVだけ増加させられ、再びS7が実行される。以後、S7〜S9が繰り返し実行され、やがてS8の判定がYESとなれば、S10においてその時点における下降速度が破損検知時動作パラメータの一種たる破損検知時下降速度V
bとして、破損検知時下降速度メモリに記憶される。この破損検知時下降速度V
bは、破損検知装置により部品146の破損が検知された場合と破損が検知されない場合との境界の動作パラメータとしての境界下降速度の一種であるが、この破損検知時下降速度V
bとその直前の破損が検知されなかった場合の下降速度との中間値を境界下降速度とすることも可能である。
【0029】
上記S10において破損検知時下降速度メモリに記憶された1つの破損検知時下降速度V
bに基づいて適正下降速度が決定されるようにすることも可能であるが、本実施形態においては、確実を期すために、S7ないしS9がN
0回実行される。S11において正整数Nが1増加させられ、S13において下降速度Vが初期下降速度V
iに戻されて、正整数NがN
0に達してS12の判定がYESになるまで、S7ないしS13が繰り返し実行されるのである。その結果、S12の判定がYESになったときにはN
0個の破損検知時下降速度V
bが破損検知時下降速度メモリに記憶されており、S14においてこれらN
0涸の破損検知時下降速度に基づいて適正下降速度が決定される。この決定は種々の方法で行うことが可能であるが、本実施形態においては、N
0涸の破損検知時下降速度V
bの平均値を安全率cで割ることにより適正下降速度が決定される。
【0030】
上記安全率cは勿論1より大きい値であるが、N
0涸の破損検知時下降速度V
bのばらつきが大きいほど大きい値に設定されることが望ましい。
また、上記適正下降速度が、上記N
0涸の破損検知時下降速度V
bのいずれよりも小さい値に決定されるようにすることも、最も小さい破損検知時下降速度V
bよりは大きい値に決定されるようにすることも可能である。前者の場合には、後に実際の電子回路の生産中に部品146の破損が生じることを良好に回避し得る反面、生産能率が過剰に低下させられてしまう可能性があり、後者の場合は、逆に生産能率の過剰な低下は回避し得る反面、実際の電子回路の生産中に部品146の破損が生じる可能性がある。部品146が破損した場合の損失の大きさ等に基づき、実際上いずれが望ましいかを考慮して、正整数N
0(破損検知時下降速度V
bの取得数)および安全率cが決定されるべきである。
【0031】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、第1リニアモータ58,第2リニアモータ120,昇降駆動部材122等により、部品保持具たる吸着ノズル62を昇降させる昇降装置が構成されており、適正動作パラメータ決定ルーチンのS7ないしS10を実行する部分、あるいはS6ないしS13を実行する部分により、境界動作パラメータとしての境界下降速度を取得する境界下降速度取得部が構成されている。また、S14を実行する部分により、境界下降速度取得部により取得された境界下降速度に基づいて適正動作パラメータの一種である適正下降速度を決定する適正下降速度決定部が構成されている。
【0032】
上記実施形態においては、第2リニアモータ120と吸着ノズル62との間に圧縮コイルスプリング116が設けられ、その圧縮コイルスプリング116のセット荷重と弾性係数とが適正な大きさとされることにより、第2リニアモータ120による吸着ノズル62の下降速度が適正に設定されれば、部品146の破損を防止し得るようにされてたが、
図9に例示するように、第2リニアモータ120と吸着ノズル62との間の圧縮コイルスプリングを省略することも可能である。その場合は、第2リニアモータ120の第2係合部126は吸着ノズル62に直接、例えば吸着ノズル62の一部としてのフランジ130に係合させられる。
【0033】
本実施形態においては、部品供給装置に支持された部品146への吸着ノズル62の当接、あるいは吸着ノズル62に保持された部品146の対象材保持装置26に支持された実装対象材22への当接が検出されるやいなや、吸着ノズル62の下降制御から上昇制御への転換が行われる。そして、吸着ノズル62の下降速度が種々に変更されつつ上記当接が繰り返し試行され、部品146の破損が検知された場合と検知されない場合との境界の下降速度である境界下降速度が取得される。本実施形態にいても吸着ノズル62の下降速度が、部品146の破損を回避しつつ能率良く回路基板の製造を行うために制御されるべき動作パラメータとされるのである。
ただし、上記当接が検出されるためには、吸着ノズル62に対する反力の増分が設定増分を超えたことが検出されることが必要であり、この設定増分は動作パラメータの一種と考えることもでき、そのように考えれば、本実施形態においては吸着ノズル62の適正下降速度と反力の設定増分との2つが適正動作パラメータであることになる。
【0034】
以上説明した実施形態においては、第2リニアモータ120への反力を検出するためにロードセル159が用いられていたが、第2リニアモータ120の作動をコントローラ152からの指示に従わせる制御が駆動回路154により行われている場合に、第2リニアモータ120への反力が増大すれば、第2リニアモータ120の駆動電流が増大させられるため、この駆動電流に基づいて第2リニアモータ120への反力が検出されるようにすることも可能である。そして、この駆動電流の増減は駆動回路154によって行われ、その駆動電流の増加も駆動回路154自体において検出されるようにすることが可能であるため、第2リニアモータ120への反力の急増に基づく部品146の吸着ノズル62あるいは実装対象材22との当接を遅れ少なく検出し、第2リニアモータ120による当接力の制御も遅れ少なく行うことができる利点がある。
本実施形態においては、第2リニアモータ120の駆動電流が、部品146の破損を回避しつつ能率良く回路基板の製造を行うために制御されるべき動作パラメータの少なくとも1つであり、当接を検出し、吸着ノズル62の下降制御から上昇制御へ転換すべき駆動電流である適正駆動電流が適正動作パラメータであることとなる。
【0035】
また、以上説明した実施形態においては、実装ヘッド30が部品保持具たる吸着ノズル62を1個備え、ヘッド本体50の第1部54と第2部60とが互いに固定されていたが、吸着ノズル62を複数個備え、第1部と第2部とが相対移動可能な実装ヘッドとすることも可能である。例えば、実装ヘッド178を
図10に示すように、ヘッド本体180を、互いに相対移動可能な2部分、すなわち、一軸線まわりに回転可能な第1部たるロータ182と、そのロータ182を回転可能に保持する第2部たるYスライド184とから成るものとするのである。
回転昇降軸52はロータ182の回転軸線を中心とする一円周上の等角度間隔の複数の位置、図示の例では6つの位置に、それぞれ回転軸線に平行な方向に摺動可能かつ自転可能に設けられている。ロータ182はロータ回転駆動モータ190により回転させられる。また、ロータ182の外周面には、一体のギヤ192,194がロータ182に対して相対回転可能に嵌合されており、ピニオン196を介してノズル回転駆動モータ198により回転させられ、複数のピニオン200を介して複数組の回転昇降軸52および吸着ノズル62を一斉に回転させる。
【0036】
上記複数の回転昇降軸52のうち、ロータ182の回転により部品受取・実装位置へ旋回させられたものは、第1昇降駆動装置202によって昇降させられる。本実施形態においては、第1昇降駆動装置202が、回転モータである昇降駆動モータ204と送りねじ206とナット208とにより構成されている。また、回転昇降軸52は圧縮コイルスプリング210によって上方へ付勢されており、回転昇降軸52の下端近傍に取り付けられたスナップリング212がロータ182の下面に当接することにより上昇限度位置に保たれている。したがって、昇降駆動部材214の第1係合部124は、回転昇降軸52の上端面に係合して回転昇降軸52を圧縮コイルスプリング210の付勢力に抗して下降させる。なお、昇降駆動部材214はガイドロッド218とガイド220とにより昇降を案内される。
【0037】
本実施形態においても、回転昇降軸52と第2リニアモータ120とが共に第1昇降駆動装置202により昇降させられ、さらに第2昇降駆動装置としての第2リニアモータ120が回転昇降軸52に対して吸着ノズル62を昇降させ、吸着ノズル62の部品146への当接時、および吸着ノズル62に保持された部品146の実装対象材22への当接時における当接衝撃が緩和される。また、第1係合部124と第2係合部126とは回転昇降軸52および吸着ノズル62にそれらの回転を許容する状態で係合する点は前記実施形態と同じであるが、本実施形態においてはさらに、ロータ182の回転に伴う回転昇降軸52および吸着ノズル62の昇降方向と直交する方向の係合,離脱を許容する。
本実施形態においても、第2リニアモータ120の制御や、部品146の破損検知や、吸着ノズル62の適性下降速度ならびに吸着ノズル62の下降制御から上昇制御への転換時期を決める反力の設定増分の決定等が前記実施形態におけるのと同様に行われる。
ただし、
図10に示す実装ヘッド178において、吸着ノズル62およびその周辺を前記
図3に示した構成とし、部品146の破損を回避しつつ能率良く回路基板の製造を行うために制御されるべき適正動作パラメータの決定が
図8に示す適正動作パラメータ決定ルーチンの実行により行われるようにすることも可能である。