(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6163201
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】適応ノイズキャンセルシステムにおけるアンチノイズ発生器応答および二次経路応答の順序付けられた適応
(51)【国際特許分類】
H04R 3/00 20060101AFI20170703BHJP
G10K 11/178 20060101ALI20170703BHJP
H04M 1/00 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
H04R3/00 310
G10K11/178 120
H04M1/00 H
H04R3/00 320
【請求項の数】42
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-511485(P2015-511485)
(86)(22)【出願日】2013年4月15日
(65)【公表番号】特表2015-524183(P2015-524183A)
(43)【公表日】2015年8月20日
(86)【国際出願番号】US2013036532
(87)【国際公開番号】WO2013169437
(87)【国際公開日】20131114
【審査請求日】2016年2月26日
(31)【優先権主張番号】61/645,333
(32)【優先日】2012年5月10日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/727,718
(32)【優先日】2012年12月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504371240
【氏名又は名称】シラス ロジック、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【弁理士】
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】アルダーソン, ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】ヘンドリックス, ジョン ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ジョー, ダヨン
(72)【発明者】
【氏名】ミラー, アントニオ ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ヨン, チン
(72)【発明者】
【氏名】カマス, ガウサム デベンドラ
【審査官】
下林 義明
(56)【参考文献】
【文献】
特表2013−528830(JP,A)
【文献】
特開平07−175486(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/00 − 13/00
H04R 3/00 − 3/14
H04R 1/10
H04M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーソナルオーディオデバイスであって、前記パーソナルオーディオデバイスは、
パーソナルオーディオデバイス筐体と、
オーディオ信号を再生するために、前記筐体に取り付けられた変換器であって、前記オーディオ信号は、リスナーへのプレイバックのためのソースオーディオと、前記変換器の音響出力内の周囲オーディオ音の影響を打ち消すためのアンチノイズ信号との両方を含む、変換器と、
前記周囲オーディオ音を示す基準マイクロホン信号を提供するために、前記筐体に取り付けられた基準マイクロホンと、
前記変換器の前記音響出力および前記変換器における前記周囲オーディオ音を示すエラーマイクロホン信号を提供するために、前記変換器に近接して前記筐体に取り付けられたエラーマイクロホンと、
エラー信号および前記基準マイクロホン信号に従って、前記リスナーによって聞かれている前記周囲オーディオ音の存在を低減させるために、第1の適応フィルタを適応させることによって、アンチノイズ信号を基準信号から適応的に生成する処理回路であって、前記処理回路は、前記ソースオーディオを成形する二次経路応答を有する二次経路適応フィルタと、前記ソースオーディオを前記エラーマイクロホン信号から除去することにより、前記エラー信号を提供する結合器とを実施し、前記処理回路は、前記第1の適応フィルタまたは前記二次経路適応フィルタのうちの第1のフィルタの適応が、前記第1の適応フィルタまたは前記二次経路適応フィルタのうちの別のフィルタの適応が実質的に完了または停止された後にのみ開始されるように、前記二次経路適応フィルタおよび前記第1の適応フィルタの適応を順序付ける、処理回路と
を備える、パーソナルオーディオデバイス。
【請求項2】
前記処理回路は、前記二次経路適応フィルタの適応が、前記第1の適応フィルタの適応の前に、かつ、前記第1の適応フィルタの適応が停止されている間に、行なわれるように、前記二次経路適応フィルタおよび前記第1の適応フィルタの適応を順序付ける、請求項1に記載のパーソナルオーディオデバイス。
【請求項3】
前記処理回路は、前記ソースオーディオが前記二次経路適応フィルタの適応のために好適なトレーニング信号を提供する特性を有することを決定することに応答して、前記二次経路適応フィルタ、次いで、前記第1の適応フィルタの適応のシーケンスを開始する、請求項2に記載のパーソナルオーディオデバイス。
【請求項4】
前記処理回路は、前記ソースオーディオが主にダウンリンク発話を含み、したがって、前記二次経路適応フィルタの適応のために好適なトレーニング信号を提供する特性を有することを決定する、請求項3に記載のパーソナルオーディオデバイス。
【請求項5】
前記処理回路は、前記二次経路適応フィルタ、次いで、前記第1の適応フィルタの適応のシーケンスを開始し、前記二次経路適応フィルタの適応中に、前記二次経路適応フィルタの適応のために好適なトレーニング信号を提供する特性を有するトレーニング信号を前記ソースオーディオに注入する、請求項2に記載のパーソナルオーディオデバイス。
【請求項6】
前記トレーニング信号は、広帯域信号である、請求項5に記載のパーソナルオーディオデバイス。
【請求項7】
前記処理回路は、前記第1の適応フィルタの1つ以上の係数が許容される閾値を超える変化率を有することを決定することに応答して、前記二次経路適応フィルタ、次いで、前記第1の適応フィルタの適応のシーケンスを開始する、請求項2に記載のパーソナルオーディオデバイス。
【請求項8】
前記処理回路は、前の適応のシーケンスから所定の期間が経過したことを決定することに応答して、前記二次経路適応フィルタ、次いで、前記第1の適応フィルタの適応のシーケンスを開始する、請求項2に記載のパーソナルオーディオデバイス。
【請求項9】
パーソナルオーディオデバイスによる周囲オーディオ音の影響を打ち消す方法であって、前記方法は、
エラー信号および基準マイクロホン信号に従って、リスナーによって聞かれている周囲オーディオ音の存在を低減させるために、第1の適応フィルタを適応させることによって、アンチノイズ信号を基準信号から適応的に生成することと、
前記アンチノイズ信号とソースオーディオとを組み合わせることと、
前記組み合わせの結果を変換器に提供することと、
基準マイクロホンを用いて前記周囲オーディオ音を測定することと、
エラーマイクロホンを用いて前記変換器の音響出力および前記周囲オーディオ音を測定することと、
前記ソースオーディオを成形する二次経路応答を有する二次経路適応フィルタと、前記ソースオーディオを前記エラーマイクロホン信号から除去することにより、前記エラー信号を提供する結合器とを実施することと、
前記第1の適応フィルタまたは前記二次経路適応フィルタのうちの第1のフィルタの適応が、前記第1の適応フィルタまたは前記二次経路適応フィルタのうちの別のフィルタの適応が実質的に完了または停止された後にのみ開始されるように、前記二次経路適応フィルタおよび前記第1の適応フィルタの適応を順序付けることと
を含む、方法。
【請求項10】
前記順序付けることは、前記二次経路適応フィルタの適応が、前記第1の適応フィルタの適応の前に、かつ、前記第1の適応フィルタの適応が停止されている間に、行なわれるように、前記二次経路適応フィルタおよび前記第1の適応フィルタの適応を順序付ける、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ソースオーディオが、前記二次経路適応フィルタの適応のために好適なトレーニング信号を提供する特性を有するかどうかを決定することと、
前記ソースオーディオが前記二次経路適応フィルタの適応のために好適なトレーニング信号を提供する特性を有すること決定を決定することに応答して、前記二次経路適応フィルタ、次いで、前記第1の適応フィルタの適応のシーケンスを開始することと
をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記決定することは、前記ソースオーディオが主にダウンリンク発話を含み、したがって、前記二次経路適応フィルタの適応のために好適なトレーニング信号を提供する特性を有することを決定する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記二次経路適応フィルタ、次いで、前記第1の適応フィルタの適応のシーケンスを開始することと、
前記二次経路適応フィルタの適応中に、前記二次経路適応フィルタの適応のために好適なトレーニング信号を提供する特性を有するトレーニング信号を前記ソースオーディオに注入することと
をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記トレーニング信号は、広帯域信号である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の適応フィルタの1つ以上の係数が許容される閾値を超える変化率を有するかどうかを決定することと、
前記第1の適応フィルタの1つ以上の係数が前記許容される閾値を超える変化率を有することを決定することに応答して、前記二次経路適応フィルタ、次いで、前記第1の適応フィルタの適応のシーケンスを開始することと
をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前の適応のシーケンスから所定の期間が経過したかどうかを決定することと、
前記所定の期間が経過したことを決定することに応答して、前記二次経路適応フィルタ、次いで、前記第1の適応フィルタの適応のシーケンスを開始することと
をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
パーソナルオーディオデバイスの少なくとも一部を実施するための集積回路であって、前記集積回路は、
出力信号を出力変換器に提供するための出力部であって、前記出力信号は、リスナーへのプレイバックのためのソースオーディオと、前記出力変換器の音響出力内の周囲オーディオ音の影響を打ち消すためのアンチノイズ信号との両方を含む、出力部と、
前記周囲オーディオ音を示す基準マイクロホン信号を受信するための基準マイクロホン入力部と、
前記出力変換器の前記音響出力および前記出力変換器における前記周囲オーディオ音を示すエラーマイクロホン信号を受信するためのエラーマイクロホン入力部と、
エラー信号および前記基準マイクロホン信号に従って、前記リスナーによって聞かれている前記周囲オーディオ音の存在を低減させるために、第1の適応フィルタを適応させることによって、アンチノイズ信号を基準信号から適応的に生成する処理回路であって、前記処理回路は、前記ソースオーディオを成形する二次経路応答を有する二次経路適応フィルタと、前記ソースオーディオを前記エラーマイクロホン信号から除去することにより、前記エラー信号を提供する結合器とを実施し、前記処理回路は、前記第1の適応フィルタまたは前記二次経路適応フィルタのうちの第1のフィルタの適応が、前記第1の適応フィルタまたは前記二次経路適応フィルタのうちの別のフィルタの適応が実質的に、了または停止された後にのみ開始されるように、前記二次経路適応フィルタおよび前記第1の適応フィルタの適応を順序付ける、処理回路と
を備える、集積回路。
【請求項18】
前記処理回路は、前記二次経路適応フィルタの適応が、前記第1の適応フィルタの適応の前に、かつ、前記第1の適応フィルタの適応が停止されている間に、行なわれるように、前記二次経路適応フィルタおよび前記第1の適応フィルタの適応を順序付ける、請求項17に記載の集積回路。
【請求項19】
前記処理回路は、前記ソースオーディオが前記二次経路適応フィルタの適応のために好適なトレーニング信号を提供する特性を有することを決定することに応答して、前記二次経路適応フィルタ、次いで、前記第1の適応フィルタの適応のシーケンスを開始する、請求項18に記載の集積回路。
【請求項20】
前記処理回路は、前記ソースオーディオが主にダウンリンク発話を含み、したがって、前記二次経路適応フィルタの適応のために好適なトレーニング信号を提供する特性を有することを決定する、請求項19に記載の集積回路。
【請求項21】
前記処理回路は、前記二次経路適応フィルタ、次いで、前記第1の適応フィルタの適応のシーケンスを開始し、前記二次経路適応フィルタの適応中に、前記二次経路適応フィルタの適応のために好適なトレーニング信号を提供する特性を有するトレーニング信号を前記ソースオーディオに注入する、請求項18に記載の集積回路。
【請求項22】
前記トレーニング信号は、広帯域信号である、請求項21に記載の集積回路。
【請求項23】
前記処理回路は、前記第1の適応フィルタの1つ以上の係数が許容される閾値を超える変化率を有することを決定することに応答して、前記二次経路適応フィルタ、次いで、前記第1の適応フィルタの適応のシーケンスを開始する、請求項18に記載の集積回路。
【請求項24】
前記処理回路は、前の適応のシーケンスから所定の期間が経過したことを決定することに応答して、前記二次経路適応フィルタ、次いで、前記第1の適応フィルタの適応のシーケンスを開始する、請求項18に記載の集積回路。
【請求項25】
パーソナルオーディオデバイスであって、前記パーソナルオーディオデバイスは、
パーソナルオーディオデバイス筐体と、
オーディオ信号を再生するために、前記筐体に取り付けられた出力変換器であって、前記オーディオ信号は、リスナーへのプレイバックのためのソースオーディオと、前記出力変換器の音響出力内の周囲オーディオ音の影響を打ち消すためのアンチノイズ信号との両方を含む、出力変換器と、
前記周囲オーディオ音を示す基準マイクロホン信号を提供するために、前記筐体に取り付けられた基準マイクロホンと、
前記筐体内の処理回路であって、前記処理回路は、前記アンチノイズ信号が前記周囲オーディオ音の実質的なキャンセルを生じさせるように、第1の適応フィルタを用いて、前記アンチノイズ信号を前記基準マイクロホン信号から適応的に生成し、前記処理回路は、前記基準マイクロホン内への前記ソースオーディオの音響漏出の振幅が前記周囲オーディオ音の振幅に対して十分であることを決定することに応答して、前記アンチノイズ信号の不適切な発生を防止するための措置を講じる、処理回路と
を備える、パーソナルオーディオデバイス。
【請求項26】
前記出力変換器の前記音響出力および前記出力変換器における前記周囲オーディオ音を示すエラーマイクロホン信号を生成する、前記筐体に取り付けられたエラーマイクロホンをさらに備え、前記処理回路はさらに、エラー信号に従って、前記アンチノイズ信号を生成し、前記処理回路は、前記ソースオーディオを成形する二次経路応答を有する二次経路適応フィルタと、前記ソースオーディオを前記エラーマイクロホン信号から除去することにより、前記エラー信号を提供する結合器とを実施し、前記措置を講じることは、前記第1の適応フィルタまたは前記二次経路適応フィルタのうちの第1のフィルタの適応が、前記第1の適応フィルタまたは前記二次経路適応フィルタのうちの別のフィルタの適応が実質的に完了または停止された後にのみ開始されるように、前記二次経路適応フィルタおよび前記第1の適応フィルタの適応を順序付けることを含む、請求項25に記載のパーソナルオーディオデバイス。
【請求項27】
前記処理回路は、前記二次経路適応フィルタの適応が、前記第1の適応フィルタの適応の前に、かつ、前記第1の適応フィルタの適応が停止されている間に、行なわれるように、前記二次経路適応フィルタおよび前記第1の適応フィルタの適応を順序付け、前記適応を順序付けることは、前記基準マイクロホン内への前記ソースオーディオの音響漏出の振幅が前記周囲オーディオ音の振幅に対して十分であることを前記処理回路が決定することに応答して、行なわれる、請求項26に記載のパーソナルオーディオデバイス。
【請求項28】
前記処理回路は、前記ソースオーディオの振幅と閾値とを比較することによって、前記基準マイクロホン内への前記ソースオーディオの音響漏出の振幅が、前記周囲オーディオ音の振幅に対して十分であると決定する、請求項26に記載のパーソナルオーディオデバイス。
【請求項29】
前記処理回路はさらに、前記周囲オーディオ音の大きさの測定から前記閾値を決定する、請求項28に記載のパーソナルオーディオデバイス。
【請求項30】
前記処理回路はさらに、前記パーソナルオーディオデバイスの音量設定から前記ソースオーディオの振幅を決定する、請求項28に記載のパーソナルオーディオデバイス。
【請求項31】
パーソナルオーディオデバイスによる周囲オーディオ音の影響を打ち消す方法であって、前記方法は、
アンチノイズ信号が周囲オーディオ音の実質的なキャンセルを生じさせるように、第1の適応フィルタを用いて、前記アンチノイズ信号を基準マイクロホン信号から適応的に生成することと、
前記アンチノイズ信号とソースオーディオとを組み合わせることと、
前記組み合わせの結果を出力変換器に提供することと、
基準マイクロホンを用いて前記周囲オーディオ音を測定することと、
前記基準マイクロホン内への前記ソースオーディオの音響漏出の振幅が前記周囲オーディオ音の振幅に対して十分であるかどうかを決定することと、
前記基準マイクロホン内への前記ソースオーディオの音響漏出の振幅が前記周囲オーディオ音の振幅に対して十分であることを決定することに応答して、前記アンチノイズ信号の不適切な発生を防止するための措置を講じることと
を含む、方法。
【請求項32】
前記出力変換器の音響出力および前記出力変換器における前記周囲オーディオ音を示すエラーマイクロホン信号を生成することと、
エラー信号に従って、前記アンチノイズ信号を生成することと、
前記ソースオーディオを成形する二次経路応答を有する二次経路適応フィルタと、前記ソースオーディオを前記エラーマイクロホン信号から除去することにより、前記エラー信号を提供する結合器とを実施することと、
前記第1の適応フィルタまたは前記二次経路適応フィルタのうちの第1のフィルタの適応が、前記第1の適応フィルタまたは前記二次経路適応フィルタのうちの別のフィルタの適応が実質的に完了または停止された後にのみ開始されるように、前記二次経路適応フィルタおよび前記第1の適応フィルタの適応を順序付けることと
をさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
記基準マイクロホン内への前記ソースオーディオの音響漏出の振幅が前記周囲オーディオ音の振幅に対して十分であることを決定することに応答して、前記二次経路適応フィルタの適応が、前記第1の適応フィルタの適応の前に、かつ、前記第1の適応フィルタの適応が停止されている間に、行なわれるように、前記二次経路適応フィルタおよび前記第1の適応フィルタの適応を順序付けることをさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記決定することは、前記ソースオーディオの振幅と閾値とを比較することによって、前記基準マイクロホン内への前記ソースオーディオの音響漏出の振幅が前記周囲オーディオ音の振幅に対して十分であることを決定する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記周囲オーディオ音の大きさの測定から前記閾値を決定することをさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記決定することは、前記パーソナルオーディオデバイスの音量設定から前記ソースオーディオの振幅を決定する、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
パーソナルオーディオデバイスの少なくとも一部を実施するための集積回路であって、前記集積回路は、
出力信号を出力変換器に提供するための出力部であって、前記出力信号は、リスナーへのプレイバックのためのソースオーディオと、前記出力変換器の音響出力内の周囲オーディオ音の影響を打ち消すためのアンチノイズ信号との両方を含む、出力部と、
前記周囲オーディオ音を示す基準マイクロホン信号を受信するための基準マイクロホン入力部と、
筐体内の処理回路であって、前記処理回路は、前記アンチノイズ信号が前記周囲オーディオ音の実質的なキャンセルを生じさせるように、第1の適応フィルタを用いて、前記アンチノイズ信号を前記基準マイクロホン信号から適応的に生成し、前記処理回路は、基準マイクロホン内への前記ソースオーディオの音響漏出の振幅が前記周囲オーディオ音の振幅に対して十分であることを決定することに応答して、前記アンチノイズ信号の不適切な発生を防止するための措置を講じる、処理回路と
を備える、集積回路。
【請求項38】
前記出力変換器の前記音響出力および前記出力変換器における前記周囲オーディオ音を示すエラーマイクロホン信号を受信するためのエラーマイクロホン入力部をさらに備え、前記処理回路はさらに、エラー信号に従って、前記アンチノイズ信号を生成し、前記処理回路は、前記ソースオーディオを成形する二次経路応答を有する二次経路適応フィルタと、前記ソースオーディオを前記エラーマイクロホン信号から除去することにより、前記エラー信号を提供する結合器とを実施し、前記措置を講じることは、前記第1の適応フィルタまたは前記二次経路適応フィルタのうちの第1のフィルタの適応が、前記第1の適応フィルタまたは前記二次経路適応フィルタのうちの別のフィルタの適応が実質的に完了または停止された後にのみ開始されるように、前記二次経路適応フィルタおよび前記第1の適応フィルタの適応を順序付けることを含む、請求項37に記載の集積回路。
【請求項39】
前記処理回路は、前記二次経路適応フィルタの適応が、前記第1の適応フィルタの適応の前に、かつ、前記第1の適応フィルタの適応が停止されている間に、行なわれるように、前記二次経路適応フィルタおよび前記第1の適応フィルタの適応を順序付け、前記適応を順序付けることは、前記基準マイクロホン内への前記ソースオーディオの音響漏出の振幅が前記周囲オーディオ音の振幅に対して十分であることを前記処理回路が決定することに応答して、行なわれる、請求項38に記載の集積回路。
【請求項40】
前記処理回路は、前記ソースオーディオの振幅と閾値とを比較することによって、前記基準マイクロホン内への前記ソースオーディオの音響漏出の振幅が前記周囲オーディオ音の振幅に対して十分であると決定する、請求項38に記載の集積回路。
【請求項41】
前記処理回路はさらに、前記周囲オーディオ音の大きさの測定から前記閾値を決定する、請求項40に記載の集積回路。
【請求項42】
前記処理回路はさらに、前記パーソナルオーディオデバイスの音量設定から前記ソースオーディオの振幅を決定する、請求項40に記載の集積回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、概して、適応ノイズキャンセル(ANC)を含む無線電話のようなパーソナルオーディオデバイスに関し、より具体的には、適応アンチノイズフィルタリングに加えて二次経路推定値を使用するパーソナルオーディオデバイス内のANC適応応答の順序付けられた適応に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
無線電話(たとえば、モバイル/携帯電話)、コードレス電話、および他の消費者オーディオデバイス(たとえば、MP3プレーヤ)は、幅広く使用されている。そのようなデバイスの明瞭さに関する性能は、ノイズキャンセルを提供することにより向上させられ、そのノイズキャンセルは、周囲の音響事象を測定するマイクロホンを使用し、それからアンチノイズ信号をデバイスの出力内へ挿入する信号処理を使用することで、周囲の音響事象をキャンセルし得る。
【0003】
ノイズキャンセル動作は、変換器において、デバイスの変換器出力を測定し、エラーマイクロホンを使用して、ノイズキャンセルの有効性を決定することによって、改良されることができる。変換器の測定された出力は、理想的には、専用オーディオプレーヤまたは電話のいずれかにおける電話および/またはプレイバックオーディオ内のソースオーディオ(例えば、ダウンリンクオーディオ)である。なぜなら、ノイズキャンセル信号(単数または複数)が、理想的には、変換器の位置で周囲ノイズによって消去されるからである。ソースオーディオをエラーマイクロホン信号から除去するために、変換器からエラーマイクロホンを通る二次経路が、推定され得、ソースオーディオをエラーマイクロホン信号から減算するための適切な位相および振幅にフィルタリングするために使用され得る。しかしながら、ソースオーディオが非常に大きい振幅を有するとき、変換器から基準マイクロホンへの音響漏出が、不適切に適応するノイズキャンセル(アンチノイズ)信号を生成する適応フィルタを生じさせ得る。
【0004】
したがって、変換器の出力を測定する二次経路推定値とアンチノイズ信号を生成する適応フィルタとを使用して、ノイズキャンセルを提供するパーソナルオーディオデバイス(無線電話を含む)を提供することが望ましくあり、そのようなパーソナルオーディオデバイスにおいて、基準マイクロホンへのソースオーディオ信号の漏出への適応に起因して生じる不正確な応答のような不正確なANC応答からの回復が、達成され得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の開示)
適応応答を生成するアンチノイズの望ましくない状態からの回復を提供する二次経路推定値を含むノイズキャンセルを提供するパーソナルオーディオデバイスを提供するための前述の目的は、パーソナルオーディオデバイス、動作方法、および集積回路において達成される。
【0006】
パーソナルオーディオデバイスは、筐体を含み、オーディオ信号を再生するために変換器が筐体上に取り付けられ、オーディオ信号は、リスナーに提供するためのソースオーディオと、変換器の音響出力内の周囲オーディオ音の影響を打ち消すためのアンチノイズ信号との両方を含む。基準マイクロホンは、筐体上に取り付けられ、周囲オーディオ音を示す基準マイクロホン信号を提供する。パーソナルオーディオデバイスはさらに、アンチノイズ信号が周囲オーディオ音の実質的なキャンセルを生じさせるように、アンチノイズ信号を基準マイクロホン信号から適応的に生成する、筐体内の適応ノイズキャンセル(ANC)処理回路を含む。エラーマイクロホンは、周囲オーディオ音をキャンセルするためにアンチノイズ信号の適応を制御するため、および、処理回路の出力から変換器を通した電気音響経路を補償するために含まれる。ANC処理回路は、二次経路の応答を推定する二次経路適応フィルタおよびアンチノイズ信号を生成する別の適応フィルタの適応を順序付け、それによって、二次経路応答が変化して二次経路推定値が更新されるときにANC動作全体が安定したままである。
【0007】
別の特徴では、ANC処理回路は、出力変換器から基準マイクロホンへのソースオーディオ漏出が、適切な動作のために大き過ぎるか、またはこれから大きくなり過ぎることを検出し、アンチノイズ信号を生成する適応フィルタの適応に対して措置を講じ、不適切な動作を防止または改善する。
【0008】
本発明の前述ならびに他の目的、特徴、および利点は、付随の図面に図示されるような、本発明の好ましい実施形態の以下のより具体的な説明から明白となる。
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
パーソナルオーディオデバイスであって、前記パーソナルオーディオデバイスは、
パーソナルオーディオデバイス筐体と、
オーディオ信号を再生するために、前記筐体に取り付けられた変換器であって、前記オーディオ信号は、リスナーへのプレイバックのためのソースオーディオと、前記変換器の音響出力内の周囲オーディオ音の影響を打ち消すためのアンチノイズ信号との両方を含む、変換器と、
前記周囲オーディオ音を示す基準マイクロホン信号を提供するために、前記筐体に取り付けられた基準マイクロホンと、
前記変換器の前記音響出力および前記変換器における前記周囲オーディオ音を示すエラーマイクロホン信号を提供するために、前記変換器に近接して前記筐体に取り付けられたエラーマイクロホンと、
エラー信号および前記基準マイクロホン信号に従って、前記リスナーによって聞かれている前記周囲オーディオ音の存在を低減させるために、第1の適応フィルタを適応させることによって、アンチノイズ信号を基準信号から適応的に生成する処理回路であって、前記処理回路は、前記ソースオーディオを成形する二次経路応答を有する二次経路適応フィルタと、前記ソースオーディオを前記エラーマイクロホン信号から除去することにより、前記エラー信号を提供する結合器とを実施し、前記処理回路は、前記第1の適応フィルタまたは前記二次経路適応フィルタのうちの第1のフィルタの適応が、前記第1の適応フィルタまたは前記二次経路適応フィルタのうちの別のフィルタの適応が実質的に完了または停止された後にのみ開始されるように、前記二次経路適応フィルタおよび前記第1の適応フィルタの適応を順序付ける、処理回路と
を備える、パーソナルオーディオデバイス。
(項目2)
前記処理回路は、前記二次経路適応フィルタの適応が、前記第1の適応フィルタの適応の前に、かつ、前記第1の適応フィルタの適応が停止されている間に、行なわれるように、前記二次経路適応フィルタおよび前記第1の適応フィルタの適応を順序付ける、項目1に記載のパーソナルオーディオデバイス。
(項目3)
前記処理回路は、前記ソースオーディオが前記二次経路適応フィルタの適応のために好適なトレーニング信号を提供する特性を有することを決定することに応答して、前記二次経路適応フィルタ、次いで、前記第1の適応フィルタの適応のシーケンスを開始する、項目2に記載のパーソナルオーディオデバイス。
(項目4)
前記処理回路は、前記ソースオーディオが主にダウンリンク発話を含み、したがって、前記二次経路適応フィルタの適応のために好適なトレーニング信号を提供する特性を有することを決定する、項目3に記載のパーソナルオーディオデバイス。
(項目5)
前記処理回路は、前記二次経路適応フィルタ、次いで、前記第1の適応フィルタの適応のシーケンスを開始し、前記二次経路適応フィルタの適応中に、前記二次経路適応フィルタの適応のために好適なトレーニング信号を提供する特性を有するトレーニング信号を前記ソースオーディオに注入する、項目2に記載のパーソナルオーディオデバイス。
(項目6)
前記トレーニング信号は、広帯域信号である、項目5に記載のパーソナルオーディオデバイス。
(項目7)
前記処理回路は、前記第1の適応フィルタの1つ以上の係数が許容される閾値を超える変化率を有することを決定することに応答して、前記二次経路適応フィルタ、次いで、前記第1の適応フィルタの適応のシーケンスを開始する、項目2に記載のパーソナルオーディオデバイス。
(項目8)
前記処理回路は、前の適応のシーケンスから所定の期間が経過したことを決定することに応答して、前記二次経路適応フィルタ、次いで、前記第1の適応フィルタの適応のシーケンスを開始する、項目2に記載のパーソナルオーディオデバイス。
(項目9)
パーソナルオーディオデバイスによる周囲オーディオ音の影響を打ち消す方法であって、前記方法は、
エラー信号および基準マイクロホン信号に従って、リスナーによって聞かれている周囲オーディオ音の存在を低減させるために、第1の適応フィルタを適応させることによって、アンチノイズ信号を基準信号から適応的に生成することと、
前記アンチノイズ信号とソースオーディオとを組み合わせることと、
前記組み合わせの結果を変換器に提供することと、
基準マイクロホンを用いて前記周囲オーディオ音を測定することと、
エラーマイクロホンを用いて前記変換器の音響出力および前記周囲オーディオ音を測定することと、
前記ソースオーディオを成形する二次経路応答を有する二次経路適応フィルタと、前記ソースオーディオを前記エラーマイクロホン信号から除去することにより、前記エラー信号を提供する結合器とを実施することと、
前記第1の適応フィルタまたは前記二次経路適応フィルタのうちの第1のフィルタの適応が、前記第1の適応フィルタまたは前記二次経路適応フィルタのうちの別のフィルタの適応が実質的に完了または停止された後にのみ開始されるように、前記二次経路適応フィルタおよび前記第1の適応フィルタの適応を順序付けることと
を含む、方法。
(項目10)
前記順序付けることは、前記二次経路適応フィルタの適応が、前記第1の適応フィルタの適応の前に、かつ、前記第1の適応フィルタの適応が停止されている間に、行なわれるように、前記二次経路適応フィルタおよび前記第1の適応フィルタの適応を順序付ける、項目9に記載の方法。
(項目11)
前記ソースオーディオが、前記二次経路適応フィルタの適応のために好適なトレーニング信号を提供する特性を有するかどうかを決定することと、
前記ソースオーディオが前記二次経路適応フィルタの適応のために好適なトレーニング信号を提供する特性を有すること決定を決定することに応答して、前記二次経路適応フィルタ、次いで、前記第1の適応フィルタの適応のシーケンスを開始することと
をさらに含む、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記決定することは、前記ソースオーディオが主にダウンリンク発話を含み、したがって、前記二次経路適応フィルタの適応のために好適なトレーニング信号を提供する特性を有することを決定する、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記二次経路適応フィルタ、次いで、前記第1の適応フィルタの適応のシーケンスを開始することと、
前記二次経路適応フィルタの適応中に、前記二次経路適応フィルタの適応のために好適なトレーニング信号を提供する特性を有するトレーニング信号を前記ソースオーディオに注入することと
をさらに含む、項目10に記載の方法。
(項目14)
前記トレーニング信号は、広帯域信号である、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記第1の適応フィルタの1つ以上の係数が許容される閾値を超える変化率を有するかどうかを決定することと、
前記第1の適応フィルタの1つ以上の係数が前記許容される閾値を超える変化率を有することを決定することに応答して、前記二次経路適応フィルタ、次いで、前記第1の適応フィルタの適応のシーケンスを開始することと
をさらに含む、項目10に記載の方法。
(項目16)
前の適応のシーケンスから所定の期間が経過したかどうかを決定することと、
前記所定の期間が経過したことを決定することに応答して、前記二次経路適応フィルタ、次いで、前記第1の適応フィルタの適応のシーケンスを開始することと
をさらに含む、項目10に記載の方法。
(項目17)
パーソナルオーディオデバイスの少なくとも一部を実施するための集積回路であって、前記集積回路は、
出力信号を出力変換器に提供するための出力部であって、前記出力信号は、リスナーへのプレイバックのためのソースオーディオと、前記変換器の音響出力内の周囲オーディオ音の影響を打ち消すためのアンチノイズ信号との両方を含む、出力部と、
前記周囲オーディオ音を示す基準マイクロホン信号を受信するための基準マイクロホン入力部と、
前記変換器の前記音響出力および前記変換器における前記周囲オーディオ音を示すエラーマイクロホン信号を受信するためのエラーマイクロホン入力部と、
エラー信号および前記基準マイクロホン信号に従って、前記リスナーによって聞かれている前記周囲オーディオ音の存在を低減させるために、第1の適応フィルタを適応させることによって、アンチノイズ信号を基準信号から適応的に生成する処理回路であって、前記処理回路は、前記ソースオーディオを成形する二次経路応答を有する二次経路適応フィルタと、前記ソースオーディオを前記エラーマイクロホン信号から除去することにより、前記エラー信号を提供する結合器とを実施し、前記処理回路は、前記第1の適応フィルタまたは前記二次経路適応フィルタのうちの第1のフィルタの適応が、前記第1の適応フィルタまたは前記二次経路適応フィルタのうちの別のフィルタの適応が実質的に、了または停止された後にのみ開始されるように、前記二次経路適応フィルタおよび前記第1の適応フィルタの適応を順序付ける、処理回路と
を備える、集積回路。
(項目18)
前記処理回路は、前記二次経路適応フィルタの適応が、前記第1の適応フィルタの適応の前に、かつ、前記第1の適応フィルタの適応が停止されている間に、行なわれるように、前記二次経路適応フィルタおよび前記第1の適応フィルタの適応を順序付ける、項目17に記載の集積回路。
(項目19)
前記処理回路は、前記ソースオーディオが前記二次経路適応フィルタの適応のために好適なトレーニング信号を提供する特性を有することを決定することに応答して、前記二次経路適応フィルタ、次いで、前記第1の適応フィルタの適応のシーケンスを開始する、項目18に記載の集積回路。
(項目20)
前記処理回路は、前記ソースオーディオが主にダウンリンク発話を含み、したがって、前記二次経路適応フィルタの適応のために好適なトレーニング信号を提供する特性を有することを決定する、項目19に記載の集積回路。
(項目21)
前記処理回路は、前記二次経路適応フィルタ、次いで、前記第1の適応フィルタの適応のシーケンスを開始し、前記二次経路適応フィルタの適応中に、前記二次経路適応フィルタの適応のために好適なトレーニング信号を提供する特性を有するトレーニング信号を前記ソースオーディオに注入する、項目18に記載の集積回路。
(項目22)
前記トレーニング信号は、広帯域信号である、項目21に記載の集積回路。
(項目23)
前記処理回路は、前記第1の適応フィルタの1つ以上の係数が許容される閾値を超える変化率を有することを決定することに応答して、前記二次経路適応フィルタ、次いで、前記第1の適応フィルタの適応のシーケンスを開始する、項目18に記載の集積回路。
(項目24)
前記処理回路は、前の適応のシーケンスから所定の期間が経過したことを決定することに応答して、前記二次経路適応フィルタ、次いで、前記第1の適応フィルタの適応のシーケンスを開始する、項目18に記載の集積回路。
(項目25)
パーソナルオーディオデバイスであって、前記パーソナルオーディオデバイスは、
パーソナルオーディオデバイス筐体と、
オーディオ信号を再生するために、前記筐体に取り付けられた変換器であって、前記オーディオ信号は、出力変換器の音響出力内の周囲オーディオ音の影響を打ち消すためのアンチノイズ信号を含む、変換器と、
前記周囲オーディオ音を示す基準マイクロホン信号を提供するために、前記筐体に取り付けられた基準マイクロホンと、
前記筐体内の処理回路であって、前記処理回路は、前記アンチノイズ信号が前記周囲オーディオ音の実質的なキャンセルを生じさせるように、前記アンチノイズ信号を前記基準マイクロホン信号から適応的に生成し、前記処理回路は、前記基準マイクロホン内への前記ソースオーディオの音響漏出の振幅が前記周囲オーディオ音の振幅に対して十分であることを決定することに応答して、前記アンチノイズ信号の不適切な発生を防止するための措置を講じる、処理回路と
を備える、パーソナルオーディオデバイス。
(項目26)
前記出力変換器の前記音響出力および前記出力変換器における前記周囲オーディオ音を示すエラーマイクロホン信号を生成する、前記筐体に取り付けられたエラーマイクロホンをさらに備え、前記処理回路はさらに、エラー信号に従って、前記アンチノイズ信号を生成し、前記処理回路は、前記ソースオーディオを成形する二次経路応答を有する二次経路適応フィルタと、前記ソースオーディオを前記エラーマイクロホン信号から除去することにより、前記エラー信号を提供する結合器とを実施し、前記措置を講じることは、前記第1の適応フィルタまたは前記二次経路適応フィルタのうちの第1のフィルタの適応が、前記第1の適応フィルタまたは前記二次経路適応フィルタのうちの別のフィルタの適応が実質的に完了または停止された後にのみ開始されるように、前記二次経路適応フィルタおよび前記第1の適応フィルタの適応を順序付けることを含む、項目25に記載のパーソナルオーディオデバイス。
(項目27)
前記処理回路は、前記二次経路適応フィルタの適応が、前記第1の適応フィルタの適応の前に、かつ、前記第1の適応フィルタの適応が停止されている間に、行なわれるように、前記二次経路適応フィルタおよび前記第1の適応フィルタの適応を順序付け、前記適応を順序付けることは、前記基準マイクロホン内への前記ソースオーディオの音響漏出の振幅が前記周囲オーディオ音の振幅に対して十分であることを前記処理回路が決定することに応答して、行なわれる、項目26に記載のパーソナルオーディオデバイス。
(項目28)
前記処理回路は、前記ソースオーディオの振幅と閾値とを比較することによって、前記基準マイクロホン内への前記ソースオーディオの音響漏出の振幅が、前記周囲オーディオ音の振幅に対して十分であると決定する、項目26に記載のパーソナルオーディオデバイス。
(項目29)
前記処理回路はさらに、前記周囲オーディオ音の大きさの測定から前記閾値を決定する、項目28に記載のパーソナルオーディオデバイス。
(項目30)
前記処理回路はさらに、前記パーソナルオーディオデバイスの音量設定から前記ソースオーディオの振幅を決定する、項目28に記載のパーソナルオーディオデバイス。
(項目31)
パーソナルオーディオデバイスによる周囲オーディオ音の影響を打ち消す方法であって、前記方法は、
アンチノイズ信号が周囲オーディオ音の実質的なキャンセルを生じさせるように、第1の適応フィルタを用いて、前記アンチノイズ信号を基準マイクロホン信号から適応的に生成することと、
前記アンチノイズ信号とソースオーディオとを組み合わせることと、
前記組み合わせの結果を変換器に提供することと、
基準マイクロホンを用いて前記周囲オーディオ音を測定することと、
前記基準マイクロホン内への前記ソースオーディオの音響漏出の振幅が前記周囲オーディオ音の振幅に対して十分であるかどうかを決定することと、
前記基準マイクロホン内への前記ソースオーディオの音響漏出の振幅が前記周囲オーディオ音の振幅に対して十分であることを決定することに応答して、前記アンチノイズ信号の不適切な発生を防止するための措置を講じることと
を含む、方法。
(項目32)
前記出力変換器の音響出力および前記出力変換器における前記周囲オーディオ音を示すエラーマイクロホン信号を生成することと、
エラー信号に従って、前記アンチノイズ信号を生成することと、
前記ソースオーディオを成形する二次経路応答を有する二次経路適応フィルタと、前記ソースオーディオを前記エラーマイクロホン信号から除去することにより、前記エラー信号を提供する結合器とを実施することと、
前記第1の適応フィルタまたは前記二次経路適応フィルタのうちの第1のフィルタの適応が、前記第1の適応フィルタまたは前記二次経路適応フィルタのうちの別のフィルタの適応が実質的に完了または停止された後にのみ開始されるように、前記二次経路適応フィルタおよび前記第1の適応フィルタの適応を順序付けることと
をさらに含む、項目31に記載の方法。
(項目33)
記基準マイクロホン内への前記ソースオーディオの音響漏出の振幅が前記周囲オーディオ音の振幅に対して十分であることを決定することに応答して、前記二次経路適応フィルタの適応が、前記第1の適応フィルタの適応の前に、かつ、前記第1の適応フィルタの適応が停止されている間に、行なわれるように、前記二次経路適応フィルタおよび前記第1の適応フィルタの適応を順序付けることをさらに含む、項目32に記載の方法。
(項目34)
前記決定することは、前記ソースオーディオの振幅と閾値とを比較することによって、前記基準マイクロホン内への前記ソースオーディオの音響漏出の振幅が前記周囲オーディオ音の振幅に対して十分であることを決定する、項目33に記載の方法。
(項目35)
前記周囲オーディオ音の大きさの測定から前記閾値を決定することをさらに含む、項目34に記載の方法。
(項目36)
前記決定することは、前記パーソナルオーディオデバイスの音量設定から前記ソースオーディオの振幅を決定する、項目34に記載の方法。
(項目37)
パーソナルオーディオデバイスの少なくとも一部を実施するための集積回路であって、前記集積回路は、
出力信号を出力変換器に提供するための出力部であって、前記出力信号は、リスナーへのプレイバックのためのソースオーディオと、前記変換器の音響出力内の周囲オーディオ音の影響を打ち消すためのアンチノイズ信号との両方を含む、出力部と、
前記周囲オーディオ音を示す基準マイクロホン信号を受信するための基準マイクロホン入力部と、
筐体内の処理回路であって、前記処理回路は、前記アンチノイズ信号が前記周囲オーディオ音の実質的なキャンセル消去を生じさせるように、前記アンチノイズ信号を前記基準マイクロホン信号から適応的に生成し、前記処理回路は、基準マイクロホン内への前記ソースオーディオの音響漏出の振幅が前記周囲オーディオ音の振幅に対して十分であることを決定することに応答して、前記アンチノイズ信号の不適切な発生を防止するための措置を講じる、処理回路と
を備える、集積回路。
(項目38)
前記出力変換器の前記音響出力および前記出力変換器における前記周囲オーディオ音を示すエラーマイクロホン信号を受信するためのエラーマイクロホン入力部をさらに備え、前記処理回路はさらに、エラー信号に従って、前記アンチノイズ信号を生成し、前記処理回路は、前記ソースオーディオを成形する二次経路応答を有する二次経路適応フィルタと、前記ソースオーディオを前記エラーマイクロホン信号から除去することにより、前記エラー信号を提供する結合器とを実施し、前記措置を講じることは、前記第1の適応フィルタまたは前記二次経路適応フィルタのうちの第1のフィルタの適応が、前記第1の適応フィルタまたは前記二次経路適応フィルタのうちの別のフィルタの適応が実質的に完了または停止された後にのみ開始されるように、前記二次経路適応フィルタおよび前記第1の適応フィルタの適応を順序付けることを含む、項目37に記載の集積回路。
(項目39)
前記処理回路は、前記二次経路適応フィルタの適応が、前記第1の適応フィルタの適応の前に、かつ、前記第1の適応フィルタの適応が停止されている間に、行なわれるように、前記二次経路適応フィルタおよび前記第1の適応フィルタの適応を順序付け、前記適応を順序付けることは、前記基準マイクロホン内への前記ソースオーディオの音響漏出の振幅が前記周囲オーディオ音の振幅に対して十分であることを前記処理回路が決定することに応答して、行なわれる、項目38に記載の集積回路。
(項目40)
前記処理回路は、前記ソースオーディオの振幅と閾値とを比較することによって、前記基準マイクロホン内への前記ソースオーディオの音響漏出の振幅が前記周囲オーディオ音の振幅に対して十分であると決定する、項目38に記載の集積回路。
(項目41)
前記処理回路はさらに、前記周囲オーディオ音の大きさの測定から前記閾値を決定する、項目40に記載の集積回路。
(項目42)
前記処理回路はさらに、前記パーソナルオーディオデバイスの音量設定から前記ソースオーディオの振幅を決定する、項目40に記載の集積回路。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】
図2は、無線電話10内の回路のブロック図である。
【
図3】
図3は、
図2のCODEC集積回路20のANC回路30内に含まれ得る信号処理回路および機能ブロックの例を描写するブロック図である。
【
図4】
図4〜
図5は、種々の実施による、
図2のCODEC集積回路20のANC回路30の動作を図示する信号波形図である。
【
図5】
図4〜
図5は、種々の実施による、
図2のCODEC集積回路20のANC回路30の動作を図示する信号波形図である。
【
図6】
図6は、CODEC集積回路20によって実施される信号処理アルゴリズムを描写するフローチャートである。
【
図7】
図7は、CODEC集積回路20内の信号処理回路および機能ブロックを描写するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(発明を実施するための最良の形態)
無線電話等のパーソナルオーディオデバイスにおいて実施され得るノイズキャンセル技法および回路が、開示される。パーソナルオーディオデバイスは、適応ノイズキャンセル(ANC)回路を含み、適応ノイズキャンセル(ANC)回路は、周囲音響環境を測定し、スピーカ(または、他の変換器)出力に注入される信号を生成することにより周囲音響事象を消去する。基準マイクロホンは、周囲音響環境を測定するために提供され、エラーマイクロホンは、変換器における周囲オーディオおよび変換器出力を測定するために含まれ、したがって、ノイズキャンセルの有効性の指標を与える。二次経路推定適応フィルタは、エラー信号を生成するために、プレイバックオーディオをエラーマイクロホン信号から除去するために使用される。しかしながら、パーソナルオーディオデバイスによって再生されるソースオーディオ(例えば、電話会話中のダウンリンクオーディオ)のレベルに応じて、変換器から基準マイクロホンへの漏出が、ANC回路の不安定な動作および/または不適切な適応を生じさせ得る。さらに、不適切に適応させられた状態からの回復の際、またはANC回路の初期化中、二次経路推定適応フィルタが適切に応答しなければ、ANCシステムの残りは、適切に適応しないか、または不安定となり得る。以下に示される例示的パーソナルオーディオデバイス、方法、および回路は、二次経路推定適応フィルタおよびANCシステムの残りの適応を順序付けることにより、不安定性を回避し、ANCシステムを適切な応答に適応させる。さらに、基準マイクロホンへのソースオーディオの漏出の大きさが、測定または推定され、安定動作が予期され得るように、ソースオーディオが終了または音量が減少した後、ANCシステムの適応およびそのような状態からの回復に対して、措置を講じることができる。
【0011】
図1は、ヒトの耳5に近接する例示的無線電話10を示す。図示される無線電話10は、本明細書で例証される技法が採用され得るデバイスの例であるが、図示される無線電話10内または後の例証に描写される回路内で具現化される要素または構成の全てが要求されるわけではないことを理解されたい。無線電話10は、スピーカSPKR等の変換器を含み、変換器は、他のローカルオーディオ事象(例えば、呼出音、記憶されたオーディオ番組素材、近端発話、無線電話10によって受信されるウェブページまたは他のネットワーク通信からのソース)ならびにオーディオ指標(例えば、バッテリ低下および他のシステム事象通知)とともに、無線電話10によって受信される遠隔発話を再生する。近発話マイクロホンNSは、近端発話を捕捉するために提供され、近端発話は、無線電話10から他の会話参加者(単数または複数)に伝送される。
【0012】
無線電話10は、スピーカSPKRにより再生される遠隔発話および他のオーディオの明瞭さを向上させるために、適応ノイズキャンセル(ANC)回路、およびアンチノイズ信号をスピーカSPKR内に注入するという特徴を含む。基準マイクロホンRは、周囲音響環境を測定するために提供され、ユーザ/話者の口の典型的位置から離れて配置され、それによって、近端発話が、基準マイクロホンRによって生成される信号内で最小にされる。第3のマイクロホンであるエラーマイクロホンEは、無線電話10が耳5にきわめて近接している場合、耳5に近接するスピーカSPKRによって再生されるオーディオ信号と組み合わせられた周囲オーディオの測定値を提供することによって、ANC動作をさらに向上させるために提供される。無線電話10内の例示的回路14は、基準マイクロホンR、近発話マイクロホンNS、およびエラーマイクロホンEから信号を受信するオーディオCODEC集積回路20を含み、無線電話トランシーバを含むRF集積回路12等の他の集積回路とインターフェース接続する。本発明の他の実施形態では、本明細書に開示される回路および技法は、単一の集積回路(たとえば、チップ上MP3プレーヤー集積回路)に組み込まれ、その集積回路は、制御回路およびパーソナルオーディオデバイスの全体を実行する他の機能性を含み得る。
【0013】
一般に、本明細書に開示されるANC技法は、基準マイクロホンRに影響を与える(スピーカSPKRの出力および/または近端発話と対立するものとしての)周囲音響事象を測定し、また、エラーマイクロホンEに影響を与える同一の周囲音響事象を測定することによって、図示される無線電話10のANC処理回路は、エラーマイクロホンEに存在する周囲音響事象の振幅を最小限にする特性を有するように、基準マイクロホンRの出力から生成されるアンチノイズ信号を適応させる。音響経路P(z)は、基準マイクロホンRからエラーマイクロホンEに延在するため、ANC回路は、本質的に、電気−音響経路S(z)の影響を除去した状態で組み合わせられた推定音響経路P(z)である。電気−音響経路S(z)は、CODEC IC20のオーディオ出力回路の応答と、特定の音響環境内におけるスピーカSPKRとエラーマイクロホンEとの間の結合を含むスピーカSPKRの音響/電気伝達関数とを表す。無線電話10が耳5にしっかりと押しつけられていないとき、電気−音響経路S(z)は、耳5の近接性および構造と、無線電話10に近接し得る他の物理的物体およびヒト頭部構造とによって影響される。図示される無線電話10は、第3の近発話マイクロホンNSを有する2つのマイクロホンANCシステムを含むが、別個のエラーマイクロホンおよび基準マイクロホンを含まない他のシステムが、前述の技法を実施することができる。代替として、発話マイクロホンNSが、前述のシステム内において、基準マイクロホンRの機能を果たすために使用されることができる。最後に、オーディオプレイバックのためだけに設計されたパーソナルオーディオデバイスでは、近発話マイクロホンNSは、概して、含まれず、以下にさらに詳細に説明される、回路内の近発話信号経路は、省略されることができる。
【0014】
次に、
図2を参照すると、無線電話10内の回路が、ブロック図に示される。CODEC集積回路20は、基準マイクロホン信号を受信して基準マイクロホン信号のデジタル表現refを生成するアナログ−デジタルコンバータ(ADC)21Aと、エラーマイクロホン信号を受信してエラーマイクロホン信号のデジタル表現errを生成するADC21Bと、近発話マイクロホン信号を受信して近発話マイクロホン信号のデジタル表現nsを生成するためのADC21Cとを含む。CODEC IC20は、増幅器A1からスピーカSPKRを駆動させるための出力を生成し、増幅器A1は、結合器26の出力を受信するデジタル−アナログコンバータ(DAC)23の出力を増幅する。結合器26は、内部オーディオソース24からのオーディオ信号iaと、ANC回路30によって生成されるアンチノイズ信号anti−noise(通例、基準マイクロホン信号ref内のノイズと同一の極性を有し、したがって、結合器26によって減算される)と、無線電話10のユーザが、無線周波数(RF)集積回路22から受信されるダウンリンク発話dsに適切に関連した自身の音声を聞き取れるように近発話信号nsの一部とを組み合わせる。本発明の実施形態によると、ダウンリンク発話dsは、ANC回路30に提供される。ダウンリンク発話ds、内部オーディオia、およびノイズ(または、代替信号として適用される場合、ソースオーディオ/ノイズ)は、結合器26に提供され、それによって、信号ds+iaが、常時、ANC回路30内の二次経路適応フィルタを有する推定音響経路S(z)に提示される。近発話信号nsはまた、RF集積回路22に提供され、アンテナANTを介して、アップリンク発話としてサービスプロバイダに伝送される。
【0015】
図3は、
図2のANC回路30の詳細の一例を示す。適応フィルタ32は、基準マイクロホン信号refを受信し、理想的状況下で、その伝達関数W(z)をP(z)/S(z)となるように適応させることにより、アンチノイズ信号anti−noiseを生成し、アンチノイズ信号は、
図2の結合器26によって例示されるように、アンチノイズ信号と変換器によって再生されるオーディオ信号とを組み合わせる出力結合器に提供される。適応フィルタ32の係数は、2つの信号の相関を使用して適応フィルタ32の応答を決定するW係数制御ブロック31によって制御され、W係数制御ブロック31は、概して、最小二乗平均の意味において、エラーマイクロホン信号err内に存在する基準マイクロホン信号refのそれらの成分間のエラーを最小にする。W係数制御ブロック31によって処理される信号は、フィルタ34Bによって提供される経路S(z)の応答の推定値のコピーによって成形されるような基準マイクロホン信号ref、および、エラーマイクロホン信号errを含む別の信号である。基準マイクロホン信号refを経路S(z)の応答の推定値のコピー、応答SE
COPY(z)で変換し、エラーマイクロホン信号errを最小にすることによって、ソースオーディオのプレイバックに起因するエラーマイクロホン信号errの成分を除去後、適応フィルタ32は、P(z)/S(z)の所望の応答に適応させられる。エラーマイクロホン信号errに加え、W係数制御ブロック31によってフィルタ34Bの出力とともに処理される他の信号は、フィルタ応答SE(z)(応答SE
COPY(z)は、そのコピーである)によって処理されるダウンリンクオーディオ信号dsおよび内部オーディオiaを含むソースオーディオの反転した量を含む。ソースオーディオの反転した量を注入することによって、適応フィルタ32は、エラーマイクロホン信号err内に存在する比較的に大量のソースオーディオに適応することを防止される。経路S(z)の応答の推定値でダウンリンクオーディオ信号dsおよび内部オーディオiaの反転したコピーを変換することによって、処理前にエラーマイクロホン信号errから除去されるソースオーディオは、エラーマイクロホン信号errにおいて再生されるダウンリンクオーディオ信号dsおよび内部オーディオiaの予期されるバージョンに整合するはずである。エラーマイクロホン信号errから除去されるソースオーディオは、エラーマイクロホン信号errにおいて再生される組み合わせられたダウンリンクオーディオ信号dsおよび内部オーディオiaに整合する。なぜなら、S(z)の電気および音響経路は、エラーマイクロホンEに到達するためにダウンリンクオーディオ信号dsおよび内部オーディオiaによって辿られる経路であるからである。フィルタ34Bは、それ自体は、適応フィルタではないが、適応フィルタ34Aの応答に整合するように調整される調節可能応答を有し、それによって、フィルタ34Bの応答は、適応フィルタ34Aの適応を追跡する。
【0016】
前述を実施するために、適応フィルタ34Aは、SE係数制御ブロック33によって制御される係数を有し、SE係数制御ブロック33は、ソースオーディオ(ds+ia)と、上記に説明されたフィルタリングされたダウンリンクオーディオ信号dsおよび内部オーディオia(適応フィルタ34Aによってフィルタリングされ、エラーマイクロホンEに送達される予期されるソースオーディオを表す)の結合器36による除去後のエラーマイクロホン信号errとを処理する。それに関して、適応フィルタ34Aは、ダウンリンクオーディオ信号dsおよび内部オーディオiaからエラー信号eを生成するように適応させられ、ダウンリンクオーディオ信号dsおよび内部オーディオiaがエラーマイクロホン信号errから減算されると、ソースオーディオ(ds+ia)に起因しないエラーマイクロホン信号errの内容を含む。しかしながら、ダウンリンクオーディオ信号dsおよび内部オーディオiaが両方とも存在しない場合、例えば、電話呼の開始の際、または、非常に小さい振幅を有する場合、SE係数制御ブロック33は、推定音響経路S(z)への十分な入力を有しない。したがって、ANC回路30では、ソースオーディオ検出器35Aが、十分なソースオーディオ(ds+ia)が存在するかどうか検出し、十分なソースオーディオ(ds+ia)が存在する場合、二次経路推定値を更新する。ソースオーディオ検出器35Aは、発話存在信号がダウンリンクオーディオ信号dsのデジタルソースから利用可能である場合に発話存在信号によって置換されてもよく、またはメディアプレイバック制御回路から提供されるプレイバックアクティブ信号によって置換されてもよい。セレクタ38は、制御回路39から提供される制御信号injectに従って、二次経路適応フィルタ34AおよびSE係数制御ブロック33への入力において、ソースオーディオ(ds+ia)とトレーニング信号発生器37の出力との間を選択するために提供され、制御回路39は、アサートされると、トレーニング信号発生器37の出力を選択する。制御信号injectのアサートは、好適なソースオーディオ信号が存在しないときでも、ANC回路30が音響経路S(z)の推定値を更新することを可能にする。それによって、制御回路39がトレーニング信号発生器37の出力を一時的に選択すると、ノイズバーストまたは他のトレーニング信号が、二次経路適応フィルタ34Aに注入される。代替として、セレクタ38は、トレーニング信号をソースオーディオ(ds+ia)に追加する結合器と置換されることができる。
【0017】
制御回路39は、ソースオーディオ検出器35Aから入力を受信し、その入力は、遠隔呼出信号がダウンリンクオーディオ信号ds内に存在するときを示すRingインジケータと、ソースオーディオ(ds+ia)全体の検出されたレベルを反映するSource Level指標とを含む。制御回路はまた、基準マイクロホン信号refの検出されたレベルの指標を提供する周囲オーディオ検出器35Bから入力を受信する。制御回路39は、パーソナルオーディオデバイスの音量設定の指標volを受信してもよい。制御回路39は、安定性指標WstableをW係数制御部31から受信し、このW係数制御部31はまた、概して、応答W(z)の係数の和の変化率である安定性測定値Δ(Σ|W
k(z))|/Δtが閾値を上回ると、アサート解除されるが、代替として、安定性指標Wstableは、適応フィルタ32の応答を決定する、W(z)係数のすべてよりも少数のものに基づいてもよい。さらに、制御回路39は、W係数制御部31の適応を制御するための制御信号haltWを生成し、SE係数制御部33の適応を制御するための制御信号haltSEを生成する。同様に、SE係数制御部33は、安定性測定値Δ(Σ|SE
k(z))|/Δtが閾値未満であるときを示す安定性指標SEstableを提供するが、これはまた、SE(z)の係数のすべてよりも少数のものに基づいてもよい。W(z)および二次経路推定値SE(z)の適応の順序付けのための例示的アルゴリズムは、
図4〜
図6を参照して、以下にさらに詳細に論じられる。
【0018】
本明細書で図示される例示的回路および方法は、SE係数制御部33が、適切な値を含み、したがって、応答SE
COPY(z)および応答SE(z)が、応答W(z)を適応させる前に、好適な特性を有するように、SE係数制御部33、次いで、W係数制御部31のトレーニングの順序付けを提供する。前述は、SE係数制御部33が適応させられ、次いで、SE係数制御部33の適応が停止された後にのみW係数制御部31を適応させることによって、達成される。
図4に示される例では、二次経路適応フィルタ適応は、推定された応答SE(z)が安定した後、制御信号haltSEをアサートすることによって停止され、W(z)は、制御信号haltWをアサート解除することによって適応することを可能にされる。
図4に示される特定の動作では、応答SE(z)は、応答W(z)が適応させられていないときのみ適応することを可能にされ、その逆もまた然りであるが、他の状況下または他の動作モードでは、応答SE(z)およびW(z)は、同時に、適応することが可能にされることができる。特定の例では、応答SE(z)は、応答SE(z)が適応させられていた時間量、指標SEstableのアサート、または他の基準のいずれかが、応答SE(z)が二次経路S(z)を推定するために十分に適応させられたことを示す時間t
0まで適応させられ、次いで、W(z)が、適応させられることができる。
【0019】
時間t
0では、制御信号haltSEが、アサートされ、制御信号haltWが、アサート解除され、SE(z)の適応からW(z)の適応に遷移する。時間t
1では、ソースオーディオ検出器35Aから制御回路39に提供されるSource level指標が、ダウンリンクオーディオが閾値よりも大きいことを示し、これは、基準マイクロホンrへの漏出が、ANCシステムの適切な動作のために大き過ぎる可能性が高いことを示す。閾値は、指標Ambient levelとして周囲オーディオ検出器35Bから提供される参照チャネルの振幅から決定されてもよい。代替として、指標Source levelの値は、基準マイクロホン信号refへのソースオーディオ漏出の影響を推定するために、指標Ambient levelの値によって増減されてもよい。応答において、制御信号haltWは、アサートされ、応答W(z)の適応を停止する。次いで、強い(非トーン)ダウンリンクオーディオ信号が、概して、応答SE(z)のための良好なトレーニング信号であるため、制御信号haltSEは、アサート解除されるが、上方閾値がまた、Source Level指標に適用されてもよく、ダウンリンクオーディオが、ANCシステムの非線形挙動を生じさせるほど強い場合、応答SE(z)の適応を同様に防止する。時間t
2では、level指標が、閾値より下に減少し、応答W(z)が、再び、制御信号haltWをアサート解除することによって、短い期間の間、適応することを可能にされ、応答SE(z)の適応が、制御信号haltSEをアサートすることによって、停止される。時間t
3では、応答SE(z)が閾値を超えて累積的に適応させられた時間量により、または、応答SE(z)が、応答W(z)が最大時間周期T
maxwの間適応するように適用され得る十分な品質であることを示す応答SE(z)の係数に適用される安定性基準または別のルールにより、応答W(z)は、最大期間の間、適応することが可能にされる。
【0020】
SE(z)およびW(z)の適応のシーケンスは、遠隔呼出音または他のトーン信号が、ダウンリンクオーディオd内で検出される時間t
6まで継続する。最初に、制御回路39は、指標Source levelが閾値を超えることを決定し、制御信号haltWをアサートし、応答W(z)の適応を停止する。応答SE(z)は、制御信号haltSEをアサート解除することによって適応することを可能にされるが、時間t
7では、ソースオーディオが主にトーンであることを決定するソースオーディオ検出器35Aにより、指標Ringが、アサートされる。時間t
8では、ソースオーディオ内のトーンが終了するが、応答W(z)は、適応することを可能にされない。なぜなら、時間t
6から時間t
7の間隔の間、呼出音が応答SE(z)を妨害しないことと、時間t
8において、応答SE(z)を適応させるためにソースオーディオが存在しないこととを確実にするために、応答SE(z)の適応は、より適切なトレーニング信号で行なわれなければならないからである。通常動作は、時間t
9において、十分な振幅のダウンリンク発話dの復帰に伴って再開し、制御信号haltSEおよびhaltWによって命令されるように、応答SE(z)の適応後、応答W(z)の適応が続く。
【0021】
図5に示される例では、いくつかのトーンが検出された後、二次経路適応フィルタ適応が、リセットされ、これは、例えば、時間t
10から制御信号haltSEがアサートされるまで、各遠隔トーンのはじまりに図示される短い適応期間の影響を低減させる。次いで、
図4の例におけるように、呼出音シーケンスが完了した後、ダウンリンク発話が存在する間、制御信号haltSEが、再び、アサート解除されることにより、応答SE(z)を適応させ、次いで、制御信号haltSEがアサートされる間、制御信号haltWが、アサート解除されることにより、応答W(z)が、周囲音響環境に適応することを可能にする。
【0022】
図6は、
図3の制御回路39によって実施され得る方法を図示する。基準マイクロホン信号refに対するソースオーディオ(例えば、ダウンリンクオーディオd)の大きさの推定値が閾値を上回る(決定60か)、または応答W(z)が不安定であると決定される(決定61)間、例えば、応答W(z)の係数が急速に変化するか、またはダウンリンクオーディオdがトーンである場合(決定62)、応答W(z)および応答SE(z)の適応は、停止される(ステップ63)。そうでなければ、基準マイクロホン信号refに対するソースオーディオ(例えば、ダウンリンクオーディオd)の大きさの推定値が、閾値より小さいかまたは閾値に等しく(決定60)、応答W(z)が安定していると決定され(決定61)、かつ、ダウンリンクオーディオdがトーンではなくなった後(決定62)、応答SE(z)およびW(z)の適応が、順序付けられる。最初に、応答SE(z)の適応が、有効にされる(ステップ64)一方、応答W(z)の適応は、依然として、無効である(ステップ63)。次いで、応答SE(z)の適応が、停止され(ステップ65)、応答W(z)の適応が、有効にされる(ステップ66)。次いで、応答W(z)の適応が、再び、停止される(ステップ67)。ANC発生が終了されるまで(決定68)、ステップ60〜67は、繰り返される。
図6のフローチャートは、
図4〜
図5の波形図および
図3の回路に図示される特定のメカニズムの作用を示すにすぎない簡略化されたフローチャートであり、応答W(z)およびSE(z)の適応を制御する種々の他のメカニズムの全てを含むわけではない。例えば、ステップ64〜ステップ67の適応のシーケンスは、適切な適応が維持されることを確実にするために、ソースオーディオの大きさが大き過ぎず、応答W(z)が、安定したままである場合でも、周期的に繰り返されてもよい。
【0023】
次に、
図7を参照すると、
図3に描写されるようなANC技法を実施し、
図2のCODEC集積回路20内に実施され得るような処理回路40を有するためのANCシステムのブロック図が、示される。処理回路40は、メモリ44に結合されたプロセッサコア42を含み、メモリ44内に、前述のANC技法の一部または全部ならびに他の信号処理を実施し得るコンピュータプログラム製品を含むプログラム命令が記憶される。必要に応じて、専用デジタル信号処理(DSP)論理46が、処理回路40によって提供されるANC信号処理の一部、または代替として、その全部を実施するために提供されてもよい。処理回路40はまた、ADC21A〜21Cを含み、ADC21Aは、基準マイクロホンRから入力を受信し、ADC21Bは、エラーマイクロホンEから入力を受信し、ADC21Cは、近発話マイクロホンNSから入力を受信する。DAC23および増幅器A1もまた、上記に説明されたようなアンチノイズを含む変換器出力信号を提供するために、処理回路40によって提供される。
【0024】
本発明は、特に、その好ましい実施形態を参照して図示および説明されたが、前述ならびに形態および詳細における他の変更が、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本明細書に行なわれてもよいことは、当業者によって理解される。