(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6163209
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】薬剤ディスペンサ装置
(51)【国際特許分類】
A61M 5/31 20060101AFI20170703BHJP
G01F 23/26 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
A61M5/31 520
G01F23/26 A
【請求項の数】21
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-534879(P2015-534879)
(86)(22)【出願日】2013年9月17日
(65)【公表番号】特表2015-532136(P2015-532136A)
(43)【公表日】2015年11月9日
(86)【国際出願番号】AT2013050187
(87)【国際公開番号】WO2014052997
(87)【国際公開日】20140410
【審査請求日】2015年9月24日
(31)【優先権主張番号】A50428/2012
(32)【優先日】2012年10月5日
(33)【優先権主張国】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】514237943
【氏名又は名称】サイベルスドルフ レイバー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(73)【特許権者】
【識別番号】507313412
【氏名又は名称】エーアイティー オーストリアン インスティテュート オブ テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】AIT Austrian Institute of Technology GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100082887
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 利春
(74)【代理人】
【識別番号】100090918
【弁理士】
【氏名又は名称】泉名 謙治
(74)【代理人】
【識別番号】100175237
【弁理士】
【氏名又は名称】加納 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100181331
【弁理士】
【氏名又は名称】金 鎭文
(74)【代理人】
【識別番号】100183597
【弁理士】
【氏名又は名称】比企野 健
(72)【発明者】
【氏名】バンメル マンフレッド
(72)【発明者】
【氏名】シュミット ゲルノート
(72)【発明者】
【氏名】プッツ オトマール
【審査官】
佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第6110148(US,A)
【文献】
特表2009−529999(JP,A)
【文献】
特表2002−518108(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体(12)が充填され、この液体(12)を小出し供給するため、一端に開口部(11)を有する容器(1)と、
少なくとも1対の容量性の測定電極(21、22)であって、測定電極間のスペースにおけるそれぞれの媒体の誘電率を測定するため、容器(1)の外側に、互いに向かい合って配置された測定電極を備え、容器の周囲に配置された測定電極(21、22)を包囲する遮蔽部材(3)を備える、液体を小出し供給するための装置(12)において、
液体(12)と測定電極(21、22)との間の領域には、遮蔽部材(3)がないこと、及び/又は、遮蔽部材(3)が、測定電極(21、22)から間隔を置いて配置されること、及び/又は遮蔽部材(3)は、導電路の形態の導体(32、33、34)が被覆されたフィルム(31)として形成されること、
導体(32、33、34)には、ループがない、及び/若しくは、閉じた導体のループがないこと、
別々の導体(32、33、34)が、フィルム(31)上に形成され、第1及び第2の導体(32、33)が、互いに入り込む櫛形導体として形成され、第3の導体(34)が、蛇行形状で、第1及び第2の櫛形導体(32、33)の間に配置されることを特徴とする装置。
【請求項2】
導体(32、33、34)は、3mm以下、又は、50〜150μmの厚さを有していることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
液体(12)が充填され、この液体(12)を小出し供給するため、一端に開口部(11)を有する容器(1)と、
少なくとも1対の容量性の測定電極(21、22)であって、測定電極間のスペースにおけるそれぞれの媒体の誘電率を測定するため、容器(1)の外側に、互いに向かい合って配置された測定電極を備え、容器の周囲に配置された測定電極(21、22)を包囲する遮蔽部材(3)を備える、液体を小出し供給するための装置(12)において、
液体(12)と測定電極(21、22)との間の領域には、遮蔽部材(3)がないこと、及び/又は、遮蔽部材(3)が、測定電極(21、22)から間隔を置いて配置されること、及び/又は、遮蔽部材(3)は、導電路の形態の導体(32、33、34)が被覆されたフィルム(31)として形成されること、
通信制御装置(61)及び/又は測定電極(21、22)間の静電容量を測定するための多数の静電容量測定装置及び/又は処理ユニット(6)及び/又は測定電極(21、22)によって測定された読み取り値若しくは読み取り値から得られた値を送信するためのアンテナ(62)が、フィルム(31)上に配置されること、及び、フィルム(31)上に配置されたこれらのユニットが、半導体チップの共通のハウジングに組み込まれることを特徴とする装置。
【請求項4】
別々の導体(32、33、34)が、フィルム(31)上に形成され、第1及び第2の導体(32、33)が、互いに入り込む櫛形導体として形成され、第3の導体(34)が、蛇行形状で、第1及び第2の櫛形導体(32、33)の間に配置されることを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項5】
互いに向かい合って配置された2個の測定電極(21、22)が、静電容量測定装置(41)に接続されていること、静電容量測定装置(41)によって測定された静電容量読み取り値(C1)が、処理ユニット(6)に送られること、この処理ユニットは、測定された静電容量読み取り値(C1)に基づいて、所定の保存された較正機能により、容器(1)内の液体(12)の充填度(F)を決定し、その出力においてこの充填度を利用可能にすることを特徴とする請求項1〜4の何れか1に記載の装置。
【請求項6】
別々の導体(32、33、34)のうちの1個である第2の導体(33)が、静電容量測定装置(41)の基準接続部に接続されることを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
遮蔽部材(3)の外側又は遮蔽部材の領域内に配置された接触センサー(5)を備え、接触センサー(5)が、遮蔽部材(3)の第1の櫛形導体(32)と蛇行形状の導体(34)を、センサー電極として備えていることを特徴とする請求項1〜6の何れか1に記載の装置。
【請求項8】
接触センサー(5)のセンサー電極が、もう一つの静電容量測定装置(44)に接続されていること、この追加の静電容量測定装置(44)によって測定された追加の静電容量値(C’)が、処理ユニット(6)に送られ、追加の静電容量読み取り値(C’)が、所定の閾値(T)を越えると、処理ユニット(6)が、処理ユニットによって決定された充填度(F)の送信を止める又はその充填度を無効にすることを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
容器(1)が、開口部(11)の領域を除いて、一定の内側横断面を有する内部容積を有し、容器(1)と容器内に収容された液体(12)を封入するプランジャ(13)が備わっており、プランジャの外側横断面が、容器(1)の内部容積の横断面に対応しており、プランジャ(13)が、開口部(11)の方に移動されると、液体(12)が、開口部(11)を通って容器(1)から小出し供給されるように、プランジャが容器(1)の内側に可動に配置されることを特徴とする請求項1〜8の何れか1に記載の装置。
【請求項10】
多数の追加の測定電極(23、24、25、26)の対が、容器(1)に配置され、追加の測定電極(23、24、25、26)の各対に関し、追加の測定電極(23、24、25、26)の各対の下流に、各々1個の追加の静電容量測定装置(42、43)が、静電容量読み取り値(C2、C3)を処理ユニット(6)に送るために、備わっていることを特徴とする請求項1から9の何れか1に記載の装置。
【請求項11】
それぞれ対になった測定電極(21、22、23、24、25、26)が、容器(1)の周方向において、互いに向かい合って、プランジャ(13)の移動の方向において同じ高さにあることを特徴とする請求項1〜10の何れか1に記載の装置。
【請求項12】
それぞれ隣接する測定電極(21、22、23、24、25、26)の対が、プランジャ(13)の移動の方向に間隔を置いて配置されること、及び/又は測定電極(21、22、23、24、25、26)の幅が、プランジャ(13)の移動の方向(V)におけるプランジャ(13)の幅に対応することを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項13】
測定電極(21、22、23、24、25、26)が、容器(1)の外面に、長方形、三角形、台形、又は平行四辺形の形で、二次元的に配置され、及び/又は
対になった測定電極(21、22、23、24、25、26)のうちの2対が、容器(1)の外側に配置された2個の互いに入り込む櫛形導体によって形成されている
ことを特徴とする請求項1〜12の何れか1に記載の装置。
【請求項14】
容器(1)の外側で、容器(1)と遮蔽部材(3)の間に、測定電極(21、22、23、24、25、26)が配置された支持体が配置され、支持体は、容器(1)に接し、及び/又は
測定電極(21、22、23、24、25、26)が、容器(1)に接する支持体の壁に配置され、ディスペンサ装置(100)のハウジングの一部分が、支持体として形成されている、又は支持体がハウジングに連結されている
ことを特徴とする請求項1〜13の何れか1に記載の装置。
【請求項15】
下流のアンテナ(62)を備えた通信制御装置(61)が、処理ユニット(6)に接続され、アンテナ(62)が遮蔽部材(3)の外側に又は遮蔽部材(3)に直に配置されているが、遮蔽部材(3)とは電気的に導通した態様では接続されていないことを特徴とする請求項1〜14の何れか1に記載の装置。
【請求項16】
請求項1〜15の何れかに記載のディスペンサ装置(100)に配置された容器(1)内の充填度(F)を測定し確認する方法において、外側遮蔽部材(3)を有する容器(1)の外側に互いに向かい合って配置された少なくとも1対の測定電極(21、22)が、静電容量測定のために設けられており、
2個の測定電極(21、22)間の静電容量(C1)が測定され、所定の較正機能に従って決定された静電容量(C1)に基づいて、充填度読み取り値(F)が決定される方法であって、
測定電極(21、22)の外側で、遮蔽部材(3)の領域に、遮蔽部材(3)に設けた導体(33、34)を用いて、もう一つの静電容量(C’)を測定し、
追加の静電容量(C’)を、閾値(T)と比較し、
追加の静電容量(C’)が、閾値(T)よりも低い場合にのみ、充填度(F)を有効であるとみなす
ことを特徴とする方法。
【請求項17】
充填度(F)及び/又は充填度(F)の有効性に関する情報が、符号化電磁データ送信により、外部のデータ通信装置に送信されることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
充填度(F)及び/又は充填度(F)の有効性に関する情報が、負荷変調により、外部のデータ通信装置に送信されることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
容器(1)の外側に互いに向かい合って配置された複数対の測定電極(21〜26)の静電容量(C1、C2、C3)が測定され、この静電容量に基づいて充填度(F)が決定されることを特徴とする請求項16乃至18の何れか1に記載の方法。
【請求項20】
a)多数の充填度(F)に関し、個々の対の測定電極(21〜26)間の静電容量(C1、C2、C3)を含むそれぞれの基準ベクトル(Vref)を、成分として利用可能にし、
b)それぞれの充填度(F)を、これらの基準ベクトル各々と関連付け、
c)測定した個々の静電容量(C1、C2、C3)を有するベクトル(Vmess)を決定し、
d)ベクトル(Vmess)からの距離が最も小さい多数の基準ベクトル(Vref)を探し求め、
e)工程b)で見出した基準ベクトル(Vref)に適用されたとき、これらの基準ベクトル(Vref)と関連付けられた充填度(F)をもたらす補間機能を形成し、
f)補間機能を、ベクトル(Vmess)に適用し、結果を充填度として提供する
ことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
ベクトル(Vmess)からの距離は、ユークリッド距離であることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立形式の請求項1の公知要件事項部に記載の流体、特に液状の薬剤を人に小出し供給する装置に関する。本発明は、さらに、独立形式の請求項17の公知要件事項部に記載の容器内の充填度を測定し、確認する方法に関する。
【0002】
本発明は、特に健康管理、例えば、医療技術、製薬工学及び生命工学、医術及び看護、研究等において、患者への薬剤の小出し供給を、モニタするのに用いることができる。
【背景技術】
【0003】
小出し供給される液体が静電容量に基づいて測定される種々の流体ディスペンサ装置が、先行技術から公知である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、静電容量に基づく充填度の検知において効果的に機能不良を検知し、静電容量に基づく充填度の読み取り値を無効化できるようにしようとするものである。本発明は、さらに、可能な限り最良で最も信頼性のある結果を提供できるようにしようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、この目的を、請求項1に記載した構成上の特徴を有する上記タイプのディスペンサ装置の形で、果している。
【0006】
さらに、本発明は、この目的を、請求項17の特徴要件事項部に記載した構成上の特徴を有する上記タイプの方法により、満たしている。
【0007】
本発明によれば、流体、特に液状の薬剤を、人に小出し供給する装置には、以下の:
液体が充填され、一端にこの液体を小出し供給するための開口部を有する容器と、
少なくとも1対の容量性の測定電極であって、測定電極間の中間スペースにおけるそれぞれの媒体の誘電率を測定するため、容器の外側、特に容器の壁に、互いに向かい合って配置された測定電極が、
備わっており、この装置が、測定電極を包囲して容器の周囲に配置された遮蔽部材を備えている。
【0008】
容量効果に起因して測定過程中に容器が接触することにより生じる障害が、本発明により効果的に回避される。
【0009】
特に、本発明による解決手段は、充填度の読み取り値の変化を引き起こすことのある測定電極と人の手との間の接触又は人の手による測定電極の領域における電場の歪曲を防止することができる。
【0010】
遮蔽部材は、導電性材料からなる導電路を被覆したフィルムとして形成することが好ましい。好ましい実施の形態では、このフィルムは、容器を囲むように配置されている又は容器に巻き着けられている。斯かる遮蔽部材は、測定値の歪曲を、特に有益な態様で防止する。
【0011】
好ましくは、液体と測定電極との間の領域は、遮蔽部材によって覆われていない。
【0012】
遮蔽部材の効果による読み取り値の劣化を防止するため、遮蔽部材を、測定電極から半径方向に間隔をあけるようにしてもよい。
【0013】
より良い保護を受けると同時に、遮蔽部材の領域に又はフィルム上に半導体チップとアンテナの取り付けを可能にするため、遮蔽部材を、特に容器に巻き着けられ、導電路の形態の導体が被覆されたフィルムとして形成することができ、その場合、静電容量測定装置、処理ユニット、及び特に半導体チップの形態の通信制御装置が、アンテナとともに、フィルムに取り付けられるのが好ましい。
【0014】
アンテナとの無線通信を害することのある外部のデータ通信装置によって発生された電磁場における変化を防止し、同時に測定電極の良好な遮電が得られるよう、導体には、ループがない及び/又は閉じた導体のループがないようにするとよい。
【0015】
接触の検知に使用できると同時に、遮蔽部材に取り付けられたアンテナとの無線通信を可能にする遮蔽部材の特に有益な構成では、
3個の別々の導体が、フィルム上に形成されており、第1及び第2の導体が、互いに入り込む櫛形導体として形成され、第3の導体が、蛇行形状で2個の櫛形導体の間に配置されている。
【0016】
容器内の液体の充填度を測定するための好ましい解決手段では、互いに向かい合って配置された2個の測定電極が、静電容量測定装置に接続されている。
【0017】
簡易な充填度の測定のために、静電容量測定装置によって得られた静電容量の読み取り値が、所定の保存された較正機能により容器内の液体の充填度を決定してこの充填度を出力において利用可能にする処理ユニットに送られるようにすることができる。
【0018】
良好な保護効果を有する特に効果的な遮蔽が、3個の導体のうちの1個、特に櫛形導体として形成された第2の導体を、静電容量測定装置の基準接続部に接続することにより得られる。
【0019】
接触又は静電容量測定の歪曲を良好に探知するため、遮蔽部材の外側又は遮蔽部材の領域内に配置された接触センサー、特に容量性接触センサーを設けてもよい。
【0020】
製造するのが容易な変更した実施の形態では、接触センサーは、遮蔽部材の第1の櫛形導体と蛇行形状の導体をセンサー電極として備えている。
【0021】
接触を検知するため、接触センサーのセンサー電極を、もう一つの静電容量測定装置に接続してもよく、もう一つの静電容量測定装置によって測定された追加の静電容量読み取り値が、処理ユニットに送られるのが好ましく、追加の静電容量読み取り値が、所定の閾値を越えた場合には、処理ユニットによって決定された充填度を、送信するのを止めること又は無効として示すことができる。
【0022】
流体を収容するための容器であって、容易に排液することができて、その流体の充填度を容易に測定することができる好都合な容器では、容器が、開口部の領域を除いて、一定の内側横断面を有する内部容積を有し、容器と容器内に収容された液体を封止するプランジャが備わっており、プランジャの外側横断面が、容器の内部容積の横断面と対応し、開口部に向かうプランジャの運動で、液体が開口部を通って容器から小出し供給されるように、プランジャが、容器の内側に可動に配置されている。
【0023】
より精確な充填度の測定のため、追加の測定電極からなる多数の対を、容器に配置することができ、特に追加の測定電極の各対に関し、追加の測定電極の各対と連携する、測定した静電容量読み取り値を処理ユニットに送るそれぞれ1個の追加の静電容量測定装置が備わっているとよい。
【0024】
精密な充填度の測定を可能にする良好な電極の構成では、それぞれ対になった測定電極が、周方向において、互いに向かい合っており、特に正反対に向かい合っており、特にプランジャの移動の方向において同じ高さにある。
【0025】
検知の精度を向上させるため、さらに、それぞれ隣接する測定電極の対を、プランジャの移動の方向に間隔を置いて配置してもよく及び/又はプランジャの移動の方向における測定電極の幅を、プランジャの移動の方向におけるプランジャの幅に対応させてもよい。
【0026】
簡単な構造を有する測定電極の好ましい実施の形態では、
測定電極が、容器の外面に、特に長方形、三角形、台形、又は平行四辺形の形で、広がりを持って配置され、及び/又は
対になった測定電極のうちの2対各々が、容器の外側、特に容器の外壁に配置された2個の互いに入り込む櫛形
導体によって形成されている。
【0027】
容器を容易に交換することができるよう、容器の外側で、容器と遮蔽部材の間に、測定電極が配置された支持体が配置されていてもよく、支持体は容器に接しているのが好ましく、及び/又は測定電極が、容器に接する支持体の壁に配置されていてもよい。
【0028】
好ましくは、測定した充填度を、外部の通信装置に送信するとよい。下流のアンテナを備えた通信制御装置が、処理ユニットに接続されていてもよい。スペースを節約する構成を得るためには、アンテナが、遮蔽部材の外側に又は遮蔽部材に直に配置されているが、遮蔽部材とは電気的に導通した態様では接続されていないのが好ましい。
【0029】
さらに、本発明は、特に本発明によるディスペンサ装置内に配置された容器内の充填度を測定し確認する方法に関し、この方法においては、特に外側遮蔽部材を有する容器の外側に互いに向かい合って配置された少なくとも1対の測定電極が、静電容量測定のために設けられており、
2個の測定電極間の静電容量が測定され、所定の較正機能に従って決定された静電容量に基づいて充填度読み取り値が得られる。
【0030】
本発明によれば、斯かる方法では、
測定電極の外側で、遮蔽部材の領域に、特に遮蔽部材に配置された導体を用いて、もう一つの静電容量を測定し、
もう一つの静電容量を、閾値と比較し、
もう一つの静電容量が、閾値よりも低い場合にのみ、充填度読み取り値を有効であるとみなす。
【0031】
斯かる方法は、人が、測定電極に又は測定電極の領域内で遮蔽部材に接触したことにより、或いは歪曲を生じさせるのに十分、測定電極に近づいたことにより測定した充填度が正しくなくなったか否かを、容易に検証できるようにするものである。
【0032】
正確な充填度の測定をおこなうため、充填度及び/又は充填度の有効性に関する情報を、符号化電磁データ送信により、特に負荷変調により、外部のデータ通信装置に送信してもよい。
【0033】
同じ目的で、容器の外側に互いに向かい合って配置された複数対、特に3対の測定電極の静電容量が各々測定し、この静電容量に基づいて充填度を決定してもよい。
【0034】
特に精確な検知が、
a)多数の充填度に関し、個々の対の測定電極間の静電容量を、成分として含むそれぞれの基準ベクトルを用意し、
b)それぞれの充填度を、これらの基準ベクトル各々と関連付け、
c)測定した個々の静電容量を含むベクトルを決定し、
d)ベクトルからの距離、特にユークリッド距離が最も小さい多数の基準ベクトルを探し求め、
e)工程b)で見出した基準ベクトルに適用されたとき、これらの基準ベクトルと関連付けられたそれぞれの充填度をもたらす補間機能を形成し、
f)補間機能をベクトルに適用し、結果を充填度として使用する
ことにより可能である。
【0035】
本発明の幾つかの好ましい実施の形態を、以下の図面を参照して、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明によるディスペンサ装置の第1の実施の形態の側面図を示している。
【
図2】アンプルの形態をした、全体が満たされた容器の側面図を示している。
【
図3】部分的に空になった容器の側面図を示している。
【
図4】全体が空になった容器の側面図を示している。
【
図5】3対の測定電極を有する容器の別の実施の形態を示している。
【
図6】1対の測定電極を有する本発明の第2の実施の形態を示している。
【
図7】櫛形に配置された1対の測定電極を有する本発明の他の実施の形態を示している。
【
図8】櫛形に配置された3対の測定電極を有する本発明の別の実施の形態を示している。
【
図9a】斜めの電極を有する容器の追加の実施の形態を示している。
【
図9b】斜めの電極を有する容器の追加の実施の形態を示している。
【
図9c】斜めの電極を有する容器の追加の実施の形態を示している。
【
図9d】斜めの電極を有する容器の追加の実施の形態を示している。
【
図10a】斜めの電極を有する容器の追加の実施の形態を示している。
【
図10b】斜めの電極を有する容器の追加の実施の形態を示している。
【
図10c】斜めの電極を有する容器の追加の実施の形態を示している。
【
図10d】斜めの電極を有する容器の追加の実施の形態を示している。
【
図11a】斜めの電極を有する容器の追加の実施の形態を示している。
【
図11b】斜めの電極を有する容器の追加の実施の形態を示している。
【
図11c】斜めの電極を有する容器の追加の実施の形態を示している。
【
図11d】斜めの電極を有する容器の追加の実施の形態を示している。
【
図12a】斜めの電極を有する容器の追加の実施の形態を示している。
【
図12b】斜めの電極を有する容器の追加の実施の形態を示している。
【
図12c】斜めの電極を有する容器の追加の実施の形態を示している。
【
図12d】斜めの電極を有する容器の追加の実施の形態を示している。
【
図13】本発明による装置の実施の形態の横断面を示している。
【
図14】容器の内側の充填度を測定する装置と、測定した充填度を外部のデータ通信装置に送信する装置の、2個の装置を示している。
【
図15】容器の内側の充填度を測定する装置と、測定した充填度を外部のデータ通信装置に送信する装置の、2個の装置を示している。
【
図16】導体が配置されたフィルムの形態をした遮蔽部材を示している。
【
図17】
図15に示す実施の形態における容器を空にする間の個々の部分静電容量の理論的推移を示している。
【
図18】接触検知が、さらに行われる
図14に示す実施の形態を示している。
【
図19】接触検知が、さらに行われる
図15に示す実施の形態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1は、本発明によるディスペンサ装置100の実施の形態の側面図を示している。図示の本発明によるディスペンサ装置100は、液状の薬剤12が充填された容器1を有している。この実施の形態では、液状の薬剤12としてインシュリンが使用されているが、容器1に入れた後同様にして小出し供給する他の液状の薬剤12、例えばホルモン(例えば、成長ホルモン)、バイオ薬剤、又は生殖医療における治療行為に用いる薬剤を使用することもできる。
【0038】
本発明によるディスペンサ装置100は、ペンの形態をしていて、容器1内の液体12の投与中、患者が楽に手に持つことができる。容器1は、カートリッジ又はアンプルの形態をしていて、本発明のディスペンサ装置100の先端領域102にある。
【0039】
容器1は、
図2に詳細に示されており、本発明によるディスペンサ装置100の先端領域102にある一端に液体12を小出し供給するための開口部11を有している。反対端において、容器1は、容器1の内側に移動可能に装着されたプランジャ13を有している。このため、容器1は、開口部11の領域を除いて、一定の横断面を有する内部容積を有している。プランジャ13は、容器1内の液体12が、容器1内にしっかりと封入され、開口部11を通じてのみ出ることができるように、開口部11の反対側から、容器1を封止している。この実施の形態では、容器1の内側とプランジャ13は、横断面が円状で、ほぼ円筒状の内部壁又は外部壁を有している。プランジャ13が、容器に押し込まれると、容器1内の液体12は、開口部11を通って、容器1を出ることができる。プランジャ13が、開口部11の方向に押されると、
液体12は、開口部11を通って容器1から小出し供給される。しかしながら、容器1の開口部11は、
図2に示すように、使用前は、液体12が容器1を出ることがないよう、封止部材14によって封入されている。
【0040】
図3は、液体12の一部が、開口部11を通って注射針103を経由して投与された後の
図2に示す容器1を示している。
【0041】
図4は、液体12が、開口部11を通って注射針103を経由して、完全に出された後の
図2に示す容器1を示している。
図3及び
図4に示すように、プランジャ13は、中間又は最終位置にある、すなわち、容器1は、部分的に(
図3)又は完全に(
図4)空である。プランジャ13の後ろの領域15には、空気がある。本発明のプランジャ装置100は、鉛筆(ペン)又はボールペンの形状を有しており、容器1内にある液体12の投与中、患者が楽に手に持つことができる。
【0042】
図1に示すように、この典型的な実施の形態における注射針103は、本発明によるディスペンサ装置100にねじ止めされたハウジング104に取り付けられている。本発明によるディスペンサ装置100は、対応するハウジング104の雌ねじに適合した雄ねじ105を有している。
図3に示すように、プランジャ13を、開口部11の方向に押すと、容器1内の液体を、開口部11及び注射針103を通じて、それぞれの患者に投与することができる。本発明によるディスペンサ装置100のハウジングは、容器1内に残っている液体12の充填度Fを視覚的に測定するため、2個ののぞき窓108を有している。
【0043】
加えて、本発明によるディスペンサ装置100は、設定ユニット106を有しており(
図1参照)、この設定ユニットにより、プランジャ13の或る一定の動き、したがって、或る一定量の小出し供給する液体12を、予め設定することができる。小出し供給する液体12の量を設定した後、押し込み要素109が、患者によって押されるアクチュエ−ター107により、容器1のプランジャ13に押し付けられる。プランジャ13は、容器1内に押し込まれ、容器1内の液体12は、注射針103を通って患者に投与される。押し込み要素109は、プランジャ13の進行方向運動の方向Vに対する後戻り、すなわち、開口部11から遠ざかる後戻りから保護されているので、プランジャ13は、さらに開口部11の方向だけにしか動かすことができない。
【0044】
図5に示すような3対の測定電極を備えた容器1を用いるのが、特に好ましい。容器1は、
図5に示すように、3対の測定電極21〜26を有している。全ての測定電極21〜26は、容器1の外側に配置されており、この場合には、容器1の外壁に配置されている。本発明のこの好適で典型的な実施の形態では、2個づつ組み合わされた測定電極21〜26は、互いに容器1の外壁上で向かい合わせになっており、周方向に間隔を置いて設けられている。連携する測定電極21〜26の個々の対は、プランジャ13の移動の方向Vに間隔を置いて設けられている。第3の対の測定電極25、26は、容器1の開口部11から最も離れている。第1の対の測定電極21、22は、開口部11に最も近い。第2の電極対の測定電極23、24は、プランジャ13の移動の方向Vに、第1及び第3の対の測定電極21、22、25、26の間にある。測定電極21〜26は、容器1の外壁の領域に、2次元の態様で接している。
図5に示す典型的な実施の形態では、測定電極21〜26は、形状が長方形である。測定電極21〜26は、プランジャ13の移動の全範囲にわたって延びている。多数の電極対を用いる場合、1つの電極対のプランジャ13の移動の方向Vにおける広さが、プランジャ13の移動の方向Vにおけるプランジャ13の広さに適合するのが好ましい。
【0045】
しかしながら、代わりに、他の電極形状、例えば円状又は櫛状の電極形状を、測定電極21〜26に用いてもよい。数対の測定電極21〜26の使用は、細長い容器1における液体量の正確な測定には、一般に好ましいが、短い又は小さい容器1の場合には、不要である。
図6に示す容器の別の典型的な実施の形態では、移動の全範囲にわたって長手方向に延びる1対の測定電極21、22だけが備わっている。2個の測定電極21、22は、プランジャ13の移動の方向Vに対して同じ高さで、周方向に互いに向かい合っている。
【0046】
加えて、別の形状の測定電極21〜26を用いることもできる。好ましい実施の形態では、測定電極21〜26が、櫛形電極すなわちすだれ状電極として形成されている。この測定電極21〜26は、対になっており櫛形の構造を有している。この場合、連携する測定電極21、22、23、24、25、26の歯は、互いに入り込んでいる。
図7及び
図8に示すように、櫛形電極は、1対の測定電極を有する構成(
図7)にも、数対の測定電極21、22、23、24、25、26を有する構成にも、どちらにも使用することができる。
【0047】
用途に応じて、容器1内の充填度Fの特に有益な測定ができるよう、いろいろな大きさの測定電極21〜26を、備えることもできる。特に好ましいのは、平行四辺形又は三角形の測定電極21〜26の使用であり、平行四辺形又は三角形の測定電極は、プランジャの移動の方向Vすなわち容器1の長手方向の軸線に対して、例えば45°の、角度をなして延びる分離領域27によって、隔てられている。斯かる構成では、特に正確な充填度Fの測定が可能な、滑らかな推移が生じる。
図9a〜
図12dは、平行四辺形又は三角形の測定電極21〜26の間のプランジャの移動の方向Vに対して角度をなす分離領域27を有する4つの異なる実施の形態を示している。さらに、これらの実施の形態では、それぞれ連携する対の測定電極21、22、23、24、25、26を隔てる軸線方向に平行な分離領域28が設けられている。
【0048】
全ての斯かる電極構成に関して、測定電極21〜26の間の静電容量から、容器1の充填度Fを推断することができる。できる限り最も正確な個々の静電容量C
1、C
2、C
3の測定ができるようにするため、したがって、容器1の充填度Fの推断ができるようにすするため、本発明は、ディスペンサ装置の構成として、測定電極21〜26の外側の電場に対する電気遮蔽部材3を、容器1を囲んで配置している。
図13は、容器1の断面図を示しており、この断面図には、電気遮蔽部材3、測定電極21、22、容器の壁、容器1内の液体12を示している。電気遮蔽部材3は、人がディスペンサ装置100に触れて又はディスペンサ装置100に接近して、測定電極21、22に存在する電場の状態を変えても、測定電極21、22間で測定される静電容量が、歪曲されない又は無視できる程度にしか歪曲されないようにしている。本発明の第1の典型的な実施の形態では、電気遮蔽部材3は、導電性材料のフィルム、例えば、50μmの厚さを有する銅のフォイルとして形成され、この導電性材料のフィルムは、容器1と容器に接する測定電極21、22の周囲に、それらを覆うように巻き付けられている。測定電極21、22と電気遮蔽部材3は、互いに隔てられており、電気的に接続されていない。電気遮蔽部材3は、外部作用、例えば、測定電極21、22のすぐ外側の電場と誘電率の変化の影響を抑制する働きをする。電気遮蔽部材3は、測定電極21、22と容器1の両方を取り囲んでおり、測定電極と容器1との間には存在しないのが好ましい。
【0049】
図13aは、
図1の細部Zを、
図13の線B−Bに沿う断面図で示している。測定電極21、23、25と電気遮蔽部材3に向き合う容器1の壁の配置が、正確な縮尺ではないが、明示されている。フィルム3に付した個々の導体32〜34が、断面で示されている。本発明によるディスペンサ装置100のハウジングが、電気遮蔽部材3の外側にある。
【0050】
そのほか、電気遮蔽部材3を、本発明によるディスペンサ装置100の外壁のすぐ外側に及び/又は少なくとも部分的に容器1を包囲する支持体の外側に、配置することもできる。
【0051】
容器1内の液体12の現在の充填度Fを測定するため、先ず、測定電極21、22間に現存する静電容量が測定される。
図14は、1対の測定電極21、22の静電容量を測定するための測定装置を示している。
図15は、数対の測定電極21〜26を用いた測定装置を示している。
図14及び
図15では、1個の処理ユニット6が、それぞれマイクロコントローラーの形態で備わっており、この処理ユニットの上流には、1個又は3個の静電容量測定装置41、42、43が配置されている。測定電極21〜26の各対は、
図15に示す静電容量測定装置41、42、43のうちの1個と連携している。測定電極21〜26は、それぞれ、静電容量測定装置41、42、43の接続部に接続されている。静電容量測定装置41、42、43の出力は、それぞれの測定電極対の静電容量に対応した、その静電容量を表す又はその静電容量に比例する静電容量読み取り値C
1、C
2、C
3と密接であり、この静電容量読み取り値は、処理ユニット6に送られる。送信された個々の静電容量読み取り値C
1、C
2、C
3に基づき、処理ユニット6は、以下に説明する較正プロセスに基づいて充填度Fの値を決定する。処理ユニット6は、この値を、その出力において利用可能にする。この値は、求められ次第、処理ユニット6の下流のアンテナ62を経て、特に、外部のデータ通信装置(図示せず)に送ることができる。
【0052】
もちろん、使用する測定電極21〜26の対の数は、測定の精度要求に適合させてよい。特に、1対の測定電極21、22を用い、これらの測定電極21、22の間で得られた静電容量の読み取り値C
1のみを用いて充填度を測定することもできる(
図14)。
【0053】
処理ユニット6は、この場合にはスピンドルアンテナであるアンテナ62に接続された通信制御装置61の上流にある。通信制御装置61は、測定された充填度Fを、外部のデータ通信装置に送信できるようにしている。
図14及び
図15に示す回路全体が、別個の電源なしに稼働できるよう、外部のデータ通信装置は、電気エネルギーを、アンテナ62を経由して通信制御装置61,処理ユニット6、及び静電容量測定装置41〜43に送るようにすることもできる。
【0054】
以下に、得られた静電容量読み取り値C
1、C
2、C
3に基づく容器1内の液体12の充填度Fの具体的な測定を詳細に示す。
図17には、個々の静電容量読み取り値C
1、C
2、C
3の、図
15に示す本発明による容器1の実施の形態における充填度Fへの依存関係が、概略的に示されている。容器1からの排出の初めには、液体12だけが測定電極21〜26の間にある。排出中、プランジャ13は最初に、第1の測定電極対の測定電極21、22の間のスペースに入るので、液体12に対してプランジャ13の誘電率が低いため、第1の測定電極対の静電容量読み取り値C
1の連続的な低下が認められる。プランジャ13が押されて、第1の測定電極対の測定電極21、22の間の領域を通過した後は、第1の測定電極対の2個の測定電極21、22の間には空気15がある。第1の測定電極対の2個の測定電極21、22の間にある空気の誘電率がさらに低いので、これらの測定電極21、22の間で得られる静電容量読み取り値C
1は、さらに低下する。同様の挙動が、容器1を空にする間、第2及び第3の測定電極対の測定電極23〜26の間の静電容量読み取り値C
2、C
3についても認められる。
【0055】
本発明の特有の実施の形態では、個々の静電容量読み取り値C
1、C
2、C
3の合計C
sumを用いて充填度Fを測定してもよい。多数の異なる充填度Fに関して較正曲線を決定することにより、関連する個々の静電容量読み取り値C
1、C
2、C
3の合計C
sumを決定することができ、それにより、各充填度Fが、合計C
sumと関連付けられる。そのようにして作成された各々静電容量読み取り値C
sumと充填度Fを含むデータセットは、処理ユニット6内の較正メモリに保存される。
【0056】
個々の静電容量測定値C
1、C
2、C
3を測定し、決定した後、それらの合計C
sumが決定され、較正メモリに保存された個々の合計C
sumと比較される。合計C
sumが、得られた静電容量測定値C
1、C
2、C
3の合計と、最も合致する対が選択される。最も合致するC
sumと関連付けられた充填度が、容器1の充填度Fと考えられ、処理ユニット6は、この充填度Fをその出力で提供し、求められ次第、この充填度Fを、上述のように、アンテナ62を経由して外部のデータ通信装置に送信する。
【0057】
実験によると、測定電極21〜26の複合した容量結合現象に明らかに起因して、充填度Fに応じて測定された静電容量C
1、C
2、C
3の推移においてかなりのずれがあり、この推移は、
図17に明瞭に示す理論的に予想される推移からかなり偏移している。しかしながら、この測定できる曲線は、容易に再現することができ、各静電容量C
1、C
2、C
3に関して、異なる曲線の部分又は充填度の範囲において異なる勾配を示し、理論的な予想に反して、曲線の最大の勾配又は静電容量の最大の変動は、必ずしも、間に液面が現在ある測定電極21〜26の間にあるわけではない。しかし、勾配が大きいほど、測定の解答/精度が良いので、充填度を計算するために、3個の各静電容量測定値の単純な合計を形成する代わりに、加重した合計を用いることができ、較正中、曲線の各部分における3個の加数各々に対し、別々の加重値が決定される。
【0058】
個々の静電容量C
1、C
2、C
3と充填度Fとの間の換算をするため、較正が行われ、この較正では、薬剤を充填した容器1又は同じ構造を有する参照容器が空にされる。空にする間、充填度F及び個々の静電容量C
1、C
2、C
3が、各々測定される。空にする間に達した各充填度Fに関して、個々の静電容量値C
1、C
2、C
3が求められる。この典型的な実施の形態では、容器を空にする間に、30個の等間隔の充填度Fに達し、初期状態が1で示され、完全に空の状態が0で示される。静電容量読み取り値C
1、C
2、C
3は各々、それぞれの充填度Fとそれぞれの加重値a、b、cと関連付けられる基準ベクトルV
refに保存される。したがって、基準ベクトルV
refは、各充填度Fに関して求められる。加重値は、加重した合計a・C
1+b・C
2+c・C
3が、充填度Fへの線形アプローチである最適化によって定まる。
【0059】
測定により確認した静電容量読み取り値C
1、C
2、C
3に基づいて、実際の充填度Fを決定するためには、較正中に得られた加重値に基づいて、この決定をすることができ、この場合、静電容量読み取り値C
1、C
2、C
3が得られたのと同数の加重値を、各測定に関して利用することができる。先ず、確認又は測定された静電容量読み取り値C
1、C
2、C
3に基づいて、この静電容量読み取り値C
1、C
2、C
3を成分として有するベクトルV
mess−[C
1、C
2、C
3]が、生成される。次いで、このベクトルV
messは、決定した基準ベクトルと比較され、ベクトルV
messに最も距離の近い基準ベクトルが求められる。この典型的な実施の形態では、距離の尺度として、ユークリッド距離が用いられている。次いで、ベクトルV
messから次に最も近い距離をそれぞれ有する基準ベクトルが、決定される。較正によって得られた基準ベクトルV
refに適用する際に、それぞれの関連付けられる充填度Fを送り返す補間機能、例えば、線形補間機能が決定される。静電容量読み取り値C
1、C
2、C
3が、補完機能に用いられ、充填度の平均値が得られる。
【0060】
アンテナ62は、好ましくは、電気遮蔽部材3の外側に配置してスペースを節約するとよい。好ましい組み合わせをもたらすため、電気遮蔽部材3は、電気的及び磁気的に非伝導性の材料、例えば、プラスチックからなるフィルム31を有している。
図16に示すように、フィルム31には、導電路の形態の導体32〜34が設けられている。渦電流が生じ得る大きな閉じた導体のループが形成されないようにフィルム31上の導体32〜34を形成すると、外部のデータ通信装置によって発された電磁波が、電気遮蔽部材3によって実質的に影響されずに、アンテナ62によって受信されることができる。加えて、これより、アンテナ62に取り付けられた電気部品に、十分な電力を供給するのに十分な電磁波の形態のエネルギーを、アンテナに送ることも可能にしている。
【0061】
容器1内の充填度Fの測定でさらに精度が要求される場合には、例えば導電性の物体又は高い誘電体誘電率を有する物体の接触又は接近により、容器1の外側の電場が歪曲された時に、充填度Fの読み取り値を、無効にするようにしてもよい。
【0062】
電気遮蔽部材3は、複数の導体32〜34が、コーティングによって形成された電気的及び磁気的に非伝導性のフィルム31を有している。フィルム31は、この典型的な実施の形態では、可撓性のポリマーからなっている。導電路は、約50μmの層厚と約1000μmの幅を有している。導体32〜34の幅は、100〜3000μmの間であるのが好ましい。
【0063】
渦電流が生じることにより、近距離無線通信を妨害するのを防止するため、導体32〜34の幅は、3mm未満に限定してもよい。加えて、電気遮蔽部材3の内側にある測定電極21〜26の静電容量に関する影響を回避しながら、渦電流の発生を十分に防止し、近距離無線通信の妨害を回避するため、導体32〜34を、
図16に示すように、ループがない、すなわち、閉じた導体のループがない、すなわち、閉じたループを含まないように形成してもよい。
【0064】
したがって、本発明のこの特有の典型的な実施の形態では、3個のうちの2個の導体32、33が、互いに入り込む櫛形導体32、33として形成され、第3の導体34が、2個の櫛形の導体32、33の間を、蛇行する形態で延びている。もちろん、この典型的な実施の形態の他に、フィルムの表面上の或いは多層フィルムの内側又は個々の層の間の、互いに電気的に接続されていない多数の導電路又は電極のループのない構成を持つ、多数の他の典型的な実施の形態もある。フィルム31の表側と裏側に、導体32〜34を印刷することもできる。
【0065】
そのほか、複数の蛇行形状の導体34を、櫛形導体32、33の間に、互いに近接して配置することや、幾つかの導体34を、フィルム31上に螺旋状に配置してもよい。
【0066】
2個の導電路、すなわち、2個の櫛形導体のうちの1個32と蛇行形状の導体34が、接触センサー5として用いられる。第2の櫛形導体33は、所定の基準電位に設定され、電気遮蔽体としての役割をする。人が、電気遮蔽部材3に接触又は接近すると、周囲の誘電率の変化が、接触センサー5の導体32、34の間の静電容量を変化させる。導体32、34の間のこの静電容量における変化は、もう一つの静電容量測定装置44によって測定してもよく、電気遮蔽部材3の導体32、34すなわち接触センサー5は、追加の静電容量測定装置44の測定接続部に接続されている。この追加の静電容量測定装置44は、追加の静電容量読み取り値C’を測定し、この読み取り値を、
図18及び
図19に示すように、処理ユニット6に送る。
【0067】
得られた追加の静電容量読み取り値C’が、所定の閾値Tを越えると、静電容量読み取り値C
1、C
2、C
3に基づいて決定された充填度Fは、接触による誤りであるであるとみなされる。決定された充填度Fは、無効とされる。
【0068】
この特有の典型的な実施の形態では、接触センサー5として働くと同時に、櫛形導体32と蛇行形状の導体34からなる電気遮蔽部材3が、使用されている。しかしながら、物理的又は機能的見地から、電気遮蔽部材3と接触センサー5は、
図16に示す具体的な構成、すなわち、1つの平面に印刷された構成で、特に好ましく実施することのできる2個の完全に別個の異なるユニットである。もちろん、電気遮蔽部材3と接触センサー5のこの機能的分離は、実施するのが容易である。電気遮蔽部材3の導体32、33、34又は接触センサー5は、フィルム31の同一の平面上にあり、単に説明の便宜上、
図14、15、18及び19において、互いに近接して示されている。
【0069】
本発明の別の実施の形態では、本発明によるディスペンサ装置100における容器1が交換可能になっている。支持体(図示せず)が、容器1の外側で、容器1と電気遮蔽部材3との間に配置される。支持体には、測定電極21〜26が、配置される。支持体は、容器1に接しており、本発明によるディスペンサ装置100のハウジングの一部分からなるのが好ましい。測定電極21〜26は、容器1に接した支持体の壁に配置される。本発明によるディスペンサ装置100のハウジングは、開けることができ、容器1を、本発明によるディスペンサ装置100のハウジングから取り出すことができる。支持体は、本発明によるディスペンサ装置100の一部分である。
【0070】
通信制御装置61、処理ユニット6、静電容量測定装置41〜44、及びアンテナ62は、フィルム31上に配置してもよく、好ましい。