(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、多量の冷却材をバルブの中空部に注入できるものの、容器内の金属ナトリウムを溶融状態に保持する必要があり、さらに注入途中の金属ナトリウムがバルブと接触し冷却硬化して注入が妨げられることがないように、設備の温度管理が必要である等、バルブの製造設備にコストがかかる。
【0008】
特許文献2では、ノズルから押し出された細長い粘土状の金属ナトリウムが冷却硬化された状態でバルブの中空部内に注入されるが、注入される金属ナトリウムが細長いためバルブ中空部の内周面と干渉し、スムーズな注入が阻害されて中空部の奥まで注入できない。即ち、ノズルから押し出された粘土状の金属ナトリウムは、冷却硬化されているものの、中空部の深さに相当する長さをもつ形状(太さに比べて長さが非常に長い形状)であるため、湾曲し真直性が悪い場合が多々あって、スムーズな注入ができない。
【0009】
なお、金属ナトリウムをスムーズに注入するためには、注入する細長い粘土状の金属ナトリウムの径をバルブ中空部の内径よりも十分に小さくすれば対応できるが、注入された金属ナトリウムと中空部内周面との間の隙間が大きくなって、中空部内における金属ナトリウムの装填量が少なくなる分、バルブの熱引き効果が上がらない、という問題がある。
【0010】
そこで発明者は、押出機から押し出された細長い粘土状の金属ナトリウムをバルブ中空部に挿入するに際し、多くの量を挿入するためには、第1には、細長い粘土状の金属ナトリウムの外径を中空部の内径に近づけても、バルブ中空部の内周面と干渉しないようにスムーズに挿入できることが望ましい。そのためには、挿入する細長い金属ナトリウムの長さを短くして、細長い金属ナトリウムの曲がりを少なくすれば(真直性を高めれば)よい。
【0011】
第2には、中空部内に細長い金属ナトリウムを隙間なく挿入できることが望ましい。そのためには、挿入した金属ナトリウムを突き押し棒で押圧して、金属ナトリウムと中空部内周面との間の隙間をなくせばよい。
【0012】
そして、これらの方法を実際に試したところ、非常に有効であることが確認されたことで、この度の特許出願に至ったものである。
【0013】
本発明は、先行特許文献に対する発明者の前記した知見に基づいてなされたもので、その目的は、中空部に多量の冷却材を挿入できる工程を備えた中空ポペットバルブの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するために、本発明(請求項1)に係る中空ポペットバルブ
の製造方法においては、
ポペットバルブの傘部から軸部にかけて形成された中空部に冷却材が装填された中空ポペットバルブを製造する方法において、
押出機のノズルから直線状に押し出された粘土状の冷却材を切断して所定長さの冷却材ロッドを形成する冷却材ロッド形成工程と、
前記中空部に相当する穴が設けられたバルブ中間品の該穴の開口部から該穴に前記冷却材ロッドを挿入する冷却材ロッド挿入工程と、
前記穴の開口部を密閉する密閉工程と、を備えた中空ポペットバルブの製造方法であって、
前記冷却材ロッド挿入工程では、複数回に分けて冷却材ロッドを前記バルブ中間品の穴に挿入するように構成した。
【0015】
(作用)冷却材ロッド挿入工程において、バルブ中間品の中空部に相当する穴に、例えば、2回に分けて冷却材ロッドを挿入する場合は、挿入する冷却材ロッドそれぞれの長さが、1回で挿入する場合に必要な冷却材ロッドの長さの、例えば約半分となる。
【0016】
冷却材ロッドの長さが短いと、その変形や曲がりが小さく、バルブ中間品の穴に挿入する際の穴の内周面との干渉を回避できる。このため、冷却材ロッドの外径をバルブ中間品の穴径(中空部の内径)により近い値に設定することで、挿入された冷却材ロッドと中空部内周面との間の隙間が減少する分、それだけ多量の冷却材をバルブ中間品の中空部に相当する穴に挿入できる。
【0017】
請求項2においては、請求項1に記載の中空ポペットバルブの製造方法において、
前記バルブ中間品の穴に挿入された冷却材ロッドを突き押し棒によって押圧する冷却材ロッド押圧工程を備えるように構成した。
【0018】
(作用)バルブ中間品の穴に挿入された冷却材ロッドと穴の内周面との間には、僅かな隙間が形成されるが、突き押し棒によって押圧された冷却材ロッドは、穴の内周面に密着するように塑性変形して、冷却材ロッド外周に発生した隙間が消失する。即ち、消失する隙間相当だけ多くの冷却材をバルブ中間品の穴に挿入できる。
【0019】
また、冷却材ロッド挿入工程において、バルブ中間品の穴に挿入される冷却材ロッドが
穴(中空部)の途中に引っかかって中空部の奥まで挿入されない場合であっても、突き押し棒が冷却材ロッドを突き押しするので、冷却材ロッドは
穴(中空部)の奥まで確実に挿入される。
【0020】
請求項3においては、請求項2に記載の中空ポペットバルブの製造方法において、
前記冷却材ロッド押圧工程では、前記バルブ中間品の穴の開口部から挿入した前記突き押し棒の挿入量に基づいて、前記冷却材ロッドの有無および前記冷却材ロッド長の適否を判断するように構成した。
【0021】
(作用)請求項2
の作用に示すように、突き押し棒は、バルブ中間品の穴に挿入された冷却材ロッドを押圧して、穴の内周面に密着するように塑性変形させる作用を備えているが、この突き押し棒の下方への移動量は、冷却材ロッドが穴に確かに挿入されているか否か、さらには、冷却材ロッドの長さが適正か否かを検出するという作用も備えている。
【0022】
即ち、バルブ中間品の穴に適正な長さの冷却材ロッドが挿入されている場合は、突き押し棒の下方への移動量は一定である。一方、何らか理由で、穴に冷却材ロッドが挿入されていないとか、冷却材ロッドの長さが短か過ぎる場合、あるいは逆に、冷却材ロッドの長さが長過ぎる場合は、突き押し棒の穴内下方への移動量が設定範囲外となる。
【0023】
請求項4においては、請求項1〜3のいずれかに記載の中空ポペットバルブの製造方法において、
前記冷却材ロッド形成工程では、下方に開口する前記ノズルに正対するように円筒形状の治具を配置して、ノズルから押し出された冷却材がその先端側から前記治具内に挿入されるように構成し、
前記ノズルから所定量の冷却材が押し出されると、前記ノズルからの冷却材の押し出し動作が停止するとともに、前記ノズル近傍に設けたカッタが作動して直線状の冷却材を所定位置で切断し、切断された所定長さの冷却材ロッドが前記治具内に収容保持されるように構成した。
【0024】
(作用)例えば、押出機のノズルから一度に押し出す冷却材の量を管理することで、カッタによって切断された冷却材は、設計値どおりの長さの冷却材ロッドとして、円筒形状の治具に収容保持される。
【0025】
また、ノズルから押し出された冷却材は、その先端側から円筒形状の治具内に挿入されて真っ直ぐな直線状に保持された状態で、直交する方向にカッタで切断されるので、カッタによって切断される部位が変形することなく、冷却材ロッドの切断端面が冷却材の延出方向に対し直交する平面となる。
【0026】
また、カッタによって切断された冷却材ロッドは、切断されると同時に円筒形状の治具に収容保持されるので、冷却材ロッドが他部材と接触すると変形し易い金属ナトリウムであっても、変形させることなく冷却材ロッド挿入工程に搬送できる。
【0027】
したがって、冷却材ロッド挿入工程に搬送された冷却材ロッドは、切断端面が変形していない、真っ直ぐな直線状の冷却材ロッドであるため、バルブ中間品の中空部に相当する穴の内周面と干渉させることなくスムーズに冷却材ロッドを穴に挿入できる。
【0028】
請求項5においては、請求項1〜4のいずれかに記載の中空ポペットバルブの製造方法において、
前記冷却材ロッド形成工程において前記治具内に収容保持された冷却材ロッドは、治具に収容された状態で前記冷却材ロッド挿入工程に搬送されて、前記バルブ中間品の中空部に相当する穴の開口部上方に正対するように配置されるとともに、ガス圧によって前記治具から押し出されて前記バルブ中間品の前記穴に挿入されるように構成した。
【0029】
(作用)治具内の冷却材ロッドは、ガス圧によってバルブ中間品の中空部に相当する穴にスムーズにかつ瞬時に挿入されるので、冷却材ロッドが外気に触れる時間が非常に短い。即ち、冷却材ロッド挿入工程において、治具内の冷却材ロッドをバルブ中間品の穴に挿入するまでの時間が非常に短いので、冷却材が金属ナトリウムのように酸化し易いものである場合に特に有効で、冷却材ロッドを治具からバルブ中間品の穴に押し込むために用いる高圧ガスとしては、不活性ガスを用いることが望ましい。
【0030】
不活性ガスを採用すれば、押出機のノズルから押し出された冷却材は、バルブ中間品の中空部に相当する穴に挿入されるまでの間の酸化が確実に抑制されるので、冷却材ロッド表面が粘つかず、バルブ中間品の中空部に相当する穴へのスムーズな挿入が妨げられることもない。
【0031】
また、請求項6においては、請求項1〜5のいずれかに記載の中空ポペットバルブの製造方法において、
前記バルブ中間品の傘部底面には、軸部側の小径中空部に連通する傘部側の大径中空部が開口し、
前記冷却材ロッド挿入工程では、前記大径中空部の開口部から前記冷却材ロッドを挿入し、
前記密閉工程では、前記大径中空部の開口部にキャップを溶接するように構成した。
【0032】
(作用)バルブ中間品は、軸部側の小径中空部に連通する傘部側の大径中空部が傘部底面側に開口する構造で、大径中空部の開口部から冷却材ロッドを挿入した後に、大径中空部の開口部にキャップを溶接して中空部を密閉することで、冷却材を中空部に装填した中空ポペットバルブを製造できる。
【0033】
また、請求項7においては、請求項1〜5のいずれかに記載の中空ポペットバルブの製造方法において、
前記バルブ中間品の軸端部には、傘部側の大径中空部に連通する軸部側の小径中空部が開口し、
前記冷却材ロッド挿入工程では、前記小径中空部の開口部から前記冷却材ロッドを挿入し、
前記密閉工程は、前記小径中空部が開口する、前記バルブ中間品の軸端部に軸端部材を接合するように構成した。
【0034】
(作用)バルブ中間品は、傘部側の大径中空部に連通する軸部側の小径中空部が軸端部に開口する構造で、軸端部の開口部から冷却材ロッドを挿入した後に、軸端部に軸端部材を接合して中空部を密閉することで、冷却材を中空部に装填した中空ポペットバルブを製造できる。
【発明の効果】
【0035】
本発明に係る中空ポペットバルブ
の製造方法によれば、冷却材ロッド挿入工程において、多量の冷却材をバルブ中間品の中空部に相当する穴に挿入できるので、中空部に多量の冷却材が装填された熱引き効果に優れた中空ポペットバルブが提供される。
【0036】
請求項2に係る中空ポペットバルブの製造方法によれば、より多量の冷却材をバルブ中間品の中空部に相当する穴に挿入できるので、中空部により多量の冷却材が装填された熱引き効果にいっそう優れた中空ポペットバルブが提供される。
【0037】
請求項3に係る中空ポペットバルブの製造方法によれば、バルブ中間品の中空部に挿入された冷却材の量が突き押し棒によって直接管理されるので、中空部に装填される冷却材の量は常に一定となって、一定の品質の中空ポペットバルブが提供される。
【0038】
請求項4に係る中空ポペットバルブの製造方法によれば、冷却材ロッド形成工程で形成された冷却材ロッドは、治具に収容保持されて冷却材ロッド挿入工程に搬送されるので、冷却材ロッド挿入工程で取り扱う冷却材ロッドは、切断端面が変形していない、真っ直ぐな直線状の冷却材ロッドであり、バルブ中間品の中空部に相当する穴への挿入が容易となる分、冷却材ロッド挿入工程をスムーズに遂行できる。
【0039】
請求項5に係る中空ポペットバルブの製造方法によれば、中空部に装填する冷却材が酸化し易いものであっても、押出機のノズルから押し出された後、バルブ中間品の中空部に相当する穴に挿入されるまでの間の酸化が確実に抑制されるので、中空部に多量の酸化し易い冷却材が装填された熱引き効果に優れた中空ポペットバルブが提供される。
【0040】
請求項6に係る中空ポペットバルブの製造方法によれば、傘部底面側に中空部に相当する穴が開口するバルブ中間品を用いて、中空部に多量の冷却材を装填した中空ポペットバルブを製造できる。
【0041】
請求項7に係る中空ポペットバルブの製造方法によれば、軸端部に中空部に相当する穴が開口するバルブ中間品を用いて、中空部に多量の冷却材を装填した中空ポペットバルブを製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0043】
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づいて説明する。
【0044】
図1は、本発明の第1の実施例方法によって製造された内燃機関用の中空ポペットバルブを示し、
図2は、同中空ポペットバルブが開閉動作(軸方向に往復動作)する際の中空部内の冷却材の動きを拡大して示す図である。
【0045】
図1において、符号10は、真っ直ぐに延びる軸部12の一端側に、外径が徐々に大きくなるR形状のフィレット部13を介して、傘部14が一体的に形成された耐熱合金製の中空ポペットバルブで、傘部14の外周には、テーパ形状のフェース部16が設けられている。
【0046】
詳しくは、軸部12の一端部に傘部外殻14aが一体的に形成された軸一体型バルブ中間品(以下、単にバルブ中間品という)11(
図1,3参照)と、傘部外殻14aの円錐台形状の凹部14bにおける開口部(大径中空部S1の開口部)14cに溶接された円盤形状のキャップ18とによって、傘部14から軸部12にかけて中空部Sが設けられた中空ポペットバルブ10が構成され、中空部Sには、冷却材(金属ナトリウム)19がアルゴンガスなどの不活性ガスとともに装填されている。冷却材19は、例えば、中空部Sの容積の60〜90%の量が封入されている。
【0047】
なお、
図1における符号2はシリンダヘッドで、符号6は燃焼室4から延びる排気通路で、排気通路6の燃焼室4への開口周縁部には、バルブ10のフェース部16が当接できるテーパ面8aを備えた円環状のバルブシート8が設けられている。符号3は、シリンダヘッド2に設けられたバルブ挿通孔で、バルブ挿通孔3の内周面には、バルブ10の軸部12が摺接するバルブガイド3aが配設されている。符号9は、バルブ10を閉弁方向に付勢するバルブスプリングである。
【0048】
また、中空部Sは、傘部14内に設けられた円錐台形状の大径中空部S1と、軸部12内に設けられた直線状(棒状)の小径中空部S2とが直交するように連通する構造で、大径中空部S1の円形天井面(小径中空部S2の開口周縁部である傘部外殻14aの円錐台形状の凹部14bの底面)14b1は、バルブ10の中心軸線Lに対し直交する平面で構成されている。
【0049】
即ち、大径中空部S1における小径中空部S2との連通部Pには、大径中空部S1側から見て庇状の環状段差部15が形成されており、この環状段差部15の大径中空部S1に臨む側(面)14b1がバルブ10の中心軸線Lに対し直交する平面で構成されている。換言すれば、小径中空部
S2の開口周縁部(傘部外殻14aの円錐台形状の凹部14bの底面)14b1と、小径中空部
S2の内周面によって庇状の環状段差部15が画成されている。
【0050】
このため、バルブ10が開閉動作する際に、大径中空部S1内の冷却材(液体)19には、
図2(a)の矢印F1→F2→F3や
図2(b)の矢印F6→F8に示すように、縦方向内回りの循環流(対流)が形成され、同時に、小径中空部S2内の冷却材(液体)19にも、乱流F4,F5やF7が形成される。即ち、バルブ10の開閉動作の際に、中空部S内全体の冷却材(液体)19に形成される対流(循環流)や乱流によって、中空部S内の冷却材(液体)19の下層部,中層部,上層部が積極的に攪拌されることとなって、バルブ10における熱引き効果(熱伝導性)が大幅に改善されている。
【0051】
なお、バルブ10が開閉動作する際に、大径中空部S1内の冷却材(液体)19に、縦方向内回りの循環流(対流)が形成され、同時に、小径中空部S2内の冷却材(液体)19にも、乱流が形成されて、中空部S内の冷却材(液体)19の下層部,中層部,上層部が積極的に攪拌されるという作用については、2012年10月2日出願のPCT/JP2012/075452に詳しく説明されている。
【0052】
次に、中空ポペットバルブ10の製造工程を、
図3に基づいて説明する。
【0053】
まず、
図3(a)に示すように、熱間鍛造により、円錐台形状の凹部14bを設けた傘部外殻14aと軸部12とを一体的に形成したバルブ中間品11を成形する。傘部外殻14aにおける円錐台形状の凹部14bの底面14b1は、軸部12(バルブ中間品11の中心軸線L)に対し直交する平面で形成されている。
【0054】
熱間鍛造工程としては、金型を順次取り替える押し出し鍛造で、耐熱合金製ブロックからバルブ中間品11を製造する押し出し鍛造、またはアップセッタで耐熱合金製棒材の端部に球状部を据え込んだ後に、金型を用いてバルブ中間品11(の傘部外殻14a)を鍛造する据え込み鍛造のいずれであってもよい。なお、熱間鍛造工程において、バルブ中間品11の傘部外殻14aと軸部12との間には、R形状フィレット部13が形成され、傘部外殻14aの外周面には、テーパ形状フェース部16が形成される。
【0055】
次に、傘部外殻14aの凹部14bが上向きとなるようにバルブ中間品11を配置し、傘部外殻14aの凹部14bの底面14b1から軸部12にかけて、小径中空部S2に相当する所定深さの穴14e(
図3(a)の一点鎖線参照)をドリル加工により穿設する(穴穿設工程)。
【0056】
この穴穿設工程により、大径中空部S1を構成する傘部外殻14aの凹部14bと、小径中空部S2を構成する軸部12側の穴14eが連通することで、凹部14bと穴14eの連通部には、凹部14b側から見て庇状の環状段差部15(
図1参照)が形成される。
【0057】
一方、
図3(b)に示す工程では、第1の押出機20のノズル21から直線状に押し出された粘土状の冷却材(金属ナトリウム)19を所定の長さに切断し、切断した冷却材ロッド19aを第1の治具30に収容保持する第1のロッド形成・保持工程が行われる。
【0058】
即ち、下向きに配設された第1の押出機20のノズル21の近傍には、ノズル21から直線状に押し出された粘土状の冷却材19を切断するカッタ22が設けられ、カッタ22の下方所定位置には、ノズル21から押し出され自重で下方に垂下する直線状の冷却材19をその先端側から受け入れるとともに、カッタ22によって切断された冷却材ロッド19aを収容保持するための治具30が配置されている。
【0059】
治具30は、
図4(a)に示すように、透明アクリル樹脂製の円筒形状の治具本体32と、中央に円孔34aが設けられて下方に開口するカップ型のガイド部34が、それぞれの中心軸が一致するように、ハウジング31によって上下に一体化された構造で、治具本体32には、治具本体32内に収容する冷却材ロッド19aを担持する係止ピン33が設けられている。
【0060】
詳しくは、治具本体32には、直径方向に貫通して延びるピン挿通孔32aが設けられるとともに、ピン挿通孔32aに沿って進退動作可能な係止ピン33が設けられている。そして、係止ピン33が治具本体32内に突出する形態では、治具本体32内の冷却材ロッド19aの下端部が係止ピン33によって担持されるが、ピン33を後退させて治具本体32から抜き出した形態では、ピン33の担持がなくなった冷却材ロッド19aは、自重で下方に移動可能となる。即ち、ガイド部34の円孔34aを通って下方に落下可能となる。
【0061】
なお、第1の押出機20のノズル21の内径は、バルブ10の小径中空部S2の内径(例えば、3.0mmφ)より僅かに小さい寸法(例えば、2.5mmφ)に形成されており、ノズル21から押し出される直線状の冷却材19、および切断された冷却材ロッド19aの外径は、それぞれ2.5mmφに形成される。また、冷却材ロッド19aの長さは、軸部12内に小径中空部S2の長さより僅かに短くなるように設定され、治具本体32の長さは、冷却材ロッド19aの設定長よりも幾分長く構成されている。
【0062】
また、治具本体32の内径は、ノズル21から押し出される直線状の冷却材19をスムーズに受け入れ可能なように、押し出される直線状の冷却材19の外径(例えば、2.5mmφ)より十分に大きい、例えば3.5mmφに形成されている。また、ガイド部34の円孔34aの孔径は、バルブ10の小径中空部S2の内径(例えば、3.0mmφ)と同じ3.0mmφに形成されている。
【0063】
また、1度にノズル21から押し出される冷却材19の量(長さ)は、例えば、押出機20に内蔵されているピストン(図示せず)の移動量によって管理されており、ピストンの移動停止に伴いノズル21からの冷却材19の押し出し動作が停止するとともに、カッタ22が作動し、直線状に延出する冷却材19を所定の長さに切断する。即ち、ノズル21から押し出される冷却材19の量(長さ)は、あらかじめ決まっており、ノズル21から押し出された冷却材19は、その先端側から円筒形状の治具本体32内に挿入されて真っ直ぐな直線状に保持された状態で、両側からカッタ22によって直交する方向に切断されるため、切断される部位が変形しないし、しかも冷却材ロッド19aの切断端面は冷却材19の延出方向に対し直交する平面となる。
【0064】
カッタ22によってノズル21から切り離された冷却材19は、所定長さの冷却材ロッド19aとして、下方の治具30(円筒形状の治具本体32)に収容保持されて、
図3(c)に示すロッド挿入工程に搬送される。
【0065】
図3(c)に示す工程では、バルブ中間品11が傘部外殻14a側を上に向けた形態で下方から支持されており、冷却材ロッド19aを収容した治具30は、ガイド部34の凹部35がバルブ中間品11の傘部外殻
14aに係合するように配置される。即ち、バルブ中間品11の中心軸Lと治具本体32の中心軸L1が一致するように、治具本体30がバルブ中間品11の傘部外殻14aの上方に配置されるとともに、治具本体32の上方開口部には、高圧ガス供給ノズル38(
図5参照)が係合保持される。
【0066】
そして、ノズル38から治具本体32内に高圧アルゴンガスが供給されるとともに、治具本体32から係止ピン33が後退することで、治具本体32内の冷却材ロッド19aは、ガイド部34の円孔34aを通って下方のバルブ中間品11の小径中空部S2内に瞬時に挿入される。
【0067】
なお、ガイド部34の下側には、
図4(a),
図5,
図6に示すように、バルブ傘部14が係合できる凹部35が形成され、凹部35は、円孔34aが設けられた円形天井面35aと、円形天井面35aの外周縁から下方に延びる円筒形の第1の内周面35bで構成されている。
【0068】
そして、円形天井面35aと第1の内周面35bには、天井面35aに沿って半径方向に延びた後、第1の内周面35bに沿って下方に延びる溝36(36a,36b)が形成されており、この溝36(36a,36b)は、治具本体32内の冷却材ロッド19aを下方のバルブ中間品11の小径中空部S2内に挿入する際に、中空部S内のガスを外部に排出するガス抜き孔として機能する。
【0069】
即ち、ガイド部34の凹部35に傘部外殻14aを係合させた状態(円形
天井面35aに傘部外殻
14aの開口部端面を密着させた状態)で、治具本体32内に上方から高圧ガスが供給されるとともに、係止ピン33が後退すると、治具本体32内の冷却材ロッド19aは、ガスの圧力でバルブ中間品11の小径中空部S2内に押し込まれるが、冷却材ロッド19aに押圧された中空部S(小径中空部S2)内のガスが、傘部外殻14aとガイド部34の凹部35間に画成された溝36(36a,36b)を介して外部に排出されることで、冷却材ロッド19aをバルブ中間品11の小径中空部S2内に瞬時の挿入できる。
【0070】
また、高圧ガス供給ノズル38には、ガス圧検出センサ38aおよび表示灯38bが設けられており、表示灯38bは、治具本体32内のガス圧が所定値以上で点灯し、所定値以下となったときに消灯するので、冷却材ロッド19aが治具本体32から確実に排出されて、バルブ中間品11の中空部Sに挿入されたことを作業者が視覚的に確認できる。
【0071】
詳しくは、
図5の二点差線に示すように、冷却材ロッド19aの後端部がガイド部34の円孔34aを通過すると、高圧ガスがガス抜き孔である溝36を介して排気されて、治具本体32内の圧力が低下するが、冷却材ロッド19aの一部でもガイド部34内に存在する場合は、治具本体32内の圧力が低下しないので、表示灯38bは点灯したままとなるため、冷却材ロッド19aの治具30(のガイド部34)からの排出が不完全であることを視覚的に認識できる。
【0072】
図3(c)に示す工程において、冷却材ロッド19aの小径中空部S2への挿入が終了すると、治具30(治具本体32)が第1の押出機20のノズル21の下方所定位置まで搬送されて戻され、バルブ中間品11の傘部外殻14aの上方が開放されることで、
図3(d)に示す冷却材ロッド押圧工程に移行する。
【0073】
即ち、
図3(d)に示す工程では、バルブ中間品11の小径中空部S2内の冷却材ロッド19aを上方から突き押し棒40aで突き押しして、冷却材ロッド19aを小径中空部S2の内周面に密着するように塑性変形させる。即ち、冷却材19と小径中空部S2内周面間の隙間をなくために、突き押し棒40aで冷却材ロッド19aを押圧する。
【0074】
このため、前工程(冷却材ロッド挿入工程)において、バルブ中間品11の穴に挿入された冷却材ロッド19aが小径中空部S2の途中に引っかかって奥まで挿入されない場合があっても、突き押し棒40aが冷却材ロッド19aを突き押しするので、冷却材ロッド19aは小径中空部S2の奥まで確実に挿入される。
【0075】
また、突き押し棒40aの下方への移動量は、冷却材ロッド19aが小径中空部S2に確かに挿入されているか否か、さらには、冷却材ロッド19aの長さが適正か否かを検出できる。即ち、適正な長さの冷却材ロッド19aが挿入されている場合は、突き押し棒40aの下方への移動量は一定である。一方、何らか理由で、小径中空部S2に冷却材ロッド19aが挿入されていないとか、冷却材ロッド19aの長さが短か過ぎる場合、あるいは逆に、冷却材ロッド19aの長さが長過ぎる場合は、突き押し棒40aの中空部S内下方への移動量が設定範囲外となる。
【0076】
このように、
図3(d)に示す冷却材ロッド押圧工程では、突き押し棒40aの下方への移動量から、冷却材ロッド19aが小径中空部S2に適正に挿入されているか否か、冷却材ロッド19aの長さが適正かを検出できる。
【0077】
一方、
図3(d)に示す第1の冷却材ロッド押圧工程が行われている間に、
図3(e)に示す工程では、第2の押出機20Aのノズル21Aから直線状に押し出された冷却材19をカッタ22Aで切断し、切断した所定長さの冷却材ロッド19bを下方に配置した第2の治具30Aに収容保持する第2のロッド形成・保持工程を行う。
【0078】
図3(e)に示す第2のロッド形成・保持工程は、
図3(b)に示す第1のロッド収容・保持工程に対応する工程で、第2の押出機20Aのノズル21Aの内径は、大径中空部S1への挿入に適した太さの冷却材ロッド19bを形成できるように、小径中空部S2の孔径(例えば、3.0mmφ)よりは十分に大きく、かつ大径中空部S1の孔径よりは十分に小さい所定値に形成されている。なお、第2の押出機20Aのノズル21Aから押し出される冷却材19の量(長さ)は、第1の押出機20の場合と同様に、あらかじめ決まっており、その重複した説明は省略する。
【0079】
また、第2の治具30Aを構成する透明アクリル樹脂製の円筒形状の治具本体32Aの軸方向の長さは、大径中空部S1への挿入に適した冷却材ロッド19bを収容できるように、大径中空部S1の深さに対応した所定の長さに形成されている。
【0080】
即ち、第2の治具30Aは、基本的には、
図3(b),(c)に示す工程で使用する第1の治具30Aと同様の構造であるが、治具本体32Aの内径および軸方向長さは、ノズル21Aから押し出される直線状の冷却材19をスムーズに受け入れ可能で、切断された冷却材ロッド19bを収容保持できる所定の大きさに形成されている。
【0081】
また、ハウジング31A(
図4(b)参照)によって治具本体32Aに連通するように一体化されているガイド部34Aにおいても、冷却材ロッド19bが通過できる適切な大きさの円孔34bが設けられるとともに、ガイド部34Aの下側には、傘部外殻14aが係合できる凹部35が形成され、凹部35には、ガス抜き孔として機能する溝36(36a,36b)が形成されている。
【0082】
その他は、
図4(a),
図5に示す第1の治具30と同一であり、同一の符号を付すことで、その重複した説明は省略する。
【0083】
そして、
図3(e)に示す工程において、押出機20A(のノズル21A)から所定量(長さ)の冷却材19が押し出されると、ノズル21からの冷却材19の押し出し動作が停止するとともに、カッタ22が作動し、直線状に延出する冷却材19を所定の長さに切断する。
【0084】
ノズル21Aから押し出された冷却材19は、その先端側から円筒形状の治具本体32A内に挿入されて真っ直ぐな直線状に保持された状態で、両側からカッタ22によって直交する方向に切断されて、切断される部位が変形しないので、冷却材ロッド19bの切断端面は冷却材19の延出方向に対し直交する平面となる。
【0085】
ノズル21Aから切り離された冷却材19は、所定長さの冷却材ロッド19bとして、下方の治具30A(円筒形状の治具本体32A)に収容保持されて、
図3(f)に示す第2の冷却材ロッド挿入工程に搬送される。
【0086】
図3(f)に示す工程は、冷却材ロッド19bを大径中空部S1に挿入する工程で、バルブ中間品11は、その傘部外殻14a側を上に向けた形態で支持されており、バルブ中間品11の小径中空部S2の奥には、冷却材19が隙間なく装填されている。
【0087】
詳しくは、
図3(d)に示す第1の冷却材押圧工程において、突き押し棒40aによる冷却材ロッド19aの押圧が終了すると、突き押し棒40aが当初の所定位置まで抜き出されることで、バルブ中間品11の傘部外殻14aの上方が開放される。そして、バルブ中間品11の傘部外殻14aの上方所定位置には、
図3(e)に示す工程によって、冷却材ロッド19bを収容した治具30A(治具本体32A)が、
図3(f)に示すように、ガイド部34の凹部35が傘部外殻14aに係合するように配置される。
【0088】
即ち、
図3(f)に示す第2の冷却材ロッド挿入工程では、冷却材ロッド19bを収容した治具30Aが、バルブ中間品11と治具本体32Aの中心軸が一致するように、バルブ中間品11の傘部外殻14aの開口部上方所定位置に正確に位置決め保持されるとともに、治具本体32Aの上方開口部には、高圧ガス供給ノズル38(
図5参照)が係合保持される。
【0089】
そして、ノズル38から治具本体32A内に高圧アルゴンガスを供給するとともに、治具本体32Aから係止ピン33が後退することで、治具本体32A内の冷却材ロッド19bは、ガイド部34の円孔34bを通って下方のバルブ中間品11の大径中空部S1内に瞬時に挿入される。
【0090】
図3(f)に示す工程において、冷却材ロッド19bの大径中空部S1への挿入が終了すると、治具30(治具本体32)が第2の押出機20Aのノズル21Aの下方所定位置まで搬送されて戻され、バルブ中間品11の傘部外殻14aの上方が開放されることで、
図3(g)に示す冷却材ロッド押圧工程に移行する。
【0091】
即ち、
図3(g)に示す工程では、バルブ中間品11の小径中空部S2内の冷却材ロッド19aを上方から突き押し棒40bで突き押しして、冷却材ロッド19bの一部を小径中空部S2内に押し込むとともに、冷却材ロッド19bを小径中空部S2および大径中空部
S1の内周面に密着するように塑性変形させる。
【0092】
なお、
図3(g)に示す冷却材押圧工程においても、突き押し棒40bの下方への移動量から、冷却材ロッド19bが大径中空部S1に適正に挿入されているか否か、冷却材ロッド19bの長さが適正かを検出できる。
【0093】
最後に、
図3(h)に示す工程において、アルゴンガス雰囲気下で、バルブ中間品11の傘部外殻14aの凹部14bの開口部14cにキャップ18を溶接(例えば、抵抗溶接)して、バルブ中間品11の中空部Sを密閉する(中空部密閉工程)。キャップ18の溶接は、抵抗溶接に代えて、電子ビーム溶接やレーザー溶接等を採用してもよい。
【0094】
なお、冷却材19である金属ナトリウムは酸化し易いことから、
図3(b)〜
図3(h)に示す工程は、冷却材19である金属ナトリウムの酸化を極力避けるために、アルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気において行うことが望ましい。
【0095】
図7,8は、本発明の第2の実施例方法によって製造された中空ポペットバルブおよび同中空ポペットバルブの製造工程を示す。
【0096】
前記した第1の実施例の中空ポペットバルブ10の大径中空部S1が円錐台形状に構成されているのに対し、この第2の実施例の中空ポペットバルブ10Aの中空部S’は、傘部14から軸部12にかけて一定の内径に形成されている。
【0097】
また、軸端部に開口し傘部14から軸部12aにかけて中空部S’に相当する穴が設けられたバルブ中間品11Aの軸部12aの端部には、機械的強度に優れた軸端部材12bが軸接により一体化されることで、冷却材(金属ナトリウム)19を装填した中空部S’に相当する穴が密閉されている。
【0098】
その他の構成は、前記した第1の実施例に係る中空ポペットバルブ10と同一であり、同一の符号を付すことで、その重複した説明は省略する。
【0099】
次に、中空ポペットバルブ10Aの製造工程を、
図8に基づいて説明する。
【0100】
まず、
図8(a)に示すように、熱間鍛造または据え込み鍛造により、傘部14と軸部12aとを一体的に形成したバルブ中間品11Aを成形する。
【0101】
次に、軸部12aの端面から傘部14にかけて、中空部S’に相当する所定深さの穴14e(
図8(a)の一点鎖線参照)をドリル加工により穿設する(穴穿設工程)。
【0102】
一方、
図8(b)に示す工程では、第1の押出機20のノズル21から直線状に押し出された粘土状の冷却材19をカッタ22で所定の長さに切断し、切断した冷却材ロッド19cを第1の治具30B(の円筒形状の治具本体32B)に収容する第1のロッド形成・収容保持工程を行う。
【0103】
第1の治具30Bは、前記した第1の実施例方法で用いた治具30(
図4,5参照)と比べて、治具本体32Bが治具本体32と比べて軸方向の長さが短く形成されていることと、ガイド部34Aの凹部35Aがバルブ中間品11Aの軸端部に係合できる大きさに形成されていることが異なり、その他は同一構造であるので、同一の符号を付すことで、重複する説明は省略する。
【0104】
図8(b)に示す工程において、カッタ22によってノズル21から切り離された冷却材19は、所定長さの冷却材ロッド19cとして、下方の治具30B(円筒形状の治具本体32B)に収容保持されて、
図8(c)に示すロッド挿入工程に搬送される。
【0105】
図8(c)に示す工程では、バルブ中間品11Aが軸端部における中空部S’の開口部を上に向けた形態で下方から支持されており、冷却材ロッド19cを収容した治具30Bは、ガイド部34Aの凹部35Aがバルブ中間品11Aの軸端部に係合するように配置され、治具本体32の上方開口部には、高圧ガス供給ノズル38(
図5参照)が係合保持される。
【0106】
そして、ノズル38から治具本体32B内に高圧アルゴンガスが供給されるとともに、治具本体32Bから係止ピン33が後退することで、治具本体32B内の冷却材ロッド19cは、ガイド部34の円孔34aを通って下方のバルブ中間品11Aの中空部S’内に瞬時に挿入される。
【0107】
図8(c)に示す工程において、冷却材ロッド19cの中空部S’への挿入が終了すると、治具30B(治具本体32B)が第1の押出機20のノズル21の下方所定位置まで搬送されて戻され、バルブ中間品11Aの軸端部の上方が開放されることで、
図8(d)に示す冷却材ロッド押圧工程に移行する。
【0108】
即ち、
図8(d)に示す工程では、バルブ中間品11Aの中空部S’内の冷却材ロッド19cを上方から突き押し棒40aで突き押しして、冷却材ロッド19cを中空部S’の内周面に密着するように塑性変形させる。
【0109】
図8(d)に示す第1の冷却材押圧工程が行われている間に、
図8(e)に示す工程では、第2の押出機20Aのノズル21から直線状に押し出された冷却材19をカッタ22で切断し、切断した所定長さの冷却材ロッド19dを下方に配置した第2の治具30Cに収容保持する第2の冷却材ロッド形成・保持工程を行う。
【0110】
第2の治具30Cは、
図8(
b),(
c)で使用する第1の治具30Bと同一構造であるので、同一の符号を付すことで、重複する説明は省略する。
【0111】
図8(e)に示す工程において、ノズル21Aから切り離された冷却材19は、所定長さの冷却材ロッド19dとして、下方の治具30C(円筒形状の治具本体32C)に収容保持されて、
図3(f)に示す第2の冷却材ロッド挿入工程に搬送される。
【0112】
図8(f)に示す工程は、冷却材ロッド19dを中空部S’に挿入する工程で、バルブ中間品11Aは、その軸端部側を上に向けた形態で支持されており、バルブ中間品11Aの中空部S’の奥には、冷却材19が隙間なく装填されている。
【0113】
詳しくは、
図8(d)に示す第1の冷却材押圧工程において、突き押し棒40aによる冷却材ロッド19cの押圧が終了すると、突き押し棒40aが当初の所定位置まで抜き出されることで、バルブ中間品11Aの軸端部の上方が開放される。そして、バルブ中間品11Aの軸端部の上方所定位置には、
図8(e)に示す工程によって、冷却材ロッド19dを収容した治具30C(治具本体32C)は、
図8(f)に示すように、ガイド部34Aの凹部35Aがバルブ中間品11Aの軸端部に係合するように配置される。
【0114】
そして、ノズル38を介して治具本体32C内に高圧アルゴンガスを供給するとともに、係止ピン33を抜き出すことで、治具本体32Cの下方に押し出された冷却材ロッド19dがバルブ中間品11の中空部S’内に瞬時に挿入される。
【0115】
次いで、
図8(g)に示す工程では、バルブ中間品11Aの中空部S’内の冷却材ロッド19dを上方から突き押し棒40bで突き押しして、中空部S’の内周面に密着するように塑性変形させる。
【0116】
最後に、
図8(h)に示す工程において、アルゴンガス雰囲気下で、バルブ中間品11Aの軸端部に軸端部材12bを軸接することで、バルブ10Aの中空部S’を密閉する(中空部密閉工程)。
【0117】
なお、冷却材19である金属ナトリウムは酸化し易いことから、
図8(b)〜
図8(h)に示す工程は、冷却材19である金属ナトリウムの酸化を極力避けるために、不活性ガス雰囲気において行うことが望ましい。
【0118】
また、
図7,8に示す第2の実施例の中空ポペットバルブ10Aでは、中空部S’が傘部から軸部にかけて一定の内径に形成されており、軸端部に開口し傘部14から軸部12aにかけて中空部S’に相当する穴が設けられたバルブ中間品11Aの軸端部に、軸端部材12bが軸接により一体化されることで、冷却材19を装填した中空部S’に相当する穴を密閉するように構成されているが、本発明方法は、
図9,10に示す第3の実施例の中空ポペットバルブ10Bのように、傘部14側の大径中空部S1と軸部12側の小径中空部S2が連通する中空部S”が形成された構造で、軸端部に開口し傘部14から軸部12にかけて中空部S”に相当する穴が設けられたバルブ中間品11Bの軸端部に、軸端部材12bが軸接により一体化されることで、冷却材19を装填した中空部S”に相当する穴を密閉するバルブの製造方法にも適用できる。
【0119】
この第3の実施例の中空ポペットバルブ10Bの製造工程は、
図8に示す中空ポペットバルブ10Aの製造工程と同一で、
図10(a),(b)は、
図8(c),(d)に示す工程にそれぞれ対応する図で、
図10(a)は、第1の冷却材ロッド挿入工程によって小径中空部S2に第1の冷却材ロッド19aが挿入されたバルブ中間品の断面図を示し、
図10(b)は、小径中空部S2に挿入された第1の冷却材ロッド19aを突き押し部材40aで押圧した状態のバルブ中間品の断面図を示す。
【0120】
図10(b)に示す第1の冷却材ロッド押圧工程では、中空部S2内の第1の冷却材ロッド19aが突き押し部材40aで押圧されることで、大径中空部S1内に隙間なく充填される。
【0121】
その他の工程は、
図8に示す中空ポペットバルブ10Aの製造工程と同一であるので、その重複する説明は省略する。
【0122】
なお、前記した第1,第2,第3の実施例方法では、いずれの場合も、2回に分けて冷却材ロッドをバルブ中間品の中空部に相当する穴に挿入しているが、3回以上に分けて挿入してもよい。
【0123】
また、前記した実施例方法では、バルブの中空部に不活性ガスとともに冷却材19である金属ナトリウムが装填された中空ポペットバルブ10,10A,10Bの製造方法について説明したが、中空部S,S’,S”に装填する冷却材19としては、金属ナトリウムに代えて、酸化しにくい亜鉛アルミ合金(ZnAl)であってもよい。
【0124】
亜鉛アルミ合金は、酸化しにくいため、不活性ガスとともにバルブの中空部に装填する必要はなく、空気とともにバルブの中空部に装填するようにしてもよいことから、冷却材を保管する設備、冷却材を装填する設備がそれぞれ簡潔になり、それだけ中空バルブの製造コストを大幅に低減できる。