(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1または2記載のセメント系硬化物の乾燥収縮低減方法において、前記尿素を含有する溶液は尿素を水に溶解させた溶液であることを特徴とするセメント系硬化物の乾燥収縮低減方法。
請求項1または2記載のセメント系硬化物の乾燥収縮低減方法において、前記尿素を含有する溶液は尿素を非イオン系界面活性剤に溶解させた溶液であることを特徴とするセメント系硬化物の乾燥収縮低減方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述のように従来のコンクリートの乾燥収縮低減の技術においては、コストや手間の問題がある。
【0011】
また、非特許文献1に記載されているように、尿素を混和した場合のコンクリートの乾燥収縮低減効果は既知である。しかし、これらは尿素をコンクリートに混和したものであり、尿素の溶液をコンクリート表面に塗布する技術はこれまでにない。
【0012】
本発明はこのような背景のもとに開発されたものであり、尿素を混和剤としてではなく硬化したモルタルやコンクリートなどの表面から含浸させることでこれらの乾燥収縮低減を図ったものであり、コストや手間のかからない経済的かつ効率的なセメント系硬化物の乾燥収縮低減方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のセメント系硬化物の乾燥収縮低減方法は、
脱型後のコンクリートやモルタルなどのセメント系硬化物
の表面に尿素を含有する溶液を含浸させることを特徴とするものである。
【0014】
セメント系硬化物に尿素を含有する溶液を含浸させる方法としては、セメント系硬化物がプレキャスト製品など、比較的小さく、移動可能な単体として扱うことができるものであれば、セメント系硬化物を溶液中に一定時間浸漬してもよい。
【0015】
建物や構造物の場合は尿素を含有する溶液をセメント系硬化物の表面に塗布することで含浸させることができる。あるいは条件によっては吹き付けでもよい。
【0016】
尿素を含有する溶液としては、尿素を単に水に溶解させた溶液でよい。尿素自体が安価であるため、水に溶解させたものを非常に安価な乾燥収縮低減剤として用いることができる。
【0017】
また、水以外の液体を用い、その液体に尿素を溶解させたものを使用することもできる。尿素を溶解させる液体は、尿素による乾燥収縮低減効果を損なわないものであれば、特に限定されない。
【0018】
また、水の代わりに用いる液体として、それ自体が乾燥収縮低減効果を有する溶液を用い、その溶液に尿素を溶解させたものを使用することもできる。
乾燥収縮低減効果を有する好ましい溶液としては、非イオン系界面活性剤が挙げられ、例えばグリコールエーテル系誘導体を含む乾燥収縮低減剤などが市販されている。
【0019】
非イオン系界面活性剤は表面張力を低減させることで、尿素が硬化物に浸透しやすくなると考えられ、またそれ自体の乾燥収縮低減効果も期待できる。
【0020】
溶液中の尿素の濃度は、特に限定されず、尿素は比較的安価であるため、他の有意なデメリットが生じない範囲で尿素量を増すことで乾燥収縮低減の増大が期待できる。
【0021】
含浸の時期は、脱型直後あるいは脱型後数日以内程度が望ましいと考えられるが、尿素の濃度を高めたり含浸の時間を長くしたり、あるいは含浸の程度を深めることで時期的な遅れのデメリットをある程度カバーすることができる。
【0022】
硬化体の表面が風雨にさらされる場合、尿素が溶けだし、尿素による乾燥収縮低減効果が薄れる可能性が考えられる。建築構造物の内部などについては、風雨にさらされることがないため、特に問題とはならないと考えられる。外部構造物の場合、尿素を含浸させるとともに、必要に応じ表面に防水処理を施すことも考えられる。
【発明の効果】
【0023】
尿素を水に溶解させた溶液の場合でも、脱型後のコンクリートに塗布するだけで、20〜40%程度の乾燥収縮の低減が見込まれ、尿素は非常に安価であるため、収縮低減にかかるコストの大幅な削減が可能となる。
【0024】
尿素をコンクリートに混和する場合に比べ、尿素の使用量が少ない量で済む。また、尿素をモルタルやコンクリートに混和する場合に比べ作業が容易である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明のセメント系硬化物の乾燥収縮低減方法の具体例を、比較例との効果を確認するために行った実験に基づいて説明する。
【0027】
〔実験1〕
実験1では、水セメント比40%の通常モルタルの硬化物に尿素を含有する水を含浸させた場合の効果の確認を行った。
【0028】
(1) 実験条件
実験条件を表1に示す。
【0030】
表1において、
c:普通ポルトランドセメント
w:水
s:川砂
尿素濃度=尿素(g)/(尿素(g)+水(g))=50%
【0031】
表1における供試体に対する記号は以下の条件を示している。
N:含浸処理なし。
3日水:脱型3日後に供試体を水に1分間浸漬。
7日水:脱型7日後に供試体を水に1分間浸漬。
3日
尿素:脱型3日後に供試体を尿素濃度50%の溶液に1分間浸漬。
7日
尿素:脱型7日後に供試体を尿素濃度50%の溶液に1分間浸漬。
【0032】
さらに、実験1では、材齢91日(13週)で各供試体を水に浸漬(1度目の浸漬)し、材齢119日(17週)で各供試体を再度水に浸漬(2度目の浸漬)することで、尿素の効果に影響があるかどうかを調べた。
【0033】
(2) 実験結果
実験結果を
図1に示す。
図1は、横軸を脱型後の材齢(日)、縦軸を長さ変化率(%)として表したグラフである。
【0034】
含浸処理を行わなかった供試体(N)は、乾燥収縮により材齢91日までに長さが約0.112%短くなり、その後ほぼ一定の長さを維持した。
【0035】
脱型3日後に水に1分間浸漬した供試体(3日水)は、乾燥収縮により材齢91日までに長さが約0.106%短くなり、1度目の浸漬で一旦長さ変化率−0.082%程度に回復したが、その後急激に乾燥収縮が進み、材齢119日で長さ変化率−0.110%程度となり、2度目の浸漬で一旦長さ変化率−0.092%程度に回復したが、材齢147日(21週)では、供試体(N)とほぼ同じ長さ変化率(−0.112%程度)となった。
【0036】
脱型7日後に水に1分間浸漬した供試体(7日水)は、乾燥収縮により材齢91日までに長さが約0.114%短くなり、1度目の浸漬で一旦長さ変化率−0.087%程度に回復したが、その後急激に乾燥収縮が進み、材齢119日で長さ変化率−0.119%程度となり、2度目の浸漬で一旦長さ変化率−0.100%程度に回復したが、材齢147日(21週)では、長さ変化率−0.123%程度となった。
【0037】
脱型3日後に供試体を尿素濃度50%の溶液に1分間浸漬した供試体(3日尿素)は、乾燥収縮により材齢91日までに長さが約0.090%短くなり、1度目の浸漬で一旦長さ変化率0.066%程度に回復したが、その後乾燥収縮が進み、材齢119日で長さ変化率−0.089%程度となり、2度目の浸漬で一旦長さ変化率−0.072%程度に回復したが、材齢147日(21週)では、長さ変化率−0.090%程度であった。
【0038】
脱型7日後に供試体を尿素濃度50%の溶液に1分間浸漬した供試体(7日尿素)は、乾燥収縮により材齢91日までに長さが約0.090%短くなり、1度目の浸漬で一旦長さ変化率0.075%程度に回復したが、その後乾燥収縮が進み、材齢119日で長さ変化率−0.100%程度となり、2度目の浸漬で一旦長さ変化率−0.085%程度に回復したが、材齢147日(21週)では、長さ変化率−0.102%程度であった。
【0039】
(3) まとめ
実験1では、水に尿素を溶解させた溶液をモルタル硬化物の表面に含浸させることで、含浸処理を行わなかった場合や、水を含浸させた場合に比べ、硬化物の乾燥収縮を10〜20%程度低減できることが確認された。
【0040】
なお、材齢91日と材齢119日で水に浸漬させたことにより、乾燥収縮低減効果に影響があるか否かについては、供試体(3日尿素)と体供試体(7日尿素)で長さ変化率が若干広がっているがその影響は明確ではない。
【0041】
〔実験2〕
実験2では、水セメント比60%の通常モルタルの硬化物に尿素を含有する水を含浸させた場合の効果の確認を行った。
【0042】
(1) 実験条件
実験条件を表2に示す。
【0044】
表2において、
c:普通ポルトランドセメント
w:水
s:川砂
尿素濃度=尿素(g)/(尿素(g)+水(g))=50%
【0045】
表2における供試体に対する記号は以下の条件を示している。
N:含浸処理なし。
3日水:脱型3日後に供試体を水に1分間浸漬。
7日水:脱型7日後に供試体を水に1分間浸漬。
3日
尿素:脱型3日後に供試体を尿素濃度50%の溶液に1分間浸漬。
7日
尿素:脱型7日後に供試体を尿素濃度50%の溶液に1分間浸漬。
【0046】
さらに、実験2では、材齢91日(13週)で各供試体を水に浸漬(1度目の浸漬)し、材齢119日(17週)で各供試体を再度水に浸漬(2度目の浸漬)することで、尿素の効果に影響があるかどうかを調べた。
【0047】
(2) 実験結果
実験結果を
図2に示す。
図2は、横軸を脱型後の材齢(日)、縦軸を長さ変化率(%)として表したグラフである。
【0048】
含浸処理を行わなかった供試体(N)は、乾燥収縮により材齢91日までに長さが約0.108%短くなり、材齢147日(21週)では、長さ変化率−0.112%程度となった。
【0049】
脱型3日後に水に1分間浸漬した供試体(3日水)は、乾燥収縮により材齢91日までに長さが約0.104%短くなり、1度目の浸漬で一旦長さ変化率−0.083%程度に回復したが、その後急激に乾燥収縮が進み、材齢119日で長さ変化率−0.109%程度となり、2度目の浸漬で一旦長さ変化率−0.087%程度に回復したが、材齢147日(21週)では、供試体(N)とほぼ同じ長さ変化率(−0.114%程度)となった。
【0050】
脱型7日後に水に1分間浸漬した供試体(7日水)は、乾燥収縮により材齢91日までに長さが約0.112%短くなり、1度目の浸漬で一旦長さ変化率−0.088%程度に回復したが、その後急激に乾燥収縮が進み、材齢119日で長さ変化率−0.117%程度となり、2度目の浸漬で一旦長さ変化率−0.094%程度に回復したが、材齢147日(21週)では、長さ変化率−0.122%程度となった。
【0051】
脱型3日後に供試体を尿素濃度50%の溶液に1分間浸漬した供試体(3日尿素)は、乾燥収縮により材齢91日までに長さが約0.072%短くなり、1度目の浸漬で一旦長さ変化率0.052%程度に回復したが、その後乾燥収縮が進み、材齢119日で長さ変化率−0.076%程度となり、2度目の浸漬で一旦長さ変化率−0.055%程度に回復したが、材齢147日(21週)では、長さ変化率−0.077%程度であった。
【0052】
脱型7日後に供試体を尿素濃度50%の溶液に1分間浸漬した供試体(7日尿素)は、乾燥収縮により材齢91日までに長さが約0.078%短くなり、1度目の浸漬で一旦長さ変化率0.058%程度に回復したが、その後乾燥収縮が進み、材齢119日で長さ変化率−0.078%程度となり、2度目の浸漬で一旦長さ変化率−0.060%程度に回復したが、材齢147日(21週)では、長さ変化率−0.080%程度であった。
【0053】
(3) まとめ
実験2では、水に尿素を溶解させた溶液をモルタル硬化物の表面に含浸させることで、含浸処理を行わなかった場合や、水を含浸させた場合に比べ、硬化物の乾燥収縮を30%程度低減できることが確認された。
【0054】
なお、材齢91日と材齢119日で水に浸漬させたことにより、乾燥収縮低減効果に影響があるか否かについては、供試体(3日尿素)と体供試体(7日尿素)で長さ変化率が若干縮まっているがその影響は明確ではない。
【0055】
〔実験3〕
実験3では、実験1、2の結果を参考に、さらに尿素の濃度を変化させた場合、尿素の浸漬時間を変化させた場合、尿素を水以外の液体に溶解させた溶液を用いた場合などについて、その効果の確認を行った。
【0056】
(1) 実験条件
実験条件を表3に示す。
【0058】
表3において、
c:普通ポルトランドセメント
w:水
s:川砂
尿素濃度=尿素(g)/(尿素(g)+水、NGまたはNF1000(g))
【0059】
NG:株式会社フローリック製の商品名「ヌッテガード」(登録商標)
NF1000:ドーピー建設工業株式会社製の商品名「なおしタルNF」(なおしタルは登録商標)を水で1000倍(重量比)に希釈したもの
【0060】
なお、上記なおしタルNFは、普通セメント、シリカヒューム、高炉スラグ微粉末を紛体主成分とし、ナイロン繊維、乾燥収縮低減のための非イオン系界面活性剤などを加えたプレミックス断面修復モルタル材として市販されているものである。
【0061】
表3における供試体に対する記号は以下の条件を示している。
N:含浸処理なし。
3日水:脱型3日後に供試体を水に1分間浸漬。
7日水:脱型7日後に供試体を水に1分間浸漬。
3日水10分:脱型3日後に供試体を水に10分間浸漬。
7日水10分:脱型7日後に供試体を水に10分間浸漬。
3日水30分:脱型3日後に供試体を水に30分間浸漬。
7日水30分:脱型7日後に供試体を水に30分間浸漬。
【0062】
3日尿素30%:脱型3日後に供試体を尿素濃度30%の溶液に1分間浸漬。
7日尿素30%:脱型7日後に供試体を尿素濃度30%の溶液に1分間浸漬。
3日尿素40%:脱型3日後に供試体を尿素濃度40%の溶液に1分間浸漬。
7日尿素40%:脱型7日後に供試体を尿素濃度40%の溶液に1分間浸漬。
3日尿素50%:脱型3日後に供試体を尿素濃度50%の溶液に1分間浸漬。
7日尿素50%:脱型7日後に供試体を尿素濃度50%の溶液に1分間浸漬。
3日尿素50%10分:脱型3日後に供試体を尿素濃度50%の溶液に10分間浸漬。
7日尿素50%10分:脱型7日後に供試体を尿素濃度50%の溶液に10分間浸漬。
3日尿素50%30分:脱型3日後に供試体を尿素濃度50%の溶液に30分間浸漬。
7日尿素50%30分:脱型7日後に供試体を尿素濃度50%の溶液に30分間浸漬。
【0063】
3日NG:脱型3日後に供試体をNG溶液に1分間浸漬。
7日NG:脱型7日後に供試体をNG溶液に1分間浸漬。
3日NF:脱型3日後に供試体をNF1000溶液に1分間浸漬。
7日NF:脱型7日後に供試体をNF1000溶液に1分間浸漬。
3日尿素+NF:脱型3日後に供試体を尿素濃度50%のNF1000溶液に1分間浸漬。
7日尿素+NF:脱型7日後に供試体を尿素濃度50%のNF1000溶液に1分間浸漬。
尿素濃度=尿素(g)/(尿素(g)+NF1000(g))
3日尿素+NF+NG:脱型3日後に供試体を尿素濃度50%のNF1000溶液およびNG溶液の混合溶液に1分間浸漬。
7日尿素+NF+NG:脱型7日後に供試体を尿素濃度50%のNF1000溶液およびNG溶液の混合溶液に1分間浸漬。
尿素濃度=尿素(g)/(尿素(g)+NF1000(g)+NG(g))
NF1000(g)=NG(g)
【0064】
さらに、実験3では、材齢91日(13週)で各供試体を水に浸漬(1度目の浸漬)し、材齢119日(17週)で各供試体を再度水に浸漬(2度目の浸漬)することで、尿素の効果に影響があるかどうかを調べた。
【0065】
(2) 実験結果
実験結果を
図3〜
図7に示す。
図3は、実験3において、尿素を脱型3日後に含浸させた場合について、尿素の濃度を変化させたケース(3日尿素30%、3日尿素40%、3日尿素50%)における材齢(日)と長さ変化率(%)の関係を示したグラフである。
【0066】
材齢91日(13週)時点で、3日尿素30%および3日尿素40%では約23%、3日尿素50%では約33%の乾燥収縮低減効果がみられた。
途中、2回の水への浸漬を行った後の材齢119日(17週)では、3日尿素30%では約27%、3日尿素40%では約30%、3日尿素50%では約37%の乾燥収縮低減効果がみられた。
【0067】
結果として、尿素濃度30%と40%とでは乾燥収縮低減効果の差は顕著ではなかったが、尿素濃度50%では乾燥収縮低減効果の差が顕著であった。
【0068】
図4は、実験3において、尿素を脱型7日後に含浸させた場合について、尿素の濃度を変化させたケース(7日尿素30%、7日尿素40%、7日尿素50%)における材齢(日)と長さ変化率(%)の関係を示したグラフである。
【0069】
材齢91日(13週)時点で、7日尿素30%では約9%、7日尿素40%では約6%、7日尿素50%では約19%の乾燥収縮低減効果がみられた。
途中、2回の水への浸漬を行った後の材齢119日(17週)では、7日尿素30%では約9%、7日尿素40%では約11%、7日尿素50%では約16%の乾燥収縮低減効果がみられた。
【0070】
尿素を脱型7日後に含浸させた場合についても、尿素濃度30%と40%とでは乾燥収縮低減効果の差は顕著ではなかったのに対し、尿素濃度50%では乾燥収縮低減効果の差が顕著であり、尿素を脱型3日後に含浸させた場合と同様の傾向が見られた。
しかしながら、乾燥収縮低減効果としては、尿素を脱型7日後に含浸させた場合より尿素を脱型3日後に含浸させた場合の効果が大きい。
【0071】
図5は、実験3において、尿素を脱型3日後に含浸させた場合について、尿素の濃度を50%とし、浸漬時間を変化させたケース(3日尿素50%、3日尿素50%10分、3日尿素50%30分)における材齢(日)と長さ変化率(%)の関係を、尿素を含まない水に浸漬したケース(3日水、3日水10分、3日水30分)と対比して示したグラフである。
【0072】
尿素を含まない水に浸漬したケースについてみると、3日水(1分浸漬)と3日水10分では長さ変化率にほとんど差がないのに対し、3日水30分では長さ変化率が大きくなっている。これは脱型3日目という比較的早期に水に浸漬した場合において、長い時間水に浸漬させると硬化後の乾燥収縮が大きくなることを示している。
【0073】
一方、尿素を含むケース(尿素濃度は50%)では、1分、10分、30分と浸漬時間が長いほど乾燥収縮低減効果が大きいことが分かった。これは尿素が硬化物の表面から内部へより深く浸透して行ったためと思われる。
【0074】
図6は、実験3において、尿素を脱型7日後に含浸させた場合について、尿素の濃度を50%とし、浸漬時間を変化させたケース(7日尿素50%、7日尿素50%10分、7日尿素50%30分)における材齢(日)と長さ変化率(%)の関係を、尿素を含まない水に浸漬したケース(7日水、7日水10分、7日水30分)と対比して示したグラフである。
【0075】
尿素を含まない水に浸漬したケースについてみると、7日水(1分浸漬)と7日水10分、7日水30分で長さ変化率に顕著な差は見られなかった。
【0076】
一方、尿素を含むケース(尿素濃度は50%)では、1分、10分、30分と浸漬時間が長いほど乾燥収縮低減効果が大きい点は、尿素を脱型3日後に含浸させた場合と同様であるが、浸漬時間が短い1分の7日尿素50%の場合では、より乾燥収縮低減効果が発揮されている
図5の3日尿素50%との差が大きいのに対し、7日尿素50%10分、7日尿素50%30分と徐々に、
図5の3日尿素50%10分、3日尿素50%30分との効果の差が縮まっている。
【0077】
図7は、実験3において、比較例として市販の乾燥収縮低減剤溶液および市販のプレミックス断面修復モルタル材の水溶液を含浸させたケース(3日NG、7日NG、3日NF、7日NF)の比較結果における材齢(日)と長さ変化率(%)の関係を示すグラフである。
【0078】
塗布型の乾燥収縮低減剤溶液である3日NG、7日NGについては、含浸処理を行わなかったNに対し、乾燥収縮低減効果があらわれているが、他の条件が同じである
図3の3日尿素50%、
図4の7日尿素50%と同程度の効果であった。
【0079】
市販の断面修復モルタル材を1000倍(重量比)に希釈した3日NF、7日NFについては、含浸処理を行わなかったNと顕著な差は見られなかった。
【0080】
図8は、実験3において、尿素を市販のプレミックス断面修復材の水溶液、およびこれに市販の乾燥収縮低減剤溶液を加えた液に溶解させた溶液を含浸させたケース(3日尿素+NF、7日尿素+NF、3日尿素+NF+NG、7日尿素+NF+NG)における材齢(日)と長さ変化率(%)の関係を示すグラフである。
【0081】
結果として、尿素を水以外の溶液に溶解させた溶液を用いた場合にも乾燥収縮低減効果が得られることが確認されたが、実験3で用いたモルタルについては水の場合と水以外の溶液の場合で顕著な効果の差違はみられなかった。
【0082】
(3) まとめ
実験3では、尿素の濃度、浸漬時間、水以外の溶液に尿素を溶解させた場合について、種々のケースを比較したが、傾向として尿素の濃度は高いほど、また浸漬時間が長いほど乾燥収縮低減効果が大きかった。また、尿素の濃度が高く、浸漬時間が長くなると、脱型から含浸までの日数の長短の影響が縮小した。
【0083】
〔実験4〕
実験1〜3がモルタル硬化物に対する実験であったのに対し、実験4では、水セメント比50%のコンクリート硬化物を対象として実験を行った。
【0084】
(1) 実験条件
実験条件を表4に示す。
【0086】
表4において、
c:普通ポルトランドセメント
w:水
s:川砂
a:川砂+砂利6号
sp:高性能AE減水剤
NF:ドーピー建設工業株式会社製の商品名「なおしタルNF」(なおしタルは登録商標)を水で1000倍(重量比)に希釈したもの(NF1000溶液)
【0087】
表4における供試体に対する記号は以下の条件を示している。
N:含浸処理なし。
水:脱型3日後に供試体を水に1分間浸漬。
尿素+NF1分:脱型3日後に供試体を尿素濃度50%のNF1000溶液に1分間浸漬。
尿素+NF10分:脱型3日後に供試体を尿素濃度50%のNF1000溶液に10分間浸漬。
尿素+NF30分:脱型3日後に供試体を尿素濃度50%のNF1000溶液に30分間浸漬。
尿素濃度=尿素(g)/(尿素(g)+NF1000(g))=50%
【0088】
(2) 実験結果
実験結果を
図9に示す。
図9は、横軸を脱型後の材齢(日)、縦軸を長さ変化率(%)として表したグラフである。
【0089】
材齢21日(3週)時点で、水に浸漬したケースは、含浸処理を行わなかったNに対し、乾燥収縮低減効果はみられないが、尿素+NF1分では約20%、尿素+NF1分では約37%、尿素+NF1分では約54%長さ変化率が低減し、乾燥収縮低減効果が顕著である。
【0090】
(3) まとめ
モルタルに対する実験1〜3では、尿素を水に溶解させたものを含浸させた場合の効果が顕著であったが、コンクリートに対する実験4では非イオン系界面活性剤などを含む市販のプレミックス断面修復モルタル材を希釈した溶液に尿素を溶解させたものを用いた場合に顕著な乾燥収縮低減効果が得られた。
【解決手段】コンクリートやモルタルなどのセメント系硬化物に尿素を含有する溶液を、セメント系硬化物に塗布したり、吹き付けたり、あるいは尿素を含有する溶液に一定時間浸漬させるセメント系硬化物の乾燥収縮低減方法。尿素を含有する溶液は、尿素を単に水に溶解させた溶液でよい。又、尿素を溶解させる液体は、尿素による乾燥収縮低減効果を損なわないものであれば、特に限定されず、それ自体が乾燥収縮低減効果を有する溶液を用い、その溶液に尿素を溶解させたものを使用することもできる。