特許第6163256号(P6163256)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6163256フリーホイーリングダイオードの極性を認識する方法および装置、アクチュエータ回路、および車両のための安全装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6163256
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】フリーホイーリングダイオードの極性を認識する方法および装置、アクチュエータ回路、および車両のための安全装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/26 20140101AFI20170703BHJP
   G01M 17/007 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
   G01R31/26 C
   G01M17/007 K
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-513283(P2016-513283)
(86)(22)【出願日】2014年5月6日
(65)【公表番号】特表2016-520834(P2016-520834A)
(43)【公表日】2016年7月14日
(86)【国際出願番号】EP2014059158
(87)【国際公開番号】WO2014184042
(87)【国際公開日】20141120
【審査請求日】2015年11月11日
(31)【優先権主張番号】102013208690.3
(32)【優先日】2013年5月13日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501125231
【氏名又は名称】ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(72)【発明者】
【氏名】カーナー,リューディガー
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルカー,シュテッフェン
【審査官】 荒井 誠
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭60−042973(JP,U)
【文献】 特開2007−118934(JP,A)
【文献】 特開昭50−128472(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/138074(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/26
G01R 31/02
G01M 17/00−17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(100)のための安全デバイス(102)のための誘導式のアクチュエータ(104)と並列に配線されたフリーホイーリングダイオード(106)の極性を認識する方法において、前記方法は次の各ステップを含んでおり、すなわち、
前記フリーホイーリングダイオード(106)の接続部(114)に検査電流(341)が印加(231)され、
検査電流(341)の印加(231)中に前記接続部(114)で生じている電圧(343)と閾値電圧(345)との間の比較が実行され(233)、比較の結果(124)が前記フリーホイーリングダイオード(106)の極性を表しており、
印加(231)のステップで、前記フリーホイーリングダイオード(106)が前記誘導式のアクチュエータ(104)との関連で正しい極性で配線されている場合に前記フリーホイーリングダイオード(106)の陰極に相当する前記接続部(114)に検査電流(341)が印加される、方法。
【請求項2】
印加(231)のステップで、前記誘導式のアクチュエータ(104)を始動させるための活動化電流の電流値よりも低い電流値を有する検査電流(341)が印加される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
検査電流(341)の印加(231)のステップは前記誘導式のアクチュエータ(104)を制御するための制御デバイス(112)の初期化段階中または通常動作モード中に実行される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
実行(233)のステップで、比較の結果(124)は、前記接続部(114)で生じている電圧(343)が閾値電圧(345)よりも高いときに、前記フリーホイーリングダイオード(106)が正しい極性で配線されていることを表しており、および/または実行(233)のステップで、比較の結果(124)は、前記接続部(114)で生じている電圧(343)が閾値電圧(345)よりも低いときに、前記フリーホイーリングダイオード(106)が反対の極性で配線されていることを表している、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
実行(233)のステップで、検査電流(341)の印加(231)中に前記接続部(114)で生じている電圧(343)と閾値電圧(345)との間で少なくとも1つの別の比較が実行され、それぞれの比較の結果(124)の組み合わせが前記フリーホイーリングダイオード(106)の極性を表している、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
データバス(126)へのインターフェースを介して診断信号を受信するステップを有しており、検査電流(341)の印加(231)のステップは前記診断信号の受信に対する応答として実行される、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
車両(100)のための安全デバイス(102)のための誘導式のアクチュエータ(104)と並列につながれたフリーホイーリングダイオード(106)の極性を検査する装置(110)において、前記装置は次の各構成要素を有しており、すなわち、
前記フリーホイーリングダイオード(106)の接続部(114)に検査電流(341)を印加するデバイス(120)と、
検査電流(341)の印加(231)中に前記接続部(114)で生じている電圧(343)と閾値電圧(345)との間で比較を実行するデバイス(122)とを有しており、比較の結果(124)が前記フリーホイーリングダイオード(106)の極性を表しており、
前記フリーホイーリングダイオード(106)が前記誘導式のアクチュエータ(104)との関連で正しい極性で配線されている場合に、前記印加するデバイス(120)が、前記フリーホイーリングダイオード(106)の陰極に相当する前記接続部(114)に検査電流(341)を印加するように構成されている、装置。
【請求項8】
アクチュエータ回路において、次の各構成要件を有しており、すなわち、
安全デバイス(102)を活動化させるための誘導式のアクチュエータ(104)と、
第1の接続部(114)および第2の接続部(116)を有する前記フリーホイーリングダイオード(106)であって、前記フリーホイーリングダイオード(106)は前記第1および前記第2の接続部(114,116)を介して前記誘導式のアクチュエータ(104)と並列に配線されているものと、
前記フリーホイーリングダイオード(106)の極性を検査する請求項7に記載の装置(110)とを有しており、検査電流(341)を印加する前記印加するデバイス(120)は検査電流(341)を前記フリーホイーリングダイオード(106)の前記第1の接続部(114)に印加するために構成されており、前記比較を実行するデバイス(122)は前記第1の接続部(114)で生じている電圧(343)と閾値電圧(345)との間で比較を実行するために構成されているアクチュエータ回路。
【請求項9】
車両(100)のための安全装置において、前記安全装置は次の各構成要件を有しており、すなわち、
車両(100)が衝突したときに人間を保護するための安全デバイス(102)と、
請求項8に記載のアクチュエータ回路であって、前記アクチュエータ回路の誘導式のアクチュエータ(104)が前記安全デバイス(102)と結合されているものと、
前記誘導式のアクチュエータ(104)に活動化電流を提供するための制御デバイス(112)とを有しており、それにより前記誘導式のアクチュエータ(104)およびこれに伴って前記誘導式のアクチュエータ(104)と結合されている前記安全デバイス(102)を車両(100)の衝突時に活動化させることができる安全装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のための安全デバイスのための誘導式のアクチュエータと並列に配線されたフリーホイーリングダイオードの極性を認識する方法および装置、アクチュエータ回路、および車両のための安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえばエアバッグのような車両の安全デバイスを作動させるために、誘導負荷の形態の誘導式のアクチュエータを利用することができる。誘導負荷(たとえばローエネルギーアクチュエータ、略してLEA)によってたとえばエアバッグ点火電流のような活動化電流がオフになるとき、発生しているエネルギーまたはインダクタンスの電圧を、たとえばASICの形態の制御デバイスの最終段で低減させなくてよいようにするために、離散したフリーホイーリングダイオードが用いられる。その場合、このようなフリーホイーリングダイオードが反対の極性で組み付けられるのを回避しなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
以上の背景のもとで、車両のための安全デバイスのための誘導式のアクチュエータと並列に配線されたフリーホイーリングダイオードの極性を認識する方法および装置、アクチュエータ回路、および車両のための安全装置がそれぞれ主請求項に基づいて提供される。好ましい実施形態は、それぞれの従属請求項および以下の説明から明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
フリーホイーリングダイオードに検査電流が印加され、その結果として生じるフリーホイーリングダイオードの電圧が評価されることによって、誘導式のアクチュエータと並列に配線されたフリーホイーリングダイオードの極性をチェックすることができる。電圧の評価は、簡単な閾値比較によって行えるという利点がある。さらに極性は、誘導式のアクチュエータの使用開始中または作動中に、すなわち誘導式のアクチュエータが組み付けられた状態で行うことができる。
【0005】
車両のための安全デバイスのための誘導式のアクチュエータと並列に配線されたフリーホイーリングダイオードの極性を認識する方法は、次の各ステップを含んでいる:
【0006】
フリーホイーリングダイオードの接続部に検査電流が印加される;および、
【0007】
検査電流の印加中に接続部で生じている電圧と閾値電圧との間の比較が実行され、比較の結果がフリーホイーリングダイオードの極性を表す。
【0008】
車両とは、たとえば乗用車、商用車、またはオートバイであると理解することができる。
【0009】
安全デバイスとは、乗員、車両または他の交通関与者を損害から守るために構成された、車両のデバイスであると理解することができる。これに該当するのは、たとえばロールバー、アクティブエンジンフード、アクティブ車両シート、安全ベルトの弛みをなくす装置、エアバッグなどである。
【0010】
誘導式のアクチュエータとは、誘導式のアクチュエータを通って流れる活動化電流に対する応答として安全デバイスを活動化させ、始動させ、運動させ、または調整するために構成されたデバイスであると理解することができる。アクチュエータは、活動化電流に対する応答として、安全デバイスを活動化させるための磁界を生成するために構成されていてよい。すなわち、これは磁気式のアクチュエータであり得る。そしてこのような磁界が磁化可能な材料に対して力を及ぼし、これを受けて当該材料が磁界の中で動く。この運動がひいては保持装置のロック解除をもたらすことができ、それによって安全デバイスを始動させることができる。それは、たとえば安全デバイスそのものが機械的な応力のもとにあり、この応力に蓄えられているエネルギーが保持装置のロック解除によって解放されることによる。たとえば、アクチュエータはインダクタンスやコイルを有することができ、またはインダクタンスもしくはコイルとして製作されていてよい。
【0011】
フリーホイーリングダイオードとは、本件においては、フリーホイーリングダイオードが正しい極性である場合に、誘導式のアクチュエータにより誘導される電圧をフリーホイーリングダイオードを介して低減することができるように取り付けられたダイオードであると理解することができる。フリーホイーリングダイオードの極性が誤っている場合、誘導式のアクチュエータを始動させるための活動化電流が、アクチュエータを通って流れる代わりにフリーホイーリングダイオードを通って流れ、そのようにしてアクチュエータの始動を妨げることがある。したがって、フリーホイーリングダイオードの極性を、配線された状態または組み付けられた状態で、検査または認識できるようにすることが重要である。
【0012】
検査電流は、適当な電流源または電圧源を用いたうえで、フリーホイーリングダイオードの接続部に印加することができる。フリーホイーリングダイオードと誘導式のアクチュエータが1つのアクチュエータユニットを形成していれば、フリーホイーリングダイオードの接続部および誘導式のアクチュエータの接続部と接続されたアクチュエータユニットの接続部に、検査電流を印加することもできる。
【0013】
比較を実行するために、フリーホイーリングダイオードの接続部で生じている電圧を検出して、事前に定義された値を有することができる閾値電圧と比較することができる。閾値電圧は、フリーホイーリングダイオードのダイオード導通電圧よりも大きくなっていてよい。比較を実行するために適当な比較器、たとえばコンパレータを使用することができる。比較の結果に依存して、結果を表してフリーホイーリングダイオードの極性を示す比較信号を出力することができる。別案として、比較信号に対応する比較値を読み出すことができる。
【0014】
1つの実施例では、印加のステップで、誘導式のアクチュエータを始動させるための活動化電流の電流値よりも低い電流値を有する検査電流が印加される。このようにして、フリーホイーリングダイオードの極性を認識することができ、その一方で、誘導式のアクチュエータの誤作動を回避することができる。
【0015】
検査電流が印加されるステップは、誘導式のアクチュエータを制御するための制御デバイスの初期化段階中に実行することができる。その代替または追加として、検査電流が印加されるステップは、誘導式のアクチュエータを制御するための制御デバイスの通常動作モード中に実施することができる。このようにして、正しい極性または誤った極性すなわち反対の極性を、車両に組み込まれた適当な回路によって認識することができる。
【0016】
制御デバイスとは、誘導式のアクチュエータを用いた安全デバイスの活動化を制御するのに適したデバイスであると理解することができる。たとえば制御デバイスは集積回路として施工されていてよい。制御デバイスは、フリーホイーリングダイオードの極性を認識する方法の各ステップを実施または制御するために構成されたデバイスを含むことができる。
【0017】
印加のステップで、フリーホイーリングダイオードが誘導式のアクチュエータとの関連で、または誘導式のアクチュエータのコントロールデバイスとの関連で、正しい極性で配線されている場合にフリーホイーリングダイオードの陰極に相当する接続部に検査電流を印加することができる。このようなコントロールデバイスは、たとえば誘導式のアクチュエータおよびこれに伴ってフリーホイーリングダイオードを動作電圧電位と制御式に接続するためのスイッチを有することができる。たとえばアクチュエータを活動化させるために、誘導式のアクチュエータの第1の接続部を活動化電圧と接続するとともに、誘導式のアクチュエータの第2の接続部をアースと接続することができる。フリーホイーリングダイオードが正しく取り付けられており、それに伴って正しい極性になっているとき、フリーホイーリングダイオードの陰極は、誘導式のアクチュエータの第1の接続部と導電接続されていてよい。したがってフリーホイーリングダイオードは正しい極性のとき、誘導式のアクチュエータを活動化するための活動化電流に関して阻止方向につながれている。
【0018】
1つの実施形態において実行のステップで、比較の結果は、接続部で生じている電圧が閾値電圧よりも高いときに、フリーホイーリングダイオードが正しい極性で配線されていることを表すことができる。その追加または代替として、実行のステップにおいて比較の結果は、接続部で生じている電圧が閾値電圧よりも低いときに、フリーホイーリングダイオードが反対の極性で配線されていることを表すことができる。このようにして結果を観察することで、フリーホイーリングダイオードが正しい極性で組み付けられているか、反対の極性で組み付けられているかを簡単な仕方で認識することができる。
【0019】
実行のステップで、検査電流の印加中に、接続部で生じている電圧と閾値電圧との間で少なくとも1つの別の比較を実行することができる。それぞれの比較の結果の組み合わせが、フリーホイーリングダイオードの極性を表すことができる。たとえば2つ、3つ、またはそれ以上の比較を実行してそれらの結果を評価し、極性を認識することができる。それにより、誤った結果に基づいて極性が逆に表示されるのを回避することができる。複数の結果を得るために、複数の比較を時間的に相前後して実行することができ、連続する比較プロセスの結果として生じる比較信号をそれぞれ異なる時点で走査することができ、または、連続する比較プロセスから得られた比較値をそれぞれ異なる時間に読み出すことができる。印加のステップおよび実行のステップを複数回繰り返して実行して、複数の結果を得ることもできる。たとえば、所定数の連続する同じ結果が得られるまで、結果を生起することができる。
【0020】
本方法は、データバスへのインターフェースを介して診断信号を受信するステップを含むことができる。このとき検査電流を印加するステップは、診断信号の受信に対する応答として実行することができる。データバスは、たとえば車両で使用されるようなシリアルデータバスであってよい。診断信号は、たとえば誘導式のアクチュエータを制御するための制御デバイスから出力することができる。
【0021】
車両のための安全デバイスのための誘導式のアクチュエータと並列につながれたフリーホイーリングダイオードの極性を検査する装置は、次の各構成要素を有している:
【0022】
フリーホイーリングダイオードの接続部に検査電流を印加するデバイス;および、
【0023】
検査電流の印加中に、接続部で生じている電圧と閾値電圧との間で比較を実行するデバイス。比較の結果がフリーホイーリングダイオードの極性を表す。
【0024】
フリーホイーリングダイオードの極性を検査する装置は、フリーホイーリングダイオードの極性を検査する上記の方法の各ステップを相応の装置で実施ないし具体化するために構成されている。装置の形態における本発明のこの実施態様によっても、本発明に課された課題を迅速かつ効率的に解決することができる。
【0025】
装置とは本件においては、信号を処理し、それに依存して制御信号および/またはデータ信号を出力する電気機器であると理解することができる。装置はハードウェアおよび/またはソフトウェアとして構成されていてよいインターフェースを有することができる。ハードウェアとしての構成では、インターフェースはたとえば装置の種々の機能を含むいわゆるシステムASICの一部であってよい。しかしながら、インターフェースが独自の集積回路であるか、または少なくとも部分的に離散したデバイスから成り立っていることも可能である。ソフトウェアとしての構成では、インターフェースは、たとえばマイクロコントローラに他のソフトウェアモジュールと並んで存在するソフトウェアモジュールであってよい。
【0026】
アクチュエータ回路は次の各構成要件を有している:
【0027】
安全デバイスを活動化させるための誘導式のアクチュエータ;
【0028】
第1の接続部および第2の接続部を有するフリーホイーリングダイオード。フリーホイーリングダイオードは第1および第2の接続部を介して誘導式のアクチュエータと並列に配線されている;および、
【0029】
フリーホイーリングダイオードの極性を検査する前記装置。検査電流を印加する前記デバイスは、検査電流をフリーホイーリングダイオードの第1の接続部に印加するために構成されており、比較を実行する前記デバイスは、第1の接続部で生じている電圧と閾値電圧との間で比較を実行するために構成されている。
【0030】
車両のための安全装置は次の各構成要件を有している:
【0031】
車両が衝突したときに車両の乗員を保護するための安全デバイス;および、
【0032】
前記アクチュエータ回路。アクチュエータ回路の誘導式のアクチュエータは安全デバイスと結合されている;および、
【0033】
誘導式のアクチュエータに活動化電流を提供するための制御デバイス。それにより、誘導式のアクチュエータおよびこれに伴って誘導式のアクチュエータと結合されている安全デバイスを車両の衝突時に活動化させることができる。
【0034】
誘導式のアクチュエータにより、たとえば衝突が起こる前、途中、または後に安全デバイスを活動化することができる。
【0035】
半導体メモリ、ハードディスクメモリ、または光学メモリなどの機械式に読取可能な媒体に保存されていてよく、プログラムコードがコンピュータまたは装置で実行されたときに上に説明した各実施形態のいずれか1つに基づく方法を実施するために適用される、プログラムコードを有するコンピュータプログラム製品も好ましい。このように、プログラムコードで定義される本方法の各ステップを、コンピュータまたは本装置の各デバイスによって具体化することができる。
【0036】
次に、添付の図面を参照しながら本発明について一例を詳しく説明する。図面は次のものを示している:
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の1つの実施例に基づく、車両のための安全装置を示す模式図である。
図2】本発明の1つの実施例に基づく、フリーホイーリングダイオードの極性を認識する方法のフローチャートである。
図3】本発明の1つの実施例に基づく、正しく組み付けられたフリーホイーリングダイオードにおける信号推移を示すグラフである。
図4】本発明の1つの実施例に基づく、反対の極性で組み付けられたフリーホイーリングダイオードにおける信号推移を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の好ましい実施例についての以下の説明では、異なる図面に示されていて類似の作用をする部材について同一または類似の符号が使われており、そのような部材を繰り返し説明することはしない。
【0039】
図1は、本発明の1つの実施例に基づく、車両100のための安全装置の模式図を示している。安全装置は、たとえば車両100が衝突したときに人間を保護するための安全デバイス102を含んでいる。たとえば安全デバイス102は、エアバッグを含むことができる。さらに安全装置は、安全デバイス102を活動化させるための誘導式のアクチュエータ104と、誘導式のアクチュエータ104と並列につながれたフリーホイーリングダイオード106と、フリーホイーリングダイオード106の極性を検査する装置110とを備えるアクチュエータ回路を含んでいる。
【0040】
この実施例では、安全装置は、誘導式のアクチュエータ104を利用して安全デバイス102を活動化させるために、誘導式のアクチュエータ104へ活動化電流を提供するために構成された制御デバイス112をさらに含んでいる。たとえば制御デバイス112は、活動化電流を提供するために、誘導式のアクチュエータ104の第1の接続部を、およびこれに伴ってフリーホイーリングダイオード106の第1の接続部114を、たとえばいわゆるハイサイドスイッチのようなスイッチを介して電圧源と接続するとともに、誘導式のアクチュエータ104の第2の接続部を、およびこれに伴ってフリーホイーリングダイオード106の第2の接続部116を、たとえばいわゆるローサイドスイッチのような別のスイッチを介して安全装置のアース接続部と接続するために構成されていてよい。フリーホイーリングダイオード106が正しい極性で配線されているとき、誘導式のアクチュエータ104を通って活動化電流が流れることができる。フリーホイーリングダイオード106は、活動化電流について阻止方向でつながれている。
【0041】
検査をする装置110は制御デバイス112に統合されていてよく、または、別個の回路として製作されていてよい。検査をする装置110は、フリーホイーリングダイオード106が正しい極性で配線されているか、それとも反対の極性になっているかを認識するために構成されている。そのために、検査をする装置110は、フリーホイーリングダイオード106の第1の接続部114に検査電流を印加するために構成されたデバイス120を有している。さらに検査をする装置110は、検査電流が第1の接続部114へ印加されている間に、第1の接続部114で生じている電圧と閾値電圧との比較を実行するために構成されたデバイス122を有している。本実施例ではデバイス122は、比較の結果を比較信号124の形態で出力するために構成されている。比較信号124は、フリーホイーリングダイオード106がその極性に関して正しく配線されているか誤って配線されているか、すなわち、フリーホイーリングダイオード106が活動化電流に関して阻止方向に配線されているか導通方向に配線されているかを表すために構成されている。このとき活動化電流の流れる方向は、検査電流の流れる方向に呼応していてよい。
【0042】
デバイス120は、たとえば1000psよりも短い時間帯、たとえば300psから700psの間の時間帯にわたって検査電流を提供するために構成されていてよい。検査電流は100mAよりも低い値、たとえば40mAから80mAの間の値を有することができる。
【0043】
1つの実施例では、装置110はデータバス126とのインターフェースを有している。装置110はデータバスを介して診断信号を受信し、診断信号の受信に対する応答として検査電流を第1の接続部114へ供給するために構成されている。
【0044】
1つの実施例では、上述したフリーホイーリングダイオード106の診断のための取組みは、誘導負荷の形態のアクチュエータ104を有する点火回路で適用することができる。
【0045】
この取組みは、反対の極性のフリーホイーリングダイオード106を認識する診断に依拠するものである。この診断は、1つの実施例では、シリアルバスシステム126を介して、たとえばSPI(シリアル・ペリフェラル・インターフェース)を介してトリガリングされ、次いで、たとえばASICの形態の制御デバイス112から制御される。このケースでは、診断信号はバスシステム126を介して、図1に示すものとは異なり、制御デバイス112によって直接受信することができる。テストすなわちフリーホイーリングダイオード106の診断が、たとえば車両100のコントロールユニットの初期化段階で実行されれば、工場でのダイオード極違いに関する高いコストのかかるテストを省略することができる。それにより、試験コストの著しい節減がもたらされる。さらには安全性の向上ももたらされる。コントロールユニットの初期化段階のたびに、および通常動作のときにも、テストを実行することができるからである。さらに、反対の極性のフリーホイーリングダイオード106によって点火電流がオフになったとき、たとえば制御デバイス112のようなASIC最終段が破損に対して保護される。たとえばエアバッグの形態の安全デバイス102の場合、既存の点火回路抵抗測定に診断を統合可能であり、そのようにして、面積中立的かつ時間中立的となる。
【0046】
図2は、本発明の1つの実施例に基づくフリーホイーリングダイオードの極性を認識する方法のフローチャートを示している。このフリーホイーリングダイオードは、たとえばインダクタンスの形態のアクチュエータを備える並列回路として配線された、図1に示すフリーホイーリングダイオードであってよい。
【0047】
ステップ231で、フリーホイーリングダイオードの極性を認識するために、検査電流がフリーホイーリングダイオードの接続部に印加される。検査電流は特定の時間帯にわたって印加され、または、極性の認識が完了するまで印加される。
【0048】
ステップ233で、検査電流が印加されるフリーホイーリングダイオードの接続部における電圧が、閾値電圧と比較される。比較の結果を出力することができ、フリーホイーリングダイオードの極性を表示することができる。閾値電圧と電圧との比較を複数回繰り返して行うことができる。このような比較も何らかの時間帯にわたって行うことができ、比較結果をこの時間帯の内部の複数の異なる時点で読み出して、複数の比較結果を得ることができる。複数の比較結果を組み合わせ、または相互に複合させて、フリーホイーリングダイオードの極性をいっそう確実に認識できるようにすることができる。
【0049】
1つの実施例では、ステップ231,233が複数回繰り返して実行され、複数の比較結果を基にして、フリーホイーリングダイオードが正しい極性で組み付けられているか、反対に組み付けられているかを確実に決定できるようにする。
【0050】
本方法のステップ231,233は、たとえば図1に示すような検査をする装置によって具体化することができる。
【0051】
フリーホイーリングダイオードの極性の検査中に安全デバイスの活動化が必要になったときは、誘導式のアクチュエータの活動化電流によって、検査電流を重ね合わせることができる。
【0052】
図3は、本発明の1つの実施例に基づく、フリーホイーリングダイオードが正しく組み付けられているときのアクチュエータ回路における信号推移のグラフを示している。これは図1に示すようなフリーホイーリングダイオードであってよい。フリーホイーリングダイオードの極性を検査するために、図1に示すフリーホイーリングダイオードの第1の接続部に検査電流341が供給される。フリーホイーリングダイオードが正しく組み付けられているとき、すなわち検査電流341に対して阻止的であるとき、検査電流341は誘導式のアクチュエータを通って流れる。それにより第1の接続部では検査電圧343が生成され、これがフリーホイーリングダイオードの極性のチェックのために閾値電圧345と比較される。さらに図3には、フリーホイーリングダイオードの第2の接続部における電圧347の推移が示されている。
【0053】
検査電流341の推移は一種の方形パルスを示している。検査電流341の立上りエッジとともに検査電圧343も上昇していき、その際に、ダイオード導通電圧よりも高い閾値電圧345を超過する。この超過は、フリーホイーリングダイオードが正しく組み付けられていることであると解釈される。ダイオードが反対の極性になっていれば、検査電圧343は閾値電圧345に達する前に、フリーホイーリングダイオードを通る電流によって降下するはずである。検査電流341が最大値に到達する前に、検査電圧343は、本例では閾値電圧345を下回るまで再び低下する。
【0054】
電圧347は、検査電流341の上昇中に上昇を示していない。
【0055】
図4は、本発明の1つの実施例に基づく、図3とは異なりフリーホイーリングダイオードが反対の極性で組み付けられているときの、信号推移のグラフを示している。
【0056】
検査電流341の推移も同じく一種の方形パルスを示している。検査電流341の立上りエッジとともに検査電圧343も上昇していくが、閾値電圧345へ到達する前に再び低下していき、したがって、閾値電圧345を超過することはない。検査電流341が供給されている間の全時間帯の間のこのような非超過は、フリーホイーリングダイオードが反対の極性で組み付けられていることであると解釈される。電圧347は、検査電流341の上昇中に上昇を示していないが、検査電流341が下降すると、本例では閾値電圧345を上回る一時的な飛躍的な上昇をみせる。
【0057】
図3図4には、LEA点火回路と呼ばれる低エネルギー点火回路における点火回路抵抗測定の重要な電圧推移343,347が示されている。1つの曲線は、点火回路を通る検査電流341を表している。検査電流341は、たとえば500psのあいだ60mAである。別の曲線は、点火回路のプラス側すなわち図1に示す第1の接続部における電圧343を表しており、さらに別の曲線は、点火回路のマイナス側すなわち図1に示す第2の接続部における電圧347を表している。
【0058】
図3ではフリーホイーリングダイオードが正しく組み付けられており、それに対して、図4ではフリーホイーリングダイオードが反対の極性で組み付けられている。
【0059】
図3には、プラス側の電圧343が、検査電流341の電流上昇に依存して上昇していく様子を見ることができる(U_L=Ldl/dt)。検査電流の上昇中、正しく組み付けられたフリーホイーリングダイオードを通って電流が流れることはない。
【0060】
それに対して図4の挙動は異なっている。ここではフリーホイーリングダイオードが反対の極性になっている。検査電流341が上昇するとダイオードが通電され、プラス側の電圧345がダイオード導通電圧を超過することはない。
【0061】
診断の目的は、これら両方のケースを互いに区別することにある。このことは、電圧閾値345の導入によって実現される。そのために、検査電流341が印加されている間にコンパレータ回路に照会がなされる。閾値345が特定の最低回数だけ、たとえば少なくとも3回だけ超過されたことをこのコンパレータ回路が認識したとき、結果はポジティブであり、すなわちフリーホイーリングダイオードは正しく組み付けられている。コンパレータ回路は、たとえば図1に示す比較を実行するデバイスの一部であってよい。
【0062】
標準的な点火回路抵抗測定だけで診断をすませることができるという利点がある。換言すると、図1に示す第1および第2の接続部の間で生じている抵抗に依存して評価を行い、フリーホイーリングダイオードが正しく組み付けられているか、反対の極性で組み付けられているかを認識することができる。抵抗測定は、検査電流が印加されている間に実施することができる。
【0063】
図面に示して説明した各実施例は、一例として選択されたものにすぎない。それぞれ異なる実施例を全面的に、または個々の構成要件に関して、相互に組み合わせることができる。1つの実施例を他の実施例の構成要件によって補完することもできる。さらに、本発明の各方法ステップを反復して実行したり、説明した順序とは異なる順序で実行することもできる。1つの実施例が第1の構成要件と第2の構成要件との間に「および/または」の結合を含んでいるとき、このことは、当該実施例が1つの実施形態では第1の構成要件と第2の構成要件を両方とも有しており、別の実施形態では第1の構成要件または第2の構成要件のいずれかを有していることであると解される。
【符号の説明】
【0064】
100 車両
102 安全デバイス
104 アクチュエータ
106 フリーホイーリングダイオード
112 制御デバイス
114 接続部
124 結果
231 第1のステップ
233 第2のステップ
341 検査電流
343 電圧
345 閾値電圧
図1
図2
図3
図4