特許第6163258号(P6163258)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6163258希土類永久磁石粉末、それを含む接着性磁性体及び当該接着性磁性体を応用した素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6163258
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】希土類永久磁石粉末、それを含む接着性磁性体及び当該接着性磁性体を応用した素子
(51)【国際特許分類】
   H01F 1/059 20060101AFI20170703BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20170703BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20170703BHJP
   B22F 1/00 20060101ALI20170703BHJP
   B22F 9/00 20060101ALI20170703BHJP
   B22F 9/08 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
   H01F1/059 160
   H01F41/02 G
   C22C38/00 303D
   B22F1/00 Y
   B22F9/00 C
   B22F9/08 M
【請求項の数】12
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-515594(P2016-515594)
(86)(22)【出願日】2013年5月31日
(65)【公表番号】特表2016-526298(P2016-526298A)
(43)【公表日】2016年9月1日
(86)【国際出願番号】CN2013076605
(87)【国際公開番号】WO2014190558
(87)【国際公開日】20141204
【審査請求日】2015年12月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】511136049
【氏名又は名称】北京有色金属研究総院
【氏名又は名称原語表記】General Research Institute for Nonferrous Metals
(73)【特許権者】
【識別番号】515330421
【氏名又は名称】有研稀土新材料股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】李 紅▲衛▼
(72)【発明者】
【氏名】▲羅▼ ▲陽▼
(72)【発明者】
【氏名】于 敦波
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲擴▼社
(72)【発明者】
【氏名】▲ヤン▼ 文▲龍▼
(72)【発明者】
【氏名】李 世鵬
(72)【発明者】
【氏名】袁 永▲強▼
(72)【発明者】
【氏名】彭 海▲軍▼
【審査官】 堀 拓也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−135509(JP,A)
【文献】 特開2008−264875(JP,A)
【文献】 特開平07−173501(JP,A)
【文献】 特開2001−167915(JP,A)
【文献】 特開平11−003812(JP,A)
【文献】 特開平08−316018(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00−8/00
9/00
9/08
C22C 1/04−1/05
33/02
38/00
H01F 1/00−1/117
1/40−1/42
41/00−41/04
41/08
41/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
TbCu構造を有し、且つ結晶粒子サイズが5〜100nmである硬磁性相70〜99vol%と、bcc構造を有するFe相であって、結晶粒子平均サイズが1〜30nmでサイズの標準偏差が0.5σ未満である軟磁性相1〜30vol%とを含むことを特徴とする希土類永久磁石粉末。
【請求項2】
前記硬磁性相の結晶粒子サイズ分布は5〜80nmの範囲内で、好ましくは、前記硬磁性相の結晶粒子サイズ分布が5〜50nm範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の希土類永久磁石粉末。
【請求項3】
前記軟磁性相が総体積の3〜30vol%を占め、好ましくは、前記軟磁性相が総体積の5〜15vol%を占めることを特徴とする請求項1又は2に記載の希土類永久磁石粉末。
【請求項4】
前記軟磁性相の平均結晶粒子サイズが1〜20nmであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の希土類永久磁石粉末。
【請求項5】
前記軟磁性相の結晶粒子サイズの標準偏差が0.3σ以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の希土類永久磁石粉末。
【請求項6】
前記希土類永久磁石粉末がR−T−M−Aからなり、但し、RはSm又はSmと他の希土類元素との組合せで、TはFe又はFeとCoとの組合せで、MはTi、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Ta、W、Si又はHfの中の少なくとも一つで、AはN及び/又はCであって、好ましくは、Rの含有量が5〜12at.%で、Aは10〜20at.%で、Mは0〜10at.%であって、残りがTであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の希土類永久磁石粉末。
【請求項7】
Rの含有量が5〜10at.%であることを特徴とする請求項6に記載の希土類永久磁石粉末。
【請求項8】
Rの中のSmの原子数含有量が80〜100at.%であることを特徴とする請求項7に記載の希土類永久磁石粉末。
【請求項9】
前記TはFeとCoとの組合せで、且つ、前記Tの中のCoの原子数含有量が0〜30at.%であることを特徴とする請求項6に記載の希土類永久磁石粉末。
【請求項10】
前記希土類永久磁石粉末の厚みが5〜50μmであることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の希土類永久磁石粉末。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の希土類永久磁石粉末と接着剤とを接着してなることを特徴とする接着性磁性体。
【請求項12】
請求項11に記載の接着性磁性体を応用したことを特徴とする素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、希土類磁性材料に関し、具体的に、希土類永久磁石粉末、それを含む接着性磁性体及び当該接着性磁性体を応用した素子に関する。
【背景技術】
【0002】
接着性希土類永久磁性体は、希土類永久磁石粉末と接着性材料とを結合してなるもので、ユーザのニーズに応じて、直接に注射又はプレス成形することで各種の永久磁石素子を形成する。当該種類の磁性体はサイズ精度が高く、磁性の均一性が優れ、耐腐食性が良好で、収率が高く、複雑の形状の素子に加工しやすい等のメリットを有し、家電、マイクロモータ、自動化事務機器(automated office equipment)、計器、医療器具、自動車、磁力機械等の装置や機器に汎用されている。
【0003】
現在、接着性希土類永久磁石粉末は主に、ネオジム磁石(NdFeB)磁性粉末と窒化物希土類磁石粉末等を含む。最近、電動車、風力発電、磁気浮上列車の発展に伴って、高性能且つ高安定性の希土類永久磁性体に一層高い要求を提示している。窒化物希土類磁石粉末は、磁気性能が高く、耐腐食性が良好である等のメリットを有するので、ますます汎用されていて、一方、如何に窒化物希土類磁石粉末の性能を向上させることで応用のユーズを満たすかが研究の重点になった。
【0004】
窒化物希土類磁石粉末は主に、希土類合金粉末に一定の温度及び時間の窒化処理を施して得られるもので、希土類合金粉末の製造方法はさまざまで、機械合金化方法を利用することができれば、急冷方法を利用することもでき、例えば、特許文献1と特許文献2に樹脂接着性磁性体を製造するための等方性SmFeN粉末磁性体材料が開示され、その結晶構造はTbCu型であって、当該粉末は溶融した合金を急冷し、且つ得られた合金粉末を窒素含有のガス中で直接に窒化することで製造される。
【0005】
特許文献3には、窒化物希土類粉末が開示されていて、当該磁石粉末も、急冷した後、窒化処理を行って得られるもので、当該磁石粉末は、TbCu又はThZn17又はThNi17及び軟磁性相構造を有し、軟磁性相の比例は10〜60%である。このような窒化物希土類粉末は、窒化物希土類磁石粉末の磁気性能をある程度向上させることが可能であるが、利用者の高品質製品に対する要求を満たすため、希土類永久磁石粉末の磁気性能を一層向上させるための研究を行わなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】中国特許第1196144号明細書
【特許文献2】特開2002−057017号公報
【特許文献3】米国特許第5750044号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、希土類永久磁石粉末の磁気性能を向上させることのできる希土類永久磁石粉末、接着性磁性体及び当該接着性磁性体を応用した素子を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を実現するため、本発明の一態様によると、TbCu構造を有し、且つ結晶粒子サイズが5〜100nmである硬磁性相70〜99vol%と、bcc構造を有するFe相であって、結晶粒子平均サイズが1〜30nmでサイズの標準偏差が0.5σ未満である軟磁性相1〜30vol%とを含む希土類永久磁石粉末を提供する。
【0009】
さらに、上記希土類永久磁石粉末において、硬磁性相の結晶粒子サイズが5〜80nmの範囲内に分布され、好ましくは、硬磁性相の結晶粒子サイズが5〜50nm範囲内に分布される。
【0010】
さらに、上記希土類永久磁石粉末において、軟磁性相が希土類永久磁石粉末の総体積の3〜30vol%を占め、好ましくは、軟磁性相が希土類永久磁石粉末の総体積の5〜15vol%を占める。
【0011】
さらに、上記希土類永久磁石粉末において、軟磁性相の平均結晶粒子サイズが1〜20nmである。
【0012】
さらに、上記希土類永久磁石粉末において、軟磁性相の結晶粒子サイズの標準偏差は0.3σ以下である。
【0013】
さらに、上記希土類永久磁石粉末は、R−T−M−Aからなり、但し、RはSm又はSmと他の希土類元素との組合せで、TはFe又はFeとCoとの組合せで、MはTi、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Ta、W、Si又はHfの中の少なくとも一つで、AはN及び/又はCであって、好ましくは、希土類永久磁石粉末において、Rの含有量が5〜12at.%で、Aは10〜20at.%で、Mは0〜10at.%であって、残りがTである。
【0014】
さらに、上記希土類永久磁石粉末において、Rの含有量は5〜10at.%である。
【0015】
さらに、上記希土類永久磁石粉末において、Rの中のSmの原子数含有量は80〜100at.%である。
【0016】
さらに、上記希土類永久磁石粉末において、TはFeとCoとの組合せで、且つ、Tの中のCoの原子数含有量は0〜30at.%である。
【0017】
さらに、上記希土類永久磁石粉末において、永久磁石粉末の厚みは5〜50μmである。
【0018】
本発明の第2態様によると、上記希土類永久磁石粉末と接着剤とを接着してなる接着性磁性体を提供する。
【0019】
本発明の第3の態様によると、上記接着性磁性体を応用した素子を提供する。
【0020】
本発明の第4の態様によると、溶融した原料を回転するローラーに供給し急冷処理を行って、シート状の合金粉末を生成する工程と、シート状の合金粉末熱処理した後、窒化又は炭化処理を行って希土類永久磁石粉末を得る工程と、を含み、急冷処理を行ってシート状の合金粉末を生成する工程は、溶融した原料を回転するローラーに噴射し、1×10℃/s〜80×10℃/sの冷却速度で、850℃〜950℃まで冷却させる第1回の冷却と、さらに、0.5℃/s〜5℃/sの冷却速度で、250℃〜350℃まで冷却させ、シート状の合金粉末を得る第2回の冷却とを含む希土類永久磁石粉末の製造方法を提供する。
【0021】
さらに、上記製造方法は、熱処理中において、シート状の合金粉末の温度を10℃/s〜30℃/sの速度で上昇させ、600〜900℃まで上昇させた後、10〜150minの熱処理を行う工程を更に含み、好ましくは、シート状の合金粉末の温度を10℃/s〜20℃/sの速度で上昇させる。
【0022】
本発明の希土類永久磁石粉末によると、主にTbCu構造を有する硬磁性相とα−Fe構造を有する軟磁性相とを結合してなる双相磁石粉末で、当該双相磁石粉末はいずれも、均一のミクロ組織を有し、軟磁性相と硬磁性相との均一の結合を保証することができ、希土類永久磁石粉末の磁気性能を向上させる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
ここで、矛盾しない限り、本願の実施例及び実施例中の特徴を互いに組み合わせることができる。以下、実施例を結合して本発明を詳しく説明する。
【0024】
希土類永久磁石粉末のミクロ組織は、材料の性能に十分に重要な役割を果たしていて、一定のミクロ組織は、磁性材料の結晶粒子間の結合作用、磁区の形成、構造の安定性等のさまざまな方面を決め、最終的に材料の磁気性能に影響を与える。本発明の発明者は、希土類永久磁石粉末の磁気性能を改善するため、そのミクロ構造を研究し、以下の技術方案を提示した。
【0025】
本発明の希土類永久磁石粉末は、70〜99vol%の硬磁性相と、1〜30vol%の軟磁性相からなり、但し、硬磁性相はTbCu構造を有し、且つ結晶粒子サイズは5〜100nmであって、軟磁性相はbcc構造を有するFe相であって、当該軟磁性相の結晶粒子平均サイズは1〜30nmであって、且つ、サイズの標準偏差は0.5σ以下である。
【0026】
本発明に提供される上記希土類永久磁石粉末は主に、TbCu構造を有する硬磁性相とα−Fe構造を有する軟磁性相とを結合してなる双相磁石粉末である。このような希土類永久磁石粉末において、TbCu構造を有する硬磁性相が、既に汎用されているThZn17構造とThMn12構造の窒化物磁石粉末に比べ、一層優れた磁気性能を有し、製造される希土類永久磁石粉末の磁気性能の向上に更に有利である。同時に、bcc構造を有するFe相の軟磁性相は、TbCu構造を有する硬磁性相との間に結合作用が発生し、TbCu構造からThZn17等の構造へ転化する性能を抑制し、当該希土類永久磁石粉末の結晶化及び窒化等の段階で転化されてThZn17とThMn12等の相を形成することによる磁気性能の劣化を防止する。そして、bcc構造を有するFe相を軟磁性相とすると、一定の残留磁気の補強効果を有し、磁石粉末の温度に対する敏感度を鈍化し、その製造工程の範囲を広げる。
【0027】
上述した軟磁性相と硬磁性相との結合効果を実現するため、本発明の希土類永久磁石粉末において、硬磁性相の結晶粒子のサイズが5〜100nmであることが好ましい。これは、希土類永久磁石粉末において、硬磁性相の平均結晶粒子サイズが5nm未満であると、5kOe以上の保磁力の取得に不利であると共に、製造工程の難度が大幅に高くなって収率を低下させることになるからである。一方、硬磁性相の平均結晶粒子サイズが100nmを超えると、硬磁性相の残留磁気が低下すると共に、当該TbCu構造を有する硬磁性相とα−Fe相とが結合作用を発生できず、α−Feは、TbCu構造のThZn17等の構造への転化を抑制する効果を果たせないばかりでなくTbCu構造の性能を劣化させる相になってしまう。本発明の希土類永久磁石粉末の磁気性能を向上させるため、硬磁性相の結晶粒子サイズは5〜80nm範囲内に分布され、さらに、5〜50nm範囲内に分布されることが好ましい。
【0028】
本発明の希土類永久磁石粉末において、軟磁性相の体積含有量が1〜30vol%であることが好ましい。軟磁性相の体積を当該範囲内に制御すると、TbCu構造がThZn17等の構造へ転化することを抑制でき、製造される希土類永久磁石粉末の磁気性能が向上される。軟磁性相の含有量が1vol%未満であると、他の雑相の出現を抑制する効果が劣化され、軟磁性相の含有量が30vol%を超えると、ThZn17等の他の雑相の生成を抑制することはできるが、多い軟磁性相が存在するので、材料の保磁力を大幅に低減する問題が存在し、性能全体の向上に不利である。本発明の希土類永久磁石粉末の磁気性能を向上させるため、軟磁性相の比例が3〜30vol%であることが好ましく、5〜15vol%であることが更に好ましい。
【0029】
本発明の希土類永久磁石粉末において、軟磁性相の平均結晶粒子サイズσが1〜30nmであることが好ましく、軟磁性相の平均結晶粒子サイズσを当該範囲内に制御することで、残留磁気を補強する効果を有し、製造される希土類永久磁石粉末の磁気性能を向上させる。軟磁性相の平均結晶粒子サイズσが大きすぎると、残留磁気の補強作用を果たすことができなっく、且つ、磁石粉末の保磁力を低減させる可能性もある。軟磁性相の平均結晶粒子サイズσが小さすぎると、製造の難度が高まる。当該希土類永久磁石粉末において、軟磁性相の平均結晶粒子サイズが1〜20nmであることが更に好ましい。
【0030】
本発明の希土類永久磁石粉末において、軟磁性相の結晶粒子サイズの標準偏差は0.5σ未満である。磁石粉末において、軟磁性相の分布状況も磁石粉末の磁性を影響する核心要素で、均一の組織は、軟磁性相と硬磁性相とを均一に配合し一層良好に結合させ、磁気性能の向上に有利である。本発明の希土類永久磁石粉末において、軟磁性相の平均結晶粒子サイズの標準偏差を0.5σ以下に制御すると、軟磁性相と硬磁性相とを均一に配合し、良好に結合させ、均一で精細な組織を得られる。軟磁性相の結晶粒子サイズの標準偏差が0.5σを超えると、結晶粒子の分布が広すぎで、均一で精細な組織が得られなく、磁石粉末中の各粒子間の交換作用が低減し、残留磁気(Br)が低減し、硬磁性相との結合及び残留磁気の補強効果が実現できなく、最終的に良好な磁気性能が得られない。本発明の希土類永久磁石粉末において、軟磁性相の結晶粒子サイズの標準偏差が0.3σであることが好ましい。
【0031】
本発明の好適な実施形態において、希土類永久磁石粉末は、R−T−M−Aからなり、但し、RはY又はYと他の希土類元素の組合せで、TはFe又はFeとCoの組合せで、MはTi、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Zr、Nb、Mo、Ta、W、Al、Ga、Si又はHfの中の少なくとも一つで、AはN及び/又はCである。当該希土類永久磁石粉末において、Rの含有量が5〜12at.%で、Aは10〜20at.%で、Mの含有量が0〜10at.%で、残りがTであることが好ましい。
【0032】
本発明のR−T−M−Aからなる希土類永久磁石粉末において、R元素はSm又はSmと他の希土類元素の組合せで、RはSm又はSmと他の希土類元素の組合せで、ここで、RはSmを含有しなければならなく、これはTbCu構造の硬磁性相を形成し且つ磁気性能を保証するに必須な条件である。
【0033】
R元素の含有量が5〜12at.%範囲内であることが好ましく、5〜10at.%範囲内であることが更に好ましい。当該希土類永久磁石粉末において、Rの原子含有量が5at.%未満であると、対応して、α−Fe軟磁性相の形成が比較的に多く、製造される磁石粉末の保磁力が低下する。Rの含有量が12at.%を超えると、対応して、サマリウムリッチ相に類似する構造が多く形成される。当該2種類の状況はいずれも磁気性能の向上に不利である。本発明の希土類永久磁石粉末において、Smの原子数含有量が80〜100at.%であることが好ましい。一部のSmがCe、Y等の希土類元素により置換されることができ、置換比例は20%以下である。一定の量の他の希土類元素が添加されると、材料の成型性能を改善できる。例えば、Ce、Laを添加すると、材料の融点を低下させ、この時、Ce、Laの含有量が5at.%未満でなければならない。Nd、Yを添加すると保磁力等を改善できる。
【0034】
本発明のR−T−M−Aからなる希土類永久磁石粉末において、T元素はFe又はFeとCoの組合せで、好ましくは、TがFeとCoの組合せである。一定の量のCoを添加すると、窒素含有の磁石粉末の残留磁気と温度安定性の向上に有利であると共に、準安定のTbCu相の構造を安定し、製造中の濡れ性等の効果を改善する。コスト等の原因を考慮し、T中のCoの原子数の含有量が0〜30at.%で、ここで、Coの含有量が0at.%である時、成分にCoを含まないことを示す。
【0035】
本発明のR−T−M−Aからなる希土類永久磁石粉末において、M元素を添加することができる。本発明においてMはいずれも融点が希土類Smより高い元素である。これらの融点の高い元素を添加すると、結晶粒子の細分化に有利である。特に、均一のミクロ組織の希土類永久磁石粉末を形成し、さらに、結晶化や窒化中に結晶粒子の非均一の成長を抑制し、本発明の磁石粉末結晶粒子のサイズの標準偏差を一定の範囲内にさせる。当該Mは主に、Ti、V、Cr、Mn、Zr、Nb、Mo、Ta、W、Si、Hfの中の1種類又は複数種類を含むが、これに限定されることはない。当該M元素を添加すると、結晶粒子を細分化し、保磁力と残留磁気等の磁気性能を向上させる。同時に、当該希土類永久磁石粉末において、M元素の原子含有量が0〜10at.%であることが好ましく、M元素の原子含有量が10at.%を超えると、残留磁気等の磁気性能を低下させる恐れがある。
【0036】
本発明のR−T−M−Aからなる希土類永久磁石粉末において、A元素を添加することができ、AはN及び/又はCであって、A元素を希土類鉄化合物に添加すると、その性能に大きい影響を与えることになり、格子間原子効果と呼ばれる。格子間原子効果によると、化合物のキュリー温度、飽和磁化強度及び異方性磁界を向上させることができる。本発明のR−T−M−Aからなる希土類永久磁石粉末において、10〜20at.%原子数のAを含有することが好ましく、Aが当該範囲内であると、良好な磁気性能の磁石粉末を得ることができる。その含有量が10at.%未満であると、窒化/炭化が不充分で、成分が均一でなく、磁気性能が低下されることを示し、高すぎると、硬磁性相が分解され、磁気性能の向上に不利である。
【0037】
本発明の好適な実施形態において、希土類永久磁石粉末は、TbCu構造を有する硬磁性相とbcc構造を有するFe相からなる。ここで、bcc構造の軟磁性相は主にα−Fe相である。当該磁石粉末において、Cu標的を用いたX線回析パターンにおける2θ角が65°〜75°間のピーク強度と最も強いピーク強度との比が10%を超える回析ピークの数量は1より少ない。当該条件を満たす回析ピークの数量が1個又は0個である場合、製造される接着性磁石粉末中の結晶粒子のサイズ及びその分布は本発明に限定された範囲内であって、最適な整合性能を有している。
【0038】
本発明の好適な実施形態において、希土類永久磁石粉末の厚みは50μm未満である。磁石粉末の厚みを制御すると、磁石粉末中の各相の均一分布に有利であって、磁石粉末の磁石粉末角形比等の性能の最適化を実現できる。厚みが50μmを超えると、材料中の各相の結晶が均一に分布されていないことを示し、最終的に磁石粉末の角形比等の性能を劣化し、同時に、窒化中の窒素又は炭素の材料結晶への浸透に不利である。希土類永久磁石粉末の厚みが5〜50μmであることが好ましく、厚みが小さすぎると、製造難易度が高く、非結晶体が多くなり、後続の結晶化や窒化の工程の一致性に不利である。
【0039】
本発明において、上記希土類永久磁石粉末は急冷の方法で製造され、当業者であれば本願から示唆を得て、上記要求を満たす希土類永久磁石粉末を製造することができる。現在、よく利用される製造方法は、以下の工程を含む:(1)例えばR、T、M、A等の各原料成分を溶融して、ノズルによって回転するローラーに噴射し、シート状の合金粉末を得て、(2)シート状の合金粉末を600〜900℃で、10〜150min熱処理を行い、(3)得られる熱処理後の合金粉末を350〜550℃程度の温度で、窒化又は炭化処理を行って、希土類永久磁石粉末を得る。
【0040】
当業者あれば、上記製造方法に従って本発明で保護しようとする希土類永久磁石粉末を製造することができる。しかし、工程の操作難度を低下し、製造される希土類永久磁石粉末の性能を向上させるため、本願の好適な実施形態において、溶融した原料を急冷処理してシート状の合金粉末を生成し、シート状の合金粉末を熱処理した後、窒化又は炭化処理を行って希土類永久磁石粉末を得る工程を含む上記希土類永久磁石粉末の製造方法を提供する。ここで、急冷処理を行ってシート状の合金粉末を生成する工程は、溶融した原料を回転するローラーに噴射し、1×10℃/s〜80×10℃/sの冷却速度で、850℃〜950℃まで冷却させる第1回の冷却を行い、その後、0.5℃/s〜5℃/sの冷却速度で、250℃〜350℃まで冷却させ、前記シート状の合金粉末を得る第2回の冷却を行う工程を含む。
【0041】
本発明の好適な実施形態として、急冷処理を行ってシート状の合金粉末を生成する工程が、溶融した原料をローラーに噴射し、融点から900℃までの範囲内で、5×10℃/s〜80×10℃/sの冷却速度で、880℃〜920℃まで冷却させる第1回の冷却を行い、その後、0.5℃/s〜3℃/sの冷却速度で、280℃〜320℃まで冷却させる第2回の冷却を行う工程を含み、二回の冷却によって前記シート状の合金粉末を得る。
【0042】
本発明において、溶融した鋼液が回転するローラーによる処理を経て飛び出し、850〜950℃まで高速に冷却される。当該工程において、高速冷却の速度は1×10℃/s〜80×10℃/sである。当該冷却速度によって、平衡相の形成に間に合わなく、結晶粒子のサイズが大きく成長することに間に合わない。鋼液が処理後に飛び出されて、二回の冷却を経る。0.5℃/s〜5℃/sの冷却速度に到達するようにさせるため、本発明の好適な実施形態において、シート状の粉末が飛び出す方向にガイドプレートを追加し、ガイドプレートとシート状の粉末が飛び出す開始点との間の距離、ガイドプレートの温度等を制御することで、シート状の粉末の冷却速度を調節する。
【0043】
本発明に提供される当該希土類永久磁石粉末の製造方法は、二回の冷却の急冷処理工程を採用することにより、精細の組織を得ることができる。同時に、材料が二回の冷却中に低い冷却速度で冷却されるので、結晶粒子サイズの安定性を保証し、希土類合金粉末の結晶粒子のサイズが熱処理中に過剰に不均一に成長することがなく、最終的な希土類永久磁石粉末の磁気性能を保証できる。
【0044】
本発明の好適な実施形態において、上記希土類永久磁石粉末の製造方法において、熱処理中に、シート状の合金粉末の温度を10℃/s〜30℃/sの速度で600〜900℃まで上昇させ、また、600〜850℃まで上昇させることが好ましい。その後、10〜150minの熱処理を行い、ここで、シート状の合金粉末の温度を10℃/s〜20℃/sの速度で上昇させることが好ましい。一定の速度で上昇させると、加熱区間全体における安定性の保持に有利であって、粉末が均一に成長する。速度が遅すぎると、粉末の加熱時間が長く、熱処理工程の制御に不利である。一方、速度が高すぎると、粉末の加熱が不均一である。本発明の好適な熱処理温度は600〜900℃であって、高すぎると、結晶粒子が成長すぎ、遅すぎると、熱処理の效果を実現できない。
【0045】
本発明の上記希土類永久磁石粉末の材料において、ローラーの材質がCu、Mo、Cu合金を含むことが好ましいが、これに限定されることはない。また、窒化又は炭化の工程において、窒化又は炭化時間が3〜30hであることが好ましい。窒素源が工業用純粋窒素、水素とアンモニアの混合ガス等であることが好ましい。
【0046】
本発明の好適な実施形態において、上記希土類永久磁石粉末を接着剤と接着させて接着性磁性体を形成することができる。このような接着性磁性体は、本発明の上述した希土類永久磁石粉末(メイン相はTbCu構造のSmFeN粉末である)と樹脂とを混合し、プレス成形、注射、圧延又は押し出し等の方法によって製造させる。製造される接着性磁性体はブロック状、環状等の他の形式であることもできる。
【0047】
本発明の好適な実施形態において、上記接着性磁性体を対応する素子の製造に応用することができ、当該方法によると、高性能のSmFeN磁石粉末及び磁性体を製造することができ、素子の更なる小型化に有利である。当該シリーズの磁石粉末が高い耐熱性、耐腐食性を有するので、素子の特別な環境での使用に有利であって、希土類サマリウムの応用が希土類資源の平衡的運用にも有利である。
【0048】
以下、具体的な実施例を実施する方式で、本発明の希土類永久磁石粉末の成分、結晶粒子サイズ、結晶粒子の分布、磁石粉末の性能、磁性体の性能等を説明し、本発明の有益な効果を説明する。
【0049】
(1)希土類永久磁石粉末の成分
希土類合金磁石粉末の成分は、溶融したサマリウム鉄シリーズの合金粉末を窒化することで形成され、成分は窒化後の磁石粉末の成分であって、成分を原子%で表する。
【0050】
(2)結晶粒子サイズσ
平均結晶粒子サイズの表示方法:電子顕微鏡で材料のミクロ組織写真を撮って、写真から硬磁性相であるTbCu構造の結晶粒子と軟磁性相であるα−Fe相の結晶粒子を観察し、具体的な方法は、n個の同種類の結晶粒子の総断面面積Sを統計し、その後、断面面積Sと同面積の円を求めると、その円の直径を平均結晶粒子サイズσとし、単位はnmで、計算式は、
【数1】
である。
【0051】
(3)結晶粒子の分布
結晶粒子の分布は標準偏差で示し、対応する計算式は、
【数2】
である。ここで、Tは標準偏差で、σは第i個の結晶粒子のサイズである。
本発明において、統計の正確性及びテスト状況に鑑み、nは50以上の値を取る。
【0052】
(4)磁石粉末の性能
磁石粉末の性能は、試料振動型磁力計(VSM検出)で検出する。
ここで、Brは残留磁気で、単位はkGsである。
Hcjは固有の保磁力であって、単位はkOeである。
(BH)mは磁気エネルギー積で、単位はMGOeである。
【0053】
(5)相の比例P%
相の比例は、磁性材料の金相写真の面積を分析して得られ、断面面積比を測定することによって、体積比を得る。
【0054】
(6)XRDピーク
得られた合金粉末をXRDで測定し、Cu標的を標的材とし、得られた磁石粉末の相構造を観察した。
以下の実施例1〜38にて製造される希土類永久磁石粉末にXRDピーク検出を行った結果、回折図形中の2θ角が65°〜75°間であるピーク強度と最も強いピーク強度との比が10%を超える回折ピークの数量はいずれも1個又は0個である。
【0055】
(7)厚みλ
厚みは、ノギスで測定し、厚みの単位はμmである。
【0056】
実施例1〜8(Mは1〜2個の元素)
【0057】
製造方法:
(1)比例に応じて、表1の各実施例に記載の金属を混合してから誘導溶解炉に投入し、Arガスの保護下、精錬して合金鋳塊を得る。
(2)合金鋳塊を荒い粒状にしてから急冷炉に投入して急冷を行い、保護ガスはArガスであって、噴射圧力は80kPaで、ノズルの直径は0.8mmで、水冷却ローラーの線速度は55m/sで、急冷後にシート状の合金粉末を得る。
(3)上記合金粉末をArガスの保護下、750℃で、55min処理してから、大気圧のNガスで窒化を行い、その処理条件は、460℃、7時間であって、窒化物である磁石粉末を得る。
【0058】
検出:製造された希土類永久磁石粉末(材料の成分は表1に示す通りである)に磁気性能、結晶粒子サイズ、結晶粒子分布、相の比例の検出を行った。検出結果を表2に示し、Sは実施例を表し、Dは比較例を表する。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
上記実施例から分かるように、磁石粉末の結晶粒子サイズ及び分布が本発明の保護範囲内である場合、高い磁気性能が得られ、ここで、主に、保磁力と磁気エネルギー積に体現される。D1とD2とを比較すると、結晶粒子サイズ及び分布が保護範囲から離れる場合、α−Fe軟磁性相が磁石粉末に存在しても、結晶粒子が大きく、分布が不均一であるので、残留磁気が向上されていなく、低下していて、且つ、保磁力も大幅に低下される。ここで、D1の軟磁性相の結晶粒子は30nmを超えていて、D2のT≧0.5σで、磁気性能はいずれも大幅に低下された。同時に、実施例から分かるように、軟磁性相の結晶粒子の標準偏差がT≦0.5σに分布された時、性能が高く、T≦0.3σである時の性能が最も高い。同時に、本願の実施例とD3を比較して見ると、硬磁性相の結晶粒子が大き過ぎると、対応する磁性も大幅に低下されるが、本実施例において、硬磁性相の結晶粒子がいずれも5〜50nm範囲内であるので、高い磁気性能を有する。ここで、硬磁性相の結晶粒子サイズが5〜80nm範囲内、特に、硬磁性相の結晶粒子サイズが5〜50nm範囲内に分布されると磁気性能が一層良好である。
【0062】
実施例9〜13(Mは複数の元素の混合である)
【0063】
製造方法:
(1)比例に応じて、表3の各実施例に記載の金属を混合してから誘導溶解炉に投入し、Arガスの保護下、精錬して合金鋳塊を得る。
(2)合金鋳塊を荒い粒状にした後急冷炉に投入して急冷を行い、保護ガスはArガスで、噴射圧力は80kPaで、ノズルの直径は0.8で、水冷却ローラーの線速度は55m/sで、急冷後にシート状の合金粉末を得る。
(3)上記合金粉末をArガスの保護下、750℃で、55min処理した後、大気圧のNガスで窒化を行い、その処理条件は460℃、7時間で、窒化物である磁石粉末を得る。
【0064】
検出:製造された希土類永久磁石粉末(材料の成分は表3に示す通りである)に磁気性能、結晶粒子サイズ、結晶粒子分布、相の比例の検出を行った。検出結果を表4に示し、Sは実施例を表し、Dは比較例を表する。
【0065】
【表3】
【0066】
【表4】
【0067】
上記実施例から分かるように、複数のMを添加する場合が、1〜2個のM元素を添加する場合に比べ、固有の磁気性能が低く、それは主に、遷移族元素の飽和磁気モーメントがFeとCoより低いからである。更に多い元素を添加すると、その飽和磁気モーメントを損失し、一部の磁気性能を低下させてしまう。
【0068】
同様に、結晶粒子サイズ及び分布が保護範囲から離れる場合、保磁力は大幅に低下し、α−Fe軟磁性相が磁石粉末に存在しても、結晶粒子が大きく、分布が非均一であるので、残留磁気が向上されないばかりじゃなく、低下してしまう。且つ、表4のデータから分かるように、軟磁性相の結晶粒子の標準偏差の分布がT≦0.5σである時の性能が高く、T≦0.3σである時に性能が最も高い。
【0069】
実施例14〜16(SmFeN型永久磁石粉末)
【0070】
製造方法:
(1)表5の各実施例のSmFe合金を一定の比例に従って混合してから誘導溶解炉に投入し、Arガスの保護下、精錬して合金鋳塊を得る。
(2)合金鋳塊を荒い粒状にした後急冷炉に投入して急冷を行い、保護ガスはArガスで、噴射圧力は100kPaで、ノズルの直径は0.8mmで、水冷却ローラーの線速度は55m/sで、急冷後にシート状の合金粉末を得る。
(3)上記合金粉末をArガスの保護下、730℃で、60min処理して後、大気圧のNガスで窒化を行い、その処理条件は440℃、8時間であって、窒化物である磁石粉末を得る。
【0071】
検出:製造された希土類永久磁石粉末(材料の成分は表5に示す通りである)に磁気性能、結晶粒子サイズ、結晶粒子分布、相の比例の検出を行った。検出結果を表6に示し、Sは実施例を表し、Dは比較例を表する。
【0072】
【表5】
【0073】
【表6】
【0074】
表6のデータから分かるように、製造された磁石粉末は、Coと遷移族金属Mを添加していない場合、軟磁性相の結晶粒子は高く、磁気性能が低いが、結晶粒子の分布がT≦0.5σである時に性能が高く、T≦0.3σである時の性能が最も高い。
【0075】
実施例17〜21(SmRFeCoMN型磁石粉末)
【0076】
製造方法:
(1)表7の各実施例に記載の関連する希土類及び遷移族金属を一定の比例で混合してから誘導溶解炉に投入し、Arガスの保護下、精錬して合金鋳塊を得る。
(2)合金鋳塊を荒い粒状にした後急冷炉に投入して急冷を行い、保護ガスはArガスで、噴射圧力は80kPaで、ノズルの直径は0.7mmで、水冷却ローラーの線速度は55m/sで、銅ローラーの直径は300mmで、急冷後にシート状の合金粉末を得る。
(3)上記合金粉末をArガスの保護下、700℃で、70min処理した後、大気圧のNガスで窒化を行い、その処理条件は450℃、6時間であって、窒化物である磁石粉末を得る。
【0077】
検出:製造された希土類永久磁石粉末(材料の成分は表7に示す通りである)に磁気性能、結晶粒子サイズ、結晶粒子分布、相の比例の検出を行った。検出結果を表8に示し、Sは実施例を表し、Dは比較例を表する。
【0078】
【表7】
【0079】
【表8】
【0080】
表8のデータから分かるように、製造された磁石粉末に希土類元素Rを添加すると、残留磁気がある程度低下するが、各方面の性能は依然として結晶粒子の分布がT≦0.5σである時に性能が高く、T≦0.3σ(S18とS20)である時に性能が最も高い。S19から分かるように、希土類の含有量が高いと、対応して、残留磁気と磁気エネルギー積が多く低下するが、保磁力は高い。
【0081】
実施例22〜30 (炭素含有の永久磁石粉末)
【0082】
製造方法
(1)比例に応じて、高純度の金属を混合してから誘導溶解炉に投入し、Arガスの保護下、精錬して合金鋳塊を得る。
(2)合金鋳塊を荒い粒状にした後急冷炉に投入して急冷を行い、保護ガスはArガスで、噴射圧力は80kPaで、ノズルの直径は0.8mmで、水冷却ローラーの線速度は50m/sで、銅ローラーの直径は300mmで、急冷後にシート状の合金粉末を得る。
(3)上記合金粉末をArガスの保護下、710℃で、70min処理した後、磁石粉末を100μm以下の粒状にし、粉砕された粉末と炭素粉末とを混合して480℃で、7時間処理して炭化物である磁石粉末を得る。
【0083】
検出:製造された希土類永久磁石粉末(材料の成分は表9に示す通りである)に磁気性能、結晶粒子サイズ、結晶粒子分布、相の比例の検出を行った。検出結果を表10に示し、Sは実施例を表し、Dは比較例を表する。
【0084】
【表9】
【0085】
【表10】
【0086】
表10のデータから分かるように、製造された希土類永久磁石粉末にC元素を添加しても、高い磁気性能を有し、磁気エネルギー積は15MGOe以上であって、同時に、結晶粒子の分布がT≦0.5σである時に性能が高く、T≦0.3σである時に性能が最も高い。
【0087】
実施例31〜38
【0088】
本発明の希土類永久磁石粉末の製造方法は主に、Sm8.5FebalCo10.6Zr0.812.5接着性磁石粉末の製造に用いられ、その製造工程は以下とおりである:
(1)表11の各実施例の比例に従って、高純度の金属を混合してから誘導溶解炉に投入し、Arガスの保護下、精錬して合金鋳塊を得る。
(2)合金鋳塊を荒い粒状にした後急冷炉に投入して急冷を行い、保護ガスはArガスで、ノズルの噴射圧力を80kPaに制御し、ノズルの直径は0.8mmで、回転するローラーに噴射して第1回の冷却を行い、さらに、プレートを設けて第2回の冷却を経て、シート状の合金粉末を得る。(ローラーの材質、回転速度、第1回の冷却の温度と第2回の冷却温度は表11に示す通りである。)
(3)上記合金粉末をArガスの保護下、シート状の合金粉末を昇温し、上昇させた後、その温度を保持して熱処理を行う(温度上昇速度、上昇後の温度、熱処理時間は表11に示す通りである)。磁石粉末を100μm以下の粒状にし、粉砕された粉末をN雰囲気で処理して炭素―窒素化合物である磁石粉末(窒化温度、窒化時間は表11に示す通りである)。
【0089】
検出:製造された希土類永久磁石粉末(材料の成分は表11に示す通りである)に磁気性能、結晶粒子サイズ、結晶粒子分布、相の比例の検出を行った。検出結果を表10に示し、Sは実施例を表し、Dは比較例を表する。
【0090】
工程中の検出データの単位:
温度上昇速度の単位は℃/sで、冷却速度の単位は℃/sで、急冷ローラーの速度の単位はm/sで、結晶化温度と窒化温度の単位は℃で、結晶化時間の単位は分minで、窒化時間の単位は時間hである。
【0091】
【表11】
【0092】
【表12】
【0093】
本発明に提供される希土類永久磁石粉末は急冷方法で製造されることができ、当業者であれば、通常の急冷方法を利用して、各工程のパラメータを調節して本願が保護しようとする希土類永久磁石粉末を得ることができる。例えば、実施例S1〜S30で採用した方法を利用することができる。本発明において、2回冷却する急冷処理工程を利用することができ、上記表11〜12のデータから分かるように、2回冷却する急冷処理工程を経て、精細な組織を得ることができる。同時に、材料が2回冷却する過程で、遅い速度で冷却されるので、結晶粒子のサイズの安定性を保証でき、希土類合金粉末の結晶粒子サイズが、熱処理中に過剰に不均一に成長することがない。上述の工程のように、2回冷却に後続の熱処理及び窒化工程を結合すると、製造される材料の結晶粒子分布がT≦0.5σであって、良好な磁気性能を得られる。
【0094】
上述のように、本発明のメイン相のTbCu7構造とbcc軟磁性相の構造を複合した材料によると、結晶粒子サイズ及び分布を制御することによって、材料の磁気性能を改善できる。そして、本発明によると、上述した磁石粉末と接着剤とを混合して接着性磁性体を製造して、モーター、スピーカー、測定機器等に応用できる。
【0095】
以上は、本発明の好適な実施例に過ぎず、本発明を限定するものではない。当業者であれば本発明に様々な修正や変形が可能である。本発明の精神や原則内での如何なる修正、置換、改良などは本発明の保護範囲内に含まれる。