特許第6163273号(P6163273)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6163273光ファイバテープの製造方法、光ファイバテープ及び光ケーブル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6163273
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】光ファイバテープの製造方法、光ファイバテープ及び光ケーブル
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/44 20060101AFI20170703BHJP
【FI】
   G02B6/44 371
   G02B6/44 361
   G02B6/44 391
【請求項の数】4
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-567100(P2016-567100)
(86)(22)【出願日】2016年11月8日
(86)【国際出願番号】JP2016083012
【審査請求日】2016年11月23日
(31)【優先権主張番号】特願2016-78161(P2016-78161)
(32)【優先日】2016年4月8日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】伊佐地 瑞基
(72)【発明者】
【氏名】金子 総一郎
(72)【発明者】
【氏名】大里 健
【審査官】 奥村 政人
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−302039(JP,A)
【文献】 特開平04−268521(JP,A)
【文献】 特開2013−182146(JP,A)
【文献】 特開2012−108331(JP,A)
【文献】 特開2005−350310(JP,A)
【文献】 特開2002−341209(JP,A)
【文献】 特開平11−311729(JP,A)
【文献】 特開2011−085844(JP,A)
【文献】 特開2003−232972(JP,A)
【文献】 特開2000−241682(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/02− 6/036
G02B 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色層を有し、並列して配置された複数の光ファイバと、
隣接する2心の前記光ファイバを連結する連結部と
を備え、複数の前記連結部が間欠的に配置された間欠連結型の光ファイバテープであり、
表面に未硬化の樹脂が残存するように着色材を硬化させて前記着色層を形成し、
未硬化の樹脂が残存した前記着色層の表面に連結材を塗布し、
前記連結材を硬化させて前記連結部を形成するとともに、前記着色層の表面の未硬化の樹脂を硬化させた光ファイバテープであって、
前記光ファイバテープの前記光ファイバを単心分離させるために前記連結部を裂いたとき、前記着色層と前記連結部とが密着したまま、前記連結部が破壊されることによって、前記光ファイバが単心分離されることを特徴とする光ファイバテープ
【請求項2】
請求項1に記載の光ファイバテープであって、
前記連結部を裂いたとき、前記着色層の下の被覆層が破壊されずに、前記連結部が破壊されることを特徴とする光ファイバテープ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光ファイバテープのであって、
前記連結材は、ヤング率が10〜300MPaの範囲内であり、破断強度が10〜30MPaの範囲内であることを特徴とする光ファイバテープ。
【請求項4】
着色層を有し並列して配置された複数の光ファイバと、隣接する2心の前記光ファイバを連結する連結部とを有し、複数の前記連結部が間欠的に配置された間欠連結型の光ファイバテープと、
前記光ファイバテープを収容するチューブと、
前記チューブに充填された充填材と
を備えた光ケーブルであり、
表面に未硬化の樹脂が残存するように着色材を硬化させて前記着色層を形成し、
未硬化の樹脂が残存した前記着色層の表面に連結材を塗布し、
前記連結材を硬化させて前記連結部を形成するとともに、前記着色層の表面の未硬化の樹脂を硬化させた光ケーブルであって、
前記光ファイバテープの前記光ファイバを単心分離させるために前記連結部を裂いたとき、前記着色層と前記連結部とが密着したまま、前記連結部が破壊されることによって、前記光ファイバが単心分離されることを特徴とする光ケーブル
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバテープの製造方法、光ファイバテープ及び光ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2には、並列させた3心以上の光ファイバを間欠的に連結させた光ファイバテープ(間欠連結型光ファイバテープ)が記載されている。また、特許文献3には、チューブに充填材(止水材料)としてジェリーを充填させた光ケーブル(ルースチューブ型光ケーブル)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4143651号公報
【特許文献2】特許第4619424号公報
【特許文献3】特許第5260940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ルースチューブ型光ケーブルから光ファイバテープを取り出したとき、光ファイバの周囲に付着した充填材(ジェリー等)を拭き取る作業が必要となる。但し、間欠連結型光ファイバテープの場合、光ファイバテープに付着した充填材を拭き取る際に、光ファイバを連結する連結部が破壊されてしまい、光ファイバテープが単心光ファイバにバラバラになってしまうことがある。
【0005】
本発明は、連結部の破壊を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、
着色層を有し、並列して配置された複数の光ファイバと、
隣接する2心の前記光ファイバを連結する連結部と
を備え、複数の前記連結部が間欠的に配置された間欠連結型の光ファイバテープであり、
表面に未硬化の樹脂が残存するように着色材を硬化させて前記着色層を形成し、
未硬化の樹脂が残存した前記着色層の表面に連結材を塗布し、
前記連結材を硬化させて前記連結部を形成するとともに、前記着色層の表面の未硬化の樹脂を硬化させた光ファイバテープであって、
前記光ファイバテープの前記光ファイバを単心分離させるために前記連結部を裂いたとき、前記着色層と前記連結部とが密着したまま、前記連結部が破壊されることによって、前記光ファイバが単心分離されることを特徴とする光ファイバテープである。
【0007】
本発明の他の特徴については、後述する明細書及び図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、連結部の破壊を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1Aは、ルースチューブ型の光ケーブル1の断面図である。図1Bは、ルースチューブ3の断面図である。
図2図2は、別のルースチューブ型の光ケーブル1の断面図である。
図3図3Aは、間欠連結型の光ファイバテープ10の一例の説明図である。図3Bは、間欠連結型光ファイバテープ10の別の一例の説明図である。
図4図4Aは、光ファイバテープ10に付着した充填材4を拭き取る様子の説明図である。図4B及び図4Cは、間欠連結型光ファイバテープ10の隣接する2心の光ファイバ11の連結部12における断面図である。図4Bは、参考例における連結部12の破壊の説明図である。図4Cは、本実施形態における連結部12の破壊の説明図である。
図5図5は、本実施形態の間欠連結型光ファイバテープ10を製造する製造装置30の説明図である。
図6図6A及び図6Bは、テープ化装置50の説明図である。
図7図7は、着色層11Cの表面の硬化度の説明図である。
図8図8Aは、第2実施形態の間欠連結型光ファイバテープ10の隣接する2心の光ファイバ11の連結部12における断面図である。図8Bは、第3実施形態の間欠連結型光ファイバテープ10の隣接する2心の光ファイバ11の連結部12における断面図である。図8Cは、第4実施形態の間欠連結型光ファイバテープ10の隣接する2心の光ファイバ11の連結部12における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
後述する明細書及び図面の記載から、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0011】
複数の光ファイバのそれぞれに着色層を形成する着色層形成工程と、
着色層の表面に塗布した連結材を硬化させて連結部を形成することによって、隣接する光ファイバの間を前記連結部で連結した光ファイバテープを形成するテープ化工程と
を有する光ファイバテープの製造方法であって、
前記着色層形成工程において、
着色材を前記光ファイバに塗布し、
表面に未硬化の樹脂が残存するように前記着色材を硬化させて、前記着色層を形成し、
前記テープ化工程において、
未硬化の樹脂が残存した前記着色層の表面に前記連結材を塗布し、
前記連結材を硬化させるとともに、前記着色層の表面の未硬化の樹脂を硬化させることを特徴とする光ファイバテープの製造方法が明らかとなる。このような光ファイバテープの製造方法によれば、連結部の破壊を抑制することができる。
【0012】
前記着色層形成工程において、ラジカル重合型の紫外線硬化樹脂で構成された前記着色材を前記光ファイバに塗布し、酸素阻害により表面に未硬化の樹脂を残存させつつ、前記着色材に紫外線を照射して前記着色層を形成し、前記テープ化工程において、未硬化の樹脂が残存した前記着色層の表面に、ラジカル重合型の紫外線硬化樹脂で構成された前記連結材を塗布し、前記連結材に紫外線を照射して、前記連結材を硬化させるとともに、前記着色層の表面の未硬化の樹脂を硬化させることが望ましい。これにより、着色層の形成時には表面に未硬化の樹脂を残存させつつ内部を硬化させることができるため、光ファイバの作成が容易になる。
【0013】
前記テープ化工程において、前記着色層の形成された前記光ファイバの全周に前記連結材を塗布し、前記連結材に紫外線を照射して、前記光ファイバの全周に塗布された前記連結材を硬化させるとともに、前記着色層の表面の未硬化の樹脂を硬化させることが望ましい。これにより、製造後の光ファイバテープにおいて未硬化の樹脂が残存することを抑制できる。
【0014】
前記テープ化工程において、前記着色層の形成された前記光ファイバの全周及び前記光ファイバの間に前記連結材を塗布し、光ファイバの間に塗布された前記連結材の一部を残しつつ、一部を除去し、前記連結材に紫外線を照射して前記連結材を硬化させて、前記連結部を間欠的に形成することが望ましい。これにより、光ファイバの全周に連結材を塗布しつつ、連結部を間欠的に形成することを容易に実現できる。
【0015】
前記着色層形成工程において、酸素濃度を0.10%以上1.0%以下の雰囲気下で、酸素阻害により表面に未硬化の樹脂を残存させつつ、前記着色材に紫外線を照射して前記着色層を形成することが望ましい。これにより、連結部の破壊を抑制することができる。
【0016】
IRスペクトルにより前記着色層の表面を測定したときの光重合反応の二重結合に対応する帯域のピーク強度をAとし、前記着色材が未硬化のときの前記ピーク強度をA0とし、前記着色材が最も硬化したときの前記ピーク強度をA1とし、前記着色層の表面の硬化度を硬化度(%) = {(A0−A)/(A0−A1)}×100としたとき、前記硬化度が60%以上90%以下となるように、前記着色層を形成することが望ましい。これにより、連結部の破壊を抑制することができる。
【0017】
前記連結材は、ヤング率が10〜300MPaの範囲内であり、破断強度が10〜30MPaの範囲内であることが望ましい。これにより、光ファイバテープの光ファイバを単心分離する際に、光ファイバが損傷することを抑制できる。
【0018】
前記連結部の厚さが150μm以上であることが望ましい。これにより、連結部の破壊を抑制することができる。
【0019】
着色層を有し、並列して配置された複数の光ファイバと、
隣接する2心の前記光ファイバを連結する連結部と
を備えた光ファイバテープであって、
表面に未硬化の樹脂が残存するように着色材を硬化させて前記着色層を形成し、
未硬化の樹脂が残存した前記着色層の表面に連結材を塗布し、
前記連結材を硬化させて前記連結部を形成するとともに、前記着色層の表面の未硬化の樹脂を硬化させたことを特徴とする光ファイバテープが明らかとなる。このような光ファイバテープによれば、連結部の破壊を抑制することができる。
【0020】
着色層を有し並列して配置された複数の光ファイバと、隣接する2心の前記光ファイバを連結する連結部とを有する光ファイバテープと、
前記光ファイバテープを収容するチューブと、
前記チューブに充填された充填材と
を備えた光ケーブルであって、
表面に未硬化の樹脂が残存するように着色材を硬化させて前記着色層を形成し、
未硬化の樹脂が残存した前記着色層の表面に連結材を塗布し、
前記連結材を硬化させて前記連結部を形成するとともに、前記着色層の表面の未硬化の樹脂を硬化させたことを特徴とする光ケーブルが明らかとなる。このような光ケーブルであれば、光ファイバテープに付着した充填材を拭き取る際に、連結部の破壊を抑制することができる。
【0021】
===第1実施形態===
<光ケーブル1の構成>
図1Aは、ルースチューブ型の光ケーブル1の断面図である。このルースチューブ型の光ケーブル1は、テンションメンバ2(抗張力体)と、複数のルースチューブ3と、外被8とを有する。テンションメンバ2の周囲に複数のルースチューブ3が集合されている。複数のルースチューブ3は、一方向に螺旋状に、若しくは周期的に螺旋方向を反転させたSZ状に、テンションメンバ2の周囲で撚り合わせて(巻き付けて)集合されている。テンションメンバ2の周囲に集合された複数のルースチューブ3の外周を押え巻きテープ7で覆い、押え巻きテープ7の外周にシース材を押出成形して外被8が形成されることによって、図1Aに示すルースチューブ型の光ケーブル1が製造される。
【0022】
図1Bは、ルースチューブ3の断面図である。ルースチューブ3の単体構成のことを「光ケーブル」や「ルースチューブケーブル」などと呼ぶこともある。ルースチューブ3は、複数の光ファイバ11と、充填材4と、チューブ5とを有する。充填材4は、チューブ5の内部の隙間を埋めてチューブ5を止水するための止水材であり、例えばジェリーである。チューブ5は、複数の光ファイバ11と充填材4を収容する管状の部材である。複数の光ファイバ11は、1枚又は複数枚の間欠連結型光ファイバテープ10から構成されている。
【0023】
図2は、別のルースチューブ型の光ケーブル1の断面図である。このルースチューブ型の光ケーブル1は、2本のテンションメンバ2(抗張力体)と、ルースチューブ3と、外被8とを有する。図2に示す光ケーブル1は、センターチューブ型ケーブルなどと呼ばれることもある。2本のテンションメンバ2に挟まれるように、ルースチューブ3が外被8の内側に配置されている。図2の光ケーブル1においても、ルースチューブ3は、複数の光ファイバ11と、充填材4と、チューブ5とを有する。複数の光ファイバ11は、1枚又は複数枚の間欠連結型光ファイバテープ10から構成されている。ルースチューブ3にテンションメンバ2を縦添えしつつ、テンションメンバ2及びルースチューブ3の周囲にシース材を押出成形して外被8が形成されることによって、図2に示すルースチューブ型の光ケーブル1が製造される。
【0024】
図3Aは、間欠連結型の光ファイバテープ10の一例の説明図である。以下の説明では、光ファイバ11に平行な方向を「長手方向」と呼ぶ。また、間欠連結型光ファイバテープ10を構成する複数の光ファイバ11の並ぶ方向を「テープ幅方向」と呼ぶ。
間欠連結型光ファイバテープ10は、複数の光ファイバ11を並列させて間欠的に連結した光ファイバテープである。隣接する2心の光ファイバ11は、連結部12によって連結されている。隣接する2心の光ファイバ11を連結する複数の連結部12は、長手方向に間欠的に配置されている。また、間欠連結型光ファイバテープ10の複数の連結部12は、長手方向及びテープ幅方向に2次元的に間欠的に配置されている。連結部12は、接着剤(連結材14)となる紫外線硬化樹脂を塗布した後に紫外線を照射して硬化させることによって、形成されている(後述)。なお、連結部12を熱可塑性樹脂で構成することも可能である。隣接する2心の光ファイバ11間の連結部12以外の領域は、非連結部13(分離部)になっている。非連結部13では、隣接する2心の光ファイバ11同士は拘束されていない。これにより、間欠連結型光ファイバテープ10を丸めて筒状(束状)にしたり、折り畳んだりすることが可能になり、多数の光ファイバ11を高密度に収容することが可能になる。但し、間欠連結型光ファイバテープ10の代わりに、テープ幅方向に並ぶ複数の光ファイバ11を一括被覆した通常の光ファイバテープ10を用いてもよい。
【0025】
図3Bは、間欠連結型光ファイバテープ10の別の一例の説明図である。このように、間欠連結型光ファイバテープ10の心数は、適宜変更可能である。また、間欠的に配置されている連結部12は、配置を適宜変更可能である。
【0026】
図4Aは、光ファイバテープ10に付着した充填材4を拭き取る様子の説明図である。図4Aに示すように、作業者は、光ケーブル1のルースチューブ3から間欠固定型光ファイバテープ10を取り出した後、間欠固定型光ファイバテープ10に付着した充填材4(例えばジェリー)を清掃用シート(例えばワイプ紙)で拭き取ることになる。このとき、作業者の指によって光ファイバテープ10に捻るような力が加わることによって、間欠固定型光ファイバテープ10の連結部12が破壊されてしまうことがある。この結果、間欠固定型光ファイバテープ10が単心の光ファイバ11にバラバラになってしまう(光ファイバテープ10を構成する複数の光ファイバ11が単心分離された状態になってしまう)。光ファイバテープ10を構成する複数の光ファイバ11が単心分離されてしまうと、もはや光ファイバテープ10の複数の光ファイバ11を一括融着することが難しい状態となるため、各光ファイバ11を融着接続するためには、単心の光ファイバ11ごとに融着接続するか、若しくは、単心分離した複数の光ファイバ11を再度テープ状に連結してから一括融着する必要が生じてしまい、手間がかかってしまう。このような手間を避けるためには、光ファイバテープ10に付着した充填材4を拭き取る際に、間欠固定型光ファイバテープ10の連結部12が破壊されないことが好ましい。
【0027】
図4B及び図4Cは、間欠連結型光ファイバテープ10の隣接する2心の光ファイバ11の連結部12における断面図である。なお、図4Bは、参考例における連結部12の破壊の説明図である。また、図4Cは、本実施形態における連結部12の破壊の説明図である。
【0028】
図4B及び図4Cに示すように、光ファイバ11は、光ファイバ部11Aと、被覆層11Bと、着色層11Cとから構成されている。光ファイバ11は、光ファイバ素線又は光ファイバ心線と呼ばれることもある。光ファイバ11の直径は、約250μmである。光ファイバ部11Aは、コア及びクラッドから構成されている。光ファイバ部11Aは、例えば石英ガラスファイバである。光ファイバ部11Aの直径(クラッド径)は例えば約125μmである。被覆層11Bは、光ファイバ部11Aを被覆する層である。被覆層11Bは、例えば一次被覆層(プライマリー・コーティング)及び二次被覆層(セカンダリー・コーティング)から構成されている。被覆層11Bの直径は、例えば約240μmである。着色層11Cは、被覆層11Bの表面に形成された層である。着色層11Cは、被覆層11Bの表面に着色材を塗布することによって形成される。着色材は、通常は有色であるが、無色でもよい。後述するように、着色材は、紫外線硬化樹脂で構成されている。後述するように、着色層11Cの表面に連結材14(紫外線硬化樹脂)が塗布・硬化されることによって、連結部12が形成されている。
【0029】
図4Bに示すように、参考例では、着色層11C上において連結部12を構成する樹脂が破壊されている。このような箇所で連結部12が破壊される理由は明らかではないが、着色層11Cと連結部12との界面において剥離が生じ(図中の界面における太線部の箇所参照)、この剥離から連結部12の薄い樹脂層が破断して、連結部12が破壊されたものと考えられる。
【0030】
本実施形態では、後述するように着色層11Cと連結部12との密着性を向上させることによって、着色層11Cと連結部12との界面における剥離が生じにくい構造となっている。この結果、本実施形態では、連結部12の薄い樹脂層での破壊が抑制され、図4Cに示すように、着色層11Cと連結部12とが密着したまま連結部12の破壊が進行するため、図4Bの参考例と比べて連結部12が破壊されにくくなり、意図せずに光ファイバ11が単心分離してしまうことを抑制できる。なお、本実施形態では、間欠連結型光ファイバテープ10の光ファイバ11を単心分離させるために連結部12を裂いたときには、図4Cに示すように、着色層11Cと連結部12とが密着したまま、連結部12が破壊され、これにより光ファイバ11が単心分離されることになる。
【0031】
一方、着色層11Cと連結部12との密着性を高めすぎてしまうと、間欠連結型光ファイバテープ10の光ファイバ11を単心分離させる必要があるために連結部12を裂いたときに、連結部12とともに被覆層11Bまで破壊されてしまい、光ファイバ11が損傷するおそれが生じてしまう。また、連結部12のヤング率や破断強度が高すぎる場合にも、連結部12とともに被覆層11Bまで破壊されてしまい、光ファイバ11が損傷するおそれが生じてしまう。このため、本実施形態では、適度なヤング率や破断強度の連結材14を選択しつつ、着色層11Cと連結部12との密着性を調整して、間欠連結型光ファイバテープ10を製造することが望ましい。
【0032】
<間欠連結型光ファイバテープ10の製造方法>
・間欠連結型光ファイバテープ10の製造方法の概要
図5は、本実施形態の間欠連結型光ファイバテープ10を製造する製造装置30の説明図である。製造装置30は、複数(ここでは4つ)のファイバ供給源31と、着色装置40と、テープ化装置50とを有する。
【0033】
ファイバ供給源31は、光ファイバ11を着色装置40に供給する供給装置(供給源)である。ファイバ供給源31が供給する光ファイバ11は、着色層11Cを形成する前の光ファイバ11(光ファイバ部11A及び被覆層11Bから構成された光ファイバ)である。
【0034】
着色装置40は、被覆層11Bの外周に着色層11Cを形成する装置である。着色装置40は、光ファイバ11の長手方向にわたって被覆層11Bの全周に着色層11Cを形成する。着色装置40は、着色材塗布部41と、硬化用光源42とを有する。着色材塗布部41は、被覆層11Bの外周に、紫外線硬化樹脂で構成された着色材を塗布する塗布装置である。着色材塗布部41は、例えば液状の着色材を充填させたコーティングダイスに光ファイバ11を挿通させることによって、光ファイバ11の長手方向にわたって被覆層11Bの全周に着色材を塗布する。硬化用光源42は、紫外線硬化樹脂で構成された着色材に紫外線を照射する光源である。被覆層11Bの外周に塗布された着色材は、硬化用光源42の紫外線が照射されることによって、硬化することになる。硬化した着色材によって、着色層11Cが形成されることになる。着色装置40は、着色層11Cの形成された光ファイバ11をテープ化装置50に供給する。
【0035】
テープ化装置50は、連結部12を間欠的に形成して、間欠連結型光ファイバテープ10を形成する装置である。図6A及び図6Bは、テープ化装置50の説明図である。テープ化装置50は、連結材塗布部51と、除去部52と、光源53とを有する。
【0036】
連結材塗布部51は、隣接する光ファイバ11の間に紫外線硬化樹脂で構成された連結材14を塗布する装置である。連結材塗布部51は、液状の連結材14を充填させたコーティングダイスに複数(ここでは4本)の光ファイバ11を挿通させることによって、光ファイバ11の長手方向にわたって、光ファイバ11の全周(着色層11Cの全周)及び光ファイバ11の間に液状の連結材14を塗布する。
【0037】
除去部52は、光ファイバ11の間に塗布された液状の連結材14の一部を残しつつ、一部を除去する装置である。除去部52は、凹部521Aを有する回転刃521を有しており(図6A参照)、光ファイバ11の供給速度に合わせて回転刃521を回転させ、回転刃521の凹部521Aにおいて連結材14を残しながら、光ファイバ11の間に塗布された連結材14を回転刃521の外縁で除去(切断)する。言い換えると、除去部52は、回転刃521の外縁によって連結材14を堰き止めることによって、光ファイバ11の間に塗布された液状の連結材14の一部を除去する。
【0038】
光源53は、紫外線硬化樹脂で構成された連結材14に紫外線を照射する光源である。光源53は、仮硬化用光源53Aと、本硬化用光源53Bとを有する。仮硬化用光源53Aは、紫外線を照射して連結材14を仮硬化させる。仮硬化した連結材14は、完全には硬化していないが、表面では硬化が進行した状態になる。本硬化用光源53Bは、仮硬化用光源53Aよりも強い紫外線を照射して連結材14を本硬化させる。本硬化した紫外線硬化樹脂は、内部まで硬化した状態になる(但し、間欠連結型光ファイバテープ10を丸めて筒状にしたり、折り畳んだりすることを可能とするため、本硬化した連結部12は、適度な弾性を有する)。
【0039】
図6Bに示すように、連結材塗布部51及び除去部52から出た直後の光ファイバ11は、互いに間隔が空いている。この状態で仮硬化用光源53Aが連結材14に紫外線を照射し、連結材14を仮硬化させる。テープ化装置50は、連結材14の仮硬化後に、光ファイバ11の間隔を徐々に狭めて、複数の光ファイバ11を並列に並べてテープ状に集線する。なお、連結材14が仮硬化しているため、連結材14の除去された部分(分離部)同士が接触しても、連結せずに済む。また、本硬化前であるため、連結材14で連結された領域においても光ファイバ11の間隔を狭めること(集線)が可能である。本硬化用光源53Bが紫外線を照射して連結材14が本硬化すれば、図3Aに示す間欠連結型光ファイバテープ10が製造される。
【0040】
・着色層11Cと連結部12の形成について
本実施形態では、既に説明したように、着色層11Cと連結部12との密着性を向上させることによって、着色層11Cと連結部12との界面における剥離が生じにくい構造を実現させている(図4C参照)。本実施形態では、着色層11Cと連結部12との密着性を調整するために、次のように着色層11C及び連結部12を形成している。
【0041】
まず、着色層11Cを形成する着色材としてラジカル重合型の紫外線硬化樹脂を用い、着色装置40の酸素濃度を調整することによって着色層11Cの形成時の酸素濃度を調整して、着色層11Cの表面に未硬化の樹脂が残存するように、着色層11Cの表面の硬化度を調整する。着色装置40の酸素濃度を高めると、ラジカル重合型の紫外線硬化樹脂である着色材の表面において酸素阻害が生じるため、着色層11Cの表面における未硬化の樹脂が増えて、着色層11Cの表面の硬化度が低くなる。但し、着色層11Cの表面には未硬化の樹脂が残存するものの、着色層11Cの内部は硬化するため、着色層11Cの内部も未硬化の状態と比べると、光ファイバ11製造が容易となる。
【0042】
図7は、着色層11Cの表面の硬化度の説明図である。図中のグラフは、IRスペクトルの測定結果のグラフである。グラフの横軸は波数(cm-1)を示しており、縦軸は吸光度を示している。着色材(紫外線硬化樹脂)の光重合反応における二重結合に対応する帯域のピーク強度を測定し、この測定値をAとする。例えばビニル基のCH面外変角振動に対応する帯域は808cm-1付近となる。着色材が未硬化の状態の着色層11Cのピーク強度の測定値をA0とし、無酸素状態(酸素濃度が測定限界の0.001%未満)で最も硬化させた状態の着色層11Cのピーク強度の測定値をA1としたとき、着色層11Cの表面の硬化度は次のように算出する。
【0043】
硬化度(%) = {(A0−A)/(A0−A1)}×100
【0044】
なお、未硬化状態の着色層11Cの表面の硬化度は0%となり、無酸素状態で着色材を硬化させた場合(最も硬化させた状態)の着色層11Cの表面の硬化度は100%となる。酸素濃度は、着色装置40の中に取り付けた酸素濃度計を用いて測定可能である。
【0045】
本実施形態では、着色層11Cの表面の硬化度が60%以上90%以下となるように、着色層11C(連結部12の形成前)を形成する。着色層11Cの表面の硬化度が90%より大きい場合には、着色層11Cと連結部12との界面において剥離が生じやすくなるため(図4Bの界面における太線部の箇所参照)、光ファイバテープ10に付着した充填材4を拭き取る際に(図4A参照)、意図せずに連結部12が破壊されてしまうおそれがある。また、着色層11Cの表面の硬化度が60%未満の場合には、着色層11Cと連結部12との密着性が高すぎてしまい、間欠連結型光ファイバテープ10の光ファイバ11を単心分離させる際に、連結部12とともに被覆層11Bまで破壊されてしまうおそれがある。これに対し、着色層11Cの表面の硬化度が60%以上90%以下の範囲であれば、後述するように、意図せずに連結部12が破壊されてしまうことを抑制しつつ、光ファイバ11を単心分離させる際に被覆層11Bが破壊されてしまうことを抑制することが可能である。
【0046】
また、本実施形態では、着色層11Cの表面の硬化度を60%以上90%以下とするために、着色層11Cの形成時の酸素濃度を0.10%以上1.0%以下に調整している。着色層11Cの形成時の酸素濃度が0.10%未満の場合には、酸素濃度が低いために着色層11Cの表面の硬化度が90%より大きくなってしまい、この結果、光ファイバテープ10に付着した充填材4を拭き取る際に(図4A参照)、意図せずに連結部12が破壊されてしまうおそれがある。また、着色層11Cの形成時の酸素濃度が1.0%より大きい場合には、着色層11Cと連結部12との密着性が高すぎてしまい、間欠連結型光ファイバテープ10の光ファイバ11を単心分離させる際に、連結部12とともに被覆層11Bまで破壊されてしまうおそれがある。
【0047】
上記のように表面の硬化度を調整して着色層11Cを形成した後、テープ化装置50において連結部12を形成する。本実施形態では、連結部12を形成する連結材14にもラジカル重合型の紫外線硬化樹脂を用いる。既に説明したように、テープ化装置50は、連結材塗布部51において着色層11Cの全周及び光ファイバ11の間に液状の連結材14を塗布し、除去部52において光ファイバ11の間に塗布された液状の連結材14の一部を除去し、光源53において連結材14に紫外線を照射することになる。
【0048】
本実施形態では、未硬化の樹脂が残存した着色層11Cの表面に、ラジカル重合型の紫外線硬化樹脂である連結材14が塗布されて、その連結材14に紫外線が照射されることになる。連結材14の光重合開始剤に紫外線が照射されるとラジカルになり、連結材14が硬化して連結部12が形成されるとともに、着色層11Cの表面の未硬化の樹脂も硬化する。このため、硬化度が100%の着色層11Cの上に連結部12を形成した場合と比べて、着色層11Cと連結部12との密着性が高くなり、着色層11Cと連結部12との界面における剥離を抑制することができる。
【0049】
また、本実施形態では、連結材14を塗布する際に、着色層11Cの全周に液状の連結材14が塗布されるため、光ファイバ11の全周にわたって連結材14の層が形成されている(図4C参照)。このため、完成後の間欠連結型光ファイバテープ10には、着色層11Cが露出されないため、未硬化の樹脂が露出せずに済む。なお、着色層11Cの形成時には着色層11Cの表面に未硬化の樹脂が残存しているが、着色層11Cの全周に液状の連結材14が塗布された場合には、連結部12を形成する際に着色層11Cの表面の未硬化の樹脂が硬化することになる。したがって、仮に完成後の間欠連結型光ファイバテープ10を解析しても、着色層11Cの形成時に着色層11Cの表面に未硬化の樹脂を残存させるという特徴・特性を特定することに対しては、不可能・非実際的事情が存在する。
【0050】
<実施例>
・実施例1
前述の製造方法により、12心の間欠連結型光ファイバテープ10を製造した。連結材14には、ウレタンアクリレート系の紫外線硬化樹脂(樹脂A:ヤング率800MPa、破断強度50MPa)を用いた。着色層11Cの形成時の酸素濃度を無酸素状態(酸素濃度が測定限界の0.001%未満)から1.0%までの範囲で段階的に調整することによって、着色層11Cの表面の硬化度を100%から60%の範囲で段階的に調整した。なお、FT−IRにおいて808cm-1付近のピーク強度を測定することにより、着色層11Cの表面の硬化度を測定した。
【0051】
製造した間欠連結型光ファイバテープ10に付着させたジェリーを拭き取る試験を行い、ジェリーの拭き取り後の連結部12の破壊の有無を評価した。なお、間欠連結型光ファイバテープ10の連結部12を裂いて光ファイバ11を単心分離する試験を行い、単心分離後(連結部12を裂いた後)の光ファイバ11の被覆層11Bの破壊の有無も評価した。
【0052】
実施例1の実験結果は、次の表1に示す通りである。
【0053】
【表1】
【0054】
試料番号A1〜A3の「拭き取り後の連結部の破壊の有無」の評価結果に示すように、着色層11Cの表面の硬化度が90%以下(60%以上)であれば、ジェリーの拭き取り時の連結部12の破壊を抑制できた。言い換えると、着色層11Cの形成時の酸素濃度が0.10%以上(1.0%以下)であれば、ジェリーの拭き取り時の連結部12の破壊を抑制できた。一方、試料番号A4〜A7の評価結果に示すように、着色層11Cの表面の硬化度が94%以上の場合(着色層11Cの形成時の酸素濃度が0.03%以下の場合)、ジェリーの拭き取り時に連結部12が破壊されていた。これは、着色層11Cと連結部12との界面において剥離が生じやすい状態であったためだと考えられる。
【0055】
なお、実施例1では、いずれの試料(資料番号A1〜A7)においても、単心分離後の光ファイバ11の被覆層11Bが破壊されていた。これは、樹脂Aにより形成した連結部12のヤング率や破断強度が高いためだと考えられる(但し、樹脂Aにより連結部12を形成した場合であっても、上記の通り、拭き取り後の連結部12の破壊を抑制できるという効果は得られる)。
【0056】
・実施例2
連結部12を形成する樹脂(連結材14)を異ならせて、実施例1と同様に12心の間欠連結型光ファイバテープ10を製造した。なお、樹脂B〜樹脂Fのヤング率及び破断強度は表2に示す通りである。また、実施例1と同様に、ジェリーの拭き取り後の連結部12の破壊の有無の評価と、単心分離後の光ファイバ11の被覆層11Bの破壊の有無の評価を行った。ジェリーの拭き取り後の連結部12の破壊の破壊が無く、且つ、単心分離後の光ファイバ11の被覆層11Bの破壊が無い場合には、判定を「良」とし、少なくとも一方の破壊があった場合には判定を「不可」とした。実施例2の実験結果は、次の表2に示す通りである。
【0057】
【表2】
【0058】
樹脂B〜樹脂Eにより連結部12を形成した場合においても、着色層11Cの表面の硬化度が60%以上90%以下(着色層11Cの形成時の酸素濃度が0.10%以上1.0%以下)の範囲にして着色層11Cを形成すれば、ジェリーの拭き取り時の連結部12の破壊を抑制できた。
また、着色層11Cの表面の硬化度を60%以上90%以下の範囲にして着色層11Cを形成するとともに、ヤング率10〜300MPa、破断強度10〜30MPaの樹脂B〜樹脂Eにより連結部12を形成すれば、ジェリーの拭き取り時の連結部12の破壊を抑制できるだけでなく、単心分離後の光ファイバ11の被覆層11Bの破壊を抑制することも両立できた(これに対し、前述の樹脂Aにより連結部12を形成した場合には、単心分離後の光ファイバ11の被覆層11Bが破壊されていた)。したがって、連結部12を形成する樹脂は、ヤング率が10〜300MPa、破断強度が10〜30MPaであることが望ましい。
【0059】
なお、樹脂B〜樹脂Eにおいても、着色層11Cの表面の硬化度が94%以上の場合(着色層11Cの形成時の酸素濃度が0.03%以下の場合)、ジェリーの拭き取り時に連結部12が破壊されていた。これは、着色層11Cと連結部12との界面において剥離が生じやすい状態であったためだと考えられる。また、着色層11Cの表面の硬化度が58%以下の場合(着色層11Cの形成時の酸素濃度が3.0%以上の場合)、単心分離後の光ファイバ11の被覆層11Bが破壊されていた。これは、着色層11Cと連結部12との密着性が高すぎた状態であったためだと考えられる。
【0060】
・実施例3
連結部12の厚さ(図4Cの厚さ方向の寸法)を段階的に異ならせて、実施例1、2と同様に12心の間欠連結型光ファイバテープ10を製造した。なお、着色層11Cの表面の硬化度を60%以上90%以下の範囲にして着色層11Cを形成するとともに、ヤング率10〜300MPa、破断強度10〜30MPaの樹脂B〜樹脂Eにより連結部12を形成した。実施例1、2と同様に、ジェリーの拭き取り後の連結部12の破壊の有無の評価と、単心分離後の光ファイバ11の被覆層11Bの破壊の有無の評価を行った。実施例3の実験結果は、次の表3に示す通りである。
【0061】
【表3】
【0062】
連結部12の厚さが120μm以下の場合、ジェリーの拭き取り後の連結部12が破壊されていた。一方、連結部12の厚さが150μm以上の場合、ジェリーの拭き取り後の連結部12の破壊を抑制できた。なお、連結部12の厚さが150μm以上であっても、単心分離後の光ファイバ11の被覆層11Bは破壊されていなかった。このため、連結部12の厚さは、150μm以上であることが望ましい。
【0063】
===別の実施形態===
図8Aは、第2実施形態の間欠連結型光ファイバテープ10の隣接する2心の光ファイバ11の連結部12における断面図である。第2実施形態に示すように、連結部12における厚さ(厚さ方向の寸法)が一定になるように、連結部12を構成しても良い。
【0064】
なお、第2実施形態においても、連結材14を塗布する際に、着色層11Cの全周に液状の連結材14が塗布され、これにより、光ファイバ11の全周にわたって連結材14の層が形成されている。このため、第2実施形態であれば、着色層11Cが露出されないため、未硬化の樹脂が露出せずに済む。
【0065】
図8Bは、第3実施形態の間欠連結型光ファイバテープ10の隣接する2心の光ファイバ11の連結部12における断面図である。第3実施形態に示すように、光ファイバ11の間だけに連結部12が形成されても良い。
図8Cは、第4実施形態の間欠連結型光ファイバテープ10の隣接する2心の光ファイバ11の連結部12における断面図である。第4実施形態に示すように、連結部12が厚さ方向に均等に形成されずに、連結部12が厚さ方向の一方(図中の上側)に偏って形成されても良い。
【0066】
なお、第3、第4実施形態では、光ファイバ11の一部の周面だけにしか連結材14が塗布されていない。このため、第3実施形態及び第4実施形態では、間欠連結型光ファイバテープ10の完成後においても、着色層11Cが露出することになる。着色層11Cの露出した部位には連結材14が塗布されていないため、この部位の着色層11Cの表面では、間欠連結型光ファイバテープ10の完成後も未硬化の樹脂が残存することになる。但し、第3実施形態や第4実施形態の連結部12の構成であれば、光ファイバ11の全周に連結材14を塗布せずに済むため、例えば連結材14を光ファイバ11に向けて吐出する方法を採用することが可能になり、連結材14の塗布方法の自由度が増すなどの利点がある。
【0067】
上記の第2〜第4実施形態に示す間欠連結型光ファイバテープ10を製造する際には、前述の第1実施形態と同様に、着色層11Cを形成する着色材としてラジカル重合型の紫外線硬化樹脂を用い、着色装置40の酸素濃度を調整することによって着色層11Cの形成時の酸素濃度を調整し、着色層11Cの表面に未硬化の樹脂が残存するように、着色層11Cの表面の硬化度を調整する。このとき、着色層11Cの表面の硬化度が60%以上90%以下となるように、着色層11C(連結部12の形成前)を形成することが望ましい。そして、未硬化の樹脂が残存した着色層11Cの表面に、ラジカル重合型の紫外線硬化樹脂である連結材14を塗布し、その連結材14に紫外線が照射して連結部12を形成することによって、間欠連結型光ファイバテープ10を製造する。これにより、着色層11Cと連結部12との密着性を向上させることができ、ジェリーの拭き取り時の連結部12の破壊を抑制することができる。
【0068】
ところで、第1〜第4実施形態では、着色層11Cの形成時の酸素濃度を調整することによって、着色層11Cの表面に未硬化の樹脂が残存するように、着色層11Cの表面の硬化度を調整している。但し、酸素濃度を調整する代わりに、着色材に照射する紫外線の強度を調整することによって、着色層11Cの表面に未硬化の樹脂が残存するように、着色層11Cの表面の硬化度を調整しても良い。但し、着色材に照射する紫外線の強度を弱めると、着色層11Cの内部が未硬化で柔らかい状態になるため、光ファイバ11(着色ファイバ)の製造が難しくなる。これに対し、着色層11Cの形成時の酸素濃度を調整する方法であれば、着色層11Cの表面に未硬化の樹脂が残存するだけなので、光ファイバ11(着色ファイバ)の製造が簡易になるという利点がある。なお、着色材に照射する紫外線の強度を弱めて着色層11Cの表面に未硬化の樹脂を残存させる場合においても、着色層11Cの表面の硬化度が60%以上90%以下となるように着色層11Cを形成することが望ましい。
【0069】
===その他===
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更・改良され得ると共に、本発明には、その等価物が含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0070】
1 ルースチューブ型光ケーブル、2 テンションメンバ、
3 ルースチューブ、4 充填材(止水材、ジェリー)、
5 チューブ、7 押え巻きテープ、8 外被、
10 間欠固定型光ファイバテープ、
11 光ファイバ、11A 光ファイバ部、
11B 被覆層、11C 着色層、
12 連結部、13 非連結部、14 連結材、
30 製造装置、31 ファイバ供給源、
40 着色装置、41 着色材塗布部、42 硬化用光源、
50 テープ化装置、51 連結材塗布部、
52 除去部、521 回転刃、521A 凹部、
53 光源、53A 仮硬化用光源、53B 本硬化用光源
【要約】
【課題】間欠連結型光ファイバテープの連結部の破壊を抑制すること。
【解決手段】本開示の光ファイバテープの製造方法は、複数の光ファイバのそれぞれに着色層を形成する着色層形成工程と、着色層の表面に塗布した連結材を硬化させて連結部を形成することによって、隣接する光ファイバの間を前記連結部で連結した光ファイバテープを形成するテープ化工程とを有する。前記着色層形成工程において、着色材を前記光ファイバに塗布し、表面に未硬化の樹脂が残存するように前記着色材を硬化させて、前記着色層を形成する。前記テープ化工程において、未硬化の樹脂が残存した前記着色層の表面に前記連結材を塗布し、前記連結材を硬化させるとともに、前記着色層の表面の未硬化の樹脂を硬化させる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8