(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記交流電動機の駆動軸、前記減速歯車列に含まれる一連の従動軸、及び前記車軸のそれぞれの軸径は、前記交流電動機の駆動軸が最も細くかつ前記車軸が最も太く、さらに前記減速歯車列に含まれる一連の従動軸のうち初段側の1又は2以上の従動軸の軸径は後段側の残りの従動軸の軸径よりも細く設定されている、請求項1に記載の駆動ユニット。
前記方向規制部は、前記減速歯車列に含まれる一連の歯車の1つの歯列に対して噛合することにより、前記電動機の予め決められた一方向への回転は許容する一方、反対方向への回転は阻止するラチェット爪である、請求項1に記載の駆動ユニット。
前記減速歯車列には、所定の操作子の操作に応じて、所定の歯車を軸方向へとシフトさせて隣接歯車と噛合又は噛合解除することにより、前記回転子の駆動軸から前記車軸に至る回転動力の伝達を断続可能な第1の歯車シフト機構が含まれている、請求項1に記載の駆動ユニット。
前記第1の歯車シフト機構において回転動力の伝達が断続されるのに連動して、前記交流電動機への通電をオンオフする電動機通電スイッチを有する、請求項7に記載の駆動ユニット。
前記減速歯車列には、所定の操作子の操作に応じて、所定の歯車を軸方向へとシフトさせて別の歯車と噛合させることにより、前記回転子の駆動軸から前記車軸に至る回転動力の減速比を変更可能な第2の歯車シフト機構が含まれている、請求項1に記載の駆動ユニット。
前記第1の歯車シフト機構において回転動力の伝達が断続されるのに連動して、前記交流電動機への通電をオンオフする電動機通電スイッチを有する、請求項11に記載の駆動ユニット。
前記複数個の磁極は4個の磁極からなり、かつ前記渦巻状コイルは180度の角度間隔で配置された、互いに巻方向の同一な2個の渦巻状コイルからなる、請求項14に記載の駆動ユニット。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電動式列車玩具を販売するデパート、大規模乃至中規模玩具専門店等々においては、店舗の一角に無端状軌道(円形軌道や楕円形軌道等々)を敷設し、その上を、販売対象となる列車玩具を実際に展示走行させて、顧客である子供達の注意を惹き付けると言った販売促進手法がしばしば採用される。
【0008】
このような展示走行による販売促進手法においては、その店舗の営業時間中、列車玩具を連続的に走行させ続けねばならないから、その間に、店側としては、できるだけ電池交換の手間が少ないことが望ましい。
【0009】
しかしながら、現状、この種の電動式列車玩具の連続走行時間は実際に子供が遊ぶ時間を想定して高々3〜4時間程度が限界であるから、この種の販売促進手法を店の営業時間中に亘り継続的に有効に機能させるためには、複数台数を同時に走行させようとすると、1日当たり少なくとも数回の電池交換が必要となり、店側の担当者が電池交換の手間を惜しめば、無担軌道上には、電池切れ車両が停止状態で放置される結果となる。
【0010】
殊に、電動機の駆動軸と車軸とを繋ぐ減速歯車列の中に、クラウン歯車を介在する電動列車玩具の場合、動力伝達系における損失が無視し難く電池の消耗が激しいことに加えて、そもそも、この種の玩具に採用される直流電動機のブラシは、このような長時間走行に耐え得るように設計されていないため、比較的に短時間でブラシの損耗による故障を来たし、走行不能に陥る結果となる。
【0011】
この発明は、上述の技術的課題に着目してなされたものであり、その目的とするところは、長時間の連続走行にも耐えうる耐久性を有し、電動式列車玩具のような幅狭の車体への組込に適し、さらに、低消費電力にて高出力トルクが得られる電動式車両玩具の駆動ユニットを提供することにある。
【0012】
この発明のさらに他の目的並びに作用効果については、明細書の以下の記述を参照することにより、当業者であれば容易に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の技術的課題は、以下の構成を有する電動式車両玩具の駆動ユニットにより解決できるものと考えられる。
【0014】
すなわち、この電動式車両玩具の駆動ユニットは、電動式車両玩具のための駆動ユニットであって、電池から得られる直流電圧を交流電圧に変換する直交変換回路部と、前記直交変換回路部から得られる交流電圧で駆動されて、回転動力を生成する交流電動機と、前記交流電動機の始動方向を時計回り又は反時計回りのいずれか一方向に規制するための方向規制部と、前記交流電動機から得られる回転動力を減速する減速歯車列と、前記減速歯車列を介して前記交流電動機から得られる回転動力により回転する車軸と、を包含し、前記交流電動機は、前記車軸と平行に延びる駆動軸と一体的に回転し、前記駆動軸と垂直な第1の仮想平面上であって、前記駆動軸を中心とする所定半径の円周上に、それぞれ永久磁石からなる複数の磁極をその極性を交互に異ならせて等角度間隔で保持する回転子と、前記回転子の第1の仮想平面と正対する第2の仮想平面上であって、前記駆動軸を中心とする所定半径の円周上に静止的に配置される1又は2以上の渦巻状コイルとを含む、ものである。
【0015】
このような構成によれば、正対する第1の仮想平面(回転子側平面)と第2の仮想平面(固定子側平面)のそれぞれに、磁石と渦巻状コイルとを対向配置すると言う基本構造を有するものであるから、回転軸の延在方向への外形寸法を小さく設計することができ、そのため、軌道幅との関係で車体幅を大きく取れない列車玩具にも、その駆動軸を車体の幅方向へ向けた状態で組み込むことができる。
【0016】
加えて、列車玩具であっても、車体の高さ方向の制限は比較的に緩やかであるから、コイルの巻数や磁石の強度の増大のみならず、磁石の配置される支持体(例えば、ディスク)の直径を増大することによっても、電動機の出力トルク特性を増大することができる。しかも、この交流電動機は、直流電動機のように耐久性に問題のあるブラシが不要であるから、長時間の連続運転も可能となる。
【0017】
本発明の好ましい実施の態様においては、前記交流電動機の前記駆動軸、前記減速歯車列に含まれる一連の従動軸、及び前記車軸は、互いに平行とされていてもよい。
【0018】
このような構成によれば、交流電動機の駆動軸から車軸に至る回転動力の伝達を平歯車のみを用いて効率よく行うことができる。
【0019】
本発明の好ましい実施の態様においては、前記交流電動機の駆動軸、前記減速歯車列に含まれる一連の従動軸、及び前記車軸のそれぞれの軸径は、前記交流電動機の駆動軸が最も細くかつ前記車軸が最も太く、さらに前記減速歯車列に含まれる一連の従動軸のうち初段側の1又は2以上の従動軸の軸径は後段側の残りの従動軸の軸径よりも細く設定されていてもよい。
【0020】
このような構成によれば、駆動軸及び初段側の従動軸の軸径を後段のものに比べて小さくすることで、軸受摩擦の低減によりスムーズな回転始動を保証する一方、車軸及び後段側の従動軸の軸径を初段のものに比べて大きくすることで、回転負荷に抗しつつ確実な動力伝達を保証することができる。
【0021】
本発明の好ましい実施の態様においては、前記方向規制部は、前記減速歯車列に含まれる一連の歯車の1つの歯列に対して噛合することにより、前記電動機の予め決められた一方向への回転は許容する一方、反対方向への回転は阻止するラチェット爪であってもよいであろう。
【0022】
このような構成によれば、連結車両数や登坂走行等々により走行負荷は変動することに加え、子供の手押し遊び(所謂手転がし)なども考慮しつつも、最適な始動方向規制を実現することができる。
【0023】
本発明の好ましい実施の態様においては、前記直交変換回路部は、前記交流電動機の始動を促すための低周波出力状態と定常運転を行うための高周波出力状態とを有する、ものであってもよい。
【0024】
このような構成によれば、上述の交流電動機の同期電動機としての性質を考慮して、始動及び定常運転の切り替えを適切に行わせることができる。
【0025】
本発明の好ましい実施の態様においては、前記減速歯車列を構成する一連の歯車は、前記車軸の上方の空間内に、上下方向へと分散して集合配置されていてもよい。
【0026】
このような構成によれば、当該ユニットの車体前後方向への寸法を極力に短くすることで、例えば列車玩具のような細長い車体を有する電動式車両玩具に適用するような場合、駆動ユニットを車体後部にコンパクトに収容することにより、車体前部に電池ボックス収納用の大きな空間を確保することが可能となる。
【0027】
本発明の好適な実施の態様においては、前記減速歯車列には、所定の操作子の操作に応じて、所定の歯車を軸方向へとシフトさせて隣接歯車と噛合又は噛合解除することにより、前記回転子の駆動軸から前記車軸に至る回転動力の伝達を断続可能な第1の歯車シフト機構が含まれていてもよい。
【0028】
このような構成によれば、前記回転子の駆動軸から前記車軸に至る回転動力の伝達を遮断することで、電動式車両玩具であっても、減速ギア列に無理な力を及ぼすことなく、手押し走行遊び(所謂手転がし)が可能となる。
【0029】
本発明の好ましい実施の態様においては、前記第1の歯車シフト機構において回転動力の伝達が断続されるのに連動して、前記交流電動機への通電をオンオフする電動機通電スイッチを有するものであってもよい。
【0030】
このような構成によれば、回転動力の遮断に連動して電動機への通電を断つことにより、手押し走行中に電動機が作動して電池を無駄に消耗することがない。
【0031】
本発明の好ましい実施の態様においては、前記減速歯車列には、所定の操作子の操作に応じて、所定の歯車を軸方向へとシフトさせて別の歯車と噛合させることにより、前記回転子の駆動軸から前記車軸に至る回転動力の減速比を変更可能な第2の歯車シフト機構が含まれていてもよい。
【0032】
このような構成によれば、電動機については効率の良好な回転数を維持しつつも、走行速度を適切に切り替えることが可能となる。
【0033】
本発明の好ましい実施の態様においては、前記第2の歯車シフト機構において、所定の歯車を別の歯車へと噛合させる際に、両歯車の結合反力を緩衝するためのバネを有する、ものであってもよい。
【0034】
このような構成によれば、走行速度を切り替えるための減速比の切替をスムーズに行わせることができる。
【0035】
本発明の好ましい実施の態様においては、前記減速歯車列には、所定の操作子の第1の操作に応じて、所定の歯車を軸方向へとシフトさせて隣接歯車と噛合又は噛合解除することにより、前記回転子の駆動軸から前記車軸に至る回転動力の伝達を断続可能な第1の歯車シフト機構と、前記所定の操作子の第2の操作に応じて、所定の歯車を軸方向へとシフトさせて別の歯車と噛合させることにより、前記回転子の駆動軸から前記車軸に至る回転動力の減速比を変更可能な第2の歯車シフト機構と、の双方が含まれていてもよい。
【0036】
本発明の好ましい実施の態様においては、前記第1の歯車シフト機構において回転動力の伝達が断続されるのに連動して、前記交流電動機への通電をオンオフする電動機通電スイッチを有する、ものであってもよい。
【0037】
本発明の好ましい実施の態様においては、前記第2の歯車シフト機構において、所定の歯車を別の歯車へと噛合させる際に、両歯車の結合反力を緩衝するためのバネを有する、ものであってもよい。
【0038】
本発明の好ましい実施の態様においては、前記直交変換回路部が、電源投入により、固有の長周期で発振し、周期毎に通電方向を変えて、前記渦巻状コイルに対して通電を行うことにより、前記低周波出力状態を実現する自励発振動作と、前記渦巻状コイルの誘起電圧パルスが所定値を超えると、当該誘起電圧パルスに同期した短周期にて発振し、周期毎に方向を変えて、前記渦巻状コイルに対して通電を行うことにより、前記高周波出力状態を実現する他励発振動作とを実行する、ものであってもよい。
【0039】
このような構成によれば、直交変換回路部が、所定の長周期発振動作又は回転に同期した低周期発振動作のいずれで動作する場合にも、1又は2以上の渦巻状コイルのそれぞれには、それらの発振周期に同期して、相異なる方向の通電が交互に行われるから、起動状態、加速状態、定常状態のいずれの状態にあっても、回転子上に配列された各磁極に対して1もしくは2以上の渦巻状コイルから同時に回転駆動力を付与することにより、円滑かつ力強い回転子の回転を保証することができる。
【0040】
本発明の好ましい実施の態様においては、前記直交変換回路部が、互いに並置された、いずれも第1導電型である、左側、右側の駆動用トランジスタと、前記左側、右側の駆動用トランジスタのそれぞれと直列接続されるようにして、互いに並置され、前記左側、右側の駆動用トランジスタのうちの、互いに反対側の駆動用トランジスタと同期してオンオフ制御される、いずれも第2導電型である、左側、右側の従動用トランジスタと、前記左側の駆動用トランジスタの出力側と前記右側の駆動用トランジスタの出力側との間に架け渡された架橋電流路と、前記左側、右側の駆動用トランジスタの負荷素子として前記架橋電流路に介在される前記1もしくは2以上の渦巻状コイルと、通電開始直後に、前記左側、右側の駆動用トランジスタを交互に所定の長周期でオンオフさせるための始動時補助手段とを含む、ものであってもよい。
【0041】
このような構成によれば、電源投入後、しばらくすると、直交変換回路部は、始動時補助手段の作用により、所定の長周期で発振動作を行うから、前記架橋電流路には、この長周期に同期して、左側の駆動用トランジスタと右側の従動用トランジスタとを経由する第1方向の電流と、右側の駆動用トランジスタと左側の従動用トランジスタとを経由する第2方向の電流とが交互に流れることとなる。すると、各渦巻状コイルのそれぞれは、自励発振周期に同期して、N極とS極とに交互に切り替わるから、回転子上に配列されたN,Sいずれの極性の磁極に対しても磁力を作用させて、回転駆動力を付与することができ、この駆動力の方向が予め許容される回転方向(例えば、車両の前進に対応する回転方向)と一致したとき、電動機は実際に始動する。そのため、この電動機によれば、より強力な回転駆動力をロータに付与することで、電源投入後、速やかなる回転起動乃至加速を行うことが可能となるる。
【0042】
一方、回転子の回転数が徐々に上昇して、各磁極とすれ違う際に渦巻状コイルに誘起される誘導起電力パルスのレベルが増大すると、直交変換回路部は、始動時補助手段による長周期発振を待つことなく、当該誘導起電力パルスの到来周期に同期した短周期発振動作に移行するから、前記架橋電流路には、この短周期発振に同期して、左側の駆動用トランジスタと右側の従動用トランジスタとを経由する第1方向の電流と、右側の駆動用トランジスタと左側の従動用トランジスタとを経由する第2方向の電流とが交互に流れることとなる。すると、先ほどと同様に、各渦巻状コイルのそれぞれは、発振周期に同期して、N極とS極とに交互に切り替わるから、回転子上に配列されたN,Sいずれの極性の磁極に対しても同時に磁力を作用させて、回転駆動力を付与することができる。
【0043】
このように、本発明によれば、所定の長周期発振動作又は回転に同期した低周期発振周期のいずれで動作する場合にも、1又は2以上の渦巻状コイルのそれぞれには、それらの発振周期に同期して、相異なる方向の通電が行われるから、起動状態、加速状態、定常状態のいずれの状態にあっても、回転子上に配列された各磁極に対して1もしくは2以上の渦巻状コイルから同時に回転駆動力を付与することにより、円滑かつ力強い回転子の回転を保証することができる。
【0044】
上述の発明において、前記複数個の磁極は4個の磁極からなり、かつ前記渦巻状コイルは180度の角度間隔で配置された、互いに巻方向の同一な2個の略円形の渦巻状コイルからなる、ものとすれば、小型化、薄型化、低コスト化を維持しつつも、より強力な回転駆動力を得ることができる。このとき、前記2個の略円形の渦巻状コイルが、互いに直列接続された状態で前記架橋通電路に介在されるものとすれば、両コイルの電流値を等しくすることで2つの渦巻状コイルの磁力均等化を図ると共に、両コイルに流れる電流を制限して消費電力の低減化を図り、併せて、2つの渦巻状コイルで発生する誘導起電力パルスが重畳することで、回転位置検出感度を上げて、自励発振状態から回転同期発振状態への移行を促進し、ロータの回転を高速回転状態へと速やかに導くことができる。
【0045】
上述の発明において、前記複数個の磁極は4個の磁極からなり、かつ前記渦巻状コイルは単一のコイルからなるものとすれば、1個の渦巻状コイルであっても、その極性が交互に切り替わることにより、相隣接する4個の磁極のそれぞれに対して磁力を作用させることができる。加えて、このような単一コイル方式によれば、渦巻状コイルの個数を1個減らすことで、さらなる低コスト化を図ることができる一方、渦巻状コイルの個数が単一であれば、多少、コイルの直径が増加しても、隣接する他の渦巻状コイルとの干渉の虞はないから、巻き数を増加して磁力を強化することで、渦巻状コイルが単一であっても、充分なる回転駆動力を得ることもできる。さらに、前記直交変換回路部が集積回路化され、かつ前記始動時補助手段が独立した自励発振回路であってもよい。
【0046】
本発明の好ましい実施の態様においては、据付や取扱を考慮したとき、少なくとも、前記交流電動機、前記減速歯車列、前記車軸、及び方向規制部は、共通のユニットハウジング内に収容されていてもよいであろう。
【発明の効果】
【0047】
本発明によれば、正対する第1の仮想平面(回転子側平面)と第2の仮想平面(固定子側平面)のそれぞれに、磁石と渦巻状コイルとを対向配置すると言う基本構造を有するものであるから、回転軸の延在方向への外形寸法を小さく設計することができ、そのため、軌道幅との関係で車体幅を大きく取れない列車玩具にも、その駆動軸を車体の幅方向へ向けた状態で組み込むことができる。
【0048】
加えて、列車玩具であっても、車体の高さ方向の制限はさほど存在しないから、コイルの巻数や磁石の強度の増大のみならず、磁石の配置される支持体(例えば、ディスク)の直径を増大することによっても、電動機の出力トルク特性を改善することができる。しかも、この交流電動機は、直流電動機のように耐久性に問題のあるブラシが不要であるから、長時間の連続運転も可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下に、本発明の好適な実施の一形態である電動式列車玩具を
図1〜
図20の添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0051】
[1]列車玩具システムとの関係
この電動式列車玩具は、本出願人会社より登録商標「プラレール」の名称で市場に提供され、一般に、広く知られた列車玩具システムの規格に適合するように構成されている。周知のように、この列車玩具システムは、直線状又は円弧状の単位走行軌道板(一般には「レール」と称される)を任意本数だけ連結してなる走行軌道(例えば、円形軌道又は楕円形軌道)と、この走行軌道上を走行可能に構成された様々な型式の電動式列車玩具とから構成される。
【0052】
[2]車体外殻について
図1〜
図3を参照しながら、電動式列車玩具の車体外殻について説明する。図示の電動式列車玩具100は、新幹線の先頭車などの流線型高速列車の外観を模したプラスチック製の車体外殻1を有する。この車体外殻1は、車体底板11と車体カバー12とからなるもので、両者は図示しないビスの締結により一体化されている。
【0053】
車体カバー12の天井は、車体の略前半分の領域が前下がりに傾斜する一方、車体の略後半分の領域は一定高さで水平とされている。そのため、車体底板11と車体がバー12とで囲まれる車室空間の広さは、車体の略前半分の領域が比較的に狭く、車体の略後半分の領域が比較的に広く設定されている。
【0054】
後述するように、本発明の要部であるところの駆動ユニット3は上述の車室空間の後部領域に収容され、電池ボックス4は上述の車室空間の前部領域に収容される。なお、図において、符号111は後続車両を連結して牽引するための連結具、121は操作レバー33を突出させるためのガイドスロットである。ガイドスロット121には、その長手方向に沿って3つのスライド位置(「OFF」、「ON」、「HI」)が定義されている。操作レバー33をそれらの位置にスライド設定することで、走行停止、通常走行、高速走行のいずれかを選択することができる。
【0055】
[3]駆動ユニットについて
次に、
図2〜
図12を参照しながら、駆動ユニット3について説明する。駆動ユニット3は、
図2及び
図3に示されるように、直方体状のユニットハウジング34を有する。このユニットハウジング34は、この例にあっては、透明な合成樹脂製であって、車体の前後方向に沿った長さ(L)、車体の左右方向に沿った幅(W)、及び垂直方向に沿った高さ(H)を有し、前部中央の1カ所、後部左右の2カ所に設けられたブラケットのビス孔にビスを通して車体底板11のネジ孔にねじ込むことで、車体底板11に対して3点でしっかりと固定される。このユニットハウジング34内には、後に詳述する、直交変換回路部(回路部品搭載の基板など)5、交流電動機31(
図4参照)、減速歯車列32(
図6〜
図8参照)、後輪の車軸114、及び方向規制部325a,325b(
図5参照)が収容されている。
【0056】
−交流電動機について−
次に、主として、
図4及び
図8を参照しながら、交流電動機31について説明する。交流電動機31は、後輪の車軸114と平行に延びる駆動軸311と一体的に回転し、当該駆動軸311と垂直な第1の仮想平面上であって、当該駆動軸311を中心とする所定半径の円周上に、それぞれ永久磁石315a〜315dからなる複数の磁極をその極性を交互に異ならせて等角度間隔で保持する回転子(磁石支持ディスク312)と、回転子の第1の仮想平面と正対する第2の仮想平面上であって、前記駆動軸311を中心とする所定半径の円周上に支持される1又は2以上の渦巻状コイル316a,316bを有する固定子とを含む。
【0057】
より具体的には、
図8において、符号114が後輪の車軸、符号311が電動機の駆動軸であり、それらは互いに平行とされている。車軸114及び駆動軸311は、いずれも剛性の高い金属材料(例えば、ステンレス等の非磁性体)にて製作され、それぞれその両端を図示しない軸受け部材により回転自在に支持されている。
【0058】
駆動軸311には、
図4に示されるように、第1の仮想平面を定義する磁石支持ディスク312が一体的に固定されている。磁石支持ディスク312は、電動機31の回転子として機能するものであって、この例にあっては、合成樹脂材料(例えば、POM等)にて製作されている。駆動軸311は磁石支持ディスク312の中心部を垂直に貫通する。磁石支持ディスク312の周縁部には、角度90度を隔てて、4個の有底円筒状の磁石ホルダ313a,313b,313c,313dが成型技術により一体成形されている。これらの磁石ホルダ313a,313b,313c,313dの凹部のそれぞれには、磁極を定義するための、扁平な円筒状乃至タブレット状を有する永久磁石315a,315b,315c,315dが圧入固定されている。なお、
図4において、符号314は磁石支持ディスク312のための十字状の補強リブである。
【0059】
永久磁石315a,315b,315c,315dは、それぞれ表裏方向へと分極するように磁化されており、例えば、永久磁石315a(N極)、315b(S極)、315c(N極)、315d(S極)の如く、交互に極性を異ならせて配置されている。それらの永久磁石315a,315b,315c,315dは、この例にあっては、希土類磁石(例えば、ネオジム磁石、サマリウムコバルト磁石、ブラセオジム磁石、サマリウム鉄窒素磁石等々)、あるいは、コバルト磁石等の強磁性体材料を用いて製作されている。
【0060】
一方、磁石支持ディスク312により定義される第1の仮想平面と僅かな距離を隔てて正対する第2の仮想平面上には、1又は2以上(この例では、2つ)のコイル316a,316bが配置されている。これらのコイル316a,316bは、駆動軸311を中心とする所定半径の円周上に、互いに角度180度を隔てて配置されている。これら2つのコイル316a,316bは、図示例にあっては、巻回方向及び巻数が同一の略円形の扁平な渦巻状コイルにより構成されており、両者は電気的には直列接続されている。なお、第2の仮想平面としては、例えば、ユニットハウジング34の底面から起立して、2つのコイル316a,316bを例えば接着剤を介して所定位置に保持する垂直支持壁(図示せず)により構成することができる。このとき、2つのコイル316a,316bを支持する垂直支持壁は、電動機31の固定子として機能する。磁石支持ディスク312が回転すると、4つの磁石315a,315b,315c,315dと2つのコイル316a,316bとは、僅かの間隙を隔てて正対しつつ、順次にすれ違う。
【0061】
2つのコイル316a,316bを直列接続してなる一連のコイル列の両端に所定周波数の交流電圧を印加することで、後に詳述するように、交流電動機31は4個の磁極315a,315b,315c,315dを有するディスク状の回転子と、2個のコイル316a,316bを有する板状の固定子とを有する交流同期電動機として機能することとなる。
【0062】
そして、この交流電動機31は、正対する第1の仮想平面(回転子側平面)と第2の仮想平面(固定子側平面)のそれぞれに、扁平な磁石315a〜315dと扁平な渦巻状コイル316a,316bとを対向配置すると言う基本構造を有するものであるから、回転軸311の延在方向への外形寸法を小さく設計することができ、そのため、軌道幅との関係で車体幅を大きく取れない列車玩具にも、その駆動軸を車体の幅方向へ向けた状態で組み込むことができる。
【0063】
加えて、列車玩具であっても、車体の高さ方向の制限は比較的に緩いから、コイルの巻数や磁石の強度の増大のみならず、扁平な磁石315a〜315dの配置される支持体(例えば、磁石支持ディスク312)の直径を増大することによっても、電動機の出力トルクを増強することができる。
【0064】
しかも、この交流電動機31は、直流電動機のように耐久性に問題のあるブラシが不要であるから、長時間の連続運転も可能となる。
【0065】
−減速歯車列について−
次に、主として、
図5〜
図12を参照しながら、減速歯車列32について説明する。減速歯車列32は、交流電動機31の駆動軸311に得られる回転動力を減速したのち車軸114へと伝達する機能を有する。
【0066】
この減速歯車列32は、
図8に示されるように、第1従動軸321、第2従動軸322、第3従動軸323、第4従動軸324からなる4本の従動軸を有する。それら4本の従動軸のそれぞれは、その両端を図示しない軸受けを介してユニットハウジング34に対して回転自在に支持されている。
【0067】
交流電動機31の駆動軸311、減速歯車列32に含まれる一連の従動軸321〜324、及び前記車軸114のそれぞれの軸径は、交流電動機31の駆動軸311が最も細くかつ車軸114が最も太く、さらに減速歯車列32に含まれる一連の従動軸321〜324のうち初段側の1又は2以上の従動軸の軸径は後段側の残りの従動軸の軸径よりも細く設定されている。
【0068】
より具体的には、交流電動機31の駆動軸311の軸径は0.8mm、第1従動軸321の軸径は1.0mm、第2従動軸322の軸径は1.0mm、第3従動軸323の軸径は2.0mm、第4従動軸324の軸径は1.5mm、車軸114の軸径が2.5mmとされている。従動軸321〜324の材質としては、金属材料(例えば、ステンレス等の非磁性体)が採用されている。
【0069】
このような軸径設定によれば、駆動軸311及び初段側の従動軸321,322の軸径を後段のものに比べて小さくすることで、軸受摩擦の低減によりスムーズな回転始動を保証する一方、車軸114及び後段側の従動軸323,324の軸径を初段のものに比べて大きくすることで、回転負荷に抗しつつ確実な動力伝達を保証することができる。なお、この例では、第3従動軸323の軸径が従動軸の中で最大であるが、これはシフトチェンジ等のために大きな軸負荷がかかることを考慮したためである。
【0070】
図8に示されるように、交流電動機31の駆動軸311には、軸311と一体に回転するようにして、平歯車である小径歯車317が取り付けられている。また、第1従動軸321には、軸321と一体に回転するようにして、大径歯車321aと小径歯車321bとからなる2個の平歯車が取り付けられている。さらに、第2従動軸322には、軸322と一体に回転するようにして、大径歯車322aと中径歯車322bと小径歯車322cとからなる3個の平歯車が取り付けられている。
【0071】
第3従動軸323には、大径歯車323aと中径歯車323bと小径歯車323cとからなる3個の平歯車が取り付けられている。それら3つの歯車のうちで、大径歯車323aと中径歯車323bとは、隣接して配置されかつ軸323と一体に回転すると共に、軸323に沿って、所定ストローク内を往復スライド可能とされている。一方、小径歯車323cは2つの歯車323a,323bとは離間して設けられ、かつそれら2つの歯車323a,323bと連動してスライド可能とされている。さらに、小径歯車323cは、後述するクラッチ機構を介して、軸323と結合可能とされている。すなわち、上記のクラッチ機構が接続されているときには、2つの歯車323a,323bと一体に回転するのに対して、クラッチ機構が離脱しているときには、2つの歯車323a,323bとはフリーとなる。
【0072】
第4従動軸324には、軸324と一体に回転するようにして、平歯車である中径歯車324aが取り付けられている。さらに、後輪の車軸114には、平歯車である中径歯車114cが、軸114と一体に回転するようにして、取り付けられている。
【0073】
上述の4つの従動軸321〜324は、
図8に示されるように、車軸114の上方の空間に、上下方向へと分散しかつ駆動軸311に隣接するようにして、集合配置されているので、従前のこの種の減速歯車列とは異なり、車体の前後方向への収納スペースを大きく確保することが不要であり、そのため、本発明の駆動ユニット3は列車玩具の車体後部にコンパクトに収納することができる。
【0074】
加えて、駆動軸311、一連の従動軸321〜324、車軸114は、互いに平行であるから、一連の平歯車列317、321a,321b、322a,322b,322c、323a,323b,323c、324aだけを利用して、効率よく回転動力を伝達することができる。すなわち、従前のように、クラウン歯車の介在により、回転動力の伝達ロスを生ずることがない。
【0075】
−歯車シフト機構について−
次に、主として、
図6、
図7、及び
図8を参照しながら、歯車シフト機構について説明する。上述の減速歯車列32には、所定の操作子(操作レバー33)の第1の操作(OFF位置とON位置との間でのスライド操作)に応じて、所定の歯車(歯車323c)を軸方向へとシフトさせて隣接歯車(324a)と噛合又は噛合解除することにより、回転子の駆動軸311から車軸114に至る回転動力の伝達を断続可能な第1の歯車シフト機構と、所定の操作子(操作レバー33)の第2の操作(ON位置とHI位置との間でのスライド操作)に応じて、所定の歯車(2枚の歯車323a,323bのいずれか)を軸方向へとシフトさせて別の歯車(322b,322cのいずれか)と噛合させることにより、回転子の駆動軸311から車軸114に至る回転動力の減速比を変更可能な第2の歯車シフト機構と、が含まれている。
【0076】
より具体的には、上述の第1の歯車シフト機構及び第2の歯車シフト機構は、所定のシフト操作機構を介して動作する。このシフト操作機構は、その上端部がガイドスロット121からケース外へと突出する垂直な操作レバー33と、この操作レバー33の下端部に連接されると共に、水平姿勢で車体の前後方向へとスライド自在に支持され、板カムとして機能する波曲線状の辺縁カム33gをその側縁部に有するカム板33aと、2枚の歯車323a,323bを把持する下向きコの字状の把持部33bを有すると共に、ガイドロッド33cに沿って車体の幅方向へとスライド自在に支持され、前記カム板33aの辺縁カム33gと当接する突部33fを有するカムフォロワ33bとから構成されている。
【0077】
カム板33aに形成された辺縁カム33gは車体の前側水平突出量が後側水平突出量よりも大きくなるような波状傾斜ラインとされており、その傾斜ラインの途中には、カムフォロワ33bの突部33fが嵌り込む3つの窪みが形成されている。一方、カムフォロワ33bは、圧縮スプリング33eを介して、辺縁カム33g側へと押し付けられるように付勢されている。
【0078】
そのため、操作レバー33がOFF位置からHI位置へとスライド移動すると、辺縁カム33gの傾斜ラインに案内されて、カムフォロワ33bは圧縮スプリング33dの付勢力に押されつつ、カム板33aへと接近する方向へと移動するのに対して、操作レバー33がHI位置からOFF位置へと移動すると、カムフォロワ33bは圧縮スプリング33eの付勢力に抗しつつ、カム板33aから離れる方向へと移動する。
【0079】
なお、操作レバー33がON位置からOFF位置へと移動すると、リーフスイッチで構成された通電スイッチ44(
図17参照)がON状態からOFF状態へと切り替わり、電動機31のコイル316a,316bに対する給電が停止して、電動機31は作動不能となる。
【0080】
−回転方向規制部について−
次に、主として、
図5を参照しながら、回転方向規制部について説明する。先に述べたように、交流電動機31は同期電動機として機能するから、基本的に、始動時の回転方向は不定となる。一方、交流電動機31は電動式列車玩具の原動機となるものであるから、通電開始と共に、電動式列車玩具の車体が前方へ進行するように、交流電動機31の回転方向を規制しなければならない。
【0081】
停止時の回転角度を回転子の慣性に委ねることができるのであれば、磁石支持ディスク312の回転軌跡の近くに、別途、微小な永久磁石片や磁性体片を配置することで、停止時の回転角度と電機子コイルとの位置関係を、磁石の吸引力を利用して、特定の回転方向(時計回り又は反時計回り)に始動するのに都合がよい位置に停止するように規制することもできる。
【0082】
しかし、この種の電動式列車玩具にあっては、連結車両数や登坂走行等々により走行負荷は変動することに加え、子供の手押し走行遊び(所謂手転がし)なども考慮すると、上述のような磁石片や磁性体片と磁極との吸引力で、磁石支持ディスクの停止位置を制御することは、なかなか、容易なことではない。
【0083】
そこで、本発明にあっては、駆動軸311から車軸114へ至る途中に介在される一連の歯車列の1つに、ラチェット爪325aを係合させて強制的に回転方向を規制するようにしている。
【0084】
図5に示されるように、側面に突部325bを有するラチェット爪325aは、ラチェット軸325を支点として回動自在に軸支されており、この例にあっては、第1従動軸321に取り付けられた大径歯車321aの回転方向を一方向へ規制するように作用する。具体的には、同図(b)に示されるように、ラチェット爪325aは、大径歯車321aが時計回りに回転するときには、その歯列を順次に乗り越えることで、その回転を許容するように動作する。一方、同図(c)に示されるように、ラチェット爪325aは、大径歯車321aが反時計回りに回転するときには、歯列と噛み合って、その回転を阻止するように動作する。
【0085】
−減速歯車列の3つの噛合状態について−
次に、主として、
図10〜
図12を参照しながら操作レバー33の3つのスライド位置(OFF位置,ON位置,HI位置)のそれぞれに対応する減速歯車列の噛合状態について説明する。
【0086】
上述のように、操作レバー33がOFF位置にあるとき、
図10(a)に示されるように、辺縁カム33gと突部33fとの当接を介してカムフォロア33bは圧縮スプリングに抗して最も奥まで押し込まれるから、
図10(b)に示されるように、小径歯車323cと中径歯車324aとの噛合が解除されて、
図10(c)に示されるように、小径歯車323cの回転は中径歯車324aには伝達されない。これにより、左右の後輪114a,114bはフリー状態となり、しかも電動機31への通電も断たれる一方、後述するように、この状態でも制御回路部6に対する給電は継続されるから(
図16参照)、電動式列車玩具100の手押し走行遊びが可能となる。
【0087】
操作レバー33がON位置にあるとき、
図11(a)に示されるように、辺縁カム33gと突部33fとの当接を介してカムフォロア33bは圧縮スプリングの力で中程まで押し戻されるから、
図11(b)に示されるように、小径歯車323cと中径歯車324aとの噛合が回復して、
図11(c)に示されるように、小径歯車323cの回転は中継歯車324aへと伝達される。このとき、電動機31の駆動軸311に得られる回転動力は、
図9(b)に拡大して示されるように、小歯車317→大径歯車321a→小径歯車321b→大径歯車322a→小径歯車322c→323a→小径歯車323c→中径歯車324a→小径歯車114aを順に介して減速されたのち、後輪の車軸114へと伝達され、これにより電動式列車玩具100の通常速度による走行が可能となる。
【0088】
操作レバー33がHI位置にあるとき、
図12(a)に示されるように、辺縁カム33gと突部33fとの当接を介してカムフォロア33bは圧縮スプリングの力で終端まで押し戻されるから、
図12(b)に示されるように、小径歯車323cと中径歯車324aとの噛合が回復して、
図11(c)に示されるように、小径歯車323cの回転は中継歯車324aへと伝達される。このとき、電動機31の駆動軸311に得られる回転動力は、
図9(c)に拡大して示されるように、小歯車317→大径歯車321a→小径歯車321b→大径歯車322a→中径歯車322b→中継歯車323b→小径歯車323c→中径歯車324a→小径歯車114aを順に介して減速されたのち、後輪の車軸114へと伝達され、これにより電動式列車玩具100の高速走行が可能となる。
【0089】
−クラッチ機構について−
次に、主として、
図7を参照しながら、クラッチ機構について説明する。先に説明した第2の歯車シフト機構においては、所定の歯車(歯車323c)を別の歯車(324a)へと噛合させる際に、両歯車の結合反力を緩衝するためのスプリング323dが設けられている。
【0090】
すなわち、
図7に示されるように、第3従動軸323には、非芯対象な外形を有する嵌合子323eが軸323に沿ってスライド可能かつ軸323と一体に回転可能に設けられ、この嵌合子323eはスプリング323dを介して歯車323aと結合されている。一方、歯車323cの側面には嵌合子323eが嵌り込む嵌合孔が形成されている。
【0091】
そのため、OFF状態からON状態への移行に際しては、先ず、歯車323cは嵌合子323eが未嵌合のフリーの状態で歯車324aと当接したのち、反力に抗しつつ両歯車の噛み合いが徐々に進んで、最終的に嵌合子323eが嵌合孔に嵌り込むことで、両歯車の噛合が完了する。そのため、歯車323cと歯車324aとの噛合をスムーズに行うことができる。
【0092】
−直交変換回路部について−
次に、主として、
図17を参照しながら、直交変換回路部5について説明する。
図17に示されるように、この直交変換回路は、先に説明した渦巻状コイル316a及び316bが負荷素子として組み込まれたものであり、電池ボックス4から供給される直流電源(3V)により動作するように構成されている。
【0093】
すなわち、この直交変換回路は、互いに並置された、いずれも第1導電型(この例では、PNP型)である、左側、右側の駆動用バイポーラトランジスタ51a,51bと、左側、右側の駆動用バイポーラトランジスタ51a,51bのそれぞれと直列接続されるようにして、互いに並置され、左側、右側の駆動用トランジスタ51a,51bのうちの、互いに反対側の駆動用トランジスタの出力でオンオフ制御される、いずれも第2導電型(この例では、NPN型)である、左側、右側の従動用パイポーラトランジスタ52a,52bと、左側の駆動用バイポーラトランジスタ51aの出力側(コレクタ端子側)と右側の駆動用バイポーラトランジスタ51bの出力側(コレクタ端子側)との間に架け渡された架橋電流路58と、左側、右側の駆動用バイポーラトランジスタ51a,51bの負荷素子として架橋電流路58に介在される1もしくは2以上(この例では2個)の渦巻状コイル316a,316bと、左側、右側の駆動用トランジスタ51a,51bの制御端子電位(ベース電位)をオン閾値電位(ベース・エミッタ順方向閾値電圧)へと引っ張る(プルダウンする)左側、右側のプルダウン抵抗54a,54bと、左側の駆動用トランジスタ51aの制御端子(ベース端子)と右側の駆動用トランジスタ51bの出力端子(コレクタ端子)との間、及び右側の駆動用トランジスタ51bの制御端子(ベース端子)と左側の駆動用トランジスタ51aの出力端子(コレクタ端子)との間に、それぞれ介在される自励発振周期設定用の電界コンデンサ56a,56bと抵抗55b,55aとの直列回路とを含んで構成されている。なお、左右の従動用パイポーラトランジスタ52a,52bの制御端子側(ベース端子側)には、それぞれベース電流を制限するための左右のベース抵抗53a,53bが設けられている。
【0094】
前述のように、渦巻状コイルとしては、互いに巻回方向及び巻き数が同一(つまり、通電により両コイルに同一極性かつ同一強度の磁力を生ずる)2個の円形な渦巻状コイル316a,316bが採用されると共に、これらの渦巻状コイル316a,316bは、互いに電気的に直列接続された状態で、架橋電流路58に介在されている。さらに、これらの渦巻状コイル316a,316bは、先に
図4を参照して説明したように、180度の角度間隔で固定子側に配置されている。
【0095】
加えて、左右の電解コンデンサ56a,56bのうちのいずれか一方(この例では、右側)の電界コンデンサ56bには、これと並列に、始動促進用の抵抗57が接続されている。
【0096】
以上の構成によれば、電源スイッチ33aが投入されると、始動促進用の抵抗57の作用により、左側の駆動用トランジスタ51aがいち早くオンし、そのコレクタ電流の一部が右側の従動用トランジスタ52bのベースに供給されて、右側の従動用トランジスタ52bもオンする。以後、左右の駆動用トランジスタ51a,51bは、左右のプルダウン抵抗54a,54bの抵抗値とコンデンサ56a,56bの静電容量値と抵抗55a,55bとで定まる自励発振周期(所定の長周期)をもって、交互にオンオフを繰り返す。この自励発振周期は、回転子の回転開始を誘引することを考慮して設定される。
【0097】
すると、左側の駆動用トランジスタ51a→架橋電流路58→右側の従動用トランジスタ52bを順に経由する通電路と、右側の駆動用トランジスタ51b→架橋電流路58→左側の従動用トランジスタ52aを順に経由する通電路とが交互に形成されて、同一巻き数の2つのコイル316a,316bに対して、同一の電流値をもって、第1方向(図では、左から右)への通電と第2方向(図では右から左)への通電とが交互に行われ、2つのコイル316a,316bには、所定の自励発振周期に同期して、同一極性(例えば、S極)かつ同一強度の磁極が、極性を交互に切り替えて出現することとなる。
【0098】
今仮に、
図4の状態(永久磁石313a,313cがN極、永久磁石313b,313dがS極)において、コイル316a,316bがいずれもS極に励磁されると、S極である永久磁石313b,313dには反発力が作用する一方、N極である永久磁石313a,313cには吸引力が作用することにより、回転子(磁石支持ディスク312)には図において時計回りの回転駆動力(トルク)が発生する。なお、回転子の時計回り方向が、ラチェット爪325aによる許容回転方向である。このとき、回転子がさらに90度時計回りに回転した状態において、コイル316a,316bにN極が励磁されると、N極である永久磁石313a,313cには反発力が作用する一方、S極である永久磁石313b,313dには吸引力が作用することにより、回転子には図において時計回りの回転駆動力が発生することとなる。このような状態が繰り返されることで、回転子は時計回りに始動したのち、徐々に速度を増すこととなる。なお、同期電動機の始動時回転方向は不定であるから、もしも、始動時回転トルクの方向が反時計回りであったときには、回転子はラチェット爪325aの作用により回転停止状態に維持されるが、この場合には、発振周期の半周期を経過して、時計回りの回転トルクが得られるのを待って、以上の動作が実行されて、電動機は時計回りに回転始動することとなる。
【0099】
回転子の回転速度が所定値に達すると、永久磁石313a〜313dがコイル316a,316bの上を通過するタイミング(すなわち、永久磁石と渦巻状コイルとがすれ違うタイミング)で、コイル316a,316bに誘起される逆起電力パルスの大きさが増大し、これが左右の駆動用トランジスタ51a,51bのうちで、そのときオン状態にあるトランジスタのベース電位を瞬間的に引き上げる(逆バイアスする)ことにより、そのときオンであった駆動用トランジスタは、自励発振周期を待たずして強制的にオフされる。同様の作用が繰り返される結果、以後、左右の駆動用トランジスタ51a,51bは、回転子の半回転毎の周期に同期した他励発振周期で交互にオンオフ動作を繰り返すこととなる。
【0100】
すると、先の場合と同様にして、左側の駆動用トランジスタ51a→架橋電流路58→右側の従動用トランジスタ52bを順に経由する通電路と、右側の駆動用トランジスタ51b→架橋電流路58→左側の従動用トランジスタ51aを順に経由する通電路とが交互に形成されて、同一巻き数の2つのコイル316a,316bに対して、同一の電流値をもって、第1方向(図では、左から右)への通電と第2方向(図では右から左)への通電とが交互に行われ(交流電圧の印加)、2つのコイル316a,316bには、回転子の半回転に同期した他励発振周期に同期して、同一極性(例えば、S極)かつ同一強度の磁極が、極性を交互に切り替えて出現することとなる。これにより、回転子の回転は、回転子の機械的負荷とコイルによる回転駆動力(トルク)とが平衡するまで上昇を続け、両者が平衡した時点で回転子の速度は一定化される。このときの発振周期は、電動式列車玩具100の通常走行速度を考慮して設計される。
【0101】
この例にあっては、架橋電流路58に介在される2個のコイル316a,316bは互いに電気的に直列接続されるため、2つの渦巻状コイル316a,316bで誘起される逆起電力パルスは互いに加算されることとなり、比較的に低速回転のうちから、大きな逆起電力を誘起させることで、自励発振周期による低速回転状態から他励発振周期による高速回転状態への移行を始動後早期に実現し、始動特性を改善することができる。
【0102】
[4]電池ボックスについて
次に、主として、
図2を参照しながら、電池ボックス4の配置について説明する。本発明に係る駆動ユニット3のハウジング34は、前後方向の長さ(L)、左右方向の幅(W)、垂直方向の高さ(H)を有する直方体であるが、特に、長さ(L)及び幅(W)については、従前のユニットハウジングに比べて、格段に小さく構成できる。
【0103】
これは、前述したように、1)電動機として、微小な隙間を介して正対する第1の仮想平面(回転子側平面)と第2の仮想平面(固定子側平面)のそれぞれに、磁石315a〜315dと渦巻状コイル316a,316bとを対向配置すると言う基本構造を採用したこと、及び2)4つの従動軸321〜324を、車軸114の上方の空間に、上下方向へと分散しかつ駆動軸311に隣接するようにして集合配置したこと、を主たる理由とするものである。
【0104】
図2に示されるように、駆動ユニット3のハウジング34を車室空間の後部に収容すると、車室空間の前部には大きな空きスペースを確保され、この空きスペースには、1.5Vの単四乾電池を互い違いに2本並置して収容する電池ボックス4を収容することが可能となる。
【0105】
この電池ボックス4は、2本の1.5V単四乾電池を出し入れするための開口を上部に有するボックス本体41と、このボックス本体41の上部開口を塞ぐ上蓋42とを有するものである。それら2本の1.5V単四乾電池は、電気的には直列接続されて、3.0Vの直流電源40を構成する。なお、図において、符号43は、有音モードと無音モードとの切り替えのための発音スイッチである。
【0106】
市販の小型直流電動機を採用する従来の車体にあっては、その車室空間のほぼ全長に亘って電動機と減速歯車列とが占有したため、乾電池の収容スペースを十分に確保することかできず、やむなく、1本の1.5V単三乾電池を電動機の上に無理やり載せて収容すると言った構成が採用されていた。この場合、長時間の連続運転を可能とするに足る十分な電力が確保できないことに加えて、そのままでは、昨今流行の発音機能、撮影機能、無線通信機能、照明機能等々の実現に不可欠なマイクロプロセッサの電源電圧が足りず、結局、別途DC/DCコンバータを設けて、電池から得られる1.5Vを適宜に昇圧してからマイクロプロセッサへと供給する必要があり、一層、電池の消耗を早める結果となっていた。
【0107】
これに対して、本発明にあっては、電池ボックス4から直流3Vを直接に得られることに加えて、DC/DCコンバータにて昇圧する必要もないため、長時間の連続走行に耐え得る十分な電力を確保することができる。また、昨今流行の発音機能、撮影機能、無線通信機能、照明機能等々の実現に不可欠なマイクロプロセッサの安定的な作動も可能となるため、この種の電動式列車玩具の設計自由度の向上を通じて、斬新な電動式走行玩具の商品化にも寄与することとなる。
【0108】
[5]スピーカについて
次に、主として、
図2及び
図13を参照しながら、スピーカ8の配置について説明する。昨今、電動式自動車玩具や電動式列車玩具と言った電動式車両玩具の分野においては、模擬走行音やお喋り音声を発する発音機能を付与することが流行している。車体外殻を車体底板と車体カバーとで構成する電動式車両玩具にあっては、発音機能を実現するための扁平な小型のコーンスピーカを車体カバーの天井部分の内面に上向き姿勢で取り付け、このスピーカから発する音を天井部分に開けられた多数の小孔(放音孔)から車体外部へと放出すると言ったスピーカ取付構造が採用されていた。
【0109】
このように天井部分に放音孔を設けるスピーカ取付構造にあっては、意匠性を重視する車両玩具にあっては、外観体裁を損ねる欠点があり、加えて、スピーカからはリード線が導出されることから、電池交換などのために車体カバーを取り外すときに不便でもある。
【0110】
そこで、意匠性を重視する車両玩具にあっては、発音機能を実現するための扁平なコーンスピーカを車体底板の床面部分の内面に下向き姿勢で取り付け、このスピーカから発する音を床面部分に開けられた放音孔から走行路面に向けて放出し、走行路面で反射させて拡散させると言うスピーカ取付構造が採用されている。
【0111】
しかしながら、このようなスピーカ取付構造にあっても、走行路面の性状乃至音波の反射特性は区々であることに加えて、車体底板の下面と走行路面との距離も区々であるため、音量が足りなかったり、音質が劣化する等の問題がある。
【0112】
これに対して、本発明にあっては、
図2及び
図13に示されるように、発音機能を実現するための扁平なコーンスピーカ43を車体底板の床面部分の内面に下向き姿勢で取り付ける一方、スピーカ8の前面側の床面には放音孔を設けず、スピーカ43から発せられる音波により、車体外殻1のそれ自体を振動させて、車体外殻1の全体振動を介して車体外部へと音波を放出しようとするものである。
【0113】
より具体的には、
図13に示されるように、車体底板11の床面上には、電池ボックス4の真下に位置するようにして、比較的に浅い深さの円形の凹部112が形成される。この凹部112の底部は平坦であって、放音孔などの開口は一切設けられていない。凹部112の周囲には、これを取り巻くようにして、高さの比較的低いリング状の突条112cが設けられている。これにより、円形の凹部112の上周縁とリング状の突条112cとの間にはリング状の段部112aが形成され、この段部112aに載るようにして、スピーカ8が支持される。その結果、スピーカ8と凹部112の底部との間には空隙112bが生ずることとなる。
【0114】
スピーカ8は、この例にあっては、扁平なコーンスピーカであって、フレームの中心に位置する扁平な円形の磁石8aと、磁石8aを取り巻くボイスコイル8bと、ボイスコイル8bに連接されてフレーム外周縁部との間に張設される振動膜8cとを有するものである。図中、符号8dはフレームに開けられたスピーカの呼吸孔である。
【0115】
このようなスピーカ取り付け構造によれば、車体底板11に下向き姿勢で取り付けられたスピーカにより、車体底板を通じて車体外殻の全体を振動させて車両外部へと音を発するものであるから、車体天井に放音孔を設ける手法のように、車体外観の美観を損ねることもなく、また車体底板に下向き姿勢でスピーカを取り付け、底板に設けた放音孔から発せられた音を、走行路面に反射させて拡散する場合のように、走行路面の性状や走行路面までの距離などにより音量や音質が変動することもないという利点がある。
【0116】
殊に、この例にあっては、下向き姿勢で配置されたスピーカ8と底板11の床面との間には、共鳴室を構成する閉じた空所112bが設けられているため、スピーカ8から放出される音波を減衰させることなく、効果的に底板に伝達することができる。しかも、円形の凹部112の底は薄肉化されているため、それによっても、振動の減衰を抑制することができる。
【0117】
本発明者等の実験によれば、
図1〜
図3、
図13に示される車体外殻1を有する列車玩具100を製品サンプルとして、音量40dB前後のオフィス環境において、車体前方10cmの位置にdBメータを配置して、内蔵スピーカ8に起因する音量を測定したところ、以下の結果を得た。
・条件1:車体ケース12を車体底板11に取り付けた状態での音量測定
1)スピーカ下向き+放音孔あり : 55〜60dB
2)スピーカ下向き+放音孔なし : 63〜70dB
・条件2:車体ケース12を車体底板11から取り外した状態での音量測定
1)スピーカ下向き+放音孔あり : 46〜52dB
2)スピーカ下向き+放音孔なし : 67〜72dB
【0118】
以上の結果から明らかなように、車体ケースの有無に拘わらず、放音孔有りの場合よりも放音孔なしの状態の方が、高い音量レベルが得られかつ音質も改善することが確認された。このような音量の増大及び音質の改善の理由については、未だ定かではないが、車体底板11に向けてスピーカ8から放出される音波により、車体底板11が強く振動して、それに伴って発生する音波が閉ざされた車体外殻1内にて増幅されることで、車体外殻1の全体の振動が誘引され、車体外部へと効率よく音波が伝達されるのではないかと推定される。
【0119】
[6]前輪車軸の支持構造について
次に、主として、
図13、
図14、及び
図15を参照しながら、前輪車軸の支持構造について説明する。従来、任意の経路を描いて敷設された走行軌道板2の上を、左右の前輪及び後輪の4輪で走行する電動式列車玩具100にあっては、前輪車軸113及び後輪車軸114のそれぞれは、いずれも、車体に対して常に平行姿勢を保つように支持されている。そのため、楕円形軌道の登坂路に差し掛かったような場合、登坂路の勾配によっては、
図15に仮想線で示されるように、左右いずれかの前輪の浮き上がりに連れて後輪も浮き上がった状態で、後輪駆動が継続される結果、走行軌道板のガードレール(外側突条22)を乗り越え、カーブを直進して脱線することがある。
【0120】
そのため、従来は、車体底板11の前部又は後部に、鉛塊などの錘を載せることで車輪の浮き上がりをなくし、このような脱線を回避していたが、このような回避策では重量増加により電池を無駄に消耗するという欠点が指摘されている。なお、
図14及び
図15において、符号2は走行軌道板、21は走行軌道板の基礎を成す帯状基体、22は走行軌道板の外側ガードレールとなる外側突条、23は走行軌道板の内側ガードレールとなる内側突条であり、外側突条22と内側突条23との間の床面は祖面とされ、左右の車輪がその上を走行する。
【0121】
そこで、この発明では、
図13及び
図14に示されるように、電池ボックス4の底面の中心線上に前後方向へと延びる下向き突条45を設けると共に、前部車軸113の左右の各端部をそれぞれ所定ストローク内で上下動可能に支持することにより、前部車軸113がその長手方向の1/2位置において、前記突条45に当接し、これを支点として左右方向へシーソーの如く傾動可能となるように構成した。
【0122】
このような構成によると、
図14に示されるように、カーブする登坂路に差し掛かったことにより、図中仮想線に示されるように、左右の前輪113a,113bの位置する走行軌道板2が左右に傾くと、車体を水平に維持しつつも、前輪車軸113だけが車体に対して傾くこととなり、これにより左右の前輪及び左右の後輪はいずれも路面に接地した状態のままで、車両は脱線することなくカーブを正常に走行可能となる。
【0123】
[7]電気的ハードウェア構成の全体について
次に、主として、
図16を参照しながら、電動式列車玩具100の電気的ハードウェア構成の全体について説明する。電動式列車玩具100の電気的ハードウェアの全体は、
図16に示されるように、直流電源40と、制御回路部6と、直交変換回路部5とから構成されている。
【0124】
直流電源40は、電池ボックス4に収容された2本の1.5Vの単四乾電池で構成された3.0Vの直流電源である。この3.0Vの直流電源40は、制御回路部6へと給電されるほか、さらに、直流変換回路部5へとも給電されている。ここで重要な点は、従前の1.5V直流電源の場合とは異なり、直流電源40と制御回路部6との間は、DC/DCコンバータを介することなく、直接に接続されていることである。
【0125】
制御回路部6は、マイクロプロセッサ、ROM、RAM、その他、専用の回路機能が組み込まれたASIC等で構成されたCPU61と、レンズやイメージセンサ等で構成された撮影部62と、スピーカ8からの発音動作を行うためのLSIやドライバで構成される発音部63と、前照灯として機能する白色LED7を駆動するためのドライバ等で構成された照明部64と、スマートフォン等のリモートコントローラとの間における無線送受信(例えば、ブルートゥース(登録商標)通信)を行うための無線送受信部65と、走行パルス(この例では、前輪の1回転あたり1個のパルス)を発生する走行パルス発生部66とを含んでいる。
【0126】
なお、この例にあっては、走行パルス発生部66は、
図13(a)に示されるように、左前輪113aにインサート成型された磁石片9aとその近傍に配置されたリードスイッチ9とから構成され、従前のカムとカムフォロアとを介してマイクロプロセッサを作動させる機構に比べて構成が格段に簡素化され、耐久性も改善されている。
【0127】
直交変換回路部5は、先に
図17を参照して説明したものであり、給電スイッチ44を介して供給される3Vの直流電圧を直交変換したのち、得られた交流電圧を交流電動機31を構成する2つの直列接続された渦巻状コイル316a,316bに対して供給するものである。
【0128】
[8]電気的ソフトウェア構成の全体について
次に、主として、
図20を参照しながら、電動式列車玩具100の電気的ソフトウェア構成の全体について説明する。電源投入により処理が開始されると、先ず、イニシャライズ処理(ステップST101)によって、各種の演算処理の前処理としてフラグやレジスタ類の初期設定が行われる。
【0129】
しかるのち、走行パルスの有無(ステップST102)、送受信要求の有無(ステップST104)、撮影要求の有無(ステップST106)、照明要求の有無(ステップST108)、発音要求の有無(ステップST110)の判定がサイクリックに行われる。
【0130】
ここで、走行パルス発生部66からの信号に基づいて走行パルスの有無を判定した結果、走行パルス有りと判定された場合には(ステップST102YES)、当該走行パルスのカウント処理を実行すると共に、カウント結果が所定の条件を満足するか否かに応じて所定の条件フラグの内容を制御すると言った走行パルス対応処理を実行する(ステップST103)。
【0131】
無線送受信部65からの信号に基づいて送受信要求の有無を判定した結果、送受信要求有りと判定された場合には(ステップST104YES)、該当するコマンドの無線送信又は無線受信処理、あるいは、該当するデータの無線送信又は無線受信処理をリモートコントローラ(例えば、スマートフォンや専用のコントローラ等)との間で実行する(ステップST105)。このとき、受信されるべきコマンドとしては、例えば、前照灯の点消灯コマンド、カメラでの撮影開始又は終了コマンド、音の発生又は停止コマンド等を挙げることができ、送信されるべきデータとしては、例えば、撮影された映像データ、走行距離を示す車速パルスのカウントデータなどを挙げることができる。
【0132】
撮影要求の有無を判定した結果、撮影要求有りと判定された場合には(ステップST106YES)、撮影部62から画像データを取得して、所定の画像メモリに保存する撮影処理を実行する(ステップST107)。こうして得られる画像データは、所定のタイミングでリモートコントローラーへと無線送信され、例えば車内から前方を撮影した臨場感溢れる映像がスマートフォンの画面上に表示されることとなる。
【0133】
照明要求の有無を判定した結果、照明点灯要求有りと判定された場合には(ステップST108YES)、照明部64を駆動することにより、前照灯を点灯させると言った照明処理を実行する(ステップST109)。なお、言うまでもないが、照明要求の内容が照明消灯であれば、前照灯を消灯させると言った照明処理を実行する(ステップST109)。
【0134】
発音要求の有無を判定した結果、発音要求有りと判定された場合には(ステップST110YES)、予め記憶させた各種の音声データ(例えば、模擬走行音データ、子供に語りかけるお喋り音声データ等々)を音声メモリから読み出して、発音部63を駆動することにより、スピーカ8から該当する音(サウンド)を発生する発音処理を実行する(ステップST111)。
【0135】
以上の処理(ステップST101〜ST111)を実行することにより、操作レバー33の切替により、停止状態、通常走行状態、高速走行状態を選択するのみならず、無線送受信部65を介して受信される各種の制御コマンドや走行パルス発生部66から得られる走行パルスに基づいて、撮影機能、発音機能、照明機能等々を実現させることができる。
【0136】
[9]その他の実施形態
−直交変換回路部の他の実施形態について−
次に、主として、
図18を参照しながら、直交変換回路部の他の実施形態(第2実施形態)について説明する。この直交変換回路部は、円形の渦巻状コイルの個数が1個(単一)であることを除き、先に説明した実施形態のそれと同様である。したがって、
図18において、
図17の実施形態と同一構成部分については、同符号を付すことにより、説明は省略する。
【0137】
すなわち、
図18に示されるように、この第2実施形態に係るコイル駆動回路にあっては、架橋電流路58に介在される渦巻状コイルとしては、1個(単一)の渦巻状コイル316により構成される。
【0138】
このような構成によれば、1個の渦巻状コイル316であっても、その極性が交互に切り替わることにより、相隣接する4個の磁極315a,315b,315c,315dのそれぞれに対して磁力を作用させることができる。加えて、このような単一コイル方式によれば、渦巻状コイルの個数を1個減らすことで、さらなる低コスト化を図ることができると共に、渦巻状コイルの個数が単一であれば、多少、コイルの直径が増加しても、隣接する他の渦巻状コイルとの干渉の虞はないから、巻き数を増加して磁力を強化することで、渦巻状コイルが単一であっても、充分なる回転駆動能力並びに電圧誘起能力を獲得することで、第1実施形態のコイル駆動回路と同様に、起動状態、加速状態、定常状態のいずれの状態にあっても、各磁極315a,315b,315c,315dのうちの相隣接する2個の磁極に対して1個の渦巻状コイル316から同時に回転駆動力を付与することにより、円滑かつ力強いロータの回転を保証することができる。
【0139】
−直交変換回路部の変形例について−
以上の実施形態においては、始動に必要な長周期の発振動作を実現するために、2つの抵抗54a,54b、2つのコンデンサ56a,56b、及び1つの抵抗57を使用したが、回路の集積回路化を達成するためには、左右の駆動トランジスタ51a,51bを外部発振回路からのスイッチング制御信号で駆動してもよいであろう。このようなスイッチング制御信号については、例えば、低消費電力のCR発振回路や水晶発振回路と分周回路とを使用して容易に作成することができる。
【0140】
すなわち、
図19(a)に示されるように、第1実施形態の変形例にあっては、直交変換回路部は集積回路として構成される。VDDパッドとGNDパッドとの間には、電池ボックス4からの直流電源40が供給される。T1パッドとT2パッドとの間には、2個の渦巻状コイル316a,316bが直列接続される。直交変換回路部は、電源投入により、固有の長周期で発振し、周期毎に通電方向を変えて、渦巻状コイル316a,316bに対して通電を行う自励発振動作と、渦巻状コイル316a,316b誘起電圧パルスが所定値を超えると、当該誘起電圧パルスに同期した短周期にて発振し、周期毎に方向を変えて、渦巻状コイル316a,316b対して通電を行う他励発振動作とを実行する。
【0141】
一方、
図19(b)に示されるように、第2実施形態の変形例にあっては、直交変換回路部は集積回路として構成される。VDDパッドとGNDパッドとの間には、電池ボックス4からの直流電源40が供給される。T1パッドとT2パッドとの間には、1個の渦巻状コイル316が接続される。コイル駆動回路は、電源投入により、固有の長周期で発振し、周期毎に通電方向を変えて、渦巻状コイル316に対して通電を行う自励発振動作と、渦巻状コイル316の誘起電圧パルスが所定値を超えると、当該誘起電圧パルスに同期した短周期にて発振し、周期毎に方向を変えて、扁平コイル316に対して通電を行う他励発振動作とを実行する。
【0142】
いずれの変形例にあっても、長周期の自励発振動作は、直交変換回路部に組み込まれた独立した自励発振回路(OSC)により誘引される。この自励発振回路は、発信源となる低消費電力の発振回路(例えば、CR発振回路、水晶発振回路、等々)と、この発振回路から得られるクロック信号を多段に分周する分周回路列とから構成することができる。そして、自励発振回路32から得られる低周波クロック信号により、
図17又は
図18に示されるH型ブリッジ回路がスイッチング制御され、これにより、長周期の自励発振動作が実現される。
【解決手段】 直交変換回路部を介して電池で駆動される交流電動機と、減速歯車列を介して交流電動機で駆動される車軸とを有し、交流電動機は、車軸と平行に延びる駆動軸と一体的に回転し、前記駆動軸と垂直な第1の仮想平面上であって、駆動軸を中心とする所定半径の円周上に、それぞれ永久磁石からなる複数の磁極をその極性を交互に異ならせて等角度間隔で保持する回転子と、前記回転子の第1の仮想平面と正対する第2の仮想平面上であって、駆動軸を中心とする所定半径の円周上に静止的に配置される1又は2以上の渦巻状コイルとを含み、さらに交流電動機の始動方向を規制する始動方向規制部を有する。