特許第6163301号(P6163301)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヌオーヴォ ピニォーネ ソシエタ ペル アチオニの特許一覧

特許6163301往復圧縮機設備において圧力脈動を積極的に使用するための方法及び装置
<>
  • 特許6163301-往復圧縮機設備において圧力脈動を積極的に使用するための方法及び装置 図000002
  • 特許6163301-往復圧縮機設備において圧力脈動を積極的に使用するための方法及び装置 図000003
  • 特許6163301-往復圧縮機設備において圧力脈動を積極的に使用するための方法及び装置 図000004
  • 特許6163301-往復圧縮機設備において圧力脈動を積極的に使用するための方法及び装置 図000005
  • 特許6163301-往復圧縮機設備において圧力脈動を積極的に使用するための方法及び装置 図000006
  • 特許6163301-往復圧縮機設備において圧力脈動を積極的に使用するための方法及び装置 図000007
  • 特許6163301-往復圧縮機設備において圧力脈動を積極的に使用するための方法及び装置 図000008
  • 特許6163301-往復圧縮機設備において圧力脈動を積極的に使用するための方法及び装置 図000009
  • 特許6163301-往復圧縮機設備において圧力脈動を積極的に使用するための方法及び装置 図000010
  • 特許6163301-往復圧縮機設備において圧力脈動を積極的に使用するための方法及び装置 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6163301
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】往復圧縮機設備において圧力脈動を積極的に使用するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/00 20060101AFI20170703BHJP
   F04B 41/02 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
   F04B39/00 B
   F04B41/02 A
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-276305(P2012-276305)
(22)【出願日】2012年12月19日
(65)【公開番号】特開2013-130194(P2013-130194A)
(43)【公開日】2013年7月4日
【審査請求日】2015年12月17日
(31)【優先権主張番号】CO2011A000070
(32)【優先日】2011年12月20日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】505347503
【氏名又は名称】ヌオーヴォ ピニォーネ ソシエタ ペル アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】リカルド・バガグリ
(72)【発明者】
【氏名】レオナルド・トナレーリ
【審査官】 新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−218671(JP,A)
【文献】 特開2002−147353(JP,A)
【文献】 特開2002−106464(JP,A)
【文献】 特開2006−097592(JP,A)
【文献】 特開2000−291558(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/00
F04B 41/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
往復圧縮機と、体積ボトルとの間で加圧されるガスを循環させる経路を提供し、前記往復圧縮機の運転周波数実質的に等しい共振周波数を有するように構成されたガス循環装置と、
前記往復圧縮機と前記ガス循環装置との間に配置されたバルブを切り替えるタイミングを制御して、前記ガス循環装置において生じる圧力脈動を積極的に使用して前記往復圧縮機の体積効率を向上させるように構成されたコントローラと、
を備え、
前記バルブが吸引バルブであり、
前記コントローラは、前記バルブが開放されている間、吸引圧力に最大脈動圧力を付加するよう前記バルブの作動タイミングを制御し、
前記ガス循環装置が、配管と、該配管よりも大きな断面積を有するインライン共振器とを含み、
前記ガス循環装置が更に、前記インライン共振器の側方に配列された側枝共振器を含み、
該側枝共振器が、共振器バルブを介して前記インライン共振器に接続され、
該共振器バルブが、開放状態と閉鎖状態との間で切り替えられ、これによりガスの組成に応じて前記側枝共振器と前記インライン共振器との接続又は接続解除を行う、
装置。
【請求項2】
往復圧縮機と、体積ボトルとの間で加圧されるガスを循環させる経路を提供し、前記往復圧縮機の運転周波数と実質的に等しい共振周波数を有するように構成されたガス循環装置と、
前記往復圧縮機と前記ガス循環装置との間に配置されたバルブを切り替えるタイミングを制御して、前記ガス循環装置において生じる圧力脈動を積極的に使用して前記往復圧縮機の体積効率を向上させるように構成されたコントローラと、
を備え、
前記バルブが吸引バルブであり、
前記コントローラは、前記バルブが開放されている間、吸引圧力に最大脈動圧力を付加するよう前記バルブの作動タイミングを制御し、
前記ガス循環装置が、
前記往復圧縮機と前記体積ボトルとの間に配列された配管と、
前記配管の側方に配列された側枝配管と、
を含み、
前記側枝配管が、共振器バルブを介して前記配管に接続され、
前記共振器バルブが、開放状態と閉鎖状態との間で切り替えられ、これによりガスの組成に応じて前記側枝配管と前記配管との接続又は接続解除を行う、
装置。
【請求項3】
前記ガス循環装置が更に、前記側枝共振器に接続された追加の側枝共振器を含む、請求項に記載の装置。
【請求項4】
前記側枝共振器及び前記追加の側枝共振器の少なくとも1つが、バルブを介して前記配管又は前記側枝共振器にそれぞれ接続され、
前記バルブが、開放状態と閉鎖状態との間で切り替えられ、これによりガスの組成に応じて前記側枝配管又は前記追加の側枝共振器の接続又は接続解除を行う、
請求項に記載の装置。
【請求項5】
往復圧縮機と、体積ボトルとの間で加圧されるガスを循環させる経路を提供し、前記往復圧縮機の運転周波数と実質的に等しい共振周波数を有するように構成されたガス循環装置と、
前記往復圧縮機と前記ガス循環装置との間に配置されたバルブを切り替えるタイミングを制御して、前記ガス循環装置において生じる圧力脈動を積極的に使用して前記往復圧縮機の体積効率を向上させるように構成されたコントローラと、
を備え、
前記バルブが吸引バルブであり、
前記コントローラは、前記バルブが開放されている間、吸引圧力に最大脈動圧力を付加するよう前記バルブの作動タイミングを制御し、
前記ガス循環装置が、
前記往復圧縮機と前記体積ボトルとの間に配列された配管と、
前記配管の側方に配列された側枝配管と、
を含み、
前記側枝配管が、共振器バルブを介して前記配管に接続され、
前記共振器バルブが、開放状態と閉鎖状態との間で切り替えられ、これによりガスの組成に応じて前記側枝配管と前記配管との接続又は接続解除を行う、
装置。
【請求項6】
圧力脈動を用いて往復圧縮機の体積効率を向上させる方法であって、
前記往復圧縮機のバルブと、体積ボトルとの間に、前記往復圧縮機の運転周波数実質的に等しい共振周波数を有するように構成されたガス循環装置を提供するステップと、
前記ガス循環装置において本来的に生じる圧力脈動を積極的に用いて前記往復圧縮機の体積効率を向上させるよう前記バルブの作動タイミングを制御するステップと、
を含み、
前記バルブが吸引バルブであり、
前記制御するステップは、前記バルブが開放されている間、吸引圧力に最大脈動圧力を付加するよう前記バルブの作動タイミングを制御するステップを含み、
前記ガス循環装置が、配管と、該配管よりも大きな断面積を有するインライン共振器とを含み、
前記ガス循環装置が更に、前記インライン共振器の側方に配列された側枝共振器を含み、
該側枝共振器が、共振器バルブを介して前記インライン共振器に接続され、
該共振器バルブが、開放状態と閉鎖状態との間で切り替えられ、これによりガスの組成に応じて前記側枝共振器と前記インライン共振器との接続又は接続解除を行う、
方法。
【請求項7】
圧力脈動を用いて往復圧縮機の体積効率を向上させる方法であって、
前記往復圧縮機のバルブと、体積ボトルとの間に、前記往復圧縮機の運転周波数と実質的に等しい共振周波数を有するように構成されたガス循環装置を提供するステップと、
前記ガス循環装置において本来的に生じる圧力脈動を積極的に用いて前記往復圧縮機の体積効率を向上させるよう前記バルブの作動タイミングを制御するステップと、
を含み、
前記バルブが吸引バルブであり、
前記制御するステップは、前記バルブが開放されている間、吸引圧力に最大脈動圧力を付加するよう前記バルブの作動タイミングを制御するステップを含み、
前記ガス循環装置が、
前記往復圧縮機と前記体積ボトルとの間に配列された配管と、
前記配管の側方に配列された側枝配管と、
を含み、
前記側枝配管が、共振器バルブを介して前記配管に接続され、
前記共振器バルブが、開放状態と閉鎖状態との間で切り替えられ、これによりガスの組成に応じて前記側枝配管と前記配管との接続又は接続解除を行う、
方法。
【請求項8】
往復圧縮機の出力又は入力が体積ボトルに接続された往復圧縮機設備を改造する方法であって、前記設備が、前記往復圧縮機の圧力脈動を用いて前記往復圧縮機の体積効率を向上させるよう改造されており、当該方法が、
前記往復圧縮機の出力又は入力を前記体積ボトルに接続するガス循環装置の配管に少なくとも1つの音響共振器を付加することにより前記ガス循環装置を修正し、前記ガス循環装置が、前記往復圧縮機の運転周波数実質的に等しい共振周波数を有するようにするステップと、
往復圧縮機とガス循環装置との間のバルブをコントローラに接続し、前記ガス循環装置において生じる圧力脈動を積極的に使用して前記往復圧縮機の体積効率を向上させるため、前記バルブの作動タイミングを制御するよう前記コントローラを構成するステップと、
を含み、
前記バルブが吸引バルブであり、
前記コントローラは、前記バルブが開放されている間、吸引圧力に最大脈動圧力を付加するよう前記バルブの作動タイミングを制御し、
前記ガス循環装置が、配管と、該配管よりも大きな断面積を有するインライン共振器とを含み、
前記ガス循環装置が更に、前記インライン共振器の側方に配列された側枝共振器を含み、
該側枝共振器が、共振器バルブを介して前記インライン共振器に接続され、
該共振器バルブが、開放状態と閉鎖状態との間で切り替えられ、これによりガスの組成に応じて前記側枝共振器と前記インライン共振器との接続又は接続解除を行う、
方法。
【請求項9】
往復圧縮機の出力又は入力が体積ボトルに接続された往復圧縮機設備を改造する方法であって、前記設備が、前記往復圧縮機の圧力脈動を用いて前記往復圧縮機の体積効率を向上させるよう改造されており、当該方法が、
前記往復圧縮機の出力又は入力を前記体積ボトルに接続するガス循環装置の配管に少なくとも1つの音響共振器を付加することにより前記ガス循環装置を修正し、前記ガス循環装置が、前記往復圧縮機の運転周波数と実質的に等しい共振周波数を有するようにするステップと、
往復圧縮機とガス循環装置との間のバルブをコントローラに接続し、前記ガス循環装置において生じる圧力脈動を積極的に使用して前記往復圧縮機の体積効率を向上させるため、前記バルブの作動タイミングを制御するよう前記コントローラを構成するステップと、
を含み、
前記バルブが吸引バルブであり、
前記コントローラは、前記バルブが開放されている間、吸引圧力に最大脈動圧力を付加するよう前記バルブの作動タイミングを制御し、
前記ガス循環装置が、
前記往復圧縮機と前記体積ボトルとの間に配列された配管と、
前記配管の側方に配列された側枝配管と、
を含み、
前記側枝配管が、共振器バルブを介して前記配管に接続され、
前記共振器バルブが、開放状態と閉鎖状態との間で切り替えられ、これによりガスの組成に応じて前記側枝配管と前記配管との接続又は接続解除を行う、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示される主題の実施形態は、全体的に、石油及びガス産業において往復圧縮機を使用した設備に関し、より詳細には、圧力脈動を積極的に使用して圧縮機の体積効率を高め、すなわち、パルス充電効果を達成することに関する。
【背景技術】
【0002】
石油及びガス産業で使用される圧縮機は、例えば、多くの場合加圧ガスが腐食性で且つ可燃性であることを考慮した工業上の固有要件に適合しなければならない。American Petroleum Institute(API;米国石油協会)(すなわち、石油及びガス産業で使用される設備の承認工業基準を設定する組織)は、往復圧縮機の最低限の要件の一式をリストアップしたAPI618文書を発行している。
【0003】
圧縮機は、容積式圧縮機(例えば、往復動、スクリュー、又はベーン圧縮機)と、動圧縮機(例えば、遠心又は軸流圧縮機)とに分類することができる。容積式圧縮機では、圧縮は、ガスを捕捉して捕捉ガスの体積を縮小することにより達成される。動圧縮機では、圧縮は、圧縮機内部の所定位置で運動エネルギー(例えば、回転要素の)を圧力エネルギーに変換することにより達成される。理想圧縮サイクル(圧力対体積の変化を追跡することにより、図1にグラフで示される)は、少なくとも4つの相、膨張、吸引、圧縮、及び吐出を含む。圧縮サイクルの終わりで加圧流体が圧縮チャンバから真空排気されると、送出圧力P1の少量の流体が隙間容積V1(すなわち、圧縮チャンバの最小容積)で捕捉されたままとなる。圧縮サイクルの膨張相1及び吸引相2の間、ピストンは、圧縮チャンバの体積を増大するよう移動する。膨張相の初めに、送給バルブが閉鎖(吸引バルブは閉じたまま)し、流体が利用できる圧縮チャンバの体積が増大するので、捕捉流体の圧力は低下する。圧縮サイクルの吸引相は、圧縮チャンバ内部の圧力が吸引圧力P2と等しくなったときに始まり、吸引バルブを起動して体積V2で開放する。吸引相2の間、圧縮チャンバ体積及び(圧力P2で)加圧される流体の量は、加圧チャンバの最大体積V3に達するまで増大する。
【0004】
圧縮サイクルの圧縮及び吐出相の間、ピストンは、膨張及び吸引相の間の運動方向とは逆の方向に移動し、圧縮チャンバの体積を減少させる。圧縮相3の間、吸引及び送給バルブの両方が閉鎖され(すなわち、流体がシリンダを出入りしない)、圧縮チャンバの体積がV4まで減少するので、圧縮チャンバ内の流体の圧力は増大する(吸引圧力P2から送給圧力P1まで)。圧縮サイクルの送給相4は、圧縮チャンバ内部の圧力が送給圧力P1と等しくなったときに始まり、送給バルブを起動して開放させる。送給相4の間、送給圧力P2の流体は、圧縮チャンバの最小(クリアランス)体積V1に達するまで圧縮チャンバから排気される。
【0005】
圧縮機の効率の尺度の1つは体積効率であり、これは、吸引相V3−V2の間に往復圧縮機のピストンにより掃引される圧縮チャンバの体積と、圧縮サイクル中にピストンにより掃引される総体積V3−V1との比である。
【0006】
往復圧縮機の外部で生じる圧力脈動の現象は、往復圧縮機内部のガス流の不連続な性質に起因する。これらの圧力脈動は、大きな振動及び疲労応力、高ノイズレベル、及び圧縮機性能の低下を招く可能性がある。API618は、他の目的で圧力脈動の損傷作用を回避するため、往復圧縮機を含む設備を設計する際に実施しなければならない音響研究の詳細な要件を含んでいる。これらの脈動が設備全体に伝搬するのを防ぐために、吸引バルブの前で圧縮機の吐出バルブの後に体積ボトルが設置され、他の設備から往復圧縮機を保護する。
【0007】
例えば、図2は、往復圧縮機10と他の設備との間のインタフェースの簡易モデルを例示している。ここで用語「インタフェース」は、往復圧縮機10のバルブ20と、他の設備(例えば、石油及びガスプラント)との間でガスが送られるプラント配管30との間にある全ての構成要素を指す。往復圧縮機10は、ピストン40を有し、配管50を介して体積ボトル60に接続される。体積ボトル60は、プラント配管30を介して石油及びガスプラントに接続される。
【0008】
体積ボトル60は、吸引バルブの前に配置されるか、又は吐出バルブの後に配置されるかに応じて、加圧されるガス又は加圧されたガスが充填され、或いは、往復圧縮機10は、高い音響インピーダンスを有し、脈動の反射体として動作し、僅かな割合のみをプラント配管30に向けて輸送できる。
【0009】
往復圧縮機10によって生成される圧力脈動の周波数は、往復圧縮機における圧縮プロセスの周波数である。配管30の固有周波数fが往復圧縮機によって生成される圧力脈動の周波数に等しいときに共振が起こる。配管50の固有周波数fは、ガスの音速cと配管50の長さLによって決まる。第一近似では、これらの物理量の間に次の関係が成り立つ。f=c/(2L)
定常圧力波が配管50に沿って形成された場合、オリフィス(すなわち、配管の局所的狭窄)を利用して、定常圧力波の大きさを低減することができる。
【0010】
従って、従来では、圧力脈動(往復圧縮機におけるガス流の不連続的性質に起因して本来的に起こる)が消失し使用されていない。往復圧縮機の効率を向上させるために圧力脈動を積極的に使用する方法及び装置(往復圧縮機を含む石油及びガス設備において含まれ又は実施される)を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0011】
実施形態の一部は、作動バルブと、往復圧縮機において圧縮サイクルを実施する周波数に実質的に等しい共振周波数を有するように構成されたガス循環装置とを有する。バルブは、本来的な圧力脈動を積極的に用いて圧縮機の体積効率を向上させるように作動される。効率を向上させるために圧力パルスを用いるこの手法は、パルス充電効果として公知である。
【0012】
例示的な実施形態では、装置は、ガス循環装置とコントローラとを含む。ガス循環装置は、往復圧縮機と、往復圧縮機から石油及びガスプラントへつながるガス流を保護する体積ボトルとの間でガス(加圧されるか、又は加圧された後のガス)が循環する経路を提供する。ガス循環装置は、往復圧縮機において圧縮サイクルを実施する周波数に実質的に等しい共振周波数を有するように構成される。コントローラは、ガス循環装置において生じる圧力脈動を積極的に用いて往復圧縮機の体積効率を向上させるために、往復圧縮機とガス循環装置との間に配置されたバルブを切り替えるタイミングを制御するように構成される。
【0013】
別の例示的な実施形態では、パルス充電効果を用いて往復圧縮機の体積効率を向上させる方法が提供される。本方法は、往復圧縮機のバルブと、往復圧縮機を設備から保護する体積ボトルとの間に、往復圧縮機において圧縮サイクルを実施する周波数に実質的に等しい共振周波数を有するように構成されたガス循環装置を提供するステップを含む。本方法は更に、ガス循環装置において本来的に生じる圧力パルスを積極的に用いて往復圧縮機の体積効率を向上させるようバルブの作動タイミングを制御するステップを含む。
【0014】
別の例示的な実施形態では、往復圧縮機設備を改造する方法が提供される。往復圧縮機設備は、体積ボトルにより他の設備から保護される往復圧縮機の出力又は入力を有する。往復圧縮機設備は、往復圧縮機のパルス充電効果を用いて往復圧縮機の体積効率を向上させるよう改造される。本方法は、往復圧縮機の出力又は入力を体積ボトルに接続するガス循環装置の配管に少なくとも1つの音響共振器を付加することによりガス循環装置を修正し、該ガス循環装置が、往復圧縮機において圧縮サイクルを実施する周波数に実質的に等しい共振周波数を有するようにするステップを含む。本方法は更に、往復圧縮機とガス循環装置との間のバルブをコントローラに接続し、ガス循環装置において生じる圧力脈動を積極的に使用して往復圧縮機の体積効率を向上させるため、バルブの作動タイミングを制御するようコントローラを構成するステップを含む。
【0015】
本明細書に組み込まれ且つその一部を構成する添付図面は、1以上の実施形態を例証しており、本明細書と共にこれらの実施形態を説明している。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】理想圧縮サイクルを示す圧力対体積のグラフ。
図2】往復圧縮機と石油及びガスプラントとの間の従来のインタフェースの概略図。
図3】例示的な一実施形態による、往復圧縮機と石油及びガスプラントとの間のインタフェースの概略図。
図4】例示的な一実施形態による、往復圧縮機と石油及びガスプラントとの間のインタフェースの概略図。
図5】例示的な一実施形態による、往復圧縮機と石油及びガスプラントとの間のインタフェースの概略図。
図6】例示的な一実施形態による、往復圧縮機と石油及びガスプラントとの間のインタフェースの概略図。
図7】例示的な一実施形態による、往復圧縮機と石油及びガスプラントとの間のインタフェースの概略図。
図8】例示的な一実施形態による、往復圧縮機と石油及びガスプラントとの間のインタフェースの概略図。
図9】例示的な一実施形態による、圧縮機の効率を向上させるため、往復圧縮機の作動中に本来的に生じる脈動を用いる方法のフローチャート。
図10】例示的な一実施形態による、往復圧縮機設備を改造する方法のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
例示的な実施形態の以下の説明は、添付図面を参照する。異なる図面における同じ参照符号は同じ又は同様の要素とみなす。以下の詳細な説明は、本発明を限定するものではない。むしろ、本発明の範囲は、添付の請求項によって定義される。以下の実施形態は、簡略化のために石油及びガスプラント(すなわち、設備又は機器)の用語を用いて且つその構造に関して説明している。しかしながら、以下で考察される実施形態は、本システムに限定されず、他の同様の技術的条件にも適用することができる。
【0018】
本明細書を通して「一実施形態」又は「実施形態」として言及することは、実施形態に関連して説明される具体的な特徴、構造、又は特性が本開示の主題の少なくとも一実施形態に含まれることを意味する。従って、本明細書全体を通じて様々な箇所で表現「一実施形態では」又は「ある実施形態では」が出現するが、必ずしも同じ実施形態について言及している訳ではない。更に、具体的な特徴、構造、又は特性は、1以上の実施形態においてあらゆる好適な様態で組み合わせてもよい。
【0019】
以下に記載の一部の実施形態では、ガス循環装置は、往復圧縮機(すなわち、圧縮チャンバ)と体積ボトルとの間をガス(加圧されるか、又は加圧された後のガス)が循環する経路を提供する。ガス循環装置は、往復圧縮機において圧縮サイクルを実施する周波数に実質的に等しい共振周波数を有するように構成される。更に、圧縮チャンバとガス循環装置との間に位置するバルブは、圧縮機の効率を向上させるようにガス循環装置のバルブ付近で圧力脈動の相に対して開放するよう制御される。
【0020】
バルブが吸引バルブであるとみなされる場合、バルブが開放されている間の吸引バルブ付近のガス循環装置の圧力増大により、加圧される体積の圧縮チャンバに大量のガスが流入する結果となる。高圧P2+Δp(ここでΔpはパルス充電効果に起因するもの)で生じる吸引は、図1の破線で示される。膨張相1を表す線と破線との交点に相当する体積V2'は、V2よりも小さいので、体積効率を定める比の分子が増大することから体積効率は増大し、V3−V2'>V3−V2である。
【0021】
実際に、Δpは、正の最大値と負の最小値との間で時間が変化するときに圧力の一定のオフセット量ではない。コントローラは、バルブの開放時に最大圧力Δp(加算又は減算)を有するようなバルブ20の開放モーメントを求め、或いは、吸引相中(又はその終わりに)の吸引圧力よりも高い全体圧力を達成することができる。
【0022】
図3は、例示的な実施形態による、往復圧縮機10と体積ボトル60との間で石油及びガスプラントにガス体積バッファを提供するインタフェース100(すなわち、装置)の概略図である。体積ボトル60の大きな体積のガスは、往復圧縮機10のフラックス変動に起因して(すなわち、パルス充電効果に起因して)往復圧縮機10の外部のガス中に生じる圧力パルスを阻止又は実質的に減衰させる。インタフェース100は、ガス循環装置及びコントローラ110を含む。ガス循環装置は、ガス(加圧されるガス、又は加圧された後のガス)が往復圧縮機10と体積ボトル50との間を循環する経路を提供する。ガス循環装置は、往復圧縮機における圧縮サイクルを実施する周波数に実質的に等しい共振周波数を有するように構成される。ガス循環装置は、配管130と、配管区域よりも大きな区域を有するインライン共振器140を含む。配管130に沿ったインライン共振器140の正確な位置は、ガス循環装置の音響特性に影響を及ぼすことはない。
【0023】
コントローラ110は、バルブ120を作動させるアクチュエータ(図示せず)を制御する。すなわち、コントローラ110は、圧力パルスを使用して圧縮機の体積効率を向上させるように、バルブ付近の圧力パルスの相(パルス充電効果に起因する)に対するバルブ120の作動タイミングを制御する。バルブ120が吸引バルブである場合、コントローラ110は、バルブ120が開いている間(すなわち、圧縮サイクルの吸引相の間)、吸引圧力に付加される最大圧力値Δpを有するようにバルブ120を作動させるタイミングを制御する。
【0024】
図4に示す別の例示的な実施形態では、インタフェース101のガス循環装置は、インライン共振器140に加えて、側枝共振器150を含む。任意選択的に、側枝共振器150は、共振器バルブ160を介してインライン共振器140に接続することができる。共振器バルブ160は、ガスの組成(この組成が、ガス中の音速、従って、ガス循環装置の共振周波数に影響を与える)に応じて、側枝共振器150と配管130とを接続又は接続解除するよう切り替えることができる。コントローラ110は、共振器バルブ160を制御することができる。
【0025】
図5に示す別の例示的な実施形態において、インタフェース102のガス循環装置は、インライン共振器140の代わりに側枝配管170を含む。任意選択的に、側枝配管170は、共振器バルブ180を介して配管130に接続することができる。共振器バルブ180は、例えば、ガスの組成(この組成が、ガス中の音速、従って、ガス循環装置の共振周波数に影響を与える)に応じて、側枝配管170と配管130とを接続又は接続解除するよう切り替えることができる。コントローラ110は、共振器バルブ180を制御することができる。
【0026】
或いは、図6に示す別の例示的な実施形態において、インタフェース103のガス循環装置は、配管130に取り付けられた側枝共振器200を含む。任意選択的に、側枝共振器200は、共振器バルブ210を介して配管130に接続することができる。共振器バルブ210は、例えば、ガスの組成(この組成が、ガス中の音速、従って、ガス循環装置の共振周波数に影響を与える)に応じて、側枝共振器200と配管130とを接続又は接続解除するよう切り替えることができる。コントローラ110は、共振器バルブ210を制御することができる。
【0027】
図7に示す別の例示的な実施形態において、インタフェース104のガス循環装置は、側枝共振器200に接続された追加の側枝共振器220を含む。任意選択的に、側枝共振器200及び/又は追加の側枝共振器220は、共振器バルブ210及び230それぞれを介して配管130及び側枝共振器200にそれぞれ接続することができる。共振器バルブ210及び230は、ガスの組成(この組成が、ガス中の音速、従って、ガス循環装置の共振周波数に影響を与える)に応じて、側枝共振器200及び追加の側枝共振器220をそれぞれ接続又は接続解除するよう切り替えることができる。コントローラ110は、共振器バルブ210及び/又は230を制御することができる。
【0028】
図8に示す別の実施形態において、インタフェース105のガス循環装置は、二次配管240を介して体積ボトルに接続された側枝共振器200を有する。二次配管240上に配置された共振器バルブ250は、ガス組成に応じて切り替えられる。
【0029】
図3〜8に示す種々の実施形態及び他の均等な実施形態において、本来的に外部で生成されるが往復圧縮機の作動に起因した脈動を用いて圧縮機の体積効率を向上させる方法300が実行される。図9に示すように、方法300は、S310において、往復圧縮機のバルブと、石油及びガスプラントから往復圧縮機を保護する体積ボトルとの間にガス循環装置を提供するステップを含み、該ガス循環装置は、往復圧縮機において圧縮サイクルを実施する周波数に実質的に等しい共振周波数を有するように構成される。本方法300は更に、S320において、往復圧縮機の体積効率を向上させるため、パルス充電効果に起因してガス循環装置において本来的に生じる圧力パルスを用いてバルブの作動タイミング制御するステップを含む。
【0030】
例示的な実施形態において、方法300の提供ステップS310は、バルブを体積ボトルに接続する配管に側枝共振器又は側枝配管を付加するステップを含むことができる。別の実施形態において、方法300の提供ステップS310は、音響共振器を接続する1以上の共振器バルブを、体積ボトルにバルブを接続する配管に切り替えるステップを含むことができる。
【0031】
既存の往復圧縮機設備は、往復圧縮機の作動中に本来的に発生する脈動を用いて圧縮機の効率を向上させることができるように改造することができる。図10は、例示的な実施形態による、往復圧縮機設備を改造するための方法400のフローチャートである。方法400は、S410において、少なくとも1つの音響共振器をガス循環装置の配管に付加することにより、往復圧縮機の出力又は入力を体積ボトルに接続するガス循環装置を修正し、該ガス循環装置が、往復圧縮機における圧縮サイクルを実施する周波数に実質的に等しい共振周波数を有するようにするステップを含む。本方法400は更に、S420において、往復圧縮機とガス循環装置との間のバルブをコントローラに接続し、該コントローラは、往復圧縮機のパルス充電効果に起因してガス循環装置において生じる圧力脈動を使用して往復圧縮機の体積効率を向上させるためバルブの作動タイミングを制御するように構成するステップを含む。
【0032】
方法400の一実施形態において、少なくとも1つの音響共振器は、インライン音響共振器、側枝音響共振器又は側枝配管を含むことができる。別の実施形態において、本方法400は更に、少なくとも1つの音響共振器を共振バルブを介して装置に接続するステップを含むことができる。
【0033】
開示された例示的な実施形態は、流れ振動に起因して往復圧縮機の周りで生じる圧力パルス(すなわち、パルス充電効果)を積極的に用いて圧縮機の体積効率を向上させる装置(デバイス)及び方法を提供する。本明細書は本発明を限定することを意図していない点は理解されたい。逆に、例示的な実施形態は、添付の請求項によって定義される本発明の技術的思想及び範囲に含まれる、代替形態、修正形態、及び均等形態を保護する。例示的な実施形態の詳細な説明において、請求項に記載された本発明を完全に理解するために、数多くの特定の詳細事項が記載されている。しかしながら、しかしながら、種々の実施形態はこのような具体的な詳細事項がなくとも実施できる点は当業者であれば理解されるであろう。本発明の例示的な実施形態の特徴及び要素は、特定の組み合わせで実施形態において説明したが、各特徴又は要素は、実施形態の他の特徴及び要素を伴わず単独で、或いは本明細書で開示される他の特徴及び要素の有無に関わりなく種々の組み合わせで用いることができる。
【0034】
本明細書は、開示される主題の実施例を用いて、あらゆる当業者があらゆるデバイス又はシステムを実施及び利用すること及びあらゆる包含の方法を実施することを含む本発明を実施することを可能にする。本発明の特許保護される範囲は、請求項によって定義され、当業者であれば想起される他の実施例を含むことができる。他のこのような実施例は、請求項の範囲内にある。
【符号の説明】
【0035】
10 往復圧縮機
60 体積ボトル
110 コントローラ
100 インタフェース
120 バルブ
130 配管
140 インライン共振器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10