(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記回路基板の上面には、外部から入力された直流電力を昇圧するコンバータ回路と、前記コンバータ回路によって昇圧された直流電力を交流電力に変換するインバータ回路と、が組み込まれ、
前記半導体素子は、前記コンバータ回路または前記インバータ回路を構成する、請求項1に記載の回路装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1から
図3を参照して、回路装置の一例として混成集積回路装置10の構造を説明する。
【0015】
図1を参照して、混成集積回路装置10は、複数の回路素子から成る混成集積回路が回路基板12の上面に組み込まれた回路装置である。具体的には、混成集積回路装置10は、金属から成る回路基板12の上面にセラミック基板22が載置され、このセラミック基板22(固着基板)の上面にトランジスタ34およびダイオード36(半導体素子)が実装されている。更に、回路基板12の上面には額縁状のケース材14が載置され、ケース材14により囲まれる空間に封止樹脂16が充填されている。また、回路基板12の上方には信号リード44が設けられた基板42が配置されている。更にまた、ケース材14には出力リード28等が一体的に埋めこまれており、トランジスタ34等の半導体素子は金属細線26を経由して出力リード28に電気的に接続される。
【0016】
回路基板12は、アルミニウム(Al)や銅(Cu)等を主材料とする回路基板である。回路基板12としてアルミニウムより成る基板を採用した場合は、回路基板12の厚みは、放熱性を高めるために例えば0.5mm以上2.0mm以下程度である。回路基板12の両主面には陽極酸化膜が形成されており、回路基板12の上面は絶縁層50により被覆されている。
【0017】
セラミック基板22は、Al
20
3(アルミナ)やAlN(窒化アルミニウム)等の無機固体材料から成り、厚みは例えば0.25mm以上1.0mm以下である。セラミック基板22は、上面に実装されるトランジスタ34と回路基板12とを絶縁させる為のものである。セラミック基板22が回路基板12に固着される構造は
図1(B)を参照して後述する。また、トランジスタ34やダイオード36が動作時に発生する熱は、セラミック基板22および回路基板12を経由して外部に放出される。
【0018】
ケース材14は、エポキシ樹脂等の樹脂材料を額縁形状に射出成形したものである。また、回路基板12の周辺部上面にケース材14が固着されることにより、トランジスタ34等の回路素子を樹脂封止する空間が回路基板12の上面に設けられる。
【0019】
更に、ケース材14には、トランジスタ34によりスイッチングされた大電流の出力信号が通過する出力リード28が一体的に組み込まれている。このような構造は、ケース材14の樹脂材料を出力リード28と共に射出成形することにより実現される。更に、ケース材14の内部には、L字状の配線リード40が配置され、この配線リード40は金属細線26を経由してトランジスタ34の制御電極と接続されている。ここで、ケース材14に組み込まれた複数個の出力リード28は、同一平面上に配置されている。
【0020】
配線リード40の上端部付近は基板42の貫通孔に差し込まれて固定されている。即ち、回路基板12の上面に配置されたトランジスタ34等の回路素子は、配線リード40を経由して基板42と電気的に接続されている。基板42には、複数個の信号リード44が配置されており、この信号リード44は外部接続端子として機能する。基板42は、例えば厚みが1mm程度のガラスエポキシ基板の主面に導電パターンが形成されたものである。
【0021】
封止樹脂16は、アルミナ等のフィラーが充填されたエポキシ等の樹脂材料から成り、ケース材14により囲まれる回路基板12の上面の空間に充填される。そして、封止樹脂16は、セラミック基板22、トランジスタ34、ダイオード36、金属細線26、基板42等を樹脂封止している。
【0022】
図1(B)を参照して、セラミック基板22が回路基板12に固着される構造を説明する。先ず、回路基板12がアルミニウムから成る回路基板の場合は、回路基板12の上面および下面は、陽極酸化により形成されたアルマイトから成る酸化膜46、48により被覆される。更に、回路基板12の上面は、上記したように、薄い絶縁層50により被覆されている。ここで、絶縁層50は省かれて、回路基板12の上面を被覆する酸化膜46の上面に直にアイランド18が形成されても良い。このことにより更に放熱性が向上する。
【0023】
そして、回路基板12を被覆する絶縁層50の上面には、厚みが50μm程度の銅等の金属膜を所定形状にエッチングしたアイランド18が形成されている。このアイランド18は電気信号が通過する配線としては用いられない。本形態では、アイランド18は、セラミック基板22の固着に用いられる固着材38の濡れ性を向上させるために用いられる。
【0024】
セラミック基板22の下面は、厚みが250μm程度の金属膜20により被覆されている。ここで、金属膜20は、セラミック基板22の下面全域にベタの状態で形成されている。このようにすることで、固着材38として半田を用いた場合、セラミック基板22の下面全域に半田が良好に溶着する。また、回路基板12の上面に設けられたアイランド18にも良好に半田が溶着する。従って、固着材38を介してセラミック基板22が強固に回路基板12に固着される。また、固着材38として、熱伝導性に優れる金属である半田を採用することで、トランジスタ34の動作時に発生する熱が良好に回路基板12に伝導する。
【0025】
セラミック基板22の上面には、厚みが250μm程度の金属膜を所定形状にエッチングした導電パターン24が形成されている。そして、この導電パターン24にトランジスタ34やダイオード36が半田等の導電性固着材を介して実装されている。導電パターン24は、トランジスタ34等の回路素子が実装されるアイランド、素子同士を接続するための配線部、金属細線をボンディングするためのパッド等を構成する。
【0026】
トランジスタ34としては、MOSFET、IGBT、バイポーラ・トランジスタが採用される。ここで、トランジスタ34としては、例えば電流値が1アンペア以上の大電流のスイッチングを行うパワートランジスタが採用される。トランジスタ34の下面に設けられた電極は、半田等の導電性固着材を介して導電パターン24と接続される。
【0027】
ダイオード36は、上面に設けられた電極が金属細線26を介してトランジスタ34と接続され、下面の電極は半田等の導電性固着剤を介して導電パターン24に接続されている。ここで、トランジスタ34がIGBTの場合は、トランジスタ34の上面に設けられたエミッタ電極が、金属細線26を経由して、ダイオードの上面に設けられたアノード電極と接続される。そして、トランジスタ34の下面に設けられたコレクタ電極が、導電パターン24を経由して、ダイオードの下面に設けられたカソード電極と接続される。この接続構造の詳細は、
図4に示す回路図を参照して後述する。
【0028】
ここで、上記したトランジスタ等の電気的接続に用いられる金属細線26は、例えば直径が200μm程度のアルミニウムから成るものである。また、金属細線26の替りに、アルミニウム等の金属箔をリボン状に形成したリボンボンディングが採用されても良い。
【0029】
本形態では、背景技術と同様に、回路基板12の上面には樹脂から成る絶縁層50が設けられる。絶縁層50の厚みは例えば60μm(50μm以上70μm以下)である。絶縁層50の材料は背景技術と同様であり、エポキシ樹脂等の樹脂材料にアルミナ等のフィラーが高充填されたものである。
【0030】
絶縁層50で回路基板12の上面を被覆する目的はアイランド18の形成を容易にするためである。即ち、回路基板12の上面を被覆する酸化膜46の上面に直に銅から成るアイランド18を形成することも可能ではあるが、このようにすると回路基板12とアイランド18との密着強度が弱くなる。このため、本形態では、回路基板12とアイランド18との間に有機性材料からなる絶縁層50を介在させることにより、アイランド18と回路基板12との密着強度を向上させている。
【0031】
ここで、薄く形成される絶縁層50の耐圧は背景技術のものと比較して低くなる。しかしながら、絶縁層50の上面に形成されるアイランド18はトランジスタ34とは接続されないので、本形態では絶縁層50には高耐圧は必要とされない。
【0032】
更に、本形態の薄い絶縁層50の熱伝導率は4W/mK以上であり、背景技術の200μm程度に厚い絶縁層102の熱伝導率と比較すると4倍以上である。従って、トランジスタ34から発生した熱を、絶縁層50を経由して良好に外部に放出させることが可能となる。
【0033】
図2を参照して、混成集積回路装置10の全体的な構成を説明する。
図2(A)は混成集積回路装置10を示す平面図であり、
図2(B)はこの断面図である。
【0034】
図2(A)を参照して、回路基板12の上面には、複数個のセラミック基板が配置されている。具体的には、7個のセラミック基板22A−22Gが回路基板12の上面に固着されており、各々のセラミック基板22A−22Gの上面に所定の回路素子が実装されている。
【0035】
セラミック基板22A−22Dの上面には、IGBT等のトランジスタおよびダイオードが実装されている。そして、セラミック基板22Fにはトランジスタが実装され、セラミック基板22Eにはダイオードが実装され、セラミック基板22Gには抵抗が実装されている。この抵抗は、出力リード33を流れる電流値を検出するためのものである。
【0036】
ここで、ケース材14に一体的に組み込まれる出力リードを説明する。
図2(A)を参照して、ここでは、6個の出力リードが組み込まれている。出力リード28は、ケース材14の内部でトランジスタを相互に接続するためのリードである。出力リード30、33は、外部から直流電力が供給されるためのリードである。出力リード29、31、32は、内蔵されたインバータにより変換された交流電力を出力するためのリードである。更に、各出力リードの外部に露出する部分には、接続のためにネジ止めされるための孔部が設けられている。
【0037】
また、
図2(B)を参照して、ケース材14の左右両端付近に設けられた段差部分には配線リード40が固着されている。
【0038】
このように、本形態のケース材14の役割は、回路基板12の上方に封止樹脂16を充填するための内部空間を確保するだけではない。本形態のケース材14は、高電圧の電流が通過する出力リードを所定箇所に固定する役割を有している。更には、出力リードと回路基板12とを絶縁させる役割も有している。
【0039】
図2(B)に示すように、セラミック基板22B、22Fの上面に実装されたトランジスタ等の回路素子は金属細線を経由いて、出力リード30、28に接続されている。更に、トランジスタ34の上面に設けられた電極は、金属細線26を経由して配線リード40と接続される。
【0040】
また、本形態の混成集積回路装置10では、回路基板12の上面には導電パターンは形成されていない。従って、ケース材14に埋め込まれた出力リード28、30、配線リード40および金属細線26により、各素子が電気的に接続されている。このようにすることで、背景技術にて基板の上面を被覆する樹脂製の高耐圧絶縁層を排除して絶縁性が高められている。
【0041】
また、出力リード28、30は、ケース材14により回路基板12と絶縁されているが、出力リード28、30の下面を被覆するケース材14は厚みが1.0mm以上に厚いので、十分な耐圧性が得られる。
【0042】
図3を参照して、各セラミック基板の上面に載置される回路素子が接続される構造を説明する。
図3(A)および
図3(B)は回路基板12の一部分を拡大して示す平面図である。尚、この図では、セラミック基板の上面に形成される導電パターンをハッチングの領域にて示している。
【0043】
図3(A)を参照して、回路基板12の上面にはセラミック基板22F、22Eが所定距離で離間して隣接されている。ここで、セラミック基板22F、22Eに実装された素子は、
図4(A)に示すコンバータ回路を構成する。
【0044】
セラミック基板22Fの上面に配置された導電パターンには、半田等の導電性接合材を介して2つのトランジスタQ1が固着されている。ここでは、トランジスタQ1としてはIGBTやMOSFETが採用される。そして、トランジスタの下面のコレクタ電極はセラミック基板22Fの上面に形成された導電パターンを経由して接続される。また、2つのトランジスタQ1の上面に形成されたエミッタ電極は、複数の金属細線26を経由して、出力リード28に接続される。更に、トランジスタQ1の上面に設けられたゲート電極は、金属細線26を経由してケース材14に埋め込まれた配線リード40に接続される。
【0045】
セラミック基板22Eの上面に形成された導電パターンには、半田等の導電性接合材を介して複数個のダイオードD1が実装されている。ダイオードD1の上面に形成されたアノード電極は、金属細線26およびセラミック基板22Fの導電パターンを経由して、トランジスタQ1のコレクタ電極と接続される。そして、ダイオードD1の下面に形成されたカソード電極は、セラミック基板22Eの導電パターンおよび金属細線26を経由して、出力リード30に接続される。
【0046】
図3(B)を参照して、セラミック基板22A、22Bの各々の上面には、インバータを構成するトランジスタおよびダイオードが実装されている。
【0047】
具体的には、セラミック基板22Aの上面には、同一の導電パターンに2つのトランジスタQ2と、4つのダイオードD2が、半田を介して接続されている。このことにより、トランジスタQ2の下面に設けられたコレクタ電極と、ダイオードD3の下面に設けられたカソード電極が電気的に接続される。また、トランジスタQ2の上面に配置されたゲート電極は、セラミック基板22Aの導電パターンおよび金属細線26を経由して、ケース材14の配線リード40と接続される。一方、トランジスタQ2の上面に配置されたエミッタ電極は、金属細線26を経由してダイオードD3の上面に設けられたアノード電極に接続され、更に、セラミック基板22Bの導電パターンに接続される。このことにより、セラミック基板22Aに実装されたトランジスタQ2およびダイオードD3の上面に設けられた電極は、隣接するセラミック基板22Bに実装されたトランジスタQ3およびダイオードD3の下面に設けられた電極と接続される。
【0048】
ここで、セラミック基板22Aの上面には、素子実装用パターンと、金属細線を互いに接続するための複数個の接続用パターンが設けられている。そして、インバータ回路を構成する素子が実装されるセラミック基板22A−22Dには、同様の導電パターンが形成されている。また、セラミック基板22Eは、インバータの素子が実装される基板ではないが、セラミック基板22A−22Dと同じパターン形状を備えたものが採用される。このように、セラミック基板に設けられるパターン形状を共通化することにより、セラミック基板のパターン形状の種類が少なくなり、製造コストを低減させることが可能となる。
【0049】
セラミック基板22Bに設けられる導電パターンの構成および実装される素子は、セラミック基板22Aと同様である。即ち、1つの導電パターンの上面に、2つのトランジスタQ3および4つのダイオードD3の裏面電極が半田を介して接続され。トランジスタQ3のエミッタ電極およびダイオードD3のアノード電極は、金属細線26を経由して出力リード28と接続される。更に、トランジスタQ3の制御電極であるゲート電極は、セラミック基板22B上の導電パターンおよび金属細線を経由して、配線リード40と接続される。また、トランジスタQ3等が実装される導電パターンは、複数の金属細線26を経由して、出力リード29と接続されている。
【0050】
また、
図2(A)に示すセラミック基板22C、22Dのパターン形状、実装される素子および接続構造は、上記したセラミック基板22A、22Bと同様である。即ち、セラミック基板22C、22Dの各々の上面に、2つのトランジスタと4つのダイオードが接続される。そして、セラミック基板22Cの上面に載置された素子と、セラミック基板22Dに載置された素子とは、金属細線を経由して接続される。更に、各セラミック基板22C、22Dの上面に実装された素子は、金属細線を経由して出力リードおよび配線リードと電気的に接続される。
【0051】
図4を参照して、次に、上記した混成集積回路装置10が組み込まれる太陽電池発電システムの回路構成を説明する。
図4(A)は太陽電池発電システムを全体的に示す回路図であり、
図4(B)はこのシステムに含まれるトランジスタQ3を詳細に示す回路図である。
【0052】
この図に示す発電システムは、太陽電池70と、太陽電池開閉部72と、昇圧チョッパ74と、インバータ76とリレー78、80とを備えている。この様な構成の発電装置により発電された電力は、電力系統82や自立運転用負荷84に供給される。また、本形態の混成集積回路装置10には、昇圧チョッパ74の一部であるコンバータ86およびインバータ76が組み込まれる。
【0053】
太陽電池70は、照射された光を電力に変換して出力する変換器であり、直流の電力を出力している。ここでは、1つの太陽電池70が図示されているが、複数個の太陽電池70が直列で採用されても良い。
【0054】
太陽電池開閉部72は、太陽電池70で発電された電気を集めて逆流を防止すると共に、昇圧チョッパ74に直流電流を供給する機能を備えている。
【0055】
昇圧チョッパ74は、太陽電池70から供給された直流電力の電圧を昇圧させる機能を備えている。昇圧チョッパ74では、MOSFETであるトランジスタQ1がオン動作およびオフ動作を周期的に繰り返すことにより、太陽電池70により発電された250V程度の電圧の直流電力を、370V程度の直流電力に昇圧している。具体的には、昇圧チョッパ74は、太陽電池の出力端子に対して直列に接続されたコイルL1と、コイルL1と接地端子との間に接続されたトランジスタQ1とを備えている。そして、コイルL1により昇圧された直流電力は、逆流素子の為のダイオードD1および平滑用コンデンサC1を介して、次段のインバータ76に供給される。
【0056】
本形態では、昇圧チョッパ74に含まれるトランジスタQ1およびダイオードD1が、
図2(A)に示すセラミック基板22F、22Eの上面に載置される。また、トランジスタQ1のスイッチングは、
図1(A)に示す、信号リード44および配線リード40を経由して外部から供給される制御信号に基づいて行われる。
【0057】
昇圧チョッパ74により昇圧された直流電力は、インバータ76により所定の周波数の交流電力に変換される。インバータ76は、昇圧チョッパ74の出力端子間に直列に接続された2つのトランジスタQ2およびQ4と、同様に直列に接続された2つのトランジスタQ3およびQ5とを備えている。また、これらのトランジスタのスイッチングは、外部から供給される制御信号により制御されており、Q2とQ3およびQ4とQ5は相補にスイッチングしている。そして、これらのスイッチングにより所定の周波数とされた交流電力は、Q2とQ3との接続点およびQ4とQ5との接続点から、外部に出力される。ここでは、4つのトランジスタから成る2相のインバータ回路が構築されている。
【0058】
本形態では、インバータ76を構成するトランジスタQ2−Q5は、
図2(A)に示すセラミック基板22A、22B、22Cおよび22Dに固着される。
【0059】
インバータ76により変換された交流電力は、商用の電力系統82または自立運転用負荷84に供給される。電力系統82とインバータ76との間にはリレー78が介装されており、通常時にはリレー78は導通状態と成っており、どちらか一方に異常が検出されたらリレー78は遮断状態とされる。また、インバータ76と自立運転用負荷との間にもリレー80が介装されており、異常状態の際にはリレー80により電力の供給が遮断される。
【0060】
上記したように、本実施の形態では、昇圧チョッパ74およびインバータ76に含まれる素子を、
図1に示すセラミック基板22の上面に固着している。従って、素子と回路基板12との間に、高耐圧絶縁樹脂材料を介在することなく、これらの素子に数百V〜数千Vの電圧が印加されても、素子と回路基板12とはショートしない。
【0061】
図4(B)を参照して、上記したインバータ76に含まれるトランジスタの一つであるトランジスタQ3は、2つのIBGTであるトランジスタQ31、Q32と、これらのトランジスタの主電極に逆接続された4つのダイオードD31、D32、D33、D34とから構成されている。
【0062】
トランジスタQ31とトランジスタQ32とは並列に接続されている。具体的には、トランジスタQ31およびトランジスタQ32の、ゲート電極、エミッタ電極およびコレクタ電極が、共通に接続されている。このようにすることで、1つのトランジスタの場合と比較すると、大きい電流容量が得られる。
【0063】
また、ダイオードD31、D32、D33、D34のアノード電極はトランジスタトランジスタQ31とトランジスタQ32のエミッタ電極に接続さている。そして、これらのダイオードのカソード電極は、トランジスタトランジスタQ31とトランジスタQ32のコレクタ電極に接続されている。
【0064】
図5から
図7を参照して、次に、上記した混成集積回路装置10の製造方法を説明する。
【0065】
図5を参照して、先ず、回路基板12を用意する。
図5(A)は本工程を示す平面図であり、
図5(B)および
図5(C)は本工程を示す断面図である。
【0066】
図5(A)および
図5(B)を参照して、用意される回路基板12は厚みが1mm〜3mm程度の厚いアルミニウムや銅等の金属から成る回路基板である。回路基板12の材料としてアルミニウムが採用された場合、回路基板12の上面および下面は陽極酸化膜により被覆されている。更に、回路基板12の上面は、厚みが60μm以下程度の絶縁層50により被覆される。このようにすることで、アイランド18B等が回路基板12に密着する強度が向上される。
【0067】
尚、回路基板12は、大型の回路基板に対してプレス加工または研削加工を行うことにより所定の形に成形されている。
【0068】
回路基板12の上面に貼着された銅箔を所定形状にエッチングすることにより、アイランド18A−18Gが形成されている。このアイランド18A−18Gは、トランジスタ等の回路素子が実装されるものではなく、後述するセラミック基板の実装に使用される半田の濡れ性を向上させるためのものである。
【0069】
図5(C)を参照して、回路基板12の材料としてアルミニウムが採用された場合、回路基板12の上面および下面は、陽極酸化により生成されたアルマイトから成る酸化膜46、48により被覆される。更に、酸化膜46の上面は、樹脂材料から成る絶縁層50により被覆され、この絶縁層50の上面にアイランド18Bが形成される。
【0070】
そして、アイランド18Bは、回路基板12の上面を被覆する絶縁層50の上面に形成されている。したがって、回路基板12とアイランド18Bとの間には、絶縁層50が存在するが、薄く形成される絶縁層50の熱伝導率は非常に高いので、基板全体の熱伝導性は非常に高い。
【0071】
図6を参照して、次に、回路基板12の所定箇所にセラミック基板を配置する。
図6(A)は本工程を示す平面図であり、
図6(B)および
図6(C)は断面図である。
【0072】
図6(A)を参照して、トランジスタやダイオード等の所定の回路素子が実装されたセラミック基板22A−22Gを、回路基板12の上面に固着する。ここで、各セラミック基板22A−22Gは、前工程にて回路基板12の上面に形成されたアイランド18A−18Gの上面に固着される。
【0073】
図6(C)を参照して、セラミック基板22の上面および下面には、導電パターン24および金属膜20が形成されている。そして、セラミック基板22の下面を被覆する金属膜20が、半田等の固着材38を介して、回路基板12の上面に設けられたアイランド18に固着される。セラミック基板22の下面に全面的にベタの金属膜20を設けることにより、セラミック基板22の下面全域に固着材38が密着する。従って、セラミック基板22は強固に回路基板12に接合される。
【0074】
図7(A)を参照して、次に、回路基板12の上面周辺部にケース材14を接着する。ケース材14には、上記したように、出力リードや配線リードが予め組み込まれている。また、ケース材14は、エポキシ樹脂等の接着材を介して回路基板12の上面に接着される。
【0075】
図7(B)を参照して、次に、金属細線26で回路素子と各リードとを電気的に接続する。具体的には、セラミック基板22Bの上面に固着されたトランジスタ34のゲート電極を、金属細線26を経由して配線リード40と接続する。また、トランジスタ34の上面に配置されたエミッタ電極を、ダイオード36の上面に設けられたアノード電極と共に、出力リード30と接続する。また、セラミック基板22Fの上面に実装されたトランジスタ34は、金属細線26を経由して出力リード28と接続される。
【0076】
本工程では、回路素子の接続には直径が200μm程度のアルミニウムから成る金属細線が使用される。また、金属細線によるワイヤボンディングの替りに、リボン状のアルミ箔を用いたリボンボンディングが採用されても良い。
【0077】
図7(C)を参照して、次に、配線リード40の上端部を基板42の孔部に挿入する。このことにより、各配線リード40が、基板42の表面に形成された導電パターンを経由して、基板42に備えられた信号リード44と接続される。
【0078】
更に、ケース材14に囲まれる空間に封止樹脂16を充填する。封止樹脂16としては、シリコン樹脂やエポキシ樹脂が採用される。また、アルミナ等のフィラーが充填された樹脂材料が封止樹脂16として採用されても良い。封止樹脂16により、トランジスタ34、ダイオード36、金属細線26、配線リード40、基板42等が樹脂封止される。
【0079】
以上の工程を経て
図1に示す混成集積回路装置10が製造される。