(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載のロール吊り具において、クランプ機構は吊下げフレームから垂下したクランプバーであり、且つその上端部が内側へ突出してその突出部が回動可能に軸支されると共に、下端部に内側のロールユニットと係合する可動ピンを有し、バー上端部の軸支点が可動ピンによるユニット支持点より内側に位置するロール吊り具。
請求項2に記載のロール吊り具において、クランプ機構におけるクランプバーは、ロールユニットを収納するロール置き台に向けて当該ロール吊り具が下降するときに、前記ロール置き台に立設された先尖りのガイドポストに案内されるガイドを下端部に有するロール吊り具。
請求項1〜4の何れかに記載のロール吊り具において、バネ機構は、傾動レバーが傾斜状態から起立状態へ傾動するときに圧縮される縮みバネ、若しくは傾動レバーが傾斜状態から起立方向へ傾動するときに伸長する伸びバネであるロール吊り具。
【背景技術】
【0002】
電縫管製造ラインでは、特許文献1及び2に記載されるように、製造する管のサイズに応じてロール替えが行われる。このロール替えでは、複数の成形ロールを組み合わせたロールユニットが次のようにしてロールスタンド毎に交換される。最初に、スタンドフレーム内でロールユニットの拘束が解除され、駆動機構からも分離される。こうして段積み状態となったロールユニットが、横行台車によりスタンドフレームの側方(反駆動機構側)へ引き出され、クレーンで吊り上げられて保管場所へ搬送された後、別のロールユニットがスタンドフレームの側方(反駆動機構側)へクレーンで運ばれ、スタンドフレーム内へ引き込まれ、その内部に固定されると共に、駆動機構と連結される。
【0003】
このようなロール替え、特にクレーンによる段積み状態のロールユニットの吊り上げ搬送に使用されるのがロール吊り具であり、これには次のような3つの機能が求められる。第1の機能は、吊り下げた段積み状態のロールユニットの傾きを防止するために、クレーンの吊下げフックによる吊下げ位置の真下、すなわちクレーンによる吊下げ線上から吊り具を水平方向へ変位させて、その吊下げ線上に負荷(吊り具及びロールユニット)の重心を位置させる調芯機能である。これが必要なのは、ロールユニットにおける上下ロールなどが片側駆動のために、左右対称構造でなく、吊下げ位置の真下に単純にロールユニットをクランプして吊り上げると、重心位置の変位のためにロールユニットが吊り具ごと傾き、ロールユニットの取り外しや取り外したロールユニットの保管場所へのセット、次に使用するロールユニットのスタンド本体へのセットが困難になるためである。
【0004】
第2の機能は、ロールユニットをスタンド本体から吊り上げるときや、吊り上げたロールユニットをロール本体へセットするときの微妙なインチング操作に対応するために、吊り上げ力と負荷荷重(吊り具とロールユニットの合計重量)とを釣り合わせるバランス機能である。これをクレーンによるロール吊り上げ作業時について説明すると、クレーンでロールユニットを吊り上げるとき、円滑で安全な作業のために、インチングと呼ばれる小刻みなクレーン操作を行って、クレーンによる吊り上げ力を徐々に増し、吊り上げ力と負荷荷重をバランスさせる。こうすることにより、吊り上げ力を超える力が吊り下げ負荷に急激に加わるのを阻止し、安全で円滑なクレーン吊り作業を可能にする。
【0005】
しかしながら、インチング操作だけで吊り上げ力と負荷荷重とをバランスさせることは非常に難しい。
【0006】
これら2つの要求機能を実現するために、特許文献3に記載されたロール交換用吊り具では、手動による水平方向の位置調整装置と、鉛直方向に伸縮する正副二重のバネ機構とが採用されている。このうち、クレーンによる吊下げ位置の真下に負荷の重心点を一致させるための位置調整装置は、水平なねじボルトとこれに螺合するナットとを組合せたねじジャッキ機構からなり、手動操作のため操作に時間がかかるだけでなく、正確性にも問題が残る。更に、回転を伴う機構のため構造が複雑であり、後者の正副二重のバネ機構からも独立しているために、全体としての構造も複雑である。
【0007】
また、第3の機能はロールユニットを確実に固定するクランプ機能である。というのは、スタンドフレームから引き出されたロールユニットは不安定な段積み状態であり、この状態でロールユニットをクレーンで吊り上げる必要があり、しかも傾く危険性もあるので、吊り具はロールユニットを確実にクランプする必要がある。
【0008】
これに関しては、特許文献3に記載されたロール交換用吊り具は、単なるロール吊り具であるため、段積み状態のロールユニットを確実にクランプする機能、機構までは持ち合わせていない。一方、引用文献2に記載された電縫管成形機では、スタンドフレームから引き出されたロールユニットはワイヤ吊りされるため、格別の吊り具は使用されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、クレーンによる吊下げ位置の真下に負荷の重心点を一致させる調芯機能、及び吊り上げ力と負荷荷重とを釣り合わせるバランス機能の両方を具有しながら、両機能を一つの簡単な機構で実現し、しかも両機能とも自動で行う構造が簡単で、操作性にも優れるロール吊り具を提供することにある。
【0011】
本発明の更に別の目的は、スタンドフレームから引き出された段積み状態のロールユニットを簡単な構造で確実にクランプできる安全性の高いロール吊り具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明のロール吊り具は、重量分布が不均一なロールユニットを傾きなく鉛直にクレーン吊りするのに使用されるロール吊り具であって、クレーンのフックが係合する吊下げ軸を上方に有し、下方にロールユニットを固定するクランプ機構を有する吊下げフレームと、当該吊り具の重心線から水平方向へ変位した位置において吊下げフレームに支持軸により軸支され、前記吊下げ軸を下方の吊下げフレームに対して揺動可能に連結支持する傾動レバーと、傾動レバーを傾斜状態に弾性保持するべく
当該傾動レバーの起立側に位置して前記吊下げフレームに取付けられて当該傾動レバーを前記吊下げ軸と前記支持軸との間で
当該傾動レバーに取付けられた当接板を介して弾性的に押圧するバネ機構とを具備しており、前記吊下げフレームが単体でクレーン吊りされた状態では当該吊り具の重心が吊下げ位置の真下に位置するように前記傾動レバーが前記バネ機構により
当該バネ機構とは反対の側へ傾斜する前記傾斜状態に保持され、吊下げフレームが下方にロールユニットをクランプしてクレーン吊りされた状態では、前記バネ機構の弾性
押圧力に抗して傾動レバーが
前記バネ機構の側へ起立する起立状態へ傾動
して前記バネ機構を圧縮することにより、吊り具の重心が吊下げ位置の真下から水平方向へ離反して、吊り具とロールユニットの合体重心を吊下げ位置の真下近傍へ移動させるように構成されている。
【0013】
本発明のロール吊り具においては、吊下げフレームの下にロールユニットがクランプされない状態では、当該吊り具の重心線に対して水平方向へ変位した位置に軸支された傾動レバーが傾斜状態に保持され、吊り具の重心がクレーンによる吊下げ位置の真下、すなわちクレーンによる吊下げ線上に位置することにより、当該吊り具は傾きなく鉛直にクレーンに吊下げられる。
【0014】
吊下げフレームの下にロールユニットがクランプされた状態でクレーン吊りされると、吊下げ負荷の増加により、バネ機構の弾性力、すなわちバネ力に抗して傾動レバーが傾斜状態から起立状態へ傾動する。これに伴って吊り具の重心がクレーンによる吊下げ位置、すなわちクレーンによる吊下げ線上から水平方向へ変位する。ロールユニットの重量分布が左右対称であればこの重心変位によりロールユニットが当該吊り具と共に傾斜するが、ここでは、ロールユニットの非対称な重量分布による傾斜を打ち消すように、吊下げフレームの重心が吊下げ位置の真下、すなわち吊下げ線上から水平方向へ変位するので、前記傾斜は殆ど生じない。
【0015】
また、吊下げフレームをクレーン吊りする場合、吊り上げに伴って傾斜レバーがバネ機構を徐々に弾性変形させるので、吊り上げ力が吊下げフレームに急激に付加されず、吊下げ負荷の荷重に自然と一致する。
【0016】
このように、本発明のロール吊り具においては、吊下げフレームを単体で吊り上げても、ロールユニットをクランプした状態で吊り上げても、何らの調整をしなくとも、吊り上げられる負荷を常に鉛直状態に自動保持することができる。すなわち、本発明のロール吊り具は傾動レバーとバネ機構を組み合わせた自動調芯機構を有する。また、この機構は、吊り上げ力と負荷荷重とを釣り合わせるバランス機構も兼ねる。したがって、構成が簡単である。
【0017】
バネ機構はバネ定数の変更が容易である。吊り上げるロールユニットの重量及び重量分布に応じてこのバネ定数を変更できる構成が採用されているならば、その吊り具は一種類で様々な種類のロールユニットに対応でき、多種多段のロールスタンドを使用する電縫管製造ラインの段取り替えに特に好適である。
【0018】
バネ機構としては、傾動レバーが傾斜状態から起立状態へ傾動するときに圧縮される縮みバネを用いたもの
となる。一般的に使用されるバネはコイルスプリングであるが、吊り上げ荷重が大きいために規模、コストが増大する。この点、皿バネを厚み方向に組み合わせ縮みバネは、吊り上げ荷重が大きくても規模、コストを小さく抑制できる。また、皿バネの組合せ形態によりバネ定数の変更が容易であるので、好ましい。
【0019】
ロール吊り具のクランプ機構としては、吊下げフレームの中央部を挟む両側部から垂下したクランプバーによりロールユニットを抱持する構成が好ましく、特に、上端部に内側へ突出した突出部を有し、その突出部が回動可能に軸支されると共に、下端部にロールユニットと係合する可動ピンを有し、バー上端部の軸支点(回動中心)が可動ピンによるユニット支持点より内側に位置する構成が好ましい。この構成によると、クランプバーがロールユニットの重量を下端部の可動ピンで受けることになるため、本質的に安定性が良いだけでなく、そのロールユニットの重量を受けたときに、クランプバーが内側への回転モーメントを生じ、ロールユニットを挟持するので、ロールユニットのクランプを確実なものとする。この場合、クランプ機構におけるクランプバーは、ロールユニットを収納するロール置き台に向けてロール吊り具が下降するときに、前記ロール置き台に立設されたガイドポストに案内されるガイドを下端部に有する構成が好ましい。この構成によると、吊り具側のガイドとロール置き台側のガイドポストとの組合せにより、ロール置き台上の定位置へのロールユニットの誘導位置決めが正確に且つ簡単に行われる。ガイドポストは先尖り形状とするのが、誘導の容易さの観点からより好ましい。すなわち、このようなガイド付き吊り具は、そのガイドを当該吊り具の下降時に案内する先尖りのガイドポストを備えたロール置き台と組み合わせ使用するのが好ましいということである。
【発明の効果】
【0020】
本発明のロール吊り具は、吊下げフレームの吊下げ軸の支持に傾動レバーを使用すると共に、その傾動レバーをバネ機構により傾斜方向へ弾性保持することにより、負荷に応じて傾動レバーを起立状態へ傾動させる。これにより、重量分布が非対称なロールユニットを吊り上げる場合に吊下げフレームが吊下げ位置の真下から水平方向へ変位し、ロールユニットの非対象な重心分布を相殺して吊下げ位置の真下近傍に負荷の重心を位置させる。また、クレーンによる吊り上げ力をバネ機構を介して吊下げフレームに穏やかに伝える。すなわち、クレーンによる吊下げ位置の真下に負荷(吊り具及びロールユニット)の重心点を位置させる調芯機能と、吊り上げ力と負荷荷重(吊り具とロールユニットの合計重量)とを釣り合わせるバランス機能とを、傾動レバーとこれを弾性支持するバネ機構とを組合せた簡単な機構により実現する。このため、構造が簡単であり、しかも両機能とも自動で行うので操作性にも優れる。
【0021】
加えて、クランプ機構として吊下げフレームから垂下したクランプバーを用い、且つその上端部を内側へ突出させて回動可能に軸支すると共に、下端部にロールユニットと係合する可動ピンを設け、バー上端部の軸支点(回動中心)を可動ピンによるユニット支持点をより内側に位置させることにより、段積み状態のロールユニットを回転モーメントの利用により確実にクランプするので、多少の傾斜に対しても安全性を損なうことがない。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明の一実施形態を説明する。
【0024】
本実施形態のロール吊り具は、
図1〜
図8に示すように、電縫管製造ラインに設置される各種ロールスタンドのサイズ替えに伴うロールユニット10の交換等に使用され、より具体的には、スタンドフレーム内での拘束が解除され駆動機構からも分離されることにより段積み状態となってスタンドフレームの側方(反駆動機構側)へ引き出されたロールユニット10のクレーンによる搬送に使用される。
【0025】
ロールユニット10は、ここでは下ロールの両側ロールチョック上にそれぞれサイドロールを載せ、両側のサイドロール上に上ロールの両側ロールチョックを載せた4方ロール(スクイズロール)である。このロールユニット10は、
図3〜
図5に示すように、スタンドフレームからの排出及びスタンドフレームへの挿入を行うために横行用車輪11,11を最下部に備えている。また、スタンドフレーム内で片側からロール駆動が行われるために、このロールユニット10は左右非対称の構造をしており、これに伴って重量分布も非対称である。具体的には向かって右側が重く、左側が軽い。
【0026】
ここにおけるロール吊り具は、
図1及び
図2に示すように、上部の水平な吊下げフレーム20と、ロールユニット10をクランプするクランプ機構として、吊下げフレーム20から垂下した4本のクランプバー30と、当該吊り具をクレーン吊りするために吊下げフレーム20の上方に連結されたフックピンと称される吊下げ軸40と、その連結のための傾動レバー50,50と、傾動レバー50,50を弾性的に押圧するバネ機構60とを備えている。
【0027】
吊下げフレーム20は、前後一対の第1横材21,21の中央部をこれらに直角な第2横材22で繋いだH形をしている。以後の説明では、第2横材22の方向を縦方向、これに直角な水平方向を横方向と称する。
【0028】
4本のクランプバー30は、段積みされたロールスタンドの位置決め整列部材を兼ねており、第2横材22の両側に位置して第1横材21,21間に掛け渡された2本の支持軸31,31の両端部に、最上部が回動可能に連結支持されている。各クランプバー30は、上端部が内側へ突出しており、この突出部36が支持軸31に軸支されている。
【0029】
各クランプバー30の下端部には、ロールユニット10との連結固定のために可動ピン32が内蔵されると共に、当該吊り具の位置決めのためにガイド33が突設されている。可動ピン32は、中央部の第2横材22を挟んで設けられた両側一対のクランプバー30,30の対向面から中央部へ向かって水平方向に進出する横方向の可動ピンであり、クランプバー30の縦方向外面に外付けされたアクチュエータとしてのシリンダー34により長手方向である横方向に進退駆動される。より具体的には、
図1及び
図2に示すように、クランプバー30の可動ピン32より上方に、可動ピン32に直角な縦方向の回動支持軸39が設けられている。そして、回動支持軸39の一端部は、シリンダー34の下方に位置してクランプバー30の縦方向外面に取付けられた第1レバー39aにより、シリンダー34のロッド先端部と連結されており、回動支持軸39の他端部は、可動ピン32の上方に位置してクランプバー30内に設けられた第2レバー39bにより、可動ピン32と連結されている。これにより、第1レバー39a及び第2レバー39bは、回動支持軸39を中心とする屈曲型の揺動クランクを構成し、シリンダー34のロッド進退動作(上下方向動作)を、その揺動クランクの揺動動作を介して可動ピン32の横方向の直線進退動作に変換する。
【0030】
ここで、各クランプバー30の下端部に設けられた可動ピン32によるロールユニット10の支持点は、各クランプバー30の上端部を軸支する支持軸31の中心(軸支点)より外側に位置している。これにより、中央部を挟んで2本ずつ配置された片側2本のクランプバー30は、ロールユニット10の重量を下端部で受けることにより中央部側へ閉じる方向の回転モーメントを生じることになり、これより内側にクランプしたロールユニット10の支持を確実にする。
【0031】
一方、ガイド33は、中央部の第2横材22を挟む各側2本のクランプバー30の対向面から対向方向へ水平に突出した縦方向の突起であり、先端部は上から見て両側へ開いたV状面になっている。すなわち、各クランプバー30の下端部に設けられた可動ピン32の動作方向は横方向であるのに対し、ガイド33の突出方向は縦方向であり、両方向は水平面内で直角で、ともに内向きである。
【0032】
第1横材21,21の両端部外面には、縦方向及び横方向の垂直板を組み合わせたフック35が取付けられている。フック35は、当該吊り具を吊り具置き台へ収納するときの係止部であると共に、4本のクランプバー30によりロールユニット10をクランプする際の位置決めガイドでもある。
【0033】
当該吊り具をクレーン吊りするために吊下げフレーム20の上方に連結された吊下げ軸40は、クレーンのフック70が係合するように、中央部の第2横材22上に位置している。この吊下げ軸40は、第2横材22に直角な横方向の水平軸であり、横方向両端側の一対の傾動レバー50,50により、第2横材22に対して揺動可能に連結されている。すなわち、吊下げ軸40は、両側一対の傾動レバー50,50の上端部に回動可能に接続されており、傾動レバー50、50の下端部は、第2横材22の両側面に、吊下げ軸40と平行な横方向の支持軸51により回動可能に接続されており、これらにより、吊下げ軸40は支持軸51を中心にして第2横材22上を縦方向に揺動する。
【0034】
そして、傾動レバー50、50は、縦方向の一方に設けられ
て当該傾動レバー50、50を前記吊下げ軸40と前記支持軸51との間で弾性的に押圧するバネ機構60により、縦方向の他方へ傾斜した状態に弾性保持されている。
【0035】
ここにおけるバネ機構60は、
図9〜
図11に示すように、複数枚の皿バネ61を縦方向に積層してケース62内に収容し、ボルトからなる縦方向の水平な貫通ロッド63により固定したものであり、第2横材22の一方の端部上からその端部側の第1横材21上にかけて設置されることにより、傾動レバー50,50が起立方向へ傾動したときに傾動レバー50,50の下部間に架設された当接板52に押圧され、縮小する。そして、その反力により、バネ機構60は傾動レバー50,50を傾斜状態に弾性保持する。
【0036】
貫通ロッド63の先端部はケース62内を摺動する可動ヘッド64であり、基端部にねじ込まれたナット65との組合せにより、複数枚の皿バネ61をケース62内に固定する。また、傾動レバー50,50が傾斜した側の第2横材22上には、傾動レバー50,50を初期傾斜角度に維持するためにストッパー53が設けられている。
【0037】
このようなロール吊り具の吊り下げ機構で重要なのは、吊り具の重心線C、すなわち吊り具の重心が通る鉛直線(吊り具センター)と、クレーンのフック70で当該吊り具を吊り下げたときの吊下げ線F、すなわちクレーンのフック70で当該吊り具を吊り下げたときに吊下げ軸40の中心Oaが通る鉛直線との位置関係である。
【0038】
以下に、吊り具の重心線Cとクレーンによる吊下げ線Fとの位置関係を
図9及び
図10により詳述する。両図中のDaは吊下げ線Fに対する傾動レバー50,50の支持軸51の中心Obの変位量、Dbは吊下げ線Fに対する吊り具の重心線Cの変位量である。
【0039】
ロール吊り具を単体で吊り上げたとき、すなわちクレーンのフック70により吊り具の吊下げ軸40を吊り上げたときは、
図9に示すように、吊り具の重心線Cと吊下げ線Fが一致し、両者間の変位量Dbが0となることにより、吊下げ軸40の中心Oaの真下に吊り具の重心が位置する。これにより、吊り具は傾くことなく鉛直に吊り上げられる。
【0040】
このとき、吊下げ軸40を支持する傾動レバー50,50は傾斜状態にあるために、傾動レバー50,50の支持軸51の中心Obは吊下げ軸40の中心Oaの真下になく、吊下げ線FからDbだけ水平方向へ変位している。その結果、吊り具の自重Waによる起立方向への回転モーメントが傾動レバー50,50に加わる。
【0041】
その結果として、当接板52によりバネ機構60内の皿バネ61が押圧され、その反力により傾動レバー50,50が所定の初期傾斜角度に弾性的に支持される。
【0042】
吊り具を用いてロールユニットを吊り上げたときは、
図10に示すように、吊下げ軸40に吊り具の自重Waとロールユニット10の重量Wbとの合計(Wa+Wb)が吊下げ軸40に付加される。ロールユニット10の重量Wbが余分に付加されることにより、傾動レバー50,50に加わる回転モーメントが増加し、バネ機構60内の皿バネ61が圧縮されることにより、制動レバー50,50は鉛直な起立状態へ傾動する。
【0043】
その結果として、傾動レバー50,50の支持軸51の中心Obは、吊下げ軸40の中心Oaの真下へ移動し、吊下げ線Fとの変位量Daは0となる。その結果、吊り具の重心線Cは、吊下げ線F、すなわち吊下げ軸40の中心Oaの真下から水平方向へDbだけ変位し(図では吊下げ線Fに対して右から左へ移動し)、普通ならば傾斜することになるが、ロールユニット10の重量分布が非対称であるために(図では右側が重く、左側が軽いために)、この変位が相殺され、吊り具とロールユニット10の合体重心が吊下げ軸40の中心Oaの真下付近、すなわち吊下げ線Fの近傍に位置し、両者の合計重量(Wa+Wb)が吊下げ軸40の中心Oaの真下付近に作用する。
【0044】
このような傾動レバー50,50とバネ機構60との組合せによる吊り具の重心移動により、ロールユニット10は吊り具と共に、横に傾くことなく鉛直に吊り上げられる。こうなるように、傾動レバー50,50の長さ(吊下げ軸40の中心Oaから支持軸51の中心Obまでの距離)及びその支持軸50の水平方向位置(吊り具の重心線Cからの変位量Db)、並びにバネ機構60内の皿バネ61のバネ定数は設計されている。
【0045】
次に、本実施形態のロール吊り具を用いたロールユニットの吊り上げ作業を、主に
図3〜
図5により説明する。
【0046】
当該吊り具は、図示されない吊り具置き台上に載置され保管されている。この吊り具をクレーンで吊り上げる。一方、吊り上げられるロールユニット10は、段積み状態で造管ライン内のロールスタンドから側方の定位置へ引き出されている。この状態で、吊り具をクレーンにて吊り上げて、ライン側方の定位置に停止するロールユニット10の真上に誘導し、下降させる。
【0047】
前記停止位置のレールを挟む両側にはガイドポストが設置されている(
図3〜
図5中のガイドポスト83参照)。吊り具は中央部を挟む各側2本のクランプバー30,30のガイド35,35の間をガイドポストが通過することにより、ガイドポストに案内されながら定位置まで下降し、各側2本のクランプバー30,30でロールユニット10を完全に抱持する。しかる後に、下端部の可動ピン32を突出させてロールユニット10の最下部、ここでは下ロールと係合させる。
【0048】
こうして吊り具のクランプバー30によるロールユニット10のクランプが終わると、その吊り具をクレーンにて引き上げ、ロールユニット10を吊り上げる。ロールユニット10の吊り上げが終わると、
図3に示すように、クレーンを操作してロールユニット10をロール置き台80上に誘導し、下降させ始める。
【0049】
ロール置き台80は、ベース81の四隅上に立設された4本の支持棒82と、両各側2本の支持棒82,82間に位置してベース81上に立設された先尖りのガイドポスト83と、中央部を挟む2本の支持棒82,82間に位置してベース81上に設置された前後2つの車軸支持台84,84とを備えている。前後2つの車軸支持台84,84は、ロールユニット10の最下部に設けられた横行用車輪11,11の車軸支持位置にある。
【0050】
吊り具の下降に伴い、吊り具の4本のクランプバー30でクランプされたロールユニット10も下がる。その結果、
図4に示すように、中央部を挟む各側2本のクランプバー30,30のガイド35,35の間をガイドポスト83が通過することにより、ガイドポスト83により案内されながら、吊り具は下降する。
【0051】
そして、最終的には、
図5に示すように、前後2つの車軸支持台84,84上に横行用車輪11,11の各車軸が載り、クランプバー30,30の可動ピン32を退入させることにより、ロール置き台80へのロールユニット10の移載が完了する。
【0052】
吊り具を使用すると、クレーンのフック70が係合する吊下げ軸40の中心Oaとこれを支持する傾動レバー50,50の支持軸51の中心Obとの位置関係が荷重によって水平方向で変化する重心移動により、吊り具単体をクレーン吊りする場合も、吊り具を用いて、重量分布が非対称なロールユニット10を吊り上げる場合も、共に鉛直姿勢が保持されることは前述したとおりである。
【0053】
また、クレーンにてロールユニット10を吊り上げるときに、吊り具の吊下げ軸40を傾動レバー50,50がバネ機構60内の皿バネ61による弾発力に抗して傾斜状態から起立状態へ徐々に傾動するので、クレーンによる吊り上げ力と負荷荷重とがスムーズに釣り合い、吊り上げ時の衝撃が生じ難い。
【0054】
更に又、吊り具の4本のクランプバー30は、内側への突出部36が軸支され、その軸支点が、可動ピン32によるユニット支持点より内側に位置していることにより、ロールユニット10の吊り上げに伴い、中央部側へ閉じる方向の回転モーメントを生じ、段積み状態のロールユニット10を確実に支持することも前述したとおりである。
【0055】
ちなみに、バネ機構60内の皿バネ61のバネ定数は、小さ過ぎると(皿バネ61が柔らか過ぎると)、吊り上げ時の衝撃を緩和する効果が低下し、特に、ロールユニット10の重量が大きい場合の緩衝効果低下が顕著となる。反対に、大き過ぎる場合は(皿バネ61が硬すぎる場合は)、ロールユニット10の重量が小さいときに、傾動レバー50,50が鉛直状態まで起立せず、吊り具の重心移動が不完全となることにより、吊り上げ時の傾きが大きくなる懸念が生じる。
【0056】
実際に吊り具を設計し使用した結果を
図9及び
図10により説明する。吊り具の自重Waは3トン、吊り具の重心線Cは吊下げフレーム20(縦方向全長1060mm)の両端から530mmの中央位置、吊り具における吊下げ軸40と傾動レバー50の支持軸51との中心間距離は600mmである。また、支持軸51の中心Obは、吊り具の重心線Cから縦方向一端側から他端側(
図9及び
図10中で右側)へ50mm変位しているので、ロールユニット10を吊り上げた状態(傾動レバー50が鉛直に起立した状態)ではクレーンによる吊下げ線Fは、吊下げフレーム20の縦方向一端側から580mmのところを通過する。
【0057】
バネ機構60における皿バネ61としては、
図11に示すように、2枚×2組+3枚×18組(合計60枚)の組合せを用いた。
図11中の66はバネ長調整用のスペーサである。個々の皿バネ61は軽荷重用皿ばね(呼び40)で、外径80mm、内径41mm、自由高さ5.3mm、有効高さ2.3mm、板厚3.0mm、75%時荷重11300Nである。皿バネ61の組合せ体は、スペーサ66の厚みを含め、自由長が226mm、吊り具のみを吊ったときの長さが215.5mm、ロールユニット10を吊り上げたときの長さが195.4mmであり、バネ定数は約90kgf/mmである。
【0058】
電縫管製造ラインにおける第1フィンパスロールスタンドのスタンドフレームからロールユニット10を引き出し、吊り上げた。そのロールユニット10の重量は20トンである。この重量は不均一分布のため吊下げフレーム20の縦方向一端(
図9及び
図10中で左)から587.9mmのところに作用し、吊り具との合体重量(23トン)は、吊下げ軸30の中心Oaのほぼ真下(吊下げ線Fの直近)である吊下げフレーム20の縦方向一端(
図9及び
図10中で左端)から580.3mmのところに作用した。その結果、ロールユニット10は吊り具と共に鉛直姿勢で吊り上げられた。
【0059】
重量が10トンの別のフィンパスロールについて同様の吊り上げを行う場合は、吊り具とロールユニット10と合体重量(13トン)は、吊下げ軸30の中心Oaの真下(吊下げ線F)から僅かに縦方向一端側(
図9及び
図10中で左側)に逸れた吊下げフレーム20の縦方向一端(
図9及び
図10中で左端)から570mmのところに作用したものの、吊り上げ時に目視で分かる程度の傾斜は生じなかった。
【0060】
重量が20トンの第3スクイズロールについて同様の吊り上げを行う場合は、吊り具とロールユニット10と合体重量(23トン)は、吊下げ軸30の中心Oaの真下(吊下げ線F)から縦方向他端側(
図9及び
図10中で右側)へ僅かに逸れた吊下げフレーム20の縦方向一端(
図9及び
図10中で左端)から589.4mmのところに作用したものの、吊り上げ時に目視で分かる程度の傾斜は生じなかった。
【0061】
重量が15トンの別のスクイズロールについて同様の吊り上げを行う場合は、吊り具とロールユニット10と合体重量(18トン)は、吊下げ軸30の中心Oaの真下(吊下げ線F)から縦方向他端側(
図9及び
図10中で右側)へ僅かに逸れた吊下げフレーム20の縦方向一端(
図9及び
図10中で左端)から586.9mmのところに作用したものの、吊り上げ時に目視で分かる程度の傾斜は生じなかった。
【0062】
このように、本実施形態のクレーン吊り具を使用すると、電縫管製造ラインにおける何れのスタンドにおけるロールユニット10も、重量が固有の不均一分布を有するにもかかわらず、吊り具との合体重心がクレーンによる吊下げ線Fの直近(上記の4例では±10mm以内)に位置するので、吊り具と共に傾斜を生じることなく鉛直に吊り上げることができ、安定性や安全性、操作性等に著しく優れる。
【0063】
また、何れの場合も、吊下げフレーム20から垂下する吊り具の4本のクランプバー30の軸支点がユニット支持点より内側に位置していることによる回転モーメントにより、ロールユニット10はロール相互間の拘束が解除された段積み状態であるにもかかわらず、確実に支持される。
【0064】
上述の実施形態では電縫管製造ラインにおけるフィンパスロール及びスクイズロールにおけるロール吊りについて説明したが、本発明のロール吊り具は電縫管製造ライン以外のロールスタンド乃至ロールスタンド列におけるロールユニット替え、特に重量分布が不均一でクレーン吊りで傾きが生じるおそれのあるロールユニットの運搬に有効である。