(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、表面の耐候性に優れ、また持ち運ぶことができ取扱い性に優れ、さらに表面が劣化等しても交換作業が極めて簡便であるチョークボード及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた発明は、
表面にチョークによる筆記及び消去が可能なチョークボードであって、
可撓性を有するシートから構成され、
最表面に配設されるフッ素樹脂製の表面層と、
この表面層の裏面側に配設される樹脂製の基材層とを備えることを特徴とするチョークボードである。
【0007】
当該チョークボードは、最表面にフッ素樹脂製の表面層が配設されているので、表面にチョークにより筆記しても容易かつ確実に消去することができ、また表面の耐候性にも優れる。また、当該チョークボードは可撓性を有するシートから構成されているので、例えばロール状に巻回する等によって持ち運びが可能であり、取扱性に優れる。また、このように取扱性に優れるため、仮に設置されていた当該チョークボードの表面が劣化した場合であってもそのチョークボードを容易に離脱することができ、また新たな当該チョークボードを容易に設置することができ、交換作業を簡便に行うことができる。
【0008】
上記表面層の表面の算術平均粗さ(Ra)としては0.1μm以上10μm以下が好ましい。これにより、チョークによって容易かつ確実に筆記でき、また筆記後に容易かつ確実に消去することができる。
【0009】
上記表面層中に顔料を含有するとよい。これにより、表面層中の顔料が表面層における外光の反射を抑制するため、外光の反射によって筆記された文字等の視認を阻害することを的確に防止することができる。
【0010】
上記顔料として黒色顔料を採用でき、これにより当該チョークボードを黒板として用いることができる。
【0011】
上記顔料として白色顔料を採用でき、これにより当該チョークボードをホワイトボートとして用いることができる。
【0012】
当該チョークボードは剛軟度が50mm以上250mm以下であるとよい。これにより、当該チョークボードを巻回状態で持ち運ぶことができ、取扱性がさらに優れる。
【0013】
当該チョークボードは、他の部材の被着面に貼着可能な貼着手段をさらに備えるとよい。これにより、当該チョークボードを貼着対象の部材の場所まで持ち運び、この部材に貼着手段によって被着面に貼着することで当該チョークボードを取付けることができ、このため当該チョークボードを種々の場所で使用することが可能となる。
【0014】
上記貼着手段としては、基材層の裏面側に設けられた粘着部を採用可能である。これにより、粘着部の粘着力によって他の部材に当該チョークボードを取付けることができる。
【0015】
上記貼着手段としては磁石を採用可能である。これにより、他の部材が磁性体であれば磁力によって他の部材に当該チョークボードを取付けることができる。
【0016】
上記表面層の主成分のフッ素系樹脂がテトラフルオロエチレンとエチレン又はプロピレンとのコポリマーであるとよい。これにより、耐候性がさらに向上し、また表面層の平滑性が向上するので筆記された文字等の消去をより容易かつ確実に行うことができる。
【0017】
上記表面層中に紫外線防止剤を含有するとよい。これにより、基材層に紫外線が到達することを防ぎ、基材層の劣化を防止することができる。
【0018】
当該チョークボードは、上記表面層と基材層とを接着する接着剤層をさらに備えるとよい。これにより、当該チョークボードの耐衝撃性、耐久性、堅牢性等が向上する。
【0019】
上記接着剤層を構成する接着剤としてポリウレタン系接着剤を用いるとよい。これにより、接着強度低下やデラミネーションが防止される。
【0020】
当該チョークボードは、幅が1m以上で長さが3m以上の方形状であるとよい。これにより、小学校等の施設において設置される黒板として用いることができる。
【0021】
また、上記課題を解決するためになされた別の発明は、
表面にチョークによる筆記及び消去が可能なチョークボードの製造方法であって、
可撓性を有するフッ素樹脂製フィルムと、可撓性を有する樹脂製の基材層とを積層接着する工程を有することを特徴とするチョークボードの製造方法である。
【0022】
当該製造方法によって製造されたチョークボードは、表面に配設されるフッ素樹脂製フィルムにチョークにより筆記しても容易かつ確実に消去することができ、また表面の耐候性にも優れる。また、当該製造方法によって製造されたチョークボードは可撓性を有するため、取扱性に優れる。
【0023】
ここで、「算術平均粗さ(Ra)」とは、JIS B0601−2001に準じて測定した、カットオフ値λc2.5mm、評価長さ12.5mmの値である。「剛軟度」とは、JIS L 1096 6.19.1 A法(45°カンチレバー法)に準拠して測定される値である。「紫外線防止剤」とは、紫外線による光劣化防止機能を有する添加剤で、紫外線吸収剤、紫外線安定剤等を含む概念である。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、当該チョークボードは、表面の耐候性に優れ、また持ち運ぶことができ取扱い性に優れ、さらに表面が劣化等しても交換作業が極めて簡便である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の実施形態を詳説する。
【0027】
[チョークボード]
図1のチョークボード1は、表面にチョークによる筆記及び消去が可能に設けられている。当該チョークボード1は、可撓性を有するシートから構成されており、最表面に配設されるフッ素樹脂製の表面層2と、この表面層2の裏面側に配設される樹脂製の基材層3とを備えている。また、当該チョークボード1は、上記表面層2と基材層3とを接着する接着剤層4をさらに備えている。さらに、当該チョークボード1は、上記基材層3の裏面側に配設され、他の部材の被着面に剥離可能に貼着できる貼着手段5をさらに備えている。
【0028】
上記表面層2は、可撓性を有するフッ素樹脂製フィルムから構成されている。この表面層2の主成分のフッ素系樹脂としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとペルフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体からなるペルフルオロアルコキシ樹脂(PFA)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマー(FEP)、テトラフルオロエチレンとペルフルオロアルキルビニルエーテルとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマー(EPE)、テトラフルオロエチレンとエチレン又はプロピレンとのコポリマー(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン樹脂(PCTFE)、エチレンとクロロトリフルオロエチレンとのコポリマー(ECTFE)、フッ化ビニリデン系樹脂(PVDF)、フッ化ビニル系樹脂(PVF)等が挙げられる。これらのフッ素系樹脂の中でも、強度、耐熱性、耐候性等に優れるポリフッ化ビニル系樹脂(PVF)やテトラフルオロエチレンとエチレン又はプロピレンとのコポリマー(ETFE)が特に好ましい。
【0029】
上記表面層2の厚さは特に限定されるものではないが、表面層2の平均厚さの下限としては、10μmが好ましく、20μmがより好ましく、50μmがさらに好ましい。表面層2の平均厚さが上記下限未満であると、耐候性等の性能を十分に奏さないおそれがあり、また表面層2を構成するフッ素樹脂製フィルムの取扱いが困難になるおそれがある。一方、表面層2の平均厚さの上限としては、300μmが好ましく、100μmがより好ましく、80μmがさらに好ましい。表面層2の平均厚さが上記上限を超えると、当該チョークボード1が高額化してしまうおそれがある。なお、「フィルムの厚さ」とは、JIS−K−7130に準じて測定したフィルムの平均厚さである。
【0030】
また、表面層2中に顔料を含有することが好ましい。この顔料の種類は特に限定されるものではなく、黒色顔料、白色顔料、その他の顔料を採用することができ、表面層2中に複数種類の顔料を含有させることも適宜設計変更可能である。特に、黒色顔料を採用することで、白色チョークで筆記した際に視認容易な黒板として当該チョークボード1を用いることができる。また、白色顔料を採用することで、赤色チョーク等で筆記した際に視認容易なホワイトボードとして当該チョークボード1を用いることができる。
【0031】
なお、黒色顔料としては例えば二酸化チタンを用いることが可能であり、白色顔料としては例えば炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸鉛、硫酸バリウムなどを用いることが可能である。また、その他の顔料としては、ウルトラマリン,紺青等の青色顔料、べんがら(酸化鉄赤),カドミウムレッド,モリブデンオレンジ等の赤色顔料、メタリック光沢を与える金属粉顔料などを用いることが可能である。
【0032】
上記顔料の粒子径は、特に限定されるものではないが、顔料の平均粒子径としては、100nm以上が好ましく、300nm以上がより好ましい。顔料の平均粒子径が上記下限未満であると、凝集等により表面層2中への均一な分散が困難になるおそれがある。一方、顔料の平均粒子径としては、30μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましい。顔料の平均粒子径が上記上限を超えると、表面層2の耐候性等の諸特性向上効果が低下するおそれがある。なお、平均粒子径とは、倍率1000倍の電子顕微鏡において観測される粒子から無作為に抽出した30個の粒子の粒子径を平均したものをいう。また、粒子径は、フェレー径(一定方向の平行線で投影像を挟んだときの間隔)で定義する。
【0033】
表面層2全体に対する上記顔料の含有量としては、特に限定されるものではないが、5質量%以上が好ましく、8質量%以上がより好ましい。顔料の含有量が上記下限未満であると、十分に着色されないおそれがある。一方、上記顔料の含有量としては、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。上記顔料の含有量が上記上限を超えると、表面層2中での顔料の分散性が低下し、表面層2の強度等の低下を招来するおそれがある。
【0034】
また、表面層2中に紫外線防止剤を含有することが好ましい。紫外線防止剤としては、例えば、紫外線吸収剤、紫外線安定剤等を挙げることができる。
【0035】
紫外線吸収剤としては、紫外線を吸収し、効率よく熱エネルギーや運動エネルギー等に変換できるもので、かつ、光に対して安定な化合物であれば特に限定されるものではなく、公知のものを使用することができる。具体的には、例えば、サリチル酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾオキサジノン系紫外線吸収剤等を挙げることができ、これらの群より選択される1種又は2種以上のものを用いるとよい。特に、分散性の点から、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾオキサジノン系紫外線吸収剤が好ましい。また、紫外線吸収剤としては、分子鎖に紫外線吸収基を有するポリマーも好適に使用される。かかる分子鎖に紫外線吸収基を有するポリマーを用いることで、紫外線吸収剤のブリードアウト等による紫外線吸収機能の劣化を防止することができる。この紫外線吸収基としては、ベンゾトリアゾール基、ベンゾフェノン基、シアノアクリレート基、トリアジン基、サリシレート基、ベンジリデンマロネート基等が挙げられる。これらの中でも、ベンゾトリアゾール基、ベンゾフェノン基、トリアジン基が特に好ましい。
【0036】
紫外線安定剤としては、紫外線に対する安定性が高いヒンダードアミン系紫外線安定剤が好適に用いられる。この紫外線安定剤を含有することにより、紫外線によって発生するラジカル、活性酸素等が不活性化され、表面層2の紫外線安定性、耐候性等を向上させることができる。さらに、表面層2中に含有される紫外線吸収剤とこの紫外線安定剤との併用により、紫外線に対する光劣化防止性及び耐候性が格段に向上する。
【0037】
表面層2全体に対する上記紫外線防止剤の含有量としては、0.1質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、3質量%以上がさらに好ましい。上記紫外線防止剤の含有量が上記下限未満であると、表面層2が紫外線防止効果を十分に奏することができないおそれがある。一方、上記紫外線防止剤の含有量としては、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましい。上記紫外線防止剤の含有量が上記上限を超えると、表面層2の耐候性等の低下をもたらすおそれがある。
【0038】
また、表面層2中に、加工性、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性等を改良、改質する目的で、種々の添加剤等を適宜混合することができる。この添加剤としては、上記顔料及び紫外線防止剤の他に、例えば、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、帯電防止剤、充填剤、強化繊維、補強剤、難燃剤、耐炎剤、発泡剤、防カビ剤等が挙げられる。また、上記紫外線防止剤としては、紫外線反射剤を用いることもできる。
【0039】
上記表面層2の表面の算術平均粗さ(Ra)としては、0.1μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましく、1μm以上であることがさらに好ましい。上記算術平均粗さ(Ra)が上記下限未満であると、チュークが滑りやすく、表面層2の表面にチョークによる筆記が困難となるおそれがある。一方、上記算術平均粗さ(Ra)としては、10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、2μm以下がさらに好ましい。上記算術平均粗さ(Ra)が上記上限を超えると、チョークによる筆記後に文字等を消去し難くなるおそれがある。
【0040】
上記基材層3は、上記表面層2の裏面に接着剤層4を介して積層接着される可撓性を有する合成樹脂製の基材フィルムから構成されている。この基材層3に用いられる合成樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えばポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレート系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂等が挙げられる。上記樹脂の中でも、高い耐熱性、強度、耐候性、耐久性を有するポリエステル系樹脂及び環状ポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0041】
上記ポリエステル系樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等が挙げられる。これらのポリエステル系樹脂の中でも、耐熱性、耐候性等の諸機能面及び価格面のバランスが良好なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0042】
上記環状ポリオレフィン系樹脂としては、例えばa)シクロペンタジエン(及びその誘導体)、ジシクロペンタジエン(及びその誘導体)、シクロヘキサジエン(及びその誘導体)、ノルボルナジエン(及びその誘導体)等の環状ジエンを重合させてなるポリマー、b)当該環状ジエンとエチレン、プロピレン、4−メチル−1−ペンテン、スチレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン系モノマーの1種又は2種以上とを共重合させてなるコポリマー等が挙げられる。これらの環状ポリオレフィン系樹脂の中でも、強度、耐熱性、耐候性等に優れるシクロペンタジエン(及びその誘導体)、ジシクロペンタジエン(及びその誘導体)又はノルボルナジエン(及びその誘導体)等の環状ジエンのポリマーが特に好ましい。
【0043】
なお、基材層3の形成材料としては、上記合成樹脂を1種又は2種以上混合して使用することができる。また、基材層3の形成材料中には、加工性、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性等を改良、改質する目的で、種々の添加剤等を混合することができる。この添加剤としては、例えば滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、充填剤、強化繊維、補強剤、帯電防止剤、難燃剤、耐炎剤、発泡剤、防カビ剤等が挙げられる。
【0044】
基材層3の厚みは特に限定されないが、基材層3の平均厚みとしては、30μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましく、80μm以上がさらに好ましい。基材層3の平均厚みが上記下限未満であると、カール等が生じやすく取扱いが困難になる等の不都合が発生する。一方、基材層3の平均厚みとしては、1mm以下が好ましく、200μm以下がより好ましく、150μm以下がさらに好ましい。基材層3の平均厚みが上記上限を超えると、当該チョークボード1の可撓性を阻害するおそれが生ずる。
【0045】
上記接着剤層4を構成する接着剤としては、ラミネート用接着剤又は溶融押出樹脂が用いられる。このラミネート用接着剤としては、例えば、ドライラミネート用接着剤、ウェットラミネート用接着剤、ホットメルトラミネート用接着剤、ノンソルベントラミネート用接着剤等が挙げられる。これらのラミネート用接着剤の中でも、接着強度、耐久性、耐候性等に優れるドライラミネート用接着剤が特に好ましい。
【0046】
上記ドライラミネート用接着剤としては、例えば、ポリ酢酸ビニル系接着剤、アクリル酸のエチル,ブチル,2−エチルヘキシルエステル等のホモポリマー又はこれらとメタクリル酸メチル,アクリロニトリル,スチレン等との共重合体等からなるポリアクリル酸エステル系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、エチレンと酢酸ビニル,アクリル酸エチル,アクリル酸,メタクリル酸等のモノマーとの共重合体等からなるエチレン共重合体系接着剤、セルロース系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリイミド系接着剤、尿素樹脂,メラミン樹脂等からなるアミノ樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤、反応型(メタ)アクリル系接着剤、クロロプレンゴム,ニトリルゴム,スチレン−ブタジエンゴム等からなるゴム系接着剤、シリコーン系接着剤、アルカリ金属シリケート,低融点ガラス等からなる無機系接着剤等が挙げられる。これらのドライラミネート用接着剤の中でも、当該チョークボード1の屋外での使用に起因する接着強度低下やデラミネーションが防止されるポリウレタン系接着剤、特にポリエステルウレタン系接着剤が好ましい。また硬化剤としては、熱黄変が少ない脂肪族系ポリイソシアネートが好ましい。
【0047】
上記溶融押出樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、酸変性ポリエチレン系樹脂、酸変性ポリプロピレン系樹脂、エチレン−アクリル酸又はメタクリル酸共重合体、サーリン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル系樹脂、エチレン−アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル共重合体、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等の熱可塑性樹脂の1種又は2種以上を使用することができる。なお、上記溶融押出樹脂を用いた押出ラミネート法を採用する場合、より強固な接着強度を得るために、接着剤層4を介して積層接着されるフィルム(又は層)の積層対向面に上述のアンカーコート処理等の表面処理を施すとよい。
【0048】
接着剤層4の積層量(固形分換算)の下限としては、1g/m
2が好ましく、3g/m
2がより好ましい。接着剤層4の積層量が上記下限より小さいと、接着強度が十分に得られないおそれがある。一方、接着剤層4の積層量の上限としては、10g/m
2が好ましく、7g/m
2がより好ましい。接着剤層4の積層量が上記上限を超えると、積層強度や耐久性が低下するおそれがある。
【0049】
なお、接着剤層4を形成するラミネート用接着剤又は溶融押出樹脂中には、取扱性、耐熱性、耐候性、機械的性質等を改良、改質する目的で、例えば、溶媒、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、帯電防止剤、充填剤、強化繊維、補強剤、難燃剤、耐炎剤、発泡剤、防カビ剤、顔料の種々の添加剤を適宜混合することができる。
【0050】
上記貼着手段5としては、基材層3の裏面側に設けられた粘着部を採用することができる。この粘着部は、基材層3の裏面に積層される粘着剤から形成される。
【0051】
この粘着部に用いられる粘着剤として、特に限定されないが、例えばアクリル系粘着剤、アクリル−ゴム系粘着剤、天然ゴム系粘着剤、ブチルゴム系等の合成ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤、エポキシ系粘着剤、ポリエチレン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤が挙げられる。これらのうち粘着力、保持力、タック力のバランスがよく、安価に入手可能できることからアクリル系粘着剤であることが特に好ましい。
【0052】
アクリル系粘着剤を構成するモノマーとして、特に限定されないが、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、n−オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソノニルアクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート等のアクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル(アルキル基としては例えば炭素数1〜20のもの);2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート等のアクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、メタクリル酸ヒドロキシアルキルエステル(ヒドロキシアルキル基としては例えば炭素数1〜20のもの);アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和脂肪族カルボン酸;酢酸ビニル;これらの組み合わせ等が挙げられる。中でもn−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートをモノマーとして用いることで、粘着力、保持力、タック力などの粘着特性が良好であるため、とくに好ましい。
【0053】
また、粘着部は、特に限定されないが、例えば溶剤タイプの粘着剤、エマルションタイプの粘着剤、ホットメルトタイプの粘着剤により形成されることができる。これらのうち、所望する成分の粘着剤を容易に製造することができ、粘着部の厚さを容易に調整することができることから溶剤タイプの粘着剤が特に好ましい。
【0054】
上記溶剤タイプの粘着剤は、有機溶剤に溶融させて製造される。上記有機溶剤として、例えば、トルエンや酢酸エチルが用いられる。上記アクリル系粘着剤の場合は、上記モノマーをトルエンや酢酸エチルの有機溶剤に溶融させて、重合開始剤によって重合させることにより溶剤タイプのアクリル系粘着剤を製造することができる。これにより、既述のアクリル系粘着剤の利点を有しつつ、所望する成分の粘着剤を容易に製造することができ、粘着剤部の厚さを容易に調整することができる。
【0055】
また、上記粘着部は、熱硬化性成分を含有する粘着剤であることが好ましい。熱硬化性成分を含有する粘着剤として、特に限定されないが、熱硬化性ゴム系粘着剤、熱硬化性シリコーン系粘着剤、熱硬化性アクリル系粘着剤等を用いることができる。これらの粘着剤には、熱硬化性成分として、特に限定されないが、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂等が配合されることができる。また、熱硬化性アクリル系粘着剤としては、特開平10−292163号公報に示される熱硬化型感圧性接着剤、具体的には、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマーにエポキシ系架橋剤等を付与して架橋処理したもの等も使用される。
【0056】
さらに、上記粘着剤は、再剥離性を有する粘着剤であることが好ましい。再剥離性を有する粘着剤として、特に限定されないが、例えば架橋剤及び界面活性剤が添加されている粘着剤を用いることができる。また、特開2004−250608号公報に示される再剥離性粘着剤、具体的には、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体等の樹脂にセルロースアセテート等のセルロースが含有される粘着剤等も使用される。
【0057】
粘着部は、上記粘着剤を基材層3の裏面に転写することにより形成されることができる。この転写には、粘着剤が付着した転写シートが用いられることができる。これにより、容易かつ安定的に粘着部を形成することができる。
【0058】
粘着部の厚さは、特に限定されるものではないが、粘着部の平均厚さとしては20μm以上が好ましく、25μm以上がより好ましく、30μm以下がさらに好ましい。粘着部の平均厚さが上記下限未満であると、粘着力が不十分となるおそれがある。一方、上記粘着部の平均厚さは、70μm以下であることが好ましく、50μmであることがより好ましく、40μm以下であることがさらに好ましい。上記粘着部の平均厚さが上記上限を超えると、却って粘着力が低下するおそれがある。
【0059】
なお、粘着部は、基材層3の裏面全面に亘って配設された粘着層から構成されていることが好ましいが、裏面に部分的に配設することも可能である。具体的には、粘着部を基材層の裏面の四隅付近にのみ設けることも可能である。
【0060】
当該チョークボード1は、使用前において上記粘着部を被覆する剥離紙6を有している。
【0061】
当該チョークボード1の大きさ及び形状は特に限定されるものではないが、幅(設置状態での高さ)が1m以上で長さ(設置状態での幅)が3m以上の方形状であることが好ましい。これにより、学校等に設置される黒板などに当該チョークボード1を用いることができる。なお、上記幅としては1.1m以上がより好ましい。一方、上記幅としては1.8m以下が好ましく、1.3m以下がより好ましい。さらに、上記長さとしては3.5m以上がより好ましい。一方、上記長さとしては、5.5m以下が好ましく、4m以下がより好ましい。
【0062】
当該チョークボード1の厚みは特に限定されないが、当該チョークボード1の平均厚みとしては、40μm以上が好ましく、100μm以上がより好ましく、200μm以上がさらに好ましい。上記平均厚みが上記下限未満であると、当該チョークボード1の取扱いが却って悪くなるおそれがある。一方、当該チョークボード1の平均厚みとしては、1.5mm以下が好ましく、300μm以下がより好ましく、250μm以下がさらに好ましい。上記平均厚みが上記上限を超えると、当該チョークボード1が十分な可撓性を奏しないおそれが生ずる。
【0063】
当該チョークボード1の剛軟度は特に限定されるものではないが、この剛柔度としては50mm以上が好ましく、80mm以上がより好ましく、100mm以上がさらに好ましい。上記剛軟度が上記下限未満であると、当該チョークボード1の取扱いが却って悪くなるおそれがある。一方、当該チョークボード1の剛軟度としては、250mm以下が好ましく、200mm以下がより好ましく、15mm以下がさらに好ましい。上記剛軟度が上記上限を超えると、当該チョークボード1をロール状に巻回することができなくなるおそれがある。
【0064】
[当該チョークボードの製造方法]
次に、当該チョークボード1の製造方法を説明する。
【0065】
この製造方法は、
(1)上記基材層3を構成する基材フィルムを形成する工程、
(2)上記表面層2を構成するフッ素樹脂製フィルムを形成する工程、
(3)上記基材フィルムとフッ素樹脂製フィルムとを積層接着する工程、及び
(4)上記貼着手段5を設ける工程
を備えている。
【0066】
上記基材フィルム及びフッ素樹脂製フィルムを形成する工程において、各フィルムを形成する方法(成形方法)は、特に限定されず、例えば押出し法、キャスト成形法、Tダイ法、切削法、インフレーション法等の公知の方法を採用することができる。
【0067】
上記積層接着工程は、基材フィルムとフッ素樹脂製フィルムを接着剤(接着剤層4)を介して積層接着する工程である。この積層接着する方法は、特に限定されず、例えば溶融押出樹脂を用いた押出ラミネート法を採用することが可能である。
【0068】
上記貼着手段5を設ける方法も特に限定されず、例えば粘着部の形成材料である粘着剤を転写シートに付着させ、この転写シートにより粘着剤を基材層3の裏面に転写させる方法を採用することが可能である。具体的には、転写シートの粘着剤が付着された面を基材層3の裏面に当接し、その後、基材層3に粘着剤が残存するよう転写シートを剥離することで、粘着部を形成することができる。また、粘着剤の塗工液を基材層3の裏面に塗工することによって行うことも可能であり、例えば粘着部を溶剤タイプの粘着剤により形成する場合は、塗工液を塗布し、熱風乾燥等により所定温度で加熱し粘着剤塗膜中の溶剤を除去して粘着部を形成することができる。なお、上述のように貼着手段5を形成した後に、この貼着手段5の裏面に剥離紙6を被覆する。
【0069】
[当該チョークボードの使用方法]
上記構成からなる当該チョークボード1は、ロール状に巻回されて運搬される。そして、使用場所まで運搬された後に、剥離紙6を剥離し、他の部材の被着面に貼着手段5によって当該チョークボード1は貼着される。ここで、貼着対象である他の部材の被着面としては、例えば建物に設置されている黒板の表面とすることも可能である。また、屋外の被着面に当該チョークボード1を貼着することも可能である。
【0070】
上述のように当該チョークボード1が貼着された後、表面層2の表面にチョークを用いて筆記することができる。そして、筆記後に黒板消し等によって文字等を消去することができる。なお、黒板消しで完全に消去できない場合には、通常の黒板と同様に水拭きを行うことで完全に消去することが可能である。また、当該チョークボード1は、チョークを用いずに鉛筆(例えば2B程度の鉛筆)でも筆記することが可能であり、筆記した文字等を消しゴムで消去することも可能である。
【0071】
当該チョークボード1の使用を終了する場合には、当該チョークボード1を被着面から剥がすことができる。なお、使用を終了する場合として、当該チョークボード1の表面が劣化した場合であってもよく、この場合には新しい別の当該チョークボード1に交換することも可能である。
【0072】
[利点]
当該チョークボード1は、最表面にフッ素樹脂製の表面層2が配設されているので、上述のように表面にチョークにより筆記しても容易かつ確実に消去することができる。特に、表面層2の表面の算術平均粗さ(Ra)が所定範囲内とすることで、チョークによって容易かつ確実に筆記でき、また筆記後に容易かつ確実に消去することができる。
【0073】
さらに、表面層2中に顔料を含有することで、表面層2における外光の反射を抑制することができる。このように表面層2の表面で外光が反射し難いため、外光の反射によって筆記された文字等の視認を阻害することを的確に防止することができる。
【0074】
また、当該チョークボード1は、最表面にフッ素樹脂製の表面層2が配設されているので、耐候性にも優れる。さらに、表面層2中に紫外線防止剤を含有することで、基材層3に紫外線が到達することを防ぎ、基材層3の劣化を防止することができる。特に、表面層2の主成分のフッ素系樹脂としてテトラフルオロエチレンとエチレン又はプロピレンとのコポリマーとすることで、耐候性がさらに向上する。このため、当該チョークボード1は屋内に限られず屋外で使用することも可能である。
【0075】
しかも、当該チョークボード1は、表面層2と基材層3とを接着する接着剤層4を備えているので、当該チョークボード1は耐衝撃性、耐久性、堅牢性等が高い。
【0076】
また、当該チョークボード1は可撓性を有するシートから構成されているので、例えばロール状に巻回する等によって持ち運びが可能であり、取扱性に優れる。また、このように取扱性に優れるため、仮に設置されていた当該チョークボード1の表面が劣化した場合にはそのチョークボード1を離脱し、新たな当該チョークボード1を容易に設置することができ、交換作業を簡便に行うことができる。
【0077】
さらに、当該チョークボード1は、他の部材の被着面に剥離可能に貼着できる貼着手段5を備えるので、この他の部材に貼着手段5によって被着面に貼着することで当該チョークボード1を取付けることができ、このため当該チョークボード1を種々の場所で使用することが可能となる。
【0078】
<その他の実施形態>
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の意図する範囲内において適宜設計変更可能である。
【0079】
つまり、上記実施形態では貼着手段5を有するものについて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。また、貼着手段5を設ける場合にあっても、上記粘着部に限定されるものではなく、例えば貼着手段5として磁石を用いることも可能である。なお、磁石を採用する場合にあっては、基材層3の裏面に積層接着される可撓性を有する磁石シートから上記貼着手段5を構成することが好ましい。
【0080】
また、上記実施形態では基材層3と表面層2とを接着剤層4を介して積層接着するものについて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば基材層3と表面層2とを共押し出しにより積層形成することも可能である。
【0081】
さらに、上記実施形態においては基材層3の色については特に言及しなかったが、基材層3が透明であっても良く、また着色されているものであっても良い。なお、着色する場合には基材層3中に顔料を含有する方法であっても、また基材層3に塗工することで着色層を設ける方法も採用可能である。
【0082】
また、上記実施形態では表面層2が顔料を有するものについて説明したが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば表面層2が透明に設けられたものも本発明の意図する範囲内である。しかしながら、表面層2の表面での外光の反射が抑制されるため、上記実施形態のように表面層2が着色されていることが好ましい。