特許第6163321号(P6163321)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6163321
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】冷却装置
(51)【国際特許分類】
   F25D 19/00 20060101AFI20170703BHJP
   F25D 29/00 20060101ALI20170703BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
   F25D19/00 560Z
   F25D19/00 510Z
   F25D29/00 Z
   F25B1/00 396E
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-37625(P2013-37625)
(22)【出願日】2013年2月27日
(65)【公開番号】特開2014-163643(P2014-163643A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2016年1月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076048
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜幾
(74)【代理人】
【識別番号】100141645
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 健司
(72)【発明者】
【氏名】関 和芳
(72)【発明者】
【氏名】山口 弘城
【審査官】 ▲高▼藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−178362(JP,A)
【文献】 特開2013−024490(JP,A)
【文献】 特開2005−300132(JP,A)
【文献】 特開平08−200944(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0101843(US,A1)
【文献】 特開2004−278851(JP,A)
【文献】 特開平07−158985(JP,A)
【文献】 特開2009−186102(JP,A)
【文献】 特開2010−216747(JP,A)
【文献】 特開2008−180466(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 19/00
F25B 1/00
F25D 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲を区画された機械室(12)に配設した圧縮機(14)および凝縮器(16)と、前記機械室(12)に隣接する冷却室(18)に配設した冷却器(20)とからなる冷凍系(22)を有し、前記機械室(12)に前記冷凍系(22)を電気制御する電装箱(24)配設されると共に、前記冷凍系(22)に空気より比重の大きい可燃性冷媒を循環させるようにした冷却装置(10)において、
前記電装箱(24)前記機械室(12)の底面(12a)より高い位置に配設されて、該電装箱(24)の裏面(24a)と前記底面(12a)との間に空気流通路(26)確保されていると共に、
前記電装箱(24)に内蔵した電気制御機器(32)への電気系統に介挿される有接点型ヒューズ(34)が、前記電装箱(24)の頂部(24b)に配設されている
ことを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
前記機械室(12)を区画する側壁部(28)の下方に、前記空気流通路(26)と連通して室外に開口する排気口(30)開設され、前記冷凍系(22)から漏出した前記可燃性冷媒を前記排気口(30)を介して室外へ排出させる請求項1記載の冷却装置。
【請求項3】
前記排気口(30)は、前記機械室(12)の側壁部(28)において少なくとも前記電装箱(24)の頂部より高い位置にまで到るよう横方向または上下方向に複数開設される請求項1または2記載の冷却装置。
【請求項4】
前記電装箱(24)の裏面(24a)には、前記電気制御機器(32)に接続する各種配線(36)の引込口(38)が形成され、前記引込口(38)の開口縁は前記各種配線(36)との間に隙間を有して、前記電装箱(24)へ侵入した前記可燃性冷媒を前記引込口(38)から排出させる請求項1〜3の何れか一項に記載の冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械室に冷凍系と該冷凍系を制御する電装箱とが併設され、前記冷凍系に可燃性のガス冷媒を使用する冷却装置において、該冷凍系から可燃性ガス冷媒(以下「可燃性冷媒」という)が仮に漏出しても、前記電装箱で発生し得る電気火花(スパーク)により引火することのない引火防止構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、図5において、冷蔵庫や製氷機等の冷却装置10は、筐体の内部が機械室12および冷却室18に上下の関係で区画され、前記機械室12に配置した圧縮機14、凝縮器16、膨張弁42等を管路で接続した冷凍系22が、前記冷却室18に配置した冷却器20を冷却するよう構成されている。前記冷凍系22には、プロパンやブタン等の空気より比重が大きい可燃性冷媒が採用されている。また、機械室12には、前記冷凍系22の電気制御を行う電装箱24が配設され、該電装箱24の内部に各種の電気制御機器が設けられている。
【0003】
前記可燃性冷媒は、冷凍系22に厳重に密封されているが、仮に何等かの原因で冷凍系22から漏出すると、空気より比重が大きいために機械室12の底部付近に滞留してしまう。通常は、凝縮器16の冷却ファン44が回転しているので室外へ強制排気されるが、例えば故障で該ファン44が停止している場合には、電装箱24でスパークが発生すると滞留した可燃性冷媒に引火することがある。すなわち、前記冷凍系22では、圧縮機14、凝縮器16や各部材を接続する管路から、滅多にないことではあるが、可燃性冷媒が漏出することがあり得る。電装箱24には、例えばヒューズやリレーのような有接点型の電気制御機器が収容されている。このため、漏れた可燃性冷媒が電装箱24に侵入した状態でスパークが生ずると、該可燃性冷媒に引火して不測の事態を招くことがある。
これに対する安全策として、電装箱に無接点型の電気制御機器を使用したり(特許文献1)、凝縮器の冷却ファンにより機械室内に漏れた可燃性冷媒を室外へ強制排出させたり(特許文献2)、機械室の底部に排気口を形成して、空気より重い可燃性冷媒を室外へ自然に重力落下させて排出させる(特許文献3)、等の提案がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−137641号公報
【特許文献2】特開2007−233909号公報
【特許文献3】特許第4876635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示の安全対策では、無接点型リレー等の電気素子は有接点型の素子に対し割高なため、コストが嵩んでしまう問題がある。また、特許文献2に開示の安全対策では、例えば冷却装置を工場から出荷して搬送する時や、冷却ファンが故障した時、その他停電時等には、該冷却ファンが作動していないから可燃性冷媒を室外へ強制排出できない問題がある。更に、特許文献3に開示の安全対策では、機械室の下方に冷却室や貯氷庫等が設けられる型式の冷却装置では、該機械室の底部に排気口を設けることができない問題がある。また電装箱の内部でスパークが飛んでも安全が確保されるように、電装箱自体を完全密閉して防爆構造とする提案もあるが、収納機器の内部発熱を押さえるために放熱孔は必要である。放熱孔を設けない場合は、密閉式でも充分に放熱がなされる対策を講ずる必要があり、コストが嵩む難点がある。
【0006】
そこで本発明では、冷凍系から機械室内に漏れた可燃性冷媒を、低コストで確実に機械室の外へ排出させ得るようにして、可燃性冷媒の引火の恐れを解消した冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決し、所期の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、周囲を区画された機械室に配設した圧縮機および凝縮器と、前記機械室に隣接する冷却室に配設した冷却器とからなる冷凍系を有し、前記機械室に前記冷凍系を電気制御する電装箱配設されると共に、前記冷凍系に空気より比重の大きい可燃性冷媒を循環させるようにした冷却装置において、
前記電装箱前記機械室の底面より高い位置に配設されて、該電装箱の裏面と前記底面との間に空気流通路確保されていると共に、
前記電装箱に内蔵した電気制御機器への電気系統に介挿される有接点型ヒューズが、前記電装箱の頂部に配設されていることを要旨とする。
請求項1に係る発明によれば、冷凍系から可燃性冷媒が漏出して機械室の底部に層状に滞留しても、スパークを生ずる可能性のある電装箱は可燃性冷媒の停滞域より上方に位置しているので、仮にスパークが発生しても可燃性冷媒に引火することがない。
また、スパークを発生する可能性のある有接点型のヒューズが電装箱の頂部、すなわち一番高い部位にあるので、冷凍系から漏出した可燃性冷媒が前記ヒューズと接触することがなく、引火の危険を完全に防止出来る。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記機械室を区画する側壁部の下方に、前記空気流通路と連通して室外に開口する排気口開設され、前記冷凍系から漏出した前記可燃性冷媒を前記排気口を介して室外へ排出させることを要旨とする。
請求項2に係る発明によれば、冷凍系から仮に可燃性冷媒が漏出して機械室の底部に滞留しても、空気流通路に連通する排気口から室外へ排出されるので安全が確保される。
【0009】
請求項3に記載の発明は、前記排気口は、前記機械室の側壁部において少なくとも前記電装箱の頂部より高い位置にまで到るよう横方向または上下方向に複数開設されることを要旨とする。
請求項3に係る発明によれば、排気口は電装箱の裏面と機械室の底部との間の空気流通路に対応して開口するだけでなく、電装箱の頂部より高い位置にまで開口しているので、可燃性冷媒は漏出して直ぐに室外へ排出される。
【0011】
請求項に記載の発明は、前記電装箱の裏面には、前記電気制御機器に接続する各種配線の引込口が形成され、前記引込口の開口縁は前記各種配線との間に隙間を有して、前記電装箱へ侵入した前記可燃性冷媒を前記引込口から排出させることを要旨とする。
請求項に係る発明によれば、冷凍系から漏出した可燃性冷媒が放熱孔を介して電装箱へ侵入したとしても、可燃性冷媒の比重は空気より大きいから、該電装箱の底部裏面に開設した引込口の隙間から重力で電装箱外へ速やかに排出させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、機械室に配設される電装箱が該機械室の底面より高い位置に存在するため、冷凍系から仮に可燃性冷媒が漏出して機械室底面に滞留しても、スパーク発生源となる電装箱と空間的に隔離されているため引火の可能性を払拭し得る有益な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】大型冷蔵庫の右側面図であって、筐体上部の機械室を一部破断して示している。
図2図1のII−II線断面で示す筐体上部の正面縦断面図である。
図3】冷蔵庫における筐体上部の機械室の内部を示す平断面図である。
図4】支持台に載置した電装箱の側面図である。
図5】従来技術に係る冷却装置を一部破断して示す右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る冷却装置の好適な実施形態を、以下に説明する。なお、冷却装置の基本構成については、図5を参照して説明したので、同一または類似の部材については、図5に使用した符号と同じ符号で示すものとする。また、本発明が適用される冷却装置としては、冷蔵庫、全自動製氷機、冷凍ショーケースがあるが、その他に冷却機構と温熱機構とを併存させた冷温庫であってもよい。図示の実施例では、冷却装置として業務用の大型冷蔵庫を採用した場合を説明する。
【0015】
図1は、大型冷蔵庫10の右側面図であって、筐体上部の機械室12を一部破断して示している。図2は、図1のII−II線断面で示す筐体上部の正面縦断面図である。また図3は、冷蔵庫10における筐体上部の機械室12の内部を示す平断面図である。
【0016】
図1および図2に示す如く、冷蔵庫10の筐体40は、上部に画成される機械室12と、該機械室12の下部に画成される冷却室18とに分かたれている。前記冷却室18は、野菜等の貯蔵室として機能し、内部上方に前記冷凍系22の一部をなす冷却器20が配設されている。筐体上部の機械室12には、圧縮機14、凝縮器16、膨張弁42等が管路で接続され、更に筐体下部の冷却室18に配置した冷却器20に接続されて、前記冷凍系22を構成している。なお、前記凝縮器16の背後に冷却ファン44が設けられ、機械室12における凝縮器寄りの側壁部46に開設したルーバー等の開口部48から外部空気を吸い込んで、該凝縮器16や圧縮機14を冷却し、熱交換後の廃熱は前記ルーバー開口部48と反対側の機械室側壁部28に開設した排気口30から室外へ排出される。この排気口30については、更に後述する。
【0017】
機械室12の内部には、前記電装箱24が配設される。この電装箱24は、図4に示すように、内部に前記冷凍系22を電気的に制御する電気制御機器32が配設されると共に、箱体側面には複数の放熱孔(図示せず)が開設されて、それ自体は在来の構造を有している。
【0018】
この実施例で前記機械室12に配設される電装箱24は、図2に示すように、該機械室12の底面12aから所要の高さだけ嵩上げした部位に設けられている。すなわち機械室12の底面12aには、所要高さの支持台50が設けられ、この支持台50の上に前記電装箱24が載置支持されるようになっている。このように所要高さの支持台50を使用する理由は、前記冷凍系22から仮に可燃性冷媒が漏出して機械室12の底面12aに滞留したとしても、スパークを発生する可能性がある電気制御機器32を内蔵した電装箱24は、可燃性冷媒の滞留域よりも上方に位置するから、スパークが生じても引火の恐れがない、ということにある。従って前記支持台50(換言すれば電装箱24の裏面24a)と機械室12の底面12aとの高さは、冷凍系22から漏出した可燃性冷媒が前記底面12aに貯まる停滞域の高さよりも大きければ良い。
【0019】
更に本実施例では、図2に示すように、電装箱24の下部(支持台50)と機械室12の底面12aとの間に空気流通路26が画成され、この空気流通路26に連通して可燃性冷媒を室外へ排出させ得る前記排気口30が、前記機械室12の側壁部28に開設してある。これにより、仮に冷凍系22から可燃性冷媒が漏出しても、電装箱24と機械室12の底面12aとの間の空気流通路26に連通する前記排気口30により、該可燃性冷媒は前記冷却ファン44の送風に伴い速やかに室外へ排出される。また、仮に冷却ファン44が停止している状態であっても、前記排気口30の存在により、可燃性冷媒は機械室12の内部に高い密度で停滞することがない。
【0020】
前記側壁部28に開設される排気口30は、前述した電装箱24の下部(支持台50)と機械室12の底面12aとの間の空気流通路26に対応する部位だけでなく、図1および図2に示すように、電装箱24の上面高さを超える領域に亘って、横方向や上下方向に延在する複数のスリット状開口として形成するのが望ましい。この場合は、図3に示すように、電装箱24と機械室12の側壁部28との間に所要の間隙を設けておくのが、機械室12の空気循環を促進する見地からより好ましい。
【0021】
ところで電装箱24は、電気保安基準の見地から、過電流時に溶断して回路を遮断するヒューズの設置が義務付けられている。このヒューズは、溶断したり劣化したりした場合は交換を要するが、ヒューズホルダの充電部に着脱可能に嵌着されるので、無接点リレーのような充電部を密閉した防爆構造の採用は困難である。このため、電装箱24に内蔵される電気制御機器32における素子の無接点化を図ってスパーク発生を防止したとしても、ヒューズだけは無接点化されず充電部が露出したままになる。従って、時として前記ヒューズの部分で電気的な短絡によりスパークを生じ、これが漏出した可燃性冷媒の引火源になることがある。
【0022】
そこで本実施例では、ヒューズの無接点化を図るのではなく、図2および図4に示すように、在来のヒューズ34を電装箱24の頂部に配設することで、可燃性冷媒への引火の恐れを解消した。すなわち電装箱24に内蔵される電気制御機器32に接続する電気系統に介挿されるヒューズホルダ52を該電装箱24の頂部に配設し、該ヒューズホルダ52にヒューズ34を着脱自在に嵌装させるようにしたものである。このように充電部が露出したヒューズ34は電装箱24の頂部に配設されるため、仮に冷凍系22から可燃性冷媒が漏出して機械室12内で該電装箱24の下部に滞留しても、スパーク発生源となるヒューズ34とは充分の距離が確保されるので安全性が向上する。しかも、定期点検時等の作業者による視認性が高まるので、サービス性も向上する。
【0023】
また、電装箱24は、前述したように、放熱用に箱側壁に多数の放熱孔が開設される。従って冷凍系22から漏出した可燃性冷媒は、前記放熱孔(図示せず)を介して電装箱24の内部へ侵入する可能性がある。そこで電装箱24の底部に引込口38を開設し、この引込口38から配線36を引き込むと共に、該引込口38の直径を充分の大きさに設定しておくことで、仮に電装箱24の内部へ可燃性冷媒が侵入しても、この可燃性冷媒は自重により前記引込口38から電装箱24の外部へ排出されることになる。
【0024】
電装箱24に内蔵される電気制御機器32には、シーケンサ等の制御基板や制御リレー等があるが、制御対象がインバータ式モータの場合はインバータ素子が含まれる。このインバータ素子は、高速でスイッチをオン・オフ動作させるスイッチング素子であるため高温になるので、電装箱24の放熱を促進する必要がある。そこで図2および図4に示すように、電装箱24の上面および側面に遮蔽板54を密着的に配設することで良好な放熱が促進される。
【0025】
また図2において、冷蔵庫の設置環境によっては、機械室12の内部天井に結露を生ずることがある。この結露が進行すると水滴となって機械室12に滴下するが、電装箱24は湿気を嫌うので、落下する水滴から防御する必要がある。このような場合に、前記遮蔽板54を、図2および図4に示すように、電装箱24の上方で斜めに傾斜させておけば、機械室12の天井からの水滴は遮蔽板54に落下し、斜めに流れて電装箱24の側方へ滴下するので好適である。
【符号の説明】
【0026】
10 冷却装置,12 機械室,12a 底面,14 圧縮機,16 凝縮器,
18 冷却室,20 冷却器,22 冷凍系,24 電装箱,24a 裏面,
24b 頂部,26 空気流通路,28 側壁部,30 排気口,32 電気制御機器
34 ヒューズ,36 配線,38 引込口
図1
図2
図3
図4
図5