(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記カーボンブラシの摺動面が回転する前記コンミテータの外周面と摺動する際に、前記カーボンブラシが前記コンミテータの回転方向に傾くようになっていることを特徴とする請求項1に記載のカーボンブラシの接点構造。
【背景技術】
【0002】
ブラシ付電動モータでは、正方向または逆方向に回転するコンミテータ(整流子)の外周面にカーボンブラシの摺動面を接触させることで整流を行っている。このとき、コンミテータが回転しながらカーボンブラシとの接触が解除される(離間する)瞬間に、その離間部分に急激な電圧変化が起こり、火花が発生する。カーボンブラシの摺動面には、この火花によって、カーボンブラシが炭化したもの(所謂、ブラックバー)が付着する。
【0003】
このブラックバーの発生位置について、
図14および
図15を用いて説明する。カーボンブラシ530は、
図14に示すように、その両側部をブラシホルダー518によって挟まれるようにして支持されている。このブラシホルダー518とカーボンブラシ530との間には、取付時のクリアランスが存在する。そのため、コンミテータ516が正回転方向R1(右回転方向)に回転すると、カーボンブラシ530は、このクリアランスの分だけ回転方向(
図14の紙面右側)に傾くようになる。
【0004】
このようにカーボンブラシ530が傾くと、コンミテータ516の外周面516Aは、カーボンブラシ530の摺動面530A全体の左側半分で接触し、右側半分では接触しないようになる。そのため、摺動面530Aは、回転するコンミテータ516とその中央部536付近で接触が解除され、この中央部536付近で火花が発生し、ブラックバー535が付着する。
【0005】
また、コンミテータ516の回転によって摺動面530Aが摩耗すると、接触が解除される位置が遅角側(
図14の紙面右側)にずれてゆく。そのため、ブラックバー535は、
図14に示すように、最終的に中央部536付近から紙面右側の摺動面530Aに沿って延びるように付着する(付着する領域が増加する)ようになる。
【0006】
また、コンミテータ516が逆回転方向R2(左回転方向)に回転する場合には、正回転の場合とは逆に、カーボンブラシ530が左側に傾き、摺動面530Aは主に右半分でしか接触しなくなり、ブラックバー535は、中央部536から左側の摺動面530Aに沿って延びるように付着するようになる。すなわち、正逆回転する両方向モータでは、
図15に示すように、中央部536を挟んで左右両側に、正回転および逆回転で発生するブラックバーの合計の幅Lだけ帯状に付着するようになる。
【0007】
一方、従来技術としては、コンミテータの回転方向に沿ってカーボンブラシを3層に構成し、中央の層を低抵抗部にし、この低抵抗部を挟む両側の層を高抵抗部にすることで、整流時の火花を小さく抑えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、四つの角部を対角線で稜線で繋ぐようにして摺動面を形成し、摩耗に伴って稜線による摺動面が拡大していくようにすることで、摺動性を向上させる技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係るカーボンブラシの接点構造1について、図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るカーボンブラシの接点構造1が用いられているブラシ付電動モータ10を側面から見た断面図、
図2は
図1のA−A断面図である。また、
図3は、ブラシホルダーステー17にカーボンブラシ30を組み付けた状態を示す斜視図である。
【0023】
本発明のカーボンブラシの接点構造1が用いられているブラシ付電動モータ10は、
図1に示すように、その外部を円筒状のモータケーシング12によって覆われており、その内部に、シャフト13が回動可能に軸支されている。シャフト13は、マグネット15の磁界の中でコア14内の巻線に電流を流すことによって回転する。また、シャフト13の出力側(
図1の紙面左側)には、整流用の円筒形状のコンミテータ16が取り付けられている。
【0024】
また、モータケーシング12の出力側には、ブラシホルダーステー17が取り付けられている。このブラシホルダーステー17には、上述したコンミテータ16を挟んで2つのブラシホルダー18が形成されており、このブラシホルダー18内には、カーボンブラシ30がそれぞれ組み付けられている。
【0025】
このカーボンブラシ30は、
図2および
図3に示すように、コンミテータ16に向かってブラシホルダー18から突出しており、この突出した先端面には、コンミテータ16の外周面16Aと摺動するための円弧状の摺動面30Aが形成されている。また、カーボンブラシ30の摺動面30Aと反対側の裏面30Bは、
図2に示すように、トーションばね(ばね部材19)によってコンミテータ16に向けて付勢されており、これにより、カーボンブラシ30がコンミテータ16と常に接触・摺動するようになっている。
【0026】
図4は、
図2のB部を簡略して示す拡大断面図である。また、
図5(A)はカーボンブラシ30の正面図、
図5(B)は(A)の右側面図、
図5(C)は(B)の平面図、
図6は、カーボンブラシ30を摺動面30A側から見た斜視図である。
なお、以下の説明で使用する前後、左右、上下、手前側、奥側の方向は、
図5(A)を基準にした方向とする。これらの方向は、コンミテータ16の回転軸の延在方向は上下方向となり、コンミテータ16の回転方向は、左右方向になる。
【0027】
カーボンブラシ30は、
図4〜
図6に示すように、略直方体形状に形成されており、ブラシホルダー18から突出する先端側に摺動面30Aが形成されている。また、カーボンブラシ30の裏面30B側には、カーボンブラシに給電するためのピッグテール31が接続されている。
【0028】
カーボンブラシ30の摺動面30Aは、接触するコンミテータ16の外周面16Aの形状に合わせて、円弧状に形成されている。また、摺動面30Aは、
図5(A)および
図6に示すように、摺動面30Aを正面から見て、上下左右の各中央で分割して4つの領域に区分けされている。より詳細には、右上部分および左下部分に溝部32が形成されており、左上部分に摺動面30AL、右下部分に摺動面30ARが形成されている。これらの摺動面30AL、30ARはほぼ等しい摺動面積を有し、これらを足したものが全体の摺動面30Aとなる。
【0029】
溝部32は、摺動面30Aよりも奥側に凹んだ形状になっている。これにより、溝部32では、モータの正逆回転時においてコンミテータ16の外周面16Aと常に接触しないようになる。また、溝部32は、2つの摺動面30AL、30ARが上下方向で完全に分離されるように形成されている。
【0030】
次に、本発明の第1実施形態に係るカーボンブラシの接点構造1の作用について説明する。
(正回転時)
図7(A)は、コンミテータ16が正回転方向R1に回転するときに、右側の摺動面30ARに付着するブラックバー35Rを示した概要図である。なお、
図7では、カーボンブラシ30を右側の摺動面30ARの位置で切断した断面で示している。また、
図7(B)は、
図7(A)の状態から、コンミテータ16を逆回転方向R2に回転させた状態を示す概要図である。なお、
図7(B)では、カーボンブラシ30を左側の摺動面30ALの位置で切断した断面で示している。
【0031】
コンミテータ16の正回転時には、従来技術でも記載したように、カーボンブラシ30は、コンミテータ16とカーボンブラシ30との摩擦によって、ブラシホルダー18の左右方向のクリアランスの分だけ回転方向(紙面右側)に傾く。このとき、右側の摺動面30ARは、コンミテータ16の外周面16Aとほぼ全面で接触し、左側の摺動面30ALは接触しないようになる。この状態では、摺動面30ARは、回転するコンミテータ16の外周面16Aとその中央部36(
図7(A)で示す摺動面30ARの角部)付近で接触が解除され、この中央部36付近で火花が発生し、ブラックバー35Rが付着する。
【0032】
また、コンミテータ16の回転によって摺動面30ARが摩耗したとしても、溝部32が存在していることによって、摺動面30ARとコンミテータ16の外周面16Aとの接触が解除される位置は中央部36付近のままであり、ブラックバー35Rは、この中央部36にしか付着しない。そのため、ブラックバー35Rの付着する領域が増加することがない。
【0033】
一方、上述したブラックバー35Rは、
図7(B)に示すように、コンミテータ16が逆回転方向R2に回転したとしても、左側の摺動面30ALに影響を及ぼすことはなく、左側の摺動面30ALは、コンミテータ16の外周面16Aとほぼ全面で接触することになる。また、逆回転時には、コンミテータ16の外周面16Aは、右側の摺動面30ARとは接触しないため、ブラックバー35Rの上を摺動することもない。
【0034】
(逆回転時)
図8(A)は、コンミテータ16が逆回転方向R2に回転するときに、左側の摺動面30ALに付着するブラックバー35Lを示した概要図である。なお、
図7では、カーボンブラシ30を左側の摺動面30ALの位置で切断した断面で示している。また、
図8(B)は、
図8(A)の状態から、コンミテータ16を逆回転方向R2に回転させた状態を示す概要図である。なお、
図8(B)では、カーボンブラシ30を右側の摺動面30ARの位置で切断した断面で示している。
【0035】
コンミテータ16の逆回転時には、正回転時とは逆に、カーボンブラシ30が回転方向(紙面左側)に傾き、左側の摺動面30ALは、コンミテータ16の外周面16Aとほぼ全面で接触している。そして、摺動面30ALは、回転するコンミテータ16の外周面16Aとその中央部36付近で接触が解除され、この中央部36付近で火花が発生し、ブラックバー35Lが付着する。
【0036】
また、コンミテータ16の回転によって摺動面30ALが摩耗したとしても、溝部32が存在していることによって、摺動面30ALとコンミテータ16の外周面16Aとの接触が解除される位置は中央部36のままであり、ブラックバー35Lは、この中央部36にしか付着しない。そのため、ブラックバー35Lの付着する領域が増加することがない。
【0037】
一方、上述したブラックバー35Lは、
図8(B)に示すように、コンミテータ16が逆回転方向R2に回転したとしても、右側の摺動面30ARは、コンミテータ16の外周面16Aとほぼ全面で接触することになる。また、逆回転時には、コンミテータ16の外周面16Aは、左側の摺動面30ALとは接触しないため、ブラックバー35Lの上を摺動することもない。
【0038】
このように、コンミテータ16の正回転および逆回転によって付着するブラックバー35L、35Rは、
図9に示すように、中央部36の付近に小さな領域だけ付着するだけである。また、摺動面30AL、30ARが摩耗したとしても、このブラックバー35L、35Rの付着する領域は増加することがない。
【0039】
本発明の第1実施形態に係るカーボンブラシの接点構造1によれば、カーボンブラシ30の摺動面30Aには、回転するコンミテータ16の外周面16Aとの接触が解除される位置よりも回転方向の前方に、摺動面30Aよりも凹んだ溝部32が形成されているので、摺動面30Aが摩耗したとしても、溝部32が存在することによって、接触が解除される位置がずれることがない。そのため、ブラックバー35は常に一定の位置で付着することになり、ブラックバー35が付着する領域を増加させることがない。その結果、整流状態が安定するため、雑防素子を使わなくても電波ノイズを低減させることができる。また、座乗性が改善されることによって、カーボンブラシとコンミテータの部品寿命を延長することができる。
【0040】
また、摺動面30Aを正面から見て、コンミテータ16が正回転方向R1に回転するときの摺動面30ARと、逆回転方向R2に回転するときの摺動面30ALとを、コンミテータ16の回転軸の延在方向(上下方向)に分離しているので、このカーボンブラシの接点構造1を正逆回転するブラシ付電動モータに使用することができる。
【0041】
さらに、摺動面30Aを正面から見て、コンミテータ16が正回転方向R1に回転するときの摺動面30ARと、逆回転方向R2に回転するときの摺動面30ALとを、コンミテータ16の回転方向(左右方向)に分離しているので、正回転時に付着するブラックバー35Rが逆回転時に影響を及ぼさないようにすることができる。同様に、逆回転時に付着するブラックバー35Lが正回転時に影響を及ぼさないようにすることができる。
【0042】
さらに、摺動面30Aを正面から見て、摺動面30Aをコンミテータ16の回転軸の延在方向(上下方向)および回転方向(左右方向)の各中央で分割して4つの領域に区分けし、摺動面30AL、30ARおよび溝部32が対角に配置されているので、このカーボンブラシの接点構造1を正逆回転するブラシ付電動モータに使用することができると共に、正回転時に付着するブラックバー35Rが逆回転時に影響を及ぼさないようにすることができる。同様に、逆回転時に付着するブラックバー35Lが正回転時に影響を及ぼさないようにすることができる。
【0043】
また、カーボンブラシ30の摺動面30Aが回転するコンミテータ16の外周面16Aと摺動する際に、カーボンブラシ30がコンミテータ16の回転方向に傾くようになっているので、回転するコンミテータ16の外周面16Aとの接触が解除される位置がカーボンブラシ30の摺動面30Aのほぼ中央の位置になる。そのため、この中央の位置でブラックバー35が付着する領域を増加させないように対策を行うことができる。
【0044】
以上、本発明の第1実施形態に係るカーボンブラシの接点構造1について述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
【0045】
例えば、
図6に示す左側の摺動面30ALを下側にして溝部32を上側に配置し、かつ、右側の摺動面30ARを上側にして溝部32を下側に配置するようにしてもよい。すなわち、コンミテータ16が回転する方向(左右方向)に対して、中央部36を中心にして摺動面30AR、30ALが分離しており、かつ、コンミテータ16の回転軸の延在方向(上下方向)に対しても摺動面30AR、30ALが分離している状態であれば、種々の配置および構成が考えられる。
【0046】
一例としては、
図10(A)に示すように、左側の摺動面40ALと右側の摺動面40ARとの上下方向の間に、左右方向に連続する凹部43を形成してもよい。このようにすることで、摺動面40AL、40AR、および溝部42とが、凹部43を挟んで上下方向に完全に分離するので、摺動面40Aの加工を容易に行うことができる。
【0047】
また、他の例としては、
図10(B)に示すように、摺動面50AL、50ARを2つ或いはそれ以上に形成し、千鳥状に配置する態様で形成することもできる。これによっても、各摺動面50AL、50ARで付着するブラックバーの領域が、溝部52が存在することによって増加することがなく、かつ、正転時(逆転時)に付着したブラックバーが、逆転時(正転時)に影響することがない。
【0048】
他方、本実施の形態では、カーボンブラシ30の裏面30Bをコンミテータ16に向けてトーションばね19で付勢しているが、トーションばね19の付勢力がコンミテータ16に向かってまっすぐに伝わらないことが懸念される。そのため、トーションばね19ではなく、コイルばねを用いてまっすぐに付勢できるようにしてもよい。この場合、裏面30Bの上下左右の中央の位置にコイルばねを配置して付勢するのが望ましい。
【0049】
さらにまた、溝部32の形状は、
図4〜
図6に示すように、角形に切り欠いた形状をしているが、他の形状であっても構わない。例えば、溝部32が奥側に向かうに従い溝部32の開口面積が小さくなるように形成することで、摺動面30AL,30ARの根元部分が太くなり、摺動面30AL、30ARの強度を高くすることもできる。また、角部を円弧状に形成することで、摺動面30AL,30ARの根元部分に応力集中が発生しないようにすることもできる。
【0050】
また、本実施の形態では、ブラシホルダー18の形状をボックス型(
図2および
図3参照)に形成することでカーボンブラシ30の左右の側面を支持し、この左右に生じるクリアランスによってカーボンブラシ30が傾くようになっているが、ブラシホルダー18の形状は、ボックス型に限定されるものではない。例えば、板ばねタイプのスプリングとカーボンブラシ30が一体になったものであり、回転するコンミテータ16とカーボンブラシ30の接触時にカーボンブラシ30が傾くようになっていてもよい。
【0051】
(第2実施形態)
以下、本発明の第2実施形態に係るカーボンブラシの接点構造101について、図面を用いて詳細に説明する。
図11は、カーボンブラシ130を摺動面130A側から見た斜視図であり、
図12は、コンミテータ16が正回転方向R1に回転するときに、右側の摺動面130ARに付着するブラックバー135Rを示した概要図である。
なお、以下の説明では、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明し、第1実施形態と同じ構造については、同じ符号を付すことでその詳細な説明は省略する。
【0052】
カーボンブラシ130は、
図11に示すように、略直方体形状に形成されており、ブラシホルダー18から突出する先端側に摺動面130Aが形成されている。カーボンブラシ30の摺動面30Aは、接触するコンミテータ16の外周面16Aの形状に合わせて、円弧状に形成されている。
【0053】
また、摺動面130Aは、
図11に示すように、摺動面130Aを正面から見て、摺動面130Aの中央部136を含めて溝部132が形成されている。この溝部132は、カーボンブラシ130の上端から下端まで連続して形成されており、左側の摺動面130ARと右側の摺動面130ALが溝部132を挟んで完全に分離する態様で形成されている。これらの摺動面130AL、130ARはほぼ等しい摺動面積を有し、これらを足したものが全体の摺動面130Aとなる。
【0054】
溝部132は、摺動面130Aよりも奥側に凹んだ形状になっている。これにより、溝部132では、モータの正逆回転時においてコンミテータ16の外周面16Aと常に接触しないようになる。また、溝部132は、2つの摺動面130AL、130ARが左右方向で完全に分離されるように形成されている。
【0055】
次に、本発明の第2実施形態に係るカーボンブラシの接点構造101の作用について説明する。
コンミテータ16の正回転時には、
図12に示すように、カーボンブラシ130は、ブラシホルダー18の左右方向のクリアランスの分だけ回転方向(紙面右側)に傾く。このとき、右側の摺動面130ARは、コンミテータ16の外周面16Aとほぼ全面で接触し、左側の摺動面130ALは接触しないようになる。この状態では、摺動面130ARは、回転するコンミテータ16の外周面16Aと内側角部137R付近で接触が解除され、この内側角部137R付近で火花が発生し、ブラックバー135Rが付着する。
【0056】
また、コンミテータ16の回転によって摺動面130ARが摩耗したとしても、溝部132が存在していることによって、摺動面130ARとコンミテータ16の外周面16Aとの接触が解除される位置は内側角部137R付近のままであり、ブラックバー135Rは、この内側角部137R付近にしか付着しない。そのため、ブラックバー135Rの付着する領域が増加することがない。
【0057】
一方、上述したブラックバー135Rは、コンミテータ16が逆回転方向R2に回転したとしても、左側の摺動面130ALに影響を及ぼすことはなく、左側の摺動面130ALは、コンミテータ16の外周面16Aとほぼ全面で接触することになる。また、逆回転時には、コンミテータ16の外周面16Aは、右側の摺動面130ARとは接触しないため、ブラックバー135Rの上を摺動することもない。
【0058】
同様に、コンミテータ16の逆回転時には、摺動面130ALの内側角部137L付近にブラックバー135Lが付着するようになる。このブラックバー135Lは、コンミテータ16の回転によって摺動面130ALが摩耗したとしても、ブラックバー135Lは、この内側角部137L付近にしか付着しない。そのため、ブラックバー135Lの付着する領域が増加することがない。
【0059】
一方、上述したブラックバー135Lは、コンミテータ16が正回転方向R1に回転したとしても、右側の摺動面130ARに影響を及ぼすことはなく、右側の摺動面130ARは、コンミテータ16の外周面16Aとほぼ全面で接触することになる。また、正回転時には、コンミテータ16の外周面16Aは、左側の摺動面130ALとは接触しないため、ブラックバー135Lの上を摺動することもない。
【0060】
このように、コンミテータ16の正回転および逆回転によって付着するブラックバー135L、135Rは、
図11に示すように、内側角部137L、137Rの付近に小さな領域だけ付着するだけである。また、摺動面130AL、130ARが摩耗したとしても、このブラックバー135L、135Rの付着する領域は増加することがない。
【0061】
本発明の第2実施形態に係るカーボンブラシの接点構造101によれば、摺動面130Aを正面から見て、コンミテータ16の回転方向(左右方向)の中央部136に、前記コンミテータの回転軸の延在方向(上下方向)に沿って延びる溝部132を形成しているので、摺動面130ARまたは130ALが摩耗したとしても、溝部132が存在することによって、接触が解除される位置がずれることがない。そのため、ブラックバー135は常に一定の位置で付着することになり、ブラックバー135が付着する領域を増加させることがない。その結果、整流状態が安定するため、雑防素子を使わなくても電波ノイズを低減させることができる。また、座乗性が改善されることによって、カーボンブラシとコンミテータの部品寿命を延長することができる。
【0062】
また、摺動面130Aを正面から見て、コンミテータ16が正回転方向R1に回転するときの摺動面130ARと、逆回転方向R2に回転するときの摺動面130ALとを、コンミテータ16の回転方向(左右方向)に分離しているので、正回転時に付着するブラックバー135Rが逆回転時に影響を及ぼさないようにすることができる。同様に、逆回転時に付着するブラックバー135Lが正回転時に影響を及ぼさないようにすることができる。
【0063】
以上、本発明の第2実施形態に係るカーボンブラシの接点構造101について述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
例えば、本実施の形態では、溝部132を角形に切り欠いた形状にしているが、他の形状であっても構わない。例えば、溝部132が奥側に向かうに従い溝部32の開口面積が小さくなるように形成することで、摺動面130AL,130ARの根元部分が太くなり、摺動面130AL、130ARの強度を高くすることもできる。また、溝部132を楕円形状にすることで、応力集中が発生しないようにすることもできる。
【0064】
(第3実施形態)
以下、本発明の第3実施形態に係るカーボンブラシの接点構造201について、図面を用いて詳細に説明する。
図13は、カーボンブラシ230を摺動面230A側から見た斜視図である。
なお、以下の説明では、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明し、第1実施形態と同じ構造については、同じ符号を付すことでその詳細な説明は省略する。
【0065】
カーボンブラシ230は、
図13に示すように、略直方体形状に形成されており、ブラシホルダー18から突出する先端側に摺動面230Aが形成されている。カーボンブラシ230の摺動面230Aは、接触するコンミテータ16の外周面16Aの形状に合わせて、円弧状に形成されている。
【0066】
このカーボンブラシ230は、左右方向(コンミテータ16の回転方向)に沿って3層の抵抗体によって構成されている。すなわち、コンミテータ16の外周面16Aは、左側抵抗体231の摺動面231AL、中央抵抗体232の摺動面232AM、右側抵抗体233の摺動面233ARとそれぞれ接触しながら摺動するようになる。また、中央抵抗体232は、左側抵抗体231および右側抵抗体233と比較して、抵抗値が高く設定されている。また、中央抵抗体232の左右方向の幅寸法Lは、従来技術で説明したブラックバー535の幅L(
図15参照)と同等か、それよりも長く形成されている。
【0067】
次に、本発明の第3実施形態に係るカーボンブラシの接点構造201の作用について説明する。
コンミテータ16の正回転時および逆回転時には、カーボンブラシ230は、ブラシホルダー18の左右方向のクリアランスの分だけ回転方向に傾く。この状態では、いずれの回転方向であっても、摺動面130Aは、回転するコンミテータ16の外周面16Aと中央部付近、すなわち中央抵抗体232の摺動面232AMで接触が解除され、この摺動面232AMで火花が発生する。しかしながら、中央抵抗体232は抵抗値が高く設定されているので、この中央部で火花が発生し難くなる。
【0068】
本発明の第3実施形態に係るカーボンブラシの接点構造201によれば、カーボンブラシ230は、コンミテータ16の回転方向に沿って3層に形成されており、両端の層231、233が低抵抗体であり、中央の層232が高抵抗体であるので、回転する前記コンミテータ16の外周面16Aとの接触が解除される位置(中央の層の摺動面232AM)で火花が発生し難くなり、ブラックバーの付着も抑制され、カーボンブラシ230の摺動状態が安定する。そのため、雑防素子を使用しなくても電波ノイズ低減を図ることが可能になる。その結果、材料費の低減、省スペース、軽量化を実現することができる。
また、コンミテータとカーボンブラシとの座乗性が改善されることになり、カーボンブラシ230およびコンミテータ16の寿命を延長することができる。