(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
透光性を有する基材に、少なくとも透明電極層と、有機発光層と、裏面電極層及び無機封止層が積層され、前記無機封止層の更に外側に給電層が設けられた有機EL装置において、
透明電極層を複数の領域に分離する透明電極層分離溝と、
有機発光層を貫通する深さを有して透明電極層に至る孔又は溝であってその内部に裏面電極層の一部が進入して透明電極層と裏面電極層とを導通させる電極層間連通部と、
有機発光層と裏面電極層とを連通する深さを有して透明電極層に至る溝であってその内部に無機封止層の一部が進入し、有機発光層と裏面電極層とを共に複数の領域に分離する発光領域区画溝を有し、
前記発光領域区画溝の一部又は全部は、発光領域区画溝内の無機封止層にさらに透明電極層に至る深さの溝が設けられ、その内部に給電層の一部が進入して給電層と透明電極層とを導通させる給電用連通部を備えた給電機能付き発光領域区画溝であり、
前記給電用連通部は、前記給電機能付き発光領域区画溝の延び方向全体に亘って延びており、
前記給電機能付き発光領域区画溝を少なくとも2列有し、
前記給電機能付き発光領域区画溝で区切られた領域内に前記透明電極層分離溝があり、
前記2列の給電機能付き発光領域区画溝に設けられた給電用連通部は、透明電極層分離溝で区切られた異なる領域の透明電極層と接していることを特徴とする有機EL装置。
発光領域区画溝が複数設けられており、その一群は平行に設けられた行方向発光領域区画溝であり、他の一群は前記行方向発光領域区画溝と列方向に平行に設けられた列方向発光領域区画溝であり、行方向発光領域区画溝又は列方向発光領域区画溝のいずれかが給電機能付き発光領域区画溝であることを特徴とする請求項1に記載の有機EL装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記した様に有機EL装置は、壁等に敷き詰めて壁全体を発光させる用途に使用される場合が多い。
これに対して本発明者らは、有機EL装置の新たな用途として、光通信等の電子機器への応用を考えた。より詳細に説明すると、有機EL装置は、発光ダイオードに代わる電子機器として採用することができる。
即ち有機EL装置は、厚さが極めて薄いので、電子機器として基板に組み込み易い。また有機EL装置は、面状に発光するので、受信側の機器に対する位置合わせが容易である。
【0008】
ところが有機EL装置は、大面積を発光させる用途に開発されて来た経緯があり、電子機器に組み込む様な小型の有機EL装置の開発は手つかずの状態である。さらに電子機器として採用するためには、大量生産を行う必要があるが、大量生産に適した有機EL装置の構造や、大量生産に適した製造方法は、確立されていない。
【0009】
そこで本発明は、上記した要求に応えるものであり、小型であり、且つ大量生産に適する有機EL装
置を開発することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した課題を解決するための請求項1に記載の発明は、透光性を有する基材に、少なくとも透明電極層と、有機発光層と、裏面電極層及び無機封止層が積層され、前記無機封止層の更に外側に給電層が設けられた有機EL装置において、透明電極層を複数の領域に分離する透明電極層分離溝と、有機発光層を貫通する深さを有して透明電極層に至る孔又は溝であってその内部に裏面電極層の一部が進入して透明電極層と裏面電極層とを導通させる電極層間連通部と、有機発光層と裏面電極層とを連通する深さを有して透明電極層に至る溝であってその内部に無機封止層の一部が進入し、有機発光層と裏面電極層とを共に複数の領域に分離する発光領域区画溝を有し、前記発光領域区画溝の一部又は全部は、発光領域区画溝内の無機封止層にさらに透明電極層に至る深さ
の溝が設けられ、その内部に給電層の一部が進入して給電層と透明電極層とを導通させる給電用連通部を備えた給電機能付き発光領域区画溝であり、
前記給電用連通部は、前記給電機能付き発光領域区画溝の延び方向全体に亘って延びており、前記給電機能付き発光領域区画溝を少なくとも2列有し、前記給電機能付き発光領域区画溝で区切られた領域内に前記透明電極層分離溝があり、前記2列の給電機能付き発光領域区画溝に設けられた給電用連通部は、透明電極層分離溝で区切られた異なる領域の透明電極層と接していることを特徴とする有機EL装置である。
すなわち、本発明は、透光性を有する基材に、少なくとも透明電極層と、有機発光層と、裏面電極層及び無機封止層が積層され、前記無機封止層の更に外側に給電層が設けられた有機EL装置において、透明電極層を複数の領域に分離する透明電極層分離溝と、有機発光層を貫通する深さを有して透明電極層に至る孔又は溝であってその内部に裏面電極層の一部が進入して透明電極層と裏面電極層とを導通させる電極層間連通部と、有機発光層と裏面電極層とを連通する深さを有して透明電極層に至る溝であってその内部に無機封止層の一部が進入し、有機発光層と裏面電極層とを共に複数の領域に分離する発光領域区画溝を有し、前記発光領域区画溝の一部又は全部は、発光領域区画溝内の無機封止層にさらに透明電極層に至る深さの孔又は溝が設けられ、その内部に給電層の一部が進入して給電層と透明電極層とを導通させる給電用連通部を備えた給電機能付き発光領域区画溝であり、前記給電機能付き発光領域区画溝を少なくとも2列有し、前記給電機能付き発光領域区画溝で区切られた領域内に前記透明電極層分離溝があり、前記2列の給電機能付き発光領域区画溝に設けられた給電用連通部は、透明電極層分離溝で区切られた異なる領域の透明電極層と接している有機EL装置に関連する。
【0011】
上記した各層は、直接的に接していてもよく、他の別の層が間に介在されていてもよい。特に有機発光層の周囲には、ホール注入層、ホール輸送層、電子輸送層、電子注入層などの複数の層が存在する場合が多い。
本発明の有機EL装置は、発光領域区画溝によって発光領域を区切っている。そして発光領域区画溝の中にさらに孔又は溝が設けられている。そしてこの孔又は溝の中に給電層の一部を進入させて給電層と透明電極層とを導通させている。
本発明の有機EL装置は、発光領域区画溝の中に溝等を設けて透明電極層との導通を確保しているので、全体形状を小型化することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、発光領域区画溝が複数設けられており、その一群は平行に設けられた行方向発光領域区画溝であり、他の一群は前記行方向発光領域区画溝と列方向に平行に設けられた列方向発光領域区画溝であり、行方向発光領域区画溝又は列方向発光領域区画溝のいずれかが給電機能付き発光領域区画溝である。
【0013】
本発明によると、発光領域区画溝によって発光領域の4辺が区画されている。
【0014】
請求項3に記載の発明は、基材に、少なくとも透明電極層と、有機発光層と、裏面電極層と、無機封止層が積層され、前記無機封止層の更に外側に給電層が設けられた有機EL装置において、有機発光層と裏面電極層とを連通する深さを有して透明電極層に至る溝であってその内部に無機封止層の一部が進入し、有機発光層と裏面電極層とを共に複数の領域に分離する発光領域区画溝を有し、前記発光領域区画溝は、発光領域と、発光領域とは異なる領域とを区切るものであって、発光領域区画溝内の無機封止層にさらに透明電極層に至る深さの溝が設けられ、その内部に給電層の一部が進入して給電層と透明電極層とを導通させる給電用連通部を備えた給電機能付き発光領域区画溝であり、前記給電用連通部は、前記異なる領域で前記異なる領域から発光領域へと延びる透明電極層と接しており、さらに前記給電用連通部は、前記発光領域区画溝の延び方向全体に亘って延びていることを特徴とする有機EL装置である。
また製造方法に関する発明は、透光性を有する基材に透明電極層を設ける透明電極層成膜工程と、透明電極層に複数の溝を平行に設ける透明電極層分離溝形成工程と、前記透明電極層の外側に有機発光層を設ける有機発光層成膜工程と、有機発光層に孔又は溝を設ける電極層間連通部形成工程と、有機発光層の外側に裏面電極層を設けると共に裏面電極層の一部を前記有機発光層の前記孔又は溝に進入させる裏面電極層成膜工程と、前記有機発光層と裏面電極層とを連通して透明電極層に至る深さの発光領域区画溝を前記透明電極層に設けられた溝と平行方向及び直交方向にそれぞれ複数列設ける発光領域区画溝形成工程と、裏面電極層の外側に無機封止層を設けると共に発光領域区画溝内に無機封止層の一部を進入させる発光領域区画工程と、発光領域区画溝であって、透明電極層に設けられた溝と平行方向に設けられた特定発光領域区画溝に、無機封止層を貫通する孔又は溝を設ける給電用連通部形成工程と、無機封止層の裏面に導電部材を設けると共に特定発光領域区画溝に設けられた孔又は溝に導電部材を進入させて透明電極層と接触させる導電部材形成工程と、前記基材を複数の小片に切り分ける分離工程とを有する有機EL装置の製造方法である。
【0015】
本発明の有機EL装置の製造方法は、一つの基材に多数の有機EL装置を作り、それを個々に切断して一つの有機EL装置を製造するものである
そのため本発明の製造方法によると、小さな有機EL装置を大量生産することができる。
また本発明の有機EL装置の製造方法によると、レーザースクライブ等の溝形成技術や孔形成技術を利用して有機EL装置を製造することができる。この点からも、本発明の有機EL装置の製造方法は、有機EL装置の大量生産に有利である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の有機EL装置は、小型化が可能であり、且つ大量生産に適している。また本発明の有機EL装置の製造方法によると、有機EL装置の大量生産が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、さらに本発明の実施形態について説明する。
なお図面は、理解を容易にするために、各層の厚さを誇張して描いている。実際には、各層の厚さは極めて薄い。
本実施形態の有機EL装置1は、
図1のように透光性を有した基板2(基材)上に有機EL素子3(積層体)を積層し、その上に有機EL素子3を封止する無機封止層5が積層され、さらにその上に給電用金属層6と、接着層7が設けられたものである。
有機EL素子3は、
図1のように少なくとも透明電極層(第1電極層)10と裏面電極層(第2電極層)11との間に実際に発光する機能層(有機発光層)12を備えたものである。
本実施形態の有機EL装置1は、基板2側から光を取り出すいわゆる「ボトムエミッション型」を採用しており、有機EL素子3は、基板2側から透明電極層(第1電極層)10、機能層(有機発光層)12、裏面電極層(第2電極層)11がこの順に積層されて形成されている。
本実施形態で採用する有機EL装置1は、前記した様に「ボトムエミッション型」であり、基板2の表面側の大部分が発光領域8(
図1)となる。
【0019】
基板2の材質は、透明性と絶縁性を備えたものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、ガラス基板、フレキシブルなフィルム基板や、プラスチック基板などから適宜選択され用いられる。特にガラス基板や透明なフィルム基板は透明性や加工性の良さの点から好適であり、本実施形態では、基板として、ガラス基板を採用している。
基板2の大きさは、2mm四方から10mm四方程度の小さなものである。
【0020】
透明電極層10は、透明導電性酸化物によって形成された層であり、消灯時において、透明性を有した層である。具体的には、インジウム錫酸化物(ITO)などが採用できる。本実施形態の透明電極層10は、陽極として使用されており、ITOで形成されている。
【0021】
機能層12は、透明電極層10と裏面電極層13との間に設けられ、少なくとも一層の有機発光層を備えた層である。本実施形態の機能層12は、主に有機化合物からなる複数の層から構成されている。この機能層12は、一般的な有機EL装置に用いられている低分子系色素材料や、共役系高分子材料などの公知のもので形成することができる。また、この機能層12は、ホール注入層、ホール輸送層、有機発光層、電子輸送層、電子注入層などの複数の層からなる積層多層構造であってもよい。
【0022】
裏面電極層11の材質は、特に限定されるものではなく、例えば銀(Ag)やアルミニウム(Al)などが挙げられる。本実施形態の裏面電極層11は、陰極として使用されており、Alで形成されている。
【0023】
上記した様に本実施形態の有機EL装置1では、有機EL素子3に無機封止層5が積層されている。
無機封止層5の材質は、絶縁性及び封止性を有していれば特に限定されるものではないが、酸素、炭素、窒素の中から選ばれた1種類以上の元素と、ケイ素元素とからなるシリコン合金により形成されていることが好ましく、Si−O、Si−N、Si−H、N−H等の結合を含む窒化珪素や酸化珪素、及び両者の中間固溶体である酸窒化珪素であることが特に好ましい。また、多層構造の無機封止層を使用してもよい。
【0024】
給電用金属層6は、銀(Ag)、銅(Cu)やアルミニウム(Al)などが挙げられる。給電用金属層6は、
図1の様に左右に分かれた領域に設けられている。説明の便宜上、
図1を基準として、右側を右領域給電用金属層6aと称し、左側を左領域給電用金属層6bと称する。
【0025】
接着層7は、異方性導電膜に類似するものであり、熱硬化性樹脂に導電性を有する微細な粒子を部分的に混入したものである。より具体的には、ニッケル等の導電性金属の周囲に金メッキが施され、さらに絶縁層で覆われた粒子が熱硬化性樹脂に配合されている。
ただし本実施形態で採用する接着層7は、通常の異方性導電膜とは異なり、導電性の粒子の分布が一様ではなく、故意に濃淡がある。
より具体的には、
図1(a)の様に、X断面で見て、接着層7の中央領域には導電性粒子が無い。逆に両脇の領域には、導電性の粒子が配合されている。説明の便宜上、
図1を基準として、右側を右側導電性接着層7aと称し、左側を左側導電性接着層7bと称し、中央領域を絶縁性接着層7cと称する。
接着層7の内、右側導電性接着層7aは、右領域給電用金属層6aに重ねられている。また接着層7の内、左側導電性接着層7bは、左領域給電用金属層6bに重ねられている。
【0026】
本実施形態の有機EL装置1では、各層に溝を設けることによって、機能層12に対する給電や、各領域の絶縁性を確保している。
即ち本実施形態では、透明電極層10に一本の溝(透明電極層分離溝)20が設けられている。透明電極層分離溝20は、図面上では、Y方向(列方向)に連続するものである。透明電極層分離溝20の深さは、基板2にまで至る。透明電極層分離溝20の内部には透明電極層10は無く、代わって機能層12が進入している。
即ち透明電極層分離溝20は、透明電極層10を二つの領域に分離するものである。ただし、透明電極層分離溝20は透明電極層10を均等面積に分離するものではなく、大小に分けて分離している。
即ち透明電極層分離溝20は、透明電極層10を大面積の主透明電極領域21と、小面積の通電補助用電極領域22に分離されている。
【0027】
また機能層12には、機能層分離溝25が1本設けられている。機能層分離溝25は、図面上では、Y方向(列方向)に連続するものであり、前記した透明電極層分離溝20と平行に設けられている。ただし、その位置はややずれており、機能層分離溝25は、小面積の通電補助用電極領域22に相当する領域にある。
機能層分離溝25の深さは、透明電極層10にまで至っている。機能層分離溝25の内部には機能層分離溝25は無く、代わって裏面電極層11の一部が進入している。機能層分離溝25に進入した裏面電極層11は、透明電極層10と裏面電極層11とを導通させる部位であり、電極層間連通部30として機能する。
【0028】
また本実施形態では、機能層12と裏面電極層11に共通する発光領域区画溝31,32,33,35が4列に渡って設けられている。
発光領域区画溝31,32,33,35の内、2本の発光領域区画溝31,32は、Y方向(列方向)に連続するものであり、前記した透明電極層分離溝20及び機能層分離溝25と平行に設けられている。
2本の発光領域区画溝31,32は、基板2の両脇の辺の近傍に設けられている。
即ち一方の列方向発光領域区画溝31は、前記した機能層分離溝25よりも外側の位置にある。また他方の列方向発光領域区画溝32は、基板2の対向する辺の近傍にあり、主透明電極領域21に設けられている。
【0029】
発光領域区画溝31,32,33,35の内、残る2本の発光領域区画溝33,35は、X方向(行方向)に連続するものであり、前記した透明電極層分離溝20及び機能層分離溝25と直交する方向に設けられている。
2本の発光領域区画溝33,35についても、基板2の両脇の辺の近傍に設けられている。
従って、発光領域区画溝31,32,33,35は、基板2を井戸枠形(井形)に区切っている。
【0030】
発光領域区画溝31,32,33,35の深さは、裏面電極層11と機能層12とを貫通して透明電極層10にまで至っている。
透明電極層分離溝20等と交差する方向に延びる2本の発光領域区画溝33,35の中には、機能層12も裏面電極層11も無く、代わって無機封止層5が進入している。
この2本の発光領域区画溝33,35を説明の便宜上「通常発光領域区画溝33,35」と称する。
【0031】
これに対して透明電極層分離溝20等と平行に延びる2本の発光領域区画溝31,32には、さらに給電用連通溝40,41が設けられている。給電用連通溝40,41は、無機封止層5を貫通する封止層貫通部である。即ち2本の発光領域区画溝31,32は、「特定発光領域区画溝31,32」であり、先に説明した通常発光領域区画溝33,35とは構造が異なる。
詳細に説明すると、特定発光領域区画溝31,32は、先に説明した通常発光領域区画溝33,35よりも溝幅が広い。
特定発光領域区画溝31,32についても通常発光領域区画溝33,35と同様にその内部に無機封止層5が進入している。しかしながら、特定発光領域区画溝31,32には、さらに特定発光領域区画溝31,32内の無機封止層5に別途の給電用連通溝(封止層貫通部)40,41が設けられている。即ち特定発光領域区画溝31,32は、溝が二重に設けられた構造となっている。
【0032】
そして特定発光領域区画溝31,32に設けられた給電用連通溝40,41には、給電用金属層6の一部が進入している。より具体的には、特定発光領域区画溝31に設けられた給電用連通溝40には、右領域給電用金属層6aの一部が進入している。また特定発光領域区画溝32に設けられた給電用連通溝41には、左領域給電用金属層6bの一部が進入している。
給電用連通溝40,41に進入した給電用金属層6は、透明電極層10と接しており、給電用連通部45,46として機能する。
より具体的には、一方の特定発光領域区画溝32に設けられた給電用連通部46は、大面積の主透明電極領域21と接している。
他方の特定発光領域区画溝31に設けられた給電用連通部45は、小面積の通電補助用電極領域22と接している。
【0033】
次に本実施形態の有機EL装置1の機能について説明する。
本実施形態の有機EL装置1では、前記した様に、各層に溝を設けることによって、機能層12に対する給電や、各領域の絶縁を確保している。
即ち本実施形態の有機EL装置1では、裏面側に接着層7が露出しているが、接着層7は、左右の領域だけが導電性を有し、中央部分は絶縁体である。
即ち有機EL装置1の裏面には、右側導電性接着層7aと左側導電性接着層7bが露出しており、両者は絶縁されている。
【0034】
そして左側導電性接着層7bは、左領域給電用金属層6bに重ねられていて両者の間に導通がある。さらに左領域給電用金属層6bの一部は、特定発光領域区画溝32内の給電用連通溝41に進入して給電用連通部46を構成し、透明電極層10の主透明電極領域21と接している。ここで、主透明電極領域21は、大きな面積で機能層12の一面と接している。また機能層12の他面側は、大きな面積で裏面電極層11と接している。
さらに裏面電極層11の一部は、機能層分離溝25内の電極層間連通部30によって、透明電極層10の通電補助用電極領域22と接触している。ここで主透明電極領域21と、通電補助用電極領域22は、透明電極層分離溝20によって分離されているので、両者の間には直接的な通電経路はない。従って通電補助用電極領域22は、機能層分離溝25内の電極層間連通部30によって、裏面電極層11と同電位となる。
【0035】
また通電補助用電極領域22は、特定発光領域区画溝31内の給電用連通溝40に形成された給電用連通部45を経由して右領域給電用金属層6aと直接的に接続されている。さらに右領域給電用金属層6aは、右側導電性接着層7aと接している。
そのため電流は、左側導電性接着層7bから左領域給電用金属層6b・給電用連通部46・主透明電極領域21を経由して機能層12に流れる。また電流は、機能層12の基板2から遠い側の面から、裏面電極層11・電極層間連通部30・通電補助用電極領域22・右領域給電用金属層6aを経由して右側導電性接着層7aに至る。
【0036】
従って、本実施形態の有機EL装置1では、裏面側に露出した右側導電性接着層7aと左側導電性接着層7bの間に電圧を印加することにより、機能層12を発光させることができる。
【0037】
また本実施形態の有機EL装置1は、裏面側に接着層7があり、当該接着層7は、異方性導電膜に類似するものであって熱硬化性樹脂に導電性を有する微細な粒子を混入したものである。そのため、電子基板に直接有機EL装置1を取り付けることができる。即ち、電子基板の導電部分に有機EL装置1を押し当て、加熱することによって電子基板に有機EL装置1を取り付けることができる。
また有機EL装置1を電子基板の導電部分に押し当てる際、右側導電性接着層7aと左側導電性接着層7bとをそれぞれ電子基板の別の端子部分と接合させることにより、有機EL装置1に正しく給電することができる
即ち本実施形態で採用する接着層7は、中央領域には導電性粒子が配合されていない。そのため中央領域の絶縁性接着層7cは、絶縁帯として機能し、両側の右側導電性接着層7aと左側導電性接着層7bとを絶縁している。そのため右側導電性接着層7aと左側導電性接着層7bとをそれぞれ電子基板の別の端子部分と接触させても、両者の絶縁性は確保され、短絡することはない。
【0038】
次に、本実施形態の有機EL装置1の製造方法について説明する。
有機EL装置1は、図示しない真空蒸着装置及びCVD装置によって成膜し、図示しないパターニング装置、本実施形態では、レーザースクライブ装置及び成膜時のマスク処理を使用してパターニングを行い、製造される。
【0039】
まず
図2の様に、基板2の一部又は全部に透明電極層10を成膜する(透明電極層成膜工程)。成膜方法としては、スパッタ法やCVD法を採用することができる。形成される透明電極層10の平均厚さは、50nmから800nmであることが好ましく、100nmから400nmであることがより好ましい。
成膜に使用する基板2は、最終製品たる有機EL装置1に比べてはるかに大きいものである。
【0040】
その後、透明電極層10が成膜された基板2に対して、レーザースクライブ装置によって
図3のように透明電極層分離溝20を多数形成する(透明電極層分離溝形成工程)。
透明電極層分離溝20は、いずれも連続した直線状であり、一定の間隔を設けて多数形成される。ただし、基板2の一方の辺2aとそれに隣接する透明電極層分離溝20aの距離Waと、基板2の他方の辺2bとそれに隣接する透明電極層分離溝20bの距離Wbとは異なっている。本実施形態では、図面左側の辺2aとそれに隣接する透明電極層分離溝20aの距離Waは、図面右側の辺2bとそれに隣接する透明電極層分離溝20bの距離Wbよりも長い。
【0041】
次に、
図4の様に、この基板2の略全面に、機能層(有機発光層)12を成膜する。より具体的には、真空蒸着装置によって、ホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などの各層を順次成膜する(有機発光層成膜工程)。
形成される機能層12の平均厚さは、50nmから250nmであることが好ましく、120nmから200nmであることがより好ましい。
【0042】
その後、
図5の様に、機能層12が成膜された基板2に対して機能層分離溝25を複数、平行に形成する(機能層貫通溝形成工程後)。機能層分離溝25の形成は、レーザースクライブ装置を使用して行う。即ち機能層12をレーザースクライブして、複数の機能層分離溝25を平行に形成する。
各機能層分離溝25は、いずれも前記した透明電極層分離溝20と平行であり、透明電極層分離溝20に対して、やや右側の辺2b側にずれている。
【0043】
次に、
図6の様に、この基板2上に、裏面電極層11を成膜する(裏面電極層成膜工程)。成膜方法としては、真空蒸着を採用することができる。
このとき、機能層12に設けられている機能層分離溝25内に裏面電極層11が積層され、機能層分離溝25内に裏面電極層11が満たされる。即ち機能層分離溝25に裏面電極層11の一部が進入する。そして機能層分離溝25の底部で透明電極層10と裏面電極層11が接触した状態で固着し、透明電極層10と裏面電極層11が電気的に接続される。
なお、形成される裏面電極層11の平均厚さは、100nmから300nmであることが好ましく、150nmから200nmであることがより好ましい。
【0044】
次に、
図7の様に、この基板2に発光領域区画溝31,32,33,35を設ける(発光領域区画溝形成工程)。
発光領域区画溝31,32,33,35は、いずれも機能層12と裏面電極層11に共通する溝である。
発光領域区画溝31,32,33,35には、先に説明した様に、Y方向(列方向)に連続する特定発光領域区画溝31,32と、X方向に連続する通常発光領域区画溝33,35とがあるが、どちらを先に形成してもよい。
【0045】
特定発光領域区画溝31,32について説明すると、特定発光領域区画溝31,32は、先に説明した透明電極層分離溝20及び機能層分離溝25と平行である。しかしながら本実施形態では、特定発光領域区画溝31,32の間隔は、均等ではなく、長い間隔と短い間隔が交互に現れる様に設けられている。
より具体的には、特定発光領域区画溝31,32の間隔が長い区間の中に、前記した透明電極層分離溝20と機能層分離溝25とが入る様に位置決めして特定発光領域区画溝31,32が形成される。特定発光領域区画溝31,32の間隔が短い区間の中には、透明電極層分離溝20も機能層分離溝25も存在しない。
【0046】
X方向に連続する通常発光領域区画溝33,35についても、間隔は、均等ではなく、長い間隔と短い間隔が交互に現れる様に設けられている。
ただし、通常発光領域区画溝33,35については、透明電極層分離溝20等との位置関係を特定する必要はない。
前記した様に通常発光領域区画溝33,35の幅は、特定発光領域区画溝31,32の幅よりも狭い。
本実施形態においては、発光領域区画溝31,32,33,35の形成は、レーザースクライブ装置を使用して行う。即ち機能層12と裏面電極層11をレーザースクライブして、複数の特定発光領域区画溝31,32と、通常発光領域区画溝33,35とを形成する。
【0047】
続いて、
図8の様にこの基板2に、無機封止層5を成膜する(発光領域区画工程)。なお無機封止層5は、CVD装置によって成膜する。
無機封止層5は、基板2の略全域に積層されており、発光領域区画溝31,32,33,35内にも無機封止層5が積層され、発光領域区画溝31,32,33,35内に無機封止層5が進入して満たされる。
そのため特定発光領域区画溝31,32と、通常発光領域区画溝33,35とで囲まれた小さい正方形の領域が、これらの中に進入した無機封止層5によって区画される。
また、形成される無機封止層5の平均厚さは、5μmから100μmであることが好ましく、10μmから50μmであることがより好ましい。
【0048】
さらに続いて、
図9の様に、特定発光領域区画溝31,32内に充填された無機封止層5に当該無機封止層5を貫通する給電用連通溝40,41を設ける(給電用連通部形成工程)。
給電用連通溝40,41は、レーザースクライブ装置を使用して行う。即ち特定発光領域区画溝31,32の中心線に沿ってレーザービームを照射しつつ、照射位置を特定発光領域区画溝31,32に沿って移動させる。その結果、特定発光領域区画溝31,32に入り込んだ無機封止層5に給電用連通溝40,41が形成される。
給電用連通溝40,41は、前記した様に特定発光領域区画溝31,32に入り込んだ無機封止層5に設けられる溝であるから、当該溝の側壁には、無機封止層5が残っている。給電用連通溝40,41の深さは、機能層12と裏面電極層11を除去して透明電極層10を露出させることができる深さである。
【0049】
続いて、
図10の様にこの基板2に、給電用金属層6を成膜する(導電部材形成工程)。
給電用金属層6は、無機封止層5を一定間隔でマスクして行う。即ち特定発光領域区画溝31,32の間隔が長い部位に、図示しないマスクを設置し、真空蒸着して給電用金属層6を成膜する。給電用金属層6は列方向に延びて、行方向に並ぶ複数の帯状に成膜される。
その結果、所定の間隔を離しつつ、特定発光領域区画溝31,32に重ねて給電用金属層6が成膜される。
そのため、特定発光領域区画溝31,32の内部に二重に設けられた給電用連通溝40,41内にも給電用金属層6が積層され、給電用連通溝40,41内に給電用金属層6が進入して満たされる。そして給電用連通溝40,41の底部で透明電極層10と給電用金属層6とが接触した状態で固着し、透明電極層10と給電用金属層6が電気的に接続される。
【0050】
さらに続いて
図11の様に基板2に接着層7が形成される(接着層成膜工程)。
接着層7は、特有の接着液を塗布することによって設けられる。ここで接着液は、熱硬化性樹脂を主成分とするものであり、例えば
図14の様なロール50によって基板2に塗布される。塗布液は、上部の供給タンク群51からロール50に供給され、さらにロール50から基板2に転写される。ここでロール50に供給される塗布液の配合は一様ではなく、金属等の導電性の粒子60が配合された塗布液52と、配合されていない塗布液53がある。
そしてロール50の特定部分に金属等の導電性の粒子が配合された塗布液52が供給され、他の部位に導電性の粒子が配合されていない塗布液53が供給される。
そして、給電用金属層6が存在する領域に重ねて導電性の粒子60が配合された塗布液52が塗布され、給電用金属層6がしない領域には、導電性の粒子60が配合されていない塗布液53が塗布される。
【0051】
他の方法として、
図15の様に、予め導電性の粒子60が配合された領域55と、配合されていない領域56が作られた樹脂シート58を別途製造し、これを圧接ロール59で基板2に貼り合わせてもよい。
【0052】
いずれの方策を採用するにしても、
図12の様に、給電用金属層6が存在する領域に重ねて導電性の粒子60が混合された右側導電性接着層7a又は左側導電性接着層7bが積層され、給電用金属層6が存在しない領域には、絶縁性接着層7cが積層される。
【0053】
つづいて、
図13の様に、この基板2を碁盤の目のごとく、小さな正方形に切断する。より具体的には、特定発光領域区画溝31,32の間隔が狭く作られた領域の中心を特定発光領域区画溝31,32と平行に切断すると共に、通常発光領域区画溝33,35の間隔が狭く作られた領域の中心を通常発光領域区画溝33,35と平行に切断する。
その結果、
図1に示す様な有機EL装置1を多数得ることができる。
本実施形態によると、一枚の基板2から多数の有機EL装置1を切り出すことができるので、有機EL装置1を大量生産することができる。
【0054】
以上説明した実施形態では、電極層間連通部30として溝状のものを採用した。しかしながら、電極層間連通部30の機能は、透明導電層10と、裏面電極層間11の導通を図ることができれば足りる。従って孔をもって電極層間連通部とすることもできる。
同様に、給電用連通溝40,41に代わって、孔を採用することもできる。