特許第6163345号(P6163345)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6163345汚染土壌の浄化設備、及び汚染土壌の浄化方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6163345
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】汚染土壌の浄化設備、及び汚染土壌の浄化方法
(51)【国際特許分類】
   B09C 1/00 20060101AFI20170703BHJP
   C02F 1/00 20060101ALI20170703BHJP
   F28D 20/00 20060101ALI20170703BHJP
   F24F 5/00 20060101ALI20170703BHJP
   F24J 3/08 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
   B09B5/00 SZAB
   C02F1/00 A
   F28D20/00 B
   F24F5/00 102C
   F24J3/08
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-82368(P2013-82368)
(22)【出願日】2013年4月10日
(65)【公開番号】特開2014-205086(P2014-205086A)
(43)【公開日】2014年10月30日
【審査請求日】2016年2月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(73)【特許権者】
【識別番号】000150110
【氏名又は名称】株式会社竹中土木
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】清水 孝昭
(72)【発明者】
【氏名】奥田 信康
(72)【発明者】
【氏名】古川 靖英
(72)【発明者】
【氏名】中島 朋宏
(72)【発明者】
【氏名】向井 一洋
(72)【発明者】
【氏名】谷 慎行
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 薫
(72)【発明者】
【氏名】大村 啓介
(72)【発明者】
【氏名】泉澤 洋一
(72)【発明者】
【氏名】野口 達也
(72)【発明者】
【氏名】川島 壮仁
【審査官】 岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0281668(US,A1)
【文献】 特開2013−075263(JP,A)
【文献】 特開2013−076516(JP,A)
【文献】 特開2014−069162(JP,A)
【文献】 特開2012−233636(JP,A)
【文献】 特開2002−113456(JP,A)
【文献】 特開平09−280689(JP,A)
【文献】 特開平11−325650(JP,A)
【文献】 特開2000−154985(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09C 1/00
C02F 1/00
F24F 5/00
F24J 3/08
F28D 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯水層から汚染物質を含む地下水を揚水し、揚水した前記地下水を浄化装置で浄化して前記帯水層に注水する浄化井戸装置と、
揚水された前記地下水と熱媒体との間で熱交換を行う熱交換器と、
前記熱交換器で熱交換された前記熱媒体の熱エネルギーを利用すると共に利用後に前記熱媒体を熱交換器に送る利用手段と、
を備え
汚染物質を含む前記帯水層は、地盤中に難透水層で仕切られて複数層あり、
前記浄化井戸装置は、前記帯水層毎に注水及び揚水の流量を制御することが可能とされ、
前記熱交換器は、複数の前記帯水層から揚水された前記地下水を熱交換するように構成され、
各前記帯水層から揚水される前記地下水の温度差が少なくなるように、前記帯水層毎に前記流量を制御する第一制御手段を備える汚染土壌の浄化設備。
【請求項2】
帯水層から汚染物質を含む地下水を揚水し、揚水した前記地下水を浄化装置で浄化して前記帯水層に注水する浄化井戸装置と、
揚水された前記地下水と熱媒体との間で熱交換を行う熱交換器と、
前記熱交換器で熱交換された前記熱媒体の熱エネルギーを利用すると共に利用後に前記熱媒体を熱交換器に送る利用手段と、
を備え、
前記浄化井戸装置は、前記汚染物質が間に挟まれるように間隔をあけて配置された二本の井戸を有し、前記井戸は、それぞれ揚水と注水とを行うことが可能であり、
夏季に、一方の前記井戸から揚水し、温水を他方の前記井戸から前記帯水層に注水して蓄熱し、冬季に、前記他方の井戸から揚水し、冷水を前記一方の井戸から前記帯水層に注水して蓄熱するように構成されている、汚染土壌の浄化設備。
【請求項3】
汚染物質を含む前記帯水層は、地盤中に難透水層で仕切られて複数層あり、
前記浄化井戸装置は、前記帯水層毎に注水及び揚水の流量を制御することが可能とされ、
前記熱交換器は、複数の前記帯水層から揚水された前記地下水を熱交換するように構成され、
各前記帯水層から揚水される前記地下水の温度差が少なくなるように、前記帯水層毎に前記流量を制御する第一制御手段を備える、
請求項2に記載の汚染土壌の浄化設備。
【請求項4】
揚水された前記地下水の流量に応じて、前記熱交換器で熱交換する熱媒体の流量を制御する第二制御手段を備える、
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の汚染土壌の浄化設備。
【請求項5】
前記利用手段は、空調装置である、
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の汚染土壌の浄化設備。
【請求項6】
帯水層から汚染物質を含む地下水を揚水し、揚水した前記地下水を浄化装置で浄化して前記帯水層に注水する浄化井戸装置と、
揚水された前記地下水と熱媒体との間で熱交換を行う熱交換器と、
熱交換された前記熱媒体の熱エネルギーを利用する利用手段と、
を備え、
前記浄化井戸装置は、前記汚染物質が間に挟まれるように間隔をあけて配置された二本の井戸を有し、前記井戸は、それぞれ揚水と注水とを行うことが可能である汚染土壌の浄化設備に適用され、
前記帯水層に貯留されている冷水の前記地下水を一方の前記井戸から揚水して前記熱交換器で前記熱媒体と熱交換し温水にして他方の前記井戸から前記帯水層に注水する温水注水工程と、
前記帯水層に貯留されている温水の前記地下水を前記他方の井戸から揚水して前記熱交換器で前記熱媒体と熱交換し冷水にして前記一方の井戸から前記帯水層に注水する冷水注水工程と、
を交互に間をあけて断続的に行う汚染土壌の浄化方法。
【請求項7】
前記温水注水工程においては、前記熱交換器で熱交換することで温水にされた前記地下水を前記浄化装置で浄化し、
前記冷水注水工程においては、前記帯水層に貯留されている温水を揚水した前記地下水を前記浄化装置で浄化する、
請求項6に記載の汚染土壌の浄化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚染土壌の浄化設備、及び汚染土壌の浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、平坦地に建てる建物の冷暖房設備の製造法に関する技術が開示されている。この先行技術では、人工池用の穴の周縁に鉛直柱状熱交換筒を多数本埋込み、蒸発器・圧縮器・凝縮器・膨張弁よりなる閉回路を循環する冷媒を有するヒートポンプを設置し、鉛直柱状熱交換筒と蒸発器内を循環する一次不凍液循環路と凝縮器と熱交換室内機内を循環する二次不凍液循環路とを設けている。
【0003】
特許文献2には、土壌汚染地域の地熱を利用した設備に関する技術が開示されている。この先行技術では、採熱管と第一循環路を有する一次側熱交換器と、放熱管と第二循環路を有する二次側熱交換器と、の間に、蒸発器、圧縮器、凝縮器および膨張弁を有するヒートポンプを設け、採熱管を土壌汚染地域に水平または垂直に埋設して、その内部を循環させる第一熱媒によって地中熱を採取し、ヒートポンプで昇温した後、その熱を内部に循環させる第二熱媒によって放熱管から放熱している。
【0004】
特許文献3には、汚染土壌およびまたは地下水の原位置浄化工法に関する技術が開示されている。この先行技術では、土壌中およびまたは地下水中の温度以上の融点を持つ浄化剤を加熱して液状化し、揮発性有機塩素化合物または硝酸性窒素による汚染土壌中およびまたは地下水中に注入し、汚染土壌中およびまたは地下水中に浸透拡散し、温度低下に伴い固形化している。
【0005】
また、その他、関連する技術が特許文献4〜特許文献8に記載されている。
【0006】
ここで、地下水の温度は年間を通じて約18℃前後である。よって、汚染土壌の浄化において、汚染物質の地下水への溶出度や汚染物質を分解する微生物の活性度等を向上させることが困難であり、浄化効率の向上に限界があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3999591号
【特許文献2】特開2003−343929号公報
【特許文献3】特開2004−216220号公報
【特許文献4】特開平9−098770号公報
【特許文献5】特開2010−000454号公報
【特許文献6】特許第4176383号
【特許文献7】特許第4428125号
【特許文献8】特許第4428638号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、汚染土壌の浄化効率を向上させることが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、帯水層から汚染物質を含む地下水を揚水し、揚水した前記地下水を浄化装置で浄化して前記帯水層に注水する浄化井戸装置と、揚水された前記地下水と熱媒体との間で熱交換を行う熱交換器と、前記熱交換器で熱交換された前記熱媒体の熱エネルギーを利用すると共に利用後に前記熱媒体を熱交換器に送る利用手段と、を備え、汚染物質を含む前記帯水層は、地盤中に難透水層で仕切られて複数層あり、前記浄化井戸装置は、前記帯水層毎に注水及び揚水の流量を制御することが可能とされ、前記熱交換器は、複数の前記帯水層から揚水された前記地下水を熱交換するように構成され、各前記帯水層から揚水される前記地下水の温度差が少なくなるように、前記帯水層毎に前記流量を制御する第一制御手段を備えている。
【0010】
請求項1に記載の発明では、揚水した汚染物質を含む地下水を浄化装置で浄化すると共に熱交換器で熱媒体と熱交換して帯水層に注水する。また、地下水と熱交換された熱媒体を利用手段で利用すると共に、利用後に熱交換器に送られ、前述したように地下水と熱交換される。
【0011】
このように、揚水した地下水を熱交換器で熱媒体と熱交換し温水にして帯水層に注水することで、例えば、汚染物質が効果的に溶出される。或いは、汚染物質が効果的に微生物で分解される。よって、常温の地下水で浄化する場合と比較し、汚染物質の浄化効率が向上する(浄化が促進する)。
【0012】
また、利用手段から出る排熱を利用することで、汚染土壌の浄化と利用手段とを別々の装置で行う場合と比較し、汚染土壌の浄化と利用手段とを総合した全体のエネルギー効率が高められる。
また、各帯水層から揚水される地下水の温度差が少なくなるように、第一制御手段が帯水層毎に注水及び揚水の流量を制御する。よって、揚水された地下水に温度差による熱損失が抑制され、熱交換器による熱交換の変換効率が向上する。
【0013】
請求項2の発明は、帯水層から汚染物質を含む地下水を揚水し、揚水した前記地下水を浄化装置で浄化して前記帯水層に注水する浄化井戸装置と、揚水された前記地下水と熱媒体との間で熱交換を行う熱交換器と、前記熱交換器で熱交換された前記熱媒体の熱エネルギーを利用すると共に利用後に前記熱媒体を熱交換器に送る利用手段と、を備え、前記浄化井戸装置は、前記汚染物質が間に挟まれるように間隔をあけて配置された二本の井戸を有し、前記井戸は、それぞれ揚水と注水とを行うことが可能であり、夏季に、一方の前記井戸から揚水し、温水を他方の前記井戸から前記帯水層に注水して蓄熱し、冬季に、前記他方の井戸から揚水し、冷水を前記一方の井戸から前記帯水層に注水して蓄熱するように構成されている。
【0014】
請求項2に記載の発明では、夏季に温度が上昇した熱媒体を熱交換器で地下水を温水にして帯水層に注水して貯留し、冬季に温水を揚水して熱交換器で熱媒体の温度を上昇させる
【0015】
また、冬季に温度が低下した熱媒体を熱交換器で地下水を冷水にして帯水層に注水して貯留し、夏季に冷水を揚水して熱交換器で熱媒体の温度を低下させる
【0016】
このように、熱交換器によって地下水と熱交換された熱媒体の熱エネルギーが、一年を通じて効果的に有効に利用される。
【0017】
請求項3の発明は、汚染物質を含む前記帯水層は、地盤中に難透水層で仕切られて複数層あり、前記浄化井戸装置は、前記帯水層毎に注水及び揚水の流量を制御することが可能とされ、前記熱交換器は、複数の前記帯水層から揚水された前記地下水を熱交換するように構成され、各前記帯水層から揚水される前記地下水の温度差が少なくなるように、前記帯水層毎に前記流量を制御する第一制御手段を備えている。
【0018】
請求項3に記載の発明では、各帯水層から揚水される地下水の温度差が少なくなるように、第一制御手段が帯水層毎に注水及び揚水の流量を制御する。よって、揚水された地下水に温度差による熱損失が抑制され、熱交換器による熱交換の変換効率が向上する。
【0019】
請求項4の発明は、揚水された前記地下水の流量に応じて、前記熱交換器で熱交換する熱媒体の流量を制御する第二制御手段を備えている。
【0020】
請求項4に記載の発明では、第二制御手段が揚水された地下水の流量に応じて熱交換器で熱交換する液体の流量を制御することで、利用手段で熱エネルギーの利用効率が向上する。
請求項5の発明は、前記利用手段は、空調装置である。
請求項5に記載の発明では、汚染土壌の浄化と空調装置とを総合してエネルギー効率を高められる。
【0021】
請求項6の発明は、帯水層から汚染物質を含む地下水を揚水し、揚水した前記地下水を浄化装置で浄化して前記帯水層に注水する浄化井戸装置と、揚水された前記地下水と熱媒体との間で熱交換を行う熱交換器と、熱交換された前記熱媒体の熱エネルギーを利用する利用手段と、を備え、前記浄化井戸装置は、前記汚染物質が間に挟まれるように間隔をあけて配置され、揚水と注水とを行うことが可能な一対の井戸を有する汚染土壌の浄化設備に適用され、前記帯水層に貯留されている冷水の前記地下水を一方の前記井戸から揚水して前記熱交換器で前記熱媒体と熱交換し温水にして他方の前記井戸から前記帯水層に注水する温水注水工程と、前記帯水層に貯留されている温水の前記地下水を前記他方の井戸から揚水して前記熱交換器で前記熱媒体と熱交換し冷水にして前記一方の井戸から前記帯水層に注水する冷水注水工程と、を交互に間をあけて断続的に行う。
【0022】
請求項6に記載の発明では、揚水した汚染物質を含む地下水を浄化装置で浄化すると共に熱交換器で熱媒体と熱交換して帯水層に注水する。また、地下水と熱交換された熱媒体を利用手段で利用すると共に、利用後に熱交換器に送られ前述したように地下水と熱交換される。
【0023】
このように、帯水層に温水が貯留されることで、例えば、汚染物質が効果的に溶出される。或いは汚染物質が効果的に微生物で分解される。よって、常温の地下水で浄化する場合と比較し、汚染物質の浄化効率が向上する(浄化が促進する)。
【0024】
また、温水注水工程で帯水層に温水を注水して貯留し、冷水注水工程で貯留された温水を揚水して熱交換器で熱媒体と熱交換して利用手段で利用すると共に、熱媒体と熱交換されることで冷水になった地下水を帯水層に注水して貯留する。そして、温水注水工程で貯留された冷水を揚水して熱交換器で熱媒体と熱交換して利用手段で利用すると共に、熱媒体と熱交換されることで温水になった地下水を帯水層に注水して貯留する。
【0025】
このように、温水注水工程と冷水注水工程とを交互に間をあけて断続的に行うことで、利用手段から出る排熱(温熱及び冷熱)を地中に地下水(温水及び冷水)として貯留して蓄熱して利用することになり、汚染土壌の浄化と利用手段とを別々の装置で行う場合と比較し、汚染土壌の浄化と利用手段とを総合した全体のエネルギー効率が高められる。
【0026】
請求項7の発明は、前記温水注水工程においては、前記熱交換器で熱交換することで温水にされた前記地下水を前記浄化装置で浄化し、前記冷水注水工程においては、前記帯水層に貯留されている温水を揚水した前記地下水を前記浄化装置で浄化する。
【0027】
請求項7に記載の発明では、熱交換器で熱交換することで温水にされた地下水又は揚水された温水の地下水を浄化装置で浄化することで、浄化装置での浄化効率が向上する。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、汚染土壌の浄化効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の第一実施形態に係る汚染土壌の浄化設備の構成を模式的に示すと共に夏季における汚染土壌の浄化を模式的に示す構成図である。
図2】冬季における汚染土壌の浄化を模式的に示す図1に対応する構成図である。
図3】本発明の第二実施形態に係る汚染土壌の浄化設備の構成を模式的に示すと共に夏季における汚染土壌の浄化を模式的に示す構成図である。
図4】冬季における汚染土壌の浄化を模式的に示す図3に対応する構成図である。
図5】第二実施携形態の浄化設備の井戸の要部の構成を模式的に示す構成図である。
図6】夏季における汚染土壌の浄化の様子を(A)から(B)へと順番に示す工程図である。
図7】冬季における汚染土壌の浄化の様子を(A)から(B)へと順番に示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
<第一実施形態>
本発明の第一実施形態に係る汚染土壌の浄化設備について説明する。
【0031】
[土壌]
図1及び図2に示すように、地盤10における地下水位Sの下側が帯水層12となっている。帯水層12には、汚染物質が含まれる汚染土壌20が存在している。なお、汚染物質は、トリクロロエチレンやベンゼンに代表される有機化合物、六価クロムやヒ素等の金属化合物、シアン等の無機化合物、ガソリンや軽油に代表される鉱油類等である。
【0032】
帯水層12の下は、帯水層12よりも透水性の低い難透水層14となっている。また、地盤10の上には、図示していないオフィスビルや商業施設等の構造物が建てられている。なお、難透水層14がない地盤であってもよい。
【0033】
[浄化設備]
浄化設備100は、遮水壁50と浄化井戸装置110と熱交換器70と空調装置60と制御装置80とを含んで構成されている。
【0034】
遮水壁50は、汚染土壌20の周囲を囲むように形成されている。また、下端部50Aが難透水層14に根入れされている。よって、汚染土壌20は、遮水壁50と難透水層14とで囲まれ閉鎖されている。
【0035】
浄化井戸装置110は、浄化装置112と二つの井戸120、122とを有している。二つの井戸120、122は、遮水壁50で囲まれた内側に汚染土壌20が間に挟まれるように間隔をあけて配置されている。
【0036】
これら二つの井戸120と井戸122とは、地下水ライン124で繋がり、この地下水ライン124に浄化装置112が設置されている。そして、浄化井戸装置110は、図示していないポンプやバルブ等によって、図1に示すように、一方の井戸120から揚水し、揚水した汚染物質を含む地下水を浄化装置112で浄化したのち、他方の井戸122から注水することが可能なように構成されている。更に、浄化井戸装置110は、図2に示すように、他方の井戸122から揚水し、揚水した汚染物質を含む地下水を浄化装置112で浄化したのち、一方の他方の井戸120から注水することも可能なように構成されている。つまり、これら二つの井戸120、122は、それぞれ揚水と注水とを行うことが可能な構成となっている。
【0037】
浄化装置112における浄化方法は、種々の周知技術を適用することができる。例えば、空気を送り込んで揮発性汚染物質を揮発させて水質改善する方法、浄化剤を添加し反応させて水質改善する方法、汚染物質を吸着することで地下水と汚染物質との分離を図る方法などを適用することができる。
【0038】
また、汚染土壌20を浄化するために揚水した地下水に洗浄剤を添加して井戸120、122から注水してもよい。或いは、生物浄化を行う場合は、栄養塩や酸素を混入させたて注水したり、新たに微生物を混入させて注水したりしてもよい。
【0039】
熱交換器70は、地下水ライン124を流れる地下水と熱媒体ライン72を流れる熱媒体との間で熱交換を行う。なお、本実施形態では熱媒体は水が用いられている。しかし、熱交換が可能な媒体であればよく、例えば、オイルや気体等の流体であってもよい。また、熱媒体は、図示してないポンプ等によって熱媒体ライン72を循環するようになっている。
【0040】
空調装置60は、地盤10に建てられている図示していないオフィスビルや商業施設等の構造物内の空調を行う。空調装置60は、熱媒体ライン72を循環する熱交換された熱媒体の熱エネルギー(温熱及び冷熱)を利用することが可能なように構成されている。なお、空調装置60は、熱媒体ライン72を循環する熱媒体の熱エネルギー以外のエネルギーも同時に使用して構造物内の空調を行うことが可能に構成されている。
【0041】
ここで、図1及び図2における各矢印は、帯水層12での地下水の流れ、地下水ライン124での地下水の流れ、熱媒体ライン72での熱媒体の流れ、空調装置60での空気の流れ、をそれぞれ示している。また、後述するように、図1図2とでは、これらの矢印の方向が逆になっている。
【0042】
制御装置80は、地下水ライン124の図示していないポンプやバルブ等の動作を制御することで、井戸120及び井戸122における注水と揚水との切り替え(地下水ライン124を流れる方向の切り替え)や注水する注水量及び揚水する揚水量を制御する。更に、制御装置80は、熱媒体ライン72の図示していないポンプなどを制御し、熱媒体が熱媒体ライン72を循環する方向及び流速(単位時間当たりの流量)を制御する。
【0043】
汚染土壌20には、汚染物質を含む地下水の状態を測定する測定器82が埋設されている。測定器82は、帯水層12を流れる地下水の水圧、地下水中の汚染物質や浄化剤等の濃度、溶存酸素等の水質、地下水の温度等を測定するようになっている。また、測定結果は制御装置80に送られる。なお、図1及び図2では、測定器82は一箇所のみに設けられているが(図示されているが)、複数箇所に設けられていてもよい。
【0044】
<作用及び効果>
つぎに、汚染土壌の浄化方法について説明しながら、本実施形態の作用効果を説明する。なお、下記では、夏季から土壌汚染の浄化を開始しているが、これに限定されるものではない。
【0045】
図6(A)は、遮水壁50で囲まれた帯水層12の汚染物質を含む地下水を浄化する前の状態を示している。なお、このときの地下水の温度は常温(12℃〜20℃)の常温水Gである。なお、後述するように符号Cは常温水Gよりも低温の冷水を意味し、符号Hは常温水Gよりも高温の温水を意味する。温水Hの水温は、常温水Gよりも高温であれば特に限定されないが、本実施形態では25℃〜35℃となっている。また、冷水Cの水温は、常温水Gよりも低温であれば特に限定されないが、本実施形態で0°〜10℃となっている。なお、常温水G(地下水)の温度は、地質的及び地理的な影響を受ける。例えば、緯度が高いと低温となり、緯度が低いと高温となる。また、山麓部に近いと低温になり海岸平野に近いと高温になる。
【0046】
図1及び、図6(A)〜図6(E)に示すように、夏季に井戸120から揚水した汚染物質を含む地下水(常温水G(12℃〜20℃)を熱交換器70で熱媒体と熱交換して温水にして浄化装置112で浄化して井戸122から帯水層12に注水する(温水注水工程)。
【0047】
このように、浄化装置112では温水Hで浄化するので、空気を送り込んで揮発性汚染物質を揮発させて水質改善する場合、温度が高い方が揮発しやすいため浄化効率が向上する。或いは、浄化剤を添加し反応させて水質改善する場合も、温度が高い方が、反応速度高くなるため浄化効率が向上する。つまり、温水Hで浄化することで浄化効率が向上し浄化が促進する。
【0048】
熱交換器70で地下水(常温水G)と熱交換された熱媒体は温度が低下し、この温度が低下した熱媒体を空調装置60で冷房に利用すると共に、冷房に利用され温度が上昇した熱媒体が熱交換器70に送れられる。そして、温度が上昇した熱媒体が前述したように地下水と熱交換されることで地下水が温水となり帯水層12に注水される。なお、常温水Gは夏季の外気よりも低温であるので、熱媒体は常温水Gと熱交換することで温度が低下し空調装置60での冷房に利用することが可能である。
【0049】
このように井戸120から常温水Gを揚水し、井戸122から温水Hを注水することで、図6(A)〜図6(E)に示すように、徐々に帯水層12の地下水が常温水Gから温水Hに置き換わっていく。そして、図6(E)に示すように夏季が終了すると、帯水層12の地下水が常温水Gから温水Hに置き換わる。
【0050】
秋季の間は、汚染土壌20(図1参照)の浄化を休止する(図6(E)の状態で放置される)。しかし、地下は、土壌の断熱機能により大気の温度変化の影響を受けにくく、保温性に優れており、秋季の間、帯水層12に貯留されている温水Hは殆ど温度低下しない。すなわち、空調装置60の排熱(温熱)が温水Hとして帯水層12に蓄熱されている。
【0051】
ここで、帯水層12の地下水が温水Hとなることで、洗浄剤を添加して汚染物質を地下水に溶出させる場合、温度が高い温水Hの方が効果的に汚染物質が溶出し浄化が促進する。また、生物浄化を行う場合、浄化を行う微生物の働きが活発になり、微生物の増殖速度が高まるため、微生物が汚染物質を分解する酵素を出しやすくなり、この結果、汚染物質が効果的に浄化され浄化が促進する。このように温水Hとなることで、常温水Gの場合と比較し、汚染物質の浄化効率が向上し浄化が促進する。
【0052】
冬季になると、図2及び、図7(A)〜図7(E)に示すように、井戸122から揚水した汚染物質を含む地下水(温水H)を浄化装置112で浄化して熱交換器70で熱媒体と熱交換して冷水Cにして井戸120から帯水層12に注水する(冷水注水工程)。
【0053】
夏季と同じく、浄化装置112では、温水Hで浄化するので、浄化効率が向上し浄化が促進する。
【0054】
熱交換器70で地下水(温水H)と熱交換された熱媒体は温度が上昇し、この温度が上方した熱媒体を空調装置60で暖房に利用すると共に、暖房に利用され温度が低下した熱媒体が熱交換器70に送れられる。そして、温度が低下した熱媒体が前述したように地下水(温水H)と熱交換されることで地下水が冷水Cとなり帯水層12に注水される。
【0055】
なお、このとき温水Hの地下水と熱交換するので、常温水Gの地下水と熱交換するよりも、熱媒体の温度が効果的に上昇し、空調装置60での暖房効率が向上する。
【0056】
このように、井戸122から温水Hが揚水され、井戸120から冷水Cを注水することで、図7(A)〜図7(E)に示すように、徐々に帯水層12の地下水が温水Hから冷水Cに置き換わっていく。そして、図7(E)に示すように冬季が終了すると、帯水層12の地下水が温水Hから冷水Cに置き換わる。
【0057】
春季の間は、汚染土壌20(図2参照)の浄化を休止する(図7(E)の状態で放置される)。しかし、地下は保温性に優れており、春季の間、帯水層12に貯留している冷水Cは殆ど温度低下しない。すなわち、空調装置60の排熱(冷熱)が冷水Cとして帯水層12に蓄熱されている。
【0058】
翌年の夏季になると、再び図1及び、図6(A)〜図6(E)に示すように、井戸120から揚水した汚染物質を含む冷水Cを熱交換器70で熱媒体と熱交換して温水Hにして浄化装置112で浄化して井戸122から帯水層12に注水する(温水注水工程)。なお、最初の年は、常温水Gが揚水されるが、翌年からは帯水層12に貯留された冷水Cが揚水される。
【0059】
熱交換器70で冷水Cと熱交換された熱媒体は温度が低下し、この温度が低下した熱媒体を空調装置60で冷房に利用すると共に、冷房に利用され温度が上昇した熱媒体が熱交換器70に送れられる。そして、温度が上昇した熱媒体が前述したように地下水と熱交換されることで地下水が温水Hとなり帯水層12に注水される。
【0060】
なお、翌年の夏季以降では、冷水Cの地下水と熱交換するので、常温水Gの地下水と熱交換するよりも、熱媒体の温度が効果的に低下し、空調装置60での冷房効率が向上する。
【0061】
このように井戸120から冷水Cが揚水され、井戸122から温水Hを注水することで、図6(A)〜図6(E)に示すように、徐々に帯水層12の地下水が冷水Cから温水Hに置き換わっていく。そして、図6(E)に示すように夏季が終了すると、帯水層12の地下水が冷水Cから温水Hに置き換わる。
【0062】
以上説明したように温水注水工程と冷水注水工程とを間隔をあけて断続的に繰り替えすることで、汚染土壌20が浄化されていき、最終的に汚染物質が規定値以下になる。なお、汚染物質が規定位置以下になるには、数年から十数年必要とされているが、本発明を適用することで浄化が促進され、本発明が適用されてない場合と比較し、短時間で規定値以下となる。
【0063】
ここで、制御装置80は、汚染土壌20の汚染物質を含む地下水の状態を測定する測定器82に測定結果(汚染物質の除去の進捗状況)と汚染物質の除去計画とを比較し、地下水ライン124の図示していないポンプやバルブ等の動作を制御して、井戸120及び井戸122での注水量と揚水量とを制御している。例えば、汚染物質の濃度が計画よりも高い場合は(浄化の進捗が予定より遅い場合は)、注水量や揚水量を増やして地下水の移動速度(図6(A)〜図6(E)及び図7(A)〜図7(E))を上げる。また、浄化剤、栄養塩、酸素、微生物の量を増加させる。また、例えば、帯水層12の温度(温水Hと冷水Cとの置き換わり状況)に応じて注水量や揚水量を増やして地下水の移動速度(図6(A)〜図6(E)及び図7(A)〜図7(E))を制御する。
【0064】
更に、制御装置80は、揚水された地下水(常温水G、冷水C、温水H)、すなわち地下水ライン124の流量に応じて、熱交換器70で熱交換する熱媒体の流量、つまり熱媒体ライン72を流れる流速を制御する。つまり、地下水ライン124の流量が多い場合は、熱媒体ライン72を流れる流速を速くし、地下水ライン124の流量が少ない場合は、熱媒体ライン72を流れる流速を遅くする。これにより空調装置60での空調効率が向上する。
【0065】
このように、夏季に空調装置60からでる排熱(温熱)を熱媒体及び熱交換器70を介して地下水を温水Hにして帯水層12に注水することで、常温水Gで浄化する場合と比較し、汚染土壌20の浄化効率が向上する。
【0066】
また、夏季と冬季とに空調装置60から出る排熱(温熱・冷熱)を温水H及び冷水Cにして帯水層12に貯留して蓄熱することで、汚染土壌20の浄化と空調装置60の空調とを総合した全体のエネルギー効率が高められている。
【0067】
なお、前述したように、上記では、夏季から土壌汚染の浄化を開始しているが、これに限定されるものではない。冬季から土壌汚染の浄化を開始してもよい。この場合、最初の冬季においては、常温水Gが揚水される。しかし、常温水Gは冬季の外気よりも高温であるので、熱媒体は常温水Gと熱交換することで温度が上昇し空調装置60での暖房に利用することが可能である。
【0068】
<第二実施形態>
本発明の第二実施形態に係る汚染土壌の浄化設備について説明する。なお、第一実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0069】
[土壌]
図3及び図4に示すように、地盤11における地下水位Sの下側が帯水層12となっている。帯水層12には、汚染物質が含まれる汚染土壌20が存在している。帯水層12の下は、帯水層12よりも透水性の低い難透水層14となっている。
【0070】
本実施形態では、難透水層14の下側も帯水層16となっている。そして、この帯水層16にも、汚染物質が存在する汚染土壌22が存在している。
【0071】
汚染土壌20、22に含まれる汚染物質は、第一実施形態と同様に、トリクロロエチレンやベンゼンに代表される有機化合物、六価クロムやヒ素等の金属化合物、シアン等の無機化合物、ガソリンや軽油に代表される鉱油類等である。また、第一実施形態と同様に、地盤11の上には、図示していないオフィスビルや商業施設等の構造物が建てられている。
【0072】
[浄化設備]
浄化設備200は、遮水壁52と浄化井戸装置210と熱交換器70と空調装置60と制御装置80とを含んで構成されている。なお、熱交換器70及び空調装置60は、第一実施形態と同様の構成であるので、説明を省略する。
【0073】
遮水壁52は、汚染土壌20及び汚染土壌22の周囲を囲むように形成されている。また、下端部52Aは下側の帯水層16に到達し、更に汚染土壌22よりも下方に位置するように形成されている。よって、汚染土壌20及び汚染土壌22は、遮水壁52で囲まれ閉鎖されている。
【0074】
浄化井戸装置210は、浄化装置112と二つの井戸220、222とを有している。二つの井戸220、222は、遮水壁52で囲まれた内側に汚染土壌20、22が間に挟まれるように間隔をあけて配置されている。また、二つの井戸220、222は、難透水層14を貫通し、下側の帯水層16に到達している。井戸220と井戸222とは地下水ライン224で繋がり、この地下水ライン224に浄化装置112が設置されている。なお、浄化装置112は、第一実施形態と同一の構成であるので説明を省略する。
【0075】
浄化井戸装置210は、図示していないポンプやバルブ等によって図3に示すように、一方の井戸220から揚水し、揚水した汚染物質を含む地下水を浄化装置112で浄化したのち、他方の井戸222から注水することが可能なように構成されている。更に、浄化井戸装置210は、図4に示すように、他方の井戸222から揚水し、揚水した汚染物質を含む地下水を浄化装置112で浄化したのち、一方の他方の井戸220から注水することも可能なように構成されている。
【0076】
このように二つの井戸220、222は、それぞれ揚水と注水とを行うことが可能な構成となっている。更に二つの井戸220、222は、上側の帯水層12と下側の帯水層16とに対して、それぞれ個別に揚水及び注水することが可能とされると共に、それぞれ個別に注水及び揚水の流量を制御することが可能な構成となっている。なお、二つの井戸220、222の具体的な構成の一例は後述する。
【0077】
ここで、図3及び図4における各矢印は、帯水層12及び帯水層16での地下水の流れ、地下水ライン224での地下水の流れ、熱媒体ライン72での熱媒体の流れ、空調装置60での空気の流れ、をそれぞれ示している。また、後述するように、図3図4とでは、これらの矢印の方向が逆になっている。
【0078】
制御装置280は、地下水ライン224の図示していないポンプやバルブ等の動作を制御することで、井戸220及び井戸222における注水と揚水との切り替え(地下水ライン124を流れる方向の切り替え)、及び注水する注水量と揚水する揚水量を上側の帯水層12及び下側の帯水層16とで個別に制御するようになっている。更に、制御装置280は、熱媒体ライン72の図示していないポンプなどを制御し、熱媒体が熱媒体ライン72を循環する方向及び流速(単位時間当たりの流量)を制御するようになっている。
【0079】
汚染土壌20、22には、汚染物質を含む地下水の状態を測定する測定器82がそれぞれ埋設されている。各測定器82は、上側の帯水層12及び下側の帯水層16を流れる地下水の水圧、地下水中の汚染物質や浄化剤等の濃度、溶存酸素等の水質、地下水の温度等をそれぞれ測定するようになっている。また、測定結果は制御装置280に送られる。なお、図3及び図4では、測定器82は一箇所のみに設けられているが(図示されているが)、複数箇所に設けられていてもよい。
【0080】
(井戸220及び井戸222の構成例)
上述したように、井戸220、222は、上側の帯水層12と下側の帯水層16とに対して、それぞれ個別に注水及び揚水の流量を制御することが可能な構成となっている。よって、ここで、井戸220、222の構成例について説明する。なお、下記では、井戸222を説明しているが、井戸220も同様の構成である。
【0081】
図5に示すように、一本の井戸222には、注水と揚水とを行うことが可能な第一井戸鋼管230と第二井戸鋼管232とが挿入されている。また、井戸222内の難透水層14の深度に止水材層240が設けられている
【0082】
第一井戸鋼管230は、先端部230Aが止水材層240の上方に位置するように配置されている。また、第一井戸鋼管230の先端部230Aは、地下水を注水及び揚水が可能なように有孔管となっている。
【0083】
第二井戸鋼管232は、止水材層240を貫通し、先端部232Aが止水材層240の下方に位置するように配置されている。また、第二井戸鋼管232の先端部232Aは、地下水を注水及び揚水が可能なように有孔管となっている。
【0084】
そして、これら第一井戸鋼管230及び第二井戸鋼管232は、地下水ライン224(図3及び図4参照)で合流して浄化装置112(図3及び図4参照)で浄化されると共に、熱交換器70で熱媒体と熱交換するように構成されている。
【0085】
なお、井戸220、222は、上側の帯水層12と下側の帯水層16とが、それぞれ個別に注水及び揚水し且つ流量を制御することが可能な構成は上記構成に限定されない。どのような構成であってもよい。更に、上側の帯水層12の井戸と下側の帯水層16の井戸との二本の井戸を有する構成であってもよい。
【0086】
<作用及び効果>
つぎに、汚染土壌の浄化方法について説明しながら、本実施形態の作用効果を説明する。なお、基本的な浄化方法は第一実施形態と同様であるので、第一実施形態と同様の部分は、適宜省略又は適宜簡略化して説明する。
【0087】
図3に示すように、夏季に井戸220から揚水した汚染物質を含む地下水(常温水(約18℃))を熱交換器70で熱媒体と熱交換して温水にして浄化装置112で浄化して井戸222から帯水層12及び帯水層16に注水する(温水注水工程)。
【0088】
熱交換器70で地下水(常温水G)と熱交換された熱媒体は温度が低下し、この温度が低下した熱媒体を空調装置60で冷房に利用すると共に、冷房に利用され温度が上昇した熱媒体が熱交換器70に送れられる。そして、温度が上昇した熱媒体が前述したように地下水と熱交換されることで地下水が温水となり帯水層12及び帯水層16に注水される。
【0089】
このように井戸220から常温水Gが揚水され、井戸222から温水を注水することで、徐々に帯水層12及び帯水層16の地下水が常温水Gから温水Hに置き換わっていく。そして、夏季が終了すると、帯水層12及び帯水層16の地下水が冷水C(又は常温水G)から温水Hに置き換わる(図6(A)〜図6(E)を参照)。
【0090】
そして、秋季の間は、汚染土壌20、22の浄化を休止する。しかし、地下は保温性に優れており、秋季の間、帯水層12、16に貯留されている温水Hは殆ど温度低下しない。すなわち、空調装置60の排熱(温熱)が温水Hとして帯水層12及び帯水層16に蓄熱されている。
【0091】
ここで、帯水層12及び帯水層16の地下水が温水Hとなることで、第一実施形態と同様に、常温水Gの場合と比較し、汚染物質の浄化効率が向上し浄化が促進する。なお、上側の帯水層12と下側の帯水層16とで異なる浄化方法で浄化してもよい。
【0092】
また、浄化装置112では温水Hで浄化することで、第一実施形態と同様に、浄化効率が向上し浄化が促進する。
【0093】
冬季になると図4に示すように、井戸222から揚水した汚染物質を含む地下水(温水H)を浄化装置112で浄化して熱交換器70で熱媒体と熱交換して冷水Cにして井戸122から帯水層12及び帯水層16に注水する(冷水注水工程)。
【0094】
熱交換器70で地下水(温水H)と熱交換された熱媒体は温度が上昇し、この温度が上方した熱媒体を空調装置60で暖房に利用すると共に、暖房に利用され温度が低下した熱媒体が熱交換器70に送れられる。そして、温度が低下した熱媒体が前述したように地下水(温水H)と熱交換されることで地下水が冷水Cとなり帯水層12及び帯水層16に注水される。
【0095】
また、冬季においても浄化装置112では温水Hで浄化するので、前述したように浄化効率が向上し浄化が促進する。
【0096】
このように、井戸122から温水Hが揚水され、井戸120から冷水Cを注水することで、徐々に帯水層12及び帯水層16の地下水が温水Hから冷水Cに置き換わっていく。冬季が終了すると、帯水層12及び帯水層16の地下水が温度の温水Hから冷水Cに置き換わる(図7(A)〜図7(E)を参照)。
【0097】
そして、春季の間は、汚染土壌20(図2参照)の浄化を休止する。しかし、地下は保温性に優れており、春季の間、帯水層12、16に貯留されている冷水Cは殆ど温度低下しない。すなわち、空調装置60の排熱(冷熱)が冷水Cとして帯水層12及び帯水層16に蓄熱されている。
【0098】
翌年の夏季になると、再び井戸220から揚水した汚染物質を含む冷水Cを熱交換器70で熱媒体と熱交換して温水Hにして浄化装置112で浄化して井戸222から帯水層12及び帯水層16に注水する。なお、最初の年は、常温水Gが揚水されるが、翌年からは帯水層12及び帯水層16に貯留された冷水Cが揚水される。
【0099】
熱交換器70で冷水Cと熱交換された熱媒体は温度が低下し、この温度が低下した熱媒体を空調装置60で冷房に利用すると共に、冷房に利用され温度が上昇した熱媒体が熱交換器70に送れられる。そして、温度が上昇した熱媒体が前述したように地下水と熱交換されることで地下水が温水Hとなり帯水層12及び帯水層16に注水される。
【0100】
なお、冷水Cの地下水と熱交換するので、常温水Gの地下水と熱交換するよりも、熱媒体の温度が効果的に低下し、空調装置60での冷房効率が向上する。
【0101】
このように井戸220から冷水Cが揚水され、井戸222から温水Hを注水することで、徐々に帯水層12及び帯水層16の地下水が冷水Cから温水Hに置き換わっていく。そして、帯水層12及び帯水層16の地下水が冷水Cから温水Hに置き換わる(図6(A)〜図6(E)を参照)。
【0102】
以上説明したように温水注水工程と冷水注水工程とを間隔をあけて断続的に繰り替えすることで、汚染土壌20と汚染土壌22とが浄化されていき最終的に汚染物質が規定値以下になる。なお、汚染物質が規定位置以下になるには、数年から十数年必要とされているが、本発明を適用することで浄化が促進され、本発明が適用されてない場合と比較し、短時間で規定値以下となる。
【0103】
ここで、制御装置280は、上側の帯水層12の汚染土壌20の汚染物質を含む地下水の状態を測定する測定器82に測定結果(汚染物質の除去の進捗状況)と、下側の帯水層16の汚染土壌22の汚染物質を含む地下水の状態を測定する測定器82に測定結果(汚染物質の除去の進捗状況)と、汚染物質の除去計画と、を比較し、地下水ライン224の図示していないポンプやバルブの動作を制御して、上側の帯水層12への注水量及び揚水量と、下側の帯水層16への注水量及び揚水量と、を制御している。
【0104】
更に、制御装置280は、上側の帯水層12から揚水される地下水(冷水C又は温水H)と下側の帯水層16から揚水される地下水(冷水C又は温水H)との温度差が少なくなるように、上側の帯水層12の揚水量及び注水量と、下側の帯水層16の揚水量及び注水量と、を個別に制御する。よって、揚水された地下水(冷水C又は温水H)の温度差による熱損失が抑制され、熱交換器70による熱交換の変換効率が向上する。
【0105】
更に、制御装置280は、第一実施形態と同様に、揚水された地下水(常温水G、冷水C、温水H)、すなわち地下水ライン124の流量に応じて、熱交換器70で熱交換する熱媒体の流量、つまり熱媒体ライン72を流れる流速を制御する。これにより空調装置60での空調効率が向上する。
【0106】
<その他>
尚、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0107】
例えば、上記実施形態では、遮水壁50、52は、汚染土壌20、22の周囲を囲むように形成されているが、これに限定されるものではない。遮水壁の一部が開口した構造であってもよい。更に、遮水壁がない浄化設備の構成であってもよい。
【0108】
また、例えば、上記実施形態では、地下水と熱交換した熱媒体は、図示していない構造物に設けられた空調装置60で利用したが、これに限定されない。空調装置以外の装置や設備に利用してもよい。例えば、夏季には、機械や装置の冷却に利用し、冬季には機械や装置の加熱に利用してもうよい。或いは、温水プールに利用するなどしてもよい。また、例えば、揚水した地下水は熱交換器で熱交換する前に浄化装置で浄化してもよい。
【0109】
また、例えば、上記実施形態では、夏季においては井戸122、222から揚水し井戸120、220から注水し、冬季においては井戸120、220から揚水し井戸122、222から注水したが、これに限定されない。夏季及び冬季共に、井戸122、222(又は井戸120、220)から揚水し、井戸120、220(又は井戸122、222)から注水するようにしてもよい。この場合、温水が浄化装置112に流れるように地下水ラインの流れをバルブなどで切り替えられるようにしてもよい。
【0110】
また、例えば、上記第二実施形態では、上側の帯水層12と下側の帯水層16との二つの帯水層の汚染土壌の浄化する浄化設備であったが、これに限定されない。三層以上の帯水層にも本発明を適用することができる。
【0111】
更に、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得ることは言うまでもない
【符号の説明】
【0112】
12 帯水層
14 難透水層
16 帯水層
70 熱交換器
60 空調装置(利用手段の一例)
80 制御装置(第一制御手段の一例、第二制御手段の一例)
100 浄化設備
110 浄化井戸装置
112 浄化装置
200 浄化設備
210 浄化井戸装置
280 制御装置(第一制御手段の一例、第二制御手段の一例)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7