特許第6163346号(P6163346)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6163346汚染土壌の浄化設備、及び汚染土壌の浄化方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6163346
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】汚染土壌の浄化設備、及び汚染土壌の浄化方法
(51)【国際特許分類】
   B09C 1/02 20060101AFI20170703BHJP
   B09C 1/08 20060101ALI20170703BHJP
   B09B 3/00 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
   B09B3/00 304K
   B09B3/00ZAB
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-82376(P2013-82376)
(22)【出願日】2013年4月10日
(65)【公開番号】特開2014-205087(P2014-205087A)
(43)【公開日】2014年10月30日
【審査請求日】2016年2月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(73)【特許権者】
【識別番号】000150110
【氏名又は名称】株式会社竹中土木
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】清水 孝昭
(72)【発明者】
【氏名】奥田 信康
(72)【発明者】
【氏名】古川 靖英
(72)【発明者】
【氏名】中島 朋宏
(72)【発明者】
【氏名】向井 一洋
(72)【発明者】
【氏名】谷 慎行
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 薫
(72)【発明者】
【氏名】大村 啓介
(72)【発明者】
【氏名】泉澤 洋一
(72)【発明者】
【氏名】野口 達也
(72)【発明者】
【氏名】川島 壮仁
【審査官】 岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−021280(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0281668(US,A1)
【文献】 特開平09−280689(JP,A)
【文献】 特開2007−303695(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09C 1/02
B09B 3/00
B09C 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
難透水層の上側の第一帯水層から汚染物質を含む地下水を揚水して浄化装置で浄化すると共に、前記難透水層の下側の第二帯水層から地下水を揚水して前記第一帯水層に注水する浄化井戸装置と、
前記第二帯水層から揚水された前記地下水と熱媒体との間で熱交換を行い前記地下水を温水にすると共に前記熱媒体の温度を低下させる熱交換器と、
前記熱交換器で熱交換されて温度が低下した前記熱媒体を利用して冷却すると共に、利用後に温度が上昇した前記熱媒体を熱交換器に送る利用手段と、
を備える汚染土壌の浄化設備。
【請求項2】
前記浄化井戸装置は、前記第一帯水層から揚水された汚染物質を含む前記地下水と前記第二帯水層から揚水された汚染物質を含む前記地下水との両方を前記浄化装置で浄化するように構成されている、
請求項1に記載の汚染土壌の浄化設備。
【請求項3】
難透水層の上側の第一帯水層から汚染物質を含む地下水を揚水して浄化装置で浄化すると共に、前記浄化装置で浄化した地下水を前記第一帯水層に注水することと、前記難透水層の下側の第二帯水層から地下水を揚水して前記第一帯水層に注水することとの両方が可能とされた浄化井戸装置と、
前記第二帯水層から揚水された地下水を前記第一帯水層に注水する前に熱媒体との間で熱交換を行い前記地下水を温水にすると共に前記熱媒体の温度を低下させることと、前記第二帯水層から揚水された前記地下水と前記熱媒体との間で熱交換を行い前記地下水を冷水にすると共に前記熱媒体の温度を上昇させることと、の両方が可能とされた熱交換器と、
前記熱交換器で熱交換されて温度が低下した前記熱媒体を利用して冷却すると共に利用後に温度が上昇した前記熱媒体を熱交換器に送ることと、前記熱交換器で熱交換されて温度が上昇した前記熱媒体を利用して加熱すると共に利用後に温度が低下した前記熱媒体を熱交換器に送ることと、の両方が可能とされた利用手段と、
を備える、汚染土壌の浄化設備。
【請求項4】
難透水層の上側の第一帯水層から汚染物質を含む地下水を揚水して浄化装置で浄化すると共に、前記難透水層の下側の第二帯水層から地下水を揚水して前記第一帯水層に注水する浄化井戸装置と、
前記第二帯水層から揚水された前記地下水を前記第一帯水層に注水する前に熱媒体との間で熱交換を行い前記地下水を温水にすると共に前記熱媒体の温度を低下させることと、前記第一帯水層から揚水され前記浄化装置で浄化した前記地下水と前記熱媒体との間で熱交換を行い前記地下水を冷水にすると共に前記熱媒体の温度を上昇させることとの両方が可能とされた熱交換器と、
前記熱交換器で熱交換されて温度が低下した前記熱媒体を利用して冷却すると共に利用後に温度が上昇した前記熱媒体を熱交換器に送ることと、前記熱交換器で熱交換されて温度が上昇した前記熱媒体を利用して加熱すると共に利用後に温度が低下した前記熱媒体を熱交換器に送ることと、の両方が可能とされた利用手段と、
を備える、汚染土壌の浄化設備。
【請求項5】
前記浄化井戸装置は、前記第一帯水層から揚水された汚染物質を含む前記地下水と前記第二帯水層から揚水された汚染物質を含む前記地下水との両方を前記浄化装置で浄化するように構成されている、
請求項3又は請求項4に記載の汚染土壌の浄化設備。
【請求項6】
難透水層の上側の第一帯水層から汚染物質を含む地下水を揚水する揚水工程と、
前記第一帯水層から揚水した前記地下水を浄化装置で浄化する第一浄化工程と、
前記難透水層の下側の第二帯水層から地下水を揚水し、熱交換器によって熱媒体との間で熱交換を行い前記熱媒体の温度を低下させると共に地下水を温水にする熱交換工程と、
前記第二帯水層から揚水され前記熱交換器で熱交換されて温水となった前記地下水を前記第一帯水層に注水する注水工程と、
前記熱交換器で熱交換されて温度が低下した前記熱媒体を利用して冷却する冷却工程と、
を備える汚染土壌の浄化方法。
【請求項7】
前記注水工程の前に、前記第二帯水層から揚水された前記地下水を前記浄化装置で浄化する第二浄化工程を有する、
請求項6に記載の汚染土壌の浄化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚染土壌の浄化設備、及び汚染土壌の浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、平坦地に建てる建物の冷暖房設備の製造法に関する技術が開示されている。この先行技術では、人工池用の穴の周縁に鉛直柱状熱交換筒を多数本埋込み、蒸発器・圧縮器・凝縮器・膨張弁よりなる閉回路を循環する冷媒を有するヒートポンプを設置し、鉛直柱状熱交換筒と蒸発器内を循環する一次不凍液循環路と凝縮器と熱交換室内機内を循環する二次不凍液循環路とを設けている。
【0003】
特許文献2には、土壌汚染地域の地熱を利用した設備に関する技術が開示されている。この先行技術では、採熱管と第一循環路を有する一次側熱交換器と、放熱管と第二循環路を有する二次側熱交換器と、の間に、蒸発器、圧縮器、凝縮器および膨張弁を有するヒートポンプを設け、採熱管を土壌汚染地域に水平または垂直に埋設して、その内部を循環させる第一熱媒によって地中熱を採取し、ヒートポンプで昇温した後、その熱を内部に循環させる第二熱媒によって放熱管から放熱している。
【0004】
特許文献3には、汚染土壌およびまたは地下水の原位置浄化工法に関する技術が開示されている。この先行技術では、土壌中およびまたは地下水中の温度以上の融点を持つ浄化剤を加熱して液状化し、揮発性有機塩素化合物または硝酸性窒素による汚染土壌中およびまたは地下水中に注入し、汚染土壌中およびまたは地下水中に浸透拡散し、温度低下に伴い固形化している。
【0005】
また、その他、関連する技術が特許文献4〜特許文献8に記載されている。
【0006】
ここで、地下水の温度は年間を通じて約18℃前後である。よって、汚染土壌の浄化において、汚染物質の地下水への溶解度や汚染物質を分解する微生物の活性度等を向上させることが困難であり、浄化効率の向上に限界があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3999591号
【特許文献2】特開2003−343929号公報
【特許文献3】特開2004−216220号公報
【特許文献4】特開平9−098770号公報
【特許文献5】特開2010−000454号公報
【特許文献6】特許第4176383号
【特許文献7】特許第4428125号
【特許文献8】特許第4428638号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、汚染土壌の浄化効率を向上させることが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、難透水層の上側の第一帯水層から汚染物質を含む地下水を揚水して浄化装置で浄化すると共に、前記難透水層の下側の第二帯水層から地下水を揚水して前記第一帯水層に注水する浄化井戸装置と、前記第二帯水層から揚水された前記地下水と熱媒体との間で熱交換を行い前記地下水を温水にすると共に前記熱媒体の温度を低下させる熱交換器と、前記熱交換器で熱交換されて温度が低下した前記熱媒体を利用して冷却すると共に、利用後に温度が上昇した前記熱媒体を熱交換器に送る利用手段と、を備える。
【0010】
請求項1に記載の発明では、第一帯水層から揚水した汚染物質を含む地下水を浄化装置で浄化する。また、第二帯水層から揚水した地下水(常温水)を熱交換器で熱媒体と熱交換し温水にして第一帯水層に注水する。温水を注水することで第一帯水層の地下水が温水となる。
【0011】
そして、第一帯水層の地下水が温水となることで、汚染物質の地下水への溶解度や汚染物質を分解する微生物の活性度が向上する。また、温水となった地下水を揚水して浄化することで、浄化効率が向上する。
【0012】
また、第二帯水層から揚水した地下水と熱交換された熱媒体は温度が低下し、この温度が低下した熱媒体を利用手段で冷却に利用すると共に、利用後に温度が上昇した熱媒体が熱交換器に送られる。そして、前述したように第二帯水層の地下水と熱交換して第二帯水層の地下水を温水にして第一帯水層に注水する。
【0013】
つまり、第二帯水層から揚水した地下水(常温水)を熱交換器で熱媒体と熱交換して熱媒体の温度を低下させて利用手段で冷却に利用すると共に、熱交換器で温水になった地下水を第一帯水層に注水して浄化効率を向上させている。
【0014】
また、利用手段から出る排熱を利用することで、汚染土壌の浄化と利用手段とを別々の装置で行う場合と比較し、汚染土壌の浄化と利用手段とを総合した全体のエネルギー効率が高められる。
【0015】
請求項2の発明は、前記浄化井戸装置は、前記第一帯水層から揚水された汚染物質を含む前記地下水と前記第二帯水層から揚水された汚染物質を含む前記地下水との両方を前記浄化装置で浄化するように構成されている。
【0016】
請求項2に記載の発明では、第二帯水層にも汚染物質が含まれている場合であっても対応することができる。
【0017】
請求項3の発明は、難透水層の上側の第一帯水層から汚染物質を含む地下水を揚水して浄化装置で浄化すると共に、前記浄化装置で浄化した地下水を前記第一帯水層に注水することと、前記難透水層の下側の第二帯水層から地下水を揚水して前記第一帯水層に注水することとの両方が可能とされた浄化井戸装置と、前記第二帯水層から揚水された地下水を前記第一帯水層に注水する前に熱媒体との間で熱交換を行い前記地下水を温水にすると共に前記熱媒体の温度を低下させることと、前記第二帯水層から揚水された前記地下水と前記熱媒体との間で熱交換を行い前記地下水を冷水にすると共に前記熱媒体の温度を上昇させることと、の両方が可能とされた熱交換器と、前記熱交換器で熱交換されて温度が低下した前記熱媒体を利用して冷却すると共に利用後に温度が上昇した前記熱媒体を熱交換器に送ることと、前記熱交換器で熱交換されて温度が上昇した前記熱媒体を利用して加熱すると共に利用後に温度が低下した前記熱媒体を熱交換器に送ることと、の両方が可能とされた利用手段と、を備えている
【0018】
請求項3に記載の発明では、浄化井戸装置は、第二帯水層から揚水した地下水を第一帯水層に注水しないで、第一帯水層から揚水した汚染物質を含む地下水を浄化装置で浄化して第一帯水層に注水する。熱交換器では、第二帯水層から揚水された地下水と熱媒体との間で熱交換を行い地下水を冷水にすると共に熱媒体の温度を上昇させる。
【0019】
そして、利用手段は、熱交換器で熱交換されて温度が上昇した熱媒体を利用して加熱する。よって、利用手段で加熱(加温)を行うこともできる。なお、第二帯水層から揚水して熱交換器で冷水となった地下水を別途冷却に用いてもよい。
【0020】
請求項4の発明は、難透水層の上側の第一帯水層から汚染物質を含む地下水を揚水して浄化装置で浄化すると共に、前記難透水層の下側の第二帯水層から地下水を揚水して前記第一帯水層に注水する浄化井戸装置と、前記第二帯水層から揚水された前記地下水を前記第一帯水層に注水する前に熱媒体との間で熱交換を行い前記地下水を温水にすると共に前記熱媒体の温度を低下させることと、前記第一帯水層から揚水され前記浄化装置で浄化した前記地下水と前記熱媒体との間で熱交換を行い前記地下水を冷水にすると共に前記熱媒体の温度を上昇させることとの両方が可能とされた熱交換器と、前記熱交換器で熱交換されて温度が低下した前記熱媒体を利用して冷却すると共に利用後に温度が上昇した前記熱媒体を熱交換器に送ることと、前記熱交換器で熱交換されて温度が上昇した前記熱媒体を利用して加熱すると共に利用後に温度が低下した前記熱媒体を熱交換器に送ることと、の両方が可能とされた利用手段と、を備えている
【0021】
請求項4に記載の発明では、浄化井戸装置は、第二帯水層から揚水した地下水を熱交換器に送らないで第一帯水層に注水する。また、第一帯水層から揚水した汚染物質を含む地下水を浄化装置で浄化すると共に、熱交換器で熱媒体との間で熱交換を行い地下水を冷水にして熱媒体の温度を上昇させる。
【0022】
そして、利用手段は、熱交換器で熱交換されて温度が上昇した熱媒体を利用して加熱する。なお、第一帯水層から揚水して熱交換器で冷水となった地下水を別途冷却に用いてもよい。
請求項5の発明は、前記浄化井戸装置は、前記第一帯水層から揚水された汚染物質を含む前記地下水と前記第二帯水層から揚水された汚染物質を含む前記地下水との両方を前記浄化装置で浄化するように構成されている。
請求項5に記載の発明では、第二帯水層にも汚染物質が含まれている場合であっても対応することができる。
【0023】
請求項6の発明は、難透水層の上側の第一帯水層から汚染物質を含む地下水を揚水する揚水工程と、前記第一帯水層から揚水した前記地下水を浄化装置で浄化する第一浄化工程と、前記難透水層の下側の第二帯水層から地下水を揚水し、熱交換器によって熱媒体との間で熱交換を行い前記熱媒体の温度を低下させると共に地下水を温水にする熱交換工程と、前記第二帯水層から揚水され前記熱交換器で熱交換されて温水となった前記地下水を前記第一帯水層に注水する注水工程と、前記熱交換器で熱交換されて温度が低下した前記熱媒体を利用して冷却する冷却工程と、を備える。
【0024】
請求項6に記載の発明では、第一帯水層から揚水した汚染物質を含む地下水を浄化装置で浄化する。また、第二帯水層から揚水した地下水(常温水)を熱交換器で熱媒体と熱交換し温水にして第一帯水層に注水する。温水を注水することで第一帯水層の地下水が温水となる。
【0025】
そして、第一帯水層の地下水が温水となることで、汚染物質の地下水への溶解度や汚染物質を分解する微生物の活性度が向上する。また、温水となった地下水を揚水して浄化することで、浄化効率が向上する。
【0026】
また、第二帯水層から揚水した地下水と熱交換された熱媒体は温度が低下し、この温度が低下した熱媒体を利用手段で冷却に利用すると共に、利用後に温度が上昇した熱媒体が熱交換器に送られる。そして、前述したように第二帯水層の地下水と熱交換して第二帯水層の地下水を温水にして第一帯水層に注水する。
【0027】
つまり、第二帯水層から揚水した地下水(常温水)を熱交換器で熱媒体と熱交換して熱媒体の温度を低下させて利用手段で冷却に利用すると共に、熱交換器で温水になった地下水を第一帯水層に注水して浄化効率を向上させている。
【0028】
また、汚染土壌の浄化と利用手段とを別々の装置で行う場合と比較し、汚染土壌の浄化と利用手段とを総合した全体のエネルギー効率が高められている。
【0029】
請求項7の発明は、前記注水工程の前に、前記第二帯水層から揚水された前記地下水を前記浄化装置で浄化する第二浄化工程を有する。
【0030】
請求項7に記載の発明では、二帯水層にも汚染物質が含まれている場合であっても対応することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、汚染土壌の浄化効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の第一実施形態に係る汚染土壌の浄化設備の構成を模式的に示すと共に汚染土壌の浄化を模式的に示す構成図である。
図2】浄化井戸装置の井戸の要部の構成を模式的に示す構成図である。
図3】汚染土壌の浄化を開始後に常温水が温水に置き換わっていく様子を(A)から(B)へと順番に示す工程図である。
図4】本発明の第一実施形態の第一変形例の浄化設備の構成を模式的に示すと共に汚染土壌の浄化を模式的に示す構成図である。
図5】本発明の第一実施形態の第二変形例の浄化設備の構成を模式的に示すと共に汚染土壌の浄化を模式的に示す構成図である。
図6】本発明の第二実施形態に係る汚染土壌の浄化設備の構成を模式的に示すと共に汚染土壌の浄化を模式的に示す構成図である。
図7】本発明の第一実施形態の第一変形例の浄化設備の構成を模式的に示すと共に汚染土壌の浄化を模式的に示す構成図である。
図8】本発明の第一実施形態の第二変形例の浄化設備の構成を模式的に示すと共に汚染土壌の浄化を模式的に示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
<第一実施形態>
本発明の第一実施形態に係る汚染土壌の浄化設備について説明する。
[土壌]
【0034】
図1に示すように、地盤10における地下水位Sの下側が帯水層12となっている。帯水層12には、汚染物質が含まれる汚染土壌20が存在している。なお、汚染物質は、トリクロロエチレンやベンゼンに代表される有機化合物、六価クロムやヒ素等の金属化合物、シアン等の無機化合物、ガソリンや軽油に代表される鉱油類等である。
【0035】
帯水層12の下は、帯水層12よりも透水性の低い難透水層14となっている。難透水層14の下側は帯水層16となっている。この帯水層16には汚染物質は殆ど存在しない、或いは浄化を必要としない低濃度でしか存在しない。また、地盤10の上には、図示していないオフィスビル等の構造物が建てられている。
【0036】
[浄化設備]
浄化設備100は、遮水壁50と浄化井戸装置110と熱交換器70と空調装置60と制御装置80とを含んで構成されている。
【0037】
遮水壁50は、汚染土壌20の周囲を囲むように形成されている。また、下端部50Aが難透水層14に根入れされている。よって、汚染土壌20は、遮水壁50と難透水層14とで囲まれ閉鎖されている。
【0038】
浄化井戸装置110は、浄化装置112と二つの井戸120、122とを有している。二つの井戸120、122は、遮水壁50で囲まれた内側に汚染土壌20が間に挟まれるように間隔をあけて配置されている。また、二つの井戸120、122は、難透水層14を貫通し、下側の帯水層16に到達している。
【0039】
これら二つの井戸120、122は、上側の帯水層12と下側の帯水層16とに対して、それぞれ個別に揚水及び注水することが可能とされていると共に、それぞれ個別に注水及び揚水の流量を制御することが可能な構成となっている。なお、二つの井戸120、122の具体的な構成の一例は後述する。
【0040】
浄化井戸装置110では、一方の井戸120によって上側の帯水層12から揚水した汚染物質を含む地下水が地下水ライン150を流れると共に、この地下水ライン150を流れる汚染物質を含む地下水が浄化装置112で浄化される。
【0041】
また、一方の井戸120によって下側の帯水層16から揚水した地下水が地下水ライン134を流れ、他方の井戸122によって下側の帯水層16から揚水した地下水が地下水ライン132を流れる。そして、これら地下水ライン132と地下水ライン134とが合流して地下水ライン136となり、この地下水ライン136を流れる地下水が熱交換器70で熱媒体と熱交換される。熱交換器70で熱交換された地下水は地下水ライン138を流れ他方の井戸122から帯水層12に揚水される。なお、これらの地下水ライン132、134、136、138を地下水ライン132〜138と記載することがある。
【0042】
浄化装置112における浄化方法は、種々の周知技術を適用することができる。例えば、空気を送り込んで揮発性汚染物質を揮発させて水質改善する方法、浄化剤を添加し反応させて水質改善する方法、汚染物質を吸着することで地下水と汚染物質との分離を図る方法などを適用することができる。
【0043】
また、汚染土壌20を浄化するために揚水した地下水に洗浄剤を添加して井戸122から注水してもよい。或いは、生物浄化を行う場合は、栄養塩や酸素を混入させて注水したり、新たに微生物を混入させて注水したりしてもよい。
【0044】
熱交換器70は、地下水ライン136を流れる地下水と熱媒体ライン72を流れる熱媒体との間で熱交換を行う。なお、本実施形態では熱媒体は水が用いられている。しかし、熱交換が可能な媒体であればよく、例えば、オイルや気体等の流体であってもよい。また、熱媒体は、図示してないポンプ等によって熱媒体ライン72を循環するようになっている。
【0045】
空調装置60は、地盤10に建てられている図示していないオフィスビル設等の構造物内の空調を行う。空調装置60は、熱媒体ライン72を循環する熱交換された熱媒体の熱エネルギーを利用することが可能なように構成されている。なお、空調装置60は、熱媒体ライン72を循環する熱媒体の熱エネルギー以外のエネルギーも同時に使用して構造物内の空調を行うことが可能に構成されている。なお、本実施形態では、空調装置60は、年間を通じて構造物内のデータセンターの冷房に用いている。
【0046】
ここで、図1における各矢印は、帯水層12及び帯水層16での地下水の流れ、地下水ライン132〜138及び地下水ライン150での地下水の流れ、熱媒体ライン72での熱媒体の流れ、空調装置60での空気の流れ、をそれぞれ示している。
【0047】
制御装置80は、地下水ライン132〜138及び地下水ライン150の図示していないポンプやバルブ等の動作を制御することで、井戸120及び井戸122における注水量及び揚水する揚水量を制御する。更に、制御装置80は、熱媒体ライン72の図示していないポンプなどを制御し、熱媒体が熱媒体ライン72を循環する方向及び流速(単位時間当たりの流量)を制御する。
【0048】
帯水層12及び帯水層16には、それぞれ地下水の状態を測定する測定器82が埋設されている。測定器82は、帯水層12、16の地下水の水圧、地下水中の汚染物質や浄化剤等の濃度、溶存酸素等の水質、地下水の温度等を測定するようになっている。また、測定結果は制御装置80に送られる。なお、図1では、測定器82は各層に一箇所のみに設けられているが(図示されているが)、複数箇所に設けられていてもよい。
【0049】
(井戸120及び井戸122の構成例)
上述したように、井戸120、122は、上側の帯水層12と下側の帯水層16とに対して、それぞれ個別に注水及び揚水の流量を制御することが可能な構成となっている。よって、ここで、井戸120、122の構成例について説明する。
【0050】
図2に示すように、井戸122には、第一井戸鋼管230と第二井戸鋼管232とが挿入されている。また、井戸122内の難透水層14の深度に止水材層234が設けられている。同様に、井戸120には、第一井戸鋼管240と第二井戸鋼管242とが挿入されている。また、井戸122内の難透水層14の深度に止水材層244が設けられている
【0051】
第一井戸鋼管230、240は、先端部230A、240Aが止水材層234、244の上方に位置するように配置されている。また、第一井戸鋼管230、240の先端部230A、240Aは、地下水を注水及び揚水が可能なように有孔管となっている。
【0052】
第二井戸鋼管232、242は、止水材層234、244を貫通し、先端部232A、242Aが止水材層234、2440の下方に位置するように配置されている。また、第二井戸鋼管232、242の先端部232A、242Aは、地下水を揚水が可能なように有孔管となっている。
【0053】
そして、図1に示すように、井戸120の第一井戸鋼管240は地下水ライン150に繋がり、井戸120第二井戸鋼管242は地下水ライン134に繋がっている。また、井戸122の第一井戸鋼管230は地下水ライン138に繋がり、井戸122の第二井戸鋼管232は地下水ライン132に繋がっている。
【0054】
なお、井戸120、122は、上側の帯水層12と下側の帯水層16とが、それぞれ個別に注水及び揚水し且つ流量を制御することが可能な構成は上記構成に限定されない。どのような構成であってもよい。更に、上側の帯水層12の井戸と下側の帯水層16の井戸との二本の井戸を有する構成であってもよい。
【0055】
<作用及び効果>
つぎに、汚染土壌の浄化方法について説明しながら、本実施形態の作用効果を説明する。
【0056】
初期状態の図3(A)は、遮水壁50で囲まれた帯水層12の汚染物質を含む地下水を浄化する前の状態を示している。なお、このときの地下水の温度は常温(12℃〜20℃)の常温水Gである。なお、後述するように符号Hは常温水Gよりも高温の温水を意味する。温水Hの水温は、常温水Gよりも高温であれば特に限定されないが、本実施形態では25℃〜35℃となっている。また、常温水G(地下水)の温度は、地質的及び地理的な影響を受ける。例えば、地緯度が高いと低温となり、緯度が低いと高温となる、また、山麓部に近いと低温となり海岸平野に近いと高温になる。
【0057】
図1図2図3(A)〜図3(E)に示すように、井戸120の第一井戸鋼管240で上側の帯水層12から揚水した汚染物質を含む地下水(常温水G(12℃〜20℃))を、浄化装置112で浄化する。浄化された地下水は放流される。
【0058】
また、井戸120の第二井戸鋼管232と井戸122の第二井戸鋼管242で下側の帯水層16から揚水した地下水(常温水G)を熱交換器70で熱媒体と熱交換され温水Hとなり、井戸122の第一井戸鋼管230から上側の帯水層12に注水される。
【0059】
熱交換器70で地下水(常温水G)と熱交換された熱媒体は温度が低下し、この温度が低下した熱媒体を空調装置60で冷房に利用すると共に、冷房に利用され温度が上昇した熱媒体が熱交換器70に送られる。そして、温度が上昇した熱媒体が前述したように地下水と熱交換されることで地下水が温水Hとなり帯水層12に注水される。
【0060】
このように、井戸120の第一井戸鋼管240で帯水層12から揚水した汚染物質を含む地下水(常温水G(12℃〜20℃))を浄化装置112で浄化して放流すると共に、井戸120、122の第二井戸鋼管232、242から常温水Gを揚水し井戸122から温水Hを注水することで、図3(A)〜図3(E)に示すように、徐々に帯水層12の地下水が常温水Gから温水Hに置き換わっていく。そして、最終的に図1及び図3(E)に示すように帯水層12の地下水が常温水Gから温水Hに置き換わる。
【0061】
このように、帯水層12が温水Hとなることで、洗浄剤を添加して汚染物質を地下水に溶出させる場合、温度が高い温水Hの方が効果的に汚染物質が溶出し浄化が促進する。また、生物浄化を行う場合、浄化を行う微生物の働きが活発になり、微生物の増殖速度が高まるため、微生物が汚染物質を分解する酵素を出しやすくなり、この結果、汚染物質が効果的に浄化され浄化が促進する。このように温水Hとなることで、常温水Gの場合と比較し、汚染物質の浄化効率が向上し浄化が促進する。
【0062】
更に、上側の帯水層12が温水Hとなることで、井戸120の第一井戸鋼管240で帯水層12から揚水した汚染物質を含む温水Hを浄化装置112で浄化することになる。そして、浄化装置112において温水Hで浄化することで、空気を送り込んで揮発性汚染物質を揮発させて水質改善する場合、温度が高い方が揮発しやすいため浄化効率が向上する。或いは、浄化剤を添加し反応させて水質改善する場合も、温度が高い方が、反応速度は高くなるため浄化効率が向上する。つまり、温水Hで浄化することで浄化効率が向上し、浄化が促進する。
【0063】
なお、浄化装置112で浄化して放流される温水Hの熱エネルギーを利用してもよい。例えば、冬季の暖房や温水プールなどに利用してもよい。また、図1に破線で示す接続ライン152で地下水ライン138に接続し、温水Hの一部又は全部を井戸122の第二井戸鋼管232から帯水層12に注水するようにしてもよい。
【0064】
ここで、制御装置80は、汚染土壌20の汚染物質を含む地下水の状態を測定する測定器82に測定結果(汚染物質の除去の進捗状況)と汚染物質の除去計画とを比較し、地下水ライン132〜138及び地下水ライン150の図示していないポンプやバルブ等の動作を制御して、井戸120及び井戸122での注水量と揚水量とを制御している。例えば、汚染物質の濃度が計画よりも高い場合は(浄化の進捗が予定より遅い場合は)、注水量や揚水量を増やして地下水の移動速度をあげるようにする。また、浄化剤、栄養塩、酸素、微生物の量を増加させる。
【0065】
更に、制御装置80は、揚水された地下水(常温水G)、すなわち地下水ライン136の流量に応じて、熱交換器70で熱交換する熱媒体の流量、つまり熱媒体ライン72を流れる流速を制御する。つまり、地下水ライン136の流量が多い場合は、熱媒体ライン72を流れる流速を速くし、地下水ライン136の流量が少ない場合は、熱媒体ライン72を流れる流速を遅くする。これにより空調装置60での空調効率が向上する。
【0066】
このように、空調装置60の冷房運転で出る排熱(温熱)を熱媒体及び熱交換器70を介して地下水を温水Hにして帯水層12に注水することで、常温水Gで浄化する場合と比較し、汚染土壌20の浄化効率が向上する。
【0067】
また、このように空調装置60から出る排熱(温熱)を温水Hにして帯水層12に注水して浄化することで、汚染土壌20の浄化と空調装置60の空調とを総合した全体のエネルギー効率が高められている。
【0068】
<変形例>
つぎに、第一実施形態の変形例について説明する。
上記実施形態では、常に(一年を通じて)空調装置60で冷房を行った。しかし、一時的或いは冬季等の所定の期間に空調装置60で暖房を行う場合について説明する。また、図4(第一変形例)及び図5(第二変形例)に示す地下水ラインの構成は、図1の地下水ラインを繋ぎ換えたりバルブで変更したり、或いは、ポンプの動作を変更したりすることで実現することができる。なお、後述するように符号Cは常温水Gよりも低温の冷水を意味する。また、冷水Cの水温は、常温水Gよりも低温であれば特に限定されないが、本実施形態で0°〜10℃となっている。
【0069】
(第一変形例)
図4に示す第一変形例の浄化設備101では、浄化井戸装置111は、下側の帯水層16から揚水した地下水(常温水G)を上側の帯水層12に注水しないで、上側の帯水層12から揚水した汚染物質を含む地下水(温水H)を浄化装置112で浄化して帯水層12に注水する。熱交換器70では、下側の帯水層16から揚水された地下水(常温水G)を熱媒体との間で熱交換を行い地下水を冷水Cにすると共に熱媒体の温度を上昇させる。そして、空調装置60は、熱交換器70で熱交換されて温度が上昇した熱媒体を利用して暖房を行う。
【0070】
より具体的には、井戸120の第一井戸鋼管240で上側の帯水層12から揚水した汚染物質を含む地下水(温水H)が地下水ライン150を流れると共に、この地下水ライン150を流れる汚染物質を含む地下水(温水H)が浄化装置112で浄化される。そして、浄化された地下水(温水H)は、地下水ライン154を流れ井戸122の第一井戸鋼管230から帯水層12に注水される。
【0071】
なお、地盤上の地下水ライン150、154や浄化装置112には断熱材によって断熱されている。よって、上側の帯水層12から揚水された温水Hは、殆ど温度低下することなく温水Hとして再び帯水層12に注水される。
【0072】
また、汚染物質を含む温水Hを浄化装置112で浄化するので、浄化効率が向上し浄化が促進する。
【0073】
また、井戸120と井戸122によって下側の帯水層16から揚水した地下水は熱交換器70で熱媒体と熱交換され冷水Cとなり地下水ライン139から放流される。
【0074】
熱交換器70で地下水(常温水G)と熱交換された熱媒体は温度が上昇し、この温度が上昇した熱媒体を空調装置60で暖房に利用すると共に、暖房に利用され温度が低下した熱媒体が熱交換器70に送れられる。そして、温度が低下した熱媒体が前述したように地下水と熱交換されることで地下水が冷水Cとなり放流される。なお、放流される冷水Cを、別の熱交換器を介して別の空調装置で冷房に用いてもよい。
【0075】
(第二変形例)
図5に示す第二変形例の浄化設備103では、浄化井戸装置113は、下側の帯水層16から揚水した地下水(常温水G)を熱交換器70に送らないで上側の帯水層12に注水する。また、上側の帯水層12から揚水した汚染物質を含む地下水(温水H)を浄化装置112で浄化すると共に熱交換器70で熱媒体との間で熱交換を行い熱媒体の温度を上昇させる。そして、空調装置60は、熱交換器70で熱交換されて温度が上昇した熱媒体を利用して暖房を行う。
【0076】
より具体的には、井戸122から第一井戸鋼管230で帯水層12から汚染物質を含む地下水(温水H)を揚水する。温水Hは地下水ライン138を逆方向に流れ浄化装置112で浄化されるように構成されている。そして、浄化された温水Hは、熱交換器70で熱媒体と熱交換され冷水Cとなり放流される。
【0077】
このように、汚染物質を含む温水Hを浄化装置112で浄化するので、浄化効率が向上し浄化が促進する。
【0078】
また、熱交換器70で地下水(温水H)と熱交換された熱媒体は温度が上昇し、この温度が上昇した熱媒体を空調装置60で暖房に利用すると共に、暖房に利用され温度が低下した熱媒体が熱交換器70に送れられる。そして、温度が低下した熱媒体が前述したように地下水と熱交換されることで地下水が冷水Cとなり放流される。なお、この冷水Cを、別途空調装置(及び熱交換器)で冷房に用いてもよい。
【0079】
また、井戸120と井戸122によって下側の帯水層16から揚水した地下水(常温水G)は、地下水ライン156で合流し、井戸120の第一井戸鋼管240から上側の帯水層12に注水される。
【0080】
ここで、井戸122の第一井戸鋼管230で上側の帯水層12から温水Hを揚水すると共に、井戸120、122の第二井戸鋼管232、242で下側の帯水層16から常温水Gを揚水し井戸122から常温水Gを帯水層12に注水することで、徐々に帯水層12の地下水が温水Hから常温水Gに置き換わっていく、つまり図3(E)から図3(A)になる。そして、最終的に図1及び図3(A)に示すように帯水層12の地下水が温水Hから常温水Gに置き換わるまで行うことができる。
【0081】
<第二実施形態>
本発明の第二実施形態に係る汚染土壌の浄化設備について説明する。なお、第一実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0082】
[土壌]
図6に示すように、本実施形態では、地盤11における下側の帯水層16にも汚染物質が含まれる汚染土壌22が存在している。汚染物質は、トリクロロエチレンやベンゼンに代表される有機化合物、六価クロムやヒ素等の金属化合物、シアン等の無機化合物、ガソリンや軽油に代表される鉱油類等である。しかし、上側の帯水層12の汚染土壌20よりも下側の帯水層16の汚染土壌22の方が汚染濃度は低くなっている。
【0083】
[浄化設備]
図6に示すように、浄化設備200は、遮水壁250と浄化井戸装置210と熱交換器70と空調装置60と制御装置80とを含んで構成されている。なお、熱交換器70及び空調装置60は、第一実施形態と同様の構成であるので、説明を省略する。
【0084】
浄化設備200の遮水壁250は、難透水層14を貫通し、下端部250Aが下側の帯水層16に到達すると共に汚染土壌22よりも下方に位置するように形成されている。よって、遮水壁250は、汚染土壌20及び汚染土壌22の周囲を囲むように形成され、汚染土壌20及び汚染土壌22は遮水壁250で囲まれ閉鎖されている。
【0085】
また、浄化井戸装置210は、上側の帯水層12から揚水された汚染物質を含む地下水と下側の帯水層16から揚水された汚染物質を含む地下水との両方を浄化装置112で浄化するように構成されている。
【0086】
具体的には、熱交換器70の下流側の地下水ライン138を流れる温水Hが、浄化装置112で浄化されるように構成されている。すなわち、下側の帯水層16から揚水した汚染物質を含む地下水(常温水G)を熱交換器70で熱交換して温水Hとなり、この温水H(汚染物質を含む地下水)を浄化装置112で浄化してから井戸122の第一井戸鋼管230から上側の帯水層12に注水されるように構成されている。
【0087】
なお、上側の帯水層12の汚染土壌20よりも下側の帯水層16汚染土壌22の方が汚染濃度は低い。よって、帯水層16から地下水を揚水するのみであっても(帯水層16に注水しなくても)、汚染土壌22を浄化することができる。
【0088】
<作用及び効果>
第一実施形態とは、下側の帯水層16にも汚染物質が含まれる汚染土壌22が存在し、帯水層16から揚水した汚染物質を含む地下水(常温水G)を浄化することが作用効果に加わること以外は同様であるので、詳しい説明を省略する。
【0089】
<変形例>
つぎに、第二実施形態の変形例について説明する。
第二実施形態の変形例も第一実施形態の変形例と同様に一時的或いは冬季等の所定の期間に空調装置60で暖房を行う場合について説明する。また、第一実施形態と同様に、また、図7(第一変形例)及び図8(第二変形例)に示す地下水ラインの構成は、図6の地下水ラインを繋ぎ換えたりバルブで変更したり、或いは、ポンプの動作を変更したりすることで実現することができる。
【0090】
(第一変形例)
図7に示す第一変形例の浄化設備201では、浄化井戸装置211は、下側の帯水層16から揚水した地下水(常温水G)を上側の帯水層12に注水しないで、上側の帯水層12から揚水した汚染物質を含む地下水(温水H)を浄化装置112で浄化して帯水層12に注水する。熱交換器70では、下側の帯水層16から揚水された地下水(常温水G)を熱媒体との間で熱交換を行い地下水を冷水Cにすると共に熱媒体の温度を上昇させる。そして、空調装置60は、熱交換器70で熱交換されて温度が上昇した熱媒体を利用して暖房を行う。
【0091】
また、浄化井戸装置211は、上側の帯水層12から揚水された汚染物質を含む地下水と下側の帯水層16から揚水された汚染物質を含む地下水との両方を浄化装置112で浄化するように構成されている。
【0092】
より具体的には、井戸220の第一井戸鋼管240で上側の帯水層12から揚水した汚染物質を含む地下水(温水H)が地下水ライン150を流れると共に、この地下水ライン150を流れる汚染物質を含む地下水(温水H)が浄化装置112で浄化される。そして、浄化された地下水(温水H)は、井戸122の第一井戸鋼管230から帯水層12に注水される。
【0093】
なお、汚染物質を含む温水Hを浄化装置112で浄化するので、浄化効率が向上し浄化が促進する。
【0094】
また、井戸120と井戸122によって帯水層16から揚水した地下水は熱交換器70で熱媒体と熱交換されたのち冷水Cとなり地下水ライン139を流れ浄化装置112で浄化されたのち放流される。
【0095】
熱交換器70で地下水(常温水G)と熱交換された熱媒体は温度が上昇し、この温度が上昇した熱媒体を空調装置60で暖房に利用すると共に、暖房に利用され温度が低下した熱媒体が熱交換器70に送れられる。そして、温度が低下した熱媒体が前述したように地下水と熱交換されることで地下水が冷水Cとなり浄化装置112で浄化されて放流される。なお、放流される冷水Cを、別途空調装置(及び熱交換器)で冷房に用いてもよい。
【0096】
(第二変形例)
図7に示す第二変形例の浄化設備203では、浄化井戸装置213は、下側の帯水層16から揚水した地下水(常温水G)を熱交換器70に送らないで上側の帯水層12に注水する。また、上側の帯水層12から揚水した汚染物質を含む地下水(温水H)を浄化装置112で浄化すると共に熱交換器70で熱媒体との間で熱交換を行い地下水(温水H)を冷水Cにしまた熱媒体の温度を上昇させる。そして、空調装置60は、熱交換器70で熱交換されて温度が上昇した熱媒体を利用して暖房を行う。
【0097】
また、浄化井戸装置211は、上側の帯水層12から揚水された汚染物質を含む地下水と下側の帯水層16から揚水された汚染物質を含む地下水との両方を浄化装置112で浄化するように構成されている。
【0098】
より具体的には、井戸122から第一井戸鋼管230で上側の帯水層12から汚染物質を含む地下水(温水H)を揚水する。そして、温水Hは地下水ライン138を逆方向に流れ浄化装置112で浄化されるように構成されている。浄化された温水Hは、熱交換器70で熱媒体と熱交換され冷水Cとなり放流される。
【0099】
このように、汚染物質を含む温水Hを浄化装置112で浄化するので、浄化効率が向上し浄化が促進する。
【0100】
また、熱交換器70で地下水(温水H)と熱交換された熱媒体は温度が上昇し、この温度が上昇した熱媒体を空調装置60で暖房に利用すると共に、暖房に利用され温度が低下した熱媒体が熱交換器70に送れられる。そして、温度が低下した熱媒体が前述したように地下水と熱交換されることで地下水が冷水Cとなり放流される。なお、この冷水Cを、別途空調装置(及び熱交換器)で冷房に用いてもよい。
【0101】
また、井戸120と井戸122によって下側の帯水層16から揚水した地下水(常温水G)は、地下水ライン156で合流し、更に浄化装置112で浄化してのち、井戸120の第一井戸鋼管240からから上側の帯水層12に注水される。
【0102】
ここで、井戸122の第一井戸鋼管230で上側の帯水層12から温水Hを揚水すると共に、井戸120、122の第二井戸鋼管232、242で下側の帯水層16から常温水Gを揚水し井戸122から常温水Gを上側の帯水層12に注水することで、徐々に帯水層12の地下水が温水Hから常温水Gに置き換わっていく、つまり図3(E)から図3(A)になる。そして、最終的に図1及び図3(A)に示すように帯水層12の地下水が温水Hから常温水Gに置き換わるまで行うことができる。
【0103】
<その他>
尚、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0104】
例えば、上記実施形態では、遮水壁50、250は、汚染土壌20、22の周囲を囲むように形成されているが、これに限定されるものではない。遮水壁の一部が開口した構造であってもよい。更に、遮水壁がない浄化設備の構成であってもよい。
【0105】
また、例えば、上記実施形態では、地下水と熱交換した熱媒体は、図示していない構造物に設けられた空調装置60で利用したが、これに限定されない。空調装置以外の装置や設備の冷却に利用してもよい。例えば、ボイラー等の冷却のために利用してもよい。また、例えば、揚水した地下水は熱交換器で熱交換する前に浄化装置で浄化してもよい。
【0106】
更に、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得ることは言うまでもない
【0107】
尚、本発明は上記実施形態に限定されない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得ることは言うまでもない
【符号の説明】
【0108】
14 難透水層
12 帯水層(第一帯水層)
16 帯水層(第二帯水層)
60 空調装置(利用手段の一例)
70 熱交換器
80 制御装置
100 浄化設備
101 浄化設備
103 浄化設備
110 浄化井戸装置
112 浄化装置
111 浄化井戸装置
113 浄化井戸装置
200 浄化設備
201 浄化設備
203 浄化設備
210 浄化井戸装置
211 浄化井戸装置
213 浄化井戸装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8